特許第6000972号(P6000972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6000972接地不良の補償を有する圧電検出器を備えるセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000972
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】接地不良の補償を有する圧電検出器を備えるセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20160923BHJP
   G01D 3/028 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   G01L9/00 303T
   G01D3/028 Q
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-545317(P2013-545317)
(86)(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公表番号】特表2014-500512(P2014-500512A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011073449
(87)【国際公開番号】WO2012084982
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】10/04998
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511308358
【氏名又は名称】ヒドリア エーイーティー ドルジュバ ザ プロイズヴォドニョ ヴジニー システモヴ イン エレクトロニケ ディー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】グヴァング, マルセル
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−515029(JP,A)
【文献】 特開平09−126928(JP,A)
【文献】 特開平05−100751(JP,A)
【文献】 特開昭61−240118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00 − 25/00
G01D 3/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電検出器(10)が接続される機械接地(MM)と称される第1の電位基準を形成する導電性の壁を有している支持体に取り付けられた該圧電検出器(10)と、前記圧電検出器によってもたらされる信号を処理するための回路とを備えているセンサであって、
前記処理回路が、
電子接地(ME)と称される第2の電位基準を定めている電源回路と、
プロセス増幅器(12)と称される演算増幅器を備えている電荷増幅器と
を備えており、
前記プロセス増幅器(12)が、
前記圧電検出器(10)の出力(11)によってもたらされる信号を受け取るように前記圧電検出器の出力(11)に接続された入力(13)と、
前記電子接地を基準とした、前記圧電検出器によってもたらされる信号を表す出力電圧信号をもたらす出力(15)と、
該プロセス増幅器(12)の前記出力(15)と前記圧電検出器(10)によってもたらされる信号を受け取る前記入力(13)との間の容量フィードバックループ(16)と
を有しており、
前記容量フィードバックループ(16)が、前記圧電検出器(10)によってもたらされる信号を受け取る前記プロセス増幅器(12)の前記入力(13)へと接続された第1の端子(71)を有するコンデンサ(29)を備えており、
前記容量フィードバックループ(16)が、前記プロセス増幅器(12)の前記出力(15)と前記コンデンサ(29)との間に、前記機械接地(MM)と前記電子接地(ME)との間の電位差の関数として変化する電圧を前記コンデンサ(29)の前記第2の端子(72)に加えることによって、該電位差の変動を前記圧電検出器(10)によってもたらされる信号を受け取る前記プロセス増幅器(12)の前記入力(13)において継続的に補償するように構成された電圧加算回路(61、64、66、67、68、69)を備えているセンサ。
【請求項2】
前記容量フィードバックループ(16)の前記電圧加算回路(61、64、66、67、68、69)が、前記機械接地に依存した電位を有するように前記機械接地へと接続された第1の入力と、前記電子接地に依存した電位を有するように前記電子接地へと接続された第2の入力と、前記コンデンサの前記第2の端子へと接続され、前記2つの入力の間の電位差に依存した電位を有する出力とを備えている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記容量フィードバックループ(16)の前記電圧加算回路(61、64、66、67、68、69)の前記入力のうちの一方が、該入力における電位が前記プロセス増幅器の前記出力の電位の値にも依存するよう、前記プロセス増幅器の前記出力へと接続されている請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記処理回路が、前記圧電検出器(10)の前記出力(11)に並列に接続された第1の端子(91)を有する注入抵抗(19)と称される抵抗を備えている抵抗フィードバックループ(30)をさらに備えている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記処理回路が、前記プロセス増幅器(12)の前記出力(15)へと接続された入力と、前記容量フィードバックループ(16)の前記電圧加算回路(61、64、66、67、68、69)とは別の電圧加算回路(81、84、86、88、89)を介して前記注入抵抗の前記第2の端子(92)へと加えられる補償電圧信号をもたらす出力(18)と、を備える補償回路(17)を備えている、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記容量フィードバックループ(16)の前記電圧加算回路(61、64、66、67、68、69)が、加算増幅器(61)と称される演算増幅器を備えており、
該加算増幅器(61)が、
前記機械接地(MM)とは反対の電位(−MM)を有する端子へと接続された反転入力(62)と、
前記電子接地(ME)および前記プロセス増幅器(12)の前記出力(15)へと接続された非反転入力(63)と、
前記容量フィードバックループの前記コンデンサ(29)の前記第2の端子へと接続された出力と、
該加算増幅器(61)の前記反転入力(62)と前記出力(70)との間の負のフィードバック(66)と
を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記プロセス増幅器(12)の前記出力(15)が、直列抵抗(67)を介して前記加算増幅器(61)の前記非反転入力(63)へと接続され、前記電子接地(ME)が、同じ値の直列抵抗(68)を介して前記加算増幅器(61)の前記非反転入力(63)へと接続され、前記機械接地(MM)とは反対の電位(−MM)にある前記端子(55)が、同じ値の直列抵抗(69)を介して前記加算増幅器(61)の前記反転入力(62)へと接続され、前記加算増幅器(61)の前記負のフィードバック(64)が、同じ値の直列抵抗(66)を含んでいる、請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記プロセス増幅器(12)に、前記電子接地(ME)を基準に反対の値を有しており、前記電子接地(ME)の電位に対する前記機械接地(MM)の電位の変動を許容するように、すなわち、これらの接地の間の変動の予想範囲の関数として選択される供給電圧+Vcc、−Vccが、双極性の様相で供給される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記処理回路の各々の演算増幅器に、前記電子接地(ME)を基準に反対の値を有しており、前記電子接地(ME)の電位に対する前記機械接地(MM)の電位の変動を許容するように、すなわち、これらの接地の間の変動の予想範囲の関数として選択される供給電圧+Vcc、−Vccが、双極性の様相で供給される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電検出器が接続される機械接地(mechanical ground)と称される第1の電位基準を形成する導電性の壁を有する支持体に取り付けられた圧電検出器と、前記圧電検出器によってもたらされる信号を処理するための回路とを備えており、この処理回路が、前記検出器によってもたらされる信号を表す電圧信号をもたらすとともに、電子接地(electronic ground)と称される第2の電位基準をもたらす電源回路を備えているセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途において、圧電検出器を、電気的に乱される環境に設置しなければならない。例えば、ディーゼルエンジンのグロープラグに組み込まれ、エンジンのシリンダ内の圧力の測定を可能にする圧電検出器が、そのような場合である。
【0003】
検出器によってもたらされる信号および処理回路によって実行される処理が、圧電検出器によって測定される物理量を表す信号を、例えばエンジンの始動電動機によって引き起こされる強い電流によって乱されることなくもたらすことを、可能にしなければならない。
【0004】
仏国特許出願公開第2910958号明細書が、静電結合を回避し、電磁遮蔽を不要にしつつ、信号をもたらすセンサを提案することを目的としている。この目的のため、機械接地へと電気的に接続され、電子接地を基準とする主供給電圧にもとづいて調整された電圧をもたらす電圧レギュレータを備えており、電荷増幅器にディバイダブリッジを介して調整された電圧が供給される一体型のセンサが説明されている。
【0005】
この技術的解決策は、圧電検出器の2つの入力端子の間に電位差が生じ、これが漏れ電流を大きくするという欠点を有している。さらに、この回路が集積回路の形態で製造される場合、構成要素のかなりの部分が機械接地へと接続され、これが静電放電および寄生の電気的影響の恐れにつながる。さらに、この文献自身が示しているように、高価な特定の保護手段を設けることが必要である。また、実施において、集積回路の製造がはるかに複雑であり、したがって高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、寄生の電気的影響または静電放電(ESD)の恐れなく、集積回路の形態での簡単、安価、かつ信頼できる標準の製造を可能にしつつ、入力における漏れ電流の恐れの増大を引き起こさずに、機械接地と電子接地との間の電位差が自動的に補償されるセンサを提供することによって、これらの欠点を克服することにある。
【0007】
さらに、本発明の目的は、この補償を検出器の通過帯域の全体において得ることができるそのようなセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明は、圧電検出器が接続される機械接地と称される第1の電位基準を形成する導電性の壁を有している支持体に取り付けられたを圧電検出器と、圧電検出器によってもたらされる信号を処理するための回路とを備えているセンサであって、
前記処理回路が、
電子接地と称される第2の電位基準を定めている電源回路と、
プロセス増幅器と称される演算増幅器を備えている電荷増幅器と
を備えており、
プロセス増幅器が、
圧電検出器の出力によってもたらされる信号を受け取るように圧電検出器の出力に接続された入力と、
電子接地を基準とした、圧電検出器によってもたらされる信号を表す出力電圧信号をもたらす出力と、
該プロセス増幅器の出力と圧電検出器によってもたらされる信号を受け取る前記入力との間の容量フィードバックループと
を有しており、
容量フィードバックループが、圧電検出器によってもたらされる信号を受け取るプロセス増幅器の前記入力へと接続された第1の端子を有するコンデンサを備えており、
容量フィードバックループが、プロセス増幅器の前記出力と前記コンデンサとの間に、機械接地と電子接地との間の電位差の関数として変化する電圧を前記コンデンサの第2の端子に加えることによって、該電位差の変動を圧電検出器によってもたらされる信号を受け取るプロセス増幅器の入力において継続的に補償するように構成された電圧加算回路を備えているセンサに関する。
【0009】
この方法で、圧電検出器および処理回路のきわめて限られた数の構成要素だけに機械接地を基準にして電気が供給される。これは、静電放電または寄生の電気的影響の恐れなく、標準的な製造を可能にする。
【0010】
機械接地と電子接地との間の電位差を注入することによってもたらされる補正は、処理回路の入力におけるフィードバックループの電位の共役な変動によって処理回路の入力に現れる。
【0011】
有利には、本発明によれば、容量フィードバックループの前記電圧加算回路が、機械接地に依存した電位を有するように機械接地へと接続された第1の入力と、電子接地に依存した電位を有するように電子接地へと接続された第2の入力と、コンデンサの第2の端子へと接続され、2つの入力の間の電位差に依存した電位を有する出力とを備える。さらに、有利には、本発明によれば、容量フィードバックループの前記電圧加算回路の入力のうちの一方が、前記入力における電位がプロセス増幅器の出力の電位の値にも依存するよう、プロセス増幅器の前記出力へと接続される。
【0012】
有利には、一実施形態において、本発明によれば、容量フィードバックループの電圧加算回路が、プロセス増幅器と称される演算増幅器を備え、
このプロセス増幅器が、
機械接地とは反対の電位を有する端子へと接続された反転入力と、
電子接地およびプロセス増幅器の前記出力へと接続された非反転入力と、
容量フィードバックループのコンデンサの前記第2の端子へと接続された出力と、
この加算増幅器の反転入力と出力との間の負のフィードバックと
を有する。
【0013】
また、本発明のこの実施形態によるセンサは、有利には、プロセス増幅器の前記出力が、直列抵抗を介して加算増幅器の非反転入力へと接続され、電子接地が、同じ値の直列抵抗を介して加算増幅器の非反転入力へと接続され、機械接地の反対の電位が、同じ値の直列抵抗を介して加算増幅器の反転入力へと接続され、加算増幅器の負のフィードバックが、同じ値の直列抵抗を含んでいるセンサである。この集合が、容量フィードバックループの前記電圧加算回路を構成する。
【0014】
さらに、本発明によるセンサは、やはり有利には、処理回路が、圧電検出器の前記出力に並列に接続された第1の端子を有する注入抵抗と称される抵抗を備えている抵抗フィードバックループを備えているセンサである。有利には、本発明によれば、注入抵抗の第2の端子が、前記注入抵抗のこの第2の端子に機械接地と電子接地との間の電位差の関数として変化する電圧を加えることによって、この電位差の変動を注入抵抗の第1の端子において継続的に補償するように構成された電圧加算回路へと接続される。この抵抗フィードバックループのこの電圧加算回路は、容量フィードバックループの電圧加算回路と同じであってよく、注入抵抗が、単純に同じ電圧加算回路の出力において容量フィードバックループのコンデンサに並列に接続される。しかしながら、変種として、抵抗フィードバックループの電圧加算回路が、容量フィードバックループの電圧加算回路とは別であってもよい。
【0015】
さらに、本発明は、補償回路を備えており、特には基準電圧値に対するプロセス増幅器の出力の隷属を形成し、例えば焦電効果によって引き起こされるようなDC成分のドリフトの補償を可能にする形式の補償回路を備えているセンサにも適合する。したがって、有利には、本発明によれば、処理回路が、プロセス増幅器の前記出力へと接続された入力と、容量フィードバックループの前記電圧加算回路とは別の電圧加算回路を介して注入抵抗の前記第2の端子へと加えられる補償電圧信号をもたらす出力と、を備える補償回路を備える。
【0016】
さらには、有利には、本発明によれば、プロセス増幅器に、電子接地を基準に反対の値を有しており、電子接地の電位に対する機械接地の電位の変動を許容するように選択される(すなわち、これらの接地の間の変動の予想範囲の関数として選択される)供給電圧+Vcc、−Vccが、双極性の様相で供給される。
【0017】
この方法で、プロセス増幅器が、電子接地(両極性の様相での供給の基準である)に対する機械接地の変動の全範囲を、困難なく(特には、飽和の恐れなく)受け入れることができる。さらに、プロセス増幅器の前記容量フィードバックループに関して、機械接地MMと電子接地MEとの間の電位差をこのループへと注入する電圧加算器を備えている本発明によるセンサにおいては、機械接地MMについて生じ得るあらゆる変動が、前記容量フィードバックループの時定数に影響を及ぼすことなく、自動的かつ継続的に補償される。
【0018】
好ましくは、有利には、本発明によれば、処理回路の各々の演算増幅器に、電子接地を基準に反対の値を有しており、電子接地の電位に対する機械接地の電位の変動を許容するように選択される(すなわち、これらの接地の間の変動の予想範囲の関数として選択される)供給電圧+Vcc、−Vccが、双極性の様相で供給される。
【0019】
さらに本発明は、上述または後述の特徴のすべてまたは一部による組み合わせにおいて特徴付けられるセンサに関する。
【0020】
本発明の他の目的、特徴、および利点が、本発明の好ましい実施形態をあくまでも本発明を限定するものではない例として表している添付の図面を参照する以下の説明を検討することによって、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態によるセンサの回路図である。
図2】本発明によるセンサの処理回路において採用することができる補償方法の実施形態のフロー図である。
図3a】本発明の効果を説明するグラフの例である。
図3b】本発明の効果を説明するグラフの例である。
図3c】本発明の効果を説明するグラフの例である。
図4】本発明の第2の実施形態によるセンサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示される本発明によるセンサは、処理回路によって処理される信号(電荷によって形成される)を第1の端子11においてもたらす圧電検出器10を備えており、処理回路が、図1に示した第1の実施形態においては、高利得のプロセス増幅器12と称される反転演算増幅器を備える電荷増幅器と、この例では容量Cのコンデンサ29を備える容量フィードバック16とを備えている。
【0023】
検出器10の第1の端子11が、プロセス増幅器12の反転入力13へと接続され、プロセス増幅器12の非反転入力14ならびに検出器10の第2の端子9が、機械接地MMと称される第1の電位基準へと接続されている。プロセス増幅器の出力15が、検出器10によって生成される電荷に比例した電圧をもたらす。容量ブランチ16が、検出器10の信号を受け取るプロセス増幅器12の反転入力13と出力15との間に並列に接続されている。すなわち、処理回路の容量フィードバックループを構成している。
【0024】
圧電検出器10は、例えば、熱機関などの1つ以上のピストンを備える機械のシリンダの部屋の圧力を測定することを可能にする。圧電検出器10は、例えばディーゼルエンジンのグロープラグに組み込まれる。圧電検出器10は、このシリンダの圧力を表す信号をもたらし、この信号は、ピストンの変位および/または燃焼に起因するシリンダの圧力の通常の急激な変化の段階に対応する比較的短いパルスの形態であり、これらのパルスは、シリンダの圧力の少なくとも実質的に一定な値に対応するより長い継続時間の水平域によって隔てられている。このとき、機械接地MMは、それ自身が車両のバッテリの接地へと接続されたエンジンおよびグロープラグの金属部品によって形成される。
【0025】
検出器10によってもたらされる信号を処理するための回路は、例えば車両のバッテリを供給源とするエンジンの制御ユニット(ECUと称されることが多い)に一体化された伝統的な安定化電源の形態の電源回路(図示されていない)をさらに備える。この安定化電源が、機械接地MMの変動とは別個独立である電子接地MEと称される第2の電位基準を定め、この電子接地MEが、センサの種々の電子部品を保持する回路基板の接地に相当する。また、電源回路は、正極性および負極性のそれぞれの電圧+Vccおよび−Vccも供給する。
【0026】
用途および制約に応じて、プロセス演算増幅器12が、種々の代案の実施形態の対象であってよく、特にはより複雑またはより単純なアーキテクチャにて製造されてよいことに、注意すべきである。
【0027】
図1に示されている第1の実施形態においては、処理回路が、抵抗フィードバックループ30と一体化され、閉ループ隷属(closed−loop slaving)を形成している補償回路17をさらに備えている。この補償回路17は、プロセス増幅器12の出力15の出力(電圧)信号を受け取る。補償回路17は、ループ30の直列抵抗19の端子92に加えられるように意図された補正電圧信号Ucorrを出力18にもたらし、直列抵抗19の他方の端子91は、検出器10によってもたらされる信号を受け取るプロセス増幅器12の入力13へと接続されている。値R0を有する抵抗19が、補正電圧信号Ucorrを補正強度信号へと変換し、すなわち補償電流Icorrへと変換し、これが検出器10によってもたらされる信号に加えられ、この信号の絶対値の不時の変動の補償を可能にする。
【0028】
このようにして、プロセス増幅器12によって出力15にもたらされる電圧信号が、補償され、処理回路の出力28に届けられ、例えば機械の動作管理の電子機器などの他の外部のシステムへの接続によって利用することが可能である。
【0029】
図1は、この補償回路17の実施形態の例を示しているが、本発明は、この補償回路の任意の他の実施形態においても適用および適合可能であり、あるいは補償回路が存在しなくても、すなわち単純な電荷増幅器で構成される処理回路においても、適用および適合可能である。
【0030】
図示の例では、補償回路17が、プロセス増幅器12の出力15のアナログ電圧に対応するデジタル信号Sをもたらすアナログ/デジタル変換器20を備えている。
【0031】
このデジタル信号Sが、集積回路27(ASIC、FPGA、またはマイクロコントローラ、などによって形成することができる)の入力に供給され、集積回路27は、回路27のクロック23によってもたらされるサンプリングクロック周波数に従ってサンプリングされる信号Sの測定値S(t)を順次保存する循環バッファメモリ21を備えている。また、集積回路27は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ24と、少なくとも1つの読み出し専用メモリ25と、前記マイクロプロセッサに組み合わせられた少なくとも1つのランダムアクセスメモリ26とをさらに備える。マイクロプロセッサ24は、図2に示されるように、サンプリングされた信号Sの各々の値について本発明による処理方法を実行する。集積回路27の出力にマイクロプロセッサ24がデジタル補正信号Corrをもたらし、これがデジタル/アナログ変換器22へと供給され、補償回路17の出力18にアナログ補正電圧信号Ucorrがもたらされる。
【0032】
繰り返しのたびに実行され、すなわち出力信号がサンプリングされるたびに実行される補償回路17による信号Sの処理方法の例が、図2に示されている。
【0033】
第1のステップ31において、信号Sの現在の値S(t)が、サンプリングクロックのエッジにおいて、このクロックエッジによってアクティブにされる循環バッファ21の位置に保存される。
【0034】
第2のステップ32において、出力信号Sの変動ΔSが、クロックエッジの瞬間tにおける現在の値S(t)と、値t−αT(Tは自然数であり、αは0と1との間の有理数である)に最も近いクロックエッジについて循環バッファ21に保存されたS(t−αT)と称される信号Sの以前の値のうちの1つとの間で計算される。例えば、αは、0.05〜0.5の間で選択され、特には0.2程度である。αTは、変動ΔSの計算の対象の期間を表し、したがってTによって表される総継続時間の一部分であり、その値は、非ゼロの最小値Tminと最大値Tmaxとの間に位置する。これらの値は、それぞれ機械の最高および最低速度の関数として選択される。したがって、Tminは、最大エンジン速度における水平域の継続時間よりも短く、Tmaxは、最小エンジン速度における水平域の継続時間よりも長い。
【0035】
第3のステップ33において、この変動の絶対値│ΔS│が、メモリ25に保存された所定の比較値Vと比較される。実際には、この比較値を、水平域において信号に含まれる固有雑音にもとづき、この固有雑音の導関数の最大値よりも大きい値に設定することによって調節することができる。
【0036】
出力信号の変動の絶対値│ΔS│が比較値Vよりも小さい場合、これは、検出器10によってもたらされた信号がシリンダの圧力の水平域に対応することを意味しており、隷属34が開始される。
【0037】
この隷属34は、第1のステップ35において、検出器10によってもたらされる信号の絶対値について生じ得る不時の変動に関係なく、出力信号Sを所定に基準値Srに隷属させることを可能にする補正信号Corrの値を計算することからなる。この基準値Srが、隷属34の設定点を構成し、この基準値Srを、本発明による処理回路の下流に位置して出力信号を受け取る電子回路の制約の関数として選択し、メモリ25に保存することが可能である。
【0038】
補正信号Corrの値を計算するこのステップは、種々の代案の実施形態の対象であってよい。好ましくは、有利には、本発明によれば、この計算が、現在の値S(t)を入力において受け取り、基準値Srに対する誤差を計算し、この誤差にPID型の調整を適用するPIDレギュレータ(比例積分微分)によって実行される。補正信号Corrが、デジタル電圧信号であることに注意すべきである。
【0039】
隷属34の次のステップ36において、補正信号Corrの現在の値が保存され、この補正信号Corrの平均Mが、この補正信号Corrの現在の値および種々の以前に保存された値について計算される。
【0040】
この平均は、好ましくは、特定の数の先行するサンプルについて計算される代数平均である。例えば、繰り返しのたびに、この平均が、先行するβT個のサンプルについて計算され、βは、水平域における信号のわずかな変動を除去するために選択される0と1との間の有理数であり、例えば0.5程度である。
【0041】
隷属34の次のステップ37において、現在の期間が所定の最大期間αTmaxに等しい場合を除き、Tが1単位だけ増やされ、変動ΔSを計算するために使用される期間αTがαだけ増やされる。Tmaxは、例えば生じ得る最長の水平域の期間に相当し、すなわち特には機械がエンジンである場合に、エンジンの低速時の水平域の期間に相当する。この目的のため、未だこの値Tmaxに達していない場合には、隷属の活動の繰り返しのたびに、すなわち補正信号Corrの値の各々の計算の後で、Tの値が1単位だけ増やされる。このようにして、期間は、変動の絶対値│ΔS│が前記所定の比較値未満であり続け、すなわち検出器によってもたらされた信号が同じ水平域に対応している先行のサンプリング時点の数の増加関数である。換言すると、出力信号の変動の計算期間が、検出器10によってもたらされる信号が圧力の同じ水平域にある限りは増やされる。このようにして、水平域の検出感度が、機械の速度に無関係である。
【0042】
平均Mの計算に使用される先行のサンプルの数βTも、検出器10によってもたらされる信号が圧力の同じ水平域にあり続ける限り、繰り返しのたびにTだけ増やされることに注意すべきである。
【0043】
比較のステップ33において、出力信号の変動の絶対値│ΔS│が比較値V以上であると判断される場合、これは、検出器10によってもたらされた信号がシリンダの圧力のピークに対応することを意味し、隷属34が停止される。この場合、補正信号Corrは、ステップ38において、隷属34のステップ36の最後の実行時に計算されて最後に記録された平均Mの値に設定される。
【0044】
続くステップ39において、Tの値が、非ゼロの最小初期値Tminに再度初期化される。Tminは、例えば水平域について考えられる最短の期間に相当し、すなわち特には機械がエンジンである場合に、エンジンの最大動作速度における水平域の期間に相当する。したがって、圧力のピークの最中およびそのような圧力のピークの直後に、Tの値がTminに設定され、したがって水平域の段階の始まりにおいて変動ΔSを計算するために考慮される最小期間が、Tminに等しくなる。この期間が、後に繰り返しのたびに値αだけ徐々に増やされる。
【0045】
いずれの場合も、最後のステップ40において、この処理方法により、各々のサンプリング時点t、すなわち各々のクロックエッジの後についての補正信号Corrの値がもたらされる。
【0046】
機械接地MMは、例えば車両のバッテリが大きな電流をもたらす場合(特には、エンジンの始動電動機を動作させるとき)に、電子接地MEに対して無視し得ない変動を被る可能性がある。これらの変動を克服し、処理回路への影響を回避するために、電圧加算回路61、64、66、67、68、69がプロセス増幅器12の容量フィードバックループへと挿入され、前記コンデンサ29の第2の端子72(プロセス増幅器12の入力13へと接続された第1の端子71の反対側の端子)に、機械接地MMと電子接地MEとの間の電位差の関数として変化する電圧を加えることで、この電位差の変動を、圧電検出器によってもたらされる信号を受け取るプロセス増幅器12の入力13において自動的かつ連続的に補償する。
【0047】
この目的のため、処理回路は、第1に、機械接地の電位とは反対の値−MMを有する電圧をもたらす反転回路51〜57を備えている。この反転回路51〜57は、反転演算増幅器51を備えており、反転演算増幅器51の反転入力52が、値R1の直列抵抗53を介して機械接地MMへと接続され、反転演算増幅器51の非反転入力54が、電子接地MEへと接続されている。フィードバックループ57が、同じ値R1の直列抵抗56を介して出力55を反転入力52へと接続している。したがって、出力55が、電子接地MEに対して機械接地MMの電圧と反対の電圧−MMを有する信号をもたらす。演算増幅器51には、双極性の様相で+Vcc、−Vccが供給されている。
【0048】
図1に示した本発明の第1の実施形態においては、容量フィードバックループの電圧加算回路が、以下の方法で生み出される。プロセス増幅器12の容量フィードバックループ16が、双極性の様相で+Vcc、−Vccが供給され、非反転の入力63において値R2の直列抵抗67を介してプロセス増幅器12の出力15の信号Sを受け取るとともに、同じ値R2の直列抵抗68を介して電子接地MEを受け取る加算増幅器51と称される演算増幅器を備える。加算増幅器61は、反転入力62において、同じ値R2の直列抵抗69を介して、反転回路51〜57によってもたらされる機械接地MMの電圧とは反対の電圧−MMを受け取る。加算増幅器61の出力70が、コンデンサ29の第2の端子72(プロセス増幅器12の入力13へと接続されたコンデンサ29の第1の端子71の反対側の端子)へと接続される中立化ノード(neutralization node)70を形成する。フィードバックループ64が、加算増幅器61の出力70を同じ値R2の直列抵抗66を介して加算増幅器61の反転入力62に接続している。中立化ノード70の電位がS+MMに等しいことを、理解できるであろう。したがって、機械接地MMの変動が、プロセス増幅器の容量ループ16において単純かつ連続的に補償される。この補償は、電圧加算増幅器61が電荷増幅器の容量フィードバックループの時定数と比べて充分に高速である限りにおいて、電荷増幅器の容量フィードバックループの時定数とは無関係である。
【0049】
同様に、抵抗フィードバックループ30が、双極性の様相で+Vccおよび−Vccが供給され、非反転の入力83において補償電圧信号Ucorrを受け取るとともに、値R3の直列抵抗88を介して電子接地MEを受け取る加算増幅器81と称される演算増幅器を備える。加算増幅器81は、反転入力82において、同じ値R3の直列抵抗89を介して、反転回路51〜57によってもたらされる機械接地MMの電圧とは反対の電圧−MMを受け取る。加算増幅器81の出力90が、抵抗19の端子92(プロセス増幅器12の入力13へと接続されたこの抵抗19の端子91の反対側の端子)へと接続される中立化ノード90を形成する。フィードバックループ84が、加算増幅器81の出力90を同じ値R3の直列抵抗86を介して加算増幅器81の反転入力82に接続している。中立化ノード90の電位がUcorr+MMに等しいことを、理解できるであろう。したがって、やはり機械接地MMの変動が、抵抗フィードバックループにおいて単純かつ連続的に補償され、補償電流Icorrは、少なくとも実質的に機械接地MMの変動と無関係である。
【0050】
本発明によるセンサの処理回路において、各々の演算増幅器には、好ましくは反対の電圧+Vcc、−Vccが両極性の様相で供給される。これは、特には少なくともプロセス増幅器12に当てはまる。これは、機械接地MMの変動時にこの増幅器の飽和が回避されるからである。同じことが、電圧加算器を形成している増幅器51、61、81にも当てはまる。
【0051】
図3a〜3cが、本発明によるセンサの出力28にもたらされる信号Sへの本発明の効果を示す実施例である。図3aは、機械接地MMが厳密に電子接地MEと同じ電位にあるときの信号Sの例を示している。図3bが、比較(本発明によらない)として、加算増幅器61および81ならびにこれらに組み合わせられる抵抗が存在しない場合について、機械接地MMへと注入される50Hzの正弦関数状の変動の影響下でのこの信号Sの変動を示している。見て取ることができるとおり、この変動が、圧電検出器によってもたらされる信号に重畳している。図3cが、同じ50Hzの正弦関数状の信号が機械接地MMへと注入される場合に本発明によるセンサの出力28にもたらされる信号Sを示している。見て取ることができるとおり、本発明は、50Hzの変動を出力信号Sにおいてほぼ完全に抑えることを可能にする。これは、接地不良が自動的かつ連続的に補正されることを立証している。
【0052】
図4が、一方では補償回路を有しておらず、抵抗99が(電圧加算回路の出力ノード70とプロセス増幅器12の入力13との間に)コンデンサ29に並列に接続され、電荷増幅器が形成されており、他方では機械接地MMが抵抗68を介して加算増幅器61の非反転の入力63に注入される一方で、電子接地MEが抵抗69を介して加算増幅器61の反転入力62に注入される点で、第1の実施形態から相違する本発明による処理回路の別の実施形態を示している。第1の実施形態の反転回路51〜57は、もはや不要である。ここでもやはり、中立化ノード70における電位は、S+MMに等しい。より単純な設計であるこのような構成において、それでもなお、加算増幅器61に組み合わせられるすべての抵抗66、67、68、69が完璧かつ同一であることが必要である。
【0053】
このような処理回路および圧電検出器を備える本発明によるセンサを、同じ機械アセンブリの内側、特にはディーゼルエンジンのグロープラグの内部に組み込むことができる。
【0054】
本発明は、図示および上述の実施形態に関する多数の変種の対象となることができる。特には、電位差MM−MEをプロセス増幅器12のフィードバックループへと注入するための加算回路が、他の実施形態の対象であってよい。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4