特許第6000791号(P6000791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000002
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000003
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000004
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000005
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000006
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000007
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000008
  • 特許6000791-製氷機の製氷機構 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000791
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】製氷機の製氷機構
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/14 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   F25C1/14 301Z
   F25C1/14 301L
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-222476(P2012-222476)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-74547(P2014-74547A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀行
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 正行
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−202171(JP,A)
【文献】 特開平06−117740(JP,A)
【文献】 特開2004−272587(JP,A)
【文献】 特開2004−003534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスからなる冷媒が使用される冷凍機構(23)の蒸発器(35)が配設された氷生成部(21)を備える製氷機の製氷機構において、
不燃性の材料から形成され、少なくとも前記氷生成部(21)の氷生成領域(21A)を収容した状態で該氷生成部(21)に取り付けられたケース体(24)と、
フロンを含有しない発泡剤を使用して発泡成形された発泡体からなり、前記ケース体(24)内に収容されて前記氷生成部(21)の氷生成領域(21A)を被覆する断熱部材(25)とを備えた
ことを特徴とする製氷機の製氷機構。
【請求項2】
前記ケース体(24)の上部を構成するケース部材(70)は、上方から落下した液体を受け止め得ると共に、受け止めた該液体をケース体(24)の外へ排出させる排水部(73)を備える請求項1の製氷機の製氷機構。
【請求項3】
前記断熱部材(25)は、前記ケース体(24)の空間(S)内に発泡原液と共に注入した前記発泡剤が発泡することで、該空間(S)に充満した状態に形成されている請求項1または2記載の製氷機の製氷機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可燃性ガスからなる冷媒が使用される冷凍機構を備える製氷機の製氷機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、製氷機構100を備えた従来のオーガ式製氷機M1の概略構成図である。このオーガ式製氷機M1は、氷生成部101、駆動機構102および冷凍機構103からなる製氷機構100と、該製氷機構100と連結パイプ110を介して連結され、該氷生成部101に供給する製氷水を貯留するリザーバタンク104とを備えている。氷生成部101は、図8に示すように、円筒体状のシリンダ106と、冷凍機構103を構成する蒸発器であってシリンダ106の外周に螺旋状に配設された冷却パイプ(図示せず)とからなる冷凍ケーシング105を備えると共に、該シリンダ106内に駆動機構102により回転可能に配設されたオーガスクリュー107を備えている。また、氷生成部101は、冷凍ケーシング105の外側に、冷却パイプを被覆した状態で断熱部材109が配設され、シリンダ106が冷却した状態に保温されるようになっている。なお、氷生成部101は、断熱部材109に巻き掛けた取付バンド111を、リザーバタンク104が設置されたタンク固定ブラケット112に固定することで、該タンク固定ブラケット112に支持される。
【0003】
前記オーガ式製氷機M1は、リザーバタンク104に供給した製氷水を連結パイプ110を介して製氷機構100の冷凍ケーシング105内に給水したもとで、冷凍機構103の運転により冷媒を冷却パイプ内に通過させてシリンダ106を冷却することで、該シリンダ106の内周面である製氷面に氷が生成される。そして、駆動機構102によりオーガスクリュー107を定速回転させることで、シリンダ106の製氷面に生成された氷が、オーガスクリュー107の切削刃で削り取られると共に上方へ搬送されるようになっている。このような製氷機は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−332649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図7に示した従来のオーガ式製氷機M1における製氷機構100は、氷生成部101を構成する冷凍ケーシング105に配設される断熱部材109として、代替フロンであるヒドロフロオロカーボン(HFC−245fa)を発泡剤として使用した発泡原料から発泡成形された発泡体が採用されている。このため、断熱部材109の成形に際して、地球温暖化等の環境負荷の低減に対する課題が依然として解決されていなかった。また断熱部材109は、外面にスキン層が形成された発泡体が使用されているものの、製氷機本体内に露出した状態で配設されているため、周囲の温度変化等によりスキン層が劣化し易いと共に、他部材との接触により該スキン層が傷付くおそれがある。すなわち、断熱部材109を構成する発泡体のスキン層が劣化したり該スキン層が傷付くと、亀裂が生じて内部の発泡層が大気に露出してしまうから、該発泡層内に水分が染み込み易い状態となり、発泡層に水分が染み込むと当該断熱部材109の断熱性能が低下する問題が発生し、製氷効率が低下するおそれもある。
【0006】
そこで本発明では、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、断熱性能の低下を防止し得ると共に環境負荷の低減を図った製氷機の製氷機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し、所期の目的を好適に達成するため、本願の請求項1に係る発明の自動製氷機の製氷機構は、
可燃性ガスからなる冷媒が使用される冷凍機構の蒸発器が配設された氷生成部を備える製氷機の製氷機構において、
不燃性の材料から形成され、少なくとも前記氷生成部の氷生成領域を収容した状態で該氷生成部に取り付けられたケース体と、
フロンを含有しない発泡剤を使用して発泡成形された発泡体からなり、前記ケース体内に収容されて前記氷生成部の氷生成領域を被覆する断熱部材とを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、氷生成部を被覆する断熱部材がケース体に被覆されて外部へ露出していないので、該断熱部材の劣化を抑制し得ると共に、他部材との接触により該断熱部材の外面が傷付くことも防止され、該断熱部材に水等の液体が染み込むことによる断熱性能の低下を防止することができる。また断熱部材が、フロンを含有しない発泡剤を使用した発泡原液を発泡反応させて形成された発泡体から構成されるから、該断熱部材を形成する際の環境負荷の低減を図ることができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、
前記ケース体の上部を構成するケース部材は、上方から落下した液体を受け止め得ると共に、受け止めた該液体をケース体の外へ排出させる排水部を備えることを要旨とする。
請求項2に係るによれば、ケース体の上部に滴下した液体をケース部材で受け止めて該ケース体の外へ排出し得るので、液体がケース体の上部に溜まらないと共に、該液体がケース体内に侵入して断熱部材に染み込むことを防止し得る。
【0010】
請求項3に係る発明では、
前記断熱部材は、前記ケース体の空間内に発泡原液と共に注入した前記発泡剤が発泡することで、該空間に充満した状態に形成されていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、断熱部材を予め整形する工程および該断熱部材を氷生成部に装着する作業工程を省略し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る製氷機の製氷機構によれば、断熱性能の低下を防止し得ると共に、環境負荷の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図3のI−I線断面図である。
図2図3のII−II線断面図である。
図3】実施例のオーガ式製氷機における製氷機構の氷生成部を、右後方から見た斜視図である。
図4】氷生成部の冷凍シリンダおよび該冷凍シリンダに取り付けられるカバー部材を分解して示す斜視図である。
図5】実施例のオーガ式製氷機の製氷機本体に配設された製氷機構およびリザーバタンクを示す正面図である。
図6】氷生成部に取り付けられたケース体を、リザーバタンクが配設されたタンク固定ブラケットに固定する構成を示す斜視図である。
図7】従来のオーガ式製氷機の製氷機本体内を示す正面図である。
図8】従来のオーガ式製氷機における氷生成部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る製氷機の製氷機構につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、製氷機として、オーガ式製氷機を例示する。また実施例では、図5の左右方向を製氷機の「左右方向」、図5の紙面と直交する方向を製氷機の「前後方向」、図5の上下方向を製氷機の「上下方向」と指称する。
【実施例】
【0014】
図5は、実施例のオーガ式製氷機Mの概略構成図である。実施例のオーガ式製氷機Mは、製氷機本体10の内部に、製氷機構20と、該製氷機構20に製氷水を給水するリザーバタンク(製氷水タンク)80とを備えている。製氷機構20は、氷を生成する氷生成部21と、氷生成部21に配設されたオーガスクリュー31(図2参照)を定速回転させる駆動機構22と、氷生成部21に配設されたシリンダ33(図1図2参照)を冷却する冷凍機構23とを備えている。また製氷機構20は、氷生成部21の外側に取り付けられたケース体24を備えると共に、該ケース体24内に配設されて該氷生成部21の氷生成領域21Aを被覆する断熱部材25を備えている。リザーバタンク80は、製氷水の流通が可能な連結パイプ81を介して氷生成部21の下部に接続されており、該リザーバタンク80に供給された製氷水が連結パイプ81を介して氷生成部21内へ給水されるよう構成されている。
【0015】
前記氷生成部21は、図2および図4に示すように、上下方向に延在する円筒状の冷凍ケーシング30と、該冷凍ケーシング30の内側に同心的に配設されたオーガスクリュー31とを備えている。冷凍ケーシング30は、ハウジング32(図5参照)の上部に立設され、円筒形状をなして内壁面が製氷面34とされたシリンダ33と、冷凍機構23を構成する蒸発器であって、該シリンダ33の外周面に接触した状態で螺旋状に巻回固定された冷却パイプ35とを備えている。シリンダ33は、耐摩耗性および防錆性等に優れると共に熱伝導率が高い素材であるステンレス等から形成されている。従って冷凍ケーシング30は、冷凍機構23の運転により冷やされた冷却パイプ35によりシリンダ33が冷却され、該シリンダ33の製氷面34において製氷水を氷結させ得るようになっている。
【0016】
前記冷凍ケーシング30には、図1および図4に示すように、シリンダ33における冷却パイプ35の下側に隣接した部分に、該シリンダ33の周方向へ延在するリング状の第1位置決め部材36が固定されると共に、シリンダ33における冷却パイプ35の上側に隣接した部分に、該シリンダ33の周方向へ延在するリング状の第2位置決め部材37が固定されている。第1位置決め部材36は、ケース体24における左右の下壁部53,63に対して上方が当接して、該ケース体24がシリンダ33に対して上方へ移動するのを規制し、第2位置決め部材37は、ケース体24における上壁部71に対して下方から当接して、該ケース体24がシリンダ33に対して下方へ移動するのを規制するようになっている。すなわち、第1位置決め部材36の下面と第2位置決め部材37の上面との上下方向での間隔が、ケース体24における下壁部53,63の上面と上壁部71の下面との上下方向での間隔と同じに設定されており、氷生成部21に取り付けられたケース体24は、シリンダ33に対して上下方向へ移動不能に構成されている。
【0017】
前記オーガスクリュー31は、図2および図3に示すように、シリンダ33の内径より小径に形成され、該シリンダ33内に上下に軸心が延在するよう配設された回転軸40と、該回転軸40の外周面に径方向へ延出すると共に周方向へ螺旋状に延在する切削刃41とを備えている。回転軸40は、その下端が駆動機構22に連結支持されると共に、その上端が冷凍ケーシング30に配設した固定刃(図示せず)に回転可能に支持されている。また、オーガスクリュー31の上部にはカッター(図示せず)が配設されている。従って、シリンダ33の製氷面34に生成された氷は、駆動機構22の駆動により回転するオーガスクリュー31の切削刃41により、該製氷面34から削り取られた後に該切削刃41に押されながら上方へ移動し、カッターおよび固定刃により適宜切断された後に図示省略した貯氷部内へ搬送される。
【0018】
前記駆動機構22は、図5に示すようにベースフレーム11に設置され、オーガスクリュー31の回転軸40の下端に連結された減速機42と、該減速機42に連係された駆動手段としての駆動モータ43とを備えている。従って、駆動モータ43を駆動させることで、減速機42を介してオーガスクリュー31を所定の方向へ定速回転させる。
【0019】
前記冷凍機構23は、図5に示すように、圧縮機45と、該圧縮機45の冷媒出口側に冷媒パイプ47を介して冷媒入口側が連結された凝縮器46と、該凝縮器46の冷媒出口側に冷媒パイプ47を介して冷媒入口側が連結された膨張弁(図示せず)と、該膨張弁の冷媒出口側に冷媒パイプ47を介して冷媒入口側が連結されると共に冷媒出口側が圧縮機45の冷媒入口側に冷媒パイプ47を介して連結され、シリンダ33に巻回された前記冷却パイプ35とにより閉回路に構成されている。そして、冷凍機構23内には、可燃性ガスからなる冷媒が封入されている。このような冷凍機構23は、製氷機構20の製氷運転に際し、圧縮機45で冷媒を高圧の気体とし、凝縮器46で該冷媒を冷却して高圧の液体とし、膨張弁で該冷媒を断熱膨張した液体とし、冷却パイプ35内で該冷媒を気化させて気化熱により該冷却パイプ35を冷却する。ここで、冷媒として使用される可燃性ガスは、HC(ハイドロカーボン)冷媒であって、例えばプロパン(R290)やイソブタン(R600a)等である。なお、図2図4に示すように、冷却パイプ35における各冷媒パイプ47,47との連結部には、シーリング部材48,48が各々配設されており、ケース体24の第2ケース部材60に形成された第1通孔67A,67Bに嵌合するようになっている。
【0020】
前記ケース体24は、図1図4に示すように、第1〜第3のケース部材50,60,70から構成されており、第1ケース部材50と第2ケース部材60とを組み付けると共に、該第1ケース部材50および第2ケース部材60に第3ケース部材70を組み付けることで中空の箱体に構成される。実施例のケース体24は、第1〜第3のケース部材50,60,70を互いに組み付けることで、矩形状の箱体に構成される。また、第1〜第3の各ケース部材50,60,70は、不燃性の材料から形成されている。なお実施例では、不燃性の材料としてステンレス製の板材が使用され、第1〜第3の各ケース部材50,60,70は、該板材を折曲げ加工して形成されたものである。
【0021】
前記第1ケース部材50は、図2および図4に示すように、ケース体24の前壁を構成する前壁部51と、ケース体24の左壁を構成する左壁部52と、ケース体24の底壁における左半分を構成する左下壁部53とが一体に形成された部材である。前壁部51の上端には、左右に延在すると共に前方へ延出する前取付片54が設けられ、左壁部52の上端には、前後に延在すると共に左方へ延出する左取付片55が設けられている。左壁部52の後端には、上下に延在すると共に右方へ延出した後壁取付片56が設けられている。また、左壁部52には、発泡剤をケース体24内に注入するための注入口57が開口形成されている。そして、左下壁部53の右端には、シリンダ33の外周面に合わせた半円状の第1凹部58が、右方へ開口した状態に形成されている。
【0022】
前記第1ケース部材50は、図4に示すように、後壁取付片56に、リベット85が挿通される複数(実施例では4個)の第1係止孔59Aが、上下に所要間隔毎に離間して開口形成されている。また、第1ケース部材50の前壁部51における右端近傍に、リベット85が挿通される複数(実施例では4個)の第2係止孔59Bが、上下に所要間隔毎に離間して開口形成されると共に、左下壁部53の右端近傍に、リベット85が挿通される複数(実施例では2個)の第3係止孔59Cが開口形成されている。
【0023】
前記第2ケース部材60は、図2および図4に示すように、ケース体24の右壁を構成する右壁部61と、ケース体24の後壁を構成する後壁部62と、ケース体24の底壁における右半分を構成する右下壁部63とが一体に形成された部材である。右壁部61の上端には、前後に延在すると共に左方へ延出する右取付片64が設けられ、後壁部62の上端には、左右に延在すると共に後方へ延出する後取付片65が設けられている。右壁部61の前端には、上下に延在すると共に左方へ延出した前壁取付片66が設けられている。また、右壁部61には、冷却パイプ35が各々挿通する第1通孔67Aおよび第2通孔67Bが開口形成されている。そして、右下壁部63の右端には、シリンダ33の外周面に合わせた半円状の第2凹部68が、左方へ開口した状態に形成されている。更に、右下壁部63の右端には、第2凹部68を挟んだ前側および後側に、左方へ延出した底壁取付片63A,63Aが設けられている。
【0024】
前記第2ケース部材60は、図4に示すように、前壁取付片66に、リベット85が挿通される複数(実施例では4個)の第4係止孔69Aが、上下に所要間隔毎に離間して開口形成されている。また、第2ケース部材60の後壁部62における左端近傍に、リベット85が挿通される複数(実施例では4個)の第5係止孔69Bが、上下に所要間隔毎に離間して開口形成される共に、底壁取付片63A,63Aに、リベット85が挿通される複数(実施例では2個)の第6係止孔69Cが開口形成されている。
【0025】
前記第1ケース部材50と第2ケース部材60とは、図4に示すように、リベットをかしめることにより互いに固定されるようになっている。すなわち、第1ケース部材50の後壁取付片56の後面に対して第2ケース部材60の後壁部62の左端部を位置決めすると、該第1ケース部材50の各第1係止孔59Aと該第2ケース部材60の各第5係止孔69Bとが前後に整合するので、第5係止孔69Bから第1係止孔59Aに挿入させたリベット85をかしめることで、第1ケース部材50の後壁取付片56と第2ケース部材60の後壁部62とが互いに密着した状態で固定される。また、第2ケース部材60の前壁取付片66の前面に対して第1ケース部材50の前壁部51の右端部を位置決めすると、該第2ケース部材60の各第4係止孔69Aと該第1ケース部材50の各第2係止孔59Bとが前後に整合するので、第2係止孔59Bから第4係止孔69Aに挿入させたリベット85をかしめることで、第2ケース部材60の前壁取付片66と第1ケース部材50の前壁部51とが互いに密着した状態で固定される。更に、第1ケース部材50の左下壁部53の下面に対して第2ケース部材60の底壁取付片63A,63Aを位置決めすると、該第1ケース部材50の各第3係止孔59C,59Cと該第2ケース部材60の各第6係止孔69C,69Cとが上下に整合するので、第6係止孔69Cから第3係止孔59Cに挿通させたリベット85をかしめることで、第2ケース部材60の底壁取付片63A,63Aと第1ケース部材50の左下壁部53とが互いに密着した状態で固定される。
【0026】
前記第2ケース部材60の底壁取付片63A,63Aと第1ケース部材50の左下壁部53とが互いに密着した状態で固定されることで、第2ケース部材60の右下壁部63の左端と第1ケース部材50の左下壁部53の右端とが当接した状態となると共に、左下壁部53の第1凹部58および右下壁部63の第2凹部68により、冷凍ケーシング30のシリンダ33の挿通が許容される円形の下開口部26が形成される。下開口部26の内径は、シリンダ33の外径と略同じく設定されると共に、該シリンダ33に配設された第1位置決め部材36の外径より小さく設定されている(図1参照)。
【0027】
前記第3ケース部材70は、図1図3および図4に示すように、矩形に形成された上壁部71と、該上壁部71の外周端から上方へ延出した外周壁部72とを備えている。第3ケース部材70の左右幅は、第1ケース部材50に設けられた左取付片55の左端と第2ケース部材60に設けられた右取付片64の右端との左右幅と同一または略同じに設定されている。また、第3ケース部材70の前後幅は、第1ケース部材50に設けられた前取付片54の前端と第2ケース部材60に設けられた後取付片65の後端との前後幅より大きく設定されている。そして、第3ケース部材70は、図1に示すように、該第3ケース部材70の前端を第1ケース部材50の前取付片54の前端に整合させ、第2ケース部材60の後取付片65から後方へ延出した状態で、第1ケース部材50および第2ケース部材60の上部に固定されるようになっている。なお、第3ケース部材70は、後述するように、断熱部材25をケース体24内で発泡成形する際に所定の治具で第1ケース部材50および第2ケース部材60に固定しておくことで、発泡体の接着作用により該第1ケース部材50および第2ケース部材60に接着固定される。
【0028】
前記第3ケース部材70の上壁部71には、図1および図4に示すように、冷凍ケーシング30のシリンダ33が挿通可能な上開口部27が形成されている。上開口部27の内径は、シリンダ33の外径と略同じく設定されると共に、該シリンダ33に配設された第2位置決め部材37の外径より小さく設定されている。また、上壁部71の後部左側には、下方へ延出した排水パイプ(排水部)73が配設され、第3ケース部材70の上壁部71に落下した液体(水等)を該排水パイプ73を介して排出し得るようになっており、該第3ケース部材70はドレンパンとして機能するようになっている。なお、上壁部71は、冷凍ケーシング30にケース体24を取り付けた状態において排水パイプ73に向けて適宜下方傾斜するよう設定すれば、上壁部71の上面で受け止めた液体が排水パイプ73に流動するので排水効率を高めることができる。
【0029】
ステンレス製の板材から形成された前記第1〜第3の各ケース部材50,60,70を複数のリベット85および発泡体の接着作用により組み付けて形成されたケース体24は、該ケース体24自体の剛性が高められており、外力が付与されても変形が起こり難くなっている。またケース体24は、周囲の温度変化による熱変形も起こり難くなっている。更にケース体24は、ステンレス製の板材が不燃性の部材であるから、引火して焼損することもない。
【0030】
前記断熱部材25は、冷凍ケーシング30にケース体24を取り付けたもとで、該ケース体24内に画成された空間S内で、発泡剤を含有した発泡原料を発泡反応させることで発泡成形された発泡体である。すなわち、第1ケース部材50に設けられた注入口57を介して、ケース体24の空間S内に所定量の発泡原料を注入した後、該注入口57を蓋部材57Aで覆蓋したもとで所定のキュア時間が経過するまで待機すると、発泡反応により膨張した発泡原料が該空間Sの全体に充満した状態で硬化し、これにより形成された発泡体が断熱部材25となる。従って断熱部材25は、冷凍ケーシング30におけるシリンダ33の外周面および冷却パイプ35の外面や、ケース体24の内壁面に密着した状態となり、氷生成部21の氷生成領域21Aを適切に被覆した状態で配設される。
【0031】
前記断熱部材25を発泡成形する際に使用される発泡剤は、環境負荷が高いフロンが含有されない所謂ノンフロン発泡剤であり、代替フロンに比べて環境負荷が大幅に低減されたものである。ここで、ノンフロン発泡剤としては、例えばシクロペンタン(cyclopentane)が使用される。このシクロペンタンは、オゾン層を破壊せず、地球温暖化に対する影響が少ない特性を有している。そして、シクロペンタンを発泡剤として使用して発泡成形された断熱部材25は、内部に多数の気泡が形成されて良好な断熱性能を有している。
【0032】
実施例のオーガ式製氷機Mは、図5および図6に示すように、氷生成部21に取り付けられたケース体24を、リザーバタンク80が配設されたタンク固定ブラケット(タンク支持部)15に固定することで、該氷生成部21を安定的に固定保持するよう構成されている。すなわち、ケース体24における第1ケース部材50の左壁部52の外面において、タンク固定ブラケット15の右端に相対する位置に、該タンク固定ブラケット15に連結される連結ブラケット(取付部)86が配設されている。そして、連結ブラケット86を介してケース体24がタンク固定ブラケット15に連結固定されることで、氷生成部21が該タンク固定ブラケット15に安定的に支持されると共に、該氷生成部21とリザーバタンク80との相対的な位置関係を一定に保持することが可能となっている。
【0033】
前記連結ブラケット86は、図4図6に示すように、第1ケース部材50の左壁部52に対して前後方向に延在した状態で固定される固定片87と、該固定片87の上端から左方へ延出して前後方向に延在する連結片88とから構成されている。固定片87は、複数(実施例では3個)の第1ネジ89により、第1ケース部材50の左壁部52に固定される。また連結片88には、上下に貫通する複数(実施例では3個)のネジ挿通孔90が、前後に離間して設けられている。
【0034】
前記タンク固定ブラケット15は、図5および図6に示すように、リザーバタンク80を載置した状態で設置可能な矩形板状に形成され、該固定ブラケット15の左端部15Aが製氷機本体10を構成する左フレーム12に固定され、該固定ブラケット15の前側右端が、上フレーム13に上端部が連結されて垂下した支持ステー14の下端部に連結されている。すなわち、タンク固定ブラケット15は、左右の各端部が製氷機本体10の左フレーム12および上フレーム13に支持されており、製氷水を貯留したリザーバタンク80の重量を好適に支持し得るよう構成されている。
【0035】
前記タンク固定ブラケット15の右端部側には、図5および図6に示すように、ケース体24に配設された連結ブラケット86の連結片88が固定される連結部(取付受部)16が設けられている。連結部16には、連結ブラケット86の連結片88に設けられた3個の各ネジ挿通孔90に対応するネジ締結孔17が、前後に所要間隔毎に形成されている。そして、氷生成部21に取り付けられたケース体24に配設した連結ブラケット86は、氷生成部21をハウジング32にセットすることでタンク固定ブラケット15の連結部16の下方に位置するようになり、各ネジ挿通孔90,90,90が各ネジ締結孔17,17,17に整合する。従って、ネジ挿通孔90を介してネジ締結孔17へ第2ネジ91を締結することで、氷生成部21がタンク固定ブラケット15に適切に位置決めされた状態で固定されるようになる。
【0036】
タンク固定ブラケット15の上面に設置された前記リザーバタンク80は、図5に示すように、冷凍ケーシング30の左側において、該冷凍ケーシング30の上下中央より上側に位置するように設置されている。リザーバタンク80の上部には、製氷水としての水道水が供給される水道源(図示せず)に接続された給水バルブ82が配設され、該給水バルブ82が開放制御されると、製氷水がリザーバタンク80内へ供給されるようになっている。また、冷凍ケーシング30の下部に設けられた導入パイプ33Aに接続された連結パイプ81がリザーバタンク80の底部に接続されており、該リザーバタンク80の内部と冷凍ケーシング30のシリンダ33の内部とが該連結パイプ81により空間的に連通している。従って、リザーバタンク80に供給された製氷水は、連結パイプ81を介してシリンダ33内へ流入すると共に該連結パイプ81内に充満するようになり、該シリンダ33内に流入した製氷水の水面L2とリザーバタンク80内に一時的に貯留される製氷水の水面L1との高さレベルは、製氷水の増減に際して常に一致するようになっている。
【0037】
前述のように構成された実施例のオーガ式製氷機Mは、シリンダ33の外周面に冷却パイプ35を巻回した状態で半田付けして固定することで、冷凍ケーシング30が組み立てられる。また、第1位置決め部材36および第2位置決め部材37を、所定の間隔でシリンダ33の外面に取り付ける。更に、冷却パイプ35の両端に、シーリング部材48,48を取り付けると共に、該冷却パイプ35の両端に冷媒パイプ47,47を連結する。
【0038】
次に、図4に示すように、個別に形成された第1ケース部材50および第2ケース部材60を、冷凍ケーシング30を挟み込みながら複数のリベット85により互いに組み付ける。この際に、冷却パイプ35に連結された各冷媒パイプ47,47を、第2ケース部材60に形成された第1通孔67Aおよび第2通孔67Bに挿通させることで、該冷却パイプ35に配設された各シーリング部材48,48が第1通孔67Aおよび第2通孔67Bに位置するようになり、両通孔67A,67Bと冷却パイプ35との隙間がシールされる。また、第1ケース部材50の第1凹部58および第2ケース部材60の第2凹部68を第1位置決め部材36の真下においてシリンダ33に当接させる。
【0039】
次に、図4に示すように、第3ケース部材70を、上壁部71に設けられた上開口部27にシリンダ33の上部を挿通させることで、第1ケース部材50および第2ケース部材60に取り付ける。すなわち、所定の治具を使用して、第1ケース部材50の前取付片54および左取付片44、第2ケース部材60の右取付片64および後取付片65に、上壁部71の外周部分が密着されるように第3ケース部材70を固定する。このとき、第3ケース部材70の上壁部71が、第2位置決め部材37の上面に当接する。
【0040】
前述したように、第1〜第3の各ケース部材50,60,70を組み付けながら冷凍ケーシング30のシリンダ33に取り付けることにより、ケース体24の左右の下壁部53,63が第1位置決め部材36の下面に当接すると共に、上壁部71が第2位置決め部材37の上面に当接するようになり、当該ケース体24は、氷生成部21に対して適正な位置に取り付けられる。また、左右の下壁部53,63および上壁部71が、第1位置決め部材36および第2位置決め部材37を上下方向から挟み込んだ状態となるから、ケース体24は、シリンダ33に対して上下方向へがたつくことなく取り付けられる。
【0041】
次に、ケース体24の第1ケース部材50に形成された注入口57から、ノンフロン発泡剤を使用した所定量の発泡原料を該ケース体24内に注入し、注入完了後に該注入口57に蓋部材57Aを取り付ける。ケース体24の空間S内に注入した発泡原料は、注入直後から発泡反応を開始して該空間S内に徐々に充満するようになり、所定のキュアタイムが経過すると該空間Sの全体に発泡体からなる断熱部材25が形成される。なお、第3ケース部材70の上壁部71が、発泡体の接着作用により第1ケース部材50の前取付片54と左取付片44および第2ケース部材60の右取付片64と後取付片65に接着されたら、第3ケース部材70を第1ケース部材50および第2ケース部材60に固定していた治具を取り外す。
【0042】
前述のように形成された製氷機構20の氷生成部21は、ケース体24に連結ブラケット86を取り付けた後に、駆動機構22の減速機42に連結されたハウジング32の上部に配設する。この際に、連結ブラケット86が、製氷機本体10に固定されたタンク固定ブラケット15の連結部16の下方に位置するから、第2ネジ91により該連結ブラケット86の連結片88を該タンク固定ブラケット15に固定することで、氷生成部21が該タンク固定ブラケット15に固定支持される。
【0043】
従って、前述のように構成された実施例のオーガ式製氷機Mによれば、断熱部材25がケース体24に被覆されて外部へ露出していないので、該断熱部材25の劣化を抑制し得ると共に、他部材との接触により該断熱部材25の外面が傷付くことも防止される。また、ケース体24は、上部に滴下した液体を第3ケース部材70で受け止めて排出し得るようになっていると共に、第1〜第3の各シーリング部材36,37,48により水等の液体が当該ケース体24内に侵入し難い構造となっているから、該断熱部材25の発泡層内に水等の液体が染み込むことが防止される。従って、発泡層に水分が染み込むことにより断熱部材25の断熱性能が低下することが防止され、該断熱部材25の断熱性能を長期間に亘って維持することができる。
【0044】
また、氷生成部21の氷生成領域21Aを被覆する断熱部材25が、フロンを含有しないノンフロン発泡剤を使用した発泡原液を発泡反応させて形成された発泡体から構成されているから、該断熱部材25を成形する際に環境負荷を低減することができ、従来の塩素を含有しない代替フロンからなる発泡剤を使用した場合に比べて環境負荷を低減することができる。
【0045】
また断熱部材25は、ケース体24内において発泡成形されるから、断熱部材25を予め所要の形状に整形する作業工程や、該断熱部材25を冷凍ケーシング30の外側に取り付ける作業工程が省略される。これにより、製氷機構20の組立て作業の効率化が図られ、製造コストの低減も図り得る。
【0046】
更に、実施例のオーガ式製氷機Mによれば、氷生成部21の冷凍ケーシング30におけるシリンダ33に対し、適切な位置において上下方向に移動不能に取り付けられたケース体24に、上下方向の位置決めがなされた状態で配設された連結ブラケット86を、製氷機本体10に固定されたタンク固定ブラケット15に固定するようにしたので、タンク固定ブラケット15に取り付けられたリザーバタンク80と氷生成部21の冷凍ケーシング30との相対的な配設位置を一定に維持できる。特に、リザーバタンク80と冷凍ケーシンク30の上下方向の相対的な位置を一定に維持できるから、リザーバタンク80に供給された製氷水の水面L1を確認することで、冷凍ケーシング30のシリンダ33内に供給された製氷水の水面L2の位置を確実に把握することが可能となり、常に適切な量の製氷水を冷凍ケーシング30へ供給することができる。また、各オーガ式製氷機M毎に、リザーバタンク80と氷生成部21との相対的な配設位置にバラツキが発生し難くなり、よって氷の生成能力や、搬送される氷における含水率のバラツキが発生し難くなる。
【0047】
(変更例)
本発明に係る製氷機の製氷機構は、実施例に例示の形態に限らず種々の変更が可能である。
(1)ケース体24は、実施例で例示した矩形箱体に構成されたものに限らず、円筒箱体や、三角形または五角形以上の多角形箱体に構成したものであってもよい。
(2)ケース体24における第1〜第3の各ケース部材50,60,70を形成する不燃性の材料としては、実施例に例示したステンレスに限らず、これ以外の不燃性の金属や合成樹脂であってもよい。なお、合成樹脂類は、JIS K7201『酸素指数法による高分子材料の燃焼試験法』により算出される酸素指数により、酸素指数が26以上のものが不燃性を有するものとなるから、第1〜第3の各ケース部材50,60,70を合成樹脂製とする場合には、酸素指数が26以上の合成樹脂で形成される。
(3)ケース体24は、実施例では、第1ケース部材50および第2ケース部材60を複数のリベット85により連結する形態を例示したが、両ケース部材50,60は、スポット溶接や、はんだ付けまたは蝋付けにより連結するようにしてもよい。また、第3ケース部材70と第1ケース部材50および第2ケース部材60とは、リベット85により連結するようにしたり、溶接や、はんだ付けまたは蝋付けにより連結するようにしてもよい。
(4)断熱部材25を構成する発泡体を発泡成形する際に使用される発泡剤は、実施例で例示したシクロペンタンに限らず、フロンを含有しない様々なノンフロン発泡剤を採用可能である。
(5)断熱部材25は、ケース体24内で発泡成形したものに限らず、予め所要形状に発泡成形したものを冷凍ケーシング30の外側に配設するようにしてもよい。また、断熱部材25は、氷生成部21の氷生成領域21Aを被覆する形状、サイズであればよく、ケース体24の空間Sの全体に充満する形状でなくてもよい。
(6)連結ブラケット86は、ケース体24に一体に形成されたものであってもよい。また、連結ブラケット86は、実施例で例示した形状に限定されず、氷生成部21をタンク固定ブラケット15に適切に固定し得るものであれば、様々な形状、形態のものが実施可能である。
(7)冷媒として使用される可燃性ガスは、実施例で例示したものに限らず、HF01234yfを採用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
21 氷生成部,21A 氷生成領域,23 冷凍機構,24 ケース体,25 断熱部材
35 冷却パイプ(蒸発器),70 第3ケース部材(ケース部材)
73 排水パイプ(排水部),S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8