(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000937
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】加熱シリンダの温度制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20160923BHJP
B29C 45/62 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/62
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-263340(P2013-263340)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-116793(P2015-116793A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2014年10月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】山本 惟由
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−180827(JP,A)
【文献】
特開平11−286034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/78
B29C 45/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダが軸方向に複数のゾーンに区分され、各ゾーンのそれぞれが該加熱シリンダの外周面に巻かれたバンドヒータと、該バンドヒータの外側に設けられている断熱材の中綿を有する断熱カバーと、該断熱カバー内に外部から冷却流体を供給する冷却手段とを備え、各ゾーンが独立して温度制御されるようになっている射出装置において、
それぞれのゾーンにおいて温度センサにより測定される測定温度に基づいて各ゾーンに設定された目標温度に従って温度制御するとき、
前記バンドヒータは前記測定温度が前記目標温度になるようにそのデューティー比をPID制御により計算するPWM制御により常時制御するようにし、前記PID制御のゲインは前記目標温度と前記測定温度の偏差が大きいときにはオーバーシュートする大きな値に調整しておくようにし、
前記冷却手段は、ゾーンの前記測定温度が前記目標温度より所定の偏差温度だけ高い判定温度を超えたときに作動して冷却流体を供給するようにすることを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、ゾーンの温度が前記判定温度を超えて前記冷却手段によって冷却流体の供給を開始したとき、ゾーンの温度が前記目標温度に低下するまで冷却流体を供給することを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、ゾーンの温度が前記判定温度を超えて前記冷却手段によって冷却流体の供給を開始したとき、ゾーンの温度が前記判定温度に低下したら冷却流体の供給を停止することを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、前記冷却流体は圧縮空気からなることを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の加熱シリンダをゾーン毎の温度を制御する温度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来周知のように射出成形機の射出装置は、加熱シリンダ、この加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能なスクリュ、等から構成されている。加熱シリンダにはその外周部に複数枚のバンドヒータが巻かれて加熱できるようになっている。加熱シリンダ、あるいはスクリュは軸方向のそれぞれの部分によって奏する作用が相違しており、例えば加熱シリンダの後方寄りが材料の樹脂ペレットが供給される供給ゾーン、中間が樹脂ペレットが溶融される溶融ゾーン、そして前方寄りが溶融した樹脂が混練されると共に圧縮される混練ゾーンのように区分されている。加熱シリンダに巻かれている複数枚のバンドヒータは、各ゾーンにおいて独立してON/OFFされ、各ゾーンは所望の目標温度になるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−247458号公報
【特許文献2】特開平10−180827号公報
【0004】
200〜300℃に加熱される加熱シリンダは外気に大量の熱量が放出されてしまうので、その分だけバンドヒータで加熱しなければならずエネルギロスが大きい。そこで、加熱シリンダの外周面に巻かれたバンドヒータの上から保温効果を有する断熱カバーで覆われた射出装置も周知である。このような射出装置では、断熱カバーが外気への熱の放出を抑制するので、エネルギ効率に優れている。ところで射出成形機では、樹脂の色替え等により加熱シリンダの設定温度を下げたい場合もある。色替え前の加熱シリンダの温度が設定温度よりも高い場合には、自然放熱によって、あるいは送風機等によって風を当てて冷却され目標温度に達するのを待つようにしている。しかしながら加熱シリンダに断熱カバーが設けられていると冷却に長時間を要するので、射出成形機の稼働率が低下して成形品の生産性が悪化することになり、結果的にコスト高になってしまう。そこで、このような問題を解決する断熱カバーを備えた射出装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の断熱カバーは、バンドヒータに接する内側は空気を通す通気性シートから、露出している外側は空気を通さない気密シートからそれぞれ構成され、内部にはグラスファイバーやシリカ等からなる断熱材が充填されている。そして外部から冷却用の圧縮空気を供給できるようになっている。従って、色替え等の必要により加熱シリンダの温度を低下させたいときは、圧縮空気を断熱カバーに供給する。そうすると圧縮空気は断熱材内で拡散され、そして通気性シートから加熱シリンダに供給される。これによって短時間で加熱シリンダを冷却でき、射出成形機の稼働率を高めることができる。
【0005】
特許文献2には、加熱手段と冷却手段とを備えた射出装置が記載されている。この文献に記載の加熱シリンダには、その外周面に断面が略U字のらせん状の溝が形成されている。このらせん状の溝に、空気等の熱媒体を流す金属管が埋め込まれている。そしてこの上にバンドヒータが巻かれている。従ってバンドヒータに通電すると加熱シリンダを加熱することができ、金属管に空気を流すと加熱シリンダを冷却することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の断熱カバーは、射出成形機のエネルギー効率を改善できるし、そして色替え等により加熱シリンダの設定温度を変更するときにも短時間で加熱シリンダを冷却することができ、稼働率を高く維持することができ優れている。また特許文献2に記載の射出装置も、加熱手段と冷却手段とを備えているので、温度制御の自由度が高く優れている。従って、特許文献1に記載の断熱カバーも、特許文献2に記載の加熱・冷却手段も、それら自体には格別に問題はない。しかしながら、これらが設けられた加熱シリンダにおいて、どのように温度制御をすべきかという点において検討の余地が見受けられる。
【0007】
まず、バンドヒータを備えた一般的な加熱シリンダを考えると、所望の目標温度M1になるようにPID制御する場合、一般的にはゲインを小さくして
図4に示されている符号51のグラフのように、オーバーシュートしないように制御している。そうすると滑らかに目標温度M1に達することができるからである。しかしながらゲインが小さいと時定数が大きくなって、符号52で示されているように目標温度M1に達する時間が長いという欠点もある。これを例えばゲインを大きくすれば、温度は急速に高くなる。しかしながら符号53のグラフのように目標温度M1を超えてオーバーシュートしてしまい、冷却に時間を要するので結果的に目標温度M1に達するのは符号54で示されているように遅れてしまう。冷却手段のない従来の断熱カバーをかぶせている場合には、さらに冷却に時間を要するので目標温度M1に達する時間は遅くなってしまう。特許文献1に記載の断熱カバーは、このような場合において冷却するような温度制御を目的としたものではないが、圧縮空気によって冷却することができるので、加熱シリンダの温度が目標温度M1をオーバーシュートしたときに強制的に冷却する制御もできそうである。特許文献2に記載の冷却手段も同様に、このようなオーバーシュート時に強制的に冷却する制御ができそうである。しかしながら、単純にこれらの冷却手段を使って温度制御をすると問題もある。具体的にはエネルギ効率が低下するという問題である。目標温度M1を超えたら冷却手段で冷却し、そして目標温度M1を下回ったら加熱手段で加熱するようにすると、所望の目標温度M1に早期に達することは可能であるが、頻繁に加熱・冷却を繰り返すことになってエネルギロスが発生する。そうすると断熱カバーを設けていても、エネルギ効率を高めることができず、断熱している意味がない。そもそもヒータは、通電時間の割合であるデューティー比を調整するPWM制御によって制御していて、温度が目標温度M1近傍で安定してきたらデューティー比も安定する。そうすると本来は温度制御が安定するはずである。しかしながらこのような状態で冷却手段が作動してしまうと、温度の強制的な低下が外乱になってヒータの制御が乱れることにもなる。
【0008】
本発明は、上記したような問題点を解決した、加熱シリンダの温度制御方法を提供することを目的としており、具体的にはエネルギ効率が高く、早期に目標温度に達して稼働率が向上し、温度制御も安定する、そのような加熱シリンダの温度制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明の目的を達成するために、加熱シリンダが軸方向に複数のゾーンに区分され、各ゾーンのそれぞれが該加熱シリンダの外周面に巻かれたバンドヒータと、該バンドヒータの外側に設けられている断熱カバーと、該断熱カバー内に外部から冷却流体を供給する冷却手段とを備え、各ゾーンが独立して温度制御されるようになっている射出装置を対象とし、これを温度制御する方法として構成する。このような射出装置において、それぞれのゾーンに対して目標温度が設定されて温度制御するとき、バンドヒータはPWM制御により常時制御する。
ただしPWM制御のデューティー比を計算するPID制御のゲインはオーバーシュートを許容する大きな値に調整しておく。冷却手段は、ゾーンの温度が目標温度より所定の偏差温度だけ高い判定温度を超えたときのみ作動して冷却流体を供給するよう構成する。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、加熱シリンダが軸方向に複数のゾーンに区分され、各ゾーンのそれぞれが該加熱シリンダの外周面に巻かれたバンドヒータと、該バンドヒータの外側に設けられている
断熱材の中綿を有する断熱カバーと、該断熱カバー内に外部から冷却流体を供給する冷却手段とを備え、各ゾーンが独立して温度制御されるようになっている射出装置において、それぞれのゾーンにおいて温度センサにより測定される測定温度に基づいて各ゾーンに設定された目標温度に従って温度制御するとき、前記バンドヒータは前記測定温度が前記目標温度になるようにそのデューティー比をPID制御により計算するPWM制御により常時制御するようにし、前記PID制御のゲインは前記目標温度と前記測定温度の偏差が大きいときにはオーバーシュートする大きな値に調整しておくようにし、前記冷却手段は、ゾーンの前記測定温度が前記目標温度より所定の偏差温度だけ高い判定温度を超えたときに作動して冷却流体を供給するようにすることを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、ゾーンの温度が前記判定温度を超えて前記冷却手段によって冷却流体の供給を開始したとき、ゾーンの温度が前記目標温度に低下するまで冷却流体を供給することを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、ゾーンの温度が前記判定温度を超えて前記冷却手段によって冷却流体の供給を開始したとき、ゾーンの温度が前記判定温度に低下したら冷却流体の供給を停止することを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、前記冷却流体は圧縮空気からなることを特徴とする加熱シリンダの温度制御方法として構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、加熱シリンダが軸方向に複数のゾーンに区分され、各ゾーンのそれぞれが該加熱シリンダの外周面に巻かれたバンドヒータと、該バンドヒータの外側に設けられている
断熱材の中綿を有する断熱カバーと、該断熱カバー内に外部から冷却流体を供給する冷却流体供給手段とを備え、各ゾーンが独立して温度制御されるようになっている射出装置を対象としている。つまり
断熱材の中綿を有する断熱カバーによって外部への熱の放出が抑制された射出装置を対象としている。そして本発明によると、それぞれのゾーンにおいて温度センサにより測定される測定温度に基づいて各ゾーンに設定された目標温度に従って温度制御するとき、バンドヒータは測定温度が目標温度になるようにそのデューティー比をPID制御により計算するPWM制御により常時制御するようにし、PID制御のゲインは目標温度と測定温度の偏差が大きいときにはオーバーシュートする大きな値に調整しておくようにしている。つまりバンドヒータは目標温度を達成するように常時操作の対象となり、PWM制御によって滑らかに制御できるようになっておりオーバーシュートが許容されている。そして本発明によると、冷却手段は、ゾーンの測定温度が目標温度より所定の偏差温度だけ高い判定温度を超えたときに作動して冷却流体を供給するように構成されている。つまり冷却流体の供給は判定温度を超えたときのみに制限されている。ただし、その供給方法には制限はなく、シンプルなON/OFF制御でもよい。本発明はこのように構成されているので、バンドヒータの制御においてゾーンの温度がオーバーシュートしても判定温度を超えたら冷却手段によって速やかに冷却することができるのでゾーンの温度は一定範囲に収束することになる。これによってゾーンの温度は速やかに目標温度に達するので稼働率が向上するという効果が得られる。また、PWM制御によりバンドヒータを制御しているので、ゾーンの温度が一定範囲に収束したら温度の変化は緩やかになり、エネルギロスの原因になる冷却手段を作動させる必要もない。そして前記したように断熱カバーによって外部への熱の損失も少ない。つまりエネルギー効率が高いという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る射出装置を示す正面断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る射出装置の加熱シリンダを軸と垂直な断面で示す図であり、その(ア)(イ)はそれぞれ、第1、2の実施の形態に係る加熱シリンダの側面断面図である。
【
図3】本発明の実際の形態に係る加熱シリンダの温度制御方法を説明するグラフで、その(ア)(イ)は、それぞれ第1、2の実施の形態に係る温度制御方法を実施したときの加熱シリンダの温度変化を示すグラフである。
【
図4】従来の加熱シリンダの温度制御方法を実施したときに加熱シリンダの温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る温度制御方法は、所定の構造を備えた本実施の形態に係る射出装置1を対象としている。本実施の形態に係る射出装置1も概ね従来の射出装置と同様に構成され、
図1と
図2の(ア)に示されているように加熱シリンダ2、この加熱シリンダ2内で軸方向と回転方向とに駆動されるスクリュ3、加熱シリンダ2の先端に設けられている射出ノズル5、加熱シリンダ2の後方に設けられているホッパ6、等から構成されている。そして加熱シリンダ2は軸方向に複数のゾーン、本実施の形態においては4個のゾーンに区分され、それぞれのゾーンにおいて加熱シリンダ2の外周部にバンドヒータ7、7、…が巻かれている。
【0014】
本実施の形態に係る射出装置1は、これらのバンドヒータ7、7、…に本実施の形態に係る断熱カバー9、9、…がかぶせられている。本実施の形態に係る断熱カバー9は、外側を覆う外側シート11と、内側に位置してバンドヒータ7に接している内側シート12と、外側シート11と内側シート12の間に充填されている断熱材14とから構成されている。外側シート11はグラスファイバーからなる織布でありシリコンコーティングされて気密性を備えている。すなわち通気性がない気密性シートになっている。これに対して内側シート12もグラスファイバーからなる織布であるがシリコンコーティングされていないので通気性を備えている。つまり通気性シートになっている。断熱材14はグラスファイバーの中綿からなり、圧縮空気等の冷却冷媒が容易に内部に浸透・拡散するようになっている。このような断熱カバー9には、外側シート11に流体供給口16と流体排出口17が設けられ、外部のコンプレッサ19から供給される冷却流体が、すなわち本実施の形態においては圧縮空気が流体供給口16から断熱カバー9内に供給され、そして流体排出口17から排出されるようになっている。なお、冷却流体は流体排出口17からだけでなく、内側シート12からも加熱シリンダ2側に漏れて排出されるようになっている。コンプレッサ19からそれぞれの断熱カバー9、9、…への圧縮空気供給管には、電磁弁21、21、…が介装されており、図に示されていないコントローラからの指令によって開閉するようになっている。つまりコンプレッサー19と電磁弁21、21、…と流体供給口16とが、冷却手段を構成しており、冷却流体である圧縮空気を断熱カバー9、9、…に供給するようになっている。
【0015】
加熱シリンダ2には、各ゾーンに対応して温度センサ22、22、…が設けられ、これらの温度センサ22、22、…も、図示されないコントローラに接続されている。またバンドヒータ7、7、…にPWM制御で電力を供給する電力供給装置も図には示されていないが、コントローラに接続され、コントローラによって制御されるようになっている。
【0016】
本実施の形態に係る射出装置1の加熱シリンダの温度制御においは、バンドヒータ7の制御と、冷却手段つまり電磁弁21の制御と、を組み合わせて実施するようになっている。バンドヒータ7は、デューティ比に応じて通電をON/OFFする、いわゆるPWM制御で制御するようになっているが、デューティ比はPID制御にて制御する。つまり、目標温度Mに対して温度センサ22から得られる測定温度との偏差を得、PID制御によりデューティ比を操作量として計算するようになっている。本実施の形態においては、このPID制御においてはゲインが大きくなるように調整しておく。つまりバンドヒータ7は目標温度Mが与えられて制御されるとき、目標温度Mと測定温度の偏差が大きい場合にはオーバーシュートも許容されるように調整しておく。一方、電磁弁21の制御は、シンプルなON/OFF制御により制御する。つまり電磁弁21をONして開くと冷却流体である圧縮空気が断熱カバー9内に供給され、OFFして閉じると圧縮空気の供給は停止することになる。
【0017】
本実施の形態に係る射出装置1において、操作者が加熱シリンダ2の各ゾーンに対する目標温度Mを設定したときに、コントローラが実施する温度制御方法を説明する。コントローラはいずれのゾーンにおいても同様の制御を実施するので、所定のゾーンについてのみ説明する。コントローラは目標温度Mが設定されると、まず目標温度Mより所定の偏差温度だけ高い判定温度Hを計算する。この偏差温度はコントローラに予め設定されている温度であり、ゾーン毎に異なる温度を設定することもできるが、本実施の形態においては各ゾーンに共通した温度、例えば5℃が設定されている。従って、例えば目標温度Mが220℃であれば、判定温度Hは225℃として計算される。このような判定温度Hは、冷却手段を作動させるか否かの判断を行う温度であるが、バンドヒータ7の制御は判定温度Hとは無関係に実施するようになっている。
図3の(ア)のグラフにはこのような目標温度Mと判定温度Hが示されている。コントローラはPID制御によってバンドヒータ7を制御する。ゾーンの温度25が目標温度Mより大きく下回っているとき、PID制御のゲインは大きいのでバンドヒータ7に通電するデューティ比は1.0、あるいは1.0に近い高い比率になる。そうすると符号26で示されているようにゾーンの温度25は高い傾きで上昇する。このような傾きで上昇するので目標温度Mに達したときにバンドヒータ7への通電が零になっても、符号27で示されているようにゾーンの温度25はオーバーシュートする。コントローラはゾーンの温度25が判定温度Hを超えたのを検出したら、冷却手段を駆動する。つまり電磁弁21をONして圧縮空気を断熱カバー9に供給する。冷却手段を駆動するタイミングは符号28で示されている。圧縮空気が断熱カバ−9に供給されると、圧縮空気が断熱材14内に浸透・拡散し、そして内側シート12から内側に漏れる。そうするとバンドヒータ7、加熱シリンダ2を冷却することができる。冷却手段を駆動した直後にも若干ゾーンの温度25は上昇するがやがて冷却により低下する。本実施の形態においては冷却手段はゾーンの温度25が目標温度Mに低下するまで駆動し、目標温度Mに達したら駆動を停止する。冷却手段の停止、つまり電磁弁21をOFFして閉じるタイミングが符号29で示されている。冷却手段を停止しても、符号31で示されているようにゾーンの温度25は目標温度Mより低下するが、目標温度Mを下回ったらバンドヒータ7が駆動される。このとき目標温度Mとゾーンの温度25の偏差は比較的小さいのでデューティー比は小さい。これによって温度上昇の傾きは比較的小さい。従って、ゾーンの温度25が目標温度Mを超えるオーバーシュートの山は前回より小さくなる。グラフで示されているように、再度判定温度Hを超えた場合には冷却手段を駆動するが、オーバーシュートの山は小さいので、冷却手段を駆動している時間、つまり符号32で示されているタイミングから符号33で示されているタイミングまでの時間は短い。このような制御を繰り返すと、やがてゾーンの温度25は判定温度Hを超えないようになり、符号35で示されているように緩やかに変化するようになる。コントローラはバンドヒータ7のみによって温度制御し、デューティー比は安定し、ゾーンの温度25は滑らかに目標温度Mに達する。すなわち目標温度Mになるように温度制御されることになる。
【0018】
本実施の形態に係る温度制御方法は色々な変形が可能である。
図3の(イ)には第2の実施の形態に係る温度制御方法によって制御した場合のゾーンの温度変化の様子が示されている。第2の実施の形態に係る温度制御方法では、冷却手段を停止する条件が、第1の実施の形態に係る温度制御方法と相違しており、ゾーンの温度25’が判定温度Hを下回ったときに停止するようにする。つまり符号29’、符号33’において冷却手段を停止するようにする。そうすると冷却手段の停止後に温度変化は緩やかに変化するので、目標温度Mを下回りにくくなる。また、符号36で示されているように目標温度Mを下回った場合でも大きく低下することはないので、結果的に早期に目標温度Mに到達することになる。
【0019】
本実施の形態に係る射出装置1も変形が可能である。
図2の(イ)には第2の実施の形態に係る射出装置1’が示されているが、断熱カバー9’はバンドヒータ7と所定の隙間を空けて設けられていて、この隙間に圧縮空気を送風できるようになっている。このように冷却流体である圧縮空気が送風されるので、この実施の形態においては断熱材14’は圧縮空気が浸透・拡散される必要はない。また本実施の形態においては冷却流体は流体排出口17から排出されるように説明したが、流体排出口17は無くてもよい。つまり冷却流体が圧縮空気からなる場合には、内側シート12から漏れて加熱シリンダ2を冷却した後に、圧縮空気が外部に漏れるようにしてもよい。さらには、冷却流体についても変形が可能であり、冷却流体は二酸化炭素や窒素等の不活性ガスを利用することもできるし、機械油等の液体を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 射出装置 2 加熱シリンダ
3 スクリュ 5 射出ノズル
7 バンドヒータ 9 断熱カバー
11 外側シート 12 内側シート
14 断熱材 16 流体供給口
17 流体排出口 19 コンプレッサ
21 電磁弁 22 温度センサ
25 ゾーンの温度
M 目標温度 H 判定温度