(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挟持機構は、前記生体組織を挟持する一対の挟持片と、該各挟持片を前記挟持力が生じる方向または前記挟持力が解除される方向に付勢する付勢部を有する請求項6に記載の拡張器具。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の拡張器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の拡張器具(第1実施形態)の作動状態を示す側面図、
図2は、
図1(a)中の矢印A方向から見た図、
図3は、
図1(a)中の矢印B方向から見た図、
図4は、
図1(a)中のC−C線断面図、
図5は、
図1(a)中の一点鎖線で囲まれた領域[D]の拡大詳細部分縦断面図、
図6は、
図1(a)中のE−E線断面図、
図7および
図8は、それぞれ、
図1に示す拡張器具の使用方法を順に示す部分縦断面図である。以下では、
図1〜
図5中(
図11についても同様)の膣挿入部および尿道挿入部の長手方向に沿って、それぞれ、下側を「先端」、上側を「基端」と言う。また、
図7および
図8中(
図9についても同様)の膣挿入部および尿道挿入部の長手方向に沿って右上側または左上側を「先端」、左下側または右下側を「基端」と言う。
【0030】
図1に示す拡張器具1は、女性の尿失禁の治療、すなわち、インプラント(生体内留置器具)を生体内に埋設する際に、尿道腔100と膣腔200とに挿入して用いられる医療器具である。
【0031】
なお、尿道腔100と膣腔200とは、生体組織300を介して、互いに隣接している(
図7、
図8参照)。生体組織300には、尿道腔100を画成する壁部(尿道壁)や、膣腔200を画成する壁部(膣壁)等が含まれている。また、この生体組織300の厚さは、個人差はあるが、成人女性の場合、一般的に5〜20mm程度であると言われている。
【0032】
インプラントは、女性の尿失禁の治療のために、生体組織300に埋設されて、尿道を膣壁から離間する方向へ引っ張るようにして支持する器具である(
図8(f)、(g)参照)。これにより、尿道を支えることができ、よって、尿漏れを防止することができる。
【0033】
このインプラントとしては、例えば、可撓性を有する長尺物を用いることができる。本実施形態では、インプラントは、帯80で構成されている。この帯80は、「スリング」と呼ばれている。
【0034】
また、帯80の寸法は、特に限定されず、適宜設定されるものであるが、幅は、3〜15mm程度であることが好ましく、厚さは、0.2〜2mm程度であることが好ましい。
【0035】
また、帯80の構成材料としては、特に限定さないが、例えば、生体適合性を有する各種樹脂材料等を用いることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、インプラントは、1本の帯80で構成されているが、これに限らず、インプラントは、例えば、複数本の帯80で構成されていてもよい。
【0037】
また、インプラントとしては、帯80に限らず、例えば、糸、紐等の可撓性を有する他の長尺物を用いることができる。インプラントとして糸や紐を用いる場合で、その横断面形状が円形のものである場合、その直径は、0.2〜5mm程度であることが好ましい。
【0038】
図1に示すように、拡張器具1は、膣腔200内に挿入される長手形状(長尺状)の膣挿入部材2と、尿道腔100内に挿入される長手形状(長尺状)の尿道挿入部材3と、膣挿入部材2と尿道挿入部材3とを連結する連結手段4と、膣挿入部材2に設けられておりた膣側規制手段5と、尿道挿入部材3に設けられた尿道側規制手段6とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0039】
膣挿入部材2の形状は、長手形状であれば、特に限定されないが、
図1〜
図4に示すように、本実施形態では、板状をなしている。そして、膣挿入部材2の全長L
1は、特に限定されないが、例えば、50〜100mmであるのが好ましく、60〜90mmであるのがより好ましい。
【0040】
また、膣挿入部材2の幅w
1は、その先端方向に向かって漸減している。幅w
1(平均)は、特に限定されないが、例えば、10〜35mmであるのが好ましく、15〜30mmであるのがより好ましい。
【0041】
また、膣挿入部材2の厚さt
1も、その先端方向に向かって漸減している。厚さt
1(平均)は、特に限定されないが、例えば、2〜10mmであるのが好ましく、4〜8mmであるのがより好ましい。
【0042】
また、
図2〜
図4に示すように、膣挿入部材2は、その厚さ方向に貫通する貫通孔で構成された窓部24を有する。窓部24は、膣挿入部材2の湾曲外側の面(一方の面)23側から湾曲内側の面(他方の面)22側を視認可能な部分であり、穿刺や切開などの処置も可能な部分である。
【0043】
図3に示すように、膣挿入部材2の先端21は、丸みを帯びている。これにより、膣挿入部材2を膣腔200に挿入する際に、先端21で生体組織300等が損傷を受けるのを確実に防止することができ、患者に対する安全性を向上させることができる。
【0044】
図1に示すように、膣挿入部材2は、側面視で、一方向に円弧状に、すなわち、弓状に湾曲している。これにより、膣挿入部材2の湾曲内側の面22を患者の正面側に向けつつ膣腔200内に挿入したとき、膣腔200を広げて、術者の正面に術野を向けることができ、窓部24を介して視認し易くなり、穿刺や切開などの処置を行い易くできる。なお、膣挿入部材2の曲率としては、患者の体位によって適した範囲が異なるため、特に限定されないが、例えば、曲率半径で60〜240mmであるのが好ましい。なお、膣壁への穿刺や切開等の経膣的処置を頻繁に行わない場合は、術者の正面に術野を向ける必要がないため、膣挿入部材2は湾曲していなくてもよく、直線形状であってもよい。
【0045】
膣挿入部材2の湾曲内側には、尿道挿入部材3が配置されている。この尿道挿入部材3の形状は、長手形状であれば、特に限定されないが、本実施形態では、棒状をなし、さらに、膣挿入部材2と同じ方向に湾曲している。尿道挿入部材3の全長L
2は、例えば、50〜80mmであるのが好ましく、50〜60mmであるのがより好ましい。
【0046】
また、尿道挿入部材3と膣挿入部材2が、ほぼ平行曲線となるように、尿道挿入部材3の曲率は、膣挿入部材2の曲率に対して小さい曲率半径で設定されている。
【0047】
尿道挿入部材3が膣挿入部材2と同じ方向に同程度湾曲していることにより、尿道挿入部材3を尿道腔100に挿入する操作と、膣挿入部材2を膣腔200に挿入する操作とを容易に一括して行なうことができる。また、摩擦や押当てにともなう尿道壁あるいは膣壁への損傷を最小限に抑えられると言う利点もある。
【0048】
また、尿道挿入部材3は、その幅w
2および厚さt
2が長手方向に沿って一定である。幅w
2は、特に限定されないが、例えば、2〜7mmであるのが好ましく、3〜6mmであるのがより好ましい。厚さt
2は、特に限定されないが、例えば、2〜7mmであるのが好ましく、2〜5mmであるのがより好ましい。なお、尿道挿入部材3の幅w
2が厚さt
2よりも大きいと、尿道壁が幅方向により大きく伸展した形状に尿道腔100が変形するため、後述する連結手段4によって尿道挿入部材3と膣挿入部材2と離間させる際に、尿道挿入部材3と尿道壁の離間が生じにくいという利点がある。よって、尿道腔100への挿入が支障ない範囲で、尿道挿入部材3の幅w
2が厚さt
2よりも大きいほうが好ましい。
【0049】
また、尿道挿入部材3の先端33は、丸みを帯びている。これにより、尿道挿入部材3を尿道腔100に挿入する際に、先端33で生体組織300等が損傷を受けるのを確実に防止することができ、患者に対する安全性を向上させることができる。
【0050】
図1に示すように、連結手段4は、膣挿入部材2および尿道挿入部材3の基端部同士を連結し、これら部材同士を互いに接近・離間可能とするものである。
図6に示すように、連結手段4は、膣挿入部材2の湾曲内側の面22に尿道挿入部材3側に向かって突出して形成された一対の小片42と、尿道挿入部材3の湾曲外側の面34に膣挿入部材2側に向かって突出して形成された1つの長尺な突出部43とを有している。そして、一対の小片42の間の間隙41内に突出部43が挿入され、当該突出部43は、その長手方向に摺動可能に支持されることとなる。この突出部43が間隙41に対し移動する、すなわち、出没することにより、膣挿入部材2と尿道挿入部材3とを互いに接近・離間させることできる。これにより、膣挿入部材2の湾曲内側の面22と尿道挿入部材3の湾曲外側の面34との間の距離Dが変更される。従って、連結手段4では、一対の小片42と突出部43とが、距離Dを調節する調節手段としても機能している。患者には個人差があり、尿道腔100と膣腔200との間の生体組織300の厚さには患者によって異なる場合があるので、この調節手段により、適宜、膣挿入部材2と尿道挿入部材3との間の距離Dを患者に合うように調節することができる。
【0051】
なお、距離Dの調整範囲としては、生体組織300および肉厚となった拡張部301(
図7参照)の厚さに合うように、例えば、5〜35mmであるのが好ましい。
【0052】
また、突出部43には、距離Dを示す目盛り44が付されている。これにより、距離Dを正確に把握することができる。
【0053】
また、拡張器具1は、ボルト(雄ネジ)45を有している。
図6に示すように、ボルト45は、一対の小片42のうちの一方の小片42に形成された雌ネジ421に螺合する。
【0054】
そして、ボルト45を所定方向に回転させる、すなわち、ボルト45を締めると、そのボルト45の先端が突出部43に圧接し、突出部43の各小片42に対する移動が阻止される。これにより、距離Dを一時的に一定に維持することができる。
【0055】
また、ボルト45を前記と逆方向に回転させる、すなわち、ボルト45を緩めると、そのボルト45の先端が突出部43から離間し、突出部43の各小片42に対する移動が可能となる。これにより、距離Dが可変となる。
【0056】
このように、連結手段4は、ボルト(雄ネジ)45と、小片42に形成された雌ネジ421とで構成され、距離Dを一時的に一定に維持するロック機構を有するものとなっている。
【0057】
なお、ボルト45が緩められている状態では、突出部43は一対の小片42からはずれるようになっている。このため、膣挿入部材2と尿道挿入部材3を別々に膣腔200と尿道腔100に挿入してから、突出部43を一対の小片42に連結することも可能である。それから、患者の膣腔200あるいは尿道腔100の大きさに膣挿入部材2あるいは尿道挿入部材3の寸法が合わない場合には、該当する挿入部材だけを一旦抜去してから寸法が異なるものを挿入する、つまり挿入部材のどちらかだけを選んで交換することも可能である。
【0058】
なお、連結手段4を構成する各部、膣挿入部材2および尿道挿入部材3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、ステンレス鋼等のような各種金属材料、または、各種樹脂材料を用いることができる。
【0059】
膣側規制手段5は、膣腔200に挿入された膣挿入部材2の生体組織300に対する位置関係を規制するものである。
図3〜
図5に示すように、膣側規制手段5は、膣挿入部材2の内部に形成された内部空間51と、膣挿入部材2の湾曲内側の面22(尿道挿入部材3側に臨む面)に開口して形成された複数個の吸引口52と、膣挿入部材2の基端面25から突出形成されたポート53a、53b、53cとを有している。
【0060】
図4に示すように、内部空間51は、内部空間51内に設けられた壁部511を介して複数の部屋(部屋51a、51b、51c)に区画されている。部屋51aは、
図4中の左側に配置され、部屋51cは、
図4中の右側に配置され、部屋51bは、部屋51aと部屋51cとの間であって、
図4中の上側に配置されている。
【0061】
図3に示すように、複数個の吸引口52は、窓部24を囲むように、膣挿入部材2の湾曲内側の面22の面方向に行列状に配置されている。そして、
図4に示すように、これらの吸引口52には、部屋51aに連通する吸引口(以下この吸引口を「吸引口52a」と言う)と、部屋51bに連通する吸引口(以下この吸引口を「吸引口52b」と言う)と、部屋51cに連通する吸引口(以下この吸引口を「吸引口52c」と言う)とがある。
【0062】
ポート53a、53b、53cは、それぞれ、管体で構成され、ポート53aが部屋51aに連通し、ポート53bが部屋51bに連通し、ポート53cが部屋51cに連通している。
図5に示すように、ポート53a、53b、53cは、部屋51a、51b、51c(内部空間51)の3室を互いに独立して別々に吸引することができる吸引手段としてのポンプ20に接続されている。そして、この接続状態でポンプ20を作動させることができる。このとき、各吸引口52では、それぞれ、吸引力F
1が生じる。この吸引力F
1により、生体組織300を膣挿入部材2の湾曲内側の面22に密着するように引き寄せることができる。これにより、膣腔200に挿入された膣挿入部材2は、湾曲内側の面22の生体組織300に対する位置関係が確実に規制され、すなわち、膣挿入部材2の長手方向、幅方向および厚さ方向のいずれの方向の位置決めがなされ、よって、その規制された位置からずれるのを確実に防止することができる。
【0063】
ここで、仮にポンプ20の作動時に、例えば患者の不意の動きによって、複数ある吸引口52aのうちの一部の吸引口52aが生体組織300から離間してしまった場合、当該離間した吸引口52aを介して部屋51aが大気に連通し、すなわち、大気解放され、気密性が損なわれてしまい、各吸引口52aでの吸引力F
1がそれぞれ低下することが考えられる。しかしながら、拡張器具1では、部屋51a、51b、51cがそれぞれ壁部511により独立しているため、部屋51a内の空気が漏れたとしても、残りの部屋51b、51cでは、気密性が確保されている。これにより、部屋51bに連通する各吸引口52bでの吸引力F
1、部屋51cに連通する各吸引口52cでの吸引力F
1は、それぞれ、低下するのが確実に防止され、よって、膣挿入部材2の生体組織300に対する位置関係を十分に規制することができる。
【0064】
なお、内部空間51における部屋の区画数は、本実施形態では3つであったが、これに限定されず、例えば、1つ、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0065】
また、各部屋に連通する吸引口52の形成数は、本実施形態では複数個であったが、これに限定されず、例えば、1つであってもよい。
【0066】
また、ポンプ20に接続されるポートの設置数は、本実施形態では3本であったが、これに限定されず、例えば、1本、2本または4本以上であってもよい。
【0067】
尿道側規制手段6は、尿道腔100に挿入された尿道挿入部材3の生体組織300に対する位置関係を規制するものである。
図1に示すように、尿道側規制手段6は、尿道挿入部材3の先端部に設置された拡張・収縮可能なバルーン61と、尿道挿入部材3内に形成され、バルーン61を拡張・収縮させる作動流体が通過する流路となるルーメン62と、尿道挿入部材3の湾曲内側の面35に突出形成され、ルーメン62と連通するポート63とを有している。
【0068】
バルーン61は、筒状に成形された膜で構成され、その基端部および先端部がそれぞれ尿道挿入部材3の外周面に気密的に固着されることにより設置されている。なお、ルーメン62は、その先端部がバルーン61内に開口している。そして、ルーメン62から作動流体が供給されると、バルーン61は、例えばボール状に拡張する。バルーン61は、拡張器具1の使用時に患者の膀胱400内に挿入され、拡張された状態で膀胱頚部401に引っ掛かる。これにより、生体組織300に対して、尿道挿入部材3の長手方向の位置を規制することができ、よって、尿道挿入部材3が尿道腔100から不本意に抜去されるのを確実に防止することができる。
【0069】
なお、バルーン61の尿道挿入部材3に対する固着方法としては、特に限定されず、例えば、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法等が挙げられる。
【0070】
バルーン61の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂またはこれを含むポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはそれに架橋処理を施したもの(特に、電子線照射により架橋させたもの)、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610等のポリアミド系樹脂またはこれを含むポリアミドエラストマー、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはこれらに架橋処理を施したもの、またはこれらのうちの少なくとも一種を含むポリマーブレンド、ポリマーアロイ等の材料が挙げられる。
【0071】
ルーメン62は、尿道挿入部材3を貫通するように形成されている。このルーメン62の先端部は、前述したようにバルーン61内に開放し、基端部は、尿道挿入部材3の湾曲内側の面35に開放している。
【0072】
また、ポート63は、管体で構成され、ルーメン62に連通している。ポート63には、例えば図示しないシリンジのようなバルーン拡張器具を接続することができる。そして、その接続状態でバルーン拡張器具を作動させて、当該バルーン拡張器具から供給される作動流体をルーメン62を介してバルーン61の内部に送り込み、あるいは、作動流体を抜き取り、バルーン61の拡張・収縮を行なう。なお、バルーン拡張用の作動流体としては、例えば、生理食塩水等のような液体や、空気等のような気体等を用いることができる。なお、一般に市販されている導尿カテーテル(フォーリー・カテーテル)のバルーン拡張ポートと同様に、ポート63には、シリンジのようなバルーン拡張器具が接続されたときだけ流路が開通する弁体(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0073】
次に、拡張器具1の使用方法の一例、すなわち、女性の尿失禁の治療のために、帯80を生体内に埋設するまでの手順について、
図7、
図8を参照しつつ説明する。
【0074】
[1] まず、拡張器具1を用意する。このとき、拡張器具1は、バルーン61は、未だ拡張しておらず、収縮している。また、予め生理食塩水が充填されたシリンジ(図示せず)も用意する。生理食塩水は、バルーン61を作動させる作動流体して使用される。
【0075】
そして、
図7(a)に示すように、拡張器具1を患者に装着する。すなわち、拡張器具1の膣挿入部材2を膣腔200内に挿入し、尿道挿入部材3を尿道腔100内に挿入する。この挿入は、バルーン61が膀胱400内に位置するまで行なわれる。
【0076】
また、この挿入に際し、必要に応じて、連結手段4を操作して、膣挿入部材2と尿道挿入部材3との間の距離Dを調節する。換言すれば、必要に応じて、ボルト45を緩む方向に回転させ、膣挿入部材2と尿道挿入部材3とを接近させるかまたは離間させる。このとき、膣挿入部材2が膣腔200に挿入可能であり、尿道挿入部材3も尿道腔100に挿入可能な程度に距離Dを調節する。距離Dの調節後、ボルト45を締まる方向に回転させ、距離Dを一旦維持する。なお、前述したとおり、あらかじめボルト45を緩む方向に回転させておき、膣挿入部材2と尿道挿入部材3を別々に膣腔200と尿道腔100に挿入してから、突出部43を一対の小片42に連結することも可能である。
【0077】
その後、尿道挿入部材3に設けられているポート63に前記シリンジを接続し、当該シリンジを操作して、生理食塩水をルーメン62内に供給する。これにより、バルーン61が拡張して、膀胱400の膀胱頚部401に係合する。これにより、尿道腔100に対する尿道挿入部材3の長手方向の位置が規制され、よって、尿道挿入部材3が尿道腔100から不本意に抜去されるのが防止される。
【0078】
また、膣挿入部材2に設けられているポート53a〜53cと、ポンプ20とを接続する。このとき、ポンプ20は、未だ停止している。
【0079】
[2] 次に、
図7(b)に示すように、ボルト45を再度緩めて、膣挿入部材2を、その湾曲内側の面22が生体組織300当接するまで、尿道挿入部材3に対して接近させる。
【0080】
その後、ポンプ20を作動させる。これにより、前述したように膣挿入部材2に形成された各吸引口52でそれぞれ吸引力F
1が生じて、膣挿入部材2の生体組織300に対する位置関係が確実に規制される。
【0081】
[3] 次に、
図7(c)に示すように、膣挿入部材2を尿道挿入部材3に対して徐々に離間させる。このとき、吸引力F
1(膣側規制手段5)により、膣挿入部材2が生体組織300から離間するのが確実に防止されている。
【0082】
そして、この離間操作により、当該操作方向(離間方向)に向かって生体組織300が強制的に引張られる(矯正される)。これにより、生体組織300は、尿道腔100と膣腔200とが互いに離間する方向に広げられた、すなわち、肉厚となった拡張部301となる。
【0083】
[4] 次に、
図8(d)に示すように、手術用メス(図示せず)および穿刺針(図示せず)を用いて、拡張部301を剥離し、その剥離した拡張部301と体外とを連通させる穿刺孔302を形成する。この剥離操作と穿刺操作とがそれぞれ施される拡張部301は、これらの操作を行なうのが十分な程度に、拡張している。従って、拡張器具1では、拡張部301に対する外科的処置(本実施形態では剥離操作および穿刺操作)を施す際、その処置を容易かつ確実に行なうことができる。
【0084】
[5] 次に、
図8(e)に示すように、帯80を例えばガイドワイヤ(図示せず)を用いて穿刺孔302に通す。帯80は、尿道壁(拡張部301)を引掛けた状態で、その両端部がそれぞれ穿刺孔302から体外に突出した状態となっている。
【0085】
[6] 次に、
図8(f)に示すように、拡張器具1を患者から取り外す。すなわち、拡張器具1の膣挿入部材2を膣腔200から抜去、尿道挿入部材3を尿道腔100から抜去する。この抜去操作時には、ポンプ20の作動を停止させるとともに、バルーン61を収縮させる。なお、拡張器具1が患者から取り外されると、生体組織300は、拡張部301が解消される、すなわち、元の状態(形状)に復元する。
【0086】
そして、帯80の体外に突出した両端部をそれぞれ所定の力で引っ張る。これにより、帯80の張力により、尿道壁が膣壁から離間する方向に引っ張られ、帯80でその尿道が支持される(
図8(g)参照)。
その後、帯80の不要な部分を切除し、所定の閉創等を行なって手技を終了する。
【0087】
なお、拡張器具1は、本実施形態では女性の尿失禁の治療のための埋設可能なインプラントを生体内に埋設する際に用いられる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、骨盤臓器脱を含む骨盤内臓器の疾患の治療など、その他の用途にも用いられる。
【0088】
<第2実施形態>
図9は、本発明の拡張器具(第2実施形態)の使用状態を示す図、
図10は、
図9中の矢印G方向から見た図である。
【0089】
以下、これらの図を参照して本発明の拡張器具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0090】
本実施形態は、尿道側規制手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0091】
図9、
図10に示すように、本実施形態では、拡張器具1の尿道側規制手段6Aは、尿道挿入部材3の内部にルーメン62と独立して形成され、空気が通過する流路となるルーメン64と、尿道挿入部材3の湾曲外側の面34(膣挿入部材2側に臨む面)に開口して形成され、ルーメン64と連通する複数(本実施形態では4つ)の補助吸引口65と、尿道挿入部材3に突出形成され、ルーメン64と連通するポート66とをさらに有している。
【0092】
ルーメン64は、尿道挿入部材3を貫通するように形成されている。
各補助吸引口65は、それぞれ、ルーメン64の形成方向(尿道挿入部材3の長手方向)に沿って配置されている。
【0093】
ポート66は、管体で構成され、ルーメン64に連通している。ポート66には、例えばポンプ20が接続される。そして、この接続状態でポンプ20を作動させて、ルーメン64内を吸引することができる。このとき、各補助吸引口65では、それぞれ、吸引力F
2が生じる。この吸引力F
2により、生体組織300を尿道挿入部材3の湾曲外側の面34に密着するように引き寄せることができる。これにより、尿道腔100に挿入された尿道挿入部材3は、湾曲外側の面34の生体組織300に対する位置関係が確実に規制され、すなわち、尿道挿入部材3の長手方向、幅方向および厚さ方向のいずれの方向の位置決めがなされ、よって、その規制された位置からずれるのを確実に防止できる。
【0094】
ところで、膣側規制手段5の作動させたまま膣挿入部材2を尿道挿入部材3から離間させると、例えばその離間速度が速過ぎたり、離間距離が長過ぎたりすると、生体組織300の尿道腔100を画成する部分もその方向に引張られて(
図9中の二点鎖線で示した部分参照)、結果的に、生体組織300には、拡張部301が形成されなさそうになる。しかしながら、本実施形態では、生体組織300に対する過剰な引張りで生体組織300がこのように不本意に変形するのを、各補助吸引口65での吸引力F
2によって、確実に防止または規制することができる。これにより、拡張部301をより確実に形成することができる。
【0095】
なお、補助吸引口65の形成数は、本実施形態では4つであるが、これに限定されず、例えば、1つ、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
【0096】
<第3実施形態>
図11は、本発明の拡張器具の第3実施形態を示す側面図、
図12は、
図11中の矢印H方向から見た図(挟持機構の作動状態を示す図)である。
【0097】
以下、これらの図を参照して本発明の拡張器具の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0098】
本実施形態は、膣側規制手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0099】
図11、
図12に示すように、本実施形態では、膣側規制手段5Aは、生体組織300を膣腔200側から挟持する(摘まむ)一対の挟持片を有する複数(本実施形態では2つ)の挟持機構(挟持具)54を備えている。各挟持機構54は、膣挿入部材2に形成された貫通孔で構成された装着部26に挿入して装着され、膣挿入部材2にその長手方向に沿って間隔をおいて配置されている。各挟持機構54は、同じ構成であるため、以下、基端側に配置された挟持機構54について代表的に説明する。
【0100】
図12に示すように、挟持機構54は、生体組織300を挟持する一対の挟持片55と、各挟持片55を一括して付勢する付勢部材(付勢部)としての圧縮コイルバネ56とを有している。
【0101】
各挟持片55は、それぞれ、長尺体で構成され、その長手方向の中央部付近同士が回動可能に連結されている。そして、各挟持片55の尿道挿入部材3側の一端部551が互いに対向する方向に臨んでいる。これにより、各挟持片55は、一端部551同士が接近(
図12(a)参照)・離間(
図12(b)参照)することができ、接近した際に生体組織300を挟持する挟持力が得られる。
【0102】
また、各挟持片55には、それぞれ、ガイドピン553が突出形成されており、膣挿入部材2に設けられたガイドレール27を摺動することができる。ガイドピン553がガイドレール27を摺動することにより、挟持機構54は、装着部26に装着された状態で、各挟持片55同士が安定して接近・離間することができる。
【0103】
圧縮コイルバネ56は、各挟持片55の一端部551と反対側の他端部552同士の間に配置されている。これにより、
図12(a)に示す初期状態で、各挟持片55を挟持力が解除される、図中の矢印方向に付勢することができ、各挟持片55の一端部551同士が開いた状態となる。そして、
図12(b)に示すように、圧縮コイルバネ56の付勢力に抗して、各挟持片55の他端部552を押圧操作すると、一端部551同士が閉じた状態となり、挟持力が得られる、すなわち、生体組織300を挟持することができる。そして、押圧操作によって得られた挟持力を維持するために、一般的な手術用鉗子で採用されているものと同様なロック機構(図示せず)を他端部552に設けることが好ましい。
【0104】
以上のような構成の膣側規制手段5Aでは、膣挿入部材2が膣腔200内に挿入された状態で、各挟持片55を操作することにより、生体組織300を膣腔200側から挟持することができる。これにより、生体組織300を膣挿入部材2に引き寄せて、膣挿入部材2の生体組織300に対する位置関係を規制することができる。
【0105】
そして、この位置関係を維持したまま膣挿入部材2を尿道挿入部材3から離間させることにより、その離間方向に向かって生体組織300が強制的に引張られる。これにより、生体組織300が拡張部301となり、当該拡張部301に対する外科的処置(剥離操作および穿刺操作)を施す際、その処置を容易かつ確実に行なうことができる。
【0106】
なお、挟持機構54の配置数は、本実施形態では2つであるが、これに限定されず、例えば、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0107】
<第4実施形態>
図13は、本発明の拡張器具(第4実施形態)における挟持機構の作動状態を示す図である。
【0108】
以下、この図を参照して本発明の拡張器具の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、挟持機構の構成が異なること以外は前記第3実施形態と同様である。
【0109】
図13に示すように、本実施形態では、膣側規制手段5Bの挟持機構54は、それぞれ、各挟持片55を、挟持力が生じる方向に付勢する付勢部材として、「C」字状(リング状)をなすバネ57を有している。バネ57は、その一端571が2つの挟持片55のうちの一方の挟持片55に係合し、他端572が2つの挟持片55のうちの他方の挟持片55に係合している。これにより、
図13(a)に示す初期状態で、各挟持片55を挟持力が生じる、図中の矢印方向に付勢することができ、各挟持片55の一端部551同士が閉じた状態となる。これにより、生体組織300を挟持して膣挿入部材2に引き寄せて、膣挿入部材2の生体組織300に対する位置関係を規制することができる。
【0110】
そして、この位置関係を維持したまま膣挿入部材2を尿道挿入部材3から離間させることにより、その離間方向に向かって生体組織300が強制的に引張られる。これにより、生体組織300が拡張部301となり、当該拡張部301に対する外科的処置(剥離操作および穿刺操作)を施す際、その処置を容易かつ確実に行なうことができる。
【0111】
一方、
図13(b)に示すように、バネ57の付勢力に抗して、各挟持片55の他端部552を押圧操作すると、一端部551同士が開いた状態となり、挟持力が解除される。
【0112】
<第5実施形態>
図14は、本発明の拡張器具の第5実施形態を示す部分縦断面側面図である。
【0113】
以下、この図を参照して本発明の拡張器具の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0114】
本実施形態は、膣側規制手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0115】
図14に示すように、本実施形態では、各吸引口52は、それぞれ、突出部521を有している。この突出部521は、膣挿入部材2の湾曲内側の面22から尿道挿入部材3側(
図4中では左側)に向かって突出し、湾曲内側の面22側から見た形状がリング状をなす部分である。
【0116】
このような突出部521が設けられていることにより、膣挿入部材2を生体組織300に押し当てた際に、突出部521が生体組織300(膣壁)との密着性を高め、その結果、より安定して内部空間51内の気密性を確保することができる。
【0117】
なお、各吸引口52は、それぞれ、図示の構成では突出部521を有しているが、これに限定されず、これらの吸引口52のうちの一部の吸引口52が、突出部521が省略されたものであってもよい。
【0118】
<第6実施形態>
図15は、本発明の拡張器具の第6実施形態を示す側面図である。
【0119】
以下、この図を参照して本発明の拡張器具の第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0120】
本実施形態は、尿道挿入部材の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0121】
図15に示すように、本実施形態では、尿道挿入部材3は、その一部、すなわち、長手方向の途中が、側面視で波形状に変形した変形部36を有している。そして、尿道挿入部材3が尿道腔100に挿入された際に、尿道腔100の変形部36に臨む部分を、尿道腔100と膣腔200が離間する方向に広げることができる。これにより、生体組織300に拡張部301がより確実に形成される。
【0122】
以上、本発明の拡張器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、拡張器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0123】
また、本発明の拡張器具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。