特許第6000973号(P6000973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6000973-自動注射器 図000002
  • 特許6000973-自動注射器 図000003
  • 特許6000973-自動注射器 図000004
  • 特許6000973-自動注射器 図000005
  • 特許6000973-自動注射器 図000006
  • 特許6000973-自動注射器 図000007
  • 特許6000973-自動注射器 図000008
  • 特許6000973-自動注射器 図000009
  • 特許6000973-自動注射器 図000010
  • 特許6000973-自動注射器 図000011
  • 特許6000973-自動注射器 図000012
  • 特許6000973-自動注射器 図000013
  • 特許6000973-自動注射器 図000014
  • 特許6000973-自動注射器 図000015
  • 特許6000973-自動注射器 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000973
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20160923BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20160923BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20160923BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/20 572
   A61M5/24 500
   A61M5/315
   A61M5/32 510K
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-545340(P2013-545340)
(86)(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公表番号】特表2014-502887(P2014-502887A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】EP2011073514
(87)【国際公開番号】WO2012085032
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】10196078.9
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/432,235
(32)【優先日】2011年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ジェニングス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エクマン
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−503637(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/018411(WO,A1)
【文献】 米国特許第4300554(US,A)
【文献】 国際公開第96/26754(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/033806(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00−5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体薬剤(M)を送達するための自動注射器(1)であって、パッケージ化シリンジ(4)を受けるように構成された装填口(12)を有する細長いハウジング(2)を備え、装填口(12)は、パッケージ化シリンジ(4)を挿入または取り外すために、側方からアクセス可能であるように構成され、スライド・ドア(3)が、遠位位置では装填口(12)を現わし、近位位置では装填口(12)をカバーするような方式で、ハウジング(2)の上にスライド可能に配置され、
パッケージ化シリンジ(4)が、中空注射針(6)、およびシリンジ(5)を封止し、液体薬剤(M)を変位させるためのストッパ(7)を備えたシリンジ(5)を含み、駆動ばね(8)が、注射部位の中へ中空注射針を挿入するために、そして中空注射針(6)を通して薬剤(M)を注射するために、シリンジ(5)および中空注射針(6)を近位方向(P)に前進させるようにハウジング(2)の中に配置され、スライド・ドア(3)は、スライド・ドア(3)および駆動リセット・ラック(10)が反対方向に並進運動するように駆動リセット・ラック(10)と噛み合う駆動ギア(15)と噛み合うドア・ラック・ギア(14)を示し、駆動リセット・ラック(10)が、遠位方向(D)への並進運動により、駆動ばね(8)を圧縮するように配置されることを特徴とする、
上記自動注射器(1)。
【請求項2】
プランジャ(16)が、駆動ばね(8)からシリンジ(5)、およびストッパ(7)へ荷重を伝達するように配置され、プランジャ(16)が、プランジャ・ラック・ギア(17)を含み、プランジャ・ギア(21)が、スライド・ドア(3)の遠位方向(D)への並進運動によって、プランジャ(16)が遠位方向(D)に並進運動するような方式で、駆動ギア(15)およびプランジャ・ラック・ギア(17)と噛み合い、一方、プランジャ・ギア(21)中に配置されたスプラグ・クラッチが、スライド・ドア(3)の干渉を受けることなく、近位方向(P)へのプランジャ(16)の並進運動を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の自動注射器(1)。
【請求項3】
駆動ばね(8)が、遠位側でハウジング(2)に基礎を置き、近位側で駆動カラー(18)に支えられ、駆動カラー(18)は、駆動ばね(8)を圧縮するための駆動リセット
・ラック(10)によって係合されるように配置され、そして駆動ばね(8)の解除を防止するように圧縮中にリセット位置に到達すると、ハウジング(2)に掛止されるように配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動注射器(1)。
【請求項4】
トリガ・ボタン(36)が、駆動ばね(8)を解除するため、押し下げによって、駆動カラー(18)をハウジング(2)からラッチ解除するように配置されることを特徴とする、請求項3に記載の自動注射器(1)。
【請求項5】
プランジャ軸(24)が、ハウジング(2)内にスライド可能に配置され、ボス(25)を有するプランジャ軸(24)が、近位方向(P)へのプランジャ軸(24)の並進運動によって、プランジャ(16)上の近位停止部(27)に当接するように配置され、スライド・ドア(3)上の第2のリブ(23)が、近位方向(P)へのスライド・ドア(3)の並進運動によって、プランジャ軸(24)に当接するように配置され、プランジャ軸(24)が、近位位置へのスライド・ドア(3)の並進運動の終わり近くに、スライド・ドア(3)がプランジャ軸(24)を並進運動させるような方式で近位方向(P)への並進運動によって、パッケージ化シリンジ(4)に当接するように配置され、プランジャ軸(24)が、パッケージ化シリンジ(4)を作動位置へ並進運動させ、プランジャ軸(24)が、プランジャ(16)の遠位ヘッド(33)が、駆動ばね(8)をプランジャ(16)へカップリングさせるために、駆動カラー(18)を通過し、駆動カラー(18)に掛止されるような方式で、プランジャ(16)を並進運動させることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動注射器(1)。
【請求項6】
パッケージ化シリンジ(4)が、パッケージ・ハウジング(11)を含み、シリンジ(5)が、パッケージ・ハウジング(11)内にスライド可能に配置され、パッケージ・ハウジング(11)の中の少なくとも1つの弾性スナップ・アーム(29)が、パッケージ・ハウジング(11)に対するシリンジ(5)の並進運動を防止するように配置され、プランジャ軸(24)が、パッケージ化シリンジ(4)が作動位置にあるとき、プランジャ軸(24)のさらなる並進運動によって、弾性スナップ・アーム(29)からシリンジ(5)を解除するようにスナップ・アーム(29)を偏向するように配置された少なくとも1つの傾斜面(28)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の自動注射器(1)。
【請求項7】
遠位ヘッド(33)が、プランジャ(16)と嵌め込み式にされ、プランジャばね(42)によって、プランジャ(16)に抗して付勢されることを特徴とする、請求項5または6に記載の自動注射器(1)。
【請求項8】
皮膚接触インターロック・スリーブ(37)が、ハウジング(2)内にスライド可能に嵌め込み式にされ、近位位置においてハウジング(2)の近位端(P)から突出するよう近位方向(P)に付勢され、皮膚接触インターロック・スリーブ(37)が、皮膚接触インターロック・スリーブ(37)が近位位置にあるとき、トリガ・ボタン(36)の押し下げを防止するような方式で、トリガ・ボタン(36)に係合するように配置され、皮膚接触インターロック・スリーブ(37)が、皮膚接触インターロック・スリーブ(37)が遠位方向(D)に押し下げられると、トリガ・ボタン(36)の押し下げが可能になるような方式で、トリガ・ボタン(36)から係合解除されるように配置されることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項9】
ハウジング(2)が、縮小直径部(45)を含み、縮小直径部(45)は、遠位ヘッド(33)が、デカップリング位置において、駆動カラー(18)とは独立に遠位方向(D)に並進運動することを可能にする方式で、駆動ばね(8)の荷重下で駆動カラー(18)からラッチ解除されるように、駆動カラー(18)が、リセット位置と、ストッパ(7)が、シリンジ(5)の少なくともほとんど底に達しているデカップリング位置との間に
あるとき、プランジャ(16)の遠位ヘッド(33)から駆動カラー(18)のラッチ解除を防止するように配置されることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【請求項10】
ビスカスダンパ(46)が、ストッパ(7)がシリンジ(5)の底に達する直前に、並進運動により、駆動カラー(18)に接触するように配置され、ビスカスダンパ(46)が、駆動カラー(18)の速度を落とすように配置され、プランジャばね(42)が延び、ストッパ(7)が底に達するまでストッパ(7)を並進運動させることを可能にし、ビスカスダンパ(46)の位置は、ビスカスダンパ(46)が駆動カラー(18)によって完全に圧縮される少し前に、駆動カラー(18)から遠位ヘッド(33)をラッチ解除することを可能にする方式で、縮小直径部(45)に対して選択されることを特徴とする、請求項9に記載の自動注射器(1)。
【請求項11】
後退ばね(9)が、中空注射針挿入のためシリンジ(5)の並進運動により圧縮されるような方式で、かつ駆動カラー(18)からの遠位ヘッド(33)のラッチ解除によって、シリンジ(5)および中空注射針(6)を後退させる方式で、パッケージ化シリンジ(4)内に配置されることを特徴とする、請求項9または10に記載の自動注射器(1)。
【請求項12】
駆動ギア(15)が、ドア・ラック・ギア(14)と比較して、駆動リセット・ラック(10)の低減された走行距離、および駆動リセット・ラック(10)の増大した力を実現するような方式で、ドア・ラック・ギア(14)および駆動リセット・ラック(10)にそれぞれ係合するための異なった数のギア歯を備えた2つの異なるギア装置を示すことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動注射器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射を行うことは、使用者および医療従事者にとって、精神的にも身体的にも、いくつかのリスクおよび課題を呈するプロセスである。
【0003】
注射具(すなわち、医薬品容器から薬剤を送達することが可能なデバイス)は、通常、手動デバイスおよび自動注射器の2つのカテゴリーに分類される。
【0004】
手動デバイスでは、使用者は、針を通して流体を動かすために、機械的エネルギーを与えなければならない。通常、これは、注射の間に使用者が押し続けなければならない何らかの形態のボタン/プランジャによって行われる。この手法には、使用者に多数の不利な点がある。使用者が、ボタン/プランジャを押すのを止めれば、注射も止まることになる。これは、デバイスが適切に使用されない(すなわち、プランジャが、その端部位置まで完全に押されない)場合、使用者が、過少量を送達する可能性があるということを意味する。とりわけ、患者が年配者である、または、手際に問題があるならば、注入力は、使用者にとって強すぎることがあり得る。
【0005】
ボタン/プランジャの延長が大きすぎることがある。したがって、使用者が、完全に延びたボタンに手を伸ばすことが不便となり得る。注入力とボタンの延長との組合せが、手の揺れ/震えを引き起こす可能性があり、ひいては、挿入された針が動くにつれて、それが、不快感を増加させる。
【0006】
自動注射器デバイスは、注射療法の自己投与を患者にとってより簡単にすることを目標とする。自己投与の注射によって送達される現在の療法は、糖尿病の薬物(インスリンおよびより新しいGLP−1クラスの薬物の両方)、片頭痛、ホルモン治療、抗凝血剤などの薬物を含む。
【0007】
自動注射器は、標準的なシリンジからの非経口薬物の送達に伴う作業に完全にまたは部分的に置き換わるデバイスである。これらの作業は、保護用シリンジ・キャップを取り外すこと、患者の皮膚の中に針を挿入すること、薬剤を注射すること、針を取り外すこと、針を遮蔽すること、およびデバイスの再利用を防止することを含み得る。これは、手動デバイスの多くの不利益を克服する。注入力/ボタンの延長、手の震え、および不完全な用量を送達する可能性が低減される。多数の手段によって、例えば、トリガ・ボタン、またはその注射深度に到達する針の作用によって、トリガすることが実施され得る。いくつかのデバイスでは、流体を送達するエネルギーは、ばねによって与えられる。
【0008】
特許文献1は、張力ばねが解除されると、事前に測定された量の流体医薬品を自動的に注射する自動注射具を開示する。張力ばねは、解除されると、格納位置から展開位置へアンプルおよび注射針を動かす。その後、張力ばねがピストンをアンプルの内側へ前方に押し込むことによって、アンプルの内容物が排出される。流体医薬品が注射された後、張力ばねに蓄えられた捩れが解除され、注射針が、自動的にその元の格納位置へと後退して戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0095120A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改善された自動注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本目的は、請求項1に記載の自動注射器によって実現される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に与えられる。
【0013】
本明細書の文脈において、近位という用語は、注射の間に患者の方を指す方向を示し、一方、遠位という用語は、患者から離れる方を指す反対方向を示す。
【0014】
本発明による液体薬剤を送達するための自動注射器は、パッケージ化シリンジを受けるように構成された装填口を有する細長いハウジングを含み、装填口は、パッケージ化シリンジを挿入または取り外すために、側方からアクセス可能であるように構成され、スライド・ドアが、遠位位置では装填口を現わし、近位位置では装填口をカバーするような方式で、ハウジングの上にスライド可能に配置される。
【0015】
パッケージ化シリンジが、中空注射針、およびシリンジを封止し、液体薬剤を排出させるためのストッパを備えたシリンジを含むことが可能である。駆動ばねが、注射部位の中へ針を挿入するために、および針を通して薬剤を注射するために、シリンジおよび針を近位方向に前進させるようにハウジングの中に配置される。スライド・ドアが、駆動ギアと噛み合うドア・ラック・ギアを呈することが可能であり、駆動ギアは、駆動リセット・ラックとも噛み合い、それにより、スライド・ドアおよび駆動リセット・ラックが、反対方向に並進運動するようになり、駆動リセット・ラックが、遠位方向への並進運動により、駆動ばねを圧縮するように配置される。
【0016】
新しいパッケージ化シリンジが、装填口の中へ装填されたとき、使用者はスライド・ドアを近位位置へ並進運動させ、それによって、駆動リセット・ラックを遠位方向へ並進運動させ、駆動ばねをリセットさせる。従来の再利用可能な自動注射器は、装填の前にリセットされ、未使用のシリンジが装填されたときには準備万端の状態である。シリンジが装填された後に自動注射器をリセットする利点は、使用者が未使用のシリンジを装填するときに、損傷を受けにくいということである。
【0017】
自動注射器の長手方向軸に沿ってスライド・ドアを並進運動させることによって、自動注射器がリセットされる。好ましくは、スライド・ドアは、リセット運動内のその位置にかかわらず、自動注射器の両端部を越えて突出しない。従来の再利用可能な自動注射器は、その長手方向軸に沿って一部分を並進運動させることによってリセットされるが、その一部分は、自動注射器の端部を越えて延びることが多い。自動注射器が、完全にリセットされる前に、使用者によって解除された場合、その延びている位置へ迅速に戻る部分が、自動注射器の無制御の運動を引き起こす可能性がある。自動注射器の長さを越えて突出しないスライド・ドアの利点は、完全なリセットをする前に自動注射器を解除することは、結果として噴出物を生じることとはならず、したがって、使用者は、自動注射器をリセットするときに、損傷を受けにくいということである。
【0018】
針を挿入するために、およびシリンジを空にするために、軸方向の運動をもたらす圧縮駆動ばねが、スライド・ドアの並進運動によってリセットされる。スライド・ドアの運動は、2つのラック・アンド・ピニオン・ギアの対を通して、すなわち、ドア・ラック・ギアから駆動ギアへ、および駆動ギアから駆動リセット・ラックへと圧縮ばねにカップリングされる。2つのピニオン・ギアの上の様々な数の歯を使用することによって、並進運動力を、ギア歯の数の比率によって増加させることが可能である。これは、自動注射器をリセットするために必要な使用者の労力を低減させるという利点を有する。
【0019】
プランジャが、駆動ばねからシリンジへ、および/またはストッパへ荷重を伝達するために配置可能であり、プランジャは、プランジャ・ラック・ギアを含み、プランジャ・ギアは、スライド・ドアが遠位方向において並進運動すると、プランジャが遠位方向に並進運動するような方式で、駆動ギアおよびプランジャ・ラック・ギアと噛み合い、スプラグ・クラッチが、スライド・ドアの干渉を受けることなく、プランジャの近位方向への並進運動を可能にする。スプラグ・クラッチは、プランジャ・ギアの中に配置可能である。プランジャが、注射のために、シリンジの中へ並進運動すると、注射後に使用済みのシリンジを取り外すことができるようにするために、プランジャは、シリンジの外へ再び並進運動しなければならない。スライド・ドアが、装填口を露出させるために遠位位置へ動くときに、スライド・ドアへの係合が、プランジャをシリンジの外へ遠位方向に並進運動させる。スプラグ・クラッチにより、スライド・ドアの干渉を受けることなく、針の挿入および注射のために、プランジャを確実に前進させることが可能になる。
【0020】
駆動ばねが、遠位側でハウジングに基礎を置き(grounded)、近位側で駆動カラーに当たっており、駆動カラーは、駆動ばねを圧縮するために、駆動リセット・ラックによって係合されるように配置可能である。駆動カラーは、圧縮中にリセット位置に到達すると、ハウジングにラッチ係合されるように配置され、リセット位置からの駆動ばねの解除を防止するようになる。トリガ・ボタンのような作動手段が、注射サイクルを始めるために、ハウジングから駆動カラーをラッチ解除するように配置される。
【0021】
トリガ・ボタンは、ハウジングの遠位端に配置可能であり、ハウジングから突出するように遠位方向に付勢され、かつ、駆動ばねを解除するために押し下げによって、ハウジングから駆動カラーをラッチ解除するために配置される。代替的に、トリガ・ボタンは、側方に配置される、または、自動注射器の実質的な長さを越えて延びる巻付け形スリーブ・ボタンの形状に配置可能である。
【0022】
プランジャ軸が、ハウジングの中をスライド可能に配置可能であり、ボスを有するプランジャ軸が、近位方向へのプランジャ軸の並進運動により、プランジャの上の近位停止部に当接するように配置され、スライド・ドアの上のリブが、近位方向へのスライド・ドアの並進運動により、プランジャ軸に対して当接するように配置される。プランジャ軸が、近位方向への並進運動により、パッケージ化シリンジに対して当接するように配置され、近位位置へのスライド・ドアの並進運動の終わり近くに、スライド・ドアがプランジャ軸を並進運動させるような方式になっており、プランジャ軸が、パッケージ化シリンジを作動位置へ並進運動させ、プランジャ軸が、プランジャを並進運動させ、プランジャの遠位ヘッドが、駆動ばねをプランジャへカップリングさせるために、駆動カラーを通過し、駆動カラーにラッチ係合されるような方式になっている。
【0023】
パッケージ化シリンジは、パッケージ・ハウジングを含むことが可能であり、シリンジが、パッケージ・ハウジングの中をスライド可能に配置される。パッケージ化シリンジを取り扱う間の針の不注意な露出を防止するために、パッケージ・ハウジングの中の少なくとも1つの弾性スナップ・アームが、パッケージ・ハウジングに対するシリンジの並進運動を防止するように配置可能である。プランジャ軸は、少なくとも1つの傾斜面を含むことが可能であり、傾斜面は、パッケージ化シリンジが作動位置にあるときに、プランジャ軸のがさらに並進運動すると、シリンジを解除するように、スナップ・アームを偏向するように配置される。したがって、スライド・ドアが閉められたとき、および自動注射器が発射する準備ができたときにだけ、針の挿入のためにシリンジおよび針は解除される。
【0024】
皮膚接触インターロック・スリーブが、ハウジングの中にスライド可能に嵌め込み式にされることが可能であり、近位方向に付勢され、近位位置において、ハウジングの近位端から突出するようになり、皮膚接触インターロック・スリーブが、皮膚接触インターロック・スリーブが近位位置にあるとき、すなわち、注射部位に対して押されていないとき、トリガ・ボタンの押し下げを防止するような方式で、トリガ・ボタンと相互作用するように配置され、インターロック・スリーブが遠位方向に押し下げによると、すなわち、注射部位に接触すると、皮膚接触インターロック・スリーブが、トリガ・ボタンから係合解除されるように配置されており、したがって、トリガ・ボタンの押し下げを可能にする。したがって、使用者は、注射サイクルをトリガするために、操作を順序通りに遂行することが要求され、したがって、不注意にトリガするリスクが低減される。
【0025】
後退ばねが、針挿入のためシリンジの並進運動により圧縮されるような方式で、かつ駆動カラーからの遠位ヘッドのラッチ解除によって、シリンジおよび針を後退させる方式で、パッケージ化シリンジ内に配置可能である。
【0026】
したがって、トリガ・ボタンが押されると、自動注射器が、使用者の介在なしに、針を挿入し、シリンジを完全に空にし、次いで、安全な位置へ針を後退させることとなる。
【0027】
ハウジングは、縮小直径部を含むことが可能であり、縮小直径部は、駆動カラーが、リセット位置とデカップリング位置との間にあるときに、プランジャの遠位ヘッドから駆動カラーがラッチ解除されるのを防止するように配置され、デカップリング位置では、ストッパが、シリンジの中の少なくともほとんど底に達している。ストッパおよびプランジャが底に達したが、駆動ばねが、駆動カラーを押し続けると、遠位ヘッドが、駆動カラーからラッチ解除され、それが、駆動カラーから独立して、シリンジの外へ遠位方向に並進運動することを可能にする方式になっている。上述のように、スライド・ドアが遠位位置に並進運動すると、プランジャが、シリンジの外へ並進運動することとなる。
【0028】
注射の終わりに、シリンジおよび針の後退を確実にトリガすることは、通常、シリンジが完全には空にされない(それは、望ましくない)ことにトレード・オフされなければならない。シリンジおよびストッパの製造公差に起因して、その移動距離(travel)の端部におけるストッパの正確な位置は再現可能ではない。結果的に、ストッパが、底に達するのが早過ぎて、後退が、全くトリガされないこととなる場合もある。
【0029】
他の場合では、ストッパが底に達する前に、後退がトリガされることとなり、したがって、残りの薬剤が、シリンジの中に残存する。
【0030】
この問題は、ストッパがシリンジの中で底に達する前の特定の量の時間または移動距離に、ハウジングから後退スリーブを解除することによって対処され得る。
【0031】
この目的のために、遠位ヘッドが、プランジャと嵌め込み式にされ、プランジャばねによって、プランジャに抗して付勢可能である。プランジャが注射のために前進すると、プランジャばねが圧縮される。
【0032】
ビスカスダンパは、ストッパがシリンジの底に達する直前に、注射中の駆動カラーの並進運動により、駆動カラーによって接触されるために配置可能である。ビスカスダンパが、駆動カラーの速度を落とすように配置され、プランジャばねが伸張し、ストッパが底に達するまでストッパを並進運動させることを可能にする。ビスカスダンパの位置が、縮小直径部に対して選択され、ビスカスダンパが駆動カラーによって完全に圧縮される少し前に、駆動カラーから遠位ヘッドをラッチ解除することを可能にする方式になっている。
【0033】
したがって、両方の課題が解決され、針を安全な位置へ確実に後退させ、かつ、シリンジを完全に空にする(それは、高価な薬物について、とりわけ望ましい)。また、シリンジを空にすることは、投薬量の精度にとっても重要である。
【0034】
好ましくは、自動注射器は、皮下注射または筋肉内注射のために使用可能であり、とりわけ、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス(Lovenox)、ワクチン、成長ホルモン、ペプチド・ホルモン、たんぱく質、抗体および複合糖質のうちの1つを送達するために使用可能である。
【0035】
本発明の適用可能なさらなる範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになろう。しかし、本発明の精神および範囲の中の様々な変更形態および修正形態が、この詳細な説明から、当業者に明らかになることとなるので、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられているということを理解すべきである。
【0036】
本発明は、以下に与えられた詳細な説明および添付の図面から、より完全に理解されることとなり、以下に与えられた詳細な説明および添付の図面は、例示としてのみ与えられており、したがって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】パッケージ化シリンジの挿入の間の、スライド・ドアが装着した再利用可能な自動注射器の等角図である。
図2】スライド・ドアを閉めている間の自動注射器を示す図である。
図3】スライド・ドアがほとんど完全に閉められ、シリンジが装填位置にある自動注射器を示す図である。
図4】シリンジが装填位置から作動位置へ並進運動している自動注射器を示す図である。
図5】シリンジに接触する前のプランジャ軸を示す詳細図である。
図6】プランジャ軸がシリンジに接触した詳細図である。
図7】駆動カラーが近位方向に駆動している自動注射器の遠位端を示す図である。
図8図5の異なる断面の自動注射器の別の長手方向断面図である。
図9】近位端の皮膚接触の間の自動注射器の遠位端および近位端の詳細を示す図である。
図10】トリガ・ボタンが押し下げされている遠位端を示す図である。
図11】注射部位の中へ針を挿入する間の自動注射器を示す図である。
図12】注射中の自動注射器を示す図である。
図13】プランジャ・ヘッドを通過して移動している駆動カラーの詳細図である。
図14】針を後退させている間の自動注射器を示す図である。
図15】注射後、パッケージ化シリンジを取り外している間の自動注射器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
対応する部分には、全図面において、同じ参照符号を付す。
【0039】
図1は、パッケージ化シリンジの挿入の間の、スライド・ドアが装着した再利用可能な自動注射器の等角図を示している。自動注射器1は、細長いハウジング2およびスライド・ドア3を含み、スライド・ドア3は、装填口12を露出させるために、使用者によって軸方向に並進運動することが可能であり、装填口12の中に、使い捨てのパッケージ化シリンジ4が挿入可能である。また、スライド・ドア3の並進運動は、さらなる操作のために自動注射器1をリセットする。
【0040】
パッケージ化シリンジ4は、中空注射針6およびストッパ7を備えたシリンジ5を含み、ストッパ7は、シリンジ5を封止し、注射のために液体薬剤Mを排出させるためのものである(詳細については図2を参照のこと)。実施形態に示されるパッケージ化シリンジ4は、パッケージ・ハウジング11をさらに含み、パッケージ・ハウジング11は、シリンジ5を取り囲み、シリンジ5とシリンジ・ハウジング11との間の相対的な軸方向の並進運動を可能にするように配置される。針6を無菌状態に維持するために、および針が機械的に損傷されることを防止するために、針6には、保護用ニードル・シース(図示されず)が装備される。
【0041】
パッケージ・ハウジング11の遠位端において、弾性スナップ・アーム29が、配置される(詳細については図5を参照のこと)。それぞれのスナップ・アーム29の上の内部ストップ30が、シリンジ・キャリア・スリーブ32の上の遠位フランジ31に対して当接するように配置され、それが近位方向Pに並進運動することを防止するような方式になっている。シリンジ・キャリア・スリーブ32は、シリンジ5を保持するために配置され、すなわち、シリンジ・キャリア・スリーブ32およびシリンジ5は、常に一緒に並進運動する。
【0042】
圧縮ばね8の形状の駆動手段8が、ハウジング2の遠位部に配置される。駆動手段8は、近位端Pにおいて、注射部位、例えば患者の皮膚の中へ、オリフィス13を通して針6を挿入するために、および薬剤Mの用量を注射するために近位方向Pにストッパ7を前進させるために、軸方向の並進運動を生じさせるように配置される。別の圧縮ばねが、注射が終わった後に安全な位置へ針6を後退させるために、後退ばね9として配置される。後退ばね9は、示される実施形態では、パッケージ化シリンジ4の一部であるが、同様に、再利用可能な自動注射器1の一部であることも可能である。
【0043】
駆動手段8からシリンジ4またはストッパ7への軸方向の運動が、プランジャ・ラック・ギア17を有するプランジャ16によって伝達される。駆動カラー18が、プランジャ16の周りに配置される。駆動手段8が、ハウジング2の遠位端に基礎を置き、駆動カラー18に当たっている。
【0044】
皮膚接触インターロック・スリーブ37が、ハウジング2の中にスライド可能に嵌め込み式にされ、インターロックばね38によって近位方向Pに付勢され、ハウジング2の近位端Pから突出するようになる。皮膚接触インターロック・スリーブ37は、ハウジング2全体のほとんどを通って、遠位端Dへ延びている(図8を参照のこと)。
【0045】
自動注射器1の操作の順序は、以下の通りである:
スライド・ドア3が、装填口12、すなわちハウジング2の中の開口部を露出させるために、遠位方向Dに、軸方向に並進運動する。使用者が、パッケージ化シリンジ4を装填口12の中へ挿入する(図1参照)。パッケージ化シリンジ4を装填口12の中へ挿入する前に、保護用ニードル・シースが、針から取外し可能である。同様に、自動注射器1は、パッケージ化シリンジ4の挿入後に、オリフィス13を通した保護用ニードル・シースの取り外しを可能にするように配置可能である。
【0046】
使用者が、自動注射器1を閉めるために、スライド・ドア3を近位方向Pに並進運動させる(図2を参照のこと)。スライド・ドア3の内部表面の上のドア・ラック・ギア14が、ハウジング2の中で旋回する駆動ギア15と噛み合っている。反対側では、また、駆動ギア15が、ハウジング2の内側に配置された駆動リセット・ラック10とも噛み合い、したがって、スライド・ドア3および駆動リセット・ラック10が、反対方向に移行するように配置される。したがって、スライド・ドア3が、近位方向Pに動くと、駆動リセット・ラック10が、遠位方向Dに動く。駆動リセット・ラック10の遠位端の近くには、止め部19が配置され、それは、駆動カラー18における外側ラッチ・アーム20に係合し、したがって、遠位方向Dに移行する駆動リセット・ラック10が、それと共に駆動カラー18を連れていき、駆動手段8を圧縮する。
【0047】
プランジャ・ギア21が、駆動ギア15およびプランジャ・ラック・ギア17と噛み合っているが、スライド・ドア3が近位方向Pに並進運動しているときに、スプラグ・クラッチ(図示されず)が、プランジャ・ラック・ギア17を通した駆動ギア15からのトルクの伝達を防止する。駆動ギア15は、異なる歯数の2つのギアから構成される。一方は、プランジャ・ギア21と噛み合い、もう一方は、ドア・ラック・ギア14と噛み合っている。駆動ギア15の2つのギアは、スプラグ・クラッチによってカップリングされ、スライド・ドア3からプランジャ16へ、一方向だけにトルクの伝達を可能にする。
【0048】
スライド・ドア3が、完全に閉められた位置に接近すると(図3を参照のこと)、駆動カラー18の上の外側ラッチ・アーム20が、ハウジング2の中の内部の第1のリブ22をスナップ式に通過する。スライド・ドア3が、この位置で解除された場合、駆動カラー18にかかる駆動手段8の力が、ハウジング2を通して消散される(resolved)こととなる。ここで、駆動カラー18は、リセット位置にある。この段階の前に、すなわち、駆動カラー18が内部の第1のリブ22をスナップ式に通過する前に、スライド・ドア3が解除された場合、スライド・ドア3が、駆動手段8によって、開けられるように駆動されることとなり、したがって、指が挟まれる危険を使用者に与えない。スライド・ドア3が、移動距離の端部に接近すると、外側ラッチ・アーム20が、トリガ・ボタン36の上のトリガ・ボタン・アーム35によって、内向きに変形し、トリガ・ボタン36は、自動注射器1の遠位端Dに配置される。トリガ・ボタン36は、トリガばね47によって遠位方向Dに付勢され、トリガばね47は、ハウジング2に、およびトリガ・ボタン36に当たっている。
【0049】
内向きの変形により、外側ラッチ・アーム20は、止め部19から離れることになる(図4を参照のこと)。外側ラッチ・アーム20が、第1のリブ22(図4を参照のこと)に対して当接し、リセット位置に戻るまで、駆動カラー18(もはや、止め部19に拘束されない)が、駆動ばね8の荷重の下、近位方向Pに並進運動する。皮膚接触インターロック37の上の外向きストップ39に対して当接しているそのトリガ・ボタン・アーム35に起因して、トリガ・ボタン36は、この状況において、まだ押し下げることはできない(図8を参照のこと)。
【0050】
同時に、スライド・ドア3が閉められているとき、スライド・ドア3の上の第2のリブ23が、プランジャ軸24と接触することになり、それと共にプランジャ軸24を近位方向Pに連れていく(図4を参照のこと)。プランジャ軸24が、パッケージ・ハウジング11に接触し、パッケージ化シリンジ4を、装填口12から作動位置に動かす(図4を参照のこと)。プランジャ軸24の上のボス25が、プランジャ16の中の長手方向溝26の中に係合する。ボス25が、並進運動の間に、溝26の近位端において、近位停止部27に対して当接しているので、プランジャ16が、スライド・ドア3と共に動かされる。プランジャ16が、ストッパ7に向かって動き、後の段階で駆動ばね8から必要とされる運動を低減させる。プランジャ軸24のさらなる移動は、プランジャ軸24の上の傾斜面28(図5を参照のこと)がパッケージ・ハウジング11の上のスナップ・アーム29を外向きに変形させることを可能にする。スナップ・アーム29が、外向きに変形すると、パッケージ・ハウジング11の中のストップ30も変形し、したがって、シリンジ5と共にシリンジ・キャリア・スリーブ32を解除し、パッケージ・ハウジング11に対して近位方向Pに並進運動させる(図6を参照のこと)。
【0051】
同時に、プランジャ16の中に嵌め込まれ、プランジャばね42によってプランジャ16に対して付勢される遠位ヘッド33が、駆動カラー18を通して引き出される。駆動カラー18の上の内側ラッチ・アーム34が、遠位ヘッド33の上のショルダ44によって外向きに変形し、遠位ヘッド33が駆動カラー18を通して引っ張られることを可能にする。これが、駆動ばね8からの駆動力が、プランジャ16に伝達されることを可能にする(図7を参照のこと)。
【0052】
スライド・ドア3を閉める最終的な運動によって、駆動カラー18の上の外側ラッチ・アーム20が、トリガ・ボタン・アーム35に対抗して駆動され、外側ラッチ・アーム20を内向きに変形させ、駆動カラー18から駆動リセット・ラック10をラッチ解除させる(図4を参照のこと)。
【0053】
次いで、駆動カラー18が、リセット位置へ戻り、外側ラッチ・アーム20が、駆動ばね8の力を通して、第1のリブ22に対して当接する。ここで、自動注射器1が、完全にリセットされる(図4を参照のこと)。
【0054】
注射をトリガするために、使用者が、注射部位、例えば患者の皮膚に対して、自動注射器1を押す。これが、皮膚接触インターロック37を、ハウジング2の中で遠位方向Dに並進運動させる。皮膚接触インターロック37が並進運動すると、トリガ・ボタン36の押し下げを防止している外向きストップ39が、ハウジング2の中の傾斜面40によって、内向きに変形しトリガ・ボタン36の押し下げを可能にする(図9を参照のこと)。この機構は、使用者が、自動注射器1を、それが注射部位に接触していないときに、偶発的に作動させることを防止する。
【0055】
使用者が、トリガ・ボタン36を押し下げ、それをハウジング2の中へ近位方向Pに並進運動させる。トリガ・ボタン36が動くと、トリガ・ボタン・アーム35が、駆動カラー18の上の傾斜の付いた外側ラッチ・アーム20に接触し、それらを内向きに変形させ、第1のリブ22との係合から外れさせ、駆動カラー18がハウジング2に対して自由に動くことを可能にする(図10を参照のこと)。駆動ばね8からの力が、駆動カラー18を通して、プランジャ16へ、およびストッパ7の上に伝達される。内側ラッチ・アーム34の上の内向きの第3のリブ43が、遠位ヘッド33の上のショルダ44に当たるように配置される。内側ラッチ・アーム34が、縮小直径を有するハウジング2のセクション45の中へじょうご形に通され(funnelled)、それにより、内側ラッチ・アーム34の外向きの変形が防止される。縮小直径部45の中の溝が、外側ラッチ・アーム20の並進運動を可能にするように配置される。シリンジ5に対するストッパ7の運動と反対方向の摩擦が、後退ばね9の力、および針の挿入の力よりも大きく、したがって、シリンジ5が、前進し、針6が注射部位の中へ挿入される。挿入深度は、ハウジング2の上の第4のリブ41に接触するフランジ31によって制御され、パッケージ・ハウジング11の開口部を通して延びる(図11を参照のこと)。
【0056】
フランジ31が、第4のリブ41に接触すると、駆動ばね8からの力が、プランジャばね42を圧縮させる。圧縮されると、ストッパ7にかかる力は、摩擦に打ち勝つのに十分となり、シリンジの内容物を空にさせる(図12を参照のこと)。
【0057】
注射中に、任意の場所で、自動注射器1が、注射部位から取り外された場合、皮膚接触インターロック37が、前方に飛び出すこととなり、針へのアクセスを防止する(図示されず)。
【0058】
投薬の終わりに向かって(すなわち、ストッパ7が、シリンジ5の中の底に達する直前に)、駆動カラー18の外側ラッチ・アーム20が、縮小直径部45の近位端の近くに配置されたビスカスダンパ46に接触する。ここで、駆動ばね8からの荷重が、ストッパ7とビスカスダンパ46との間で分配される。これは、プランジャばね42が延び、投薬を完了することを可能にする。ビスカスダンパ46によって提供される反力は、速度に依存し、したがって、確実に完全な用量が送達されるよう、適当な減衰係数が選択されなければならない。ビスカスダンパ46は、粘弾性発泡体材料によって実装可能である(図12を参照のこと)。
【0059】
ビスカスダンパ46が完全に圧縮されると、駆動カラー18の位置は、遠位ヘッド33へ力を伝達している内側ラッチ・アーム34が、もはや、縮小直径部45の中に制約されないような位置になる。内側ラッチ・アーム34が、半径方向外向きに変形し、遠位ヘッド33がカラーを通過することを可能にする(図13を参照のこと)。ここで、後退ばね9の力を消散している力は、皮膚の中の針6の摩擦だけであり、それは、2Nの範囲にあり、したがって、後退ばね9が、皮膚から針6を引き出す。最終的にシリンジ5は、パッケージ化シリンジ4のパッケージ・ハウジング11の中で、後退した場所に位置付けられる(図14を参照のこと)。これが、再利用可能な自動注射器1から一度取り外された針6への使用者のアクセスを防止する。スライド・ドア3が完全に開けられるときだけ、シリンジ5は、後退した位置にロックされる。ここで、注射が完了する。
【0060】
次いで、使用者が、自動注射器1を皮膚から取り外し、スライド・ドア3を遠位方向Dにスライドして開け、使用済みのパッケージ化シリンジ4を露出させる。スライド・ドア3が開けられるとき、スライド・ドア3の内部表面の上のドア・ラック・ギア14が、駆動ギア15と噛み合い、駆動ギア15は、スライド・ドア3の並進運動に伴って回転する。
【0061】
駆動ギア15が、プランジャ・ギア21と噛み合っており、プランジャ・ギア21が、プランジャ16の上のプランジャ・ラック・ギア17に力を伝達する。したがって、スライド・ドア3が開けられるとき、プランジャ16が、シリンジ5の中から引き出される。また、駆動ギア15は、駆動リセット・ラック10とも噛み合っており、したがって、スライド・ドア3が動くにつれて、駆動リセット・ラック10が、近位方向Pに動く。スライド・ドア3が、ほとんど完全に開いたとき、駆動リセット・ラック10の上の止め部19が、近位側に、外側ラッチ・アーム20をスナップ式に通過する(図15を参照のこと)。
【0062】
同時に、スライド・ドア3が、完全に開いた位置に接近すると、プランジャ16の上の長手方向溝26に係合される、プランジャ軸24の上のボス25が、自由移動距離の端部に到達する。プランジャ16のさらなる移動が、プランジャ軸24にカップリングされる。プランジャ軸24は、傾斜面28によって、パッケージ化シリンジ4に摩擦によりカップリングされる。したがって、パッケージ化シリンジ4が、発射位置から装填口12へ動かされる。パッケージ化シリンジ4が、装填口12の中に位置付けられると、シリンジ・シュラウドが、ケースワーク(casework)の中の第4のリブ41に接触することが可能である。第4のリブ41は、パッケージ化シリンジ4の遠位方向Dの運動の端部ストップ/限界を画成するように配置される。パッケージ化シリンジ4が、第4のリブ41にカップリングされると、プランジャ軸24の上の傾斜面28の摩擦によるカップリングが、打ち負かされ、シリンジ・キャリア・スリーブ32が動きを停止し、一方、プランジャ軸24およびプランジャ16は、スライド・ドア3の運動に駆動されて、シリンジ5から引き出され続ける。
【0063】
スライド・ドア3が完全に開けられると、パッケージ化シリンジ4が、装填口12へ戻され、プランジャ16およびプランジャ軸24が、使用済みのパッケージ化シリンジ4の取り外しを可能にするように十分に引き出される。このとき、駆動ばね8は、圧縮されない。
【0064】
パッケージ化シリンジ4の下の弾性機構が、図15に示されるように、近位方向Pへの移動距離の端部において、駆動リセット・ラック10の近位端によって接触され得る。したがって、パッケージ化シリンジ4が、取り外しを促進するように持ち上げられることが可能である。
【0065】
好ましくは、自動注射器1は、皮下注射または筋肉内注射のために使用可能であり、とりわけ、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチド・ホルモン、たんぱく質、抗体、および複合糖質のうちの1つを送達するために使用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 自動注射器
2 ハウジング
3 スライド・ドア
4 パッケージ化シリンジ
5 シリンジ
6 針
7 ストッパ
8 駆動手段、駆動ばね
9 後退ばね
10 駆動リセット・ラック
11 パッケージ・ハウジング
12 装填口
13 オリフィス
14 ドア・ラック・ギア
15 駆動ギア
16 プランジャ
17 プランジャ・ラック・ギア
18 駆動カラー
19 止め部
20 外側ラッチ・アーム
21 プランジャ・ギア
22 第1のリブ
23 第2のリブ
24 プランジャ軸
25 ボス
26 長手方向溝
27 近位停止部
28 傾斜面
29 スナップ・アーム
30 ストップ
31 フランジ
32 シリンジ・キャリア・スリーブ
33 遠位ヘッド
34 内側ラッチ・アーム
35 トリガ・ボタン・アーム
36 トリガ・ボタン
37 皮膚接触インターロック
38 インターロックばね
39 外向きストップ
40 内向きの傾斜面
41 第4のリブ
42 プランジャばね
43 第3のリブ
44 ショルダ
45 縮小直径部
46 ビスカスダンパ
47 トリガばね
D 遠位端、遠位方向
M 薬剤
P 近位端、近位方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15