(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000775
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】鋼管杭及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
E02D5/30 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-206523(P2012-206523)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62362(P2014-62362A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】500246108
【氏名又は名称】株式会社近畿開発
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】濱中 重信
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭45−038461(JP,B1)
【文献】
特開2003−193465(JP,A)
【文献】
特開2007−162216(JP,A)
【文献】
特開2011−214366(JP,A)
【文献】
特開平05−280048(JP,A)
【文献】
特開平02−024416(JP,A)
【文献】
実公昭30−018226(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜 5/80
E02D 7/00〜 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空鋼管はその先端部分に複数の帯状脚部(12A)を有し、該帯状脚部(12A)の先端部は押圧によって粘土層又は砂礫層を前進可能な尖端状をなす一方、中空鋼管はその先端部分内に中空のガイド台(20)を備え、該ガイド台(20)は複数のセメントミルクの吐出孔(20A)を有するとともにセメントミルクの注入用パイプが接続されて上記注入用パイプによって鋼管杭内に保持されており、上記ガイド台(20)は該ガイド台(20)に対する上記中空鋼管の相対的な押し込み状態で上記帯状脚部(12A)を外方に拡開させかつ粘土層又は砂礫層を前進させるように案内する円錐状又は半球状のガイド面を上部に有することを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
上記中空鋼管は、中空の鋼管本体(11)及び鋼管本体(11)への固定状態の中空の先端鋼管(12)とから構成され、該中空の先端鋼管(12)に複数の帯状脚部(12A)を有する請求項1記載の鋼管杭。
【請求項3】
中空鋼管の先端部分には複数の帯状脚部(12A)を形成し該帯状脚部(12A)の先端部を押圧によって粘土層又は砂礫層を前進可能な尖端状に形成する一方、中空鋼管には上部に円錐状又は半球状のガイド面を有する中空のガイド台(20)を設けて該ガイド台(20)にはセメントミルクの注入用パイプを接続して該注入用パイプによって鋼管杭内に保持し該ガイド台(20)には複数のセメントミルクの吐出孔(20A)を形成した鋼管杭(10)を用い、
掘削機(40)で地盤(50)に杭穴(51)を掘削し、
上記杭穴(51)に上記鋼管杭(10)を挿入し、
上記ガイド台(20)が杭穴(51)の底部に達したときに上記中空鋼管をガイド面に対して相対的に押し込んで上記帯状脚部(12A)を周囲の粘土層又は砂礫層を前進するように拡開させ、
上記注入用パイプから上記ガイド台(20)にセメントミルク(30)を注入して上記ガイド台(20)の吐出孔(20A)から周囲に吐出させて中空鋼管の帯状脚部(12A)と結合されたセメント拡径根部を形成するようにしたことを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管杭及びその施工方法に関し、特に十分な強度に根固めを行うことができ、粘土層や砂礫層において高い信頼性を保証できるようにした杭及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物を構築する場合、地中に鋼管杭を打ち込み、この鋼管杭に鉄筋を固定するなどして鋼管杭を建築構造物の基礎等に利用することが行われている。
【0003】
上述の鋼管杭には、オーガスクリュー等によって地中に杭穴を掘削するとともに、杭穴底部を拡径し、拡径部にセメントミルクを充填するとともに、中空鋼管をセメント内に注入して一体化するようにしたセメント充填方式が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−234531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の鋼管杭ではセメント拡径部に鋼管の先端部をそのまま挿入して固めているだけであるので、セメント拡径部が小さく、しかもセメント拡径部と鋼管先端部との結合が十分でなく、十分な強度の根固めができず、特に粘土層や砂礫層の場合には鋼管杭の信頼性が低いことがあった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み、十分な強度で根固めを行うことができ、粘土層や砂礫層において高い信頼性を保証できるようにした鋼管杭及び及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係る鋼管杭は、中空鋼管の先端部分には複数の帯状脚部が形成され、該帯状脚部の先端部は押圧によって粘土層又は砂礫層を前進可能な尖端状に形成されている一方、中空鋼管には円錐状又は半球状となったガイド台が設けられ、上記中空鋼管が上記ガイド台に対して相対的に押し込まれたときに上記帯状脚部がガイド台によって案内されて粘土層又は砂礫層を前進するように外方に拡開され、上記ガイド台には複数のセメントミルクの吐出孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の特徴の1つは中空鋼管の先端部分に複数の帯状脚部を形成し、中空鋼管の先端を相対的にガイド台に押し込んで帯状脚部を拡開して周囲に前進させるようにした点にある。
【0009】
これにより、ガイド台が杭穴底面に達するまで杭穴に鋼管杭を挿入した後、中空鋼管をガイド台に対して相対的に押し込むと、帯状脚部が粘土層や砂礫層内を前進するように拡開し、セメントミルクをガイド台の吐出孔から周囲に吐出させ、セメントミルクを凝固させると、帯状脚部と結合したセメント拡径根部を形成することができる。
【0010】
この帯状脚部は拡開しているので、大きなセメント拡径根部を形成でき、しかも帯状脚部はセメント拡径根部と強化に結合されているので、鋼管杭を十分な強度で根固することができ、例えば粘土層や砂礫層において、上方の引抜き力や左右への揺さぶり力が加わっても、鋼管杭の高い信頼性を保証できる。
【0011】
鋼管杭は中空鋼管の先端部分に複数の帯状脚部を形成する必要があるが、中空鋼管が長尺の場合には帯状脚部の加工が煩雑である。そこで、中空鋼管を、中空の鋼管本体とこれに固定される中空の先端鋼管とから構成し、先端鋼管に帯状脚部を形成するようにするのがよい。
【0012】
鋼管杭はガイド台を組合せて使用するが、ガイド台を鋼管杭にセットする必要がある。例えば、ワイヤーやロープをガイド台に接続し、ワイヤーやロープを鋼管杭内に挿通してガイド台を鋼管杭にセットすることができるが、ガイド台にはセメントミルクを注入して周囲に吐出させる必要があることから、セメントミルクの注入用パイプをガイド台に接続してガイド台を鋼管杭にセットすることもできる。
【0013】
また、本発明によれば、中空鋼管の先端部分には複数の帯状脚部を形成し該帯状脚部の先端部を押圧によって粘土層又は砂礫層を前進可能な尖端状に形成する一方、中空鋼管には上部に円錐状又は半球状のガイド面を有するガイド台を設け該ガイド台には複数のセメントミルクの吐出孔を形成した鋼管杭を用い、掘削機で地盤に杭穴を縦に掘削し、上記杭穴に上記鋼管杭を挿入し、上記ガイド台が杭穴の底部に達したときに上記中空鋼管をガイド台に対して相対的に押し込んで上記帯状脚部を周囲の粘土層又は砂礫層を前進するように拡開させ、上記ガイド台にセメントミルクを注入して上記ガイド台の吐出孔から周囲に吐出させて帯状脚部と結合されたセメント拡径根部を形成するようにしたことを特徴とする鋼管杭の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る鋼管杭の好ましい実施形態における全体構成を示す図である。
【
図2】上記鋼管杭の施工方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2は本発明に係る鋼管杭の好ましい実施形態を示す。図において、鋼管杭10は中空の鋼管本体11、中空の先端鋼管12及びガイド台20から構成され、先端鋼管12は後端に開先が形成され、鋼管本体11先端の開先と突き合わされて溶接されることによって固着されている(図中、13が溶接部分である)。
【0016】
また、先端鋼管12には複数のスリット12Bが先端から後部に向けて実質的に等しい幅の相互に等しい間隔をあけて形成されることによって複数の帯状脚部12Aが形成され、帯状脚部12Aは先端部が折り返されて尖端状に形成されている。
【0017】
他方、ガイド台20は下半部が円筒状をなし、下半部の外側面には複数のセメントミルクの吐出孔20Aが間隔をあけて形成されている。また、ガイド台20の上半部には円錐状のガイド面が形成され、ガイド台20の頂部にはセメントミルクの注入用パイプ30が接続され、注入用パイプ30によってガイド台20が帯状脚部12Aの間にセットされるようになっている。
【0018】
鋼管杭10を地盤50に打ち込む場合、
図2の(a)に示されるように、オーガスクリュー40によって杭穴51を掘削し、所定の深さに達すると、オーガスクリュー40を杭穴51から引き抜き、
図2の(b)に示されるように、ガイド台20が杭穴51の底面に達するまで本例の鋼管杭10を杭穴51に挿入する。
【0019】
次に、鋼管杭10をガイド台20に対してさらに押し込むと、
図2の(c)に示されるように、帯状脚部12Aがガイド面によって案内され、帯状脚部12Aの先端が粘土層や砂礫層内を外方に前進するように帯状脚部12Aが拡開、つまり相互の間隔が先端になるほど広くなるように拡開される。
【0020】
こうして帯状脚部12Aが拡開されると、
図2の(d)に示されるように、注入用パイプ30からセメントミルクを注入すると、セメントミルクがガイド台20の吐出孔20Aから周囲に吐出され、セメントミルクが凝固すると、鋼管杭10の根元に大きな拡径根部52が形成される。
【0021】
凝固したセメントは大きく拡径した鋼管杭10の帯状脚部12Aと強固に結合されるとともに、大きなセメント拡径根部52を形成でき、鋼管杭10を強固な根固めすることができ、例えば粘土層や砂礫層において、上方の引抜き力や左右への揺さぶり力が加わっても、鋼管杭10の高い信頼性を保証できる。
【符号の説明】
【0022】
10 鋼管杭
11 鋼管本体
12 先端後端
12A 帯状脚部
20 ガイド台
20A 吐出孔
30 セメントミルク注入用パイプ
50 地盤
51 杭穴
52 セメント拡径根部