(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000903
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】間接活線先端工具対応型ナット
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 20060101AFI20160923BHJP
F16B 39/26 20060101ALI20160923BHJP
H02B 5/02 20060101ALI20160923BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
F16B41/00 A
F16B39/26 Z
H02B5/02 Z
H02G1/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-134259(P2013-134259)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-10622(P2015-10622A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年3月20日
【審判番号】不服2015-19602(P2015-19602/J1)
【審判請求日】2015年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高木 伸之
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
中川 隆司
【審判官】
小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−2481(JP,A)
【文献】
実開昭59−153712(JP,U)
【文献】
実開昭49−15363(JP,U)
【文献】
特開平5−296221(JP,A)
【文献】
特開2011−220436(JP,A)
【文献】
特開2011−142781(JP,A)
【文献】
特開2012−143023(JP,A)
【文献】
特開2000−166038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B41/00,F16B39/26,H02B5/02,H02G1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナット部と、該ナット部の一端部側に連結されたワッシャー部と、を備えた間接活線先端工具対応型ナットであって、
前記ナット部は、
ねじ溝が形成されていない係止孔部と、
前記係止孔部に連続的に形成された雌ねじ部と、を備え
前記係止孔部は、
前記ワッシャー部が連結された側の一端部から軸方向に前記ナット部の全長の少なくとも3分の1ほどの長さだけ延び、前記係止孔部の口径は前記雌ねじ部の口径よりも大きく形成され、前記ワッシャー部が連結された側の一端部に向けて前記係止孔部の口径は同一の長さでその開口は広がらないように形成された前記係止孔部と、
前記雌ねじ部は、
前記係止孔部に連続的に形成され該係止孔部から前記ナット部の他端部側へ軸方向に延びる、
ことを特徴とする間接活線先端工具対応型ナット。
【請求項2】
前記ワッシャー部と前記ナット部とは相互に独立して回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の間接活線先端工具対応型ナット。
【請求項3】
前記ナット部の他端部側の外周面に配置されたOリングをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の間接活線先端工具対応型ナット。
【請求項4】
前記ナット部の前記雌ねじ部の溝は、戻り止め手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の間接活線先端工具対応型ナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱に装着して腕金を固定する調整式Uバンドのボルトを止めるナットに関し、特に、簡単に装着可能な間接活線先端工具対応型ナットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱に腕金などの装柱材を取付ける方法としては、電柱に直接ボルトを通して固定する電柱縫いボルト形式により腕金などが取り付けられていた。そして、施設後20数年経過した今日において、経年変化による影響や、電線や腕金に対する風圧の影響により、装柱された腕金が動揺することにより電柱縫いボルトが破断し、腕金が電柱から脱落して配電線の事故による停電が発生するケースが増えている。
【0003】
この対策として、腕金の動揺を抑制するため、電柱に腕金を取付けるためのU字型の固定バンドであって、バンドの両端がボルトになった調整式Uバンドを補強部材として電柱に装着し、腕金にボルトを通してナットで締着して取付けている。また、特許文献1には、電柱に腕金を止める方法として、電柱用バンドを介して止める方法が記載されている。
【0004】
従来、電柱に装柱された腕金の補強工事等を行う際には、電線に電気を通電させたまま、つまり無停電の状態で作業が行われる場合が多い。そして、このような補強工事においては、絶縁衣や絶縁手袋等の絶縁保護具を着用して調整式Uバンドを取付けていた。しかしながら、感電等を防止する必要上、大掛かりな絶縁保護具を着用して作業を行うため作業効率が低下すると共に、作業者が通電中の電線に直接触れて作業を行うことから事故の原因にもなり易い。そのため、近年においては、作業効率の向上や作業環境の改善等の観点から、ヤットコやホットスティックなどの間接活線工具を使用してこのような補強工事を行うのが主流となっている。
【0005】
このヤットコなどの間接活線工具は、例えば、ハンドルなどの操作部を備えた棒状の絶縁操作棒と、絶縁操作棒の先端に設けられ操作部に接続されると共に、作業内容により交換可能に構成された先端工具と、を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−58040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記間接活線工具を使用して電柱に腕金などの装柱材を取付ける方法が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、前記間接活線工具を使用して調整式Uバンドなどのボルトにナットを挿入することが難しいという問題がある。即ち、前記間接活線工具に先端工具を設けてナットを保持して、前記調整式Uバンドのボルトにナット孔を引っ掛けることが困難であるというものである。また、漸く前記ボルトにナットを引っ掛けることができナットを回転させて締めようとしても、ボルトとナットの引っ掛かりが甘く、ナットが落下してしまうことがたびたび生じていた。そして、これらの状況が原因で補強工事の作業効率をひどく悪化させていた。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、電柱に装着して腕金を固定する調整式Uバンドのボルトを止めるナットに関し、特に、ナットの落下を防止でき、簡単に調整式Uバンドのボルトに装着可能な間接活線先端工具対応型ナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、次に記載する構成を備えている。
【0010】
(1) ナット部と、該ナット部の一端部側に連結されたワッシャー部と、を備えた間接活線先端工具対応型ナットであって、前記ナット部は、前記ワッシャー部が連結された側の一端部から所定長さだけ軸方向に延び、ねじ溝が形成されていない係止孔部と、該係止孔部に連続的に形成され該係止孔部から前記ナット部の他端部側へ軸方向に延びる雌ねじ部と、を備えることを特徴とする間接活線先端工具対応型ナット。
【0011】
(1)によれば、前記ナット部は、ねじ溝が形成されていない係止孔部と、該係止孔部に連続的に形成されナット部の他端部側へ軸方向に延びる雌ねじ部と、から構成される。これにより、調整式Uバンドのボルトにナット部を装着させるときは、ナット部の係止孔部に調整式Uバンドのボルトを一旦、係止させることができる。続いて、ナット部を雌ねじ部まで押圧しながら回転させてボルトにナット部を螺合、装着することができる。このように、水平方向に延びる調整式Uバンドなどのボルトにナットを螺合、装着しやすくすることが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、前記ワッシャー部と前記ナット部とは相互に独立して回転可能であることを特徴とする間接活線先端工具対応型ナット。
【0013】
(2)によれば、ワッシャー部とナット部とは相互に独立して回転自由である。これにより、ワッシャー部は、ナット部の締付に対し共回りが防止されると共に、ワッシャーの機能を備えることが可能になる。
【0014】
(3) (2)において、前記ナット部の他端部側の外周面に配置されたOリングをさらに備えることを特徴とする間接活線先端工具対応型ナット。
【0015】
(3)によれば、ワッシャー部とは反対側のナット部の先端部外周面にOリングを配置することで、ナット部が先端工具から脱落するのを防止することが可能になる。
【0016】
(4) (3)において、前記ナット部の前記雌ねじ部の溝は、戻り止め手段を備えることを特徴とする間接活線先端工具対応型ナット。
【0017】
(4)によれば、ナット部の雌ねじ部の溝には、ナイロック加工などの戻り止め或いは緩み止め対策を施す。これにより、調整式Uバンドのボルトに装着したナットが緩むことを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電柱に装着して腕金を固定する調整式Uバンドのボルトを止めるナットに関し、特に、ナットの落下を防止でき、水平方向に延びる調整式Uバンドのボルトに簡単に装着可能な間接活線先端工具対応型ナットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の間接活線先端工具対応型ナットの斜視図である。
【
図2】本発明の間接活線先端工具対応型ナットの側面図である。
【
図6】本発明の間接活線先端工具対応型ナットを調整式Uバンドに使用して腕金に固定する場合の取付け方法を示す図である。
【
図7A】本発明の実施形態に係る間接活線先端工具対応型ナットを使用した取付け工程を示す図であり、腕金に調整式Uバンドを差込む工程を示す図である。
【
図7B】本発明の実施形態に係る間接活線先端工具対応型ナットを使用した取付け工程を示す図であり、調整式Uバンドのボルトにナットを差込む工程を示す図である。
【
図7C】本発明の実施形態に係る間接活線先端工具対応型ナットを使用した取付け工程を示す図であり、調整式Uバンドのボルトにナットを締付ける工程を示す図である。
【
図7D】本発明の実施形態に係る間接活線先端工具対応型ナットを使用した取付け工程を示す図であり、腕金に調整式Uバンドを取付け完了した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の間接活線先端工具対応型ナットの好ましい実施形態について、
図1〜
図7を参照しながら説明する。
本発明の間接活線先端工具対応型ナット1は、例えば、
図6に示すように、電柱7に装着されてある腕金6の補強工事用に調整式Uバンド5を用いる際に、この調整式Uバンド5のボルト51を腕金6に通して、該ボルト51に締着するときに使用されるものである。
【0021】
間接活線先端工具対応型ナット1は、
図1〜
図5に示すように、ナット部2と、ワッシャー部3と、及びOリング4と、を備える。
【0022】
ナット部2は、ねじ溝が形成されていない係止孔部21と、この係止孔部21に連続的に形成された雌ねじ部22と、を備える。該ナット部2は高ナット(長ナット)形式に形成されている。そして、係止孔部21の口径は雌ねじ部22の口径よりも大きく形成される。
【0023】
係止孔部21は、
図3に示すように、ワッシャー部3が連結された側の端部から軸方向に所定長さL
1だけ、ボルトが係止され易いようにねじ溝が形成されていないことを特徴とする。この所定長さL
1は、本実施例ではナット部2の全長(L
1+L
2)の3分の1ほどの長さである。
【0024】
雌ねじ部22は、前記係止孔部21から連続的に形成され、該係止孔部21からナット部2の他端側へ延びる方向に雌ねじの溝が形成される。
【0025】
ワッシャー部3は、
図1〜
図5に示すように、中央にボルト挿通孔を備えた平面円形状に形成されたワッシャーである。そして、該ワッシャー部3と前記ナット部2とは、相互に独立して回転可能な構造である。
【0026】
Oリング4は、
図2〜
図3に示すように、前記ナット部2のワッシャー部3とは反対側の端部の外周面に配置されており、間接活線先端工具対応型ナット1が先端工具81からの脱落を防止するためのものである。
【0027】
次に、間接活線先端工具対応型ナット1の取付け方法について、
図6及び
図7A〜
図7Dを参照しながら説明する。
【0028】
最初に、ヤットコなどの間接活線工具8を使用して調整式Uバンド5を把持する。そして、該調整式Uバンド5を電柱7に装柱しながら、調整式Uバンド5のボルト51を腕金6の長穴に差込む(
図7A参照)。
【0029】
次に、間接活線先端工具対応型ナット1を先端工具81に差込む。そして、該先端工具81を取付けた間接活線工具8を調整式Uバンド5のボルト51にアプローチさせる(
図7B参照)。
【0030】
次に、間接活線先端工具対応型ナット1のナット部2の係止孔部21を、調整式Uバンド5の一方のボルト51に引っ掛ける。そして、間接活線先端工具対応型ナット1をそのまま押し込み、先端工具81を操作してナット部2を回転させ、間接活線先端工具対応型ナット1をボルト51に螺合、締結させる(
図7C、
図6参照)。
【0031】
次に、調整式Uバンド5の、もう一方のボルト51にも同様の方法で間接活線先端工具対応型ナット1を螺合、締結させて作業を完成する(
図7D、
図6参照)。
【0032】
以上説明した間接活線先端工具対応型ナット1によれば、以下のような効果を奏する。
【0033】
(1)ナット部2と、該ナット部2の一端部側に連結されたワッシャー部3と、該ワッシャー部3とは反対側のナット部2の端部の外周面に配置されたOリングと、を備えた間接活線先端工具対応型ナット1であって、前記ナット部2は、前記ワッシャー部3が連結された側の一端部から所定長さだけ軸方向に延び、ねじ溝が形成されていない係止孔部21と、該係止孔部21に連続的に形成され該係止孔部21から前記ナット部2の他端部側へ軸方向に延びる雌ねじ部22と、で構成した。これにより、間接活線先端工具対応型ナット1を用いて調整式Uバンド5のボルト51を止めるときに、先ず、ボルト51の先端を前記間接活線先端工具対応型ナット1の係止孔部21に引っ掛け、次に間接活線先端工具対応型ナット1の奥までボルト51を挿入させて、安定して間接活線先端工具対応型ナット1を回転させ前記ボルト51にしっかりと締結させることができる。即ち、係止孔部21の内面に所定の長さだけねじ溝を形成せず、滑らかな状態にすることで、調整式Uバンド5のボルト51の先端にナット部2を引っ掛け挿入しやすくすることができる。
このように、前記間接活線先端工具対応型ナット1を使用することで、従来と比較してナットを落下させることなく安定して、ナットをボルトに螺合、締結させることが可能となる。これにより、作業効率の向上を図ることができる。
【0034】
(2)ワッシャー部3とナット部2とは相互に独立して回転可能であるように構成した。これにより、ワッシャー部3は、ナット部2の締付に対し共回りが防止される。
【0035】
(3)ワッシャー部3とは反対側のナット部2の先端部外周面にOリングを配置した。これにより、ナット部2が先端工具81から脱落するのを防止することが可能になる。
【0036】
(4)ナット部2の雌ねじ部22の溝には、ナイロック加工などのねじの緩み止め又は戻り止め対策を施すものとする。これにより、調整式Uバンド5のボルト51に装着したナットが緩むことを防止することが可能になる
【0037】
本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲は、これに限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、係止孔部21は、ワッシャー部3が連結された側の端部から軸方向に所定長さL
1だけ、ねじ溝が形成されていない。この所定長さL
1は、本実施例ではナット部2の全長の3分の1ほどの長さであるが、この長さは、状況に応じて適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 間接活線先端工具対応型ナット
2 ナット部
21 係止孔部
22 雌ねじ部
3 ワッシャー部
4 Oリング
5 調整式Uバンド
51 ボルト
6 腕金
7 電柱
8 間接活線工具(ヤットコ等)
81 先端工具