(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0010】
本実施形態のカメラシステム1は、
図1に示すように、カメラ本体2及び交換レンズとしてのレンズ鏡筒10を有して構成されている。レンズ鏡筒10は、被写体像を結像するための光学系部材11を保持している。本実施形態では一例として、カメラシステム1は、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが離合可能な形態を有する。なお、カメラシステム1
は、カメラ本体とレンズ鏡筒とが一体となった形態を有するものであってもよい。
【0011】
また、本実施形態では一例として、カメラシステム1は、カメラ本体2に撮像素子9が配設されており、いわゆる電子カメラ、デジタルカメラ等と称される、被写体像を電子的に撮像し記録する構成を有している。撮像素子9は、受光面(画素領域)に入射される光に応じた電気信号を所定のタイミングで出力するものであり、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ等の形態を有する。
【0012】
カメラシステム1は、自動合焦動作(オートフォーカス動作)が可能に構成されており、カメラ本体2に、自動合焦動作に用いられる自動合焦用センサ部が配設されている。本実施形態では一例として、カメラシステム1は、撮像素子9から出力される信号に基づいて被写体像のコントラスト値を検出し、該コントラスト値が最も高くなるように光学系部材11の焦点調節を行う、いわゆるコントラスト検出方式の自動合焦動作を行うように構成されている。すなわち、本実施形態のカメラシステム1では、撮像素子9が自動合焦用センサ部である。
【0013】
なお、カメラシステム1は、いわゆる位相差検出方式の自動合焦動作を行う構成であってもよい。この場合には、カメラ本体2に配設される被写体像の位相差を検出するセンサが自動合焦用センサ部となる。また、自動合焦用センサ部は、他の形式の測距センサ等であってもよい。
【0014】
カメラ本体2の上面部には、使用者が撮像動作の指示を入力するためのレリーズスイッチ3、及び使用者がカメラ本体2の電源オン動作及び電源オフ動作の指示を入力するための電源スイッチ4が配設されている。
【0015】
本実施形態では、レリーズスイッチ3は、押しボタン型のスイッチであって、異なる2つのストローク量(押下量)に応じてオン状態となる、2つの第1レリーズスイッチ3a及び第2レリーズスイッチ3bを具備して構成されている。
【0016】
レリーズスイッチ3を全ストローク量の途中まで押下する、いわゆる半押し操作を行うと第1レリーズスイッチ3aがオン状態となり、レリーズスイッチ3をこの半押し操作よりもさらに押下する、いわゆる全押し操作を行うと第2レリーズスイッチ3bがオン状態となる。カメラシステム1は、第2レリーズスイッチ3bがオン状態となった場合に、撮像動作を実行し、画像を記憶する。
【0017】
なお、レリーズスイッチ3は、第1レリーズスイッチ3a及び第2レリーズスイッチ3bが離れた位置に配設される形態であってもよい。また、レリーズスイッチ3は、押しボタン型のスイッチの形態に限られるものではなく、タッチセンサ等の他の形態のスイッチによって構成される形態であってもよい。
【0018】
図示しないが、カメラ本体2には、カメラシステム1の合焦動作のモードの切り替えの指示を入力するための合焦モード切替操作部5が配設されている。使用者が合焦モード切替操作部5を操作することによって、カメラシステム1の合焦動作モードは、自動合焦動作を行う自動合焦動作モードと、手動合焦動作を行う手動合焦動作モードのいずれかが選択される。自動合焦動作モード及び手動合焦動作モード時におけるカメラシステム1の動作は後述するものとする。
【0019】
なお、合焦モード切替操作部5は、ボタンスイッチの形態に限らず、タッチセンサやダイヤルスイッチ等であってもよい。また、カメラ本体2が画像表示装置を備え、該画像表示装置に表示されるメニューをボタンスイッチやタッチセンサを介して選択することによって、合焦動作モードを切り替える形態であってもよい。また、合焦モード切替操作部5は、レンズ鏡筒10に配設される形態であってもよい。
【0020】
また、図示しないが、カメラ本体2には、カメラシステム1に電力を供給するための一次電池または二次電池を収容する電池収容部、及び画像を記憶するためのフラッシュメモリを収容する記憶媒体収容部が設けられている。
【0021】
本実施形態では、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とは、一般にバヨネット式マウントと称される係合機構によって離合可能である。なお、カメラシステム1において、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とを離合可能とする構成は本実施形態に限られるものではなく、例えばネジ機構を用いる一般にスクリュー式マウントと称される構成であってもよい。また、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とは、嵌合や磁石等を用いた機構によって離合可能とされる構成であってもよい。
【0022】
レンズ鏡筒10は、基台部12、固定枠(第1の枠)14、合焦用枠13、駆動部15、指標表示枠16、表示部材(第2の枠、距離表示環、距離表示手段)18、及び回転操作部材(操作部材、回転操作環、回転操作手段、回転操作部)17を有して構成されている。なお、表示部材18は、主として円筒状の第1の円筒部材からなり、さらにその外周に嵌合される、薄く、軸方向に第1の円筒状部材よりも短い第2の円筒状部材が固定されて構成されている。そして第2の円筒状部材の外周には、後述する距離目盛18aが表示されている。以下では、表示部材18は、これら第1の円筒部材と第2の円筒部材を一体のものとして説明する。
【0023】
図2に示すように、基台部12は、カメラ本体2に係合するバヨネット部12aを有する。基台部12は、バヨネット部(バヨネット爪)12aがカメラ本体2に係合することによって、カメラ本体2に対して固定される。
【0024】
図4に示すように、レンズ鏡筒10は、この基台部12に対して、撮像光学系としての複数のレンズ等からなる光学系部材11を保持する機構を有する。なお、レンズ鏡筒10が保持する光学系部材11の形態は、レンズの他に、絞り、プリズム、ミラー、フィルタ等を含むものであってもよい。
【0025】
光学系部材(光学系要素、撮像光学系)11は、一部又は全部が前記基台部12に対して光学系部材11の光軸O方向に相対的に移動することによって、合焦距離が変化するように構成されている。ここで、合焦距離の変化とは、合焦させようとする被写体までの距離を変化させることを意味する。またこれは、光学系部材11の焦点を合わせる焦点位置を変化させることを意味する。以下では、光学系部材11のうち、合焦距離を変化させる場合に光軸O方向に移動する部材を、合焦用レンズ(合焦用光学要素、合焦用光学系部材)11aと称するものとする。
【0026】
具体的に、本実施形態の光学系部材11は、光軸Oに沿って配設された複数のレンズ及び絞り機構部19を有して構成されている。そして本実施形態では、光学系部材11の複数のレンズのうちの最も後方(像側)に配設されたレンズが、合焦用レンズ11aである。
【0027】
合焦用レンズ11aは、基台部12に対して相対的に光軸O方向に進退移動可能に配設された合焦用枠13によって保持されている。合焦用枠13は、駆動部15によって、光軸O方向に駆動される。
【0028】
駆動部15の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、光軸Oと略平行に配設されたスクリュー15a、スクリュー15aを回転させる駆動源(モータ)15c、及びスクリュー15aに螺合するナット15bを有して構成されている。本実施形態では、駆動源15cは、ステッピングモータである。ナット15bは、スクリュー15a周りの回転を規制されており、スクリュー15aの回転に伴い光軸Oと略平行に移動する。合焦用枠13は、ナット15bに従動するように不図示のばねによりナット15に係合、当接している。
【0029】
駆動部15は、駆動源15cによりスクリュー15aを回転させることによって、合焦用枠15を光軸O方向に駆動する。なお、駆動部15の構成は本実施形態に限られるものではなく、リニアモータ等の他の形式であってもよい。また、駆動部15は、例えば駆動源等の一部の構成部材がカメラ本体2内に配設される構成であってもよい。
【0030】
また、光学系部材11の合焦用レンズ11a以外の部材は、基台部12に対して位置が固定された第1の枠である固定枠14によって保持されている。
【0031】
なお、本実施形態のレンズ鏡筒10は、焦点距離が固定されたいわゆる単焦点レンズの形態を有していることから、合焦用レンズ11a以外の光学系部材11は固定枠14によって保持されているが、レンズ鏡筒10が、全長が伸縮可能な、いわゆる沈胴レンズ鏡筒である場合や、焦点距離を変更可能ないわゆるズームレンズ又はバリフォーカルレンズである場合には、合焦用レンズ11a以外の光学系部材11も、基台部12に対して相対的に移動する枠部材によって保持されることは言うまでもない。
【0032】
レンズ鏡筒10の外周部には、回転操作部材17、指標表示枠16及び表示部材18が配設されている。
【0033】
回転操作部材17は、レンズ鏡筒10の外周部において、光学系部材11の光軸O周りに回転可能、かつ光軸O方向に進退移動可能に配設された略円筒状の部材である。回転操作部材17は、少なくとも一部がレンズ鏡筒10の外周面上に露出しており、カメラシステム1の使用者の手指が係るように配設されている。
【0034】
具体的に本実施形態では、回転操作部材17は、
図5及び
図6の断面図、及び
図7及び
図8の斜視図に示すように、レンズ鏡筒10の外周面上に露出して、使用者の手指が係るように外周部に凹凸が設けられた略円筒状の操作部17a、及び操作部17aの内側に所定の隙間を有して配設された略円筒状の内側円筒部(係合枠)17bの2つの略円筒状の部位を有している。
【0035】
なお、図示する本実施形態では、操作部17a及び内側円筒部17bは別部材であって、例えばネジや接着剤によって固定されることによって回転操作部材17を構成しているが、操作部17a及び内側円筒部17bは、一体に形成される形態であってもよい。
【0036】
回転操作部材17は、使用者の手指によって操作部17aに加えられる力によって、光軸O周りに回転する。また、回転操作部材17は、
図2及び
図3に示すように、光軸O方向に所定の範囲で移動可能であって、外部からの力が加えられていない状態では移動範囲の両端のいずれか一方に選択的に位置するように配設されている。回転操作部材17は、使用者の手指によって操作部17aに加えられる力によって、光軸O方向の移動範囲の一端から他端へ、又は他端から一端へと往復移動可能となっている。
【0037】
以下では、回転操作部材17が選択的に位置する2つの位置のうち、光軸O方向の移動範囲の前方側(被写体側)の端部を第1の位置と称し、移動範囲の後方側(像側)の端部を第2の位置と称するものとする。
【0038】
すなわち、
図2、
図4、
図5及び
図7は、回転操作部材17が第1の位置に位置している状態を示しており、
図3、
図6及び
図8は、回転操作部材17が第2の位置に位置している状態を示している。
【0039】
図5及び
図6に示すように、回転操作部材17の内周面上には、径方向内側に突出し断面が略三角形状である凸状部17cが、周方向に全周にわたって形成されている。凸状部17cは、光軸Oに沿って前方に向かうにつれて内径が小さくなり、該三角形状の頂点に至るように形成された第1斜面部17dと、第1斜面部17dの前方側において該三角形状の頂点から光軸Oに沿って前方に向かうにつれて内径が大きくなるように形成された第2斜面部17eと、を有している。
【0040】
また、回転操作部材17の内側に配設された固定枠14には、凸状部17cに対向する箇所に貫通孔14aが穿設されている。貫通孔14a内には、ボール14bが遊嵌している。ボール14bは、固定枠14の外周面よりも外側に突出可能であって、板バネである付勢部材14cによって、固定枠14の径方向外側に向かって付勢されている。付勢部材14cは、そのバネ部分(板バネ)が固定枠14の内周面に配置されている。付勢部材14c及びボール14bは、周方向に複数箇所に配設されている。
【0041】
ボール14bは、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、凸状部17cの第1斜面部17dに当接し、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、凸状部17cの第2斜面部17eに当接する。凸状部17cが略三角形状の断面を有することから、ボール14bは、回転操作部材17の位置に関わらず、第1斜面部17d及び第2斜面部17eのいずれかに常に当接している。
【0042】
したがって、回転操作部材17が移動可能範囲の前方寄りに位置している場合には、回転操作部材17は、第1斜面部17dに当接するボール14bによって前方に向かって付勢され、第1の位置において移動可能範囲の一端に当て付き、位置決めされる。
【0043】
一方、回転操作部材17が移動可能範囲の後方寄りに位置している場合には、回転操作部材17は、第2斜面部17eに当接するボール14bによって後方に向かって付勢され、第2の位置において移動可能範囲の他端に当て付き、位置決めされる。
【0044】
したがって、本実施形態のレンズ鏡筒10では、回転操作部材17に外力が加えられていない場合には、回転操作部材17の光軸O方向の位置は、第1の位置及び第2の位置のいずれかとなる。例えば、回転操作部材17が第1の位置に位置している状態において、回転操作部材17に加えられる後方への外力が、付勢部材14c及びボール14bが発生する付勢力よりも弱い場合には、当該外力が消失すれば回転操作部材17は第1の位置に戻る。また例えば、回転操作部材17が第1の位置に位置している状態において、回転操作部材17に加えられる後方への外力が、付勢部材14c及びボール14bが発生する付勢力よりも強ければ、回転操作部材17は第2の位置へ移動する。
【0045】
また、レンズ鏡筒10には、少なくとも回転操作部材17が第1の位置に位置している場合に、回転操作部材17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出するエンコーダ部(操作部回転検出部、回転検出手段)21が配設されている。また、レンズ鏡筒10には、回転操作部材17が光軸O方向の第1の位置及び第2の位置のいずれに位置しているかを検出するため、エンコーダ部21と共に協働して操作部材位置検出部(位置検出手段)としてのエンコーダ部22が配設されている。これらエンコーダ部21と操作部材位置検出部(位置検出手段)であるエンコーダ部22とを第1のエンコーダ部21,22と以下に称する。
【0046】
第1のエンコーダ部のエンコーダ部21は、回転操作部材17に周方向に所定の間隔で設けられた複数のスリット(切り欠き)17nの通過を同一円周上に互いに離間して配置された一対の光検出器であるフォトインタラプタで検出し、該一対のフォトインタラプタの出力信号に基づいて、回転操作部材17の回転方向及び回転量を検出する。本実施形態の第1のエンコーダ部のエンコーダ部21、及び回転操作部材17に被検知部である互いに円周方向に離間して設けられた複数のスリット17nは、いわゆるインクリメンタル形式のロータリーエンコーダと同様の形態を有している。
【0047】
より具体的に本実施形態では、スリット17nは、
図7に示すように、内側円筒部17bの前方側端部に形成されている。第1のエンコーダ部のエンコーダ部21を構成する一対のフォトインタラプタは、
図5及び
図6に示すように、固定枠14に固定されている。
【0048】
スリット17nが形成された内側円筒部17bの前方側端部は、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合にのみ、一対のフォトインタラプタの検出範囲内に位置する。したがって、本実施形態の第1のエンコーダ部のエンコーダ部21は、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合にのみ、回転操作部材17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出することができる。
【0049】
操作部材位置検出部であるエンコーダ部22は、基台部12又は固定枠14に固定された光検出器であるフォトインタラプタからなる。操作部材位置検出部であるエンコーダ部22は、エンコーダ部21と同一円周上に離間して配置されている。第1のエンコーダ部(第1のエンコーダ手段)は、円周方向に光軸と直交する平面と平行に、帯状に形成された不図示のフレキシブルプリント基板に実装されている。
以下にエンコーダ部21とエンコーダ部22の配置関係を、
図14を参照しながら説明する。
第1のエンコーダ部21、22は、回転操作部材17のスリット17nを含む被検出部が受発光素子間を出入りすることにより、例えば1:1のデューティ比のパルス信号を出力するとする。
図14中のP1とP2の出力パルスのように、エンコーダ部21の一方のフォトリフレクタからパルス信号(P1)を出力するとき、他方のフォトリフレクタからは4分の1周期だけ位相をずらしてパルス信号(P2)が出力されるように、一方のフォトリフレクタに対し他方のフォトリフレクタを位置設定する。更に
図14中のP3のパルス信号がエンコーダ部22から出力するように設定位置する。すなわちP1とP2のパルス出力が共にLoのときには必ず、
図14中のS期間のように、エンコーダ部22からはHiのパルス信号が出力されるように位置設定する。
このように3個のフォトリフレクタを位置設定することにより、回転操作部材17のスリット17nを含む被検出部が第1のエンコーダ部21、22に進入していれば、例えば
図14中の線分L1、L2、L3、L4で示すそれぞれの位置において第1のエンコーダ部21,22からは必ずHi信号が出力される。また、回転操作部材17のスリット17nを含む被検出部が第1のエンコーダ部21,22から退避していれば第1のエンコーダ部21,22からはLo信号しか出力されない。従って、フォトリフレクタのP1、P2、P3の信号いずれかがHi信号であれば回転操作部材17のスリット17nを含む被検出部がフォトリフレクタのP1、P2、P3のいずれかに進入している状態、すなわち回転操作部材17が第1の位置にあると判断できる。当然、フォトリフレクタのP1、P2、P3の信号いずれもLo信号であれば回転操作部材17は第2の位置にあると判断できる。
【0050】
また、回転操作部材17には、係合手段(係合部)を構成する係合凸部17gが設けられている。係合凸部17gは、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合に、後述する表示部材18と係合し、回転操作部材17と表示部材18とを一体に回転させるためのものである。
【0051】
係合凸部17gは、内側円筒部17bの外周面上において、径方向外側に突出する複数の凸部からなる。
図7及び
図8に示すように、係合凸部17gを構成する複数の凸部は、互いの間に一定の隙間を有して、周方向に等間隔に配列されている。また、複数の凸部は、径方向外側から見た場合に、後方側の一部が、後方側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字状の形状を有している。係合凸部17gと表示部材18との係合の構成については後述するものとする。
【0052】
指標表示枠16は、基台部12に対して位置が固定された、レンズ鏡筒10の外装部材の一部であり、固定枠の機能を有した枠部材(第1の枠)である。指標表示枠16は、固定枠14を介して基台部12に固定されている。指標表示枠16は、回転操作部材17が第1の位置に位置している状態において、回転操作部材17の操作部17aよりも前方側となる位置に配設されている。指標表示枠16には、光軸Oと略平行な短い直線状の指標16aが設けられている。指標16aは、後述する表示部材18に設けられた距離目盛18aを指し示すためのものである。
【0053】
また、指標表示枠16には、指標16aを挟んで略対称に周方向両側に、被写界深度目盛16bが配設されている。被写界深度目盛16bは、光学系部材11のF値(絞り値)に対応した被写界深度を表示するためのものである。そして、その被写界深度目盛16bは、同じ数値のF値を表す文字で対となって指標16aを挟むように表示されている。この対は複数の対があり、対同士は互いに異なる数値のF値を有する。尚、本実施形態の説明においては複数の数値(5.6、11、22)が表示されているが、少なくとも同じ数値からなる一対の数値のみが表示されているだけでもよい。
【0054】
第2の枠である表示部材18は、基台部12に対して光軸O周りに相対的に回転可能であって、回転操作部材17の内側に配設された略円筒状の部材である。言い換えれば、表示部材18は、指標表示枠16に対して光軸O周りに相対的に回転可能である。
【0055】
図3に示すように、表示部材18の外周面には、光学系部材11の合焦距離を表す距離目盛18aが設けられている。距離目盛18aは、光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離を示す数値が周方向に配列されている。表示部材18が指標表示枠16に対して光軸O周りに相対的に回転することによって、指標16aが指し示す距離目盛18aの数値が変化する。
【0056】
表示部材18は、不図示の機構により光軸O周りの回転範囲が一定の角度に制限されており、指標16aによって距離目盛18aが指し示される範囲内でのみ、光軸O周りに回転可能である。すなわち、距離目盛18aは、指標16aとの組み合わせによって、光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離の数値を必ず表示する。
【0057】
本実施形態では、
図2に示すように、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、表示部材18の距離目盛18aは、レンズ鏡筒10の外部から見えない状態となる。一方、
図3に示すように、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、表示部材18の距離目盛18aは、レンズ鏡筒10の外部から見える状態となる。
【0058】
具体的には、表示部材18は、回転操作部材17の操作部17aと内側円筒部17bの間に配設されている。言い換えれば、回転操作部材17の操作部17aである円筒部は、表示部材18の外周面よりもさらに径方向外側に配設されている。そして、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、操作部17aが、距離目盛18a上に進出して距離目盛18aを覆い隠す。また、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、操作部17aは距離目盛18a上から退避し、距離目盛18aが外部に露出し表示される。言い換えるならば、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合に、表示部材18が外部に露出されている状態となる。
【0059】
そして、本実施形態のレンズ鏡筒10では、表示部材18は、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合にのみ、回転操作部材17とともに光軸O周りに回転するように構成されている。また、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17は、表示部材18と独立して回転可能である。
【0060】
具体的には、表示部材18の内周部(内周面)には、係合手段を構成する1つの係合ピン18bが、径方向内側に突出するように設けられている。本実施形態では、係合ピン18bは、表示部材18と別部材であって、圧入や接着剤によって表示部材18に固定されている。なお、係合ピン18bは、表示部材18と一体に形成される形態であってもよい。
【0061】
表示部材18は、回転操作部材17の操作部17aと内側円筒部17bの間に配設されていることから、係合ピン18bは、表示部材18の内側に配設されている内側円筒部17bに向かって突出する。言い換えれば、表示部材18の係合ピン18bと、回転操作部材17の係合凸部17gは、互いに向かい合う方向に突出している。
【0062】
係合ピン18bの外径は、隣接する係合凸部17g同士の間隔よりも小さく、係合ピン18bは、隣接する係合凸部17g同士の間にすきま嵌めの状態で嵌合する形状を有している。また、係合ピン18bは、径方向内側から見た場合に前方側が略V字状となる断面形状を有している。
【0063】
図5及び
図7に示すように、係合ピン18bは、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17の係合凸部17gよりも後方側であって、回転操作部材17が光軸O周りに回転しても係合凸部17gと干渉しない位置に配設されている。
【0064】
また、
図6及び
図8に示すように、係合ピン18bは、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、係合凸部17gと同一円周方向上に位置している。言い換えれば、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、係合ピン18bは、光軸O方向について係合凸部17gと重なる位置に配設されている。すなわち、回転操作部材17が第1の位置から第2の位置に相対的に移動すると、係合ピン18bは、隣接する係合凸部17g同士の間に嵌合する。また、逆に、回転操作部材17が第2の位置から第1の位置に相対的に移動すると、係合ピン18bと係合凸部17gとの嵌合が外れる。
【0065】
以上のような構成を有する係合凸部17g及び係合ピン18bからなる係合手段によって、表示部材18は、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、回転操作部材17とともに光軸O周りに回転し、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17が光軸O周りに回転したとしても回転せずに停止したままとなる。
【0066】
なお、前述したように、係合凸部17gの複数の凸部は、径方向外側から見た場合に後方側が略V字状の形状を有しており、かつ係合ピン18bは、径方向内側から見た場合に前方側が略V字状の形状を有していることから、回転操作部材17が第1の位置から第2の位置に移動する際には、この双方に設けられた略V字状の部位同士が倣うことによって表示部材18が僅かに回転し、係合ピン18bと係合凸部17gとが滑らかに係合する。このため、回転操作部材17を光軸O方向に移動する操作に引っかかりが生じることがなく、回転操作部材17の移動を速やかに行うことができる。
【0067】
また、前述したように表示部材18の回転範囲は、距離目盛18aと指標16aとの組み合わせが光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離の数値を表示する範囲に制限されている。このため、回転操作部材17は、第2の位置に位置して表示部材18と係合している場合には、表示部材18と同一の回転範囲内でのみ回転することが可能である。すなわち、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、回転操作部材17の回転範囲に制限がかけられている。
【0068】
以上のように、回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、固定された第1の枠に対する表示部材18(第2の枠)の相対的な回転の範囲を規制する回転規制手段によって、回転操作部材17の回転の範囲も所定の範囲に規制される。
【0069】
一方、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17は表示部材18と干渉しないため、回転操作部材17の回転範囲に制限はない。つまり、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17は回転規制手段によって回転の範囲が規制されることなく、無制限に回転可能である。
【0070】
また、本実施形態のレンズ鏡筒10には、表示部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を検出する第2のエンコーダ手段である公知の技術を用いた第2のエンコーダ部(表示部材回転検出部、回転位置検出手段)23が配設されている。
【0071】
本実施形態では一例として、例えば、第2のエンコーダ部23は、いわゆるアブソリュート型のロータリーエンコーダの形態を有して構成されている。第2のエンコーダ部23は、導電体からなる所定のビット数のコードパターンと、コードパターンに摺動する導電体からなる摺動接片からなる接点部を有して構成されている。
【0072】
コードパターンは、固定枠14の外周部に配設されており、接点部は、表示部材18に配設されている。表示部材18の光軸O周りの回転位置に応じて、接点部が接触するコードパターンの位置が変化する。図示しないが、第2のエンコーダ部23は、コードパターンと接点部との接触の状態を検出する電気回路を有しており、この検出結果から、表示部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を算出することができる。
【0073】
なお、第2のエンコーダ部23の構成は、基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を検出することが可能な形態であれば本実施形態に限られるものではない。例えば、第2のエンコーダ部23は、光学式又は磁気式のアブソリュート型ロータリーエンコーダであってもよいし、表示部材18の光軸O周りの回転位置に応じて抵抗値が変化する、いわゆるポテンショメータと同様の構成を有する形態であってもよい。
【0074】
次に、カメラシステム1の合焦動作に関わる部分の電気的な構成を、
図9を参照して説明する。
【0075】
前述したように、カメラ本体2には、レリーズスイッチ3、電源スイッチ4、合焦モード切替操作部5、及び自動合焦用センサ部である撮像素子9が配設されている。また、カメラ本体2には、カメラ本体制御部6、画像処理部7、通信部8、画像表示回路30及び画像表示装置31が配設されている。
【0076】
制御部を構成するカメラ本体制御部(制御手段)6は、演算装置(CPU)、記憶装置(RAM)、入出力装置及び電力制御装置等を具備して構成されており、カメラ本体2の動作を、所定のプログラムに基づいて制御するものである。
【0077】
また、画像処理部7は、画像処理を行うための電子回路部であり、撮像素子9から出力される信号から被写体像のコントラスト値を算出することが可能である。なお、画像処理部7のカメラ本体2への実装形態は、画像処理用の演算ハードウェアを搭載するハードウェア的な形態であってもよいし、カメラ本体制御部6の演算装置が所定の画像処理プログラムに基づいて画像処理を行うソフトウェア的な形態であってもよい。
【0078】
通信部8は、有線通信又は無線通信によって、レンズ鏡筒10に設けられた通信部25を介してレンズ鏡筒制御部24との通信を行うためのものである。また、画像処理回路30は、撮像素子9からの被写体像を画像表示装置31に表示するための回路であり、例えば合焦動作中の被写体像を画像表示装置31に表示させる。
【0079】
レンズ鏡筒10には、前述したように、駆動部15、操作部材位置検出部と操作部材の
回転方向、回転量を検出する回転検出部とを構成する第1のエンコーダ部21、22及び
操作部材の位置を検出する回転位置検出をする第2のエンコーダ部23が配設されている
。また、レンズ鏡筒10には、レンズ鏡筒制御部24及び通信部25が配設されている。
制御部を構成するレンズ鏡筒制御部(制御手段)24は、演算装置、記憶装置、及び入
出力装置等を具備して構成されており、カメラ本体制御部6と連係してレンズ鏡筒10の
動作を、所定のプログラムに基づいて制御するものである。また、通信部
25は、有線通信又は無線通信によって、カメラ本体2に設けられた通信部8を介してカメラ本体制御部6との通信を行うためのものである。
【0080】
次に、以上に説明した構成を有するカメラシステム1の動作を説明する。
【0081】
本実施形態のカメラシステム1では、カメラ本体が電源オン状態である場合に、カメラ本体制御部6によって、
図10に示す合焦動作モード切替サブルーチンが必要に応じて繰り返し行われる。合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が有する複数の合焦動作モードのうち、使用者からの指示入力によって選択されたものを判定し、カメラシステム1の合焦動作モードを指示入力に従って切り替えるためのものである。
【0082】
なお、以下に説明する合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンの中に適宜に組み込まれるものである。カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンについては、周知の技術と同様であるためその説明は省略するものとする。
【0083】
合焦動作モード切替サブルーチンでは、まず、ステップS01において、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モードであるか否かを判定する。
【0084】
ステップS01の判定の結果、自動合焦動作モードが選択されている場合には、ステップS04に移行し、自動合焦動作を行うように、カメラシステム1の動作を切り替える。ステップS04では、カメラシステム1は、
図11に示す自動合焦動作を行う。
【0085】
カメラシステム1が自動合焦動作を行うタイミングは特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、
図11のフローチャートに示すように、第1レリーズスイッチ3aがオン状態となった場合に、自動合焦動作を行うものとする。
【0086】
カメラシステム1が自動合焦動作を行う場合、自動合焦用センサ部である撮像素子9から出力される信号に基づいて被写体像のコントラスト値を検出し、該コントラスト値が最も高くなるように合焦用枠13を駆動する。
【0087】
例えば、本実施形態のように、カメラ本体1とレンズ鏡筒10とが離合可能な構成であるカメラシステム1の場合には、自動合焦動作時には、撮像素子9から出力される信号に基づいた焦点調節を行うために合焦用枠13を駆動する指令は、カメラ本体制御部6が行う。この場合、レンズ鏡筒10のレンズ鏡筒制御部24は、通信部25を介して入力されるカメラ本体制御部6からの指令に応じて、駆動部15を介して合焦用枠13を駆動する。
【0088】
ステップS04の実行により合焦動作モード切替サブルーチンは終了するため、本実施形態のカメラシステム1では、自動合焦動作モードが選択されている場合には、回転操作部材17が第1の位置及び第2の位置のいずれに位置している場合であっても、自動合焦動作が行われる。したがって、自動合焦動作では、回転操作部材17が第2の位置に位置して距離目盛18aが外部に露出している場合であっても、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に関わらず、合焦用枠13が駆動されて焦点調節が行われる。またここで、「回転操作部材17が第2の位置に位置して距離目盛18aが外部に露出している場合であっても、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に関わらず、合焦用枠13が駆動されて焦点調節が行われる」としたが、別実施形態として、回転操作部材17が第2の位置に位置して距離目盛18aが外部に露出している場合、指標16aが指す距離目盛18aの距離の通りに、この距離に対応する位置に合焦用枠13を駆動してもよい。
【0089】
一方、ステップS01の判定の結果、自動合焦動作モードが選択されていない場合には、ステップS02へ移行する。ステップS02においては
図15に示す回転操作部材17(距離環)の光軸上の位置、すなわち回転操作部材17が第1の位置にあるのか第2の位置にあるのかを判断する距離環位置判断サブルーチンを実行する。
距離環位置判断サブルーチンのステップS40で第1のエンコーダ部の21の一方のフォトリフレクタの出力P1をみてLo信号かどうかを判断する。ここでLo信号でない、すなわちHi信号であると判断されるとステップS44に進み回転操作部材17は第1の位置にあると判断する。Lo信号であると判断されればステップ41に進む。
ステップS41で第1のエンコーダ部のエンコーダ部21の他方のフォトリフレクタの出力P2をみてLo信号かどうかを判断する。ここでLo信号でない、すなわちHi信号であると判断されるとステップ44に進み回転操作部材17は第1の位置にあると判断する。Lo信号であると判断されればステップ42に進む。
ステップS42で第1のエンコーダ部のエンコーダ部22のフォトリフレクタの出力P3をみてLo信号かどうかを判断する。ここでLo信号でない、すなわちHi信号であると判断されるとステップ44に進み回転操作部材17は第1の位置にあると判断する。Lo信号であると判断されればステップ43に進み、回転操作部材17は第2の位置にあると判断される。この後に合焦動作モード切替サブルーチンのステップS03に進む。
【0090】
ステップS03では、操作部材位置検出部22の出力信号に基づいて、回転操作部材17が第1の位置に存在するか否かを判定する。
【0091】
ステップS03の判定において、回転操作部材17が第1の位置に存在すると判定した場合には、ステップS05に移行し、焦点調節のための手動合焦動作を行うように、カメラシステム1の動作を切り替える。
【0092】
ステップS05では、カメラシステム1は、
図12に示す手動合焦動作を行う。カメラシステム1は、手動合焦動作を行う場合には、第1のエンコーダ部21によって回転操作部材17の回転を検出した場合に、回転操作部材17の回転方向及び回転量に応じて合焦用枠13を駆動する。なお、手動合焦動作時においては、使用者は、画像表示装置31に表示される被写体像の様子を観察することにより合焦の様子を観察することができ、この観察結果に基づいて回転操作部材17を操作する。もちろん、他の合焦動作時においても同様に、使用者は、画像表示装置31に表示される被写体像の様子を観察することにより合焦の様子を観察することができる。
【0093】
例えば、レンズ鏡筒10を後方から見た場合に、回転操作部材17が時計回り方向に回転したことを検出した場合には、カメラシステム1は、光学系部材11の合焦距離が短くなる方向に合焦用枠13を移動させる。また例えば、レンズ鏡筒10を後方から見た場合に、回転操作部材17が反時計回り方向に回転したことを検出した場合には、カメラシステム1は、光学系部材11の合焦距離が長くなる方向に合焦用枠13を移動させる。
【0094】
手動合焦動作における合焦用枠13の移動距離及び速度は、第1のエンコーダ部21によって検出された回転操作部材17の回転量(回転角度)及び回転速度(回転角速度)に応じて決められる。
【0095】
図12に示す手動合焦動作は、合焦動作モード切替サブルーチンの実行によって、手動合焦動作以外の合焦動作が選択されるまで繰り返し実行される。すなわち、合焦モード切替操作部5により自動合焦動作モードが選択されるか、回転操作部材17が第1の位置から第2の位置に移動されるまで、
図12に示す手動合焦動作は繰り返し実行される。
【0096】
一方、ステップS03の判定において、回転操作部材17が第1の位置に存在しないと判定した場合、すなわち回転操作部材17が第2の位置に存在すると判定した場合には、ステップS06に移行し、焦点調節のための距離指定合焦動作を行うように、カメラシステム1の動作を切り替える。
【0097】
ステップS06では、カメラシステム1は、
図13に示す距離指定合焦動作を行う。カメラシステム1は、距離指定合焦動作を行う場合には、第2のエンコーダ部23の出力信号から算出される指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に応じた位置に合焦用枠13を駆動する。すなわち、合焦用枠13は、固定枠14及び指標表示枠16である第1の枠と、表示部材18である第2の枠と、の相対位置に応じた位置に、駆動部15により駆動される。
【0098】
具体的に距離指定合焦動作では、まずステップS30において、レンズ鏡筒制御部24が、第2のエンコーダ部23の出力値を読み取る。第2のエンコーダ部23の出力値は、表示部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を表す値である。
【0099】
次にステップS31において、レンズ鏡筒制御部24は、第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値を算出する。第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値への変換は、例えばレンズ鏡筒制御部24が予め記憶している変換テーブルに基づいて行われる。
【0100】
次にステップS32において、レンズ鏡筒制御部24は、第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値と、光学系部材11の合焦距離とが、一致又は近似するように合焦用枠13を移動させる。例えば、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値が3mであれば、光学系部材11の合焦距離が3mとなるように合焦用枠13を移動させる。
【0101】
なお、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値と、光学系部材11の合焦距離とが一致することが理想的であるが、第2のエンコーダ部23の分解能が低い場合には両者を一致させることは困難であるため、両者が近似するように合焦用枠13を移動させる。
【0102】
また、レンズ鏡筒制御部24は、算出した指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値を、通信部25を介して、カメラ本体2のカメラ本体制御部6へ出力する。カメラ本体制御部6は、受信した当該数値に応じて露出値を決定したり、当該数値を撮影した画像にメタデータとして付加する。
【0103】
図13に示す距離指定合焦動作は、合焦動作モード切替サブルーチンの実行によって、距離指定合焦動作以外の合焦動作が選択されるまで繰り返し実行される。すなわち、合焦モード切替操作部5により自動合焦動作モードが選択されるか、回転操作部材17が第2の位置から第1の位置に移動されるまで、
図13に示す距離指定合焦動作は繰り返し実行される。
【0104】
以上に説明したように、本実施形態のカメラシステム1は、カメラ本体2に固定される基台部12に対して固定された位置に配設される指標16aと、基台部12に対して回転可能に配設され距離目盛18aを有する表示部材18と、表示部材18の基台部12に対する回転位置を検出する第2のエンコーダ部23と、表示部材18とともに回転する回転操作部材17と、を有して構成されている。
【0105】
そして、本実施形態のカメラシステム1は、自動合焦動作時には、表示部材18の回転位置に関わらず、合焦用センサ部である撮像素子9の出力に基づいて焦点調節を行う。また、カメラシステム1は、距離指定合焦動作時には、第2のエンコーダ部23の出力信号から算出される指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に応じた位置に合焦用枠13を駆動する。すなわち、カメラシステム1は、距離目盛を使用した手動合焦が可能である。また、カメラシステム1における自動合焦動作及び距離指定合焦動作の切替は、使用者が合焦モード切替操作部5及び回転操作部材17を操作することによって可能である。
【0106】
以上のような構成を有するカメラシステム1のレンズ鏡筒10では、駆動部15が駆動する部材は、合焦用レンズ11aを保持する合焦用枠13のみであり、駆動部15が駆動する部材を少なくし、かつ軽量なものとすることができる。これにより、本実施形態では、駆動部15を出力の小さい小型なものとすることができ、レンズ鏡筒10を小型化することができる。また、合焦動作を素早く行うことができる。
【0107】
また、本実施形態では、表示部材18を駆動するための動力を伝達する機構が不要であり、少ない部品点数の単純な構成で駆動部15から被駆動部材である合焦用枠13にまで動力を伝達することができる。このため、焦点調節のために合焦用枠13を駆動する際に発生する音の音量を下げることが容易である。焦点調節時に発生する音量を抑制することは、例えば動画像の撮影時において好ましい。
【0108】
また、本実施形態では、合焦モード切替操作部5により手動合焦動作モードが選択され、かつ回転操作部材17が第2の位置に位置している場合には、距離目盛を使用した手動合焦が可能である。これにより、本実施形態では、距離目盛18aを使用して予め手動で所定の合焦距離に設定しておき、焦点調節動作を行わずに素早く撮影するという撮影手法を実施することができる。
【0109】
例えば本実施形態では、指標表示枠16に被写界深度目盛16bが設けられていることから、使用者は、レンズ鏡筒10の外周部に露出している距離目盛18a、指標16a及び被写界深度目盛16bを見ることによって、合焦する被写体距離を即座に確認することができる。
【0110】
一方で、本実施形態では、合焦モード切替操作部5により手動合焦動作モードが選択され、かつ回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17の回転に応じて焦点調節を行う
図12に示した手動合焦が可能である。手動合焦動作では、回転操作部材17は、表示部材18と係合していないことから光軸O周りに制限無く回転可能であり、光学系部材11の焦点調節は回転操作部材17の回転量に応じて行われる。
【0111】
このため、本実施形態のカメラシステム1の手動合焦動作では、距離目盛を使用した距離指定合焦動作よりも細かい焦点調節を行うことができる。
【0112】
以上のように、本実施形態のカメラシステム1では、駆動部15を介した荒い焦点調節(粗調節)として、指標16aと距離目盛18aによって合焦距離と被写界深度が明示されることにより素早い撮影を実現する距離指定合焦動作と、回転操作部材17の回転量に応じて駆動部15を介した細かい焦点調節(微調節)を行うことができる手動合焦動作と、を選択的に実行することができる。そして、距離指定合焦動作と手動合焦動作の切替は、回転操作部材17を前後に移動させるだけで可能であるため、素早く明示的に実行可能である。
【0113】
なお、第2のエンコーダ部23の分解能が充分に高ければ、距離指定合焦動作であっても細かい焦点調節が行えることは言うまでもない。また、距離指定合焦動作を絶対合焦動作と称し、手動合焦動作を相対合焦動作と称してもよい。
【0114】
また、本実施形態では、回転操作部材17が第1の位置に位置している場合には、回転操作部材17と表示部材18とが係合していないことから、回転操作部材17が回転しても表示部材18は回転しない。したがって、距離指定合焦動作時において設定された合焦距離は、手動合焦動作時に変更されることがない。
【0115】
例えば、使用者が距離指定合焦動作時において合焦距離が3メートルとなるように表示部材18を回転させた後に、回転操作部材17を第1の位置に移動させ、手動合焦動作による焦点調節を行ったとしても、表示部材18は回転しない。よって、この後に使用者が操作環17を第2の位置に移動させて距離指定合焦動作を行う場合には、光学系部材11の合焦距離は3メートルに戻る。したがって、予め距離指定合焦動作時において合焦距離を所望の値に設定しておけば、手動合焦動作を行っている状態から、回転操作部材17を後方に移動させるだけで素早く所望の合焦距離による撮影を行うことができる。
【0116】
尚、本願発明の説明によれば、回転操作部材を光軸上で第1の位置と第2の位置に切替移動したとき、その位置判別を、第1の位置で回転操作部材の回転量等を検出するのに用いる一対のフォトインタラプタと更にもう一つのフォトインタラプタとでこれを判別したが、第2の位置でもこれを行ってもよい。すなわち、第2の位置でも回転操作部材の回転量等を検出するのに別の一対のフォトインタラプタと更に別のもう一つのフォトインタラプタとを設けてもよい。そうすれば第1の位置でも、第2の位置でも回転操作部材の回転量等を検出できる。
【0117】
以上に説明したように、本実施形態によれば、回転軸上の二つの位置それぞれの位置で回転可能で、切替えられそれぞれの位置での回転を検出する装置であって、省スペースを図り、装置の大型化を防止する装置を提供する。
【0118】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全
体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのよう
な変更を伴うカメラシステム及びレンズ鏡筒もまた本発明の技術的範囲に含まれるもので
ある。