特許第6000894号(P6000894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000894
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】車両用携帯機
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/24 20130101AFI20160923BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20160923BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20160923BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20160923BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   B60R25/24
   E05B49/00 J
   F02N11/08 U
   F02D29/02 L
   F02D29/02 321Z
   H04Q9/00 361
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-76498(P2013-76498)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-201097(P2014-201097A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】富田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 隆博
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−231615(JP,A)
【文献】 実開平05−082704(JP,U)
【文献】 特開2006−153006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00 − 25/40
E05B 49/00
F02D 29/02
F02N 11/08
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を操作する2つのモードを切り替えることが可能な携帯機であって、
前記車両へ信号を送信する送信アンテナと、
前記車両からの信号を受信する受信アンテナと、
前記2つのモードの第一のモードから第二のモードへ切り替える際に、ユーザが操作可能な切替スイッチと、
前記車両へ操作指令信号を送信する際に、ユーザが操作可能な指令スイッチと、
ユーザへ情報を通知する点灯表示部と、
前記切替スイッチまたは前記指令スイッチからの入力に基づいて前記送信アンテナから信号を送信する制御、および、前記受信アンテナで受信した前記車両からの情報を前記点灯表示部で表示する制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第一モードのときに前記指令スイッチが操作された場合には、前記送信アンテナから前記第一モードで有効な第一操作指令信号を送信し、
前記切替スイッチの操作により前記第二モードになった後、所定の時間内に前記指令スイッチが操作された場合には、前記送信アンテナから前記第二モードで有効な第二操作指令信号を送信するとともに、前記第二操作指令信号で指令された操作の完了を示す返信信号を待つ返信待機モードに切り替え、
前記返信待機モードに切り替わった後、前記車両からの前記返信信号を受信した場合、または、前記指令スイッチが操作された場合に、前記返信待機モードから前記第一モードへ切り替えるとともに、
前記第二モードに切り替わる時、前記返信信号の受信時、および前記第一操作指令信号の送信時には、前記点灯表示部での表示を行い、
前記返信待機モードで前記指令スイッチが操作され、前記第一モードに切り替える時には、前記送信アンテナからの信号の送信および前記点灯表示部での表示を行わない、
携帯機。
【請求項2】
前記第一モードは、前記車両のドアの施錠指令または解錠指令の信号を送信するリモートキーレスエントリ機能モードであり、
前記第二モードは、前記車両のエンジンの始動指令または停止指令の信号を送信するリモートスタート機能モードであり、
前記車両からの情報は、エンジン駆動状況に関する情報であり、
前記第一操作指令信号は、ドアの施錠指令信号または解錠指令信号であり、
前記第二操作指令信号は、エンジンの始動指令信号または停止指令信号である、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記返信待機モードに切り替わった後所定の時間内に、前記切替スイッチの操作、前記指令スイッチの操作、前記返信信号の受信が無かった場合には、前記第一モードへ切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯機。
【請求項4】
前記切替スイッチを所定操作することにより、前記車両のエンジンのアイドリング時間を設定する設定モードに切り替え、前記設定モード中のいずれかのスイッチの操作によりアイドリング時間を変更することを特徴とする請求項2または3に記載の携帯機。
【請求項5】
前記制御部は、前記送信アンテナから信号を送信した後、その送信の状況を前記点灯表示部での表示を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の携帯機。
【請求項6】
前記制御部は、前記切替スイッチの操作により前記第二モードになった後、所定の時間内に前記指令スイッチが操作されない場合には、前記第二モードを終了することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の携帯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用携帯機に関し、特に、車両を操作する2つのモードを切り替えることが可能な携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両と無線通信を行い、車両に対してさまざまな操作を行ったり、車両からの情報を表示したりする携帯機(FOB)が知られている。例えば、特許文献1では、盗難被害を最小限に抑えることを目的とした遠隔始動制御装置が開示されている。この遠隔始動制御装置では、車両の比較的近傍からドアの施解錠に代表される指令を送信し操作するリモートキーレスエントリ機能(以下、キーレス機能と言う)と、車両の比較的遠隔からエンジンの始動/停止に代表されるリモートスタート機能とを併せ持った携帯機が含まれている。そして、この携帯機が遠隔操作によるエンジンの始動指令を送信した時に、キーコードをイモビライザ部へ供給する手段と、車両盗難が発生した場合キーコードの供給を禁止させる手段とを装備する。
【0003】
また、特許文献2では、信頼性の高いアンサーバックを行うことを目的としてドアロックシステムが開示されている。このドアロックシステムでは、携帯機がユーザの操作に応じて指示を送信し、この指示に応じてドアロック制御装置がドアのロック機構を駆動してロック/アンロックを行うと共に、動作完了の通知を携帯機へ送信し、この通知に応じて携帯機がランプを点滅して報知を行う。
【0004】
また、特許文献3では、フェールセーフ機能を実現することを目的とした車載無線通信装置が開示されている。この車載無線通信装置では、携帯電話と車両の間が離れているときには、走行用エンジンの始動の遠隔操作を禁止するとともに、携帯電話の表示画面にエンジンが始動したことや、停止していること、エンジンを停止させたときの停止理由を示す文字情報を表示する。
【0005】
また、特許文献4では、セキュリティ状態を変更する際の利便性を向上させることを目的とした遠隔操作装置が開示されている。この遠隔操作装置では、携帯機でエンジンの始動とセキュリティ状態の変更との設定操作が行なわれると、エンジンの始動信号とセキュリティ状態の変更信号とが送受信部から車載機に送信される。そして、携帯機には、エンジンを遠隔始動・停止させた場合の始動・停止確認情報や始動後経過時間、或いは車両のセキュリティ状態等々、種々の情報が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−211648号公報
【特許文献2】特開2012−007443号公報
【特許文献3】特開2004−218444号公報
【特許文献4】特開2007−022405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したリモートスタート機能により遠隔からエンジンを始動する場合、車が見えずまたエンジン音も聞こえない場所から操作することが多いため、エンジン始動操作により実際にエンジンが始動されたか確認できない。そのため、公知文献3のように携帯機でエンジン始動が成功した旨を表示する必要がある。
ここで、キーレス機能とリモートスタート機能とを備えた携帯機においては、エンジン始動の表示に加えて、キーレス機能によるドア施錠操作やドア解錠操作を行った際にも表示を行う必要がある。これは、ユーザが施錠操作ボタンを押した際に、その操作を受け付けて信号を送信したことをユーザに示すためである。
【0008】
しかし、携帯電話のように液晶などの表示画面を携帯機に設けて表示を行えば、文字情報などでユーザに様々な表示連絡を行うことが可能であるが、携帯機に液晶画面などを設けると携帯機の電池消費が大きくなり、大型化してしまう。
そこで、本発明は、キーレス機能とリモートスタート機能といった複数の機能を兼ね備え、LED等の簡易な点灯表示手段によりユーザに通知するために表示を行う携帯機において、車両からの情報や信号送信の状況などをユーザに分かり易く誤認識が少ない表示を可能とする携帯機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、車両を操作する2つのモードを切り替えることが可能な携帯機であって、車両へ信号を送信する送信アンテナと、車両からの信号を受信する受信アンテナと、2つのモードの第一のモードから第二のモードへ切り替える際に、ユーザが操作可能な切替スイッチと、車両へ操作指令信号を送信する際に、ユーザが操作可能な指令スイッチと、ユーザへ情報を通知する点灯表示部と、切替スイッチまたは指令スイッチからの入力に基づいて送信アンテナから信号を送信する制御、および、受信アンテナで受信した車両からの情報を点灯表示部で表示する制御を行う制御部と、を備え、その制御部は、第一モードのときに指令スイッチが操作された場合には、送信アンテナから第一モードで有効な第一操作指令信号を送信し、切替スイッチの操作により第二モードになった後、所定の時間内に指令スイッチが操作された場合には、送信アンテナから第二モードで有効な第二操作指令信号を送信するとともに、第二操作指令信号で指令された操作の完了を示す返信信号を待つ返信待機モードに切り替え、返信待機モードに切り替わった後、車両からの返信信号を受信した場合、または、指令スイッチが操作された場合に、返信待機モードから第一モードへ切り替えるとともに、第二モードに切り替わる時、返信信号の受信時、および第一操作指令信号の送信時には、点灯表示部での表示を行い、返信待機モードで指令スイッチが操作され、第一モードに切り替える時には、送信アンテナからの信号の送信および点灯表示部での表示を行わない、携帯機が提供される。
これによれば、複数の機能を兼ね備え、モードの切り替わり時、返信信号の受信時、および、操作指令信号の送信時には、車両からの情報を簡易な点灯表示によりユーザに分かり易く誤認識が少ない表示を可能とする携帯機を提供できる。
【0010】
さらに、第一モードは、車両のドアの施錠指令または解錠指令の信号を送信するリモートキーレスエントリ機能モードであり、第二モードは、車両のエンジンの始動指令または停止指令の信号を送信するリモートスタート機能モードであり、車両からの情報は、エンジン駆動状況に関する情報であり、第一操作指令信号は、ドアの施錠指令信号または解錠指令信号であり、第二操作指令信号は、エンジンの始動指令信号または停止指令信号であることを特徴としてもよい。
これによれば、リモートキーレスエントリ機能モードとリモートスタート機能モードの複数の機能を兼ね備え、エンジン駆動状況と指令の送信状況をユーザに分かり易く誤認識が少ない表示で行うことができる。
【0011】
さらに、制御部は、返信待機モードに切り替わった後所定の時間内に、切替スイッチの操作、指令スイッチの操作、返信信号の受信が無かった場合には、第一モードへ切り替えることを特徴としてもよい。
これによれば、所定時間内に一定の操作が行われたり、返信信号の受信が無かった場合に、自動的に第一モードに戻ることで、ユーザに分かり易い携帯機を提供することができる。
【0012】
さらに、切替スイッチを所定操作することにより、車両のエンジンのアイドリング時間を設定する設定モードに切り替え、設定モード中のいずれかのスイッチの操作によりアイドリング時間を変更することを特徴としてもよい。
これによれば、少ないスイッチにもかかわらず簡単な操作で設定モードを変更することができる。
【0013】
さらに、制御部は、送信アンテナから信号を送信した後、その送信の状況を点灯表示部での表示を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、さらに携帯機からの信号送信の状況などを簡易な点灯表示によりユーザに分かり易く誤認識が少ない表示を可能とする携帯機を提供できる。
【0014】
さらに、制御部は、切替スイッチの操作により第二モードになった後、所定の時間内に指令スイッチが操作されない場合には、第二モードを終了することを特徴としてもよい。
これによれば、携帯機での余分な消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、複数の機能を兼ね備え、LED等の簡易な点灯表示手段によりユーザに通知するために表示を行う携帯機において、車両からの情報や信号送信の状況などをユーザに分かり易く誤認識が少ない表示を可能とする携帯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第一実施例の携帯機のブロック図。
図2】本発明に係る第一実施例の携帯機の外観図。
図3】本発明に係る第一実施例の携帯機の制御フローチャート。
図4】本発明に係る第二実施例の携帯機の制御フローチャート。
図5】本発明に係るリモートスタート機能モードでの点灯表示の例を示す説明図。
図6】本発明に係る設定モードでの点灯表示の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1は、本実施例における携帯機10の機能構成を示すブロック図である。携帯機10は、ユーザの操作をスイッチを通して受け付けるとともに、車両1と無線通信信号の送受信を行う。
【0018】
本実施例の携帯機10は、車両1のドアの施錠指令または解錠指令の信号を送信するリモートキーレスエントリ機能モード(以下、キーレス機能モードという)の第一モードと、車両1のエンジンの始動指令または停止指令の信号を送信するリモートスタート機能モードの第二モードの2つのモードを切り替えることが可能な携帯機である。なお、各モードがこれらに限定されないことは言うまでも無く、例えば、第一モードが窓の開閉指令の信号を送信するモードで、第二モードがエアコンの始動・停止指令の信号を送信するモードあってもよい。
【0019】
携帯機10は、ユーザが操作可能な切替スイッチ13と指令スイッチ14を備える。切替スイッチ13は、ユーザが操作した場合第一モードから第二モードへ切り替えるためのスイッチである。また、指令スイッチ14は、ユーザが操作した時のモードによって、車両1へ送信する操作指令信号が異なるように機能するスイッチである。
【0020】
携帯機10は、さらに制御部16と、車両1へ信号を送信する送信アンテナ11と、車両1からの信号を送受信する送受信アンテナ12とを備える。制御部16は、切替スイッチ13または指令スイッチ14からの入力に基づいて信号を送信アンテナ11または送受信アンテナ12から送信する制御を行う。
【0021】
例えば、第一モードのキーレス機能モードにある時に指令スイッチ14が操作された場合、制御部16は、315MHz帯の電波を発する送信アンテナ11を使用しドアの施解錠信号を発信する。また、第二モードのリモートスタート機能モードにある時に指令スイッチ14が操作された場合、制御部16は、900MHz帯の電波を発する送受信アンテナ12を使用しエンジンの始動停止指令信号を発信する。また、制御部16は、エンジンの始動停止指令信号を発信した後、送受信アンテナ12を経由して車両1からのエンジン駆動状況に関する情報についての返信を受信する制御を行う。
【0022】
また、携帯機10は、ユーザへ情報を通知する点灯表示部15を備える。点灯表示部15は、本実施例ではLED(Light Emitting Diode)を用いている。点灯表示部15は、制御部16により制御され、送受信アンテナ12で車両1から受信した情報や指令信号の送信を表示する。点灯表示部15は、本実施例では図2に示すように、3つのLEDから構成され、3つのLEDの点灯や点滅により様々な情報を表示する。液晶に比し非常に消費電力が小さくて済むが、情報量が少ないので表示の仕方に工夫が必要となる。詳細は後述する。
【0023】
また、図2に示すように、指令スイッチ14は2つのスイッチから構成されており、1つのスイッチに限られたものではなく、1以上のスイッチであってもよい。例えば、エアコンを例にすれば、弱始動・強始動・停止の3つのスイッチがあってもよい。無論、切替スイッチ13も同様である。
【0024】
図3のフローチャートを参照しながら、制御部16の制御方法を説明する。なお、フローチャートにおけるステップはSと省略して記載する。まず、制御部16は、第一モードのキーレス機能モードで開始される(S102)。そして、切替スイッチ13が操作されず(S104においてNO)、指令スイッチ14も操作されない(S130においてNO)場合、制御部16は、第一モードのキーレス機能モードであり続ける。
【0025】
制御部16は、切替スイッチ13が操作されず、指令スイッチ14が操作された(S130においてYES)場合、即ち、第一モードのキーレス機能モードで指令スイッチ14が操作された場合、S132において、このモードで有効な操作指令信号である施錠/解錠指令信号を送信アンテナ11を経由して車両1へ送信する。制御部16は、施錠信号を送信するか、または解錠信号を送信するかは、操作される指令スイッチ14または14’(図2に示す)により判断する。
【0026】
そして、制御部16は、S134において、点灯表示部15に施錠/解錠指令信号を送信したことを表示する。本実施例では点灯表示部15は3つのLEDから構成されているので(図2に示す)、表示の仕方は、例えば、施錠指令の場合は最も左のLEDを1回点灯させ、解錠指令の場合は最も左のLEDを2回点灯させるなど、適宜定められる。その後、制御部16は、S122において、最初のS100にリターンされ、再度第一モードのキーレス機能モードになる。
【0027】
制御部16は、第一モードのキーレス機能モードで切替スイッチ13が操作された(S104においてYES)場合、S106において、携帯機10自身を第二モードのリモートスタート機能モードに設定する。第一モードから第二モードへ携帯機10のモードを切り替える切替スイッチ13の操作は、ユーザに意識的に操作を行ってもらうため、ユーザが1秒程度切替スイッチ13を長押した場合に有効となるようにすることが好ましい。
【0028】
そして、制御部16は、ユーザにリモートスタート機能モードになったことを知らせるために、S108において、点灯表示部15に表示を行う。この表示の仕方は、図5に示すように、リモートスタート機能モードになりこのモードで有効な操作指令信号を送信できる状態(リモスタ許可状態)であることを示す、左のLEDの点滅として表示する(リモスタ許可LED点滅)。なお、点滅とはオンが約250msとオフが約250msの繰り返しをいう。
【0029】
制御部16は、S110において、第二モードのリモートスタート機能モードになった後、所定の時間内に指令スイッチ14が操作されるか否かを監視する。ここでの所定の時間とは、ユーザが第二モードのリモートスタート機能モードになったことを点灯表示部15で認識し、指令スイッチ14を操作できる十分な時間であり、かつ、意識的に操作することを想定し余り長くはない時間である。例えば、2〜5秒間程度である。
【0030】
制御部16は、この所定時間の間に指令スイッチ14が操作されなかった場合、S138においてアイドリング時間の設定をリセットし、次いでS140において左のLEDの点滅をオフにする消灯処理を行い、ユーザに第一モードのキーレス機能モードに戻ることを通知する。そして、制御部16は、第一モードのキーレス機能モードに戻るためリターンする(S122)。これにより、携帯機での余分な消費電力を低減することができる。
【0031】
制御部16は、この所定時間の間に指令スイッチ14が操作された場合、S112において、送受信アンテナ12を通して車両1へ第二モードのリモートスタート機能モードで有効な操作指令信号であるエンジンを始動または停止する指令信号を送信する。制御部16は、エンジンの始動信号を送信するか、または停止信号を送信するかは、操作される指令スイッチ14または14’(図2に示す)により判断する。それと共に、制御部16は、S114において、点灯表示部15に表示を行う。この表示の仕方は、図5に示すように、リモートスタート機能モードで所定時間内に指令スイッチ14が操作され有効な操作指令信号が送信されたことを示す、左のLEDの点灯として表示する(リモスタ要求LED点灯)。
【0032】
その後、制御部16は、S116において、S112において送信した操作指令信号で指令した操作、即ちエンジンの始動または停止の完了または未完了を示す返信信号を待つ返信待機モードに携帯機10自身を設定する。車両1は、携帯機10からのエンジン始動/停止指令に基づいて、エンジンを始動または停止させ、その動作が完了した時携帯機10へ成功した旨を返信し、何らかの理由により完了しなかった場合には不成功の旨を返信する。車両1は、この返信には操作指令信号を受信してから通常3〜5秒を要する。
【0033】
制御部16は、S118において、車両1から送受信アンテナ12を経由して返信される返信信号の有無を監視する。そして、制御部16は、返信信号があった場合、S120において、ユーザにその結果を通知するために点灯表示部15に表示を行う。この表示の仕方は、図5に示すように、動作が成功した場合はその旨を示す、左のLEDの点滅として表示する(リモスタ成功通知LED点滅)。一方、不成功の場合はその旨を示す、左と右の2つのLEDの点滅として表示する(NG通知LED点滅)。その後、制御部16は、S122において、最初のS100にリターンされ、返信待機モードから第一モードのキーレス機能モードになる。
【0034】
制御部16は、車両1からの返信信号をまだ受信していない時にユーザが指令スイッチ14の操作を行った(S142でYES)場合、S144において点灯表示部15の消灯処理を行い、ユーザに返信待機モードから第一モードのキーレス機能モードに戻ることを通知する。そして、制御部16は、第一モードのキーレス機能モードに戻るためリターンする(S122)。この返信待機モード中のユーザの指令スイッチ14の操作は基本的に無効である。従って、制御部16は、この無効な操作により、送信アンテナ11や送受信アンテナ12からの一切の信号の送信を行わず、また点灯表示部15での表示を行わない。こうすることにより、制御部16は、返信待機モードを解除し、指令スイッチ14を押しても点灯しないことで、ユーザに無効な操作が行われたことを喚起できる。なお、制御部16は、車両1からの返信信号をまだ受信していない時にユーザが切替スイッチ13の操作を行った(S142でYES)場合も、S144において点灯表示部15の消灯処理を行い、ユーザに返信待機モードから第一モードのキーレス機能モードに戻る(S122)。
【0035】
制御部16が上述したような制御をおこなうことで、リモートキーレスエントリ機能モードとリモートスタート機能モードという複数の機能を兼ね備え、モードの切り替わり時、返信信号の受信時、および、操作指令信号の送信時には、車両からのエンジン駆動状況の情報や、指令信号の成功・不成功などの送受信の状況等を簡易な点灯表示によりユーザに分かり易く誤認識が少ない表示を可能とする携帯機を提供できる。
【0036】
制御部16は、返信待機モード中スイッチの操作が行われない限り所定時間車両1からの返信信号を待機する。しかし、返信待機モードに切り替わった後所定の時間内に、切替スイッチ13の操作や指令スイッチ14の操作もなく、返信信号の受信も無かった場合(S118でNOかつS142でNOかつS146でYES)には返信待機モードはタイムアウトとなる。この場合、制御部16は、S148において点灯表示部15の消灯処理を行い、ユーザに返信待機モードから第一モードのキーレス機能モードに戻ることを通知する。そして、制御部16は、第一モードのキーレス機能モードに戻るためリターンする(S122)。このように、所定時間内に一定の操作が行われたり、返信信号の受信が無かった場合に、自動的に第一モードに戻ることで、ユーザに分かり易い携帯機を提供することができる。
【0037】
また、制御部16は、S106において、切替スイッチ13を所定の操作を行うことにより、車両1のエンジン始動後のアイドリング時間の設定を行うための設定モードに切り替えることができる。例えば、切替スイッチ13が1回操作されると点灯表示部15の左のLEDのみを点灯し、その状態で指令スイッチ14または14’が操作されると、アイドリング時間を10分間と設定して車両に信号を送信する。また、切替スイッチ13が2回操作されると左および中央のLEDを点灯し、その状態で指令スイッチ14または14’が操作されると、アイドリング時間を20分間と設定して車両に信号を送信する。また、切替スイッチ13が3回操作されるとすべてのLEDを点灯し、その状態で指令スイッチ14または14’が操作されると、アイドリング時間を30分間と設定して車両に信号を送信する。
【0038】
なお、制御部16は、操作指令がエンジンの停止指令である場合は、リモスタ要求LED点灯の場合の表示の仕方は、中央と右のLEDの点灯として表示し、また、リモスタ成功通知LED点滅の場合の表示の仕方は、中央と右のLEDの点滅として表示する。
【0039】
<第二実施例>
図4のフローチャートを参照しながら、本実施例における制御部の制御方法を説明する。なお、重複記載を避けるため第一実施例と異なる部分を中心に記載する。本実施例における携帯機の構成要素は、図1に示す第一実施例の携帯機10の構成要素と同じである。以下では、制御部のみ第一実施例と区別するため、制御部16’と記載する。
【0040】
制御部16’は、第一実施例と同様、初期状態はリモートキーレスエントリ(RKE)機能モードで開始されており、そのモードを確定させる指令スイッチ14が操作されると(S202でYES)、S204においてリモートスタートフラグがON状態か否かをチェックする。この時点ではリモートスタートフラグはONではないので、制御部16’は、S206において、S202で操作された指令スイッチ14/14’に従い、施錠信号または解錠信号を送信する。そして、制御部16’は、S208において、第一実施例のS134において行ったと同様に点灯表示部15において表示を行う。表示を終えたらリターンしSTARTに戻る(S210)。
【0041】
制御部16’は、切替スイッチ13が操作されると(S202でNO)、S212において、リモスタモード確定フラグがON状態か否かをチェックする。この時点でリモスタモード確定フラグはONではないので、制御部16’は、S214において、リモスタモードを確定させる指令スイッチ14/14’の操作がなされたか否かをチェックし、操作された場合はS216において事前設定されたアイドリング時間を点灯表示部15で表示を行う。そして、制御部16’は、S218において、リモスタモード確定フラグをON状態にして、続いてS220においてリモスタフラグをON状態にして、即ちキーレス機能モードからリモートスタート機能モードに切り替わりリターンされる。また、操作されなかった(S214でNO)場合、即ちタイムアウトになったような場合はS216〜S220をスキップしてリターンされる。
【0042】
制御部16’は、スタート(S200)に戻った後、今回はリモスタモード確定フラグはON状態なので(S212でYES)、S230において、送信確定フラグがON状態か否かをチェックする。この時点で送信確定フラグはON状態ではないので、制御部16’は、S232においてリモスタ確定スイッチである指令スイッチ14/14’が操作されたか否かをチェックする。
【0043】
指令スイッチが操作された(S232でYES)場合には、制御部16’は、S234において送信確定フラグをONにする。そして制御部16’は、S236においてリモスタ要求通知として、点灯表示部15にその旨の表示を行うとともに、S238においてリモスタ送信処理としてエンジンの始動または停止指令を送信する。そしてリターンされる。一方、指令スイッチが操作されなかった(S232でNO)場合には、制御部16’は、S240においてタイムアウトの所定時間経過したか否かをチェックし、経過していない場合は何もしないでリモートスタート機能モードのままリターンされる。一方、経過した場合は全フラグをOFFにすることでリモスタフラグをOFFにして(S242)、即ちリモートスタート機能モードからキーレス機能モードに切り替わってリターンされる。
【0044】
タイムアウト経過前の場合、今回は送信確定フラグがON状態(S230でYES)なので、制御部16’は、S250において、送信完了フラグがON状態か否かをチェックする。まだ送信完了になっていない場合には、制御部16’は、S252においてエンジンの始動または停止の指令を再度送信する。制御部16’は、S254でもタイムアウトの有無をチェックし、タイムアウトした場合はS262において全フラグをOFFにすることでリモスタフラグをOFFにして、即ちリモートスタート機能モードからキーレス機能モードに切り替わってリターンされる。またタイムアウトしていない場合は、制御部16’は、S256において送信完了の有無をチェックする。完了していない場合リターンし、完了した場合は、制御部16’は、S258において送信完了フラグをONにし、またS260において受信モード切替処理を行い、返信待機モードに切り替えられ、リターンされる。
【0045】
制御部16’は、スタート(S200)に戻った後、今回は送信完了フラグはON状態なので(S250でYES)、S264において、車両1からエンジンが正常に始動したか否かなどを示す信号の受信を完了したか否かをチェックする。まだ完了していない場合は、S272においてタイムアウトするまで待ち、タイムアウトした場合は、S274において全フラグをOFFにして、返信待機モードからキーレス機能モードへ切り替えられる。
【0046】
制御部16’は、S264で受信完了した場合、S266において、エンジンが正常に始動したか否かなどの受信結果判定処理を行い、S268において、その結果に従い、点灯表示部15に表示を行う。そして、制御部16’は、S270において、すべてのフラグをOFF状態にすることで、返信待機モードからキーレス機能モードへ切り替えられ、STARTにリターンされる。
【0047】
なお、制御部16’は、S256で送信完了となる前または、S264で受信完了となる前に指令スイッチ14/14’が操作された場合、S202において「YES」と判定し、S204に進む。そして、S204では、リモスタフラグはON状態なので、無効な操作があったと判定してキャンセル動作を行う。キャンセル動作は、S222で全フラグをOFFにして、S224で点灯表示部15に表示を行わず、かつ信号の送信等も何も行わずにリターンする。こうすることにより、制御部16’は、返信待機モードを解除してキーレス機能モードへ切り替える。そしてユーザに対しては、指令スイッチ14を押しても点灯表示部15が何も点灯しないことで、無効な操作を行ってしまったことを喚起する。
【0048】
S216において点灯表示されるアイドリング時間は、以下のようにして設定される。制御部16’は、切替スイッチ13を所定の操作を行うことにより(例えば、3秒以上長押することにより)、車両1のエンジンのアイドリング時間を設定する設定モードに切り替えることができる。制御部16’は、リモートスタート機能モードに入ったことを示すと同様、設定モードに入ったことをユーザに示すために、点灯表示部15に表示を行う。この表示の仕方は、図6に示すように、設定モードになりこのモードでエンジンのアイドリング時間を変更できる状態(時間変更許可状態)であることを示す、中央のLEDの点灯として表示する。
【0049】
制御部16’は、この設定モード中に所定のスイッチ操作が行われると、エンジンのアイドリング時間を変更する。例えば、ユーザが設定モード中に指令スイッチ14を1回操作するとアイドリング時間は暫定的に10分となり、その後所定時間(例えば2秒)操作しないとそれが確定される。その所定時間経過前にさらに指令スイッチ14が操作されれば、別のアイドリング時間を設定できる(図6では、10分と30分のアイドリング時間が設定できることを示している)。これによれば、少ないスイッチにもかかわらず簡単な操作で設定モードを変更することができる。
【0050】
設定モードにおいても、LEDの簡易な点灯表示手段によりユーザに通知するため、ユーザに分かり易く誤認識が少ない表示を行う。例えば、図6に示すように、アイドリング時間が10分の場合、確定前は左のLEDの点滅で、確定後は点灯させる。また、アイドリング時間が30分の場合、確定前は3つともLEDを点滅させ、確定後は3つのLEDを点灯させる。
【0051】
制御部16’は、設定されたアイドリング時間の違いにより、点灯表示部15の表示も異なるように表示を行う。例えば、リモスタ要求LED点灯の場合の表示の仕方は、図5での右側の図に示すように、アイドリング時間が10分の場合は左のLEDの点灯であったが、30分の場合は、3つすべてのLEDの点灯として表示する。また、リモスタ成功通知LED点滅の場合の表示の仕方は、アイドリング時間が10分の場合は左のLEDの点滅であったが、30分の場合は、3つすべてのLEDの点滅として表示する。
【0052】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0053】
例えば、本明細書では、携帯機でスイッチが操作されることを端緒として電波が車両に送信される、リモートキーレスエントリ機能とリモートスタート機能を中心として記載した。そして、携帯機が電波信号を送信した後に無効な操作が行われた際には、その操作による電波の送信や点灯表示部での表示を行わないこととした。しかし、車両が発する電波を端緒として機能するパッシブエントリー機能の場合であっても、本発明を適用できることは言うまでもない。例えば、エンジンの始動指令信号を送信した直後に、パッシブエントリー機能に係る車両からの返信要求信号を受信した場合にも、最初の返信要求信号ではキャンセル動作を行い、2回目の返信要求信号に対して返信を始めるようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
10 携帯機
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
13 切替スイッチ
14 指令スイッチ
15 点灯表示部
16 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6