【実施例1】
【0034】
実施例1として、
図1〜
図4を参照して本発明に係る電子部品用の収容治具について説明する。本出願書類におけるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0035】
図1(a)は、本発明に係る収容治具を示す概略平面図であり、
図1(b)は(a)のA−A断面図である。
図1(a)、(b)に示すように、収容治具1は、例えば、個片化装置において樹脂封止体を切断して個片化された電子部品を移送して収容するものである。収容治具1は、金属テーブル2と金属テーブル2上に取り付けられた樹脂シート3とから構成され、個片化された電子部品を収容するために仮想的に区画化された領域4を有している。領域4は個片化された電子部品のサイズや数によって任意に設定される。金属テーブル2には、各領域4ごとに貫通路5が形成されている。樹脂シート3は、シリコーン系の常温硬化性液状樹脂をシート状に成形したものであり、各領域4は、台形又は三角形の断面形状を有する突起部6によって区画されている。各領域4内には領域4より一回り小さい矩形の凹部7が形成されている。突起部6における斜面は、個片化された電子部品が凹部7に収容される際に突起部6と凹部7とが平面視して位置ずれしていた場合において、電子部品を凹部7の底面に案内する。凹部7の底面において貫通穴8が形成されている。樹脂シート3の各凹部7の底面において形成された貫通穴8は金属テーブル2に形成された貫通路5と連通する。貫通穴8と貫通路5とは連通することによって、電子部品を凹部7の底面に吸着する吸着穴として機能する。
【0036】
金属テーブル2は、突出部9の上面10と、突出部9の下部につながる段差面11とを有する2段構造を備える。樹脂シート3は金属テーブル2の上面10の上に接着される。収容治具1は、金属テーブル2と金属テーブル2の上面10の上に接着された樹脂シート3とを有する。
図1(a)では、樹脂シート3において、横方向に4個、縦方向に4個、計16個の凹部7が格子状に形成されている場合を示した。凹部7の配置及び数はこれに限定されるものではない。凹部7の大きさや数は収容する電子部品のサイズや数によって任意に設定することができる。
【0037】
図2(a)〜(e)は収容治具1の主な製造工程を示す要部断面図である。
図2(a)〜(e)を参照して収容治具1の製造方法について説明する。
図2(a)において、収容する電子部品のサイズや数に対応した形状を有する樹脂シート3を製造するための成形型12が、予め準備されている。成形型12は、製造したい樹脂シート3に対応した形状を有するキャビティ13を有する。キャビティ13の底面には、樹脂シート3の各凹部7に対応する凸部14と突起部6に対応する溝15とが形成されている。キャビティ13内において、凸部14は溝15によって格子状に区画されている。成形型12は、キャビティ13における内側面16と周辺部における上面17とを有している。キャビティ13の平面形状は、金属テーブル2の突出部9(
図1参照)と同一の矩形状である。キャビティ13の平面的な寸法は、金属テーブル2の突出部9が挿入されることができる程度に、突出部9よりも僅かに大きく設計されている。
【0038】
成形型12において、まずキャビティ13に相当する空間を機械加工によって形成する。次に、樹脂シート3の各凹部7に対応する凸部14を区画するための溝15を機械加工によって形成する。溝15を切り溝として格子状に形成するので、機械加工によって溝15を有する成形型12を容易に製造することができる。このように、樹脂シート3の形状を反転する成形型12を用いて樹脂シート3を製造するので、格子状に配置された凹部7を容易に形成することが可能となる。
【0039】
図2(b)においては、シリコーン系の常温硬化性液状樹脂18(以下、単に「樹脂18」という。)を成形型12のキャビティ13に注入する。このとき、樹脂18の液面が成形型12の上面17を上回るように注入する。なお、樹脂18はシリコーン系の樹脂に限定されるものではなく、フッ素系樹脂を採用することができる。また、求める樹脂シート3の硬度や厚みなどによって、最適な樹脂18を選択することができる。
【0040】
樹脂18の内部には気泡が含まれているので、予めこの気泡を脱泡して除去しておくことが望ましい。例えば、ドライ式ロータリーポンプ付きの真空デシケータの中に樹脂18を注入した成形型12を入れ、常温、約100Paの条件下で20分程度脱泡する。このようにして気泡がほとんどなくなることを確認しておくことが望ましい。
【0041】
図2(c)においては、貫通路5を予め形成しておいた金属テーブル2を下向きにした状態で、成形型12のキャビティ13に注入された樹脂18の中に突出部9を挿入する。このとき、金属テーブル2の突出部9の側面とキャビティ13における内側面16とが接触した状態で、金属テーブル2の突出部9がキャビティ13に注入された樹脂18の中に挿入されて浸かる。そして、金属テーブル2の段差面11と成形型12の上面17とを密着させる。金属テーブル2の段差面11と成形型12の上面17とを密着させることによって、樹脂シート3の厚みが決まる。このことにより、樹脂シート3の金属テーブル2に対する位置が自動的に決まる。加えて、キャビティ13における凸部14の上面までの深さと、段差面11を基準にした突出部9の高さとによって、樹脂シート3の厚みが決まる。また、金属テーブル2の上面10(
図2(C)では下側の面)には予め接着用のプライマー(下地を作るための塗装)を塗布して、金属テーブル2と樹脂18との接着性を強化することが好ましい。
【0042】
キャビティ13に注入された樹脂18の中に金属テーブル2を挿入することによって、キャビティ13内部の樹脂18に圧力を加える。このことによって、樹脂18が金属テーブル2の貫通路5内に入り込み、さらに金属テーブル2の裏側にまで溢れ出る。この状態で成形型12及び金属テーブル2を24時間常温で放置して、樹脂18を完全に硬化させて硬化樹脂19を一括して成形する。こうすることにより、金属テーブル2に硬化樹脂19を接着させて、硬化樹脂19を形成することができる。
【0043】
図2(d)においては、硬化樹脂19を成形した後、成形型12及び金属テーブル2をオーブンなどに入れ、例えば、100℃で1時間程度加熱する。これにより、金属テーブル2の上面10に塗布したプライマーが硬化し、硬化樹脂19が金属テーブル2の上面10に強固に接着する。なお、金属テーブル2の上面に対して硬化樹脂19を接着する方法としては、加熱せずに充分な接着強度が得られるのであれば常温における自然接着を使用してもよい。この場合、プライマーの塗布及びオーブンなどによる加熱は不要となる。
【0044】
その後、金属テーブル2の裏側に達していた硬化樹脂19を除去した後に、成形型12と金属テーブル2とを離型する。これにより、金属テーブル2と残った硬化樹脂19とが接着した状態で、一体として成形型12から取り外される。
【0045】
図2(e)においては、金属テーブル2に形成された貫通路5においてドリルを使用して硬化樹脂19を除去する。これにより、樹脂シート3に貫通穴8を形成する。このようにして突起部6によって格子状に区画された凹部7を有する、本実施例に係る収容治具1が完成する。
【0046】
以上述べたように、本発明に係る収容治具1では、樹脂シート3の凹部7に対応した凸部14をキャビティ13内に有する成形型12を用いて樹脂シート3を成形する。キャビティ13に常温硬化性液状樹脂18を注入し、樹脂18の中に金属テーブル2を挿入して樹脂18を硬化させることによって、樹脂シート3を一括して成形する。このように、成形型12を用いて樹脂シート3を一括して成形することによって、格子状に所望の形状を有する凹部7を容易に形成することができる。
【0047】
また、金属テーブル2に対する樹脂シート3の位置決め及び厚さを、樹脂18を硬化させることによって自動的に行うことができる。
【0048】
さらに、機械加工によって複数の凹部7を形成する必要がなく、複数の凹部7を有する樹脂シート3を一括して成形するので、費用を安くすることができる。常温硬化性液状樹脂18としてシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を用いることができる。低価格のシリコーン系樹脂を用いれば、費用をさらに安くすることができる。これらのことにより、微小な凹部7及び貫通穴8を有する大型の収容治具1を、最小限の費用で容易に製造することが可能となる。
【0049】
上述した実施例1では、樹脂シート3及び金属テーブル2の平面形状を矩形としたが、収容治具1に吸着して収容される被切断物の形状に応じて他の平面形状を採用してもよい。例えば、ほぼ円形の半導体ウェーハや半導体ウェーハを対象とした樹脂封止体を被切断物にする場合には、樹脂シート3及び金属テーブル2の平面形状を円形にしてもよい。また、凹部7の平面形状を円形や楕円形などにしてもよい。
【0050】
また、実施例1では、台形又は三角形の断面形状を有する突起部6によって、平面視して格子状に凹部7を区画した。これに限らず、少なくとも凹部7の周辺の4隅に平面視して「+」状の突起部を設ける構造にしてもよい。
【0051】
また、成形型12に供給する樹脂18の量を上述した量(即ち、
図2(b)において樹脂18の液面が成形型12の上面17を上回る量;
図2(c)参照)よりもやや少なめにし、樹脂18が金属テーブル2の貫通路5の下方に侵入する程度の量としてもよい。
【0052】
実施例1では常温硬化性液状樹脂18を使用して樹脂シート3を成形した。仮に熱硬化性液状樹脂を使用すれば、加熱によって膨張した金属テーブル2の上で樹脂18を硬化させることになり、常温まで冷却して金属テーブル2が収縮した際に樹脂シート3の反りやヨレが生じる。実施例1では常温硬化性液状樹脂を使用することにより、こうした問題が回避され、寸法精度の高い収容治具1を製造することが可能となる。
【0053】
樹脂18を成形型12に注入する前に、樹脂18に炭素粉末を添加しておくことにより、樹脂シート3に導電性を持たせてもよい。このような樹脂シート3を有する収容治具1では、電子部品の受け入れ、又は、受け渡し時に発生する静電気を逃がすことができる。したがって、樹脂封止された内部の素子に静電気がダメージを与えることを防止することができる。
【0054】
また、透明な樹脂18や色素を添加した樹脂18を用いることにより、透明な樹脂シート3や所望の色の樹脂シート3を製造してもよい。
【0055】
次に、個片化装置において、被切断物を切断して個片化された複数の電子部品を移送して収容治具に配置するまでの取り扱いについて
図3〜
図4を参照して説明する。
図3(a)は、個片化された電子部品が格子状に固定部材に配列されている状態を示す平面図であり、
図3(b)は(a)のA−A断面図である。
図3(a)に示すように、個片化装置によって切断されて個片化された複数の電子部品Pは一括して固定部材20に吸着されて固定されている。固定部材20は金属テーブル21と金属テーブル21上に固定された樹脂シート22とから構成されている。金属テーブル22は、図のX、Y、Zの各方向に移動可能に設けられている。
【0056】
図3(a)において、横方向(X方向)に沿う並びを「行」と呼び、縦方向(Y方向)に沿う並びを「列」と呼ぶことにする。この場合は、8行×5列の合計40個の電子部品Pが固定部材20上に配置されている。電子部品Pは8行×5列のマトリクス上に配列されるので、例えば、3行目の4列目に配置された電子部品Pを電子部品P34と呼ぶことにする。したがって、1行目には電子部品P11〜P15、2行目には電子部品P21〜P25、・・・、8行目には電子部品P81〜P85が配列され、合計40個の電子部品Pが固定部材20上に配置される。
【0057】
図3(b)に示すように、各電子部品Pは、金属テーブル21と樹脂シート22とを連通する吸着穴23を介して固定部材20に吸着される。吸着穴23は金属テーブル21に形成された貫通路と樹脂シート22に形成された貫通穴とによって連通し、電子部品Pを吸着する吸着穴として機能する。各電子部品Pは吸着機構L1によって一括して固定部材20に吸着される。各電子部品Pは一括して吸着されるので、吸着機構L1は1系統の吸着ラインとして構成される。
【0058】
固定部材20上に配置されたすべての電子部品Pは、搬送機構24に設けられた吸着機構L2によって一括して吸着され次の工程へ移送される。搬送機構24は、各電子部品Pに対応して吸着する吸着部Vを備えている。電子部品P11〜P15に対応する吸着部V11〜V15、・・・、電子部品P81〜P85に対応する吸着部V81〜V85まで、合計40個の吸着部Vを備えている。
【0059】
固定部材20上に配置された電子部品P11〜P85が搬送機構24によって吸着され次工程に移送される場合について説明する。まず、固定部材20に固定されている電子部品P11〜P85が吸着機構L1によって吸着を解除される。次に、搬送機構24を固定部材20の上方に移動させ、各電子部品Pに対応するよう搬送機構24の位置合わせを行った後に下降させる。吸着部V11〜V85を電子部品P11〜P85に接触させ、吸着機構L2によって電子部品P11〜P85を吸着する。このようにして固定部材20に配置されていた電子部品Pは、搬送機構24によって一括して吸着され次工程に移送される。
【0060】
図4(a)は、本発明に係る電子部品を収容する収容治具を示す平面図であり、
図4(b)は(a)のA−A断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、収容治具25は金属テーブル26と金属テーブル26上に固定された樹脂シート27とから構成されている。樹脂シート27には台形又は三角形の断面形状を有する突起部28によって格子状に区画された凹部29が形成されている。各電子部品Pは、金属テーブル26と樹脂シート27とを連通する吸着穴30を介して吸着され、凹部29内に固定される。吸着穴30は金属テーブル26に形成された貫通路と樹脂シート27に形成された貫通穴とによって連通し、電子部品Pを吸着する吸着穴として機能する。各電子部品Pは吸着機構L3によって一括して収容治具25に吸着される。各電子部品Pは一括して吸着されるので、吸着機構L3は1系統の吸着ラインで構成される。
【0061】
搬送機構24によって移送されてきた電子部品Pは一括して収容治具25の凹部29に受け渡される。まず、搬送機構24を収容治具25の上方に移動させ、各電子部品Pと収容治具25に設けられた凹部29とが対応するように位置合わせを行った後に下降させる。電子部品P(図ではP31〜P35)は、搬送機構24によって対応する凹部29の近傍まで下降し、吸着機構L2によって吸着を解除されて凹部29に受け渡される。このようにして搬送機構24によって移送されてきた電子部品Pは、すべて収容治具25の凹部29に一括して配置され収容される。
【0062】
電子部品Pが洗浄された後に十分乾燥されていないと、電子部品Pが搬送機構24の吸着部Vから離れにくい場合がある。この場合には、収容治具25に設けられた吸着機構L3によって電子部品Pを強制的に吸引して凹部29に収容することも可能である。
【0063】
本発明によれば、機械加工を用いることなく、樹脂シート27を、樹脂シート27に対応した形状を有するキャビティ13(
図2参照)を有する成形型12を用いて製造することができる。したがって、市松模様状ではなく格子状に配置された凹部29を、一括して容易に形成することができる。また、格子状に配置された凹部29に搬送機構24から電子部品Pを一括して1回で受け渡すことができる。したがって、サイクルタイムを従来の半分にすることが可能となり、生産性を向上することができる。また、電子部品Pを一括して受け渡すので、搬送機構24の吸着機構L2及び収容治具25の吸着機構L3を1系統に構成することができる。したがって、装置全体の構成を簡略化できるので、装置の費用を安くすることが可能となる。
【実施例2】
【0064】
実施例2として、
図5を参照して、本発明に係る電子部品用の個片化装置を説明する。
図5は、本実施例に係る電子部品用の個片化装置を示す概略平面図である。個片化装置S1は、被切断物を複数の電子部品に個片化する。個片化装置S1は、受け入れ部Aと個片化部Bと払い出し部Cとを、それぞれ構成要素(モジュール)として有する。
【0065】
受け入れ部Aと個片化部Bと払い出し部Cとが、それぞれ他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。受け入れ部Aと個片化部Bと払い出し部Cとのそれぞれが、予想される要求仕様に応じた異なる複数の仕様を有するようにして予め用意される。受け入れ部Aと個片化部Bと払い出し部Cとを含んで基本ユニット31が構成される。
【0066】
受け入れ部Aにはプレステージ32が設けられる。前工程の装置である樹脂封止装置から、被切断物に相当する樹脂封止体33がプレステージ32に受け入れられる。樹脂封止体33は、封止樹脂の側を下にしてプレステージ32に配置される。
【0067】
樹脂封止体33は、リードフレームやプリント基板などの回路基板と、回路基板における格子状の複数の領域に装着され受動素子又は能動素子を含むチップと、一括して成形された硬化樹脂からなる封止樹脂とを有する。
【0068】
個片化部Bには切断用テーブル34が設けられる。切断用テーブル34は、図のY方向に移動可能であり、かつ、θ方向に回動可能である。切断用テーブル34の上には切断用ステージ35が取り付けられる。個片化部Bの奥の部分には、2個のスピンドル36が設けられる。2個のスピンドル36は、独立してX方向に移動可能である。2個のスピンドル36には、それぞれ回転刃37が設けられる。これらの回転刃37は、それぞれY方向に沿う面内において回転することによって樹脂封止体33を切断する。したがって、本実施例では、それぞれ回転刃37を使用した2個の切断機構が個片化部Bに設けられる。切断機構は1個であっても3個以上であってもよい。
【0069】
払い出し部Cにはトレイ38が設けられる。トレイ38が、ここまで説明した電子部品用の収容治具に相当する。トレイ38には、個片化部Bにおいて個片化された複数の電子部品からなる集合体39が、切断用ステージ35から主搬送機構(図示なし)を経由して一括して収容される。トレイ38にそれぞれ収容された複数の電子部品は、次工程(例えば、検査工程)に一括して移送される。
【0070】
受け入れ部Aには、個片化装置S1全体を制御する制御部40が設けられる。受け入れ部Aには、樹脂封止体33を貯留する機構を設けてもよい。払い出し部Cには、集合体39を貯留する機構を設けてもよい。
【0071】
主搬送機構(図示なし)は、受け入れ部Aと個片化部Bと払い出し部Cとからなる各構成要素に対して共通に適用される位置に設けられる。この位置は、
図5における受け入れ部Aと払い出し部Cとの間において、X方向に沿う太い実線の矢印によって示される。
【0072】
なお、トレイ38が有する複数の凹部(図示なし)においてそれぞれ吸着穴を設けるか否かについては、必要に応じて決めればよい。
【0073】
また、個片化部Bにおいて、回転刃37以外の切断機構を使用してもよい。例えば、レーザ光、ウォータージェット(研磨材との併用の有無を問わない)、ワイヤソー、又は、バンドソーなどのうちのいずれかを有する切断機構を選択して使用してもよい。
【0074】
また、被切断物として半導体ウェーハを使用することができる。半導体ウェーハには、シリコン基板、GaN基板などの他に、LED(Light Emitting Diode)の製造において半導体積層膜が成膜されたサファイア基板などが含まれる。半導体ウェーハを使用する場合には、電子部品として、集積回路などの半導体チップ、LEDなどの光半導体のチップが製造される。
【0075】
本実施例に係る個片化装置S1によれば、次の特徴を有するトレイ38を使用する。
(1)ベース(金属テーブル)と、該ベースの1つの面において常温硬化性液状樹脂が硬化することによって成形され1つの面に接着された硬化樹脂からなる樹脂部材(樹脂シート)とを有すること。
(2)格子状に形成され複数の電子部品をそれぞれ収容する複数の凹部を有すること。
(3)複数の凹部をそれぞれ取り囲む境界線の各辺における少なくとも一部において形成された突起部を有すること。
(4)突起部の側面に設けられ、凹部の平面形状が凹部の底面の側において小さくなるようにして傾く斜面を有すること。
(5)凹部と突起部とは、成形型が有するキャビティに満たされた常温硬化性液状樹脂に1つの面が浸かった状態において、成形型が有する表面形状が硬化樹脂に転写されることによって形成されたこと。
(6)底面の平面形状は電子部品の平面形状を含むこと。
(7)斜面は、該斜面に沿って電子部品を底面に着底させる案内部として機能すること。
【0076】
本実施例によれば、次の効果が得られる。第1に、樹脂封止体33が切断された複数の電子部品を、格子状に形成された複数の凹部に、切断された状態から一括して移送することができる。したがって、2個のトレイに対してそれぞれ市松模様における異なる色に相当する位置に複数の電子部品を2回に分けて移送する従来の技術に比較して、作業時間を半減させることができる。第2に、個片化装置S1におけるトレイ38の占有面積を半減させることができる。第3に、複数の凹部にそれぞれ吸着穴を設けることによって、主搬送機構から全ての電子部品をトレイ38に確実に収容することができる。
【0077】
ここまで説明したように、本発明によると、機械加工を用いることなく、樹脂シート3、27を、樹脂シート3、27に対応した形状を有するキャビティ13を有する成形型12を用いて製造することができる。キャビティ13に常温硬化性液状樹脂18を注入し、注入された樹脂18の中に金属テーブル2、26を挿入して樹脂18を硬化させることによって、硬化樹脂19を一括して成形する。硬化樹脂19を成形することによって、金属テーブル2、26と樹脂シート3、27との位置合わせ及び接着が自動的に行われ、収容治具1、25が製造される。このように、成形型12を用いて樹脂シート3、27を成形することによって、高い寸法精度を有する格子状の凹部7、29を容易に形成することが可能となる。したがって、個片化された複数の電子部品Pを格子状に配置することが可能な収容治具1、25を容易に製造することができる。
【0078】
樹脂シート3、27における凹部7、29を格子状に一括して形成することができる。このことにより、従来の市松模様状に凹部を配置する場合に比較して、収容治具1、25の面積を半分の大きさにすることができる。したがって、費用を安くして収容治具1、25を製造することができる。加えて、低価格のシリコーン系樹脂を使って樹脂シート3、27を製造する場合には、さらに収容治具1、25の費用を安くすることができる。
【0079】
また、従来のように市松模様状に凹部を配置した収容治具を用いる必要がないので、搬送機構24による電子部品Pの受け渡しを一括して1回で行うことができる。したがって、電子部品Pを移送するサイクルタイムを従来の半分に低減することができる。さらに、搬送機構24から電子部品Pを2回に分けて収容治具1、25に受け渡しをする必要がないので、電子部品Pを吸着する吸着ラインを2系統に分けることなく、1系統で構成すればよい。したがって、装置の構成を簡略化して装置の費用を安くすることができる。
【0080】
本発明によれば、格子状の凹部を有する収容治具を安い費用で容易に製造することができ、装置の構成を簡略化することが可能となる。したがって、本発明は生産性の向上、装置の費用低減に大きく寄与し、工業的にも非常に価値の高いものである。
【0081】
また、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。