【文献】
D. Dai, et al.,"Mode conversion in taperd submicron silicon ridge optical waveguides",Optics Express,2012年 6月 4日,Vol.20, No.12,p.13425-13439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力側光導波路及び前記出力側光導波路のいずれか一方の光導波路のコアは、前記下部コアと前記上部コアとからなり、前記一方の光導波路とは異なる他方の光導波路のコアは、矩形状のコアからなることを特徴とする請求項1に記載の偏波変換素子。
前記一方の光導波路における前記下部コア及び前記上部コアの前記幅の方向の側端が一致する側に、前記他方の光導波路が存在することを特徴とする請求項2に記載の偏波変換素子。
前記入力側光導波路及び前記出力側光導波路の両方の光導波路のコアは、それぞれ、前記下部コアと前記上部コアとからなることを特徴とする請求項1に記載の偏波変換素子。
前記入力側光導波路及び前記出力側光導波路のそれぞれの長手方向の一端又は両端に、曲がり導波路が配置され、前記入力側光導波路に接続された曲がり導波路と前記出力側光導波路に接続された曲がり導波路とが、前記方向性結合器に向かって互いに接近し、又は、前記方向性結合器から離れる向きで互いに離間することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏波変換素子。
前記入力側光導波路及び前記出力側光導波路のうち、コアが前記下部コアと前記上部コアとからなる光導波路の長手方向の一端又は両端に、前記下部コアと前記上部コアとの幅が徐々に等しくなる光導波路が配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏波変換素子。
前記入力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率と、前記出力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率との差の絶対値が、0.2以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏波変換素子。
前記入力側光導波路及び前記出力側光導波路が基板上に形成され、前記幅が前記基板に平行な方向の寸法であり、前記高さが前記基板に垂直な方向の寸法であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏波変換素子。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
本実施形態の偏波変換素子は、互いに平行な入力側光導波路及び出力側光導波路を備えた方向性結合器を有し、入力側光導波路から出力側光導波路に結合する際に、偏波方向の異なるモード間で結合可能である偏波変換素子である。方向性結合器の入力側光導波路及び出力側光導波路のいずれか一方又は両方の光導波路のコアは、
図1に示すように、矩形状の下部コア1aと、下部コア1aの上に幅の方向の一つの側端1cが一致するように配置され、かつ、下部コア1aよりも幅が小さい、上部コア1bとからなる、階段状コア1の形状を有する。これにより、基本TEモード又は基本TMモードの一方又は両方のモードの電界を回転させ、基本TEモードと基本TMモードとの間の結合効率を高めることができる。このように階段状コア形状とすることにより、上部クラッドと下部クラッドの屈折率を変えることなく、上下の非対称性をつくり、より短距離で、かつ効率的に偏波変換を行うことが可能になる。
【0020】
一方の光導波路のコアのみを
図1に示す階段状コア形状とする場合は、他方のコアは
図2に示すように、矩形状コア2(矩形導波路)としてもよい。
入力側光導波路と出力側光導波路のコアの高さが互いに等しいことが好ましい。コアの高さHとは、
図1に示すような階段状コア1の場合は下部コア1aと上部コア1bを含む全体の高さであり、
図2に示すような矩形状コア2の場合はコアの高さである。入力側光導波路及び出力側光導波路が基板P上に形成されている場合は、幅W,Wa,Wbとは基板Pに平行な方向の寸法であり、高さH,Ha,Hbとは基板Pに垂直な方向の寸法をいう。
図1において、上部コア1bの幅Wbは下部コア1aの幅Waより小さく、側端1cの反対側には両者の幅の差に対応した段部1dが形成されている。図に示す基板Pの位置は、下部クラッドの上面を示す。下部クラッドの上とコアの上面及び両側端の周囲には、上部クラッドが形成される。
【0021】
下部コア1aの高さHaと上部コア1bの高さHbの関係は特に限定されず、Ha>Hbでも、Ha=Hbでも、Ha<Hbでもよいが、極端に差が大きくないことが好ましい。下部コア1aと上部コア1bは同じ材料から形成することが好ましい。Siコアの場合、1つの単結晶Siからエッチングにより下部コア1aと上部コア1bを形成してもよい。単結晶Siから下部コア1aを形成した後に、多結晶Si等で上部コア1bを形成することもできる。
【0022】
互いに平行な入力側光導波路から出力側光導波路が方向性結合器として機能するためには、一方の光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率と、他方の光導波路を導波する基本TMモードの実効屈折率とが十分に近いことが好ましく、両者の実効屈折率が等しいことが望ましい。
入力側光導波路に基本TEモードを入力させ、基本TMモードとして出力側光導波路に結合させる場合は、入力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率と、出力側光導波路を導波する基本TMモードの実効屈折率とが実質的に等しいことが望ましい。
入力側光導波路に基本TMモードを入力させ、基本TEモードとして出力側光導波路に結合させる場合は、入力側光導波路を導波する基本TMモードの実効屈折率と、出力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率とが実質的に等しいことが望ましい。
【0023】
次に、階段状コアの形状によって基本TEモードと基本TMモードとの間の結合効率が高められる理由を述べる。方向性結合器の結合効率Tは、入力されるモードのパワーに対する、出力されるモードのパワーの比である。2つの導波路が離れているとき、結合効率Tは近似的に次式(1)で表される。
【0025】
ここで、χは結合定数、δは結合対象とする2つのモードがそれぞれの導波路を独立に導波するときの伝搬定数の差の半分の値であり、Lは方向性結合器の長さを表す。結合対象とする2つのモードは、例えば基本TEモードと基本TMモードのように、偏波方向の異なるモードである。いずれを入力されるモード、出力されるモードとしてもよいが、例えば、基本TEモードを入力されるモードとし、基本TMモードを出力されるモードとしてもよい。
【0026】
ここでχに注目し、χが大きいと結合効率Tが大きくなり、結合長が短くなることを示す。式(1)より、結合効率Tはχ
2/(χ
2+δ
2)の項と、sin
2(L√)の項に分けられる。ここでは、根号内の「χ
2+δ
2」を省略して記載したが、「L√」は「L√(χ
2+δ
2)」、すなわち、
【0028】
の意味である。前者はδがゼロに近い方が大きくなるが、δは入力側光導波路と出力側光導波路の構造やクラッド/コアの屈折率で決まる実効屈折率により決まるため、製造誤差や温度変化、材料の屈折率揺らぎなどで必ずしもゼロにすることはできない。そのため、非ゼロのδの元で結合効率を高めるためには、χが大きい方が良い。また、後者のsin
2(L√)の項について、この項が最大値1をとるような最短のLを結合長L
cとすると、L
cは次の式(2)のように表される。
【0030】
δがゼロに近い場合、χが小さいとL
cが大きくなり方向性結合器が長くなってしまうので、χは大きい方が良い。
以上より、式(1)からχが大きいと結合効率Tが高まり、より短い距離で結合が可能であることが分かる。
続いて、本発明により結合定数χが大きくなる理由について述べる。結合定数χは次式(3)のような依存関係がある。
【0032】
ここで、式(3)のパラメータは、次のように定義される。2つの導波路をそれぞれ導波路1、導波路2とする。
N
1は、導波路1のみが存在するときのコア断面の屈折率分布である。同様に、N
2を、導波路2のみが存在するときのコア断面の屈折率分布として定義できる。
Nは、導波路1,2が存在するときのコア断面の屈折率分布である。E
1及びE
2は、それぞれ導波路1又は導波路2を導波するモードの電界ベクトルである。xは幅方向の位置であり、yは高さ方向の位置である。
【0033】
式(3)より、結合定数χは2つのモードの電界の内積(E
2*・E
1もしくはE
1*・E
2)で決まるため、対称とする2つのモードが同一の電界成分を持つほど、結合定数χが上がり、結合効率Tが高まる。基本TEモードと基本TMモードのように、主電界の振幅方向が互いに直交する2つのモード間の結合においては、一方又は両方のモードで電界を回転させ、主電界でない方の電界成分を増加させることにより、結合定数χが高まる。
【0034】
例えば詳細は後述する(実施例1参照)が、コアの幅と高さを同じにして、基本TEモードの導波に元いる構造の電界分布を求めて比較すると、階段状コア形状(
図10)とすることで、矩形状コア形状(
図11)に比べて、Ey成分(基本TEモードにおいては主電界成分に直交する成分)が増加し、結合効率が大きくなり、方向性結合器を用いて偏波変換を行うことが可能である。ここで、導波路の幅方向をX軸、導波路の高さ方向をY軸とし、Ex成分は導波路の幅方向の電界成分、Ey成分は導波路の高さ方向の電界成分である。図中の電界成分の値は、主電界成分の最大振幅で規格化された値になる。
【0035】
また、
図12(a)には
図10の階段状コアにおいて、また
図12(b)には
図11の矩形状コアにおいて、それぞれ、中心(X=0)から幅方向へ+1μm離れたところの電界のEy成分の値を示す。
図12のグラフの縦軸(Y)は、
図10,11と同様にコアの高さ方向の位置(μm)を表す。
図12の横軸は、Ex成分とEy成分を合わせた電界を1としたときのEy成分の値を表す。これから、階段状コア形状では中心から離れた位置にも電界は広く分布し、隣接する導波路への結合が高まることが分かる。
【0036】
続いて、本実施形態の光導波路素子の作製上の優位点を挙げる。階段状コア形状を持つ光導波路は、リブ導波路の作製と同様のプロセスで作製することができる。基板型光導波路では、矩形導波路と共に、矩形導波路よりも損失の小さいリブ導波路を併用することが多いので、
図1のような2段重ねの階段状コア形状は、多くの場合に余分なプロセスを必要とせずに作製することが可能である。また、上部クラッドと下部クラッドに同じ材料を使用することが可能であり、異なる材料を用いる必要がある偏波変換素子(非特許文献1)に比べて、作製プロセスの単純化が図れる。特に、SOI(Silicon on insulator)による光導波路は、下部クラッドとなるBOX層はSiO
2であり、上部クラッドもSiO
2が多用される。このため、上部クラッドと下部クラッドに同じ材料を使用することが可能な本発明は有用である。
【0037】
また、本発明によれば、上部クラッドと下部クラッドの材料が同一の場合にも、光導波路上で基本TEモードと基本TMモードの間の変換である偏波変換を行うことができる。本発明においては、上部クラッドと下部クラッドとして、同じ元素種からなる材料を用いることが好ましい。例えば、下部クラッドがSiO
2であれば、上部クラッドにもSiO
2を用いることが好ましい。
【0038】
上部クラッドと下部クラッドの屈折率が異なっているが、これらの屈折率差が大きくない場合にも、本発明によれば、階段状コアにおいて上下の非対称性が大きくなり、より短い距離で、かつ高効率に偏波変換を行うことが可能になる。
屈折率差が大きくない場合としては、例えば、他の光導波路で上部クラッドと下部クラッドに異なる材料を使用しており、これらの材料が偏波変換素子における上部クラッドと下部クラッドに流用することが可能である場合や、同一の材料を母材とする上部クラッドと下部クラッドでドーピング条件を変えることにより屈折率差をつける等、余分なプロセスの手間が少ない場合が挙げられる。本発明によれば、これらの場合においても、基板型光導波路上で小型かつ高効率に偏波変換を行う方法という課題も解決することができる。
階段状コアを用いない場合、非特許文献1に記載されているように、上部クラッドと下部クラッドの屈折率差が大きくないと、上下の非対称性が小さくなり、モードの回転が十分に起こらず、偏波変換が困難になる。
【0039】
方向性結合器を構成する2つの光導波路の基本TEモードの実効屈折率が一致しない場合、基本TMモードが出力される導波路に基本TEモードを入力しても、他方の光導波路にはほとんど結合せず、通過する。そのため、本発明の偏波変換素子は、偏波ビームコンバイナとして機能させることもできる。
【0040】
図3に、本実施形態の偏波変換素子(光導波路素子10)のより広い範囲の構成を例示する。
図4に、
図3の光導波路素子10における方向性結合器13の断面図を示す。
方向性結合器13の導波方向の前後には、曲がり導波路14,15,16,17が配置されている。
図3の場合、入力側光導波路11及び出力側光導波路12のそれぞれの長手方向の両端に曲がり導波路14,15,16,17が配置されている。導波方向の前側では、入力側光導波路11に接続された曲がり導波路14と出力側光導波路12に接続された曲がり導波路15とが、方向性結合器13に向かって互いに接近している。導波方向の後側では、入力側光導波路11に接続された曲がり導波路16と出力側光導波路12に接続された曲がり導波路17とが、方向性結合器13から離れる向きで互いに離間する。このように、曲がり導波路14,15,16,17を配置することにより、方向性結合器13の前後における2つの導波路間隔を大きくし、光の結合を抑制することができる。
曲がり導波路14,15,16,17は、入力側光導波路11及び出力側光導波路12のいずれか一方のみに設けてもよく、また、入力側光導波路11又は出力側光導波路12の前後のいずれか一端のみに設けてもよい。曲がり導波路を設けない端では、方向性結合器13の各導波路から直線状に導波路を延長することができる。
【0041】
図3に示す光導波路素子10では、
図4に示すように、入力側光導波路11のコアのみが下部コア11aと上部コア11bとからなる階段状コアであり、出力側光導波路12のコアは矩形状コアである。そのため、入力側光導波路11に基本TEモード等の入力モードを入力する際は、広く用いられる矩形状コアを持つ導波路を、階段状に変換する必要がある。これは、単に矩形状コアの幅を導波方向に沿って徐々に変えていくのに比べて、余分な操作を必要とする。そのため、片側だけ階段状コアとして偏波を傾ける
図4の構造は、入力側光導波路11及び出力側光導波路12の両方を階段状コアとする場合に比べて、小型化が容易である。
【0042】
また、
図4に示すように入力側光導波路11に階段状コアを用いる場合、入力側光導波路11において方向性結合器13の直線部分以降の部分(
図3では曲がり導波路16)での導波は意図しないため、矩形状コアと階段状コアの間の変換は、実質一回で済む。そのため、
図5に示すように出力側光導波路12に階段状コアを用いる場合と比べて、小型化が容易である(ただし、偏波ビームコンバイナとして使用する場合)。一方で、基本TEモードが導波する導波路は、基本TMモードが導波する導波路よりも導波路サイズが小さくなるため(導波路幅が高さよりも大きい一般的な基板型光導波路の場合)、基本TEモードを入力とする場合には、
図4に示すように入力側光導波路11に階段状コアを作製するとき、製造がより厳しくなる。
【0043】
図5に示す第2実施形態の方向性結合器は、
図4とは反対に、出力側光導波路12のコアが下部コア12aと上部コア12bとからなる階段状コアであり、入力側光導波路11のコアは矩形状コアである。上述したように、基本TEモードが導波する導波路は、基本TMモードが導波する導波路よりも導波路サイズが小さくなるため(導波路幅が高さよりも大きい一般的な基板型光導波路の場合)、基本TEモードを入力とする場合には、
図5に示すように出力側光導波路12に階段状コアを作製する方が、製造が容易である。
【0044】
偏波変換素子としてのみ利用する場合には、出力側光導波路12において方向性結合器13の出力端とは反対側(
図3では曲がり導波路15)には光を入力せず、導波は意図しないため、階段状コアを矩形状コアに変換する構造は、実質一回で済む。
出力側光導波路12において方向性結合器13の出力端とは反対側から別の基本TEモード(基本TEモード′)を多重させる場合は、基本TEモード′の入力端でも矩形状コアを階段状コアに変換する構造が必要になるため、より素子サイズは大きくなる。
【0045】
図6に示す第3実施形態の方向性結合器は、入力側光導波路11及び出力側光導波路12の両方が階段状コアであり、入力側のモードと出力側のモードの両方を回転させる構造になっている。両方のモードを回転させることにより、片方の導波路を階段状コアとする
図4及び
図5に比べて、結合効率をより高くすることができる。
【0046】
また、リブプロセスの製造誤差によって、スラブの高さ(下部コアの高さ)が全体の導波路コアの高さとは独立に変動する場合がある。この影響下では、両方の導波路を階段状コアとする本実施形態では、両方のコア形状が同様に変化し、これらの変化は光の閉じ込めに対しては同じ傾向の効果を持つ(すなわちコアが小さくなる/大きくなる→閉じ込めが弱くなる/強くなる)ので、光の閉じ込めに対する実効屈折率の増減が両方の導波路で一致し、2つの光導波路11,12間の実質屈折率差の変化を小さくすることができる。
図4及び
図5に示すように、片方の導波路のみを階段状コアとする場合、階段状コアのみが下部コアの高さが変動する影響を受けるので、この導波路を導波するモードの実効屈折率のみが変化し、2つの光導波路11,12の実効屈折率差が大きくなる。
なお、2つの光導波路11,12の実効屈折率差が大きくなると、上述の式(1)において、δが大きくなるため、結合効率が低下し、好ましくない。
【0047】
図4及び
図5に示すように、一方の光導波路において階段状コアを設ける場合は、下部コア及び上部コアの側端が一致する側に、他方の光導波路が存在することが好ましい。
また、
図6に示すように、両方の光導波路に階段状コアを設ける場合は、下部コア11a,12aと上部コア11b,12bの側端11c,12cが一致する側が、それぞれ向かい合うように配置されていることが好ましい。
偏波を回転させる効果に対しては、階段状コアの上下で一致する側端11c,12cと段部11d,12dの向きがどちらでも構わないが、結合効率が低下したり、製造において隣接する導波路の内側に高さの薄い導波路が配置されると製造精度が下がったりする場合がある。そのため、
図4〜6に示すように、一致する側端11c,12cが内側で、段部11d,12dが外側の向きにすることが好ましい。
【0048】
図3では、階段状コアを有する光導波路は、方向性結合器13の入力側光導波路11だけでなく、その前後の曲がり導波路14,16まで階段状コアを形成している。
階段状コアの光導波路を矩形状コアの光導波路と接続するため、下部コアと上部コアとの幅が徐々に等しくなる光導波路を設けることが好ましい。下部コアと上部コアとの幅が徐々に等しくなる光導波路は、曲がり導波路14,16の一端の直線部(
図3の範囲外)に設けてもよく、曲がり導波路14,16の途中に設けてもよい。
【0049】
図3の光導波路素子10において、曲がり導波路14に基本TEモードを入力し、方向性結合器13で基本TMモードに変換させて、曲がり導波路15の基本TEモードと合波させて、曲がり導波路17に出力させる場合、偏波変換と偏波ビームコンバイナを同時に行うことができる。偏波ビームコンバイナとする場合には、入力側光導波路11を導波するTEモードの実効屈折率と、出力側光導波路12を導波する基本TEモードの実効屈折率との差の絶対値が、0.2以上であることが好ましい。
偏波変換と偏波ビームコンバイナを同時に行う素子は、2つの光導波路に偏波方向が同じモードの光が入力されたとき、方向性結合器で一方の光導波路を伝送する光を、他方の光導波路における偏波方向の異なるモードに結合させ、他方の光導波路において、偏波方向の異なる2つのモードが同時に伝送される偏波多重信号を出力することができる。入力されるモードは、基本TEモードが好ましいが、他のモードとすることもできる。
図3では、
図4に示すように一方の光導波路11のみに階段状コアを用いているが、
図5や
図6に示すように他方の光導波路12に階段状コアを用いても、偏波変換と偏波ビームコンバイナを同時に実現することは可能である。
【0050】
図3の光導波路素子10において、曲がり導波路17に基本TEモードと基本TMモードが同時に伝送される偏波多重信号を入力し、方向性結合器13で基本TMモードの信号を基本TEモードに変換させて曲がり導波路14に出力し、基本TEモードの信号は方向性結合器13で結合することなく曲がり導波路15に出力する場合、偏波変換と偏波ビームスプリッタを同時に行うことができる。
偏波変換と偏波ビームスプリッタを同時に行う素子は、偏波方向の異なる2つのモードが同時に伝送される偏波多重信号が入力されたとき、方向性結合器で一方の光導波路を伝送する1つのモードを、他方の光導波路における偏波方向の異なる別のモードに結合させ、その結果、2つの光導波路から偏波方向が同じモードを出力することができる。出力されるモードは、基本TEモードが好ましいが、他のモードとすることもできる。
図3では、
図4に示すように一方の光導波路11のみに階段状コアを用いているが、
図5や
図6に示すように他方の光導波路12に階段状コアを用いても、偏波変換と偏波ビームスプリッタを同時に実現することは可能である。
【0051】
(DP−QPSK変調器)
本発明の偏波変換素子は、参考文献1(P. Dong, C. Xie, L. Chen, L. L. Buhl, and Y.-K. Chen, “112-Gb/s Monolithic PDM-QPSK Modulator in Silicon,” European Conference and Exhibition on Optical Communication, Vol. 1, p. Th.3.B.1, June 16, 2012)で開示されているような偏波多重4値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)に使用することが可能である。
図7にDP−QPSK変調器の一例を模式的に示す。このDP−QPSK変調器20は、通常の光導波路に基本TEモードと基本TMモードの2つのモードが存在できることを利用して、基本TEモード/基本TMモードの両モードに独立したQPSK信号を有する、DP−QPSK変調を行う。具体的には、入力部21から基本TEモードで入力した光を2つの光導波路22,22に分岐し、QPSK変調器23,23により各々QPSK信号に変調した後、光導波路24,24の片側の基本TEモードを偏波変換素子25により基本TMモードに変換させて、2つのモードを偏波ビームコンバイナで同一の光導波路上に合成し、基本TEモードと基本TMモードに独立した信号を出力部26に出力する。
【0052】
基本TEモードの一方を基本TMモードに変換して、もう一方の基本TEモードと合波させる偏波変換素子25の部分に、例えば
図3に示す実施形態の偏波変換素子を利用することができる。例えば、
図3の曲がり導波路14,15が
図7の光導波路24,24に相当し、
図3の曲がり導波路17が
図7の出力部26に相当する。
なお、基本TEモードを変調する方式はQPSKに限らず、複雑な構成を持つ変調器であっても、本発明の偏波変換素子を用いて偏波多重を行うことが可能である。
【0053】
(偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機)
本発明の偏波変換素子は、参考文献2(C. Doerr et al., “Packaged Monolithic Silicon 112-Gb/s Coherent Receiver,” IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 23, pp. 762-764, 2011)で開示されているような、基本TEモードと基本TMモードを同時に伝送した偏波多重信号のSi光導波路上のコヒーレント受信機に使用することが可能である。
図8に、偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機の一例を模式的に示す。このコヒーレント受信機30は、基本TEモードと基本TMモードを同時に伝送した偏波多重信号の光導波路31を、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える偏波変換素子32に接続し、光導波路33,33の一方には基本TEモードの信号を、また、光導波路33,33の他方には基本TMモードから変換した基本TEモードの信号を分岐させる。局発光34として、一般的に用いられる半導体レーザ光源は片偏波のみ、例えば基本TEモード(local)の出力を用いる。このような光源を用いる場合、従来では局発光の偏波変換が必要となる。しかし、
図8のコヒーレント受信機30では、信号光は偏波分離後にいずれも基本TEモードの信号(signal)となるので、局発光の偏波変換が不要になる。信号光と局発光は、光合波部35を経て、結合部36から出力される。
偏波変換素子32に光導波路型の構造を用いる場合、結合部36における素子外部との光の結合には、基板側方より結合する逆テーパ型のモードフィールド変換器など、偏波分離機能を持たない結合器を利用することが可能である。結合器には、例えば参考文献3(Qing Fang, et al., “Suspended optical fiber-to-waveguide mode size converter for silicon photonics,” Optics Express, Vol. 18, Issue 8, pp. 7763-7769 (2010))に開示されている、逆テーパ型の構造が開示できる。
【0054】
(偏波ダイバーシティ方式)
本発明の偏波変換素子は、参考文献4(Hiroshi Fukuda et al., “Silicon photonic circuit with polarization diversity,” Optics Express, Vol. 16, Issue 7, pp. 4872-4880 (2008))で開示されているような、基本TEモードと基本TMモードが同時に伝送される偏波多重伝送や、片方の偏波がランダムに伝送されるときに、両モードに対して同様の操作を与えるための素子を利用したい場合、
図9に示すような偏波ダイバーシティ方式を実行するために用いることができる。
図9に示す偏波ダイバーシティ方式40では、基本TEモードと基本TMモードが同時に伝送される偏波多重信号の光導波路41を、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える偏波変換素子42に接続し、光導波路43,43の一方には基本TEモードの信号を、また、光導波路43,43の他方には基本TMモードから変換した基本TEモードの信号を分岐させる。素子44,44で操作された基本TEモードの信号光は、光導波路45,45から偏波変換素子46で合成して、基本TEモードと基本TMモードが同時に伝送される偏波多重信号の光導波路47に出力する。
【0055】
偏波変換素子42には、
図8に示す偏波ダイバーシティ・コヒーレント受信機と同様に、偏波変換と偏波ビームスプリッタが同時に行える本発明の偏波変換素子を用いることができる。
偏波変換素子46には、
図7に示すDP−QPSK変調器と同様に、偏波変換と偏波ビームコンバイナが同時に行える本発明の偏波変換素子を用いることができる。
【0056】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明で用いられる方向性結合器において、入力側光導波路と出力側光導波路とは、基板に対して垂直など、任意の方向に並べることができる。この場合は、光の導波方向に垂直な断面において、入力側光導波路と出力側光導波路とが向かい合う方向の寸法を幅とし、向かい合う方向に垂直な方向の寸法を高さとするもし、2つの光導波路が基板に対して垂直に向かい合う場合は、基板に垂直な方向の寸法を「幅」とし、基板に平行な方向の寸法を「高さ」とする。
【0057】
方向性結合器の矩形状コアを有する光導波路では、長手方向の一端又は両端に、徐々に幅が変化するテーパ状の光導波路が配置されていることが好ましい。これにより、方向性結合器に適した幅を有する矩形状コアの光導波路を、外部の適当な幅を持つ矩形状コアの光導波路と低損失で接続することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図3及び
図4に、本実施例の構造を示す。
図3には上部から見た図を示し、
図4には、方向性結合器における屈折率断面形状を示す。本実施例の光導波路素子の製造は、Si−SiO
2−SiからなるSOI(Silicon on insulator)基板をもとに形成する。中間のSiO
2層を下部クラッドとし、上部のSi層をコアとして用いる。コア形成後、上部クラッドとしてSiO
2を設ける。クラッドの材料であるSiO
2の屈折率は1.44、コアの材料であるSiの屈折率は3.48とした。
図4において、入力側光導波路11のコアの断面寸法は、上部コア11bの高さHb1を125nm、上部コア11bの幅Wb1を200nm、下部コア11aの高さHa1を95nm、下部コア11aの幅Wa1を300nm、コア全体の高さH1は220nmとした。出力側光導波路12のコアの断面寸法は、コアの高さH2を220nm、幅W2を336nmとした。また、入力側光導波路と出力側光導波路の方向性結合器13における間隔を250nmとした。
【0059】
コア形状は、光導波路の長手方向にわたり、どの断面も
図4と同様の形状であり、寸法も同じである。方向性結合器13において、2つの光導波路11,12が平行である。方向性結合器13の長さLは3μmとした。
方向性結合器13の前後には、それぞれ曲がり導波路14,15,16,17を設け、方向性結合器13の付近で2つの光導波路を接近させている。各曲がり導波路は、曲率半径70μm、曲げ角度7.5°の円弧を2つつなげたS字カーブである。1つの円弧からなる範囲を符号Cで示す。曲がり導波路15の端から曲がり導波路17の端までの距離は約44μmであり、非常に小型である。
【0060】
光の波長を1.55μmとして、実施例1の階段状コアを持つ入力側光導波路に基本TEモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図10(a)に、Ey成分は
図10(b)に示す。結合定数は、0.145rad/μmとなる。このときの実効屈折率n
effは約1.625665である。
なお、実施例1の矩形状コアを持つ出力側光導波路を導波する基本TMモードの実効屈折率は、約1.625892で、階段状コアを持つ入力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率(n
eff=1.625665)と同程度になっている。このとき上述のδ(式(1)参照)が0.000460rad/μmとなり、結合定数0.145rad/μmに比べ十分小さく、偏波変換の機能を有するのに十分であることが分かる。
【0061】
比較として、実施例1の入力側光導波路と同じ幅の矩形状コア(幅300nm、高さ220nm)を持つ光導波路に基本TEモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図11(a)に、Ey成分は
図11(b)に示す。このときの実効屈折率n
effは1.820082、すなわち約1.82008である。
図10と
図11の対比により、階段状コアのほうがEy成分(基本TEモードにおいては主電界成分に直交する成分)が増加していることが分かる。したがって、入力側光導波路11に階段状コアを持たせることにより、結合効率を大きくし、偏波変換効率を高めることが可能である。
【0062】
さらに比較のため、上記矩形状コア(幅300nm、高さ220nm)を用いた方向性結合器による偏波変換を行おうとした場合の結合定数を示す。上記矩形状コア(幅300nm、高さ220nm)に平行に矩形状コアを配置し、前者の基本TEモードを後者の基本TMモードに移す場合を考える。後者の矩形状コアの寸法は、幅591nm、高さは220nmとした。このとき後者の基本TMモードの実効屈折率は約1.81988であり、後者の基本TEモードの実効屈折率(1.82008)と同程度になり、このときδ=0.000404rad/μmとなる。また、これらの導波路の幅方向の間隔は、実施例1の構造と同じく250nmとした。このときの、結合定数は0.0420rad/μmとなる。実施例1の構造の場合は、結合定数が0.145rad/μmであったので、階段状コアにすることで、結合定数を大きく上げることができていることが分かる。
【0063】
図10の階段状コアにおいて、中心(X=0)から幅方向へ+1μm離れたところの電界のEy成分の値を
図12(a)に示す。また、
図11の矩形状コアにおいて、中心(X=0)から幅方向へ+1μm離れたところの電界のEy成分の値を
図12(b)に示す。
矩形状コア形状では、
図12(b)に示すようにEy成分の最大値が±7×10
−4程度であるのに対し、階段状コア形状では、
図12(a)に示すようにEy成分の最大値が約0.01と大きくなっている。なお、上述したように、電界成分の値は、主電界成分(ここではEx成分)の最大振幅で規格化された値である。これから、階段状コア形状では中心から離れた位置にも電界は広く分布し、隣接する導波路への結合が高まることが分かる。
【0064】
本実施例の偏波変換素子の偏波変換効率を、有限差分時間領域(Finite-Difference Time Domain:FDTD)法による電磁界シミュレーションを用いて計算した。入力側光導波路11に基本TEモードを入力したときの電界のEy成分の移り変わりを
図13に示す。この図より、入力側光導波路を伝搬する基本TEモードも大きなEy成分を持つことが分かり、これが隣の光導波路の基本TMモードに結合していることが見て取れる。その結果、偏波変換効率(結合効率と等価)は、(出力側の基本TMモードパワー)/(入力側の基本TEモードパワー)の比として、−0.75dBとなり、高い効率で偏波変換が可能であることが分かる。
【0065】
一方、出力側光導波路12の出力端でない方から基本TEモード(基本TEモード′と書くことにする)を入力した場合、入力側光導波路11の基本TEモードと出力側光導波路12の基本TEモード′の実効屈折率には大きな差があるため、結合効率は非常に小さい。これをFDTD法によりシミュレーションした。出力側光導波路12に基本TEモード′を入力したときの電界のEx成分の移り変わりを示すシミュレーション結果を
図14に示す。これにより、基本TEモード′はほとんど入力側光導波路11に結合することなく、出力側光導波路12を透過していることが分かる。FDTDの計算結果によれば、入力された基本TEモード′のパワーに対する出力された基本TEモード′のパワーの比は、−0.08dBとなり、ほとんど損失なく透過することが分かる。これより、本実施例は偏波変換素子だけではなく、入力された2つの基本TEモードのうち一方を基本TMモードに変換し、他方の基本TEモードと合波する素子としての働きを持つことが分かる。
なお、出力側光導波路を導波する基本TEモード(基本TEモード′)の実効屈折率は約1.98712であり、入力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率(n
eff=1.625665)との差の絶対値が、0.2以上であり、偏波ビームコンバイナとしての機能を有するのに十分であることが分かる。
【0066】
(実施例2)
図5に示すように出力側光導波路12が階段状コアを持ち、入力側光導波路11が矩形状コアを持つ光導波路素子を、実施例1と同様の方法で作製した。入力側光導波路11のコアの断面寸法は、コアの高さH1を220nm、幅W1を282nmとした。出力側光導波路12のコアの断面寸法は、上部コア12bの高さHb2を125nm、上部コア12bの幅Wb2を420nm、下部コア12aの高さHa2を95nm、下部コア12aの幅Wa2を600nm、コア全体の高さH2は220nmとした。入力側光導波路と出力側光導波路の幅方向の間隔を400nmとすると、結合定数は0.0315rad/μmとなる。
【0067】
実施例2の階段状コアを持つ出力側光導波路に基本TMモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図15(a)に、Ey成分は
図15(b)に示す。このときの実効屈折率n
effは約1.737666である。
なお、実施例2の矩形状コアを持つ入力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率は約1.733459で、階段状コアを持つ出力側光導波路を導波する基本TMモードの実効屈折率(n
eff=1.737666)と同程度になっている。このときδ=0.00853rad/μmとなり、結合定数0.0315rad/μmに比べ十分小さく、偏波変換の機能を有するのに十分であることが分かる。
【0068】
比較として、実施例2の出力側光導波路と同じ幅の矩形状コア(幅600nm、高さ220nm)を持つ光導波路に基本TMモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図16(a)に、Ey成分は
図16(b)に示す。このとき実効屈折率n
effは1.823885、すなわち約1.82389である。
図15と
図16の対比により、階段状コアのほうがEx成分(基本TMモードにおいては主電界成分に直交する成分)が増加していることが分かる。したがって、出力側光導波路12に階段状コアを持たせても、実施例1と同様に、結合効率を大きくし、偏波変換効率を高めることが可能である。
【0069】
さらに比較のため、上記矩形状コア(幅600nm、高さ220nm)を用いた方向性結合器による偏波変換を行おうとした場合の結合定数を示す。上記矩形状コア(幅600nm、高さ220nm)に平行に矩形状コアを配置し、前者の基本TMモードと後者の基本TEモードとの結合を考える。後者の矩形状コアの寸法は、幅301nm、高さは220nmとした。このとき後者の基本TEモードの実効屈折率は約1.82486であり、後者の基本TEモードの実効屈折率(1.82389)と同程度になり、このときδ=0.00198rad/μmとなる。また、これらの導波路の幅方向の間隔は、実施例2の構造と同じく400nmとした。このときの、結合定数は0.0123rad/μmとなる。実施例2の構造の場合は、結合定数が0.0315rad/μmであったので、階段状コアにすることで、結合定数を上げることができていることが分かる。
【0070】
(実施例3)
図6に示すように入力側光導波路11と出力側光導波路12の両方が階段状コアを持つ光導波路素子を、実施例1と同様の方法で作製した。入力側光導波路11のコアの断面寸法は、実施例1と同様に、上部コア11bの高さHb1を125nm、上部コア11bの幅Wb1を200nm、下部コア11aの高さHa1を95nm、下部コア11aの幅Wa1を300nm、コア全体の高さH1は220nmとした。出力側光導波路12のコアの断面寸法は、上部コア12bの高さHb2を125nm、上部コア12bの幅Wb2を304nm、下部コア12aの高さHa2を95nm、下部コア12aの幅Wa2を608nm、コア全体の高さH2は220nmとした。入力側光導波路と出力側光導波路の幅方向の間隔を250nmとすると、結合定数は0.154rad/μmとなる。
【0071】
実施例3の階段状コアを持つ入力側光導波路に基本TEモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図17(a)に、Ey成分は
図17(b)に示す。ここで実効屈折率n
effは約1.625665である。なお、入力側光導波路の屈折率断面(形状及び寸法)が実施例1と同じであることから、
図17と
図10の結果は等しくなる。
実施例3の階段状コアを持つ出力側光導波路に基本TMモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図18(a)に、Ey成分は
図18(b)に示す。実効屈折率n
effは約1.625885である。
【0072】
入力側光導波路を導波する基本TEモードの実効屈折率(n
eff=1.625665)と出力側光導波路を導波する基本TMモードの実効屈折率(n
eff=1.625885)とがほとんど同程度になっている。このときδ=0.000446rad/μmとなり、結合定数0.154rad/μmに比べ十分小さく、偏波変換の機能を有するのに十分であることが分かる。
【0073】
両方の光導波路が階段状コアを持つことにより、実施例1,2と同様に、基本TMモードを導波させた入力側光導波路ではEx成分基本TEモードを導波させた出力側光導波路ではEy成分が増加し、両方のモードを回転させる構造になっている。したがって、実施例1,2と同様に、あるいはそれ以上に、結合効率を大きくし、偏波変換効率を高めることが可能である。実際、同じ導波路間隔(250nm)かつ入力側光導波路の幅が等しい(300nm)、実施例1と実施例3において、片側だけ階段状コアの実施例1ではχ=0.145rad/μmであったのに対し、両側が階段状コアの実施例3ではχ=0.154rad/μmと、結合定数χは増加していることが分かる。
【0074】
(比較例1)
非特許文献1と同様に、入力側光導波路と出力側光導波路の両方が矩形状コアを持つ光導波路素子を、実施例1と同様の方法で作製した。入力側光導波路のコアの断面寸法は、幅を600nm、高さを250nmとした。出力側光導波路のコアの断面寸法は、幅を333nm、高さを250nmとした。コアを形成した後にSiO
2からなる上部クラッドを設けた。つまり、上部クラッドと下部クラッドの材料は、非特許文献1とは異なり、ともにSiO
2とした。
【0075】
比較例1の入力側光導波路に基本TEモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図19(a)に、Ey成分は
図19(b)に示す。実効屈折率n
effは約2.075428である。屈折率断面に上下非対称性がないため、基本TEモードの電界はほとんど回転していない。
【0076】
(比較例2)
非特許文献1と同様に、入力側光導波路と出力側光導波路の両方が矩形状コアを持つ光導波路素子を、実施例1と同様の方法で作製した。入力側光導波路のコアの断面寸法は、幅を600nm、高さを250nmとした。出力側光導波路のコアの断面寸法は、幅を333nm、高さを250nmとした。コアを形成した後に上部クラッドを設ける工程を省略し、上部クラッドの材料は空気、下部クラッドの材料はSiO
2とした。
【0077】
比較例2の入力側光導波路に基本TEモードを導波させたときの電界を求めた結果を、Ex成分は
図20(a)に、Ey成分は
図20(b)に示す。実効屈折率n
effは約1.879921である。クラッドの上下非対称性により、Ey成分が増加し、基本TEモードの電界が回転している。
【0078】
比較例2の出力側光導波路に基本TMモードを導波させたときも、クラッドの上下非対称性により、Ey成分が増加し、基本TEモードの電界が回転する。このように、上下非対称な屈折率断面により、主電界が直交する2つのモードを回転させることにより、導波路間での結合効率を高めている。しかし、製造過程において光導波路がむき出しになってしまうので、異物の付着によって特性が劣化し、歩留まりが低下してしまう。