【実施例】
【0074】
ここで本発明について、以降の実験データに照らして説明する。当然ながら、実施例は本発明の範囲について限定するものと解釈されるべきではない。
材料
以降の実施例において、in vitroの実験およびin vivoの臨床研究が提示され、普及型のネブライザ(パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザ)を使用して送達された普及型のトブラマイシン吸入溶液(TOBI(登録商標))が、本発明により4〜7μmの範囲の空気動力学的質量中央径を有するエアロゾルを提供するTobrair(登録商標)デバイスを使用して送達されたトブラマイシン吸入溶液と比較されている。
【0075】
前記被験トブラマイシン溶液は以下の特徴を有する:
【0076】
【表1】
パリ・ネブライザ中で5mLを使用した300mgトブラマイシンによる標準的治療は、用量のおよそ10%しか肺に到達しないという結果を生じることになる。Tobrair(登録商標)デバイスについては、これは標識された用量の20〜60%である。
【0077】
Tobrair(登録商標)デバイスのような適切なaMDIによって生じた微小液滴は、4〜7μmの範囲の空気動力学的質量中央径を有する。
以下の実施例で使用されるトブラマイシン溶液は、300mlの水に81.5gの硫酸トブラマイシンを溶解することにより調製された。よってin vivoの試験で患者に投与される溶液は、約63mgのトブラマイシン(0.35mlの180mg/mlトブラマイシン)の投与に相当する。
【0078】
実施例1:トブラマイシンのin vitro送達
臨床研究に先立ち、本発明によるトブラマイシンの溶液を放射性標識することが可能であること、および送達される放射活性のレベルがボランティアにとって安全かつシンチグラフィ撮像に十分であることを実証するために、in vitroの実験が行なわれた。更に、該実験は、使用されるネブライザシステムの様々な部品に残るトブラマイシン溶液の量に関する情報も提供した。
【0079】
次の溶液すなわち:
18%(w/v)トブラマイシン溶液、クセリア社(Xellia)、BN:80000991および80000992
20%(w/v)トブラマイシン溶液、クセリア社、BN:80000981
TOBI(登録商標)300mg/5mLトブラマイシン溶液、ノバルティス社(Novartis)、BN:X003812
過テクネチウム酸ナトリウム溶液(
99mTc−ジェネレータから溶出)、IBA、BN:A−AJY−05およびA−ALL−13
99mTc−DTPAキット、コヴィデン(Coviden)、BN:292786、290187および294814
がin vitroの実験において使用された。
【0080】
20(w/v)トブラマイシン溶液の放射性標識
臨床研究計画(実施例2)に基づき、Tobrair(登録商標)デバイスは、ボランティアに60mgのトブラマイシンを、すなわち20%(w/v)溶液×0.3mLを吸入6回にわたって送達するように企図された。したがって、20%(w/v)トブラマイシン溶液はTobrair(登録商標)デバイスを使用する試験のために放射性標識された。
99mTc(過テクネチウム酸ナトリウム)溶液はテクネチウムジェネレータから溶出され、必要な体積がDTPAキットに添加されて完全に混合された。得られた
99mTc−DTPA溶液の放射活性が測定され、バイアルは密閉されて使用まで鉛製ポットに保管された。15mLの20%(w/v)トブラマイシン溶液は0.20μmフィルタを通してろ過され、清浄なシンチレーションバイアルに移された。その後、642MBqの放射活性を含有する
99mTc−DTPA溶液ほぼ0.15mLが該薬物溶液に添加され、磁気撹拌で完全に混合された。トブラマイシン溶液の色の変化または薬物沈澱が無いことが、放射性標識後に観察され、該放射性標識の該薬物製品との適合性が示された。得られたトブラマイシン溶液中の放射活性レベルは42.8MBq/mLであり、0.3mL用量あたり12.8MBqの放射活性が得られた。最終薬物溶液中の
99mTc−DTPA溶液の総体積はおよそ1.0%であったが、これは最終薬物溶液の特性(例えば粘性)にいかなる重要な影響も及ぼさず、従ってデバイス性能に影響を与えるものではない。
【0081】
Tobrair(登録商標)デバイスを使用する20%(w/v)トブラマイシンのin vitro送達
Tobrair(登録商標)デバイスによるin vitroトブラマイシン送達について、コプレイ(Copley)のフローポンプ(型番:HCP2)を使用し、連続流量45L/分(n=3)として特徴解析がなされた。
【0082】
試験に先立ち、ほぼ0.5mL(0.3mLに加えて十分な過剰量)の放射性標識された20%(w/v)トブラマイシン溶液が、メドスプレイ(Medspray)提供の説明書(Tobrair試験デバイスの使用説明書、SHLグループ、2010年1月11日、2010年3月2日および2010年4月6日)に従って薬物カートリッジ(1mLガラスシリンジ)に装荷され、放射活性が測定された。その後、薬物カートリッジ(シリンジ)はTobrair(登録商標)デバイスへ組み立てられた。プライミング後、スプレーノズルユニット(SNU)内の残存製剤はティッシュペーパーを使用して取り除かれた。デバイスの総重量(薬物カートリッジを加えたもの)は、該デバイスを吸入フィルタ(用量収集用)および次にコプレイフローポンプに接続する前に測定された。6回作動の後、重量減少(送達量)を計算するためにデバイスの重量が再測定された。その後、デバイスは分解され、各部分、すなわちノズルおよびマウスピース(SNU)、シリンジ、シリンジホルダ、フィルタおよびフィルタホルダを加えた電源パックの放射活性が、放射性標識の物質収支(放射活性分布)を計算するためにガンマカメラを使用して測定された
3。
【0083】
表1に列挙された結果は、6回作動の後にデバイスから送達される薬物溶液の質量が正確でありかつ非標識製剤に非常に近いことを示している。この結果は、内標準法を用いる20%(w/v)トブラマイシン溶液の放射性標識が薬物製剤/デバイスの性能を変化させなかったことを示している。シリンジから送達された放射活性は、16.7〜20.6MBqであった。しかしながら、これらの値は単に情報を得るために得られたものであり、この数字はプライミング中に失われた放射活性を含むのでボランティアに送達される実際の放射活性はこの値未満になるであろう。
【0084】
【表2】
Tobrair(登録商標)デバイスからの送達後の放射性標識された20%(w/v)トブラマイシン溶液の放射活性分布は、表2に示された。3つの試験の間で比較的高い変動が観察されたが、これは、最初のシリンジへの製剤の装荷を正確にコントロールすることができなかったため、そのような装荷が変動的であることに起因すると思われた。送達される薬物(および放射性標識)用量はデバイスによってコントロールされるので、薬物装荷(従って総放射活性)の正確さは(装荷が6回の作動に十分である限り)重要ではない。しかしながら、最初の薬物装荷における変動は、投薬後にシリンジに残される製剤の様々な残存レベルをもたらす可能性があり、これは明らかに全物質収支の結果に影響するであろう。したがって、送達された用量の分布およびSNU、デバイスなどに残される製剤を反映するためには、シリンジを除外した物質収支がより正確であろう。そのような分布は表3および
図1に示されており、表3および
図1は比較的高い用量送達効率(54〜72%)がTobrair(登録商標)デバイスを使用して達成されうることを示している。6回の作動後にシリンジから送達された薬物および送達された放射活性の割合(%)に基づくと(キャピンテック(CapinTec)の型番:CRC−15Rを使用して測定)、該薬物溶液が対象時間に42.8MBq/mLの放射活性レベルを有する場合、Tobrair(登録商標)デバイスから送達された放射活性は2.4〜4.1MBqである(表3)。これらの放射活性レベルでは、in vitroのガンマカメラ撮像に十分であると思われた。しかしながら、より良好なシンチグラフィ像のためにより高い放射活性レベルが必要な場合、最初の放射活性レベルが適宜調節されてもよい。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
18%(w/v)トブラマイシン溶液の放射性標識
修正された製剤/デバイスの組み合わせが臨床研究で使用するために選択された。これは、吸入7回にわたる18%(w/v)溶液×0.35mLの送達を必要とした。したがって、Tobrair(登録商標)デバイスによる
99mTc−DTPA放射性標識トブラマイシン溶液のin vitro送達が18%(w/v)トブラマイシン溶液を使用して反復された。放射性標識の方法は先述とほとんど同一であった。簡潔に述べると、
99mTc溶液が溶出され、DTPAキットを使用して
99mTc−DTPA溶液が調製された。計算された体積の
99mTc−DTPA溶液(482MBqの放射活性を含有しているおよそ0.15mL)が、10mLの予めろ過処理されたクセリア社提供の18%(w/v)トブラマイシン溶液が入ったバイアルに添加され、磁気撹拌を用いて完全に混合された。得られたトブラマイシン溶液中の放射活性レベルは、0.35mL用量あたり16.9MBqの放射活性を与える48.2MBq/mLであった
3。放射性標識後、放射性標識された18%(w/v)トブラマイシン溶液の色の変化または薬物沈澱は観察されず、該放射性標識の薬物産物との適合性が示された。
【0087】
Tobrair(登録商標)デバイスを使用する18%(w/v)トブラマイシンのin vitro送達
試験に先立ち、ほぼ0.7mLの放射性標識された18%(w/v)トブラマイシン溶液が、既述のような薬物カートリッジに装荷された。プライミング後、SNUは残存製剤を除去するために水ですすがれ、残留水は1枚のペーパータオル上で穏やかにタッピングすることにより除去された。投薬送達のための試験条件は、20%(w/v)トブラマイシン溶液について上述されたものと同一であった。7回の作動後に送達された質量が決定され、放射性標識された溶液の物質収支(すなわち放射活性分布)も計算された。
【0088】
7回の作動後にデバイスから送達された薬物溶液の質量はほぼ0.45mLであり、予想された0.35mLより28%多いことが分かった(表4)。この比較的高い送達質量は、SNUに残った残存生理食塩水(デバイスアセンブリにおいて使用)および水(すすぎに使用)の寄与によると考えられた。この実験では、臨床研究のために計画された同じ手順を再現するために;マウスピースは水ですすがれ、作動前にはティッシュペーパーで先述のように拭われるのではなくタッピングで乾燥せしめられた。この手順を用いると、少量の水がSNUにまだ残っており、吸入の間に蒸発してみかけ上大きな重量減少を引き起こしているのであろう。
【0089】
【表5】
シリンジから送達された放射活性は26.17〜36.02MBqである。しかしながら、以前に議論されたように、これらの値はプライミングの間に送達された放射活性を含み、従ってボランティアに送達される実際の放射活性は表わしていない。Tobrair(登録商標)デバイスによる放射性標識された18%(w/)トブラマイシン溶液の送達の後、各部分における放射活性の分布がガンマカメラを使用して測定された。シリンジ内への最初の薬物装荷の変動が物質収支の結果に影響する可能性があるので、シリンジを除外した物質収支が計算されて表5および
図2に示された。試験3aおよび3bの結果は、Tobrair(登録商標)デバイスを使用して比較的高い用量送達効率(77.8および86.1%)が達成可能されうることを示している。しかしながら、試験3cからは比較的低い放射活性が送達され、対照的に、シリンジホルダおよび電源パックに予想外の比較的高い放射活性が観察された。この問題についての当初の見解は作動中の製剤の漏出に起因するものであった。しかしながら、そのような漏出であれば、漏出した製剤は吸入フィルタに送達されるよりもむしろまだデバイスに残ると思われるのでより低い質量送達(重量減少)をもたらすであろうが、実際には試験3cから送達された全質量は他の2つの試験との差がない(表4)。したがって、デバイス作動中の製剤の漏出は除外された。別の可能性は、デバイスの分解または放射活性測定の際の試料の交差汚染である。これは、実験3cの送達された用量質量が3aおよび3bと同様であったにもかかわらず比較的低い放射活性を示した、表5の実験3cの送達された放射活性の結果により確認された。しかしながら、3つの試験すべての結果は、この放射活性レベルすなわち48.2MBq/mLにおいて、送達される放射活性が所要範囲にあることを示している。
【0090】
【表6】
加えて、実験3bおよび3cにおいて短い作動時間が観察された。始動から停止クリックまでの時は3.5秒未満であり、これは推奨される作動時間であった。停止クリックは作動のほとんど直後に生じた。シリンジチップとSNUキャビティとの間の緩い嵌合またはSNUのシリコンチップの損傷は恐らくは作動時間に影響し、該作動時間は1.5秒以下であることが考えられる。この問題は、以下にさらに議論されることになる。
【0091】
Tobrair(登録商標)デバイスを使用して送達された後の18%(w/v)トブラマイシンの質量減量
Tobrair(登録商標)デバイスを使用した18%(w/v)トブラマイシンの送達についてのin vitro試験の際、7回の作動後に該デバイスから送達される薬物溶液の質量が予想される0.35mLより28%高いことが分かった。この比較的高い質量送達は、プライミングおよびSNUのルアーキャビティ内に閉じ込められた空気の除去の後に薬物製剤をすすぐために使用された水および生理食塩水の同時蒸発に起因すると考えられた。この仮説を裏付けるために、先の実験で使用された減衰した放射性標識18%(w/v)トブラマイシン溶液を使用して、質量減少試験が行なわれた。デバイスは上述されたのと同じ方法を使用してプライミングされて乾燥せしめられた。その後、デバイスはコプレイのフローポンプに接続され、該ポンプは、デバイスの実際の作動を伴わずに45L/分で140秒間(7回の作動に必要な合計時間と同じ)操作された。残留水の蒸発を計算するため、この処理の前後にデバイスの重量が測定された。その後、デバイスは正規の手順のように7回作動され、さらなる重量減少が測定された。
【0092】
【表7】
表6に列挙された結果は、SNU内の残留水が総重量減少に影響すること、および、エアフローポンプを45L/分で140秒間運転することにより残留水を蒸発させた後は、送達された製剤からの実際の重量減少は0.37gであることを示した。1.115g/mLの製剤密度を考慮すると、平均送達体積は必要とされる用量をわずか4.6%しか下回らない0.334mLのはずである。この実験は、7回の作動で、Tobrair 4デバイスは臨床研究のための18%(w/v)トブラマイシン溶液の正確な用量を実際に送達することができることを立証している。
【0093】
3回の送達実験104418−04a、4bおよび4cの全体にわたって作動時間が観察された。実験4bおよび4cにおける7回の作動の各々はおよそ3.5秒であることが分かった。しかしながら実験4aでは、およそ1秒の短い作動時間を有する2回の作動(作動6および7)が存在していた。
【0094】
Tobrair(登録商標)デバイスを使用する放射性標識された18%(w/v)トブラマイシンのin vitro送達
Tobrair(登録商標)デバイスによる放射性標識された18%(w/v)トブラマイシン溶液のin vitro送達は、送達用量が適切であることを確認するために、また7回の作動の各々がおよそ3.5秒でエアロゾル化されることを実証するために、再び行われた。
【0095】
10mLの予めろ過処理された18%(w/v)トブラマイシン溶液は、0.15mL(薬物溶液の全体積の1.5%)の
99mTc−DTPAキットを用いて放射性標識された。18%(w/v)トブラマイシン溶液の放射活性は対象時間において0.35mLあたり16.24MBqを与える46.4MBq/mLであった。この溶液は試験のために5つのシリンジ(公称の充填容積は0.7mLである)に充填された。シリンジ5bおよび5dは組み立てられたがプライミング中に短い作動時間が観察されたため試験は行われなかった。送達用量および物質収支の試験は、SNU中のあらゆる残留生理食塩水および水を除去するために、デバイス作動前に140秒の遅延時間が導入されて行われた。表7の結果は、送達された用量が7回の作動で名目上の用量すなわち0.35mLの10%の範囲内の18%(w/v)トブラマイシン溶液であることを実証した。表8に列挙された結果は、送達された放射活性が10〜20MBqの範囲内にあることを立証した。放射性標識された溶液の物質収支(表8および
図4)は、Tobrair(登録商標)デバイスを使用して高い用量送達効率(68%〜84%)が達成されうることを実証した。
【0096】
コプレイ(Copley)の流量調節計(型番:TPK)のタイマーに基づけば、これら3つの実験からの7回の作動時間はすべて3秒以上であった。汚染または漏出はガンマカメラ像からは検知されなかった(
図3)。
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
デバイスは、「Tobrair試験デバイス使用説明書(Instructions for Use of Tobrair test device)」の最新版に従ってプライミングされた。デバイスのプライミング中、シリンジはSNUキャビティに確実に嵌合されたが、不適当な作動時間(すなわち1秒以下)に関する問題は排除されないことが見出され、デバイスアセンブリに使用されたSNUまたはシリンジのうち少なくともいずれかに依存することが分かった。メドスプレイ(Medspray)との討議の後、最初のプライミングが用量設定ノブを保持するためにスパナを使用して実施された後に、作動が行われるべきであると考えられた。これは、SNU内部のシリコンチップを破損するおそれのある高圧下で最初の用量が放出されないことを確実にするためである。更に、制御された動力を備えたシリンジ押し込み用具が提供されており、該用具はSNUキャビティ内にシリンジを取り付けるために使用されるはずである。
【0100】
パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザを使用するトブラマイシン(TOBI(登録商標))のin vitro送達
TOBI(登録商標)溶液の放射性標識
使用された先行技術のトブラマイシン溶液および普及型の送達システムとの比較のために、パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザを使用して送達されるべきTOBI(登録商標)溶液(300mg/5mLのトブラマイシン)、個々のTOBI(登録商標)ユニットが放射性標識された。99mTc溶液が溶出され、DTPAキットを使用して99mTc−DTPA溶液が調製された。得られた99mTc−DTPA溶液の放射活性が測定され、バイアルは密閉されて使用まで鉛製ポットに保管された。TOBI(登録商標)溶液のアンプルの全内容物(〜5mL)が清浄なシンチレーションバイアルへ移され、計算された体積の99mTc−DTPA溶液(18.1MBq/5mLを含有するおよそ0.07mL)が該薬物溶液に添加され、磁気撹拌を用いて完全に混合された。放射性標識後、トブラマイシン溶液の色の変化または薬物沈澱は観察されず、TOBI(登録商標)溶液を用いた放射性標識の適合性が示された。得られた薬物溶液の平均放射活性レベルは単位用量あたり18.1MBqであり、最終薬物溶液中の99mTc−DTPA溶液の全体積はおよそ1.4%4であったが、これは最終薬物溶液の特性にいかなる重要な影響も及ぼさないと思われ、従ってデバイス性能に影響しないと思われる。
【0101】
パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザを使用するTOBI(登録商標)トブラマイシンの送達
パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザによるin vitroのトブラマイシン送達は、標準的な周期性呼吸モードを備えたコプレイ(Copley)BRS1000呼吸シミュレータを使用して特徴解析された(n=3):
・一回呼吸量: 500mL
・頻度: 毎分15回呼吸(15bpm)
・吸入/呼息比: 1:1
試験に先立ち、放射性標識されたTOBI(登録商標)溶液はシンチレーションバイアルからパリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザ内の薬物チャンバの中へ移された。放射性標識されたTOBI(登録商標)溶液の重量が測定され、次に放射活性が計算された(表10)。その後、ネブライザは呼息フィルタ(パリ・フィルタ/バルブセット
9)とともに組み立てられてから、吸入フィルタ(用量収集用)を介してコプレイBRS1000呼吸シミュレータに接続された。その後、該デバイスはパリ・ターボボーイN(TurboBOY N)コンプレッサを使用して乾固するまで運転された。投薬の後、送達された質量を計算するためにデバイスの重量が再度測定された。デバイスはさらに分解され、各部分すなわち吸入フィルタ、呼息フィルタ、T部品およびパリ・ネブライザの放射活性が、放射性標識の物質収支を計算するためにガンマカメラを使用して測定された(表11)。「実験室の詳細記録:104418−02 パリ・LCプラス・ジェット式ネブライザによる放射性標識TOBI溶液の送達用量および物質収支試験(Laboratory write up:104418−02 Delivered dose and Mass balance tests of radiolabeled TOBI solution via PARI LC PLUS Jet nebulizer)」、2010年2月2日付、を参照。
【0102】
表10に列挙された結果は、デバイスに装荷された放射性標識TOBI(登録商標)溶液の質量が5gよりわずかに多く、かつ投薬前のデバイス中の放射活性が15.5〜19.5MBqであったことを示している。しかしながら、噴霧化して乾固した後、すなわちエアロゾルがもはや生成されない時、最初に装荷された質量のおよそ40%がデバイス内に依然として残されていた(表10)。
【0103】
【表11】
【0104】
【表12】
パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザによる送達後の放射性標識されたTOBI(登録商標)トブラマイシン溶液の物質収支(放射活性として表示)は、表11および
図4に示されている。該結果に基づくと、肺に沈着した製剤の割合(%)(吸入フィルタ内の分画として定義)はおよそ約30%であろうことが予想される。合計送達用量(吸入フィルタおよび呼息フィルタの合計)は、装荷用量の40.6〜53.5%であろう(1TOBI(登録商標)ユニット=300mgトブラマイシン)。
【0105】
デバイスに残された放射活性の割合(およそ50%)が質量の割合(35.8〜41.7%)より高いことが注目される。同様の知見は、ガトナッシュ(Gatnash)らによりネブライザからの用量送達について報告されており(ガトナッシュ、A.A.(Gatnash,A.A.)ら、「放射性トレーサを使用してエアロゾルネブライザ出力を測定する新しい方法(A new method for measuring aerosol nebulizer output using radioactive tracers)」、欧州呼吸学会雑誌(Eur.Respir.J.)、1998年、第12巻、p.467−471)、これは移行時の放射性標識(および薬物)溶液からの水蒸発に起因すると考えられた)。薬物濃度は噴霧化中に一定ではないので、噴霧化後に重量減少を測定することにより送達された薬物用量を決定することは適切ではない。しかしながら、薬物および放射性標識の両方が製剤中に溶解され、また噴霧化の際の放射活性の変化が薬物濃度の変化に相当するであろうことから;送達される放射活性は依然として送達される薬物用量の十分な代用物になるであろう。
【0106】
in vitroの特徴解析の結果から、
99mTc−DTPA内標準法は、パリ・LC(登録商標)プラス・ネブライザによって送達される用量(放射活性)の割合(%)がTobrair(登録商標)デバイスについて観察される割合より低い可能性があるものの、臨床研究のためのTOBI(登録商標)トブラマイシン溶液の放射性標識に適していることが示されている。その結果、製剤中の放射活性は可能な限り高く、最大許容限界内を目標とされるべきである。さらに、臨床研究の際の画像収集時間が増大する好機は、研究目的を達成するのに適した良質な画像が得られることを保証するであろう。
【0107】
結論
両トブラマイシン溶液、すなわち高濃度の18%(w/v)溶液およびTOBI(登録商標)6%(w/v)溶液は、内標準法を使用して
99mTc−DTPAで良好に放射性標識された。すべての放射性標識された薬物溶液は、沈澱が存在せず透明かつ無色であり、従って薬物・放射性標識相互作用は観察されなかった。良好な用量(放射活性)送達および物質収支の結果は、製剤送達の点でパリ・LC(登録商標)ネブライザよりも相対的に高い効率を示したTobrair(登録商標)デバイスから見出された。結論付けられることは、
99mTc−DTPAがガンマシンチグラフィ検査に使用するのに好適な代理マーカーであること、ならびに18%(w/v)トブラマイシン溶液およびTOBI(登録商標)6%(w/v)トブラマイシン溶液に使用される放射活性のレベルはそれぞれ最高でも0.35mLにつき(NMT)20MBq以下およびTOBI(登録商標)1ユニット(〜5mL)につきNMT 20MBqであって、ボランティアへの投薬に適切であろうことである。
【0108】
実施例2:in vivoデータ;先行技術の投与レジメンと本発明による治療レジメンとの比較
本発明の治療方法によるトブラマイシンの肺沈着を評価するために、Tobrair(登録商標)デバイスおよびパリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザによるトブラマイシンの単回用量投与後の、健常者における肺分布および薬物動態を研究する二者間の非無作為化交差試験が行なわれた。該試験は、使用されるエアロゾル送達システムが何であるかを隠すことが不可能であるため、オープンラベル試験として設計された。
【0109】
18名の健康なボランティアの男性および健康なボランティアの妊娠していない授乳中でない女性が以下の治療レジメンの対象となった:
・およそ63mgのトブラマイシン(180mg/mL×0.35mL)を新規なTobrair(登録商標)デバイスによって深くゆっくりとした吸入7回にわたり肺に送達。
【0110】
・300mgのトブラマイシン(TOBI(登録商標)、60mg/mL×5mL)をパリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザによって緩やかな周期性呼吸を用いて乾固するまでまたは最大30分間、肺に送達。
【0111】
トブラマイシンの肺沈着を測定するために使用される方法は、確立したガンマシンチグラフィの放射線核種撮像技法であり(処方情報、吸入用TOPI(登録商標)トブラマイシン溶液(添付文書)、米国ワシントン州シアトル:カイロン・コーポレイション(Chiron Corporation);2004年、クラステルスク(Klastersku)ら、「グラム陰性菌による気管支肺感染の治療におけるアミノグリコシドの間欠的および持続的投与の比較試験(Comparative studies of intermittent and continous administration of aminoglycosides in the treatment of bronchopulmonary infections due to gram−negative bacteria)」、感染疾患総説誌(Rev.Infect Dis.)、1981年、第3巻、第1号、p.74−83)、該方法は肺送達システムからのin vivo沈積の定量的評価が定量化されるのを可能にする。ガンマシンチグラフィはさらに、主として太い気道に相当する中央領域と、主として細い気道および肺胞に相当する末梢領域とを備えた肺の中の沈積した薬物または製剤の領域分布の評価を提供することもできる。
【0112】
本臨床研究は、Tobrair(登録商標)デバイスを使用して健常者へ吸入により投与されたトブラマイシンのエアロゾル送達特性(in vivoの肺沈着および投与時間により測定)を、パリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザを使用した送達特性と比較するために設計された。加えて、血清トブラマイシン濃度および薬物動態パラメータが、トブラマイシン肺沈着との関連を評価するために決定された。
【0113】
ガンマシンチグラフィを使用してトブラマイシンの気管支肺での分布を評価するために、薬物溶液は代用マーカーとしてガンマ線を放射する放射性同位元素で標識された。より具体的には、テクネチウム99mジエチレントリアミンペンタ酢酸(99mTc−DTPA)が本研究で使用されて、Tobrair(登録商標)デバイスおよびパリ・LC(登録商標)プラス・ジェット式ネブライザを使用して1用量当たり10〜20MBqが達成された。
【0114】
安全性は、有害事象データならびにパルスオキシメトリおよび肺活量測定のデータを含む生命徴候データの調査により同じく評価された。
ボランティア被験者について実施されたガンマシンチグラフィの測定値は、Tobrair(登録商標)デバイスのような吸入器を使用するおよそ63mgのトブラマイシン(すなわち0.35mlの180mg/mlトブラマイシン溶液)の投与が、商業的に利用可能かつ普及型の投与レジメンと類似の肺浸透プロファイルを提供することを示している(
図1参照)。この結果は、Tobrair(登録商標)デバイス内の投与に利用可能な合計量が普及型の投与レジメンと比較すると本発明の方法によれば相当に低いことを考慮に入れると、驚くべきことである。
【0115】
加えて、該結果は、レジメンAを使用する場合はレジメンBと比較してより少ないトブラマイシンが吐出されることを示している(表12および下記参照)。
【0116】
【表13】
【0117】
【表14】
該結果はさらに、本発明による治療レジメン(レジメンA)が、6つの肺領域(区域1〜6)において普及型の投与レジメン(レジメンB)と同様の沈着パターンおよび肺浸透プロファイルを提供することを示している(以下の表14参照)。
【0118】
【表15】
【0119】
【表16】
【0120】
【表17】
【0121】
【表18】
更に、本発明による治療レジメンは普及型の投与レジメン(レジメンB)と比較してより短い投与時間を提供する。治療レジメンAに従って、すなわち深くゆっくりとした7回の吸入により、トブラマイシン用量を吸入するためにかかる時間は、実施に60秒未満しか要しない。これは、7回の吸入それぞれにかかった時間が記録されている表18に示された結果によって例証される。
【0122】
【表19】
【0123】
【表20】