(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000918
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】アスファルト舗装のひび割れ補修方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/06 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
E01C23/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-171369(P2013-171369)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-40399(P2015-40399A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小井住 孝義
(72)【発明者】
【氏名】北野原 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】澤田 修平
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−060307(JP,A)
【文献】
特開2007−138063(JP,A)
【文献】
実開昭61−010310(JP,U)
【文献】
特開2001−348486(JP,A)
【文献】
特開昭56−039205(JP,A)
【文献】
特開昭62−181358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
E01C 19/00−19/52
E01C 21/00−23/24
C08L 95/00
C10C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを補修するためのひび割れ補修方法であって、
ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の帯状の補修領域に、揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材を供給すると共に、前記ひび割れが生じた部分を含む帯状の補修領域のアスファルト舗装を、外周面に多数のカッタービットを備えるカッタードラムを回転させながら、前記補修領域に食い込ませることにより切削して、切削された前記補修領域のアスファルトの切削残材を、カッタードラムの回転方向の後方側において前記バインダ材と共に混合して、ほぐされた状態で堆積させ、堆積している切削残材のアスファルト分が前記バインダ材の揮発性有機溶剤と反応することで軟化した後に、ほぐされた状態の切削残材を、切削された前記ひび割れが生じた部分を含む帯状の前記補修領域に敷き均し、転圧して硬化させることにより、アスファルト舗装の表面部分のひび割れを補修するアスファルト舗装のひび割れ補修方法。
【請求項2】
前記揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材は、前記ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の補修領域に、当該補修領域を切削するのに先立って塗布することにより供給される請求項1記載のアスファルト舗装のひび割れ補修方法。
【請求項3】
前記ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の補修領域は、9〜300mmの切削幅で切削される請求項1又は2記載のアスファルト舗装のひび割れ補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを補修するためのアスファルト舗装のひび割れ補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路の表層を構成するアスファルト舗装の表面部分にひび割れ(クラック)が生じると、景観を損なうことになると共に、小規模なひび割れであっても、やがては大きくなって、車両や歩行者の通行の障害になるおそれがあることから、早急に補修する必要がある。
【0003】
このため、アスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを補修する方法や装置として、例えば、高圧水によってひび割れを洗浄したり、圧縮空気によってひび割れの清掃や、乾燥、埃の同時処理を行った後に、洗浄や清掃を行ったひび割れの内部に、シーリング材等の充填物を充填することで、ひび割れを補修するようにしたものが一般的に知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184026号公報
【特許文献2】特開2008−101361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを補修する従来の方法や装置によれば、ひび割れの内部に、シーリング材等の充填物が注入されるため、見た目上、シーリング材等によってひび割れの補修箇所が強調されることになって、依然として景観を損ない易い。また、注入すべきシーリング材等の充填物の量を調整することが難しく、注入量が少な過ぎるとひび割れが拡大し易くなり、注入量が
多過ぎると、シーリング材等の充填物がひび割れから溢れ出たまま硬化することで、硬化したシーリング材等が剥がれ易くなる。
【0006】
本発明は、充填物を充填する必要をなくして、ひび割れの補修箇所を目立たなくすることができると共に、充填物の過不足を生じることがなく、またアスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを簡易に且つ効果的に補修することのできるアスファルト舗装のひび割れ補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを補修するためのひび割れ補修方法であって、ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の
帯状の補修領域に、揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材を供給すると共に、前記ひび割れが生じた部分を含む
帯状の補修領域のアスファルト舗装を
、外周面に多数のカッタービットを備えるカッタードラムを回転させながら、前記補修領域に食い込ませることにより切削して、切削された前記補修領域の
アスファルトの切削残材を、カッタードラムの回転方向の後方側において前記バインダ材と共に混合して、ほぐされた状態で堆積させ、堆積している切削残材のアスファルト分が前記バインダ材の揮発性有機溶剤と反応することで軟化した後に、ほぐされた状態の切削残材を、切削された前記ひび割れが生じた部分を含む
帯状の前記補修領域に敷き均し、転圧して硬化させることにより、アスファルト舗装の表面部分のひび割れを補修するアスファルト舗装のひび割れ補修方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
そして、本発明のアスファルト舗装のひび割れ補修方法は、前記揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材が、前記ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の補修領域に、当該補修領域を切削するのに先立って塗布することにより供給されることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のアスファルト舗装のひび割れ補修方法は、前記ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の補修領域が、9〜300mmの切削幅で切削されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアスファルト舗装のひび割れ補修方法によれば、充填物を充填する必要をなくして、ひび割れの補修箇所を目立たなくすることができると共に、充填物の過不足を生じることがなく、またアスファルト舗装の表面部分に生じたひび割れを簡易に且つ効果的に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)〜(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係るアスファルト舗装のひび割れ補修方法を説明する略示横断面図である。
【
図2】ひび割れが生じた部分を含む補修領域のアスファルト舗装を切削する状況を説明する略示縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい一実施形態に係るアスファルト舗装のひび割れ補修方法は、
図1(a)〜(d)に示すように、路床(図示せず)と、路盤11と、表層のアスファルト舗装10とからなる、例えば道路を形成するための舗装構造において、表層のアスファルト舗装10にひび割れ(クラック)12が生じた際に、生じたひび割れ12を簡易に且つ効率良く補修できるようにするための方法として採用されたものである。また、本実施形態のアスファルト舗装のひび割れ補修方法は、ひび割れ12に充填するためのシーリング材等の充填物を用いることなく、アスファルト舗装10のアスファルト分を軟化させることが可能な揮発性有機溶剤を用いて、ひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13を一体として補修することで、ひび割れ12の補修箇所を目立たなくする機能を備える。
【0014】
そして、本実施形態のアスファルト舗装のひび割れ補修方法は、アスファルト舗装10の表面部分に生じたひび割れ12を補修するためのひび割れ補修方法であって、ひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13に、揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材14を塗布したり混合したり散布したりすることによって供給すると共に(
図1(b)参照)、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13のアスファルト舗装10を切削して、切削された補修領域13の切削残材15とバインダ材14とを混合することで、切削残材15のアスファルト分をバインダ材14の揮発性有機溶剤によって軟化させた後に(
図1(c)参照)、バインダ材14と混合した切削残材15を、切削されたひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13に敷き均し、転圧して硬化させることにより(
図1(d)参照)、アスファルト舗装10の表面部分のひび割れを補修するようになっている。
【0015】
また、本実施形態では、揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材14は、ひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13に、当該補修領域13を切削するのに先立って塗布することにより供給されるようになっている(
図1(b)参照)。
【0016】
さらに、本実施形態では、ひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13のアスファルト舗装10の切削は、
図2に示すように、例えば外周面に多数のカッタービット16aを備えるカッタードラム16を回転させながら、補修領域13に食い込ませることによって行われるようになっている。
【0017】
本実施形態では、アスファルト舗装10は、例えば30〜200mm程度の厚さを有しており、これの表面部分を含む全体の厚さに亘って、例えば1〜20mm程度の幅のひび割れ(クラック)12が生じている。本実施形態では、このようなひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13として、好ましくは9〜300mm程度の切削幅の帯状領域に対して、特殊なバインダ材14を用いてひび割れ12の補修を行うようになっている。ここで、切削幅が9mmよりも小さいと、施工が困難になり、また切削幅を300mmよりも小さくすることで、例えば大型車のタイヤの接地幅よりも小さな幅で、ひび割れ12の補修を行うことが可能になる。
【0018】
本実施形態では、ひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13に塗布される特殊なバインダ材として、揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材14が用いられる。バインダ材14を構成する揮発性有機溶剤としては、アスファルト舗装10のアスファルト分と反応してこれを軟化する機能を備えると共に、揮発した後はアスファルト分を再び硬化させる機能を備える溶剤として公知の、各種の有機溶剤を用いることができる。このような揮発性有機溶剤としては、スチレン系有機溶剤等を挙げることができる。
【0019】
また、バインダ材14を構成する結合剤は、アスファルト舗装10のアスファルト分による結合剤としての機能を補完するもので、一般のアスファルトや特殊アスファルトの他、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。
【0020】
本実施形態では、揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材14は、施工が容易な点、及び当該バインダ材14によって、切削すべきアスファルト舗装10の補修領域13を明示できる点から、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13に、当該補修領域13を切削するのに先立って、予め塗布しておくことが好ましい。揮発性有機溶剤と結合剤とを含むバインダ材14は、ひび割れ12が生じた部分を含むアスファルト舗装10の補修領域13を切削する際に、切削しながら補修領域13にバインダ材14を混合、散布等することによって供給することもできる。
【0021】
本実施形態では、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13のアスファルト舗装10の切削は、例えば特開2003−253617号公報に記載の路面切削機や、特開2007−332604号公報に記載の路面切削機のような、公知の各種の切削機を用いて行うことができる。
本実施形態では、図2に示すように、車体の幅方向に延びるカッタードラム16の外周面に多数のカッタービット16aを設けると共に、その周囲を金属板などからなるカッターフレーム17で覆った路面切削機を用いることができる。
図2に示す路面切削機では、例えばカッタードラム16を油圧によって回転駆動させると共に、左右の昇降用油圧シリンダによって、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13のアスファルト舗装10に対して昇降させることで、外周面に設けられたカッタービット16aによって、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13のアスファルト舗装10を、任意の厚さで削り取ることができるようになっている。また、カッタードラム16の幅を調整することで、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13に対する切削幅を、任意に調整することが可能になる。
【0022】
本実施形態では、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13のアスファルト舗装10は、ひび割れ12が、アスファルト舗装10の表面部分を含む全体の厚さに亘って生じていることから、路面切削機のカッタードラム16によって、表面部分を超えて路盤11に至る深さまで切削されると共に、切削されたアスファルト舗装10の切削残材15は、路面切削機の移動方向の後方側である、カッタードラム16の回転方向の後方側の切削溝18の内部において、ひび割れ12が生じた部分を含む補修領域13に塗布されたバインダ材14と共に混合されて、ほぐされた状態で堆積する(
図1(c)、
図2参照)。
【0023】
路面切削機のカッタードラム16の後方の切削溝18に、バインダ材14と共に混合されて、ほぐされた状態で堆積している切削残材15は、これのアスファルト分がバインダ材14の揮発性有機溶剤と反応することで一時的に軟化するので、必要に応じてさらに作業員によって切削残材15とバインダ材14とを混合したり、適宜結合剤や骨材等を追加投入して混合してから、軟化してほぐされた状態の切削残材15を、路面切削機のカッタードラム16の後方の切削溝18において、敷き均すと共にレーキ等を用いて整正した後に、例えばビブロプレートやハンドガイドローラ等の転圧装置19を用いて転圧することによって(
図1(d)参照)、補修作業が完了する。
【0024】
また、切削溝18において転圧された、バインダ材14と混合された切削残材15は、時間の経過と共に揮発性有機溶剤が揮発することで硬化して、ひび割れ12を埋めて補修した状態で、周囲のアスファルト舗装10と一体となった舗装構造を形成する。
【0025】
これらによって、本実施形態のアスファルト舗装のひび割れ補修方法によれば、シーリング材等の充填物を充填する必要をなくして、ひび割れの補修箇所を目立たなくすることができると共に、充填物の過不足を生じることがなく、またアスファルト舗装10の表面部分に生じたひび割れ12を簡易に且つ効果的に補修することが可能になる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、ひび割れが生じた部分を含むアスファルト舗装の補修領域は、アスファルト舗装の全体の厚さに亘って切削して補修する必要は必ずしもなく、ひび割れが生じた深さに応じて、少なくとも表面部分を切削して補修することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 アスファルト舗装
11 路盤
12 ひび割れ
13 補修領域
14 バインダ材
15 切削残材
16 カッタードラム
16a カッタービット
17 カッターフレーム
18 切削溝
19 転圧装置