特許第6000813号(P6000813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000813
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/66 20060101AFI20160923BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20160923BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20160923BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20160923BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20160923BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H04M1/66
   G08B25/10 D
   G08B25/00 520D
   G08B25/04 E
   H04M1/00 R
   H04M11/00 301
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-247630(P2012-247630)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-96059(P2014-96059A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 行幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊則
(72)【発明者】
【氏名】沙魚川 久史
(72)【発明者】
【氏名】福井 誠司
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−051386(JP,A)
【文献】 特開2004−194061(JP,A)
【文献】 特開2002−252876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00−31/00
H04B7/24−7/26
H04M1/00
1/24−3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
99/00
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信を行う通信部を備えた通信装置と、前記通信装置と通信可能なセンタ装置と、前記通信装置の使用者に対応付けられ、予め定められた非常事象の発生時に前記センタ装置へ非常信号を送信する非常送信機とを含む通信システムであって、
前記通信装置は、
前記通信部を制御して、通常は前記使用者による他の通信端末への発信処理を制限する制限モードに設定し、前記センタ装置から解除信号を受信すると当該制限を解除する解除モードに切り替えるモード設定部と、を有し
前記センタ装置は、
前記通信装置、前記使用者及び前記非常送信機の対応関係を予め記憶した記憶部と、
前記非常信号を受信すると前記対応関係に基づいて、対応する前記通信装置へ解除信号を送信する解除信号送信部と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムにおいて、
前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、
前記端末位置送信部は、前記解除モードにて、前記端末位置情報を定期的に送信し、
前記記憶部は、前記通信装置から受信した前記端末位置情報を当該通信装置と対応付けて記憶すること、
を特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の通信システムにおいて、
前記センタ装置は、前記通信装置へ解除終了信号を送信し、
前記モード設定部は、前記通信装置が前記解除終了信号を受信すると、前記解除モードから前記制限モードへ切り替えること、
を特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、
前記非常送信機は、当該非常送信機の現在位置を表す送信機位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する送信機位置送信部を有し、
前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、
前記センタ装置は、前記非常信号を受信すると、前記解除信号を送信しようとする前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、当該端末位置情報と前記対応関係にて当該通信装置に対応する前記非常送信機から取得した前記送信機位置情報とが整合性を有するか否か判定する端末位置確認部を有し、
前記解除信号送信部は、前記端末位置確認部が前記整合性を有すると判定した場合に前記解除信号を送信すること、
を特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、
前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、
前記解除信号送信部は、前記記憶部に前記対応関係を記憶されている前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、前記非常信号に対応する前記通信装置に加え当該通信装置に対して所定の近傍領域内に位置する近傍通信装置にも前記解除信号を送信すること、
を特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、
予め定められた非常事象の発生時に前記センタ装置へ警報信号を送信する警備装置を含み、
前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、
前記センタ装置は、前記警報信号を受信すると、前記記憶部に前記対応関係を記憶されている前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、前記警備装置に対して所定の近傍領域内に位置する前記通信装置へ前記解除信号を送信すること、
を特徴とする通信システム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の通信システムにおいて、
前記使用者が点検を行う対処モードに設定されると前記センタ装置へ対処モード設定信号を送信する警備装置を含み、
前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、
前記センタ装置は、前記対処モード設定信号を受信すると、前記記憶部に前記対応関係を記憶されている前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、前記警備装置に対して所定の近傍領域内に位置する前記通信装置へ前記解除信号を送信すること、
を特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信が可能な通信装置を含んだ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信により電話網やインターネットに接続可能な携帯型の電子機器(以下、「通信装置」と称する。)は、音声通話や電子メールを可能とするだけでなく、ネットワーク上のコンピュータシステムにアクセスすることができ高い利便性を有する。それ故、企業などの組織において、外出して業務に従事する者に通信装置を携行させ、業務で必要な通信連絡や、企業の社内システム等へのアクセスや、情報閲覧に通信装置を利用させることが行われている。
【0003】
しかしながら、安易に通信を行うことができる利便性の反面、通信装置は公衆の中に持ち出されて利用されるので、管理者の目の届かないところで私的に利用される可能性があり、また業務上の利用であっても周囲に通話を傍聴されたり、画面に表示されたメールを盗み見られたりして、組織や顧客などに関する秘密情報が漏洩するおそれがある。
【0004】
そこで、例えば通信装置の利用位置や時間帯によって利用に制限をかけるという提案が行われている。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−295661号公報
【特許文献2】特開2008−227907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、利用位置や時間帯によって一律に利用を制限すると、緊急的に外部と連絡する必要が生じた場合などに通信装置を利用できず、緊急事態への対応が遅れるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、通信装置での通信における情報漏洩のおそれを低減しつつ緊急時には利用可能とすることを目的とする。
【0008】
本発明に係る通信システムは、移動体通信を行う通信部を備えた通信装置と、前記通信装置と通信可能なセンタ装置と、前記通信装置の使用者に対応付けられ、予め定められた非常事象の発生時に前記センタ装置へ非常信号を送信する非常送信機とを含む通信システムであって、前記通信装置は、前記通信部を制御して、通常は前記使用者による他の通信端末への発信処理を制限する制限モードに設定し、前記センタ装置から解除信号を受信すると当該制限を解除する解除モードに切り替えるモード設定部と、を有し、前記センタ装置は、前記通信装置、前記使用者及び前記非常送信機の対応関係を予め記憶した記憶部と、前記非常信号を受信すると前記対応関係に基づいて、対応する前記通信装置へ解除信号を送信する解除信号送信部と、を有する。
【0009】
他の本発明に係る通信システムにおいては、前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、前記端末位置送信部は、前記解除モードにて、前記端末位置情報を定期的に送信し、前記記憶部は、前記通信装置から受信した前記端末位置情報を当該通信装置と対応付けて記憶する。
【0010】
他の本発明に係る通信システムにおいては、前記センタ装置は、前記通信装置へ解除終了信号を送信し、前記モード設定部は、前記通信装置が前記解除終了信号を受信すると、前記解除モードから前記制限モードへ切り替える。
【0011】
他の本発明に係る通信システムにおいては、前記非常送信機は、当該非常送信機の現在位置を表す送信機位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する送信機位置送信部を有し、前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、前記センタ装置は、前記非常信号を受信すると、前記解除信号を送信しようとする前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、当該端末位置情報と前記対応関係にて当該通信装置に対応する前記非常送信機から取得した前記送信機位置情報とが整合性を有するか否か判定する端末位置確認部を有し、前記解除信号送信部は、前記端末位置確認部が前記整合性を有すると判定した場合に前記解除信号を送信する。
【0012】
さらに他の本発明に係る通信システムにおいては、前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、
前記解除信号送信部は、前記記憶部に前記対応関係を記憶されている前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、前記非常信号に対応する前記通信装置に加え当該通信装置に対して所定の近傍領域内に位置する近傍通信装置にも前記解除信号を送信する。
【0013】
別の本発明に係る通信システムは、予め定められた非常事象の発生時に前記センタ装置へ警報信号を送信する警備装置を含み、前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、前記センタ装置は、前記警報信号を受信すると、前記記憶部に前記対応関係を記憶されている前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、前記警備装置に対して所定の近傍領域内に位置する前記通信装置へ前記解除信号を送信する。
【0014】
別の本発明に係る通信システムは、前記使用者が点検を行う対処モードに設定されると前記センタ装置へ対処モード設定信号を送信する警備装置を含み、前記通信装置は、当該通信装置の現在位置を表す端末位置情報を取得して前記センタ装置へ送信する端末位置送信部を有し、前記センタ装置は、前記対処モード設定信号を受信すると、前記記憶部に前記対応関係を記憶されている前記通信装置の前記端末位置送信部から前記端末位置情報を取得し、前記警備装置に対して所定の近傍領域内に位置する前記通信装置へ前記解除信号を送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センタ装置が遠隔で通信装置を制御、管理することで、カメラ機能の不正使用が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態である警備システムの概略の構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態における通信装置の概略の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態における非常送信機の概略の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態におけるセンタ装置の概略のブロック構成図である。
図5】警備員が携行する非常送信機から非常信号が発せられた場合のセンタ装置による通信装置の制御を説明する概略のシーケンス図である。
図6】移動車両18に搭載された非常送信機のみから非常信号が発せられた場合のセンタ装置による通信装置の制御を説明する概略のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る通信システムを用いて構成された本発明の実施形態である警備システムの概略の構成を示す模式図である。当該システムは、通信装置2、非常送信機3,4、警備装置5、センタ装置6及び通信網8を含んで構成される。本実施形態では警備会社の警備員10が通信装置2を所持する。当該警備会社では通信装置2の利用規程として、警備員10に対し例えば、警備対象物件に赴いて侵入者を発見した場合や、傷病者や事故発生に遭遇した場合などの非常時にのみ通信装置2からの電話や電子メールの発信を行うことができることを定め、情報漏洩の防止を図っている。
【0018】
通信装置2は移動体通信機能を有する。例えば、通信装置2はスマートフォン、タブレット型コンピュータや携帯電話である。通信装置2はその近傍の移動体通信基地局16と無線接続され、移動体通信基地局16及び通信網8を介してセンタ装置6及びその他の通信装置と通信することができる。
【0019】
非常送信機3は警備員10により携行される。警備員10は非常事態に遭遇した場合に例えば、非常送信機3のボタンを押すなどの操作を行い、これにより非常送信機3は非常信号を監視センタ14へ移動体通信などを利用して送信する。
なお、非常送信機3は通信装置2と別体で説明するが、一体でもよい。
【0020】
非常送信機4は警備員10が使用する移動車両18に取り付けられる。非常送信機4は非常送信機3と同様、非常信号を監視センタ14へ送信する。非常送信機4は移動車両18に搭乗する警備員10による操作や、移動車両18の事故を検知することにより非常信号を送信する。なお、事故の発生は例えば、移動車両18の加速度センサの出力やエアバッグの起動信号を用いて判断することができるが、そのための構成は図示を省略している。
【0021】
警備装置5(警報装置)は警備対象物件である建物12に設置された侵入検知センサ(不図示)や扉の電気錠(不図示)などと有線又は無線で接続され、また、通信網8を介して遠隔の監視センタ14と接続される。警備装置5は監視モード、監視解除モード及び対処モードに設定可能であり、監視モードでは予め定められた非常事象の発生時にセンサからの異常通報信号に基づいてセンタ装置6へ警報信号を送信したり、画像センサが撮影した画像をセンタ装置6へ送信したりする。なお、監視解除モードでは侵入検知センサから異常通報信号を受けても、監視センタ14への警報信号の送信は行わない。警備装置5の顧客は、監視モードと監視解除モードとを切り替えることができる。対処モードは警備員用の警備モードであり、警備員が異常通報などを受け建物12内を点検する際に設定することができるモードである。
【0022】
センタ装置6は警備会社などが監視区域を監視するために運営する監視センタ14に設置され、通信網8を介して通信装置2、非常送信機3,4、警備装置5と通信し、建物12の警備や警備員10及び移動車両18の非常事態の検知の他、通信装置2の通信機能の制御を行う。この他、センタ装置6は警備員を派遣する警備本部、警備員に遠隔から指示を出すための指令本部、大型ビル内の防災センターに設けられた防災本部など、警備員の管理を行う施設に設置されてもよい。
【0023】
図2は、通信装置2の概略の構成を示すブロック図である。通信装置2は、制御部20、記憶部22の他、無線部24、操作部26、カメラ28、マイクロフォン30、スピーカー32、表示部34を含んで構成される。
【0024】
無線部24は基地局通信部及びGPS受信部を含んで構成される。基地局通信部は、移動体通信基地局16との間で無線通信を行う移動体通信部であり、通信装置2は基地局通信部により移動体通信基地局16及び通信網8を介して監視センタ14のセンタ装置6と通信を行うことができる。GPS受信部はGPS衛星からGPS信号を受信して、自己の現在位置に応じたGPS情報を取得する。
【0025】
操作部26は警備員が通信装置2の動作を選択したり制御部20に指示を与えるための入力手段であり、例えば、各種ボタンスイッチやタッチパネルなどから構成される。
【0026】
カメラ28は人物や風景等の被写体を撮像する撮像部である。マイクロフォン30は、音声通信時等に警備員の声等を集音する集音部である。スピーカー32は、音声通信時において通話相手側の音声を出力したり、着信があった場合や電子メールを受信した場合に、呼び出し音を出力したりする音声出力部である。表示部34は液晶ディスプレイ等の画像表示手段である。
【0027】
無線部24、操作部26、カメラ28、マイクロフォン30、スピーカー32及び表示部34は制御部20に接続され、制御部20からの信号を受けて動作したり、制御部20へ信号を出力したりする。
【0028】
制御部20は、マイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて各種の処理を行う。例えば、制御部20は、通信制御部40、カメラ制御部42、モード設定部44、端末位置送信部46及び発信履歴保護部48として機能する。
【0029】
通信制御部40は、無線部24と共に音声通信機能やインターネット接続機能を担う通信部を構成する。具体的には、音声通信では通話相手の電話装置との間の回線接続が確立され、マイクロフォン30にて電気信号に変換された音声信号が通信制御部40を経由して無線部24に入力され、無線部24にて無線信号に変換され移動体通信基地局16へ送信される。また、移動体通信基地局16から受信した無線信号は無線部24にて検波され、取り出された音声信号は通信制御部40や音声出力回路を経由してスピーカー32に入力される。
【0030】
カメラ制御部42はカメラ28と共に撮像部を構成し、カメラ28の動作を制御する。例えば、警備員が操作部26からカメラ機能を起動すると、カメラ制御部42はカメラ28を構成する固体撮像素子を駆動して撮像させ、カメラ28から画像信号を取り込み、表示部34に入力画像を表示する。またシャッター操作がなされると、カメラ制御部42は入力画像をキャプチャし、保存操作がなされると、キャプチャした画像を記憶部22に書き込む。
【0031】
モード設定部44は、無線部24を制御して、警備員による発信の許否についてのモードを設定する。設定されるモードは2種類あり、1つは電話や電子メールの発信を制限する制限モードであり、もう1つは制限を解除する解除モードである。モード設定部44は、通常は通信装置2を制限モードに設定し、センタ装置6から解除信号を受信すると解除モードに切り替える。さらに本実施形態では、モード設定部44はセンタ装置6から解除終了信号を受信すると、解除モードから制限モードへ切り替える。
【0032】
端末位置送信部46は通信装置2の現在位置を表す端末位置情報を取得し、無線部24を介してセンタ装置6へ送信する。本実施形態では端末位置送信部46は解除モードにて、端末位置情報を定期的に自動送信する。また、端末位置送信部46はセンタ装置6から端末位置情報の取得要求を受けて、端末位置情報をセンタ装置6へ送信する。端末位置送信部46は通信部により与えられるGPS情報及び移動体通信基地局16の位置情報から現在位置を求め端末位置情報とすることができる。
【0033】
発信履歴保護部48は、使用者である警備員が通信装置2を操作して電話や電子メールの発信履歴を消去することを禁止する。
【0034】
記憶部22はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置で実現され、制御部20にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータを格納する。記憶部22には、センタ装置アドレス情報52が予め登録されている。センタ装置アドレス情報52はセンタ装置6の電話番号又はIPアドレスである。また、記憶部22は使用者による発信履歴50を記録する発信履歴記憶部である。
【0035】
図3は、非常送信機3,4の概略の構成を示すブロック図である。非常送信機3,4は、制御部60、記憶部62の他、無線部64、操作部66を含んで構成される。
【0036】
無線部64は基地局通信部及びGPS受信部を含んで構成される。基地局通信部は、移動体通信基地局16との間で無線通信を行う移動体通信部であり、非常送信機3,4は基地局通信部により移動体通信基地局16及び通信網8を介してセンタ装置6と通信を行うことができる。GPS受信部はGPS衛星からGPS信号を受信して、自己の現在位置に応じたGPS情報を取得する。
【0037】
操作部66は警備員10が非常送信機3,4の動作を選択したり制御部60に指示を与えるための入力手段であり、各種ボタンスイッチやタッチパネルなどである。例えば、非常送信機3,4は非常信号送信用のボタンスイッチとして、操作容易な位置に操作し易い大きさの非常ボタンを有する。
【0038】
制御部60は、マイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて各種の処理を行う。例えば、制御部60は、通信制御部80、非常信号送信部82及び送信機位置送信部84として機能する。
【0039】
通信制御部80は無線部64と共に、センタ装置6との間の通信機能を担う通信部を構成する。
【0040】
非常信号送信部82は、非常送信機3においては警備員10による非常ボタンの操作が行われると無線部64を介してセンタ装置6に非常信号を送信する。また非常送信機4の非常信号送信部82は、警備員10による非常ボタン操作がされた場合の他、移動車両18に搭載したセンサの出力信号等に基づいて非常事態を検知した場合にも非常信号を送信する。
【0041】
非常信号は基本的には、警備員10や移動車両18が非常事態に遭遇したことを通知するための信号である。ここで、監視センタ14は、管理対象とする複数の非常送信機3,4のうちいずれから非常信号が送信されたかを把握する。そのために非常信号には送信元の非常送信機3,4を識別する情報を含めることができる。なお、例えば、非常送信機3,4が通信網8でセンタ装置6に接続する場合、センタ装置6は非常信号を送信してきた非常送信機3,4をその発呼者番号で識別することができる。このような場合には非常信号に非常送信機3,4の識別情報を含めなくても構わない。
【0042】
送信機位置送信部84は非常送信機3,4の現在位置を表す送信機位置情報を取得し、無線部64を介してセンタ装置6へ送信する。送信機位置送信部84は非常信号の送信時に送信機位置情報を送信する。また、本実施形態では送信機位置送信部84はセンタ装置6から送信機位置情報の取得要求を受けた場合にも送信機位置情報を送信したり、送信機位置情報を定期的に自動送信したりするように構成される。送信機位置送信部84は無線部64により与えられるGPS情報及び移動体通信基地局16の位置情報から現在位置を求め送信機位置情報とすることができる。
【0043】
記憶部62はROM、RAM等のメモリ装置で実現され、制御部60にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータを格納する。特に、記憶部62はセンタ装置アドレス情報86を予め登録している。センタ装置アドレス情報86はセンタ装置6の電話番号又はIPアドレスである。
【0044】
図4はセンタ装置6の概略のブロック構成図である。センタ装置6は、制御部100、記憶部102の他、通信部104を含んで構成される。
【0045】
通信部104は通信網8に接続され、通信装置2及び非常送信機3,4との通信を行う。
【0046】
記憶部102はROM、RAM等のメモリ装置で実現され、制御部100にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータを格納する。特に、記憶部102は対応関係情報120を記憶する。
【0047】
対応関係情報120には、警備員10、当該警備員10が所持する通信装置2及び非常送信機3、並びに当該警備員10が使用する移動車両18の非常送信機4の間の対応関係が予め記憶される。例えば、対応関係情報120は警備員10ごとに通信装置2、非常送信機3,4それぞれの識別情報を格納したテーブル形式のデータである。対応関係情報120には通信装置2、非常送信機3,4それぞれのアドレス情報(電話番号又はIPアドレス)を含めることができ、また当該アドレス情報をそれぞれの識別情報とすることもできる。また、対応関係情報120には、通信装置2から取得した端末位置情報、非常送信機3,4から取得した送信機位置情報を登録することができる。
【0048】
制御部100は、マイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて各種の処理を行う。例えば、制御部100は、端末位置確認部122、解除信号送信部124及び解除終了信号送信部126として機能する。
【0049】
端末位置確認部122は、非常送信機3,4から非常信号を受信すると、解除信号を送信しようとする通信装置2の端末位置送信部46から端末位置情報を取得する。端末位置確認部122は当該端末位置情報と、当該通信装置2を所持する警備員10の非常送信機3又は当該警備員10が利用する移動車両18の非常送信機4の送信機位置送信部84から取得した送信機位置情報とが整合性を有するか否か判定する。当該判定では、比較される位置同士が所定の許容範囲内で一致する場合に整合性が有るとされる。整合性があると判断される例として、警備員が所持する通信装置2と警備員が所持する非常送信機3または移動車両18に設置される非常送信機4が所定範囲内にある場合が想定される。なお、これは一例であり予め許容範囲の判断対象となる装置等を適宜決定しておけばよい。
【0050】
解除信号送信部124は、対応関係情報120を参照し、非常信号を発した非常送信機3,4に対応する警備員10の通信装置2へ解除信号を送信する。その際、本実施形態では、端末位置確認部122にて、非常信号を発した非常送信機3,4とそれに対応する通信装置2とに位置の整合性が有ると判断されたことを解除信号の送信の要件としている。これにより、通信装置2は、非常信号を発した非常送信機3,4に対応する警備員10により携行されている場合には発信可能とされるが、例えば、警備員10が通信装置2を携行し忘れたり、紛失したり、また非常事態にて通信装置2を奪われたりした場合には発信を制限し不正使用を効果的に防止することが可能となる。
【0051】
解除信号送信部124は、非常信号を発した非常送信機3,4に対応する通信装置2に加え、当該通信装置2に対して所定の近傍領域内に位置する他の通信装置2(近傍通信装置)にも解除信号を送信するように構成することもできる。当該構成では、解除信号送信部124は対応関係情報120に登録されている各通信装置2の端末位置送信部46から端末位置情報を取得し、非常信号を発した非常送信機3,4に対応する通信装置2の端末位置情報と比較して近傍通信装置を特定する。
【0052】
例えば、本実施形態では、或る警備員10に対応する非常送信機3,4のうち非常送信機4のみから非常信号(特に移動車両18の事故に伴う非常信号)が受信された場合に、解除信号送信部124は近傍通信装置への解除信号の送信処理を行う。監視センタ14は例えば、移動車両18の事故により搭乗していた警備員10が負傷し非常送信機3の非常ボタンを押すことができないような状況となっているおそれがある場合に、その近くにいる警備員10に解除信号が発せられた移動車両18の位置へ状況確認に向かわせる。その際、上述の近傍通信装置への解除信号の送信により、確認に向かった警備員10は通信装置2で状況を監視センタ等に報告することができる。
【0053】
また、解除信号送信部124は警備装置5から警報信号を受信した場合或いは警備装置5が対処モードに設定されたことを通知する対処モード設定信号を警備装置5から受信すると、警備装置5の近傍通信装置に解除信号を送信する。当該構成では、解除信号送信部124は対応関係情報120に登録されている各通信装置2の端末位置送信部46から端末位置情報を取得し、警報信号を発した警備装置5の設置位置の情報と比較して近傍通信装置を特定する。
【0054】
なお、上述の近傍通信装置への解除信号の送信においても、センタ装置6は端末位置確認部122により近傍通信装置と、これに対応する非常送信機との位置の整合性の有無を調べ、整合性があることを送信の要件とすることができる。
【0055】
解除終了信号送信部126は、解除信号を送信した通信装置2へ解除終了信号を送信する。例えば、解除終了信号送信部126は、非常信号の受信時刻や解除信号の送信時刻からタイマを起動して所定時間の経過を計時し、当該タイマがタイムアップすると解除終了信号を送信する。
【0056】
また、解除終了信号送信部126は、解除信号を受信した通信装置2の端末位置送信部46から定期的に送信される端末位置情報に基づいて制限モードへの切り替えタイミングを決定し解除終了信号を送信することもできる。例えば、端末位置情報と送信機位置情報とを比較し、通信装置2が非常送信機3から所定距離以上離れた場合に、通信装置2が警備員10から奪われた等の事態を想定して、解除終了信号を送信する。近傍通信装置に対する上記タイマの計時開始は、非常信号を発した通信装置2やそれに対応する非常送信機3,4の位置、又は警報信号を発した警備装置5の建物12に、近傍通信装置の端末位置が到達した時点とすることもできる。また、非常送信機4からの非常信号によって解除信号を送信した場合において、通信装置2、非常送信機3及び非常送信機4の全てが位置の整合性を有しながら移動している場合には、例えば、移動車両18の急ブレーキ時等の加速度を衝突と誤検出して非常信号が発せられた等の状況が考えられ、移動車両18や搭乗している警備員10に非常事態は生じていないと判断可能である。このような場合には解除終了信号送信部126は解除終了信号を移動車両18に搭乗している警備員10の通信装置2や近傍通信装置へ送信する。
【0057】
図5は非常送信機3から非常信号が発せられた場合のセンタ装置6による通信装置2の制御を説明する概略のシーケンス図である。
【0058】
或る警備員10が携行している非常送信機3の非常ボタンを押すと(S140)、当該非常送信機3が非常信号をセンタ装置6へ送信する(S142)。その際、非常送信機3は送信機位置情報もセンタ装置6へ送信する。
【0059】
センタ装置6は対応関係情報120を検索して、非常信号を発した非常送信機3を携行する警備員10の通信装置2へ端末位置情報の取得要求を行う(S144)。
【0060】
通信装置2は当該要求を受けて、端末位置情報をセンタ装置6へ送信する(S146)。
【0061】
センタ装置6は、受信した端末位置情報と非常送信機3から受信した送信機位置情報とを比較して、それらの間に整合性があるかを確認する(S148)。整合性がある場合には、センタ装置6は解除信号を通信装置2へ送信する(S150)。
【0062】
通信装置2は解除信号を受信すると、モード設定部44は、使用者による電話や電子メールの発信を制限する制限モードから解除モードに切り替える(S152)。通信装置2は解除モードでは定期的に端末位置情報をセンタ装置6へ送信する(S154)。
【0063】
センタ装置6は解除信号を送信(S150)した後、タイマによる計時や端末位置情報の監視を行い(S156)、解除モードの終了タイミングを判定する(S158)。終了タイミングになると、センタ装置6は解除終了信号を通信装置2へ送信する(S160)。
【0064】
通信装置2は解除終了信号を受信すると、モード設定部44は、使用者による電話や電子メールの発信を解除する解除モードから制限モードに切り替える(S162)
【0065】
非常送信機4から非常信号が発せられた場合や警備装置5から警報信号が発せられた場合も図5とほぼ同様の動作が行われる。念のため、それらの場合についても簡単に説明する。
【0066】
図6は非常送信機3,4のうち非常送信機4のみから非常信号が発せられた場合のセンタ装置6による通信装置2の制御を説明する概略のシーケンス図である。
【0067】
或る警備員10が車載の非常送信機4の非常ボタンを押したり、当該非常送信機4が移動車両18のセンサ等の出力信号に基づいて事故を検知すると(S180)、当該非常送信機4は非常信号及び送信機位置情報を送信する(S182)。
【0068】
センタ装置6は対応関係情報120に登録された各警備員10の通信装置2へ端末位置情報の取得要求を行う(S184)。すなわち、この場合は、非常信号を発した非常送信機4を搭載した移動車両18を利用する警備員10以外の警備員10にも端末位置情報の取得要求が行われる。
【0069】
通信装置2は当該要求を受けて端末位置情報をセンタ装置6へ送信する(S186)。
【0070】
センタ装置6は、発報した非常送信機4に対応する警備員10(発報警備員)の端末位置情報とそれ以外の警備員10の端末位置情報とを比較して発報警備員の近傍領域内にいる警備員10(近傍警備員)を特定し(S188)、近傍警備員に対応する非常送信機3の送信機位置情報を取得する(S190)。この送信機位置情報は、既に述べたように、センタ装置6から非常送信機3へ要求して取得してもよいし、非常送信機3が定期的に送信する場合にはそれを利用してもよい。
【0071】
センタ装置6は、発報警備員及び近傍警備員それぞれについて端末位置情報と送信機位置情報との整合性を確認し(S192)、整合性がある警備員の通信装置2へ解除信号を送信する(S194)。これにより、発報警備員及び近傍警備員の通信装置2は制限モードから解除モードに切り替わる(S196)。解除モードの各通信装置2は定期的に端末位置情報をセンタ装置6へ送信する(S198)。
【0072】
センタ装置6はタイマによる計時や端末位置情報の監視を行い(S200)、各通信装置2について解除モードの終了タイミングを判定し(S202)、終了タイミングになった通信装置2に対して解除終了信号を送信する(S204)。これにより、発報警備員及び近傍警備員の通信装置2は解除モードから制限モードに切り替わる(S206)。
【0073】
警備装置5から警報信号が発せられた場合のシーケンスが図6のシーケンスと相違する主な点は、ステップS180,S182の部分が、建物12に設置した侵入検知センサが異常検知し、それに伴い警備装置5が警報信号をセンタ装置6へ送信するという内容となる点、或いは、警備装置5が警備員により対処モードに設定されると、それに伴い警備装置5が対処モード設定信号をセンタ装置6へ送信するという内容となる点、及び発報警備員が存在しないという点であり、それ以外は基本的に図6と同内容となる。発報警備員が存在しないという点に関しては例えば、ステップS188は、発報警備員の近傍領域ではなく、警備装置5の近傍領域にて近傍警備員を特定するという内容となり、また端末位置情報と送信機位置情報との整合性確認(S192)や制限モードと解除モードとの切り替え(S194〜S206)の対象は近傍警備員のみとなる。
【0074】
本実施形態では通信装置2での発信の宛先や通話時間(又は通話終了時刻)或いは電子メール本文などは発信履歴50に記録され、当該発信履歴50は消去、改竄されないよう発信履歴保護部48で保護されるが、これら発信履歴をさらにセンタ装置6において記録してもよい。その構成では、例えば、通話或いは電子メール送信が終了すると通信装置2が発信した宛先や電話であれば通話時間を、電子メールであれば本文及び件名等をセンタ装置6へ送信し、センタ装置6は当該発信履歴を記憶部120に記録する。また、上述のセンタ装置6が解除終了信号を送信する構成においては解除終了信号を通信装置2に送信できた時刻に基づいて、制限時間内の通話であったか、または制限時間をどの程度超えた通話であったかを把握でき、センタ装置6はこれを記憶部120に記録する。
【0075】
なお、上述のように通信装置2からの発信に対しては制限が設けられるが、通信装置2への着信に対しては制限は設けない。通常時は発信を制限し、緊急事態発生など発信が必要な場合には非常操作を要求した上で解除することで、不要不急の通話を抑制することができ、情報漏洩の機会が減る。また、警備員10は発信に際して非常操作が要求されたり、センタ装置6にて非常信号の受信を記録されたり、通話時間を制限されたりすることで、外部に対して情報を発するという行為や情報を発しようとしている場所の状況についての注意を喚起され、通話内容や周囲の人の存在や視線に配慮するようになり、情報漏洩が起こりにくくなることが期待される。
【0076】
なお、上記に説明した実施形態では、通信装置2からの発信を制限する例について説明したが、110番(警察)・118番(海上保安)・119番(消防)などのいわゆる緊急特番については例外として無条件に発信を可能としてよい。
【符号の説明】
【0077】
2 通信装置、3,4 非常送信機、5 警備装置、6 センタ装置、8 通信網、10 対処員、12 建物、14 監視センタ、16 移動体通信基地局、20,60,100 制御部、22,62,102 記憶部、24,64 無線部、26,66 操作部、28 カメラ、30 マイクロフォン、32 スピーカー、34 表示部、36 振動モータ、40,80 通信制御部、42 カメラ制御部、44 モード設定部、46 端末位置送信部、48 発信履歴保護部、50 画像データ、82 非常信号送信部、84 送信機位置送信部、86 センタ装置アドレス情報、102 記憶部、120 対応関係情報、122 端末位置確認部、124 解除信号送信部、126 解除終了信号送信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6