【実施例1】
【0019】
図1はこの発明に係るシールド付き電線用のコネクターの実施例1の拡大縦断面図、
図2はその要部の拡大斜視図。
図3はその主要な構成部品を分離して描いた分解斜視図であり、この発明に係るシールド付き電線用のコネクターは、コネクター本体1、コネクター本体1と螺合するクランプホルダー2、シールド付き電線に被せる導電性スリーブ3、シールド付き電線4をクランプホルダー2に固定するクランプ材30、水密性を持たせる為の各種パッキング等から構成されている。
【0020】
なお、この発明に係るシールド付き電線用のコネクターに固定されるシールド付き電線4は、
図4に示す様に、芯線5、絶縁被覆6,シールド7,外皮8がそれぞれ同心円状に積層されたものである。
【0021】
コネクター本体1は、導電性を有する金属を素材とするものであり、
図1及び
図2に示す様に、シールド付き電線4の前方端末側を挿通する筒状部9の外周側にフランジ10が一体的に形成されており、筒状部9の内径前方側には、シールド付き電線4の絶縁被覆6の外径aよりわずかに大きい内径bからなる筒状の絶縁被覆保持部11、前記フランジ10の根元部分から後方寄りには、シールド付き電線4の外皮8の外径cより内径dが大きい筒状の外皮保持部12がそれぞれ形成されており、これら絶縁被覆保持部11と外皮保持部12とは、後方即ち外皮保持部12側に向かって内径が漸増した前方テーパ状13によって接続されている。更に、外皮保持部12の後方開口端には内径が漸増した後方テーパ部14が形成されている。
【0022】
つまり、筒状部9の内径側には、前方から後方に向かって、径の小さい絶縁被覆保持部11、拡径した前方テーパ部13、径の大きい外皮保持部12、拡径した後方テーパ状14が直列状に連続して形成されていることになる。
又、フランジ10の根元部分の後方は、筒状部9の外径が縮小しており、段差部15となっており、この段差部15の後方の外周には雄ネジが形成されており、雄ネジ部16となっている。更に、筒状部9の前方開口部近傍の外周にはOリング溝33が形成されており、Oリング溝33にはOリング34を装着する様になっている。
【0023】
一方、クランプホルダー2は、金属を素材とし、シールド付き電線4を挿通可能な内径を有する円筒状をなしており、その前方側の内周壁面には、前記コネクター本体1の雄ネジ部16に螺合可能な雌ネジ部17が形成されていると共に、この雌ネジ部17の後方には内径が漸減した逆テーパ部18と、シールド付き電線4の外皮8の外径cよりわずかに大きい内径eの外皮保持部19とが連続的に形成されている。又、この外皮保持部19の後方開口端寄りの部分には、内径が円弧状に漸増した拡径部20が形成されている。
【0024】
又、図中21はコネクター本体1の前方テーパ状13とシールド付き電線4の絶縁被覆6との間に嵌装されるゴム製の前方環状パッキングであり、肉厚が後方に向かって漸増した略台形状断面を呈しており、その前端の肉厚fは前方テーパ状13の後端の幅より小さく、後端の肉厚hは前方テーパ部13の後端の幅より大きくなる様に形成されている。
次に、図中22はコネクター本体1の外皮保持部12の前端に介装される金属製の円板状をなした絶縁被覆用カラーであり、外皮保持部12の内径よりわずかに小さい外径を有し、中央にはシールド付き電線4の絶縁被覆6を挿通させられる透孔23があけられている。
【0025】
又、図中3は導電性スリーブであり、シールド付き電線4のシールド7の先端寄りの部分を外皮8側に折り返した状態において、その外周に被せられる内径を有しており、外周側からのプレスによる縮径及びスポット的なかしめによる陥没部45の形成によってシールド付き電線4のシールド7の折り返し部分25に強固に固定される様になっており、その長さはこの実施例においては外皮保持部12のほぼ4/5程度である。又、この導電性スリーブ3はシールド7とフランジ10とを電気的に接続する機能を持つものであり、素材としては塑性変形しやすい銅が好ましい。
【0026】
更に、図中26は、前記導電性スリーブ3の後方に介装される金属製の板状をなした外皮用カラーであり、外皮保持部12の内径よりわずかに小さい外径を有し、中央にはシールド付き電線4の外皮8を挿通させられる透孔27があけられている。又、図中28は、コネクター本体1の後方テーパ部14と外皮8との間に嵌装されるゴム製の後方環状パッキングであり、肉厚が後方に向かって漸増した略台形状断面を呈しており、その前端の肉厚は導電性スリーブ3の肉厚とほぼ同じで、後端の肉厚は後方テーパ部の後端開口部の隙間の幅とほぼ同じになっている。更に、29はこの後方環状パッキング28の後方に介装される円板状をなしたゴム製のストップカラーである。
【0027】
一方、図中30はクランプ材であり、合成樹脂を素材とした丈の短い筒状をなした部材であり、肉厚が後方に向かって漸減した逆テーパ状断面を有し、クランプホルダー2の逆テーパ部18とシールド付き電線4の外皮8との間に嵌装される様になっており、
図3に示す様に、その後端縁には複数の切り込み部31が等間隔で形成されていると共に、後方開口端寄りの内径側には外皮8の表面に喰い込ませる為の突条35が形成されている。
【0028】
更に、図中36はゴム製防塵カバーであり、円筒状をなし、拡径部37と縮径部38とが交互に繰り返される蛇腹状を呈し、前方開口部39は前記クランプホルダー2の外皮保持部19の外周面に、後方開口部40はクランプホルダー2に挿入されるシールド付き電線4の外周面にそれぞれ弾性的に嵌め込まれる内径を有している。
又、図中41は電気絶縁性を有する熱収縮性チューブであり、シールド付き電線4の前方末端側の芯線5に端子42のバレル43を圧着結合し、その上に接着剤層44を形成した後、この接着剤層44を覆う様に被せて熱収縮させるものである。
【0029】
この実施例1は上記の各構成部材からなるものであり、シールド付き電線4は下記の手順により、このコネクターに固定される。
即ち、まず初めに、ゴム製防塵カバー36を被せたシールド付き電線4の先端側をクランプホルダー2に挿通すると共に、先端側端末付近の外皮8を剥ぎ取りシールド7を露出されて、これを
図5に示す様に、後方側の外皮8上に折り返し、
図6に示す様に、折り返されたシールド7の外周に導電性スリーブ3を被せ、導電性スリーブ3をその全周側から面的にプレスして全面的に縮径させ、導電性スリーブ3の内周壁面をシールド7に押圧接触させた後、更に外周側からスポット的にかしめて、等間隔で複数の陥没部45を形成し、該陥没部45の先端をシールド7に喰い込ませて、導電性スリーブ3をシールド7の固定し、両者を電気的に接続する。なお、
図6において、破線で描かれた導電性スリーブ3は、プレスによる縮径前の状態を示している。
【0030】
更に、
図7に示す様に、この導電性スリーブ3の前方の絶縁被覆6に絶縁被覆用カラー22と前方環状パッキング21とを挿通すると共に、導電性スリーブ3の後方の外皮7に外皮用カラー26、後方環状パッキング28、クランプ材30の順でそれぞれ挿通する。
【0031】
この状態において、導電性スリーブ3、前方環状パッキング21、クランプ材30等が装着されたシールド付き電線4の先端側端末部分を
図8に示す様に、コネクター本体1に、その後方から挿通し、前方環状パッキング21を筒状部9の前方テーパ部13に、後方環状パッキング28を後方テーパ部14に当接させ、クランプホルダー2の雌ネジ部17をコネクター本体1の雄ネジ部16に螺合させ、クランプホルダー2を回転させてクランプホルダー2をコネクター本体1に強くねじ込む。すると、
図1に示す様に、クランプホルダー2は前方方向に移動し、それに伴い、外皮8と逆テーパ部18との間隔は狭まり、その間に位置したクランプ材30は、逆テーパ部18の斜面により、強く下向きに押圧され、外皮8に喰い込み嵌合状態となり、シールド付き電線4はクランプホルダー2を介してコネクター本体1に確実に固定される。
【0032】
更に、シールド付き電線4に被せてあるゴム製防塵カバー36の前方開口部をクランプホルダー2の外皮保持部12の外周面に、その後方側からぴったりと弾性的に嵌め込み、外皮保持部12及びこれに接続されているシールド付き電線4の外周面をゴム防塵カバー36で覆うと共に、コネクター本体1の筒状部9から前方側に露出しているシールド付き電線4の芯線5に、端子42の後方に設けられているバレル43をかしめ圧着して端子42を結合した後、バレル43の表面に合成樹脂系の接着剤を塗布して接着剤層44を形成し、更に、この接着剤層44を覆う様に、電気絶縁性を有する熱収縮性チューブ41を被せ、これを熱収縮させて固定する。
【0033】
この際、クランプホルダー2のねじ込みに伴う前方方向への移動により、クランプ材30の前端に当接しているストップカラー29を介して後方環状パッキング28も前方に押し込まれ、後方テーパ部14と外皮8との間に嵌り込み、外皮8と筒状部9との隙間を密封し、その部分の水密性を確保する。
更に、後方環状パッキング28の前方方向への移動に伴い、外皮用カラー26、導電性スリーブ3、絶縁被覆用カラー22も前方側へ移動し、絶縁被覆用カラー22の端面によって、前方環状パッキング2は前方方向へ押圧され、前方テーパ部13と絶縁被覆6との間に嵌り込み、絶縁被覆6と筒状部9との間の隙間を密封し、その部分の水密性を確保する。
なお、筒状部9の前方開口端近傍に設けられているOリング34は、フランジ10を用いてコネクター本体1をモーターや発電機などの外部の機器に固定した際に、結合部の水密性を確保する為のものである。
【0034】
この状態においては、コネクター本体1とシールド付き電線4の結合関係は、クランプ材30により確保され、前方から水の侵入は前方環状パッキング21により、後方からの水の侵入は後方環状パッキング28によってそれぞれ阻止され、シールド7は導電性スリーブ3、絶縁被覆用カラー22、外皮用カラー26を介してフランジ10と電気的に接続される。
なお、導電性スリーブ3はプレスによる全面的な縮径及びスポット的なかしめによる陥没部45の形成により、シールド7に強く喰い込んでいるので、導電性スリーブ3とシールド7の電気的接続は安定的かつ確実に保持される。
又、クランプホルダー2の後端開口部には、円弧状に拡径した拡径部20が形成されているので、シールド付き電線4の可撓性は十分に確保され、
図1に矢印Aで示す様に、シールド付き電線4の後方部分が上下左右方向に大きく振れたとしても、シールド付き電線4のクランプホルダー2の後方開口部付近に無理な曲げ応力が作用することはなく、シールド付き電線4に損傷が生ずるおそれはほとんどない。
そして、クランプホルダー2の外皮保持部12の外周面とシールド付き電線4の外周面との間には、ゴム製防塵カバー36が弾性的にピッタリと嵌め込まれているので、クランプホルダー2の後方開口部寄りの部分に塵や異物が付着するおそれはなく、これらの付着による障害の発生の可能性は皆無である。
更に、シールド付き電線4の先端に圧着されている端子42のバレル43の表面には接着剤層44が形成されており、その上から熱収縮性チューブ41が被せられ、熱収縮させられているので、この部分の水密性は十分に保持され、端子42の方向からのコネクター本体1内への水の侵入は阻止されている。
又、バレル43の表面はこの熱収縮性チューブ41で被膜されているので、万が一バレル43の表面に触れたとしても、感電する危険はない。
【0035】
以上、述べた通り、この発明に係るシールド付き電線用コネクターは、簡単な構造で、組立も容易でありながら、完璧な水密性を持たせることが出来るので、屋外かつ振動を伴う過酷な環境下で使用される電気自動車用やハイブリッド自動車用のコネクターとして最適である。