(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000888
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】接合部補強用カラーの取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20160923BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20160923BHJP
B62D 25/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
F16B5/02 F
B62D21/00 Z
B62D25/00
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-69346(P2013-69346)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-190518(P2014-190518A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−103356(JP,A)
【文献】
特開2006−103480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
B62D 21/00
B62D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する平行な2面を有するアルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部に接合部補強用のカラーが取り付けられてなる接合部補強用カラーの取付構造であって、
前記カラーは、ボルト挿通孔が形成された筒状部と、前記アルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部に取り付けられる取付片と、前記筒状部と前記取付片を連結する連結片と、前記筒状部から前記連結片とは逆方向に延びる延設片および前記延設片の先端から直交する方向に分岐する分岐片よりなる補強片を、有するアルミニウム合金押出形材からなり、
前記分岐片の寸法が前記アルミニウム合金押出中空材の内部空間の幅の1/3以下であり、
且つ、前記アルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部の対向する平行な2面に、ボルト貫通孔が夫々設けられて、他の部材とのボルトによる接合部が形成されており、
前記カラーは、前記アルミニウム合金押出中空形材の対向する2面のボルト貫通孔間に、前記ボルト貫通孔とボルト挿通孔が連通するようにして、前記アルミニウム合金押出中空形材の開口する端縁側から前記筒状部が挿入されると共に、前記アルミニウム合金押出中空形材の端縁に前記取付片が固着されることで、前記アルミニウム合金押出形材に取り付けられていることを特徴とする接合部補強用カラーの取付構造。
【請求項2】
前記補強片の上下端が、前記アルミニウム合金押出中空形材の内面に固着されていることを特徴とする請求項1記載の接合部補強用カラーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部に接合部補強用のカラーが取り付けられてなる接合部補強用カラーの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から周知の通り、自動車やその他種々の車両などの車体のフレーム類、メンバー類、補強材などの構造部材、或いは車両に用いる種々の構造部材や構造部品(以下、単に構造部材と説明する。)には、比較的高強度な鋼材やアルミニウム合金材が使用されている。
【0003】
特に、自動車やその他種々の車両などの場合、車体衝突事故の問題があり、衝突時に強い衝撃荷重が加わる構造部材には、単なる高強度化だけではなく衝突時の衝撃荷重に対して破断や座屈変形しないような高い変形強度が求められる。
【0004】
このような構造部材の用途として、従来から高張力鋼板の加工品や成形品が広く用いられているが、近年では車体の軽量化という観点から、構造用部材自体を軽量化することも望まれている。そのため、高い変形強度が求められる構造部材の用途にも、これら高張力鋼板に替えてアルミニウム合金材を適用することが検討或いは実用化され始めている。
【0005】
特に、アルミニウム合金押出形材を用いる場合は、アルミニウム合金板を用いる場合と異なり、鋼板並みの難しい成形を必要とせず、その断面が長手方向(押出方向)に一様という押出形材特有の形状を活かすことができる断面形状を有する構造部材に有利に適用することができる。例えば、アルミニウム合金押出形材を中空構造とすることで、鋼板を用いて成形や溶接などによって中空構造としている構造部材にそのまま代えることができる。また,アルミニウム合金押出形材を中空構造とすることで、中空部を有しないアルミニウム合金押出形材に比して、前記変形強度も大きくすることができる。そのため、中空構造を有する押出形材は、特許文献1〜3に記載のように、高い変形強度が求められる車体の構造部材に用いることが近年では多数検討されており、実用化もされている。
【0006】
これらの押出形材製の車体構造部材は、その端部で他の部材と接合されることが多い。その接合には、溶融溶接や摩擦攪拌接合或いはセルフピアシングリベットやTOXなどの機械的接合などが用いられるが、特に接合される部材が鋼など異種材料と接合される場合には、ボルト接合が採用されることが多い。
【0007】
押出形材は、その断面形状が長手方向(押出方向)に一様な形状であるため、所定の強度或いは剛性を確保するための肉厚などの断面形状は、最も高い応力が加わる部位で定まることになる。一般的には他の部材と接合され、荷重に対する支持点或いは荷重作用点近傍で、最も高い応力が定まることは周知である。つまり、前記したようなボルト接合部において荷重負荷時に変形強度が高いことが求められる。
【0008】
一般的に、アルミニウム合金押出中空形材を他の部材とボルト接合する場合は、アルミニウム合金押出中空形材の端部に、カラーと呼ばれる接合部補強用の構造部材を挿入し、アルミニウム合金押出中空形材に設けられたボルト貫通孔とカラーに設けられたボルト挿通孔にボルトを挿通することで接合されている。このようにカラーを用いてボルト接合することで、ボルト締結時にアルミニウム合金押出中空形材の端部が変形せず、また、十分なボルト締結軸力を確保することで、ボルト接合強度を高くできることが知られている。
【0009】
この接合部補強用のカラーの形状には様々な形状があるが、最も一般的な形状は、
図14,15に示すような円筒状である。しかし、カラー3が単なる円筒状で、アルミニウム合金押出中空形材1と溶接等の固着が必要な場合、アルミニウム合金押出中空形材1の中空部からの溶接等の固着作業が必要となり、作業が非常に困難であり、且つコスト増加も考えられる。そのため、特許文献4により、アルミニウム合金押出中空形材の一部にバーリング加工を施すことでカラーと嵌合させる方法も提案されている。尚、11はボルト接合作業に用いるボルトである。
【0010】
しかし、バーリング加工は手間を伴う方法であり、特にアルミニウム合金押出中空形材1は、比較的厚肉となることが多く、且つ、伸びが小さいため、バーリング加工によって破断してしまうこともあり、特許文献4記載の提案をそのまま採用することは困難である。また、同時に弾性率の低さに起因してスプリングバック量が大きくなり、所定のかしめ強度を得ることも難しいという問題があった。
【0011】
そのため、
図16,17に示すように、アルミニウム合金押出中空形材1の長手方向端部付近に形成された大きめのボルト貫通孔2から、孔明き円板状(ドーナツ状)の鍔部3aが形成された鍔付き円筒状のカラー3を挿入し、鍔部3aをアルミニウム合金押出中空形材1の外表面に溶接するという手法が、従来から一般的に行われている。しかしながら、鍔付き円筒状のカラー3は、切削或いは鍛造などにより製造する必要があり、単なる円筒状のカラー3と比較するとコストが大幅に上昇するという問題がある。また、アルミニウム合金押出中空形材1の溶接部周辺が焼鈍されることで強度が低下するという問題も同時に発生する。このアルミニウム合金押出中空形材1の溶接部周辺の強度低下を防止するためには、アルミニウム合金押出中空形材1の肉厚を厚くする必要があり、部品自体の質量が大幅に増加するという新たな問題を発生してしまう。
【0012】
そのため、溶接部周辺の焼鈍を避け、熱ひずみが発生しにくい構造として、特許文献5記載の車両用サブフレームが提案されている。この車両用サブフレームでは、筒状体の外周面に両側に突出するよう一対のリブを形成したカラーを、フレーム部材(アルミニウム合金押出中空形材)に形成された円形孔およびスリットから挿入し、リブを用いて接合している。しかしながら、この方法では、フレーム部材にボルト接合孔となる円形孔に加えてその円形孔に連続するスリットまで形成する必要があり、フレーム部材が構造的に弱くなるという問題がある。
【0013】
また、特許文献6により、中空部材(アルミニウム合金押出中空形材)の開口する端縁側からカラーを挿入する連結構造も提案されている。しかしながら、この提案では、かしめ接合でカラーを仮止めする構造であるため、
図18に示すように、中空部材(アルミニウム合金押出中空形材1)の開口する端縁側から他の部材15を挿入して接合するような場合には、適用できない構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−240543号公報
【特許文献2】特開2008−285019号公報
【特許文献3】特開2009−35244号公報
【特許文献4】特開2005−1603号公報
【特許文献5】特開2008−105529号公報
【特許文献6】特開2007−2857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、アルミニウム合金押出中空形材に接合部補強用のカラーを取り付ける際にたとえ溶接を採用したとしても、アルミニウム合金押出中空形材のボルト接合部が熱影響により強度低下することがなく、アルミニウム合金押出中空形材の熱変形を防止でき、且つ、アルミニウム合金押出中空形材の開口する端縁側から他の部材を挿入して接合するような場合にも対応することが可能で、更には低コストで部材を容易に製造することができる接合部補強用カラーの取付構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、対向する平行な2面を有するアルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部に接合部補強用のカラーが取り付けられてなる接合部補強用カラーの取付構造であって、前記カラーは、ボルト挿通孔が形成された筒状部と、前記アルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部に取り付けられる取付片と、前記筒状部と前記取付片を連結する連結片
と、前記筒状部から前記連結片とは逆方向に延びる延設片および前記延設片の先端から直交する方向に分岐する分岐片よりなる補強片を、有するアルミニウム合金押出形材からなり、
前記分岐片の寸法が前記アルミニウム合金押出中空材の内部空間の幅の1/3以下であり、 且つ、前記アルミニウム合金押出中空形材の長手方向端部の対向する平行な2面に、ボルト貫通孔が夫々設けられて、他の部材とのボルトによる接合部が形成されており、前記カラーは、前記アルミニウム合金押出中空形材の対向する2面のボルト貫通孔間に、前記ボルト貫通孔とボルト挿通孔が連通するようにして、前記アルミニウム合金押出中空形材の開口する端縁側から前記筒状部が挿入されると共に、前記アルミニウム合金押出中空形材の端縁に前記取付片が固着されることで、前記アルミニウム合金押出形材に取り付けられていることを特徴とする接合部補強用カラーの取付構造である。
【0019】
請求項
2記載の発明は、前記補強片の上下端が、前記アルミニウム合金押出中空形材の内面に固着されていることを特徴とする請求項
1記載の接合部補強用カラーの取付構造である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の接合部補強用カラーの取付構造によると、アルミニウム合金押出中空形材に接合部補強用のカラーを取り付ける際にたとえ溶接を採用したとしても、アルミニウム合金押出中空形材へのカラーの取り付けは、取付片をアルミニウム合金押出中空形材の端縁に溶接することにより行われるので、荷重負荷時の応力が低い部分での溶接となり、その結果、溶接により熱影響を受ける溶接軟化部は、ボルト接合部とは離れた位置に形成されることとなり、アルミニウム合金押出中空形材のボルト接合部が熱影響により強度低下することがなく、容易に強度を確保することができる。また、アルミニウム合金押出中空形材が熱影響を受ける部位はその端縁付近となるため、アルミニウム合金押出中空形材の熱変形を防止することができる。
【0021】
また、アルミニウム合金押出中空形材へのカラーの取り付けは、取付片をアルミニウム合金押出中空形材の端縁に固着することにより行われるので、アルミニウム合金押出中空形材外部での取付作業となり、アルミニウム合金押出中空形材へのカラーの取り付けを容易に行うことができる。
【0022】
更には、アルミニウム合金押出中空形材の開放された端部側から他の部材を挿入してボルト接合するような場合にも、アルミニウム合金押出中空形材の内面にかしめや溶接による突起物が形成されることがないため、対応することが可能である。また、用いるカラーはアルミニウム合金押出形材からなるため、低コストで容易に製造することができる。
【0023】
また、アルミニウム合金押出中空形材のボルト貫通孔より中央側領域をカラーによって局所的に補強することで、アルミニウム合金押出中空形材に荷重が付与された場合の変形を抑制することができ、質量の増加を最小限に抑えて変形強度を高くすることができる。
【0024】
また、より効果的にアルミニウム合金押出中空形材の変形を抑制することができる。
【0025】
請求項
2記載の接合部補強用カラーの取付構造によると、更に効果的にアルミニウム合金押出中空形材の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の
参考例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図2】同
参考例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の更に異なる
参考例のアルミニウム合金押出中空形材へのカラーの取付部のみを抜き出した断面図である。
【
図5】本発明の更に異なる
参考例に用いるカラーを示す斜視図である。
【
図6】同
参考例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付けた後の状態の一例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の
一実施形態に用いるカラーを示す斜視図である。
【
図8】本発明の
異なる実施形態に用いるカラーを示す斜視図である。
【
図9】本発明の更に異なる
参考例に用いるカラーを示す斜視図である。
【
図10】本発明の更に異なる実施形態に用いるアルミニウム合金押出中空形材を示す斜視図である。
【
図11】本発明の更に異なる
参考例を示す斜視図である。
【
図12】本発明の更に異なる
参考例を示す斜視図である。
【
図13】本発明の更に異なる
参考例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図14】従来技術の一例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図15】従来技術の一例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【
図16】従来技術の他例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図17】従来技術の他例を示し、アルミニウム合金押出中空形材にカラーを取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【
図18】アルミニウム合金押出中空形材の開口する端縁側から他の部材を挿入して接合する事例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
【0028】
図1および
図2は本発明の一実施形態を示し、
図1はアルミニウム合金押出中空形材1に接合部補強用のカラー3を取り付ける前の状態、
図2はアルミニウム合金押出中空形材1に接合部補強用のカラー3を取り付けた後の状態を夫々示す。
【0029】
アルミニウム合金押出中空形材1は、自動車やその他種々の車両などの車体のフレーム類、メンバー類、補強材などの構造部材、或いは車両に用いる種々の構造部材や構造部品などに用いることができる。アルミニウム合金押出中空形材1とすることで材料の軽量が図れると共に、成形の必要もなくなる。
【0030】
このアルミニウム合金押出中空形材1の長手方向に直交する方向の断面形状は矩形状であり、長手方向端部の対向する平行な2面には、他の部材15(
図1,2には特に図示しない。)と接合するためのボルト貫通孔2が設けられて矩形断面貫通型の接合部を形成している。また、長手方向端部の対向する2面(内面)には突起物は形成されておらず、平坦な面となっている。尚、
図1,2には長手方向に直交する方向の断面形状が矩形のアルミニウム合金押出中空形材1を示すが、必ずしも断面形状が矩形である必要はなく、ボルト貫通孔2,2が形成される対向する平行な2面を有した形状であれば良い。例えば、
図10に示すような両側面が丸みを帯びた形状や、
図11に示すような中リブ16を有するような形状、或いは、
図12に示すような台形状の断面形状であっても良い。
【0031】
尚、
図3〜9に示す実施形態に用いるアルミニウム合金押出中空形材1も、
図1,2に示す実施形態のアルミニウム合金押出中空形材1と同一構成の部材であるため、特に詳しい説明はしない。
【0032】
カラー3は、アルミニウム合金押出中空形材1と同様にアルミニウム合金押出形材で形成される。
図1,2に示す実施形態のカラー3は、ボルト挿通孔4が形成された円筒状の筒状部5と、アルミニウム合金押出中空形材1の開口する端縁側を被うような矩形の平板状の取付片6と、筒状部5と取付片6を連結する平板状の連結片7より構成されている。尚、筒状部5に形成されたボルト挿通孔4は、アルミニウム合金押出中空形材1に形成されたボルト貫通孔2と同一径かやや大きめの径であることが好ましい。
【0033】
カラー3の高さ寸法は、筒状部5と連結片7が、アルミニウム合金押出中空形材1の対向する2面の間隔、即ち、アルミニウム合金押出中空形材1の内周面の高さ寸法と同じ寸法、取付片6も、アルミニウム合金押出中空形材1の内周面の高さ寸法と同じ寸法であることが好ましい。カラー3がこのような形状であれば、押出形材で形成されるカラー3を長手方向に切断するのみで作製することが可能になり、安価に製造ができる。また、取付片6の横幅は、少なくともアルミニウム合金押出中空形材1の端縁と固着できる幅を有する必要があり、アルミニウム合金押出中空形材1の横幅(長手方向に直交する方向の横幅)と同じ寸法であることが好ましい。
【0034】
アルミニウム合金押出中空形材1の対向する2面のボルト貫通孔2,2間に、ボルト貫通孔2,2と、筒状部5のボルト挿通孔4が連通するようにして、筒状部5をアルミニウム合金押出中空形材1の開口する端縁側から挿入すると、取付片6はアルミニウム合金押出中空形材1の端部形状に応じた形状を有していることで、その端縁に当接することになる。尚、
図1,2に示す実施形態のカラー3の取付片6と連結片7は直交するように交わっているが、
図13に示すように、アルミニウム合金押出中空形材1の長手方向端部が斜めに切断されたような形状である場合は、その角度に合わせて取付片6と連結片7が斜めに交わることになる。前記した当接部を溶接等の手段で固着することでアルミニウム合金押出中空形材1の端縁に取付片6が取り付けられる。固着手段としては溶接による取り付けが好ましいが、接着、固定具による取り付けであっても構わない。尚、11は、アルミニウム合金押出中空形材1と他の部材15(
図1,2には図示しない。)の接合作業に用いるボルトである。
【0035】
図3は本発明の異なる実施形態を示す。この実施形態では、
図1,2に示す実施形態と、カラー3の取付片6の形状が異なる。取付片6の形状が平板状ではなく、両端に筒状部5側に折れ曲がったような折曲片12が形成された形状である。また、カラー3の高さ寸法がアルミニウム合金押出中空形材1の内周面の高さ寸法よりも低く、アルミニウム合金押出中空形材1の端面に形成された隙間からアルミニウム合金押出中空形材1の内部に他の部材15(
図3には図示しない。)を挿入して接合するような構成になっている。
図3に示す実施形態では、両端の折曲片12,12で抱き込むようにしてカラー3をアルミニウム合金押出中空形材1の端縁に仮止めした後に溶接等で固着すれば、カラー3をアルミニウム合金押出中空形材1に取り付けることができる。尚、カラー3の断面形状は押出加工によって比較的自由に設定可能であり、このような折曲片12や、
図13に示すような端部の面取り形状なども大きなコストアップ無しに形成することができる。
【0036】
また、
図4に示すように、アルミニウム合金押出中空形材1に一定の厚みがある場合は、その端縁に段部13を形成して、その段部13をカラー3の取付片6の位置決め部とすることができる。
【0037】
図5は本発明の異なる実施形態に用いるカラー3を示す。この実施形態のカラー3が、
図1,2に示す実施形態のカラー3と異なるのは、筒状部5から連結片7とは逆方向に補強片8が延設していることである。この補強片8の上下端縁がアルミニウム合金押出中空形材1の内面に当接していることが好ましいが、アルミニウム合金押出中空形材1の内面に溶接等で固着されていることがより好ましい。尚、アルミニウム合金押出中空形材1の内部に、
図18に示すような他の部材15が挿入されている場合は、補強片8の上端縁等がこの部材15に当接されていることが好ましい。また、
図6に示すように、この溶接はアルミニウム合金押出中空形材1に設けたトリム孔14から行うことができる。また、補強片8の肉厚は製品としての必要強度に応じてその長さ、肉厚を適宜設定できる。
【0038】
ボルト貫通孔2よりアルミニウム合金押出中空形材1の中央側では、端縁側より比較的高い応力が加わる。特にアルミニウム合金押出中空形材1が曲げ荷重を受けるような部材である場合,支持点であるボルト貫通孔2付近が最も高い曲げモーメントを受け、その後荷重点に近づくにつれて曲げモーメントは減少、つまり応力が低減されていく。カラー3が補強片8を有することで、ボルト貫通孔2よりもアルミニウム合金押出中空形材1中央側までカラー3を延ばすことで、荷重負荷時のアルミニウム合金押出中空形材1の断面変形や座屈変形を抑制することが可能になり、変形強度の向上という観点で好ましい。
【0039】
図7は本発明の更に異なる実施形態に用いるカラー3を示す。この実施形態のカラー3が、
図5に示す実施形態のカラー3と異なるのは、補強片8が、筒状部5から連結片7とは逆方向に延びる延設片9と、前記延設片9の先端から直交する方向に分岐する分岐片10よりなることである。これら延設片9と分岐片10の上下端縁もアルミニウム合金押出中空形材1の内面に当接していることが好ましいが、上下端がアルミニウム合金押出中空形材1の内面に溶接等で固着されていることがより好ましい。
【0040】
分岐片10は延設片9の先端から直交する両側方向に同一長さ分だけ延設していることが好ましいが、その寸法はアルミニウム合金押出中空形材1の内面空間の幅の1/3以下であることがより好ましい。このように、補強片8を延設片9と分岐片10で構成することで、より効果的にアルミニウム合金押出中空形材1の内側への変形を抑制することができる。
【0041】
尚、分岐片10の寸法(横幅)がアルミニウム合金押出中空形材1の内面空間の幅の1/3以下であることがより好ましいとした理由は、座屈変形の際、分岐片10の変形は、その横幅中央が最も内側に大きく凹むように変形し、それよりも端縁側の変形は小さいため、内面空間の1/3以下の幅で十分であるからである。アルミニウム合金押出中空形材1の横幅中央付近をカラー3で支持して変形を拘束することで、効果的にアルミニウム合金押出中空形材1の変形を抑制することができる。いいかえれば、アルミニウム合金押出中空形材1の内面空間の幅の1/3を超える寸法の分岐片10をカラー3に設けても、その両端縁付近はアルミニウム合金押出中空形材1の座屈抑制に大きく寄与せず、逆にカラー3の質量を増加させてしまうという問題すら生じるからである。
【0042】
図8は本発明の更に異なる実施形態に用いるカラー3を示す。この実施形態のカラー3は、筒状部5が更に連結片7で連結された2連のタイプである。このカラー3は、長手方向端部の対向する2面の夫々に、他の部材とボルト接合するためのボルト貫通孔2が2ヶ所設けられて矩形断面貫通型の接合部が形成されたアルミニウム合金押出中空形材1に対応することができる。このようなカラー3を用いることで2つ以上のボルト接合部の位置決めを同時にすることで加工時間の短縮が可能となる。
【0043】
図9は本発明の更に異なる実施形態に用いるカラー3を示す。この実施形態のカラー3は、ボルト挿通孔4が形成された円筒状の筒状部5と、アルミニウム合金押出中空形材1の開口する端縁側を被うような矩形の平板状の取付片6と、筒状部5と取付片6を連結する2枚の平板状の連結片7,7より構成されている。また、ボルト挿通孔4は筒状部5の中心から偏心した位置に形成されている。カラー3がこのような形状であれば、筒状部5の一部が、
図5あるいは
図7などに示す連結片7と逆方向に延在する補強片8の役目を果たすことになる。尚、前記したような役目は果たさないが、筒状部5の形状は、例えば、断面C字状、角管状等であっても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1…アルミニウム合金押出中空形材
2…ボルト貫通孔
3…カラー
3a…鍔部
4…ボルト挿通孔
5…筒状部
6…取付片
7…連結片
8…補強片
9…延設片
10…分岐片
11…ボルト
12…折曲片
13…段部
14…トリム孔
15…他の部材
16…中リブ