(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
なお、本明細書において、単量体単位とは単量体に由来する構造単位を意味する。「部」及び「%」は、特に記載がない限り、質量基準とする。「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタアクリレートの総称として用いる。同様に、「(メタ)アクリル酸」等の(メタ)を含む化合物も「メタ」を有する化合物と有しない化合物の総称として用いる。
【0015】
1.粘着シート
(1)基材
本発明に係るダイシング用及び/又は搬送用の粘着シート(以下、単に「粘着シート」とも記載する)は、ポリ塩化ビニルとポリエステル系可塑剤とを含有してなる基材上に粘着剤組成物が積層されたものである。
【0016】
基材の材料には、粘着シートの基材材料として従来汎用のポリ塩化ビニルを採用できる。基材の成型方法は、例えばカレンダー成形法、Tダイ押出し法、インフレーション法あるいはキャスティング法などを採用できる。
【0017】
基材フィルムの厚さは、特に制限されないが、例えば40〜250μm、好ましくは50〜200μm、さらに好ましくは60〜150μmである。
【0018】
ポリ塩化ビニルには、可塑剤としてポリエステルが配合される。ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のような炭素数2〜10の脂肪族ジカルボン酸および/または芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のような炭素数2〜10のグリコールとの重縮合によるポリエステルが挙げられる。
【0019】
ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、特に汎用性、価格、経時安定性の点でアジピン酸が望ましい。グリコールとしては、直鎖状または側鎖状のいずれも使用でき、必要に応じて適宜に選択される。グリコールは炭素数2〜6のものが好ましい。
【0020】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は、特に制限されないが、通常500〜4000程度のものが用いられる。
【0021】
基材中のポリエステル系可塑剤の配合量は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して20〜50質量部が好ましく、25〜45質量部がより好ましく、30〜40質量部がより好ましい。
【0022】
ポリ塩化ビニルの可塑剤として上記ポリエステルを配合し、後述する特定組成の粘着剤組成物と共に用いることにより、基材中の可塑剤が粘着剤層に移行するのを抑制して、ダイシング工程における十分なチップ保持性とピックアップ工程における良好なチップの剥離性を粘着シートに付与できる。
【0023】
基材フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤などの各種添加剤を配合してもよい。これらの添加材の添加量は、特に限定されず、適宜設定され得る。
【0024】
酸化防止剤は、従来、樹脂あるいは樹脂組成物において酸化防止剤として知られたものであればいずれのものであってもよく、特に限定されない。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系などの酸化防止剤が挙げられる。
【0025】
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤挙げられる。紫外線吸収効果の点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0026】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系などの光安定剤を使用できる。
【0027】
帯電防止剤としては、四級アミン塩単量体等が挙げられる。四級アミン塩単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物およびp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物などが挙げられ、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好適に用いられる。なお、基材の帯電防止処理は、帯電防止剤を基材表面に塗布することにより行うこともできる。
【0028】
難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤、メラミンシアヌレート、尿素、メラミン誘導体等を含むトリアジン環含有化合物、芳香族ポリフォスフェート等のリン酸エステルなどの有機系難燃剤が挙げられる。
【0029】
着色剤としては、有機系顔料、無機系顔料、染料、カーボンブラックなどの公知あるいは周知の着色剤を使用できる。色は任意であり、例えば、白、アイボリー、黒、赤、青、黄、緑等とできる。フィルム基材を多層構造とした場合には、全ての層に着色剤を入れてもよく、一部の層のみ着色剤を入れてもよい。顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アゾレーキ系、アンスラキノン系、ペリレン・ペリノン系、インジゴ・チオインジゴ系、イソインドリノン系、アゾメチンアゾ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系、カーボンブラック系等の有機顔料、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、スピネル型焼成系、クロム酸系、クロムバーミリオン系、紺青系、アルミニウム粉末系、ブロンズ粉末系などの顔料が挙げられる。これらの顔料は、公知の手法によって各種の分散処理が施されたものであってもよい。
【0030】
基材には、エキスパンド工程における延伸性を向上させるため、滑り剤を表面に塗布するか、あるいは樹脂中に練り込むことができる。滑り剤は、粘着シートとエキスパンド装置の摩擦を低下させ得る物質であれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂および(変性)シリコーン油等のシリコーン化合物、フッ素樹脂、六方晶ボロンナイトライド、カーボンブラック、二硫化モリブデンなどを用いることができる。電子部品の製造はクリーンルーム内で行われるため、シリコーン化合物またはフッ素樹脂を用いることが好ましい。シリコーン化合物の中でもシリコーンマクロモノマ単位を有する共重合体は、帯電防止剤との相溶性が良く、帯電防止性とエキスパンド性の両立が図れるため、特に好ましい。
【0031】
基材の片面には次に説明する粘着剤層が積層されるが、もう一方の面にはエンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、基材表面の平均表面粗さ(Ra)が0.3〜1.5μmのとなるように施すことが好ましい。粘着シートのエンボス加工面をエキスパンド装置の機械テーブル側に設置することにより、エキスパンド工程における基材の延伸が容易となる。
【0032】
(2)粘着剤層
基材の片面には粘着剤層が積層される。粘着剤層は、それぞれが官能基含有単量体単位を有し且つ重量平均分子量が互いに異なる2種の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を所定比率で含み、かつ前記官能基と反応する架橋剤を含有する粘着剤組成物によって形成される。
【0033】
具体的には、粘着剤組成物は、重量平均分子量35万未満であり且つ官能基含有単量体単位を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分(A)と、重量平均分子量35〜200万であり且つ官能基含有単量体単位を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分(B)とを、質量比10:90〜90:10の割合で含む。なお、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の平均分子量として測定した値である。
【0034】
成分(A)の重量平均分子量が35万を超える場合、被着体に対する濡れ性が不十分となってしまい、ダイシング工程におけるチップ保持性が不十分となる。成分(B)の重量平均分子量が35万未満では、被着体への貼付後、経時的に粘着力が大きくなり過ぎ、ピックアップ工程におけるチップ剥離性が悪化する。また、成分(B)の重量平均分子量が200万を超えると被着体に対する濡れ性が不十分となってしまい、ダイシング工程におけるチップ保持性が不十分となる。
【0035】
成分(A)の重量平均分子量は、例えば、5万、10万、15万、20万、25万、30万、34万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、成分(B)の重量平均分子量は、35万、40万、50万、60万、70万、80万、90万、100万、110万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、200万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成分(A)と成分(B)の質量比は、例えば、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
成分(A)と成分(B)との含有割合は、成分(A)が少なすぎても多すぎても経時による被着体への濡れ広がりを抑制することができない。
【0037】
成分(A)および成分(B)を構成する官能基含有単量体としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、メチロール基、スルホン酸基、スルファミン酸基および(亜)リン酸エステル基からなる官能基群から選択される1種以上の官能基を有するビニル化合物単量体を用いることができる。
【0038】
ヒドロキシル基を有する官能基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシビニルエーテルなどが挙げられる。
カルボキシル基を有する官能基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、アクリルアミド−N−グリコール酸およびケイ皮酸が挙げられる。
エポキシ基を有する官能基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アミド基を有する官能基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
アミノ基を有する官能基含有単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートがある。メチロール基を有する官能基含有単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0039】
成分(A)および成分(B)を構成し、上記官能基含有単量体と共重合可能な(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレートおよびエトキシ−n−プロピル(メタ)アクリレートなどを採用できる。
【0040】
経時による被着体への濡れ広がりを抑制するため、成分(A)を構成する単量体単位のうち10〜95質量%を2−エチルへキシルアクリレートとし、成分(B)を構成する単量体単位のうち10〜95質量%をブチルアクリレートとすることが好適である。2−エチルへキシルアクリレート及びブチルアクリレートの割合は、それぞれ、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい
【0041】
成分(A)および成分(B)のガラス転移温度は0℃以下とすることが好適である。なお、「ガラス転移温度」は、次の「GORDON−TAILORの式」により導き出した値である。
W/Tg=W
1/Tg
1+W
2/Tg
2+W
n/Tg
n
Tg:(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度(℃)
Tg
n:モノマnのホモポリマのガラス転移温度(℃)
W
n:モノマnの質量分率(%)
【0042】
架橋剤は、成分(A)および成分(B)を構成する官能基含有単量体の官能基と反応するものであれば特に限定されず、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、イミン化合物などとできる。これらの化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系イソシアネート、脂環族系イソシアネートおよび脂肪族系イソシアネートなどの複数のイソシアネート基を有する化合物が使用される。
芳香族系イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族系イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は、二量体や三量体であってもよく、またポリオール化合物を反応させて得られるアダクト体であってもよい。
【0044】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、N,N−グリシジルアニリン、N,N−グリシジルトルイジン、m−N,N−グリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、p−N,N−グリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N',N'−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンおよびN,N,N',N',N''−ペンタグリシジルジエチレントリアミンなどが使用される。
【0045】
イミン化合物としては、例えば、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオナート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオナートおよびN,N'−トルエン−2,4−ビス−(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミンなどを用いることができる。
【0046】
架橋剤の配合量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、0.5〜20質量部の範囲である。架橋剤の配合量が0.5質量部未満の場合、粘着力が大きくなり過ぎピックアップ工程におけるチップ剥離性が悪化し、20質量部を越えると粘着力が小さくなり過ぎダイシング工程におけるチップ保持性が低下してしまう。架橋剤の配合量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、例えば、0.5、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
粘着剤層には、粘着付与剤、重合開始剤、硬化剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光重合性化合物および光開始剤などの各種添加剤を添加してもよい。粘着付与剤には、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族芳香族共重合石油樹脂、脂環族炭化水素樹脂およびこれらの変性品、誘導体または水素添加品などが用いられる。
【0048】
粘着付与剤の配合量は、特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して200質量部以下、好ましくは30質量部以下とされる。
【0049】
2.粘着シートの製造方法
本発明に係る粘着シートは、公知の手法を用いて基材上に粘着剤組成物を積層することにより製造できる。
【0050】
基材上に粘着剤層を形成する方法としては、例えばグラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーターあるいはロールコーターを用いて基材上に粘着剤組成物を直接塗布する方法や、剥離フィルムに粘着剤組成物を塗布し乾燥させた後に基材に貼り合わせる方法がある。また、凸板印刷、凹板印刷、平板印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷あるいはスクリーン印刷などによって基材上に粘着剤層を印刷してよい。
【0051】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度とすることが好ましく、5〜40μmがより好ましい。粘着剤層が薄過ぎると粘着力が低下し、ダイシング時のチップ保持性が低下したり、リングフレームからの剥がれが生じ易くなったりする。一方、粘着剤層が厚過ぎると粘着力が高く、ピックアップ工程におけるチップ剥離性が悪化する。
【実施例】
【0052】
ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤、顔料、充填剤をバンバリーミキサーで混練りした後、カレンダー加工にて70μmの厚さに形成し、基材を得た。可塑剤の種類・配合量は、表1〜表2に示す通りである。アジピン酸系ポリエステルは、ポリサイザーW2310(大日本インキ化学工業株式会社、数平均分子量2300)を用いた。
【0053】
次に、表3に示す組成・分子量を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を準備し、成分(A)、成分(B)及び架橋剤を表1〜表2に従って混合し粘着剤組成物を調製した。乾燥後の粘着剤層の厚みが10μmとなるように粘着剤組成物を塗工したPET製剥離フィルムを基材に積層し、粘着シートを得た。
架橋剤:2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(日本ポリウレタン工業製、コロネートL−45E)。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
得られた粘着シートについて以下の評価を行った。その結果を表1〜表2に示す。
【0058】
(1)粘着力
シリコンウエハ鏡面に粘着シートを貼り合わせ、2kgロ−ラの1往復で圧着し20分放置後に、180°ピ−ル、引張り速度300mm/分の条件で粘着力を測定した。シリコンウエハには、725μm厚のウエハ(6インチ)を用いた。
【0059】
(2)経時による粘着力上昇
上述の条件にて圧着後20分放置の試験体と7日放置の試験体を作成し、それぞれの粘着力を測定した。20分放置の試験体の粘着力(X)および7日放置の試験体の粘着力(Y)から次の式に従って上昇率を求めた。
上昇率=(100×(Y−X))/X
【0060】
算出された上昇率から以下の基準により、経時による粘着力上昇を評価した。
A:上昇率が5%未満。
B:上昇率が5%以上10%未満。
C:上昇率が10%以上。
【0061】
(3)チップ保持性
粘着シートを貼付したシリコンウエハをダイシングした際に、粘着シートに保持されているチップの数を数えた。ダイシングには以下の装置を用いた。粘着シートへの切り込み量は30μmとし、チップサイズは3mm角とした。
装置:DISCO社 DAD341
ダイシングブレード:DISCO社 G1A851SD400R13B01
ダイシングブレード回転数:40,000rpm
ダイシングブレード送り速度:40mm/秒
切削水温度:25℃
切削水量:1.0L/分。
【0062】
チップ数から以下の基準によりチップ保持性を評価した。
A:粘着シートに保持されているチップが95%以上。
B:粘着シートに保持されているチップが80%以上。
C:粘着シートに保持されているチップが80%未満。
【0063】
(4)ピックアップ性
シリコンウエハを上述の条件にてダイシング後、以下の条件でピックアップを行い、ピックアップできたチップの数を数えた。
ピックアップ装置:キヤノンマシナリー社製CAP−300II
エキスパンド量:5mm
ニードルピン形状:150μmR
ニードルピン数:4本
ニードルピン突き上げ高さ:0.3mm
【0064】
ピックアップできたチップ数から以下の基準によりピックアップ性を評価した。
A:90%以上のチップがピックアップできた。
B:80%以上のチップがピックアップできた。
C:80%未満のチップがピックアップできた。
【0065】
<考察>
可塑剤としてアジピン酸系ポリエステルを用いた全ての実施例では、経時による粘着力上昇が小さく、チップ保持性及びピックアップ性が優れていた。可塑剤としてテレフタル酸系ポリエステルを用いた実施例6では、経時による粘着力上昇が起こってしまったが、フタル酸ジオクチルを用いた場合(比較例1)よりは良好な結果が得られた。
比較例2〜10では、可塑剤としてアジピン酸系ポリエステルを用いているにも関わらず、粘着剤層を構成する共重合体成分又は架橋剤の物性や配合量が適正でないため、良好な結果が得られなかった。