特許第6000871号(P6000871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000871
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20160923BHJP
   A47C 3/025 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   B60N2/44
   A47C3/025
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-23682(P2013-23682)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-151791(P2014-151791A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永安 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄司
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−502368(JP,A)
【文献】 実開平02−051540(JP,U)
【文献】 特開2003−169725(JP,A)
【文献】 特開2003−169730(JP,A)
【文献】 実公昭38−009476(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0264711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
A47C 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の荷重を支えるための骨格となるシートフレームと、
該シートフレーム上に載置されて、可撓性を持って着座乗員の荷重を受け止めるシートパッドとを有する乗物用シートであって、
前記シートフレームに支持され、前記シートパッドの表面上の中央部に対応する主要部を裏側から支え、所定の曲面に沿って形成された支持体と、
前記支持体と前記シートパッドの主要部との間に設けられ、前記支持体の曲面に沿って移動可能とされた移動体とを有し、
前記シートパッドは、前記主要部が前記移動体によって動ける状態で支えられ、前記主要部以外の部分が前記シートフレームによって定位置で支えられ、
前記支持体の曲面は、球面であることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項において、
前記シートパッドは、前記主要部と主要部以外の部分とが互いに切り離されていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座乗員の荷重を支えるための骨格となるシートフレームと、このシートフレーム上に載置されて、可撓性を持って着座乗員の荷重を受け止めるシートパッドとを有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートに乗員が長時間同じ姿勢で着座していると、乗員の疲労度合は高まる。そこで、シートに着座した乗員が着座姿勢を変え易くしたシートが開発されている(下記特許文献1参照)。係るシートは、シートクッションが車両フロア上のベース部材に対して左右方向に揺動可能とされている。その結果、乗員は、着座姿勢のまま体を左右に揺動させ易くなり、体内の血行を促進して疲労度合が高まるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4095583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のシートでは、シートクッション全体がベース部材に対して左右方向に揺動可能とされているため、乗員の着座姿勢が不安定となり、乗り心地が悪い。
このような問題に鑑み本発明の課題は、乗物用シートにおいて、乗員の体はホールドしながら部分的に体を動かし易くすることにより、乗員の着座姿勢は安定に維持しながら体内の血行を促進して疲労度合が高まるのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、着座乗員の荷重を支えるための骨格となるシートフレームと、該シートフレーム上に載置されて、可撓性を持って着座乗員の荷重を受け止めるシートパッドとを有する乗物用シートであって、前記シートフレームに支持され、前記シートパッドの表面上の中央部に対応する主要部を裏側から支え、所定の曲面に沿って形成された支持体と、前記支持体と前記シートパッドの主要部との間に設けられ、前記支持体の曲面に沿って移動可能とされた移動体とを有し、前記シートパッドは、前記主要部が前記移動体によって動ける状態で支えられ、前記主要部以外の部分が前記シートフレームによって定位置で支えられることを特徴とする。
第1発明によれば、シートパッドは、主要部が移動体によって動ける状態で支えられ、主要部以外の部分がシートフレームによって定位置で支えられるので、乗員は、シートパッドの主要部以外の部分によって着座姿勢を安定に維持することができる。また、乗員は、シートパッドの主要部によって着座姿勢のまま体を揺動させ易くなり、骨盤を腰椎付近を中心に回転させ、また座圧を変化させて、体内の血行を促進して疲労度合が高まるのを抑制することができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記支持体の曲面は、球面であることを特徴とする。
第2発明によれば、シートパッドの主要部を支持体の球面に沿って、前後、左右の全方向に揺動させることができる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記シートパッドは、前記主要部と主要部以外の部分とが互いに切り離されていることを特徴とする。
第3発明によれば、主要部が主要部以外の部分から切り離されているため、主要部は主要部以外の部分に拘束されることなく、乗員によって自由に揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の分解斜視図である。
図2】上記実施形態の幅方向垂直断面図である。
図3】上記実施形態の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1、2により本発明の一実施形態を説明する。この実施形態は、車両のフロントシートのシートクッションに本発明を適用したものである。各図では、矢印によりシートを車両に搭載した際の各方向を示している。
係るシートクッションは、従来公知の車両用シートと同様に、着座乗員の荷重を支えるための骨格となるクッションフレーム10(本発明のシートフレームに相当)の上に、可撓性を持って着座乗員の荷重を受け止めるクッションパッド21(本発明のシートパッドに相当)が載置され、更に、それらクッションフレーム10及びクッションパッド21がクッションカバー30によって被われて成る。係るシートクッションの基本構成は従来周知のものと同一であり、詳細な図示及び説明は省略する。
クッションフレーム10は、左右のサイドフレーム11、12にクッションパネル14及びリヤパイプ13が溶接結合されて成る。クッションパネル14は、左右のサイドフレーム11、12の前端から後方に向かって延びてリヤパイプ13上に溶接され、クッションパッド21を支持する面を形成している。
【0010】
クッションパネル14の後方側でリヤパイプ13の前側の板面は、下方に凸の球面(本発明の所定の曲面に相当)にプレス成形されており、この球面部分が支持体14Aとされている。支持体14Aの上面には、その球面に沿った球面形状の金属板であるボールガイド42が載置されている。このボールガイド42には、その球面上に略均等にベアリングとしての9個のボール42Aを収容して保持する孔が形成されている。なお、図1ではボール42Aは9個中の4個のみが示され、他の5個は記載を省略している。
ボールガイド42の上面には、その球面に沿った球面形状の金属板であるパッド受体41(本発明の移動体に相当)が載置され、図2に示すように、ボールガイド42の周縁部はパッド受体41の周縁部によりカシメ処理されて両者は一体化されている。
更に、パッド受体41の上面には、その球面に対応した凸部22Aを下面に有するメインパッド22が載置されている。このメインパッド22は、上記クッションパッド21の表面上の中央部に対応する主要部を切り出したものに相当し、クッションパッド21は、一般的なクッションパッドからメインパッド22に相当する部分が切り欠かれて形成されている。ここで、メインパッド22は、本発明のシートパッドの主要部に相当し、クッションパッド21は、本発明の主要部以外の部分に相当する。
【0011】
このように構成された車両用シートは、乗員Pが着座すると、乗員Pの大腿部をクッションパッド21上に支持し、乗員Pの臀部の殆どをメインパッド22上で支持する。このため、乗員Pは、クッションパッド21によって支持されて着座姿勢を安定して維持することができる。また、乗員Pは、メインパッド22によって着座姿勢のまま体を揺動させることができ、骨盤を腰椎付近を中心に回転させ、また座圧を変化させて、体内の血行を促進して疲労度合が高まるのを抑制することができる。
詳細には、シートクッション上に着座した乗員Pが上体を前後、或いは左右に揺動させると、上体の傾きと反対方向にメインパッド22がパッド受体41と共に支持体14A上を移動する。このとき、上体の傾き方向と反対側の乗員Pの臀部が浮き上るように動き、その部分のメインパッド22との接触圧力が低くなる。
【0012】
図3には、シートに着座した乗員Pが矢印Tで示すように上体を右に傾けた状態を示している。このとき、メインパッド22は網掛け矢印で示すように左側に移動し、乗員Pの臀部の左側がメインパッド22から浮き上がる方向に動くようになり、臀部の左側とメインパッド22との接触圧が低くなる。図3とは反対に、シートに着座した乗員Pが上体を左に傾けた場合には、メインパッド22は網掛け矢印方向とは反対の右側に移動し、乗員Pの臀部の右側がメインパッド22から浮き上がる方向に動くようになり、臀部の右側とメインパッド22との接触圧が低くなる。
このようにシートに着座した乗員Pが上体を揺動させて、臀部とメインパッド22との接触圧力を変化させると、乗員Pの臀部にマッサージ効果を生じさせ、臀部の血行を促進して乗員Pの体の疲労度合が高まるのを抑制することができる。
また、上述のように乗員Pの上体の動きに応じてメインパッド22が前後、或いは左右に移動するため、乗員Pは、あたかも健康器具を使用している場合のように上体を動かし易くなり、運動効果により体の血行を促進して疲労度合が高まるのを抑制することができる。
なお、メインパッド22は、クッションパッド21と共にクッションカバー30によって被われており、メインパッド22は、クッションカバー30を介してクッションパッド21に連結されていることになる。しかし、この実施形態では、クッションカバー30に通常より高い伸縮性を持たせており、メインパッド22は、その移動時、クッションカバー30を介してクッションパッド21に引張られることなく、自由に移動することができる。
【0013】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.上記実施形態では、クッションパッド21は、メインパッド22と別体に構成されていたが、両者は相対移動可能に一体に形成されていても良い。
2.上記実施形態では、クッションパッド21の左右両側部に後方から前方に向けて切り込みが入れられてクッションパッド21とメインパッド22とが形成されたが、この切り込みによって形成される面を垂直面とせず、左右方向に向かうに従って高さが高くなる傾斜面で形成し、メインパッド22がクッションパッド21の左右幅方向全体となるようにすることもできる。その場合、クッションパッド21の左右両側部ではクッションパッド21とメインパッド22とが上下方向に形成されるため、乗員の座圧を受けると、クッションパッド21とメインパッド22とが直接接触してしまうことになるが、それを防止してクッションパッド21とメインパッド22との相対移動を可能とするように、両者間に摺動部材を介在させる必要がある。
3.上記実施形態におけるボールガイド42は、クッションパネル14又はパッド受体41に一体化されても良い。また、ボールガイド42に代えて、摺動摩擦抵抗の小さい滑り素材を、クッションパネル14又はパッド受体41の対向面にコーティングしても良い。
4.支持体14Aの球面は、上に凸の球面とされても良い。また、支持体14Aは、上記実施形態のように一体のものとして形成されず、複数個に分割されたものの組合せで構成されても良い。
【0014】
5.上記実施形態では、支持体14A及びパッド受体41を、シートクッションに設置して、本発明をシートクッションに適用した場合を説明したが、支持体14A及びパッド受体41を、シートバックに設置して、本発明をシートバックに適用しても良い。
6.上記実施形態では、支持体14Aがクッションパネル14に一体に形成される例を説明したが、支持体14Aはクッションパネル14とは別体に形成されても良い。
7.上記実施形態では、パッド受体41がメインパッド22と別体に形成される例を説明したが、メインパッド22自体に一体に形成されても良い。
8.支持体14Aの曲面は、球面以外でも良く、本発明を上記実施形態のようにシートクッションに適用した場合であれば、メインパッド22の前部に比べて後部が大きく移動するような曲面に形成することができ、本発明をシートバックに適用した場合であれば、メインパッド22の上部に比べて下部が大きく移動するような曲面に形成することができる。
9.上記実施形態では、本発明を車両用シートに適用した場合を説明したが、航空機、船、電車など他の乗物のシートに適用しても良い。
【符号の説明】
【0015】
10 クッションフレーム(シートフレーム)
11、12 サイドフレーム
13 リヤパイプ
14 クッションパネル
14A 支持体
21 クッションパッド(シートパッド)(主要部以外の部分)
22 メインパッド(主要部)
22A 凸部
30 クッションカバー
41 パッド受体(移動体)
42 ボールガイド
42A ボール
図1
図2
図3