特許第6000785号(P6000785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000785
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/00 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   F02B31/00 301B
   F02B31/00 301D
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-217286(P2012-217286)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70569(P2014-70569A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(72)【発明者】
【氏名】飯嶌 智司
(72)【発明者】
【氏名】白砂 貴盛
(72)【発明者】
【氏名】浅田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏次
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151078(JP,A)
【文献】 特開2001−263067(JP,A)
【文献】 特開2008−075509(JP,A)
【文献】 特開2012−102623(JP,A)
【文献】 特開2001−248449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0079800(US,A1)
【文献】 特開平06−159203(JP,A)
【文献】 特開2002−155748(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2101055(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック(16)のシリンダボア(16b)内を摺動自在に嵌合されるピストン(25)の頂面と同頂面が対向するシリンダヘッド(17)の天井面(41)との間に燃焼室(40)が構成され、
前記シリンダヘッド(17)の前記天井面(41)に開口した吸気弁口(42)と排気弁口(43)から各々吸気ポート(44)と排気ポート(45)が互いに離れる方向に湾曲しながら延出して形成され、
吸気ポート(44)にインレットパイプ(20)が接続されて連続した吸気通路(P)が構成され、
前記インレットパイプ(20)にスロットル弁(22)が設けられ、
前記吸気通路(P)が部分的に仕切板(60)により燃焼室(40)の中央部に通じる上側吸気通路(Up)と燃焼室(40)の外周部に通じる下側吸気通路(Lp)に仕切られ、
前記インレットパイプ(20)の前記スロットル弁(22)よりも下流で前記仕切板(60)の上流に設けられた吸気振分け弁(65)により前記上側吸気通路(Up)と前記下側吸気通路(Lp)を流れる吸気割合が制御され、
吸気制御手段(71)により前記吸気振分け弁(65)が駆動制御される内燃機関の吸気装置において、
前記吸気振分け弁(65)は、
回動軸(66)から板状弁体(67)が一体に延出して構成され、
前記回動軸(66)が、同回動軸(66)の回動中心線(Cv)を、前記仕切板(60)の上流端縁(61aa)に平行に指向させ、かつ同上流端縁(61aa)の下方近傍に位置させて前記インレットパイプ(20)に回動自在に軸支され、
内燃機関の低負荷運転時には、前記吸気振分け弁(65)が、前記板状弁体(67)で、または前記板状弁体(67)と前記回動軸(66)とで、前記下側吸気通路(Lp)の上流側開口を閉塞し、
前記仕切板(60)は、前記インレットパイプ(20)に設けられるインレットパイプ側仕切り板(61)と前記吸気ポート(44)に設けられる吸気ポート側仕切り板(62)とが各端部を重ね合わせて連結して構成され、
前記吸気ポート側仕切り板(62)の下流端部(62b)に先端縁からU字状に凹んだ凹部(62u)が形成され、
前記吸気ポート(44)内に延びた弁ガイド(34i)が前記凹部(62u)を貫通し

前記吸気振分け弁(65)は、前記板状弁体(67)を前記インレットパイプ(20)の下側内周面から離して前記下側吸気通路(Lp)の上流側開口を開いたとき、前記インレットパイプ側仕切り板(61)の上流端(61a)の下面と前記回転軸(66)の切欠凹部(65d)との間に、前記下側吸気通路(Lp)に連通する中間通路(Mp)が形成されることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記仕切板(60)は、前記上側吸気通路(Up)の通路断面積が前記下側吸気通路(Lp)の通路断面積よりも小さくなるように前記吸気通路(P)を仕切ることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記吸気振分け弁(65)の前記回動軸(66)は、回動中心線(Cv)が前記吸気通路(P)の最大上下幅の中心軌跡である通路中心線(Cp)と直交する位置に軸支されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の低負荷領域において、燃費の向上を図るために、燃焼室内で吸入された吸気がタンブルを発生し、燃焼室上部の点火プラグの周りに燃料を送り成層化して燃焼効率の向上を図る吸気装置を構成したものがある。
【0003】
シリンダヘッドの燃焼室の天井面の吸気弁口と排気弁口から吸気ポートと排気ポートが互いに離れる方向に湾曲しながら延出しており、この吸気ポートが燃焼室に案内する吸気のうちで吸気弁口のシリンダ軸(シリンダボアの中心軸)に近い内側縁側から燃焼室の中央部に吸入される吸気が、排気側に向け流入しながらシリンダボアの排気側を下降した後にピストン頂面に沿って流れを曲げて吸気側を上昇することで縦渦いわゆるタンブルを形成する。
【0004】
そこで、吸気弁口のシリンダ軸に近い内側縁側から吸入される吸気の割合を大きくするために、吸気ポートの内部を仕切壁により上下の通路に仕切り、仕切壁の上流側に下方の通路の開閉を行う吸気制御弁を設け、機関始動直後に下方の通路を閉じることで、吸気ポートの上方の通路を流れる吸気が上方の通路の延長である吸気弁口の内側縁側から吸入されることになり、強い渦流のタンブルを発生するようにした吸気装置の例がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151078号公報
【0006】
特許文献1の吸気装置では、吸気ポートの仕切壁の上流側に設けられる吸気制御弁は、基端の軸部が吸気ポートの下壁に軸支されて回動し、下壁の内面に沿って伏せることで下方の通路の上流側開口を開き上下双方の通路を吸気が流れ、上方に回動して先端縁が仕切壁の上流端縁に接することで下方の通路の上流側開口が閉じられ、上方の通路のみを吸気が流れる。
したがって、機関始動直後は吸気制御弁が下方の通路の上流側開口を閉じ、上方の通路を吸気が流れ燃焼室に入ることで、強い渦流のタンブルを発生させ燃焼効率を上げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、内燃機関の中高負荷領域においては、タンブルの渦流が強すぎると、急速燃焼を原因としたクランク打音が発生することがある。
そこで、中高負荷領域では、吸気ポートの上方の通路を流れる吸気を抑制したいが、特許文献1の吸気制御弁による吸気制御では、上方の通路の上流側開口のみを部分的に閉じて上方の通路を流れる吸気を抑制することはできない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、低負荷状態において強い渦流のタンブルを発生し、中高負荷状態では上方の通路を流れる吸気を抑制してタンブルの渦流の強さを調整して燃焼効率の最適化を図ることができる内燃機関の吸気装置を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、
シリンダブロック(16)のシリンダボア(16b)内を摺動自在に嵌合されるピストン(25)の頂面と同頂面が対向するシリンダヘッド(17)の天井面(41)との間に燃焼室(40)が構成され、
前記シリンダヘッド(17)の前記天井面(41)に開口した吸気弁口(42)と排気弁口(43)から各々吸気ポート(44)と排気ポート(45)が互いに離れる方向に湾曲しながら延出して形成され、
吸気ポート(44)にインレットパイプ(20)が接続されて連続した吸気通路(P)が構成され、
前記インレットパイプ(20)にスロットル弁(22)が設けられ、
前記吸気通路(P)が部分的に仕切板(60)により燃焼室(40)の中央部に通じる上側吸気通路(Up)と燃焼室(40)の外周部に通じる下側吸気通路(Lp)に仕切られ、
前記インレットパイプ(20)の前記スロットル弁(22)よりも下流で前記仕切板(60)の上流に設けられた吸気振分け弁(65)により前記上側吸気通路(Up)と前記下側吸気通路(Lp)を流れる吸気割合が制御され、
吸気制御手段(71)により前記吸気振分け弁(65)が駆動制御される内燃機関の吸気装置において、
前記吸気振分け弁(65)は、
回動軸(66)から板状弁体(67)が一体に延出して構成され、
前記回動軸(66)が、同回動軸(66)の回動中心線(Cv)を、前記仕切板(60)の上流端縁(61aa)に平行に指向させ、かつ同上流端縁(61aa)の下方近傍に位置させて前記インレットパイプ(20)に回動自在に軸支され、
内燃機関の低負荷運転時には、前記吸気振分け弁(65)が、前記板状弁体(67)で、または前記板状弁体(67)と前記回動軸(66)とで、前記下側吸気通路(Lp)の上流側開口を閉塞し、
前記仕切板(60)は、前記インレットパイプ(20)に設けられるインレットパイプ側仕切り板(61)と前記吸気ポート(44)に設けられる吸気ポート側仕切り板(62)とが各端部を重ね合わせて連結して構成され、
前記吸気ポート側仕切り板(62)の下流端部(62b)に先端縁からU字状に凹んだ凹部(62u)が形成され、
前記吸気ポート(44)内に延びた弁ガイド(34i)が前記凹部(62u)を貫通し
前記吸気振分け弁(65)は、前記板状弁体(67)を前記インレットパイプ(20)の下側内周面から離して前記下側吸気通路(Lp)の上流側開口を開いたとき、前記インレットパイプ側仕切り板(61)の上流端(61a)の下面と前記回転軸(66)の切欠凹部(65d)との間に、前記下側吸気通路(Lp)に連通する中間通路(Mp)が形成されることを特徴とする内燃機関の吸気装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の内燃機関の吸気装置において、
前記仕切板(60)は、前記上側吸気通路(Up)の通路断面積が前記下側吸気通路(Lp)の通路断面積よりも小さくなるように前記吸気通路(P)を仕切ることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、
請求項2記載の内燃機関の吸気装置において、
前記吸気振分け弁(65)の前記回動軸(66)は、回動中心線(Cv)が前記吸気通路(P)の最大上下幅の中心軌跡である通路中心線(Cp)と直交する位置に軸支されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の内燃機関の吸気装置によれば、吸気振分け弁(65)は、回動軸(66)から板状弁体(67)が一体に延出して構成され、回動軸(66)が、同回動軸(66)の回動中心線(Cv)を前記仕切板(60)の上流端縁(61aa)に平行に指向させ、かつ同上流端縁(61aa)の下方近傍に位置させてインレットパイプ(20)に回動自在に軸支され、回動軸(66)から吸気上流側に向けて延出する前記板状弁体(67)が上下に揺動して、前記スロットル弁(22)より下流の吸気を上下に振り分け上側吸気通路(Up)と下側吸気通路(Lp)を流れる吸気の割合を変更し、内燃機関の低負荷運転時には、吸気振分け弁(65)が、板状弁体(67)で、または板状弁体(67)と回動軸(66)とで、下側吸気通路(Lp)の上流側開口を閉塞するので、低負荷運転時に吸気を略全部上方に振り分けて上側吸気通路Upを流れるようにすることで、上側吸気通路Upに案内されて流れる吸気が吸気弁口(42)の内側縁側(シリンダ軸C側)から燃焼室(40)の中央部に排気側に向けて高速で吸入され、強い渦流のタンブルが発生することができ、中高負荷状態では上方の通路を流れる吸気を抑制してタンブルを弱く抑え燃焼効率の最適化を図ることができる。
吸気振分け弁(65)は、板状弁体(67)をインレットパイプ(20)の下側内周面から離して下側吸気通路(Lp)を開いたとき、回動軸(66)と仕切板(60)との間が開いて下側吸気通路(Lp)に連通する中間通路(Mp)が形成されるので、吸気振分け弁(65)が下側吸気通路(Lp)の上流側開口を開くことで、上下に振り分けた吸気のうち上側に振り分けられた吸気は、大部分が上側吸気通路(Up)に流入するが、上側吸気通路(Up)に流入しきらなかった吸気が滞留することなく中間通路(Mp)を通って円滑に下側吸気通路(Lp)に流入することができ、吸気流の乱れを抑制し、吸気効率を高く維持することができる。
気振分け弁(65)は、回動軸(66)の回動中心線(Cv)に平行な面で切り欠かれた切欠凹部(65d)から切欠き面に沿って前記板状弁体(67)が延出して構成され、切欠凹部(65d)が仕切板(60)との間に前記中間通路(Mp)を形成するので、吸気振分け弁(65)が下側吸気通路(Lp)の上流側開口を閉じたときは回動軸(66)の切欠凹部(65d)に設けられた板状弁体(67)の基端縁(67a)が仕切板(60)に接して下側吸気通路(Lp)を完全に閉じ、吸気振分け弁(65)が下側吸気通路(Lp)の上流側開口を開いたときは切欠凹部(65d)が仕切板(60)との間に中間通路(Mp)を形成することが、簡単な構造で実現でき、部品点数の削減と低コスト化を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の内燃機関の吸気装置によれば、前記仕切板(60)は、上側吸気通路(Up)の通路断面積が下側吸気通路(Lp)の通路断面積よりも小さくなるように吸気通路(P)を仕切るので、燃焼室(40)の中央部に通じる上側吸気通路(Up)を狭くすることで、上側吸気通路(Up)を通る吸気速度を上げてタンブルの渦流を強く発生させることができる。
【0016】
請求項3記載の内燃機関の吸気装置によれば、前記吸気振分け弁(65)の回動軸(66)は、回動中心線(Cv)が吸気通路(P)の最大上下幅の中心軌跡である通路中心線(Cp)と直交する位置に軸支されるので、通常通路断面が円形または変形したとしても上下対称な長円形をなす吸気通路(P)の通路内周面に傾斜した姿勢で接するような半楕円状の板状弁体(67)を揺動可能に軸支することが容易にできる。
また、回動軸(66)は吸気通路(P)の上下偏ることなく最大上下幅の中心に位置するので、吸気の乱れを極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る内燃機関を搭載した自動二輪車の右側面図である。
図2】同内燃機関の右側断面図である。
図3】シリンダブロックの上面図である。
図4】シリンダヘッドの下面図である。
図5】燃焼室の天井面の説明図である。
図6】低負荷状態における内燃機関の要部断面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8図6のVIII-VIII線断面図である。
図9】吸気振分け弁の斜視図である。
図10図13のX-X線断面図である。
図11】スロットル開度θに対する吸気振分け弁開度φの制御とタンブル比Rtの変化を示すグラフである。
図12】中負荷状態における内燃機関の要部断面図である。
図13】高負荷状態における内燃機関の要部断面図である。
図14】変形例の吸気振分け弁の分解斜視図である。
図15】同吸気振分け弁を使用した例の図10に相当する断面図である。
図16】別の実施の形態におけるスロットル開度θに対する吸気振分け弁開度φの制御とタンブル比Rtの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図13に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態に係る内燃機関10を搭載した自動二輪車1の全体側面図である。
【0021】
本自動二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ2aから後方へ左右一対のメインフレーム2b,2bが延出した後に下方に屈曲して急傾斜部2ba,2baを形成し、その下部をくの字に前方に屈曲させて下端部に至っている。
またヘッドパイプ2aから斜め急角度に下方へ左右一対のダウンフレーム2c,2cが、側面視でメインフレーム2bの急傾斜部2baに略平行に延出している。
【0022】
メインフレーム2b,2bの急傾斜部2ba,2baの上部からはシートレール2d,2dが後方に延出し、同シートレール2d,2dの中央部と急傾斜部2ba,2baの下部とを連結したバックステー2e,2eがシートレール2d,2dを支持している。
【0023】
以上のような車体フレーム2において、ヘッドパイプ2aにはフロントフォーク3が枢支され、その下端に前輪4が軸支され、メインフレーム2b,2bの下部に設けられたピボットプレート2fに前端を軸支されたリヤフォーク5が後方へ延出し、その後端に後輪6が軸支され、リヤフォーク5の後部とシートレール2d,2dの中央部との間にリヤクッション7が介装されている。
メインフレーム2b,2bには燃料タンク8が架設され、燃料タンク8の後方にシート9がシートレール2d,2dに支持されて設けられている。
【0024】
車体フレーム2に搭載される内燃機関10は、SOHC型2バルブの単気筒4ストローク内燃機関であり、車体に対してクランク軸12を車体幅方向に指向させ、気筒を若干前傾させて起立した姿勢で懸架される。
【0025】
内燃機関10のクランク軸12を回転自在に軸支するクランクケース11は、クランク軸12の後方に配設されるメイン軸13とカウンタ軸14の間に変速歯車機構15が構成されており、カウンタ軸14は出力軸であり、後輪6の回転軸との間にチェーン(図示せず)が架渡され動力が後輪6に伝達される。
【0026】
図2を参照して、クランクケース11の上には、1本の鋳鉄製のシリンダライナ16Lが鋳込まれたシリンダブロック16と、シリンダブロック16の上にガスケットを介してシリンダヘッド17が重ねられ、スタッドボルトにより一体に締結され、シリンダヘッド17の上方をシリンダヘッドカバー18が覆っている。
クランクケース11の上に重ねられるシリンダブロック16,シリンダヘッド17,シリンダヘッドカバー18は、クランクケース11から若干前傾した姿勢で上方に延出している(図1図2参照)。
【0027】
このように車体フレームに搭載された内燃機関10の若干前傾して立設されたシリンダヘッド16から後方に連結管19を介してインレットパイプ20が延出し、インレットパイプ20にはスロットル弁22を内蔵するバタフライ型のスロットルボディ21が設けられるとともに、インジェクタ23が装着され、さらに後記する吸気振分け弁65が設けられている。
【0028】
このインレットパイプ20の後端に連結されるエアクリーナ24が側面視でメインフレーム2aとシートレール2dとバックステー2eに囲まれた空間に配設される(図1参照)。
また、シリンダヘッド17から前方に延出した排気管27は、下方に屈曲し、さらに後方に屈曲してクランクケース11の下面に沿って後方にかつ右側に寄って後輪6の右側に配置されたマフラー26に連結している。
【0029】
図2を参照して、クランクケース11は左右割りで、左右クランクケースの合せ面に形成された開口にシリンダライナ16Lの下端部が嵌入してシリンダブロック16が若干前傾して上方に突出しており、同シリンダライナ16Lの内部のシリンダボア16bにピストン25が往復摺動自在に嵌合され、ピストン25のピストンピン25pとクランク軸12のクランクピン12pとの間をコンロッド26が連接してクランク機構を構成している。
【0030】
シリンダブロック16のシリンダボア16b内を摺動するピストン25の頂面25tと同頂面25tが対向するシリンダヘッド17の天井面41との間に燃焼室40が構成される。
シリンダヘッド17には、天井面41にシリンダボア16bの中心軸であるシリンダ軸Cに関して互いに反対位置に1つずつ吸気弁口42と排気弁口43が燃焼室40に臨んで開口されるとともに、吸気弁口42と排気弁口43から各々吸気ポート44と排気ポート45が互いに離れる方向に湾曲しながら延出して形成されている。
【0031】
吸気ポート44は、吸気弁口42から後方に延出し、連結管19を介してインレットパイプ20に連通し、排気ポート45は排気管27に連結される。
シリンダヘッド16に一体に嵌着された弁ガイド34i,34eにそれぞれ摺動可能に支持される吸気弁46および排気弁47は、シリンダヘッド13の上に設けられる動弁機構30により駆動されて、吸気ポート44の吸気弁口42および排気ポート45の排気弁口43をクランク軸12の回転に同期して開閉する。
【0032】
図2を参照して、動弁機構30は、シリンダヘッド17の上に1本のカム軸31が左右方向に指向して軸支されたSOHC型内燃機関の動弁機構であり、カム軸31の斜め前後上方にロッカアームシャフト32e,32iが支持され、後方のロッカアームシャフト32iに吸気ロッカアーム33iが揺動自在に中央を軸支され、前方のロッカアームシャフト32eに排気ロッカアーム33eが揺動自在に中央を軸支されている。
【0033】
吸気ロッカアーム33iの一端は、カム軸31の吸気カムロブに接し、他端がスプリングで付勢された吸気弁46のバルブステム46sの上端に調整ねじを介して接し、排気ロッカアーム33eの一端は、カム軸31の排気カムロブに接し、他端がスプリングで付勢された排気弁47のバルブステム47sの上端に調整ねじを介して接し、カム軸31の回転により吸気ロッカアーム33iと排気ロッカアーム33eが揺動して吸気弁46と排気弁47を開閉駆動する。
【0034】
図3は、シリンダブロック16の上面図であり、シリンダヘッド17との合せ面16fにシリンダボア16bの円孔と動弁機構30に動力を伝達するチェーンを挿通するチェーン室16cの矩形孔が穿設されている。
図4は、シリンダブロック16に重ね合わされるシリンダヘッド17の下面図であり、シリンダブロック16に合せ面16fに対向する合せ面17fに、シリンダボア16bに対応して燃焼室40の天井面41が凹んで形成されるとともに、チェーン室16cに対応して連通するチェーン室17cが穿設されている。
【0035】
シリンダヘッド17の合せ面17fにおける燃焼室40の天井面41の円形開口縁41sがシリンダボア16bの円孔に一致する。
天井面41の後側に大径の吸気弁口42が開口し、天井面41の前側に吸気弁口42より幾らか小径の排気弁口43が開口している。
また、天井面41には点火プラグ(図示せず)が先端を突出させるプラグ孔48が穿設されている。
【0036】
図5は、シリンダヘッド17の燃焼室40をシリンダ軸Cの軸方向に視た、すなわちシリンダ軸方向視で示した図であり、同図5を参照して、吸気弁口42が燃焼室40の天井面41のシリンダボア16bの円孔に対応する円形の天井面開口縁41sよりシリンダ軸方向視で外側にはみ出してオフセットしており、吸気弁口42は天井面開口縁41sからはみ出した三日月状のはみ出し部42a(図5の散点で示した部分)を有する。
【0037】
吸気弁口42の開口縁42sの開口全周長に対するはみ出し部42aの開口周長の割合をマスキング割合Rmとすると、本吸気弁口42のオフセットによるマスキング割合Rmは20〜50%程度である。
【0038】
また、図5を参照して、天井面41には、吸気弁口42と排気弁口43を長径方向両側に囲む楕円状の横断面形状を有してドーム状凹部51が形成されており、天井面41のうちドーム状凹部51の外側の左右1対の三日月状部分にそれぞれスキッシュ52,52が形成されている。
【0039】
そして、吸気弁口42の外周囲に、吸気弁口42の三日月状のはみ出し部42aの両端部辺りから吸気弁口42の開口縁42sに沿って湾曲した1対のガイド壁面53,53が、互いに対向して前記排気弁口43側に向けて徐々に拡開して形成されている。
【0040】
以上のように形成されたシリンダヘッド17の燃焼室40の天井面41に対して、シリンダブロック16のシリンダボア16bは、図3および図6に示すように、シリンダボア16bのシリンダヘッド17側の開口縁における吸気弁口42のはみ出し部42aに対向する後側部分を吸気弁46の移動方向に吸気弁46のかさ部46p周縁に沿って最大バルブリフト位置まで切り欠いた切欠き円曲面55が形成されている。
【0041】
図6に示すように、切欠き円曲面55は、鋳鉄製のシリンダライナ16Lが鋳込まれたアルミ合金製のシリンダブロック16のフランジレスのシリンダライナ16Lの端面を覆う部分に斜めに切り欠かれて形成されている。
【0042】
この切欠き円曲面55に沿って切欠き円曲面55に近接して吸気弁46のかさ部46p周縁が移動するので、吸気弁46が開いて最大バルブリフト位置まで移動する間、吸気弁口42の外側縁側(はみ出し部42a側)からの吸気は、吸気弁46のかさ部46p周縁と切欠き円曲面55との極めて狭い隙間を通らなければならず燃焼室40への吸入が殆ど妨げられマスキングされた状態にある。
【0043】
したがって、吸気弁口42の外側縁側からはマスキングされて燃焼室40には僅かに吸入されるだけで、吸気弁口42の内側縁側からの吸入が主になり、よってタンブルが発生し易い構造となっている。
なお、吸気弁46の最大バルブリフト位置が、切欠き円曲面55をいくらか越えた位置にあってもよい。
【0044】
ピストン25の頂面25tの周縁部の吸気弁口42のはみ出し部42aに対向する部分が吸気弁46のかさ部46pの端面46pfと平行に切り欠かれてピストン切欠き面56が形成されており(図6参照)、吸気行程でピストン25の下降とともに吸気弁46が開弁しリフトするときに、外側縁側からの吸気の流入方向とピストン切欠き面(56)が垂直となるため、吸気弁口42の外側縁側から燃焼室40に吸気の吸入が促されることはなく、逆タンブルの発生がより抑えられている。
【0045】
そして、吸気系において、インレットパイプ20から連結管19を介して吸気ポート44に至る吸気通路Pが、インレットパイプ20の下流部から吸気ポート44の湾曲部まで仕切板60により上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpに仕切られている。
【0046】
シリンダヘッド17が吸気ポート44を形成する部分を含めアルミ合金で形成されているのに対して、インレットパイプ20は樹脂で形成されている。
そこで、仕切板60は、インレットパイプ20に一体に形成されるインレットパイプ側仕切板61と吸気ポート44内にシリンダヘッド17と一体に形成される吸気ポート側仕切板62とからなり、インレットパイプ側仕切板61の下流端部61bと吸気ポート側仕切板62の上流端部62aが互いに上下に重なり合って連結され構成されている。
【0047】
図2および図6を参照して、インレットパイプ側仕切板61は、下流端部61bがインレットパイプ20の下流開口端よりも突出して吸気ポート44内に入り込んでおり、吸気ポート側仕切板62は、上流端部62aが吸気ポート44の上流開口端まで達している。
樹脂製のインレットパイプ側仕切板61の吸気ポート44内に入り込んだ下流端部61bが、弾性変形による押圧力をもって吸気ポート側仕切板62の上流端部62aの上に圧接して重なり合って連結されている。
【0048】
吸気通路Pは、通路断面が円形をしており、この吸気通路Pを上下に仕切る仕切板60は、図6に示すように、インレットパイプ側仕切板61と吸気ポート側仕切板62がともに、吸気通路Pの最大上下幅の中心軌跡(本吸気通路Pの場合、通路断面である円形の中心軌跡)である通路中心線Cpより上方に偏って位置し、上側吸気通路Upの通路断面積が下側吸気通路Lpの通路断面積より小さい(図7参照)。
図7に示すように、本吸気通路Pの場合、上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpの通路断面積の割合は、上流側開口から下流側開口に至るまで、略3対7としている。
【0049】
吸気ポート側仕切板62は、吸気ポート44の形状に沿って曲がっており、吸気ポート側仕切板62の下流端部62bは、吸気ポート44の湾曲部に位置する吸気弁46の吸気バルブステム46sに達しており、図8に示すように、下流端部62bには先端縁からU字状に凹んだ凹部62uが形成されていて、このU字状凹部62uを吸気ポート44内に延びた弁ガイド34iが貫通している。
弁ガイド34iの外径はU字状凹部62uの幅に等しく、U字状凹部62uの奥まで弁ガイド34iが嵌合して、隙間を生じないようにしているので、吸気ポート側仕切板62はできるだけ吸気ポート44の吸気弁口42の近くまで吸気通路Pを上下に仕切るようにしている。

【0050】
したがって、図6を参照して、上側吸気通路Upは、吸気弁口42の内側縁側(シリンダ軸C側)から燃焼室40の中央部に通じ、下側吸気通路Lpは吸気弁口42の外側縁側(はみ出し部42a側)から燃焼室40の外周部に通じる。
【0051】
インレットパイプ20に装着されるインジェクタ23は、図6に示すように、上側吸気通路Upに臨み、吸気ポート側仕切板62のインレットパイプ側仕切板61との連結部61b,62aである上流端部62aよりも下流側に向けて燃料噴射するように取り付けられている。
【0052】
インレットパイプ20内には、スロットル弁22よりも下流でインレットパイプ側仕切板61の上流に吸気振分け弁65が設けられている。
吸気振分け弁65は、インレットパイプ20に軸支される回動軸66から板状弁体67が一体に延出して構成されるフラップバルブであり、モータ駆動機構72により板状弁体67が揺動させられる。
【0053】
図9および図10に示すように、回動軸66の回動中心線Cvに平行な面で切り欠かれた半円柱状の切欠凹部65dが左右軸受間の吸気通路P内に形成されており、切欠凹部65dの切欠き底面に沿って板状弁体67が延出している。
なお、回動軸66の切欠凹部65dの背面側も若干切り欠いた凹部が形成されている。
板状弁体67は、切欠凹部65dの軸方向幅を短径とした半楕円状をしており、直線辺を有した基端部を切欠凹部65dの切欠き底面に当接して背面の凹部に座金68wを介して背面からネジ68を螺入して板状弁体67を回動軸66に一体に締結する。
リベットで締結してもよい。
【0054】
板状弁体67の基端部が回動軸66の切欠凹部65dに取り付けられると、板状弁体67の基端部の基端縁67aは略回動軸66の外周面の延長周面上にあり、切欠凹部65dは板状弁体67の基端部の表面上に凹部として残っている。
【0055】
このような吸気振分け弁65は、回動軸66の回動中心線Cvを、インレットパイプ側仕切板61の上流端部61aの左右水平方向に指向した上流端縁61aaに平行に指向させ、かつ上流端縁61aaの下方近傍に位置させた状態で、回動軸66をインレットパイプ20に回動自在に軸支し、同回動軸(66)から吸気上流側に向けて板状弁体67を延出した姿勢で取り付けられている。
【0056】
板状弁体67は、回動軸(66)の回動で一体に上下に揺動し、半楕円状をした外周縁が断面円形の吸気通路Pの通路内周面に傾斜した姿勢で接すると、吸気通路Pの半分を完全に閉塞することができる。
【0057】
吸気振分け弁65の回動軸66は、回動中心線Cvが吸気通路Pの通路中心線Cpと直交する位置に軸支されている。
なお、インレットパイプ20内に吸気振分け弁65より上流側に軸支されるスロットル弁22は、吸気通路Pの通路中心線Cpと直交する左右水平方向に指向した回動中心線を中心に回動するバタフライバルブである。
【0058】
吸気振分け弁65は、上流のスロットル弁22に先端を向けて揺動することで、スロットル弁22より下流の吸気を上下に振り分け上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpを流れる吸気の割合を変更することができる。
【0059】
内燃機関10を制御するECU(電子制御ユニット)70は、吸気制御手段71を備えており、内燃機関10の運転状態を解析して吸気制御手段71により吸気系のスロットル弁22やインジェクタ23が駆動制御されるが、吸気振分け弁65も吸気制御手段71により駆動制御される。
【0060】
図6を参照して、スロットル弁22のスロットル開度θは、全閉時から回動して吸気通路に平行になったときが全開状態であり、内燃機関10の負荷状態を示す。
吸気振分け弁65は、内燃機関10の負荷状態に応じて揺動制御され、吸気振分け弁65の揺動角である吸気振分け弁開度φは、図6に示す低負荷状態のときの吸気振分け弁65の低負荷位置を基準0度として図6で時計回りに揺動角度が増加する。
【0061】
タンブルの状態は、クランク軸12の1回転当りのタンブルの回転数であるタンブル比Rtで表わすことができる。
タンブル比Rt=タンブル回転角速度/クランク軸角速度
タンブル比Rtが大きければ、強い渦流のタンブルが発生している。
【0062】
図11には、スロットル開度θに応じて吸気振分け弁65を揺動制御する吸気振分け弁開度φの変化とタンブル比Rtの変化を示している。
以下、図11を参照しつつ、内燃機関10の負荷状態による吸気振分け弁65の揺動制御とタンブル比Rtを考察する。
【0063】
内燃機関10が低負荷運転状態のときは、図6に示すように、スロットル弁22は小さく開いており(スロットル開度θ:小)、吸気振分け弁65は板状弁体67の先端縁が吸気通路Pの下側周面に接した低負荷位置(吸気振分け弁開度φ=0度)に位置決めされている。
この吸気振分け弁65の板状弁体67の先端縁が吸気通路Pの下側周面に接したとき、板状弁体67の回動中心線Cvより上方となる基端縁67aはインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aの下面に接しており、よって、下側吸気通路Lpの上流側開口は吸気振分け弁65により完全に閉塞される。
そのため、吸気振分け弁65は吸気を略全部上方に振り分けて上側吸気通路Upを流れるようにすることができる。
【0064】
したがって、スロットル弁22の僅かに開いた開口を通った吸気は、吸気振分け弁65により略全部上方の比較的狭い上側吸気通路Upに案内されて流れるために高速となり、さらに吸気ポート44の湾曲部に位置する吸気バルブステム46sまで延出した仕切板60により吸気弁口42の近くまで案内するので、大部分の吸気が吸気弁口42の内側縁側(シリンダ軸C側)から燃焼室40の中央部に排気側に向けて高速で吸入されることになり、図6に示すように、強い渦流のタンブルが発生する(タンブル比Rtが上昇)。
【0065】
吸気弁口42がシリンダボア16bの円孔よりシリンダ軸方向視で外側にはみ出した三日月状のはみ出し部42aを有するようにオフセットして、吸気弁口42の外側縁側(はみ出し部42a側)はマスキングされ、かつ下側吸気通路Lpを通る吸気は殆どないため、吸気弁口42の外側縁側から燃焼室40に吸入する吸気はなく、タンブルを妨げる逆タンブルも発生せず、タンブルをより強く発生させ、タンブル比Rtは高くなり、低負荷時の燃焼効率を向上させることができる。
【0066】
内燃機関10が中負荷運転状態のときは、図12に示すように、スロットル弁22は中開度に開き(スロットル開度θ:中)、吸気振分け弁65は先端縁が吸気通路Pの上側周面に近づいた中負荷位置(吸気振分け弁開度φ=β度)に位置決めされるので、吸気振分け弁65は吸気の割合が下方より上方を小さくするように振り分けている。
したがって、図12に矢印で示すように、下側吸気通路Lpは十分な吸気が流れるが、上側吸気通路Upを流れる吸気は抑制される。
【0067】
また、吸気振分け弁65の板状弁体67の先端縁が吸気通路Pの下側周面から離れると、板状弁体67の基端縁67aはインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aの下面から離れ、吸気振分け弁65の切欠凹部65dがインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aとの間に中間通路Mpを形成する。
【0068】
中間通路Mpは、下側吸気通路Lpに通じるので、吸気振分け弁65により上下に振り分けた吸気のうち上側に振り分けられた吸気は、大部分が上側吸気通路Upに流入するが、上側吸気通路Upに入りきらなかった一部の吸気が滞留することなく中間通路Mpを通って円滑に下側吸気通路Lpに流入することができ、吸気流の乱れを抑制することができるとともに、上側吸気通路Upに流入される吸気がさらに抑制される。
【0069】
そのため、上側吸気通路Upを流れる抑制された吸気は、吸気弁口42の内側縁側から燃焼室40に入っても、弱い渦流のタンブルしか発生せず、さらに吸気弁口42の外側縁側から燃焼室40の外周部に吸入される吸気が幾らかはあって逆タンブルを生じてタンブルを抑えるので、タンブルは極力抑えられ、タンブル比Rtが低下する。
【0070】
内燃機関10が高負荷運転状態のときは、図13に示すように、スロットル弁22は全開となり(スロットル開度θ:全開)、吸気振分け弁65はインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aと平行で吸気通路Pの通路中心線Cpを含む平面にある高負荷位置(吸気振分け弁開度φ=α度)に位置決めされているので、吸気振分け弁65は吸気を1対1の割合に吸気を上下に振り分けている。
【0071】
しかし、図13および図13のX-X線断面図である図10に示すように、吸気振分け弁65の切欠凹部65dにインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aとの間で中間通路Mpが形成されるので、吸気振分け弁65により上側に振り分けられた吸気の一部はストレートに中間通路Mpを通って滞留することなく円滑に下側吸気通路Lpに流入することになるので、結局、吸気はインレットパイプ側仕切板61により仕切られた略3対7の割合で上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpに流入する。
【0072】
したがって、図13に矢印で示すように、上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpを十分な吸気が流れ、上側吸気通路Upを流れた吸気は、吸気弁口42の内側縁側から燃焼室40に吸入されてタンブルが発生し、下側吸気通路Lpを流れた吸気は、マスキングされつつも吸気弁口42の外側縁側から燃焼室40に入って幾らか逆タンブルを生じるが、上側吸気通路Upから十分な吸気量が吸入されることから、タンブル比Rtが比較的高い適度な渦流のタンブルを発生するとともに、十分な吸気により吸気効率を良好に維持することができる。
【0073】
以上のように、本内燃機関10の吸気装置は、吸気振分け弁65の回動軸66の回動中心線Cvを仕切板(60)の上流端縁61aaに平行に指向させ、かつ同上流端縁61aaの下方近傍に位置させてインレットパイプ20に回動自在に軸支され、回動軸66から吸気上流側に向けて延出する板状弁体67が上下に揺動して、スロットル弁22より下流の吸気を上下に振り分け上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpを流れる吸気の割合を変更することができるので、内燃機関の負荷状態に応じてタンブルの渦流の強さを調整して燃焼効率の最適化を図ることができる。
【0074】
すなわち、内燃機関10が低負荷運転状態のときは、吸気振分け弁65が下側吸気通路Lpの上流側開口を完全に閉塞して吸気を殆ど全部上方に振り分けて下側吸気通路Lpよりも半分以下の通路断面積の狭い上側吸気通路Upを高速で流れるようにし、大部分の吸気が吸気弁口42の内側縁側(シリンダ軸C側)から燃焼室40に高速で吸入されることになり、特に強い渦流のタンブルを発生することができる。
【0075】
内燃機関10が中負荷運転状態のときは、吸気振分け弁65が中負荷位置(吸気振分け弁開度φ=β度)に位置決めされ、吸気の割合が下方より上方を小さくするように振り分け、上側吸気通路Upを流れる吸気を抑制してタンブルは抑えられる。
吸気振分け弁65が中負荷位置にあるときは、切欠凹部65dがインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aとの間に中間通路Mpを形成するので、上側吸気通路Upに入りきらなかった一部の吸気が滞留することなく中間通路Mpを通って円滑に下側吸気通路Lpに流入することができ、吸気流の乱れを抑制することができるとともに、上側吸気通路Upに流入される吸気がさらに抑制される。
【0076】
内燃機関10が高負荷運転状態のときは、吸気振分け弁65は吸気通路Pの通路中心線Cpを含む平面にある高負荷位置に位置決めされ、中間通路Mpが形成されるので、滞留することなく吸気はインレットパイプ側仕切板61により仕切られた略3対7の割合で上側吸気通路Upと下側吸気通路Lpに流入し、上側吸気通路Upから十分な吸気量が吸入されることから、適度な渦流のタンブルを発生するとともに、十分な吸気により吸気効率を良好に維持することができる。
【0077】
吸気振分け弁65の回動軸66は、回動中心線Cvが吸気通路Pの最大上下幅の中心軌跡である通路中心線Cpと直交する位置に軸支されるので、通常通路断面が円形の吸気通路Pの通路内周面に傾斜した姿勢で接するような半楕円状の板状弁体67を揺動可能に軸支することが容易にできる。
【0078】
回動軸66の回動中心線Cvに平行な面で切り欠かれた切欠凹部65dから切欠き面に沿って板状弁体67が延出して吸気振分け弁65が構成され、切欠凹部65dが仕切板60との間に中間通路Mpを形成するので、吸気振分け弁65が下側吸気通路Lpを閉じたときは回動軸66の切欠凹部65dに設けられた板状弁体67の基端縁67aがインレットパイプ側仕切板61に接して下側吸気通路Lpの上流側開口を完全に閉じ、吸気振分け弁65が下側吸気通路Lpの上流側開口を開いたときは切欠凹部65dがインレットパイプ側仕切板61との間に中間通路Mpを形成することが、簡単な構造で実現でき、部品点数の削減と低コスト化を図ることができる。
【0079】
本実施の形態に係る吸気振分け弁65は、板状弁体67の基端部の基端縁67aが略回動軸66の外周面の延長周面上にあって、基端部が回動軸66の切欠凹部65d内にあるが、回動軸66の外径が小さいものにおいては、基端部が切欠凹部65dからはみ出して突出するものであってもよく、その場合でも、吸気振分け弁65が下側吸気通路Lpの上流開口を閉じると、板状弁体67の突出した基端部の基端縁67aがインレットパイプ側仕切板61の下面に接して中間通路Mpを閉じ、吸気振分け弁65が揺動して下側吸気通路Lpの上流開口を開くと、基端縁67aがインレットパイプ側仕切板61の下面から離れることで、中間通路Mpを形成することができる。
【0080】
フラップバルブである吸気振分け弁の変形例を、図14および図15に示し説明する。
本吸気振分け弁80は、回動軸81の吸気通路P内に相当する部分に回動中心軸Cvを含む中心軸平面に平行な平面で切り欠かれた一対の切欠凹部81a,81bが形成されて、切欠凹部81a,81b間の平板部81cに平板部81cの両平面に平行に貫通するスリット81sが穿設されている。
スリット81sの左右幅は、切欠凹部81a,81bと同じく、吸気通路Pの内径に等しい。
平板部81cの左右2か所に取付孔81ch,81chが穿孔されている。
【0081】
この回動軸81の平板部81cのスリット81sに、板状弁体82の基端部が嵌入される。
板状弁体82は、スリット81sの左右幅を短径とした半楕円状をしており、直線辺を有した基端部の左右に取付孔82h,82hが、回動軸81の平板部81cの取付孔81ch,81chに対応して穿孔されている。
【0082】
図14に示すように、回動軸81の平板部81cのスリット81sに、板状弁体82の基端部を嵌入し、回動軸81の取付孔81ch,81chと板状弁体82の取付孔82h,82hを合せて、切欠凹部81b側から同取付孔81ch,81chと取付孔82h,82hにチューブラリベット83,83を貫通して切欠凹部81aに突出した先端をかしめて、回動軸81に板状弁体82を取り付けて吸気振分け弁80とする。
この吸気振分け弁80は、前記実施の形態に係るインレットパイプ20にインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aの下方近傍に回動軸81の回動中心線Cvを位置させて取り付けられる。
【0083】
板状弁体82は、回動軸81の回動で一体に上下に揺動し、内燃機関10が低負荷運転状態のとき、半楕円状をした外周縁が断面円形の吸気通路Pの通路内周面に傾斜した姿勢で接すると、回動軸81の平板部81cの端縁がインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aの下面に接して、下側吸気通路Lpの上流側開口は吸気振分け弁65により完全に閉塞され、上側吸気通路Upのみ吸気が通って、タンブルを強く発生させることができる。
【0084】
内燃機関10が中高負荷運転状態のときは、下側吸気通路Lpの上流側開口は開くとともに、吸気振分け弁80の切欠凹部81aがインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aとの間に中間通路Mpを形成し、上側吸気通路Upに入りきらなかった一部の吸気が滞留することなく中間通路Mpを通って円滑に下側吸気通路Lpに流入することができ、吸気流の乱れを抑制することができる。
図15は、高負荷運転状態のときの図13のX-X線断面図に相当する断面図であり、吸気振分け弁80の切欠凹部81aが、インレットパイプ側仕切板61の上流端部61aとの間に中間通路Mpを形成している。
【0085】
以上の実施の形態では、吸気弁口42が燃焼室40の天井面41のシリンダボア16bの円孔に対応する円形の天井面開口縁41sよりシリンダ軸方向視で外側にはみ出してオフセットして、燃焼室の外周部のはみ出し部をマスキングしていたが、吸気弁口42が天井面開口縁41sよりはみ出さない通常のシリンダヘッドを使用した内燃機関についても、本発明は適用されるものである。
【0086】
すなわち、燃焼室40の外周部がマスキングされなくとも、内燃機関10が低負荷運転状態のときは、吸気振分け弁65が下側吸気通路Lpの上流側開口を閉塞し(吸気振分け弁開度φ=0度)、吸気を略全部上方に振り分けて上側吸気通路Upを流れるようにすることで、比較的狭い上側吸気通路Upに案内されて高速で流れる吸気が吸気弁口42の内側縁側(シリンダ軸C側)から燃焼室40の中央部に排気側に向けて高速で吸入され、強い渦流のタンブルが発生することができる。
【0087】
そして、内燃機関10が中高負荷運転状態のときは、下側吸気通路Lpの上流側開口は開くとともに、吸気振分け弁80の切欠凹部81aがインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aとの間に中間通路Mpを形成し、上側吸気通路Upに入りきらなかった一部の吸気が滞留することなく中間通路Mpを通って円滑に下側吸気通路Lpに流入することができ、吸気流の乱れを抑制することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、吸気振分け弁65を中負荷運転状態のとき、吸気振分け弁65の先端縁が吸気通路Pの上側周面に近づいた中負荷位置(吸気振分け弁開度φ=β度)にまで揺動していたが、このような制御をせずに、低負荷運転状態から高負荷運転状態までスロットル開度θの増加に対して正比例して吸気振分け弁開度φを増加させるようにしてもよい。
【0089】
燃焼室40の外周部のマスキングはせずに、低負荷運転状態から高負荷運転状態までスロットル開度θの増加に対して正比例して吸気振分け弁開度φを増加させるように制御した場合のスロットル開度θに応じて吸気振分け弁65を揺動制御する吸気振分け弁開度φの変化とタンブル比Rtの変化を、図16に示す。
【0090】
内燃機関10が低負荷運転状態のときは、スロットル弁22は小さく開いており(スロットル開度θ:小)、吸気振分け弁65は板状弁体67の先端縁が吸気通路Pの下側周面に接した低負荷位置(吸気振分け弁開度φ=0度)に位置決めされ、下側吸気通路Lpの上流側開口は吸気振分け弁65により完全に閉塞されている。
【0091】
そのため、比較的狭い上側吸気通路Upに案内されて流れる吸気が、吸気弁口42の内側縁側(シリンダ軸C側)から燃焼室40の中央部に排気側に向けて高速で吸入されることになり、強い渦流のタンブルが発生し、タンブル比Rtが上昇し、低負荷時の燃焼効率を向上させることができる。
【0092】
スロットル開度θが大きくなり、内燃機関10の負荷運転状態が高くなるに伴って、スロットル開度θに正比例して吸気振分け弁開度φを増加させると、吸気振分け弁65は下側吸気通路Lpの上流側開口を開き下側吸気通路Lpを吸気が流れ、上側吸気通路Upに振り分けられた吸気も一部形成された中間通路Mpを通って下側吸気通路Lpを流れるので、上側吸気通路Upを流れる吸気が減少することで、吸気弁口42の内側縁側から燃焼室40に入っても、弱い渦流のタンブルしか発生せず、タンブル比Rtが低下する。
【0093】
スロットル開度θがある程度以上大きくなると、吸気振分け弁開度φがインレットパイプ側仕切板61の上流端部61aと平行(吸気振分け弁開度φ=α度)となる手前から上側吸気通路Upに振り分けられる吸気の割合は変化しないので、安定した弱い渦流のタンブルが持続し、タンブル比Rtは略一定となる。
このようにして、タンブルの渦流の強さを調整して燃焼効率の最適化を図ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、10…内燃機関、11…クランクケース、12…クランク軸、13…メイン軸、14…カウンタ軸、16…シリンダブロック、16b…シリンダボア、17…シリンダヘッド、18…シリンダヘッドカバー、19…連結管、
20…インレットパイプ、21…スロットルボディ、22…スロットル弁、23…インジェクタ、24…エアクリーナ、25…ピストン、26…コンロッド、
30…動弁機構、31…カム軸、32e,32i…ロッカアームシャフト、33i…吸気ロッカアーム、33e…排気ロッカアーム、34i,34e…弁ガイド、
40…燃焼室、41…天井面、42…吸気弁口、42a…はみ出し部、43…排気弁口、44…吸気ポート、45…排気ポート、46…吸気弁、46p…かさ部、46pf…端面、46s…吸気バルブステム、47…排気弁、48…プラグ孔、
51…ドーム状凹部、52…スキッシュ、53…ガイド壁面、55…切欠き円曲面、56…ピストン切欠き面、
60…仕切板、61…インレットパイプ側仕切板、62…吸気ポート側仕切板、
65…吸気振分け弁、Cv…回動中心線、65d…切欠凹部、66…回動軸、67…板状弁体、67a…基端縁、68…ネジ、
70…ECU、71…吸気制御手段、72…モータ駆動機構、
80…吸気振分け弁、81…回動軸、81a,81b…切欠凹部、81s…スリット、82…板状弁体、82、83…チューブラリベット、
P…吸気通路、Cp…通路中心線、Up…上側吸気通路、Lp…下側吸気通路、Mp…中間通路。
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