【実施例】
【0139】
(実施例1)
臍及び胎盤組織からの細胞の誘導
この実施例は、胎盤組織及び臍帯組織由来の調製細胞を説明する。臍帯及び胎盤は、満期妊娠又は早期妊娠のいずれかの出産時に得た。細胞は、臍及び胎盤組織の、5つの別個のドナーから採取した。細胞単離の種々の方法を:1)幹細胞に共通の特性である、異なる表現型を有する細胞へと分化する潜在能力、又は2)他の細胞及び組織に有用な栄養因子を提供する潜在能力、を有する細胞をもたらす、それらの方法の能力に関して試験した。
【0140】
方法及び材料
臍細胞の単離。臍帯は、National Disease Research Interchange(NDRI(Philadelphia,PA))から得た。それらの組織は、正常分娩の後に得たものであった。細胞単離プロトコルを、層流フード内で、無菌的に実行した。血液及び残渣を除去するために、臍帯を、抗真菌剤及び抗生物質(100単位/ミリリットルのペニシリン、100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン、0.25マイクログラム/ミリリットルのアンホテリシンB)の存在下で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen(Carlsbad,CA))中で洗浄した。次いで、それらの組織を、150cm
2の組織培養プレート内で、50ミリリットルの培地(DMEM−低グルコース又はDMEM−高グルコース;Invitrogen)の存在下、組織が微細なパルプ状へと細断されるまで、機械的に解離させた。細断した組織を、50ミリリットル円錐管に移した(1つの管当り約5グラムの組織)。次いで、それぞれが上述のような抗真菌剤及び抗生物質を含有する、DMEM−低グルコース培地若しくはDMEM−高グルコース培地中で、この組織を消化させた。一部の実験では、コラゲナーゼとディスパーゼとの酵素混合物を使用した(「C:D」;DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ(Sigma(St Louis,MO)、500単位/ミリリットル;及びディスパーゼ(Invitrogen)、50単位/ミリリットル)。他の実験では、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼの混合物(「C:D:H」)を使用した(DMEM−低グルコース中、コラゲナーゼ、500単位/ミリリットル;ディスパーゼ、50単位/ミリリットル;及びヒアルロニダーゼ(Sigma)、5単位/ミリリットル)。これらの組織、培地、及び消化酵素を収容する円錐管を、225rpmの軌道振盪器(Environ(Brooklyn,NY))内で2時間、37℃でインキュベートした。
【0141】
消化の後、150×gで5分間、組織を遠心分離して、上清を吸引した。ペレットを、20ミリリットルの増殖培地(DMEM:低グルコース(Invitrogen))、15パーセント(v/v)ウシ胎児血清(FBS;規定ウシ血清;ロット#AND18475;Hyclone(Logan,UT))、0.001%(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma)、1ミリリットル/100ミリリットルの上述のような抗生物質/抗真菌剤中に、再懸濁させた。この細胞懸濁液を、70マイクロメートルのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通して濾過した。増殖培地を含む、追加的な5ミリリットルの洗液を、濾過器に通過させた。次いで、その細胞懸濁液を、40マイクロメートルのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通過させ、増殖培地の追加的な5ミリリットルの洗液を、続けて通過させた。
【0142】
この濾液を、増殖培地(総容積50ミリリットル)中に再懸濁させ、150×gで5分間、遠心分離した。上清を吸引して、50ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。このプロセスを、更に2回繰り返した。
【0143】
最終的な遠心分離の後、上清を吸引して、5ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー染色を使用して、生存細胞の数を判定した。次いで、標準条件下で、細胞を培養した。
【0144】
臍帯から単離した細胞を、上述のような抗生物質/抗真菌剤を有する増殖培地中、ゼラチンコーティングT−75cm
2フラスコ(Corning Inc.(Corning,NY))上に、5,000細胞/cm
2で播種した。2日後に(様々な実験では、細胞は、2〜4日インキュベートされた)、フラスコから、消耗培地を吸引した。PBSで細胞を3回洗浄して、残渣及び血液由来細胞を除去した。次いで、細胞に、増殖培地を補充して、集密まで増殖させ(継代数0から約10日)、継代数1に至らせた。その後の継代(継代数1から継代数2へ、など)の際には、細胞は、4、5日で準集密(75〜85パーセントの集密度)に到達した。これらの後続の継代に関しては、細胞を、5000細胞/cm
2で播種した。細胞は、5パーセントの二酸化炭素及び大気酸素を有する加湿インキュベーター内で、37℃で増殖させた。
【0145】
胎盤細胞の単離。胎盤組織は、NDRI(Philadelphia,PA))から得た。それらの組織は、妊婦由来のものであり、通常の外科的分娩時に得たものであった。胎盤細胞を、臍細胞の単離に関して説明されたように、単離した。
【0146】
以下の実施例は、胎盤組織からの、母体由来細胞及び新生児由来細胞の別個の集団の単離に適用される。
【0147】
細胞単離プロトコルを、層流フード内で、無菌的に実行した。胎盤組織を、抗真菌剤及び抗生物質(上述のような)の存在下で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen(Carlsbad,CA))中で洗浄して、血液及び残渣を除去した。次いで、その胎盤組織を、3つの切片:上層(新生児側又は新生児態様)、中間層(新生児と母体との混合細胞単離)、及び下層(母体側又は母体態様)へと切り分けた。
【0148】
分離した切片を、個別に、抗生物質/抗真菌剤を有するPBS中で数回洗浄して、血液及び残渣を更に除去した。次いで、各切片を、150cm
2の組織培養プレート内で、50ミリリットルのDMEM/低グルコースの存在下、微細なパルプへと機械的に解離させた。このパルプを、50ミリリットル円錐管に移した。各管は、約5グラムの組織を収容するものとした。抗真菌剤及び抗生物質(100U/ミリリットルのペニシリン、100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン、0.25マイクログラム/ミリリットルのアンホテリシンB)及び消化酵素を含有する、DMEM−低グルコース培地若しくはDMEM−高グルコース培地中で、この組織を消化させた。一部の実験では、DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ(Sigma(St Louis,MO)を500単位/ミリリットル、及びディスパーゼ(Invitrogen)を50単位/ミリリットルで含有する、コラゲナーゼとディスパーゼとの酵素混合物(「C:D」)を使用した。他の実験では、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼの混合物(「C:D:H」)を使用した(DMEM−低グルコース中、コラゲナーゼ、500単位/ミリリットル;ディスパーゼ、50単位/ミリリットル;及びヒアルロニダーゼ(Sigma)、5単位/ミリリットル)。これらの組織、培地、及び消化酵素を収容する円錐管を、225rpmの軌道振盪器(Environ(Brooklyn,NY))内で、37℃で2時間インキュベートした。
【0149】
消化の後、150×gで5分間、組織を遠心分離して、生じた上清を吸引除去した。ペレットを、ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンBを有する20ミリリットルの増殖培地中に、再懸濁させた。この細胞懸濁液を、70マイクロメートルのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通して濾過し、追加的な5ミリリットルの増殖培地を有する洗液を、続けて通過させた。細胞懸濁液の全体を、40マイクロメートルのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通過させ、追加的な5ミリリットルの増殖培地を、洗液として、続けて通過させた。
【0150】
この濾液を、増殖培地(総容積50ミリリットル)中に再懸濁させ、150×gで5分間、遠心分離した。上清を吸引して、50ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。このプロセスを、更に2回繰り返した。最終的な遠心分離の後に、上清を吸引して、5ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー排除試験を使用して、細胞計数を判定した。次いで、標準条件で、細胞を培養した。
【0151】
LIBERASE(商標)細胞単離。LIBERASE(商標)(Boehringer Mannheim Corp.(Indianapolis,IN))(2.5ミリグラム/ミリリットルのBlendzyme 3;Roche Applied Sciences(Indianapolis,IN))及びヒアルロニダーゼ(5単位/ミリリットル、Sigma)を有する、DMEM−低グルコース培地中で、臍組織から細胞を単離した。組織の消化、及び細胞の単離は、上記の他のプロテアーゼ消化に関する説明と同様であるが、C:D又はC:D:H酵素混合物の代わりに、LIBERASE(商標)/ヒアルロニダーゼ混合物を使用した。LIBERASE(商標)を使用する組織の消化は、容易に増殖する、臍組織及び胎盤組織由来の細胞集団の単離をもたらした。
【0152】
他の酵素の組合せを使用する細胞単離。種々の酵素の組合せを使用して、臍帯から細胞を単離するための手順を比較した。消化に関して比較する酵素には、i)コラゲナーゼ;ii)ディスパーゼ;iii)ヒアルロニダーゼ;iv)コラゲナーゼ:ディスパーゼ混合物(C;D);v)コラゲナーゼ:ヒアルロニダーゼ混合物(C:H);vi)ディスパーゼ:ヒアルロニダーゼ混合物(D:H);vii)コラゲナーゼ:ディスパーゼ:ヒアルロニダーゼ混合物(C:D:H)を含めた。これらの種々の酵素消化条件を使用して、細胞単離の差異を観察した(表1−1)。
【表1】
凡例:+=良好、++=非常に良好、+++=優良、X=試験条件下では成功せず
【0153】
臍帯内の残留血液からの細胞の単離。種々の手法によって臍帯から細胞のプールを単離するために、他の試みを行なった。一例では、臍帯を薄切りにして、増殖培地で洗浄し、血餅及びゼラチン状物質を取り除いた。血液、ゼラチン状物質、及び増殖培地の混合物を収集して、150×gで遠心分離した。ペレットを再懸濁させ、ゼラチンコーティングされたフラスコ上に、増殖培地中で播種した。これらの実験から、容易に増殖する細胞集団が単離された。
【0154】
臍帯血からの細胞の単離。細胞はまた、NDRIから入手した臍帯血サンプルからも単離されている。この場合に使用する単離プロトコルは、Hoらによる国際特許出願第PCT/US2002/029971号(Ho,T.W.ら、国際公開第2003025149(A2)号)のプロトコルとした。臍帯血(NDRI(Philadelphia PA))のサンプル(それぞれ、50ミリリットル及び10.5ミリリットル)を、溶解緩衝液(濾過除菌された155mMの塩化アンモニウム、10ミリモルの重炭酸カリウム、pH 7.2に緩衝させた0.1ミリモルのEDTA(全成分ともSigma(St.Louis,MO)より))と混合した。1:20の、臍帯血と溶解緩衝液との比率で、細胞を溶解させた。得られた細胞懸濁液を、5秒間ボルテックス攪拌して、周囲温度で2分間インキュベートした。この溶解液を、遠心分離した(200×gで10分間)。細胞ペレットを、10パーセントのウシ胎児血清(Hyclone(Logan UT))、4ミリモルのグルタミン(Mediatech(Herndon,VA))、100単位/100ミリリットルのペニシリン、及び100マイクログラム/100ミリリットルのストレプトマイシン(Gibco(Carlsbad,CA))を含有する、完全最小必須培地(Gibco(Carlsbad,CA))中に再懸濁させた。再懸濁した細胞を、遠心分離して(200×gで10分間)、上清を吸引し、完全培地中で細胞ペレットを洗浄した。T75フラスコ(Corning(NY))、T75ラミニンコーティングフラスコ、又はT175フィブロネクチンコーティングフラスコ(双方ともBecton Dickinson(Bedford,MA))内に、細胞を直接播種した。
【0155】
種々の酵素の組合せ及び増殖条件を使用する、細胞の単離。細胞集団が種々の条件下で単離され、単離の直後に様々な条件下で増殖することが可能か否かを判定するために、上記の手順に従って、0.001パーセント(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,MO))を有する増殖培地中、又は有さない増殖培地中で、C:D:Hの酵素の組合せを使用して、細胞を消化させた。そのように単離した胎盤由来細胞を、様々な条件下で播種した。全ての細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシンの存在下で増殖させた。(表1−2)。
【表2】
【0156】
種々の酵素の組合せ及び増殖条件を使用する、細胞の単離。全ての条件で、細胞は、継代数0〜1の間に、良好に付着して増殖した(表1−2)。条件5〜8及び条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖することが実証され、その時点で、それらの細胞を凍結保存し、バンクした。
【0157】
結果
種々の酵素の組合せを使用する細胞単離。C:D:Hの組合せが、単離の後の、最良の細胞収量をもたらし、他の条件よりも、多くの世代にわたって培養下で増殖する細胞を生じさせた(表1)。コラゲナーゼ又はヒアルロニダーゼを単独で使用しても、増殖可能な細胞集団は得られなかった。この結果が、試験したコラーゲンに特異的なものであるか否かを判定する試みは、行なわなかった。
【0158】
種々の酵素の組合せ及び増殖条件を使用する、細胞の単離。細胞は、酵素消化及び増殖に関して試験した全ての条件下で、継代数0〜1の間に、良好に付着して増殖した(表2)。実験条件5〜8及び実験条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖し、その時点で、それらの細胞を凍結保存した。更なる検討のために、全ての細胞をバンクした。
【0159】
臍帯内の残留血液からの細胞の単離。有核細胞が付着し、急速に増殖した。これらの細胞は、フローサイトメトリーによって分析したところ、酵素消化によって得られた細胞と同様であった。
【0160】
臍帯血からの細胞の単離。これらの調製物は、赤血球及び血小板を含有するものであった。最初の3週間は、有核細胞が付着及び分裂することはなかった。播種の3週間後に、培地を交換したが、細胞の付着及び増殖は観察されなかった。
【0161】
要約。細胞集団は、コラゲナーゼ(マトリックスメタロプロテアーゼ)、ディスパーゼ(中性プロテアーゼ)、及びヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を分解する粘液溶解酵素)を使用して、臍帯並びに胎盤組織から、効率的に誘導することができる。Blendzymeである、LIBERASE(商標)もまた、使用することができる。具体的には、コラゲナーゼ(4 Wunsch単位/g)及びサーモリシン(1714カゼイン単位/g)である、Blendzyme 3もまた、細胞を単離するために、ヒアルロニダーゼと共に使用した。これらの細胞は、ゼラチンコーティングされたプラスチック上の増殖培地中で培養した場合、多数回の継代にわたって、容易に増殖した。
【0162】
細胞はまた、臍帯内の残留血液からも単離されたが、臍帯血からは単離されなかった。使用した条件下で付着及び増殖する、この組織から洗い流された血餅中の細胞の存在は、解剖プロセス中に細胞が遊離することによるものである可能性がある。
【0163】
(実施例2)
臍由来細胞及び胎盤由来細胞の増殖特性
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の、細胞増殖能を、単離された他の幹細胞の集団と比較した。老化までの細胞増殖のプロセスは、ヘイフリック限界と称される(Hayflick L.(1974年)J Am Geriatr Soc.22:1〜12;Hayflick L.(1974年)Geontologist.14:37〜45)。臍帯組織由来細胞は、十分な細胞数まで容易に増殖することができるため、治療使用に極めて適している。
【0164】
材料及び方法
ゼラチンコーティングフラスコ。組織培養プラスチックフラスコは、T75フラスコ(Corning(Corning,NY))に、室温で20分間、20ミリリットルの2%(w/v)ブタゼラチン(タイプB:225 Bloom;Sigma(St Louis,MO))を添加することによって、コーティングした。ゼラチン溶液を除去した後、10ミリリットルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Invitrogen(Carlsbad,CA))を添加し、次いで吸引した。
【0165】
UTCと他の細胞集団との増殖能の比較。増殖拡大能の比較のために、以下の細胞集団を利用した;i)間葉系幹細胞(MSC;Cambrex(Walkersville,MD));ii)脂肪由来細胞(米国特許第6,555,374(B1)号;米国特許出願公開第2004/0058412号);iii)正常皮膚繊維芽細胞(cc−2509ロット# 9F0844;Cambrex(Walkersville,MD));iv)臍由来細胞;v)胎盤由来細胞(米国特許出願公開第2004/0048372号)。最初に、細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンBを有する増殖培地中、ゼラチンコーティングT−75フラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。その後の継代のために、以下のように細胞培養物を処理した。トリプシン処理後、生存細胞を、トリパンプルー染色の後に計数した。細胞懸濁液(50マイクロリットル)を、トリパンプルー(50ミリリットル、Sigma(St.Louis MO))と組み合わせた。生存細胞数は、血球計数器を使用して概算した。
【0166】
計数の後に、細胞を、25ミリリットルの新鮮増殖培地中、ゼラチンコーティングT 75フラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。37℃の標準条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞が、約85パーセントの集密度に到達した際に、それらの細胞を継代し、このプロセスを、細胞が老化に到達するまで繰り返した。
【0167】
各継代で、細胞をトリプシン処理して、計数した。生存細胞収量、集団倍加[ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln 2]、及び倍加時間(培養時間(時間)/集団倍加)を算出した。最適な細胞増殖を決定する目的のために、従前の継代に関する全収量に、各継代に関する増殖係数(すなわち、増殖係数=最終の細胞/最初の細胞)を積算することによって、継代ごとの全細胞収量を判定した。
【0168】
低密度での細胞バンクの増殖能。継代数10でバンクされた細胞の増殖能もまた、種々の条件のセットを使用して試験した。正常皮膚繊維芽細胞(cc−2509ロット# 9F0844;Cambrex(Walkersville,MD))、臍由来細胞、及び胎盤由来細胞を試験した。これらの細胞集団は、従前に、継代数10でバンクされており、その時点まで、各継代で5,000細胞/cm
2で培養して、集密まで増殖させたものであった。継代数10での細胞解凍後の細胞集団に対する、細胞密度の影響を判定した。標準条件下で細胞を解凍し、トリパンプルー染色を使用して計数した。次いで、解凍した細胞を、上述のような抗生物質/抗真菌剤を有するDMEM:低グルコース増殖培地中に、1000細胞/cm
2で播種した。37℃の標準大気条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換し、細胞は、約85%の集密度に到達した際に継代させた。細胞は、その後、老化まで、すなわち、それ以上の増殖が不可能となるまで、継代させた。各継代で、細胞をトリプシン処理して、計数した細胞収量、集団倍加(ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln 2)、及び倍加時間(培養時間(時間)/集団倍加)。継代ごとの全細胞収量は、従前の継代に関する全収量に、各継代に関する増殖係数(すなわち、増殖係数=最終の細胞/最初の細胞)を積算することによって判定した。
【0169】
最初の細胞播種からの、低密度でのUTCの増殖。新たに単離したUTCの増殖能を、低い細胞播種条件下で試験した。UTCを、本明細書で説明されるように調製した。細胞を、1000細胞/cm
2で播種し、老化まで、上述のように継代させた。37℃の標準大気条件下で、細胞を増殖させた。増殖培地は、1週間に2回交換した。細胞は、約85%の集密度に到達した際に継代させた。各継代で、細胞をトリプシン処理して、トリパンプルー染色によって計数した。細胞収量、集団倍加(ln(最終の細胞/最初の細胞)/ln 2)、及び倍加時間(培養時間(時間)/集団倍加)を、各継代に関して算出した。継代ごとの全細胞収量は、従前の継代に関する全収量に、各継代に関する増殖係数(すなわち、増殖係数=最終の細胞/最初の細胞)を積算することによって判定した。細胞は、ゼラチンコーティングフラスコ、及び非ゼラチンコーティングフラスコ上で増殖させた。
【0170】
クローン性新生児胎盤由来細胞の増殖。胎盤組織からの新生児細胞の集団を増殖させるるために、クローニングを使用した。胎盤からの3つの異なる細胞集団(本明細書で説明されるような)の単離の後に、それらの細胞集団を、標準増殖条件下で増殖させ、次いで、核型分析を行ない、単離された細胞集団の同一性を明らかにした。それらの細胞は、男児を分娩した母親から単離されたため、中期延展を実行することによって、雌雄の染色体を識別することは、簡単であった。これらの実験により、胎児態様細胞は、新生児表現型に関して陽性の核型であり、中間層細胞は、新生児表現型及び母体表現型の双方に関して陽性の核型であり、母体態様細胞は、母体細胞に関して陽性の核型であることが実証された。
【0171】
低酸素培養条件での細胞の増殖。低酸素細胞培養条件は、特定の状況で細胞増殖を改善し得ることが実証されている(米国特許出願公開第2004/0005704号)。細胞培養条件を変更することによって、UTCの細胞増殖を改善することが可能であるか否かを判定するために、臍由来細胞の培養物を、低酸素条件で増殖させた。細胞を、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ上に、5000細胞/cm
2で播種した。最初に、標準大気条件下で、細胞を継代数5まで培養し、その時点で、低酸素(5%のO
2)培養条件に、それらの細胞を移行させた。
【0172】
他の増殖条件。他のプロトコルでは、非コーティング、コラーゲンコーティング、フィブロネクチンコーティング、ラミニンコーティング、及び細胞外マトリックスタンパク質コーティングが施されたプレート上で、細胞を増殖させた。培養物は、これらの種々のマトリックス上で、良好に増殖することが実証されている。
【0173】
結果
UTCと他の幹細胞集団及び非幹細胞集団との、増殖能の比較。臍由来細胞及び胎盤由来細胞の双方が、60日で、40回を超える継代にわたって増殖し、>1E17細胞の細胞収量を生じさせた。対照的に、MSC及び繊維芽細胞は、それぞれ、<25日後及び<60日後に老化した。脂肪由来細胞は、ほぼ60日にわたって増殖したが、それらの細胞は、4.5E12の全細胞収量を生じさせた。それゆえ、利用した実験条件下で、5000細胞/cm
2で播種した場合、分娩後由来細胞は、同じ条件下で増殖させた他の細胞型よりも、遙かに良好に増殖した(表2−1)。
【表3】
【0174】
低密度での細胞バンクの増殖能。臍由来細胞、胎盤由来細胞、及び繊維芽細胞は、60日で、10回を超える継代にわたって増殖し、>1E11細胞の細胞収量を生じさせた(表2−2)。60日後、これらの条件下で繊維芽細胞は老化したが、臍由来細胞集団及び胎盤由来細胞集団は、それぞれ、>50倍及び>40倍の集団倍加を完了して、80日後に老化した。
【表4】
【0175】
最初の細胞播種からの、低密度でのUTCの増殖。UTCを、ゼラチンコーティング及び非コーティングの、プレート若しくはフラスコ上に、低密度(1,000細胞/cm
2)で増殖させた。これらの条件下での、これらの細胞の増殖能は、良好であった。細胞は、対数増殖期には容易に増殖した。細胞増殖の速度は、胎盤由来細胞を、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ上に、5000細胞/cm
2で播種した場合に観察されたものと同様であった。非コーティングフラスコ上での培養又はゼラチンコーティングフラスコ上での培養の間には、細胞増殖能の差異は観察されなかった。しかしながら、細胞は、ゼラチンコーティングフラスコ上では、表現型的に遙かに小さく現れ、非コーティングフラスコ上では、より大きい細胞表現型が観察された。
【0176】
クローン性新生児胎盤由来細胞又は母体胎盤由来細胞の増殖。クローン性新生児細胞集団又は母体細胞集団は、それぞれ、胎盤の新生児態様又は母体態様から単離された、胎盤由来細胞から増殖させることができる。細胞を段階希釈して、次いで、ゼラチンコーティングプレート上に、増殖用の増殖培地中、96ウェルゼラチンコーティングプレート内の1ウェルにつき1細胞で播種する。この最初のクローニングから、増殖性のクローンを同定して、トリプシン処理し、増殖培地中、12ウェルゼラチンコーティングプレート内に再び播種して、引き続き、増殖培地中、T25ゼラチンコーティングフラスコ内に、5,000細胞/cm
2で継代させる。クローン性の細胞の集団が同定されたことを確実にするために、サブクローニングを実行する。サブクローニング実験に関しては、細胞をトリプシン処理して、0.5細胞/ウェルで再び播種する。良好に増殖するサブクローンを、ゼラチンコーティングT25フラスコ内に、5,000細胞cm
2/フラスコで増殖させる。細胞は、5,000細胞cm
2/T75フラスコで、継代させる。クローンの増殖特性をプロットすることにより、細胞増殖を実証することができる。核型分析により、クローンが新生児性であるか又は母体性であるかを、確認することができる。
【0177】
低酸素培養条件での細胞の増殖。細胞は、酸素が低減された条件下で、良好に増殖したが、しかしながら、低酸素条件下での培養が、使用した条件下で、UTCの細胞増殖に対して有意な効果を及ぼしたとは考えられなかった。
【0178】
要約。単離された臍帯組織由来細胞を、標準的な大気酸素下で、増殖培地中、ゼラチンコーティングフラスコ又は非コーティングフラスコ上に、約5000細胞/cm
2の密度で増殖させることを含む、細胞増殖条件は、継代数11で、多数の細胞を産生するために十分である。更には、このデータは、より低い密度の培養条件(例えば、1000細胞/cm
2)を使用して、容易に細胞を増殖させることができる点を示唆する。低酸素条件での、臍帯組織由来細胞の増殖もまた、細胞増殖を促進するが、増殖に関するこれらの条件を使用する場合の、細胞増殖能の漸進的な改善は、未だ観察されていない。現時点では、大きい細胞のプールを生成するためには、標準大気条件下で、臍帯組織由来細胞を培養することが好ましい。しかしながら、培養条件を変更すると、臍帯組織由来細胞の増殖も、同様に変化し得る。この方策を使用して、これらの細胞集団の増殖能及び分化能を増強することができる。
【0179】
利用した条件下では、MSC及び脂肪由来細胞の増殖能は限定されるが、臍帯組織由来細胞は、多くの数へと容易に増殖する。
【0180】
(実施例3)
胎盤由来細胞用の増殖培地の評価
幾つかの細胞培養培地を、胎盤由来細胞の増殖を支援する、それらの能力に関して評価した。通常(20%)酸素及び低(5%)酸素中での胎盤由来細胞の増殖を、MTS比色分析アッセイを使用して、3日後に評価した。
【0181】
方法及び材料
継代数8(P8)の胎盤由来細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシンを有する増殖培地中、96ウェルプレート内に、1×10
3細胞/ウェルで播種した。8時間後、以下で説明するように培地を交換して、5%のCO
2、通常(大気)酸素又は低(5%、v/v)酸素中、37℃で、細胞を48時間インキュベートした。培養培地(Cell Titer 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay,Promega(Madison,WI))に、MTSを3時間にわたって添加し、490ナノメートルで吸光度を測定した(Molecular Devices(Sunnyvale CA))。
【表5】
【0182】
結果
MTSアッセイに関する標準曲線は、吸光度の増大と細胞数の増大との間の線形相関を確立した。得られた吸光度の値を推定細胞数へと変換して、最初の播種に対する変化(%)を算出した。
【0183】
血清の効果。通常の酸素条件での、培地への血清の添加により、吸光度の、またそれゆえ生存細胞数の、再現可能な用量依存性の増大がもたらされた。完全MSCGMへの血清の添加により、吸光度の用量依存性の減少がもたらされた。血清が添加されない培地では、Cellgro FREE(商標)、ハムF10、及びDMEM中でのみ、細胞の明らかな増殖が認められた。
【0184】
酸素の効果。酸素の低減は、増殖培地、ハムF10、及びMSCGM中での、細胞の増殖速度を増大させるように思われた。最良の細胞の増殖をもたらす培地を、増殖の多い順で挙げると、増殖培地>MSCGM>イスコフ培地+10% FBS=DMEM−H+10% FBS=ハムF12+10% FBS=RPMI 1640+10% FBSであった。
【0185】
要約。胎盤由来細胞は、通常酸素又は低酸素中、様々な培養培地中で増殖させることができる。5%酸素又は大気酸素中、0%、2%、及び10%(v/v)の血清を有する12の基本培地中で、胎盤由来細胞の短期増殖を測定した。全般的には、胎盤由来細胞は、タンパク質フリーでもある、ハムF10及びCellgro FREE(商標)を除いて、血清フリー条件では、同様には増殖しなかった。これらの血清フリー培地中での増殖は、15%の血清を含有する培地で観察された最大増殖の、約25〜33%であった。
【0186】
(実施例4)
D−バリンを含有する培地中での、臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の増殖
通常のL−バリンイソ型の代わりにD−バリンを含有する培地を使用して、培養下の繊維芽細胞様細胞の増殖を、選択的に阻害することができる点が、報告されている(Hongpaisan J.2000年、Cell Biol Int.24:1〜7;Sordilloら、1988年、Cell Biol Int Rep.12:355〜64)。臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞が、D−バリンを含有する培地中で増殖することが可能であるか否かは、従前は知られていなかった。
【0187】
方法及び材料
胎盤由来細胞(P3)、繊維芽細胞(P9)、及び臍帯由来細胞(P5)を、ゼラチンコーティングT75フラスコ(Corning(Corning,NY))内に、5×10
3細胞/cm
2で播種した。24時間後、培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))で細胞を洗浄することにより、残留する培地を除去した。この培地を、改変増殖培地(D−バリンを有するDMEM(特注品Gibco)、15%(v/v)の透析ウシ胎児血清(Hyclone(Logan,UT))、0.001%(v/v)のβメルカプトエタノール(Sigma)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco))で置き換えた。
【0188】
結果
このD−バリン含有培地中に播種した、胎盤由来細胞、臍由来細胞、及び繊維芽細胞は、透析した血清を含有する増殖培地中に播種した細胞とは異なり、増殖しなかった。繊維芽細胞は、形態学的に変化し、サイズが増大して、形状が変化した。全ての細胞が死滅し、最終的には、4週間後にフラスコ表面から剥離した。これらの結果は、D−バリンを含有する培地が、分娩後由来細胞を選択的に増殖させるためには好適でないことを示す。
【0189】
(実施例5)
胎盤由来細胞用の凍結保存培地
胎盤由来細胞の凍結保存のための、凍結保存培地を評価した。
【0190】
方法及び材料
ゼラチンコーティングT75フラスコ内で、増殖培地中に増殖させた胎盤由来細胞を、PBSで洗浄し、1ミリリットルのトリプシン/EDTA(Gibco)を使用してトリプシン処理した。このトリプシン処理を、10ミリリットルの増殖培地を添加することによって停止させた。これらの細胞を150×gで遠心分離して、上清を除去し、その細胞ペレットを、1ミリリットルの増殖培地中に再懸濁させた。細胞懸濁液のアリコート、60マイクロリットルを取り出し、60マイクロリットルのトリパンプルー(Sigma)に添加した。血球計数器を使用して、生存細胞数を概算した。この細胞懸濁液を、それぞれが88×10
4の細胞を含む、4つの等しいアリコートへと分割した。この細胞懸濁液を遠心分離して、1ミリリットルの下記の各培地中に再懸濁させ、クライオバイアル(Nalgene)内に移した。
【0191】
1.)増殖培地+10%(v/v)DMSO(Hybrimax、Sigma(St.Louis,MO))
2.)細胞凍結培地、DMSO含有、メチルセルロース含有、血清フリー(C6295、Sigma(St.Louis,MO))
3.)細胞凍結培地、血清フリー(C2639、Sigma(St.Louis,MO))
4.)細胞凍結培地、グリセロール含有(C6039、Sigma(St.Louis,MO))
【0192】
「Mr Frosty」凍結容器を、製造元の使用説明書(Nalgene(Rochester,NY))に従って使用し、−80℃の冷凍庫内で、約−1℃/分で一晩、それらの細胞を冷却した。液体窒素中に2日間、細胞のバイアルを移した後、37℃の水浴中で急速解凍した。これらの細胞を、10ミリリットルの増殖培地に添加して、遠心分離した後に、細胞数及び生存率を概算した。ゼラチンコーティングフラスコ上に、細胞を、5,000細胞/cm
2で播種し、それらの細胞が付着して増殖するか否かを判定した。
【0193】
結果
凍結保存される細胞の最初の生存率は、トリパンプルー染色によって、100%であると評価された。凍結保存される細胞の最初の生存率は、トリパンプルー染色によって、100%であると評価された。
【0194】
細胞溶解により、C6295に関する生存率と比例する、細胞数の低減が存在した。全ての4種の溶液中で凍結保存された生存細胞は、3日以内に付着して分裂し、集密の単層を産生した。概算された増殖速度には、識別可能な差異は存在しなかった。
【0195】
要約。細胞の凍結保存は、細胞バンク又は細胞産物の調製に関して利用可能な、1つの手順である。4種の凍結保存混合物を、凍結損傷からヒト胎盤由来細胞を保護するための、それらの能力に関して比較した。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)及び10%(v/v)のジメチルスルホキシド(DMSO)が、胎盤由来細胞の凍結保存に関して比較されたもののうち、好ましい培地である。
【0196】
(実施例6)
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の核型分析
細胞療法に使用される細胞株は、好ましくは、均質であり、いずれの汚染性の細胞型も含まない。細胞療法に使用される細胞は、正常な染色体数(46)及び構造を有するべきである。均質であり、かつ、非分娩後組織起源の細胞を含まない、胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株を同定するために、細胞サンプルの核型を分析した。
【0197】
材料及び方法
新生男児の分娩後組織由来のUTCを、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する増殖培地中で培養した。新生男児由来の分娩後組織(X,Y)を選択することにより、新生児由来細胞と母体由来細胞(X,X)との識別が可能となった。細胞を、T25フラスコ(Corning(Corning,NY))内の増殖培地中に、5,000細胞/平方センチメートルで播種し、80%の集密度まで増殖させた。細胞を収容するT25フラスコは、首部分まで増殖培地で充填した。臨床細胞遺伝学研究所に、急送便でサンプルを配送した(研究所間の推定輸送時間は、1時間である)。細胞は、染色体が最も良好に可視化される、分裂中期の間に分析した。計数した分裂中期の20個の細胞のうち、5個の細胞を、正常の均質な核型の数(2)に関して分析した。細胞サンプルは、2つの核型が観察された場合には、均質として特徴付けられた。細胞サンプルは、3つ以上の核型が観察された場合には、不均質として特徴付けられた。不均質な核型の数(4)が識別された場合、更なる分裂中期細胞を計数して、分析した。
【0198】
結果
染色体分析のために送られた全ての細胞サンプルは、正常な様相を呈していると解釈された。分析された16の細胞株のうちの3つは、新生児起源及び母体起源の双方に由来する細胞の存在を示す、不均質な表現型(XX及びXY)を呈した(表6−1)。胎盤−Nの組織由来の細胞は、胎盤の新生児態様から単離された。継代数0では、この細胞株は、均質なXYを表した。しかしながら、継代数9では、この細胞株は、従前には検出されなかった母体起源の細胞の存在を示す、不均質(XX/XY)なものであった。
【表6】
凡例:N−新生児態様;V−絨毛領域;M−母体態様;C−クローン
【0199】
要約。染色体分析は、臨床細胞遺伝学研究所によって解釈されるように、核型が正常を表す胎盤由来細胞及び臍由来細胞を同定した。核型分析はまた、均質な核型によって判定されるように、母体細胞を含まない細胞株も同定した。
【0200】
(実施例7)
フローサイトメトリーによる、ヒト臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の表面マーカーの評価
フローサイトメトリーによる、細胞表面タンパク質又は「マーカー」の特性評価を使用して、細胞株の同一性を判定することができる。この発現の一貫性は、複数のドナーから、並びに種々の処理及び培養条件に曝された細胞内で、判定することができる。胎盤及び臍から単離された細胞株を、(フローサイトメトリーによって)特徴付けることにより、これらの細胞株の同定に関するプロファイルが提供された。
【0201】
材料及び方法
培地及び培養容器。ペニシリン/ストレプトマイシンを有する増殖培地(Gibco(Carlsbad,CA))中で、細胞を培養した。血漿処理されたT75、T150、及びT225組織培養フラスコ(Corning(Corning,NY))内で、細胞を集密まで培養した。2%(w/v)のゼラチン(Sigma(St.Louis,MO))を、室温で20分間インキュベートすることによって、これらのフラスコの増殖表面をゼラチンでコーティングした。
【0202】
抗体染色及びフローサイトメトリー分析。フラスコ内の付着細胞を、PBS中で洗浄し、トリプシン/EDTAを使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10
7/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造元の仕様書に従って、100マイクロリットルの細胞懸濁液に、目的の細胞表面マーカーに対する抗体(下記参照)を添加し、その混合物を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合の抗体を除去した。500マイクロリットルのPBS中に、細胞を再懸濁させ、フローサイトメトリーによって分析した。フローサイトメトリー分析は、FACScalibur計器(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して実行した。
【0203】
細胞表面マーカーに対する以下の抗体を使用した。
【表7】
【0204】
胎盤と臍との比較。胎盤由来細胞を、継代数8で、臍由来細胞と比較した。
【0205】
継代間の比較。胎盤由来細胞及び臍由来細胞を、継代数8、15、及び継代数20で分析した。
【0206】
ドナー間の比較。ドナー間の差異を比較するために、種々のドナーからの胎盤由来細胞を互いに比較し、また、種々のドナーからの臍由来細胞を互いに比較した。
【0207】
表面コーティングの比較。ゼラチンコーティングフラスコ上で培養した胎盤由来細胞を、非コーティングフラスコ上で培養した胎盤由来細胞と比較した。ゼラチンコーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞を、非コーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞と比較した。
【0208】
消化酵素の比較。細胞の単離及び調製に関して使用される、4つの処理を比較した。1)コラゲナーゼ;2)コラゲナーゼ/ディスパーゼ;3)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ;4)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ/ディスパーゼを使用する処理によって胎盤から単離された細胞を、比較した。
【0209】
胎盤の層の比較。胎盤組織の母体態様由来の細胞を、胎盤組織の絨毛領域由来の細胞、及び胎盤の新生胎児態様由来の細胞と比較した。
【0210】
結果
胎盤と臍との比較。フローサイトメトリーによって分析された、胎盤由来細胞及び臍由来細胞は、IgG対照に対する蛍光値の増大によって示される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの陽性発現を示した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの検出可能な発現に関しては陰性であり、このことは、IgG対照と同等の蛍光値によって示された。陽性曲線の蛍光値の変動を考慮した。陽性曲線の平均(すなわち、CD13)及び範囲(すなわち、CD90)は、ある程度の変動を示したが、これらの曲線は、正常であると考えられ、均質な集団であることが確認された。双方の曲線が、IgG対照よりも高い値を個別に呈した。
【0211】
継代間の比較−胎盤由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、継代数8、15、及び継代数20での胎盤由来細胞は、IgG対照に対する蛍光値の増大に反映されるように、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの発現に関して、全て陽性であった。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
【0212】
継代間の比較−臍由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、継代数8、15、及び継代数20での臍由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、このことは、IgG対照に対する蛍光の増大によって示された。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性であり、このことは、IgG対照と一致する蛍光値によって示された。
【0213】
ドナー間の比較−胎盤由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、別個のドナーから単離された胎盤由来細胞のそれぞれは、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、IgG対照に対して蛍光値が増大していた。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値によって示されるように、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であった。
【0214】
ドナー間の比較−臍由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、別個のドナーから単離された臍由来細胞のそれぞれは、IgG対照に対する蛍光値の増大に反映される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの陽性発現を示した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
【0215】
胎盤由来細胞に対する、ゼラチンを使用する表面コーティングの効果。フローサイトメトリーによって分析された、ゼラチンコーティングフラスコ又は非コーティングフラスコ上のいずれかで増殖させた胎盤由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、このことは、IgG対照に対する蛍光値の増大に反映された。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、このことは、IgG対照と一致する蛍光値によって示された。
【0216】
臍由来細胞に対する、ゼラチンを使用する表面コーティングの効果。フローサイトメトリーによって分析された、ゼラチンフラスコ及び非コーティングフラスコ上で増殖させた臍由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの発現に関しては陽性であり、IgG対照に対して増大した蛍光値を有していた。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
【0217】
細胞表面マーカープロファイルに対する、細胞の調製に使用される酵素消化手順の効果。フローサイトメトリーによって分析された、様々な消化酵素を使用して単離した胎盤由来細胞は、IgG対照に対する蛍光値の増大によって示されるように、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現した。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値によって示されるように、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であった。
【0218】
胎盤の層の比較。フローサイトメトリーによって分析された、それぞれ、胎盤の母体層、絨毛層、及び新生児層から単離した細胞は、IgG対照に対する蛍光値の増大によって示されるように、CD10、CD13、CD44、CD73、CD 90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの陽性発現を示した。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値によって示されるように、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であった。
【0219】
要約。フローサイトメトリーによる、胎盤由来細胞及び臍由来細胞の分析により、これらの細胞株の同一性が確立されている。胎盤由来細胞及び臍由来細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cに関しては陽性であり、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性である。この同一性は、ドナー、継代数、培養容器の表面コーティング、消化酵素、及び胎盤の層を含めた変数が変動しても、一貫していた。個々の蛍光値ヒストグラム曲線の平均及び範囲には、ある程度の変動が観察されたが、全ての試験条件下での、全ての陽性曲線は正常であり、発現した蛍光値は、IgG対照よりも大きく、それゆえ、これらの細胞が、マーカーの陽性発現を有する均質な集団を含むことが確認された。
【0220】
(実施例8)
臍帯組織表現型及び胎盤組織表現型の、免疫組織化学的な特性評価
ヒト臍帯及びヒト胎盤内部に見出される細胞の表現型を、免疫組織化学によって分析した。
【0221】
材料及び方法
組織の調製。ヒト臍帯組織及びヒト胎盤組織を採取して、4%(w/v)パラホルムアルデヒド中に、4℃で一晩、浸漬固定した。免疫組織化学は、以下のエピトープに対する抗体を使用して実行した:ビメンチン(1:500;Sigma(St.Louis,MO))、デスミン(1:150、ウサギに対して産生;Sigma;又は1:300、マウスに対して産生;Chemicon(Temecula,CA))、α−平滑筋アクチン(SMA;1:400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation(Carpinteria,CA))。更には、以下のマーカーを試験した:抗ヒトGROα−PE(1:100;Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech(Santa Cruz,CA))、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGO−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。外科用メスを使用して、固定標本をトリミングし、エタノールを含有するドライアイス浴上の、OCT包理化合物(Tissue−Tek OCT;Sakura(Torrance,CA))内部に定置した。次いで、凍結ブロックを、標準的なクリオスタット(Leica Microsystems)を使用して切片(厚さ10μm)とし、染色のためにスライドグラス上に載置した。
【0222】
免疫組織化学。免疫組織化学は、従前の研究(例えば、Messinaら、2003年、Exper.Neurol.184:816〜829)と同様に実行した。組織切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、1時間曝した。目的のエピトープが、細胞表面上に位置している場合には(CD34、ox−LDL R1)、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての工程で、Tritonを省略した。更には、一次抗体がヤギに対して産生された場合には(GCP−2、ox−LDL R1、NOGO−A)、手順全体を通して、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体を、室温で4時間にわたって、これらの切片に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及び/又はヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)若しくはロバ抗ヤギIgG−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0223】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。陽性染色は、対照染色を上回る蛍光シグナルによって表された。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
【0224】
結果
臍帯の特性評価。ビメンチン、デスミン、SMA、CK18、vWF、及びCD34マーカーは、臍帯内部に見出される細胞のサブセットで発現した。具体的には、vWF及びCD34の発現は、臍帯内部に含まれる血管に限定されていた。CD34+細胞は、最内層(内腔側)上に存在した。ビメンチンの発現は、臍帯のマトリックス及び血管の全域に見出された。SMAは、動脈並びに静脈の、マトリックス及び外壁に限定されたが、血管自体には含まれなかった。CK18及びデスミンは、血管内部のみに観察され、デスミンは、中層及び外層に限定された。
【0225】
胎盤の特性評価。ビメンチン、デスミン、SMA、CK18、vWF、及びCD34は全て、胎盤内部で観察され、かつ領域特異的であった。
【0226】
GROα、GCP−2、ox−LDL R1、及びNOGO−Aの組織発現。これらのマーカーのいずれも、臍帯組織又は胎盤組織内部では観察されなかった。
【0227】
要約。ビメンチン、デスミン、α−平滑筋アクチン、サイトケラチン18、ヴォン・ヴィレブランド因子、及びCD 34は、ヒト臍帯並びにヒト胎盤内部の細胞内で発現する。
【0228】
(実施例9)
オリゴヌクレオチドアレイを使用する、細胞の分析
Affymetrix GENECHIP(登録商標)アレイを使用して、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の遺伝子発現プロファイルを、繊維芽細胞、ヒト間葉系幹細胞、及びヒト骨髄由来の別の細胞株と比較した。この分析により、これらの細胞の特性評価が提供され、これらの細胞に関する、固有の分子マーカーが特定された。
【0229】
材料及び方法
細胞の単離及び培養。ヒト臍帯及びヒト胎盤は、National Disease Research Interchange(NDRI(Philadelphia,PA))より、患者の同意を得て、正常な満期分娩から得た。これらの組織を受け取り、実施例1で説明されるように、細胞を単離した。細胞は、増殖培地(DMEM−LGを使用)中、ゼラチンコーティング組織培養プラスチックフラスコ上で培養した。この培養物を、5%のCO
2を使用して、37℃でインキュベートした。
【0230】
ヒト皮膚繊維芽細胞は、Cambrex Incorporated(Walkersville,MD;ロット番号9F0844)及びATCC CRL−1501(CCD39SK)より購入した。双方の株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(Hyclone)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を有する、DMEM/F12培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))中で培養した。これらの細胞は、標準的な組織処理プラスチック上で増殖させた。
【0231】
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、Cambrex Incorporated(Walkersville,MD;ロット番号2F1655、2F1656、及び2F1657)より購入し、製造元の仕様書に従って、MSCGM培地(Cambrex)中で培養した。これらの細胞は、5%のCO
2を使用して、37℃で、標準的な組織培養プラスチック上で増殖させた。
【0232】
ヒト腸骨稜の骨髄は、患者の同意を得て、NDRIより受け取った。この骨髄を、Hoらによって概説される方法(国際公開第03/025149号)に従って処理した。この骨髄を、溶解緩衝液(155mMのNH
4Cl、10mMのKHCO
3、及び0.1mMのEDTA、pH 7.2)と、骨髄1部対溶解緩衝液20部の比率で混合した。この細胞懸濁液を、ボルテックス攪拌して、周囲温度で2分間インキュベートし、500×gで10分間、遠心分離した。上清を廃棄して、10%(v/v)ウシ胎児血清及び4mMグルタミンを添加した最小必須培地−α(Invitrogen)中に、細胞ペレットを再懸濁させた。これらの細胞を、再び遠心分離して、新鮮培地中に細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー排除(Sigma(St.Louis,MO))を使用して、生存単核細胞を計数した。これらの単核細胞を、組織培養プラスチックフラスコ内に、5×104細胞/cm
2で播種した。細胞を、標準大気O
2又は5% O
2のいずれかで、5% CO
2を使用して、37℃でインキュベートした。培地を交換することなく、細胞を5日間培養した。5日間の培養の後、培地及び非付着細胞を除去した。付着細胞は、培養下に維持した。
【0233】
mRNAの単離、及びGENECHIP(登録商標)分析。活発に増殖する細胞の培養物を、冷PBS中で、セルスクレーパーを使用して、フラスコから取り出した。これらの細胞を、300×gで5分間、遠心分離した。上清を除去して、新鮮なPBS中に細胞を再懸濁させ、再び遠心分離した。上清を除去して、細胞ペレットを直ちに凍結させ、−80℃で保存した。細胞のmRNAを抽出し、cDNAへと転写させ、次いで、このcDNAをcRNAへと転写させ、ビオチンで標識した。このビオチン標識cRNAを、HG−U133A GENECHIP(登録商標)オリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix(Santa Clara CA))とハイブリダイズさせた。このハイブリダイゼーション及びデータ収集は、製造元の仕様書に従って実行した。「Significance Analysis of Microarrays」(SAM)バージョン1.21コンピュータソフトウェア(Stanford University;Tusher,V.G.ら、2001年、Proc.Natl.Acd.Sci.USA 98:5116〜5121)を使用して、分析を実行した。
【0234】
結果
14の異なる細胞の集団を分析した。これらの細胞を、継代情報、培養基質、及び培養培地と共に、表9−1に列記する。
【表8】
【0235】
データは、これらの細胞内で示差的に発現した290の遺伝子を分析する、主成分分析によって評価した。この分析により、集団間の類似性に関する、相対的な比較が可能となる。表9−2は、細胞対の比較のために算出された、ユークリッド距離を示す。これらのユークリッド距離は、細胞型間で示差的に発現した290の遺伝子に基づく、細胞の比較に基づいたものである。ユークリッド距離は、290の遺伝子の発現間の類似性に反比例する(すなわち、距離が大きくなるほど、存在する類似性が少なくなる)。
【表9】
【0236】
表9−3、9−4、及び表9−5は、胎盤由来細胞内で増大した遺伝子の発現(表9−3)、臍由来細胞内で増大した遺伝子の発現(表9−4)、並びに臍由来細胞及び胎盤由来細胞内で低減した遺伝子の発現(表9−5)を示す。「プローブセットID」と題される縦列は、チップ上の特定の部位上に配置される、幾つかのオリゴヌクレオチドプローブのセットに関する、製造元の識別コードを指し、これらのプローブのセットは、NCBI(GenBank)データベース内の指定の受託番号(縦列「NCBI受託番号」)で見出すことができる配列を含む、命名された遺伝子(縦列「遺伝子名」)とハイブリダイズする。
【表10】
【表11】
【表12-1】
【表12-2】
【表12-3】
【0237】
表9−6、9−7、及び表9−8は、ヒト繊維芽細胞(表9−6)、ICBM細胞(表9−7)、及びMSC(表9−8)内で増大した、遺伝子の発現を示す。
【表13】
【表14】
【表15】
【0238】
要約。本検査は、臍帯由来細胞及び胎盤由来細胞の分子の特性評価を提供するために実行された。この分析には、3つの異なる臍帯及び3つの異なる胎盤に由来する細胞を含めた。この検査にはまた、皮膚繊維芽細胞の2つの異なる株、間葉系幹細胞の3つの株、及び腸骨稜の骨髄細胞の3つの株も含めた。これらの細胞によって発現されたmRNAを、22,000の遺伝子に関するプローブを含む、オリゴヌクレオチドアレイを使用して分析した。結果は、290の遺伝子が、これらの5つの異なる細胞型内で示差的に発現することを示した。これらの遺伝子には、胎盤由来細胞内で特異的に増大している10の遺伝子、及び臍帯由来細胞内で特異的に増大している7の遺伝子が含まれる。他の細胞型と比較して、胎盤及び臍帯内では、54の遺伝子が、特異的に低い発現レベルを有することが判明した。選択された遺伝子の発現が、PCRによって確認されている(以下の実施例を参照)。これらの結果は、これらの細胞が、例えば、骨髄由来細胞及び繊維芽細胞と比較して、明確に識別可能な遺伝子発現プロファイルを有することを実証している。
【0239】
(実施例10)
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞内の細胞マーカー
前述の実施例では、ヒト胎盤由来細胞とヒト臍帯由来細胞との類似性及び相違を、それらの遺伝子発現プロファイルを、他の供給源由来の細胞の遺伝子発現プロファイルと比較することによって(オリゴヌクレオチドアレイを使用して)評価した。6つの「シグネチャー」遺伝子:酸化LDL受容体1、インターロイキン−8、レンニン、レチクロン、ケモカイン受容体リガンド3(CXCリガンド3)、及び顆粒球走化性タンパク質2(GCP−2)が特定された。これらの「シグネチャー」遺伝子は、これらの細胞内で、比較的高レベルで発現した。
【0240】
この実施例で説明される手順は、マイクロアレイデータを検証して、遺伝子とタンパク質発現との間の一致/不一致を見出すと共に、胎盤由来細胞及び臍由来細胞に関する一意的識別子を検出するための、信頼性の高い一連のアッセイを確立するために実施された。
【0241】
方法及び材料
細胞。胎盤由来細胞(3つの単離株、核型分析によって同定されるような、主として新生児性の単離株1つを含む)、臍由来細胞(4つの単離株)、及び正常ヒト表皮繊維芽細胞(NHDF;新生児及び成人)を、ゼラチンチコーティングT75フラスコ内の、ペニシリン/ストレプトマイシンを有する増殖培地中で増殖させた。間葉系幹細胞(MSC)を、間葉系幹細胞増殖培地Bulletキット(MSCGM;Cambrex(Walkerville,MD))中で増殖させた。
【0242】
IL−8プロトコルに関しては、細胞を液体窒素から解凍して、ゼラチンコーティングフラスコ内に、5,000細胞/cm
2でプレーティングして、増殖培地中で48時間増殖させ、次いで、更に8時間、10ミリリットルの血清飢餓培地[DMEM−低グルコース(Gibco(Carlsbad,CA))、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco(Carlsbad,CA))、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma(St.Louis,MO))]中で増殖させた。この処理の後、RNAを抽出して、150×gで5分間、上清を遠心分離することにより、細胞残渣を除去した。次いで、ELISA分析のために、上清を−80℃で冷凍した。
【0243】
ELISAアッセイのための細胞培養。胎盤由来細胞及び臍由来細胞、並びにヒト新生児包皮由来のヒト繊維芽細胞を、ゼラチンコーティングT75フラスコ内の増殖培地中で培養した。継代数11で、液体窒素中で細胞を凍結させた。細胞を解凍して、15ミリリットル遠心管に移した。150×gで5分間の遠心分離後、上清を廃棄した。4ミリリットルの培養培地中に、細胞を再懸濁させ、計数した。15ミリリットルの増殖培地を収容する75cm
2フラスコ内で、375,000細胞/フラスコで、細胞を24時間増殖させた。この培地を、8時間にわたって、血清飢餓培地に交換した。インキュベーション終了時に、血清飢餓培地を収集し、14,000×gで5分間、遠心分離した(及び−20℃で保存)。
【0244】
各フラスコ内の細胞の数を概算するために、2ミリリットルのトリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,CA))を、各フラスコに添加した。フラスコから細胞を剥離した後、8ミリリットルの増殖培地を使用して、トリプシン活性を中和した。細胞を15ミリリットル遠心管に移し、150×gで5分間、遠心分離した。上清を除去し、各管に1ミリリットルの増殖培地を添加して、細胞を再懸濁させた。血球計数器を使用して、細胞数を概算した。
【0245】
ELISAアッセイ。細胞によって血清飢餓培地中へ分泌されたIL−8の量を、ELISAアッセイ(R&D Systems(Minneapolis,MN))を使用して分析した。全てのアッセイは、製造元によって提供される使用説明書に従って試験した。
【0246】
全RNAの単離。集密の臍由来細胞及び胎盤由来細胞並びに繊維芽細胞から、あるいはIL−8の発現に関しては、上述のように処理した細胞から、RNAを抽出した。製造元の使用説明書(RNeasy Mini Kit;Qiagen(Valencia,CA))に従って、β−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,MO))を含有する、350マイクロリットルの緩衝RLTを使用して、細胞を溶解した。製造元の使用説明書(RNeasy Mini Kit;Qiagen(Valencia,CA))に従って、RNAを抽出し、DNアーゼ処理(2.7U/サンプル)(Sigma(St.Louis,MO))を施した。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを溶出させ、−80℃で保存した。
【0247】
逆転写。RNAはまた、ヒト胎盤及びヒト臍からも抽出した。2−メルカプトエタノールを含有する、700マイクロリットルの緩衝RLT中に、組織(30ミリグラム)を懸濁させた。サンプルを機械的に均質化し、製造元の仕様書に従って、RNAの抽出を進めた。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを抽出し、−80℃で保存した。TaqMan逆転写試薬(Applied Biosystems(Foster City,CA))と共にランダムヘキサマーを使用して、25℃で10分間、37℃で60分間、及び95℃で10分間、RNAを逆転写させた。−20℃で、サンプルを保存した。
【0248】
分娩後細胞内で固有に調節されているとして、cDNAマイクロアレイによって特定された遺伝子(酸化LDL受容体、インターロイキン−8、レンニン、及びレチクロンを含めた、シグネチャー遺伝子)を、リアルタイムPCR及び従来のPCRを使用して、更に検討した。
【0249】
リアルタイムPCR。Assays−on−Demand(商標)遺伝子発現製品を使用して、cDNAサンプルに対してPCRを実行した:酸化LDL受容体(Hs00234028);レンニン(Hs00166915);レチクロン(Hs00382515);CXCリガンド3(Hs00171061);GCP−2(Hs00605742);IL−8(Hs00174103);GAPDH(Applied Biosystems(Foster City,CA))を、ABI Prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems(Foster City,CA))と共に7000配列検出システムを使用して、製造元の使用説明書(Applied Biosystems(Foster City,CA))に従って、cDNA及びTaqMan Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間とし、その後に、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルとした。PCRデータは、製造元の仕様書(ABI Prism 7700配列検出システムに関する、Applied BiosystemsによるUser Bulletin #2)に従って分析した。
【0250】
従来のPCR。ABI PRISM 7700(Perkin Elmer Applied Biosystems(Boston,Massachusetts,USA))を使用して、従来のPCRを実行することにより、リアルタイムPCRからの結果を確認した。PCRは、2マイクロリットルのcDNA溶液、1×AmpliTaq GoldユニバーサルミックスPCR反応緩衝液(Applied Biosystems(Foster City,CA))、及び94℃で5分間の初期変性を使用して実行した。各プライマーセットに関して、増幅を最適化させた。IL−8、CXCリガンド3、及びレチクロンに関しては、(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、30サイクル);レンニンに関しては、(94℃で15秒間、53℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、38サイクル);酸化LDL受容体及びGAPDHに関しては、(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を、33サイクル)。増幅に使用したプライマーを、表1に列記する。最終PCR反応でのプライマー濃度は、1マイクロモルとしたが、ただし、GAPDHに関しては、0.5マイクロモルとした。GAPDHプライマーは、リアルタイムPCRと同じものとしたが、ただし、製造元のTaqManプローブは、最終PCR反応に加えなかった。2%(w/v)アガロースゲル上にサンプルを流し、臭化エチジウム(Sigma(St.Louis,MO))で染色した。焦点距離ポラロイドカメラ(VWR International(South Plainfield,NJ))を使用する、667 Universal Twinpackフィルム(VWR International(South Plainfield,NJ))を使用して、画像を取り込んだ。
【表16】
【0251】
免疫蛍光法。由来細胞を、室温で10分間、4%(w/v)の冷パラホルムアルデヒド(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO))で固定した。継代数0(P0)(単離直後)及び継代数11(P11)での、臍由来細胞並びに胎盤由来細胞の、それぞれ1つの単離株(胎盤由来細胞の2つの単離株、臍由来細胞の2つの単離株)と、繊維芽細胞(P11)とを使用した。免疫細胞化学は、以下のエピトープに対する抗体を使用して実行した:ビメンチン(1:500;Sigma(St.Louis,MO))、デスミン(1:150;Sigma、ウサギに対して産生;又は1:300;Chemicon(Temecula,CA)−マウスに対して産生)、α−平滑筋アクチン(SMA;1:400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation(Carpinteria,CA))。更には、以下のマーカーを、継代数11の分娩後細胞に対して試験した:抗ヒトGRO α−PE(1:100;Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech(Santa Cruz,CA))、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGO−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。
【0252】
培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma(St.Louis,MO))を含有する、タンパク質ブロッキング溶液に30分間曝した。目的のエピトープが、細胞表面上に位置している場合には(CD34、ox−LDL R1)、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての工程で、Triton X−100を省略した。更には、一次抗体がヤギに対して産生された場合には(GCP−2、ox−LDL R1、NOGO−A)、全体を通して、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及び/又はヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)若しくはロバ抗ヤギIgG−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0253】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
【0254】
FACS分析のための細胞の調製。フラスコ内の付着細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))中で洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,CA))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBSに、1×10
7/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。100マイクロリットルのアリコートを、円錐管に送った。細胞内抗原に関して染色された細胞を、Perm/Wash緩衝液(BD Pharmingen(San Diego,CA))を使用して、透過処理した。製造元の仕様書に従って、アリコートに抗体を添加し、それらの細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、過剰な抗体を除去した。二次抗体を必要とする細胞を、100マイクロリットルの3% FBS中に再懸濁させた。製造元の仕様書に従って、二次抗体を添加し、それらの細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、過剰な二次抗体を除去した。洗浄した細胞を、0.5ミリリットルのPBS中に再懸濁させ、フローサイトメトリーによって分析した。以下の抗体を使用した:酸化LDL受容体1(sc−5813;Santa Cruz、Biotech)、GROa(555042;BD Pharmingen(Bedford,MA))、マウスIgG1 κ(P−4685及びM−5284;Sigma)、ロバ抗ヤギIgG(sc−3743;Santa Cruz、Biotech)。フローサイトメトリー分析は、FACScalibur(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して実行した。
【0255】
結果
ヒト胎盤、成体及び新生児繊維芽細胞、並びに間葉系幹細胞(MSC)由来の細胞からの、cDNAに対して実行した、選択された「シグネチャー」遺伝子に関するリアルタイムPCRの結果は、他の細胞と比較して、胎盤由来細胞内では、酸化LDL受容体及びレンニンの双方が、高レベルで発現したことを示す。このリアルタイムPCRから得られたデータを、ΔΔCT法によって分析し、対数目盛上に表現した。レチクロン及び酸化LDL受容体の発現のレベルは、他の細胞と比較して、臍由来細胞内で高かった。胎盤由来細胞と対照との間には、CXCリガンド3及びGCP−2の発現レベルに有意差は見出されなかった。リアルタイムPCRの結果を、従来のPCRによって確認した。PCR産物の配列決定により、これらの観察結果が更に立証された。上記の従来のPCRのCXCリガンド3プライマーを使用したところ、胎盤由来細胞と対照との間には、CXCリガンド3の発現レベルに有意差は見出されなかった。
【0256】
分娩後でのサイトカイン、IL−8の産生は、増殖培地で培養した細胞、及び血清飢餓誘導細胞の双方で向上した。リアルタイムPCRの全データは、従来のPCRで、またPCR産物を配列決定することによって立証された。
【0257】
血清フリー培地中で増殖させた細胞の上清を、IL−8の存在に関して検査したところ、臍細胞由来の培地、及び一部の胎盤細胞の単離株由来の培地中で、最高量が検出された(表10−1)。ヒト皮膚繊維芽細胞由来の培地中では、IL−8は検出されなかった。
【表17】
ND:検出されず
【0258】
胎盤由来細胞はまた、FACS分析によって、酸化LDL受容体、GCP−2、及びGROαの産生に関しても検査された。細胞の検査結果は、GCP−2陽性を示した。酸化LDL受容体及びGROは、この方法によっては検出されなかった。
【0259】
胎盤由来細胞はまた、免疫細胞化学分析によって、選択されたタンパク質の産生に関しても試験された。単離の直後(継代数0)に、ヒト胎盤由来細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、6つのタンパク質:ヴォン・ヴィレブランド因子、CD34、サイトケラチン18、デスミン、α−平滑筋アクチン、及びビメンチンに関する抗体に曝した。細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの双方に関して陽性染色された。このパターンは、継代数11まで保持された。継代数0での少数の細胞(<5%)のみが、サイトケラチン18に関して陽性染色された。
【0260】
継代数0でのヒト臍帯由来細胞を、選択されたタンパク質の産生に関して、免疫細胞化学分析によってプロービングした。単離の直後(継代数0)に、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、6つのタンパク質:ヴォン・ヴィレブランド因子、CD34、サイトケラチン18、デスミン、α−平滑筋アクチン、及びビメンチンに関する抗体に曝した。臍由来細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンに関して陽性であり、この染色パターンは、継代数11まで一貫していた。
【0261】
要約。マイクロアレイ及びPCR(リアルタイム及び従来の双方)によって測定される遺伝子発現レベル間の一致が、4つの遺伝子:酸化LDL受容体1、レンニン、レチクロン、及びIL−8に関して確立された。これらの遺伝子の発現は、臍組織由来細胞及び胎盤由来細胞内で、mRNAレベルで示差的に調節され、IL−8はまた、タンパク質レベルでも示差的に調節された。酸化LDL受容体の存在は、胎盤由来細胞内では、FACS分析によって、タンパク質レベルでは検出されなかった。GCP−2と及びCXCリガンド3の示差的発現は、mRNAレベルでは確認されなかったが、しかしながら、GCP−2は、胎盤由来細胞内で、FACS分析によって、タンパク質レベルで検出された。この結果は、マイクロアレイ実験から最初に得られたデータには反映されていないが、これは、それらの方法論の感度の差異が原因であった可能性がある。
【0262】
単離の直後(継代数0)に、ヒト胎盤由来細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの双方に関して陽性染色された。このパターンはまた、継代数11の細胞内でも観察された。これらの結果は、ビメンチン及びα−平滑筋アクチンの発現が、増殖培地中、これらの手順で利用される条件下で継代している細胞内で、保持され得ることを示唆している。継代数0でのヒト臍帯由来細胞を、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの発現に関してプロービングしたところ、双方に関して陽性であった。この染色パターンは、継代数11まで保持された。
【0263】
(実施例11)
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞のインビトロ免疫学的評価
仮に存在する場合には、インビボ移植の際にUTC細胞が誘発する免疫学的応答を予測する目的で、UTC細胞を、それらの免疫学的特性に関して、インビトロで評価した。HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の存在に関して、UTCを、フローサイトメトリーによってアッセイした。これらのタンパク質は、抗原提示細胞(APC)によって発現され、ナイーブCD4
+ T細胞の直接刺激のために必要とされる(Abbas & Lichtman、Cellular and Molecular Immunology,5th Ed.(2003年)Saunders,Philadelphia,p.171)。これらの細胞株はまた、HLA−G(Abbas & Lichtman、2003年、上記参照)、CD 178(Coumansら、(1999年)Journal of Immunological Methods 224,185〜196)、及びPD−L2(Abbas & Lichtman、2003年、上記参照;Brownら(2003年)The Journal of Immunology 170、1257〜1266)の発現に関しても、フローサイトメトリーによって分析された。胎盤組織内に存在する細胞による、これらのタンパク質の発現は、子宮内の胎盤組織の免疫特権状態を媒介すると考えられる。胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株が、インビボで免疫反応を誘発する程度を予測するために、それらの細胞株を、一方向混合リンパ球反応(MLR)で試験した。
【0264】
材料及び方法
細胞培養。細胞を、2%ゼラチン(Sigma(St.Louis,MO))でコーティングされたT75フラスコ(Corning(Corning,NY)))内の、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する増殖培地中で、集密まで培養した。
【0265】
抗体染色。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,CA))で細胞を洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,MO))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10
7/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造元の仕様書に従って、100マイクロリットルの細胞懸濁液に、抗体(表11−1)を添加し、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合の抗体を除去した。500マイクロリットルのPBS中に、細胞を再懸濁させ、FACS Calibur計器(Becton Dickinson(San Jose,CA))を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。
【表18】
【0266】
混合リンパ球反応。細胞株Aとして標識される継代数10の臍由来細胞、及び細胞株Bとして標識される継代数11の胎盤由来細胞の、凍結保存バイアルを、ドライアイス上でCTBR(Senneville,Quebec)に送り、CTBR SOP No.CAC−031を使用して、混合リンパ球反応を実施した。末梢血単核細胞(PBMC)を、複数の男性及び女性のボランティアドナーから収集した。刺激側(ドナー)同種異系PBMC、自家PBMC、並びに臍細胞株及び胎盤細胞株を、マイトマイシンCで処理した。自家の、マイトマイシンC処理した刺激細胞を、応答側(レシピエント)PBMCに添加して、4日間培養した。インキュベーション後、各サンプルに[
3H]チミジンを添加して、18時間培養した。これらの細胞を採取した後に、放射標識DNAを抽出し、シンチレーション計数器を使用して、[
3H]−チミジンの取り込みを測定した。
【0267】
同種異系ドナーに関する刺激指数(SIAD)は、受容側+マイトマイシンC処理同種異系ドナーの平均増殖を、受容側のベースライン増殖によって除算したものとして、算出した。UTCの刺激指数は、受容側+マイトマイシンC処理分娩後細胞株の平均増殖を、受容側のベースライン増殖によって除算したものとして、算出した。
【0268】
結果
混合リンパ球反応−胎盤由来細胞。7つのヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の6つの血液ドナーとの混合リンパ球反応で強固な増殖反応を呈する、単一の同種異系ドナーを特定した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの6つの血液ドナーを、レシピエントとして選択した。同種異系陽性対照ドナー及び胎盤由来細胞株を、マイトマイシンCで処理し、6つの個々の同種異系受容側との混合リンパ球反応下で培養した。反応は、1つのプレート当り3つの受容側を有する、2つの細胞培養プレートを使用して、3重に実行した(表11−2)。平均刺激指数は、1.3(プレート2)〜3(プレート1)の範囲であり、同種異系ドナー陽性対照は、46.25(プレート2)〜279(プレート1)の範囲であった(表11−3)。
【表19-1】
【表19-2】
【表20】
【0269】
混合リンパ球反応−臍由来細胞。6つのヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の5つの血液ドナーとの混合リンパ球反応で強固な増殖反応を呈する、単一の同種異系ドナーを特定した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの5つの血液ドナーを、レシピエントとして選択した。同種異系陽性対照ドナー及び胎盤細胞株を、マイトマイシンC処理して、5つの個々の同種異系受容側との混合リンパ球反応下で培養した。反応は、1つのプレート当り3つの受容側を有する、2つの細胞培養プレートを使用して、3重に実行した(表11−4)。平均刺激指数は、6.5(プレート1)〜9(プレート2)の範囲であり、同種異系ドナー陽性対照は、42.75(プレート1)〜70(プレート2)の範囲であった(表11−5)。
【表21】
【表22】
【0270】
抗原提示細胞マーカー−胎盤由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、胎盤由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と一致する蛍光値によって認められるような、HLA−DR、DP、DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の陰性発現を示すが、このことは、胎盤細胞株には、CD4
+T細胞を直接刺激するために必要とされる、細胞表面分子が欠如していることを示す。
【0271】
免疫調節マーカー−胎盤由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、胎盤由来細胞のヒストグラムは、IgG対照に対する蛍光値の増大によって認められるような、PD−L2の陽性発現を示し、IgG対照と一致する蛍光値によって認められるような、CD178及びHLA−Gの陰性発現を示す。
【0272】
抗原提示細胞マーカー−臍由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、臍由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と一致する蛍光値によって認められるような、HLA−DR、DP、DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の陰性発現を示すが、このことは、臍細胞株には、CD4
+ T細胞を直接刺激するために必要とされる、細胞表面分子が欠如していることを示す。
【0273】
免疫調節細胞マーカー−臍由来細胞。フローサイトメトリーによって分析された、臍由来細胞のヒストグラムは、IgG対照に対する蛍光値の増大によって認められるような、PD−L2の陽性発現を示し、IgG対照と一致する蛍光値によって認められるような、CD178及びHLA−Gの陰性発現を示す。
【0274】
要約。胎盤由来細胞株を使用して実施された混合リンパ球反応では、平均刺激指数は、1.3〜3の範囲であり、同種異系陽性対照の平均刺激指数は、46.25〜279の範囲であった。臍由来細胞株を使用して実施された混合リンパ球反応では、平均刺激指数は、6.5〜9の範囲であり、同種異系陽性対照の平均刺激指数は、42.75〜70の範囲であった。胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株は、フローサイトメトリーによって測定されたように、刺激タンパク質HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の発現に関しては陰性であった。胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株は、フローサイトメトリーによって測定されたように、免疫調節タンパク質HLA−G及びCD178の発現に関しては陰性であり、PD−L2の発現に関しては陽性であった。同種異系ドナーPBMCは、HLA−DR、DQ、CD8、CD86、及びB7−H2を発現する、抗原提示細胞を含むことにより、ナイーブCD4
+ T細胞の刺激が可能となる。ナイーブCD4
+ T細胞の直接刺激に必要とされる、胎盤由来細胞及び臍由来細胞上の抗原提示細胞表面分子の非存在、並びに免疫調節タンパク質の、PD−L2の存在は、同種異系対照と比較した、これらの細胞によって呈される、MLRでの低い刺激指数を説明し得る。
【0275】
(実施例12)
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞による、栄養因子の分泌
胎盤由来細胞及び臍由来細胞からの、選択された栄養因子の分泌を測定した。検出に関して選択される因子には、(1)肝細胞増殖因子(HGF)(Rosenら(1997年)Ciba Found.Symp.212:215〜26)、単球走化性タンパク質1(MCP−1)(Salcedoら(2000年)Blood 96;34〜40)、インターロイキン−8(IL−8)(Liら(2003年)J.Immunol.170:3369〜76)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)(Hughesら(2004年)Ann.Thorac.Surg.77:812〜8)、マトリックスメタロプロテアーゼ1(TIMP1)、アンギオポエチン2(ANG2)、血小板由来増殖因子(PDGF−bb)、トロンボポエチン(TPO)、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB−EGF)、間質由来因子1α(SDF−1α)などの、血管新生活性を有することが既知であるもの;(2)脳由来神経栄養因子(BDNF)(Chengら(2003年)Dev.Biol.258;319〜33)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球走化性タンパク質−2(GCP−2)、トランスフォーミング増殖因子β2(TGFβ2)などの、神経栄養/神経保護活性を有することが既知であるもの;(3)マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP1a)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP1b)、単球走化性因子−1(MCP−1)、Rantes(活性化時調節正常T細胞発現及び分泌物)、I309、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、IL−8)などの、ケモカイン活性を有することが既知であるものを含めた。
【0276】
方法及び材料
細胞培養。胎盤由来細胞及び臍由来細胞、並びにヒト新生児包皮由来のヒト繊維芽細胞を、ゼラチンコーティングT75フラスコ上の、ペニシリン/ストレプトマイシンを有する増殖培地中で培養した。継代数11で、細胞を凍結保存し、液体窒素中で保存した。細胞の解凍後、それらの細胞に増殖培地を添加し、その後、15ミリリットル遠沈管に移して、150×gで5分間、それらの細胞を遠心分離した。上清を廃棄した。4ミリリットルの増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させ、細胞を計数した。15ミリリットルの増殖培地を収容する、75cm
2のフラスコ1つ当り、375,000細胞で、細胞を播種し、24時間培養した。この培地を、血清フリー培地(DMEM−低グルコース(Gibco)、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(Sigma)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco))に、8時間にわたって交換した。インキュベーションの終了時に、14,000×gで5分間の遠心分離によって、血清フリー馴化培地を収集し、−20℃で保存した。各フラスコ内の細胞の数を概算するために、PBSで細胞を洗浄し、2ミリリットルのトリプシン/EDTAを使用して剥離させた。8ミリリットルの増殖培地の添加によって、トリプシン活性を抑制した。150×gで5分間、細胞を遠心分離した。上清を除去し、1ミリリットルの増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。血球計数器を使用して、細胞数を概算した。
【0277】
ELISAアッセイ。細胞を、5%二酸化炭素及び大気酸素中、37℃で増殖させた。胎盤由来細胞(バッチ101503)はまた、5%酸素又はβ−メルカプトエタノール(BME)中でも増殖させた。各細胞サンプルによって産生された、MCP−1、IL−6、VEGF、SDF−1α、GCP−2、IL−8、及びTGF−β 2の量を、ELISAアッセイ(R&D Systems(Minneapolis,MN))によって測定した。全てのアッセイは、製造元の使用説明書に従って実行した。
【0278】
SearchLight(商標)多重ELISAアッセイ。ケモカイン(MIP1a、MIP1b、MCP−1、Rantes、I309、TARC、エオタキシン、MDC、IL8)、BDNF、及び血管新生因子(HGF、KGF、bFGF、VEGF、TIMP1、ANG2、PDGF−bb、TPO、HB−EGF)を、SearchLightプロテオームアレイ(Pierce Biotechnology Inc.)を使用して測定した。このプロテオームアレイは、1ウェル当り2〜16のタンパク質の定量測定のための、多重サンドイッチELISAである。これらのアレイは、96ウェルプレートの各ウェル内に、2×2、3×3、又は4×4パターンの、4〜16の種々の捕捉抗体をスポットすることによって作り出される。サンドイッチELISA手順の後に、プレート全体を画像化して、プレートの各ウェル内部の各スポットで生成された、化学発光シグナルを捕捉する。各スポット内で生成されるシグナルの量は、元の標準又はサンプル中の、標的タンパク質の量に比例する。
【0279】
結果
ELISAアッセイ。MCP−1及びIL−6は、胎盤由来細胞及び臍由来細胞、並びに皮膚繊維芽細胞によって分泌された(表12−1)。SDF−1αは、5% O
2中で培養された胎盤由来細胞によって、及び繊維芽細胞によって分泌された。GCP−2及びIL−8は、臍由来細胞によって、及びBME若しくは5% O
2の存在下で培養された胎盤由来細胞によって分泌された。GCP−2はまた、ヒト繊維芽細胞によっても分泌された。TGF−β2は、ELISAアッセイによっては検出されなかった。
【表23】
凡例:ND:検出されず。
【0280】
Searchlight(商標)多重ELISAアッセイ。TIMP1、TPO、KGF、HGF、FGF、HBEGF、BDNF、MIP1b、MCP1、RANTES、I309、TARC、MDC、及びIL−8は、臍由来細胞から分泌された(表12−2及び表12−3)。TIMP1、TPO、KGF、HGF、HBEGF、BDNF、MIP1a、MCP−1、RANTES、TARC、エオタキシン、及びIL−8は、胎盤由来細胞から分泌された(表12−2及び表12−3)。Ang2、VEGF、又はPDGF−bbは、検出されなかった。
【表24】
凡例:hFB(ヒト繊維芽細胞)、P1(胎盤由来細胞(042303))、U1(臍由来細胞(022803))、
P3(胎盤由来細胞(071003))、U3(臍由来細胞(071003))。ND:検出されず。
【表25】
凡例:hFB(ヒト繊維芽細胞)、P1(胎盤由来細胞(042303))、U1(臍由来細胞(022803))、
P3(胎盤由来細胞(071003))、U3(臍由来細胞(071003))。ND:検出されず。
【0281】
要約。臍由来細胞及び胎盤由来細胞は、多数の栄養因子を分泌した。HGF、bFGF、MCP−1、及びIL−8などの、これらの栄養因子のうちの一部は、血管新生に重要な役割を果たす。BDNF及びIL−6などの、他の栄養因子は、神経再生に重要な役割を果たす。
【0282】
(実施例13)
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の、短期神経分化
胎盤由来細胞及び臍由来細胞の、神経系統細胞へと分化する能力を検査した。
【0283】
材料及び方法
臍由来細胞及び胎盤由来細胞の、単離並びに増殖。胎盤組織及び臍組織由来の細胞を、実施例1で説明されるように、単離して、増殖させた。
【0284】
改変Woodbury−Blackプロトコル。(A)このアッセイは、骨髄間質細胞の神経誘導能を試験するために元来実行されたアッセイを応用したものである(1)。臍由来細胞(022803)P4、及び胎盤由来細胞(042203)P3を解凍して、準集密(75%)に到達するまで、増殖培地中に、5,000細胞/cm
2で培養増殖させた。次いで、細胞をトリプシン処理して、Titretek IIスライドガラス(VWR International(Bristol,CT))の1ウェル当り、6,000細胞で播種した。対照として、間葉系幹細胞(P3;1F2155;Cambrex(Walkersville,MD))、骨芽細胞(P5;CC2538;Cambrex)、脂肪由来細胞(Artecel、米国特許第6555374(B1)号)(P6;ドナー2)、及び新生児ヒト皮膚繊維芽細胞(P6;CC2509;Cambrex)もまた、同じ条件下で播種した。
【0285】
全ての細胞を、最初に、15%(v/v)ウシ胎児血清(FBS;Hyclone(Logan,UT))、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF;20ナノグラム/ミリリットル;Peprotech(Rocky Hill,NJ))、上皮増殖因子(EGF;20ナノグラム/ミリリットル;Peprotech)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有する、DMEM/F12培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))中で4日間、増殖させた。4日後に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen)中で細胞をすすぎ、引き続き、DMEM/F12培地+20%(v/v)FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン中で、24時間培養した。24時間後に、細胞をPBSですすいだ。次いで、200mMのブチル化ヒドロキシアニソール、10μMの塩化カリウム、5ミリグラム/ミリリットルのインスリン、10μMのフォルスコリン、4μMのバルプロ酸、及び2μMのヒドロコルチゾン(全ての化学薬品は、Sigma(St.Louis,MO)より)を含有する、DMEM/F12(血清フリー)からなる誘導培地中で、1〜6時間、細胞を培養した。次いで、100%氷冷メタノール中で、細胞を固定し、免疫細胞化学を実行して(下記の方法を参照)、ヒトネスチンタンパク質の発現を査定した。
【0286】
(B)由来細胞(臍(022803)P11;胎盤(042203)P11)及び成体ヒト皮膚繊維芽細胞(1F1853、P11)を解凍して、準集密(75%)に到達するまで、増殖培地中に、5,000細胞/cm2で培養増殖させた。次いで、細胞をトリプシン処理して、(A)と同様の密度で、ただし、(1)24ウェル組織培養処理プレート(TCP、Falconブランド、VWR International)、(2)TCPウェル+室温で1時間吸着させた2%(w/v)ゼラチン、又は(3)TCPウェル+20μg/ミリリットルの吸着マウスラミニン(37℃で最低2時間吸着;Invitrogen)上に播種した。
【0287】
厳密に(A)と同様に、細胞を最初に増殖させ、培地を前述の時間枠で切り替えた。培養物の1セットを、前述のように5日と6時間の時点で、この場合は、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、室温で10分間にわたって固定した。培養物の第2のセットでは、培地を除去して、B27(B27サプリメント;Invitrogen)、L−グルタミン(4mM)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen)からなる、神経前駆体増殖培地(NPE)に切り替えた。NPE培地に、レチノイン酸(RA;1μM;Sigma)を更に添加した。4日後に、この培地を除去して、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、培養物を、室温で10分間にわたって固定し、ネスチン、GFAP、及びTuJ1タンパク質の発現に関して染色した(表13−1を参照)。
【表26】
【0288】
2段階分化プロトコル。由来細胞(臍(042203)P11、胎盤(022803)P11)、成体ヒト皮膚繊維芽細胞(P11;1F1853;Cambrex)を解凍して、準集密(75%)に到達するまで、増殖培地中に、5,000細胞/cm
2で培養増殖させた。次いで、細胞をトリプシン処理して、bFGF(20ナノグラム/ミリリットル;Peprotech(Rocky Hill,NJ))及びEGF(20ナノグラム/ミリリットル;Peprotech)を添加した、NPE培地[培地全体の組成は、NPE+F+Eと更に称される]の存在下で、ラミニン(BD Biosciences(Franklin Lakes,NJ))コーティングされた24ウェルプレート上に、2,000細胞/cm
2で播種した、同時に、海馬から単離された成体ラット神経前駆細胞(P4;(062603)もまた、NPE+F+E培地中、24ウェルラミニンコーティングプレート上にプレーティングした。全ての培養物を、そのような条件下で、6日間にわたって維持し(その期間中、細胞に1回栄養補給した)、その時点で、更に7日間にわたって、表N1−2に列記される分化条件に、培地を切り替えた。氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、培養物を、室温で10分間固定し、ヒトネスチン若しくはラットネスチン、GFAP、及びTuJ1タンパク質の発現に関して染色した。
【表27】
【0289】
複数増殖因子プロトコル。臍由来細胞(P11;(042203))を解凍して、準集密(75%)に到達するまで、増殖培地中、5,000細胞/cm
2で培養増殖させた。次いで、細胞をトリプシン処理して、NPE+F(20ナノグラム/ミリリットル)+E(20ナノグラム/ミリリットル)の存在下で、24ウェルラミニンコーティングプレート(BD Biosciences)上に、2,000細胞/cm
2で播種した。更には、一部のウェルは、NPE+F+E+2% FBS又は10% FBSを収容した。「予備分化」の4日後に、全ての培地を除去して、ソニックヘッジホッグ(SHH;200ナノグラム/ミリリットル;Sigma(St.Louis,MO))、FGF8(100ナノグラム/ミリリットル;Peprotech)、BDNF(40ナノグラム/ミリリットル;Sigma)、GDNF(20ナノグラム/ミリリットル;Sigma)、及びレチノイン酸(1μM;Sigma)を添加したNPE培地に、サンプルを切り替えた。培地交換から7日後に、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、培養物を、室温で10分間固定し、ヒトネスチン、GFAP、TuJ1,デスミン、及びα−平滑筋アクチンの発現に関して染色した。
【0290】
神経前駆細胞の共培養プロトコル。成体ラット海馬前駆細胞(062603)を、NPE+F(20ナノグラム/ミリリットル)+E(20ナノグラム/ミリリットル)中、ラミニンコーティング24ウェルディッシュ(BD Biosciences)上に、ニューロスフェア又は単一細胞として、プレーティング(10,000細胞/ウェル)した。
【0291】
別個に、臍由来細胞(042203)P11、及び胎盤由来細胞(022803)P11を解凍して、NPE+F(20ナノグラム/ミリリットル)+E(20ナノグラム/ミリリットル)中に、5,000細胞/cm
2で、48時間にわたって培養増殖させた。次いで、細胞をトリプシン処理して、既存の神経前駆細胞の培養物上に、2,500細胞/ウェルで播種した。その時点で、既存の培地を、新鮮培地に交換した。4日後に、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、培養物を、室温で10分間固定し、ヒト核タンパク質(hNuc;Chemicon)(上記の表NU1−1)に関して染色することにより、臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞を同定した。
【0292】
免疫細胞化学。免疫細胞化学を、表NU1−1に列記した抗体を使用して実行した。培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝した。次いで、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及びヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)と共にブロッキング溶液を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0293】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
【0294】
結果
Woodbury−Blackプロトコル。(Woodbury,D.ら(2000年)J Neurosci.Research.61(4):364〜70)。(A)この神経誘導組成物中でのインキュベーションの際に、全ての細胞型が、双極性の形態及び伸長した突起を有する細胞へと、形質転換した。他の、より大きい非双極性形態もまた、観察された。更には、これらの誘導細胞集団は、複能性の神経幹細胞及び前駆細胞のマーカーである、ネスチンに関して、陽性染色された。
【0295】
(B)組織培養プラスチック(TCP)ディッシュ上で繰り返される場合、培養表面に予めラミニンを吸着させない限り、ネスチンの発現は観察されなかった。ネスチン発現細胞が、次いで成熟ニューロンの生成へと進むことが可能か否かを、更に評価するために、そのような細胞への神経幹細胞及び前駆細胞の分化を誘導することが既知の培地組成物である、NPE+RA(1μM)に、臍帯組織由来細、胎盤由来細胞、及び繊維芽細胞を曝した(Jang,Y.K.ら(2004年)J.Neurosci.Research.75(4):573〜84;Jones−Villeneuve,E.M.ら(1983年)Mol Cel Biol.3(12):2271〜9;Mayer−Proschel,M.ら(1997年)Neuron.19(4):773〜85)。未熟ニューロン及び成熟ニューロンのマーカーであるTuJ1、星状細胞のマーカーであるGFAP、並びにネスチンに関して、細胞を染色した。いずれの条件下でも、TuJ1は検出されず、神経形態を有する細胞も観察されなかったが、このことは、ニューロンが短期間では生成されなかったことを示唆する。更には、免疫細胞化学によって判定されたように、ネスチン及びGFAPは、以降は、臍由来細胞及び胎盤由来細胞によって発現されなかった。
【0296】
2段階分化。臍単離株及び胎盤単離株(並びに、それぞれ陰性対照細胞型及び陽性対照細胞型としての、ヒト繊維芽細胞及び齧歯類神経前駆細胞)を、ラミニン(神経促進)コーティングディッシュ上にプレーティングして、ニューロン及び星状細胞への、神経前駆細胞の分化を促進することが既知である、13の異なる増殖条件(及び2つの対照条件)に曝した。更には、細胞分化に対する、GDF5及びBMP7の影響を検査するために、2つの条件を追加した。全般的には、2段階分化アプローチを採択して、細胞を、最初に6日間、神経前駆細胞増殖条件に置き、その後に7日間、完全分化条件に置いた。形態学的には、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の双方が、この手順の時間経過の全体を通して、細胞形態の根本的変化を呈した。しかしながら、対照の神経前駆細胞プレーティング条件を除き、神経細胞又は星状細胞は観察されなかった。ヒトネスチン、TuJ1、及びGFAPに関して陰性の、免疫細胞化学により、これらの形態学的観察結果が確認された。
【0297】
複数の増殖因子。様々な神経分化剤に1週間曝した後に、神経前駆細胞(ヒトネスチン)、ニューロン(TuJ1)、及び星状細胞(GFAP)の指標となるマーカーに関して、細胞を染色した。第一段階で非血清含有培地中に増殖させた細胞は、血清含有(2%又は10%)培地中の細胞とは異なる、潜在的な神経分化を示す形態を有していた。具体的には、臍由来細胞をEGF及びbFGFに曝し、その後、SHH、FGF8、GDNF、BDNF、及びレチノイン酸に曝す2段階手順の後に、細胞は、培養星状細胞の形態と同様の、長く伸長した突起を示した。第1段階の分化で、2% FBS又は10% FBSを含んでいた場合、細胞数が増大し、細胞形態は、高密度の対照培養から変化しなかった。潜在的な神経分化は、ヒトネスチン、TuJ1、又はGFAPに関する免疫細胞化学分析によっては、証明されなかった。
【0298】
神経前駆細胞及びUTCの共培養。神経増殖条件(NPE+F+E)中に2日早く播種した、ラット神経前駆細胞の培養物上に、臍由来細胞及び胎盤由来細胞をプレーティングした。プレーティングされたUTC及び胎盤由来細胞の目視確認により、これらの細胞は、単一細胞としてプレーティングされたことが認められたが、プレーティング後4日目(計6日目)の、ヒト特異的核染色(hNuc)により、それらの細胞は球状に固まり、神経前駆細胞との接触を回避する傾向があることが示された。更には、UTCが付着する場合に、これらの細胞は散開し、ラット起源のものであった分化ニューロンによって神経支配されたように思われたが、このことは、UTCが、筋細胞へと分化した可能性があることを示唆する。この観察結果は、位相差顕微鏡下での形態に基づくものであった。別の観察結果では、典型的に大きい細胞体(神経前駆細胞よりも大きい)は、細い突起が多方向に広がる、神経前駆細胞に類似する形態を保有していた。HNuc染色(細胞核の2分の1で見出された)は、これらのヒト細胞が、一部の場合には、ラット前駆細胞と融合し、それらの表現型を呈した可能性があることを示唆している。神経前駆細胞のみを収容する対照ウェルは、臍由来細胞又は胎盤由来細胞を収容する共培養ウェルよりも、前駆細胞及び明白な分化細胞の総数が少なかったが、このことは、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の双方が、ケモカイン及びサイトカインの放出によって、あるいは接触が媒介する効果によって、神経前駆細胞の分化及び挙動に影響を及ぼしたことを、更に示す。
【0299】
要約。複数のプロトコルを実施して、UTC及び胎盤由来細胞の、神経系統細胞へと分化する短期的潜在能力を判定した。これらのプロトコルには、それぞれ、複能性の神経幹細胞及び前駆細胞、未熟ニューロン及び成熟ニューロン、並びに星状細胞に関連するタンパク質である、ネスチン、TuJ1、及びGFAPに関する、免疫細胞化学と組み合わせた、形態の位相コントラスト画像法を含めた。これらの短期プロトコルでは、特定の場合に神経分化が発生したことを示唆する証拠が観察された。
【0300】
UTC及び胎盤由来細胞と神経前駆細胞との共培養で、幾つかの注目すべき観察結果が得られた。異種の細胞型と共にヒトUTC及びヒト胎盤由来細胞を使用する、この手法は、これらの培養物中の各細胞の起源の、絶対的な決定を可能とした。第1に、細胞質が拡大し、神経突起様の突起が細胞体から伸長している幾つかの細胞が、これらの培養物中で観察されたが、それらの細胞体の半分のみがhNucタンパク質で標識された。それらの細胞は、神経系統細胞へと分化した、ヒトUTC及びヒト胎盤由来細胞であった可能性があり、又はそれらの細胞は、神経前駆細胞と融合した、UTC及び胎盤由来細胞であった可能性もある。第2に、神経前駆細胞は、UTC及び胎盤由来細胞へ神経突起を伸長させたように考えられたが、このことにより、神経前駆細胞がニューロンへ分化して、UTC及び胎盤由来細胞を神経支配したことが示される。第3に、神経前駆細胞並びにUTC及び胎盤由来細胞の培養物は、神経前駆細胞単独の対照培養物よりも、ラット起源の細胞が多く、分化が多量であったが、このことは、プレーティングされたUTC及び胎盤由来細胞が、神経前駆細胞の生存、増殖、及び/又は分化を刺激する、可溶性因子並びに/あるいは接触依存性機序を提供したことを、更に示している。
【0301】
(実施例14)
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の、長期神経分化
臍由来細胞及び胎盤由来細胞の、神経系統細胞への長期分化を経験する能力を評価した。
【0302】
材料及び方法
細胞の単離及び増殖。従前の実施例で説明されるように、細胞を単離して、増殖させた。
【0303】
細胞の解凍及びプレーティング。従前に増殖培地中で増殖させた細胞の冷凍アリコート(臍(022803)P11;(042203)P11;(071003)P12;胎盤(101503)P7)を解凍して、B27(B27サプリメント、Invitrogen)、L−グルタミン(4mM)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(10ミリリットル)を含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))(この組合せは、本明細書では、神経前駆細胞増殖(NPE)培地と称される)中、ラミニン(BD(Franklin Lakes,NJ))でコーティングしたT−75フラスコ内に、5,000細胞/cm
2でプレーティングした。NPE培地には、bFGF(20ナノグラム/ミリリットル、Peprotech(Rocky Hill,NJ))及びEGF(20ナノグラム/ミリリットル、Peprotech(Rocky Hill,NJ))を更に添加した(本明細書では、NPE+bFGF+EGFと称される)。
【0304】
対照細胞のプレーティング。更には、成体ヒト皮膚繊維芽細胞(P11、Cambrex(Walkersville,MD))及び間葉系幹細胞(P5、Cambrex)を解凍して、NPE+bFGF+EGF中、ラミニンコーティングT−75フラスコ上に、同じ細胞播種密度でプレーティングした。更なる対照として、繊維芽細胞、臍細胞、及び胎盤細胞を、増殖培地中で、全ての培養物に関して指定された期間にわたって増殖させた。
【0305】
細胞の増殖。全ての培養物からの培地は、1週間に1回、新鮮培地に置き換えて、細胞の増殖を観察した。全般的には、NPE+bFGF+EGF中での増殖の限界のため、各培養物は、1か月の期間で1回継代した。
【0306】
免疫細胞化学。1か月の期間の後に、全てのフラスコを、室温で10分間、冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して固定した。TuJ1(BIIIチューブリン;1:500;Sigma(St.Louis,MO))及びGFAP(グリア繊維酸性タンパク質;1:2000;DakoCytomation(Carpinteria,CA))に対する抗体を使用して、免疫細胞化学を実行した。簡潔には、培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝した。次いで、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及びヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)と共にブロッキング溶液を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0307】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
【表28】
【0308】
結果
NPE+bFGF+EGF培地は、UTCの増殖を遅延させ、それらの細胞の形態を変化させる。プレーティングの直後に、細胞のサブセットが、ラミニンでコーティングした培養フラスコに付着した。このことは、凍結/解凍プロセスの機能としての細胞死によるものか、又は新たな増殖条件が原因であった可能性がある。付着した細胞は、増殖培地中で観察されるものとは異なる形態を取っていた。
【0309】
集密した際、培養物を継代して、増殖を観察した。継代で生き残った細胞では、殆ど増殖が生じなかった。この時点で、臍由来細胞の培養物中には、拡大形態を有さず、相の明るい特性を有する極めて小さい細胞が現れ始めた。フラスコのこれらの領域は、経時的に進行した。これらの小細胞から、その長さに沿った結節状構造を有して出現した分岐突起は、従前に説明された、脳及び脊髄由来の、PSA−NCAM+神経前駆細胞、及びTuJ1+未熟ニューロンと、極めて類似した特徴を有する(Mayer−Proschel,M.ら(1997年)Neuron.19(4):773〜85;Yang,H.ら(2000年)PNAS.97(24):13366〜71)。時間と共に、これらの細胞は、更に多数になるが、依然としてクローン内にのみ見出された。
【0310】
臍由来細胞のクローンは、神経タンパク質を発現する。解凍/プレーティングの1か月後に、培養物を固定し、神経タンパク質TuJ1、及び星状細胞内に見出される中間体微細繊維であるGFAPに関して、染色した。増殖培地中で増殖させた全ての対照培養物、並びにNPE+bFGF+EGF培地中で増殖させたヒト繊維芽細胞及びMSCは、TuJ1−/GFAP−であることが判明したが、臍由来細胞及び胎盤由来細胞内では、TuJ1が検出された。神経様形態を有する細胞、及び有さない細胞内で、発現が観察された。いずれの培養物内にも、GFAPの発現は観察されなかった。神経様形態を有する、TuJ1を発現する細胞の百分率は、全集団の1%以下であった(試験した臍由来細胞単離株n=3)。定量化されていないが、神経様形態を有さないTuJ1+細胞の百分率は、胎盤由来細胞培養物よりも、臍由来細胞培養物内で高かった。これらの結果は、増殖培地中の同齢の対照がTuJ1を発現しなかったため、特異的であると考えられた。
【0311】
要約。臍由来細胞から、分化ニューロンを生成するための方法(TuJ1の発現及び神経形態学に基づく)が開発された。TuJ1に関する発現は、インビトロで、1か月よりも早い時点では検査しなかったが、臍由来細胞の少なくとも小集団は、既定の分化を通じて、あるいはL−グルタミン、塩基性FGF、及びEGFを添加した最小培地に1か月曝した後の長期誘導を通じて、ニューロンを生じさせることができる点が明らかである。
【0312】
(実施例15)
神経前駆細胞支援のための栄養因子
成体神経幹細胞並びに前駆細胞の生存及び分化に対する、非接触依存性(栄養性)の機序を通じた、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の影響を検査した。
【0313】
材料及び方法
成体神経幹細胞及び前駆細胞の単離。Fisher 344成体ラットを、CO
2窒息、その後の頸椎脱臼によって致死させた。骨鉗子を使用して、脳全体を無傷な状態で摘出し、脳の運動領域及び体性感覚領域の後方の冠状切開に基づいて、海馬組織を解剖した(Paxinos,G.& Watson,C.1997年、「The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates」)。B27(B27サプリメント、Invitrogen)、L−グルタミン(4mM;Invitrogen)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))(この組合せは、本明細書では、神経前駆細胞増殖(NPE)培地と称される)中で、組織を洗浄した。NPE培地には、bFGF(20ナノグラム/ミリリットル、Peprotech(Rocky Hill,NJ))及びEGF(20ナノグラム/ミリリットル、Peprotech(Rocky Hill,NJ))を更に添加した(本明細書では、NPE+bFGF+EGFと称される)。
【0314】
洗浄の後に、上を覆う髄膜を除去して、外科用メスで組織を細断した。細断した組織を収集し、トリプシン/EDTA(Invitrogen)を、総容積の75%として添加した。DNアーゼ(100マイクロリットル/総容積8ミリリットル、Sigma(St.Louis,MO))もまた、添加した。次に、この組織/培地を、18ゲージのニードル、20ゲージのニードル、及び最終的に25ゲージのニードルに各1回、連続的に通過させた(全てのニードルは、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)より)。この混合物を、250gで3分間、遠心分離した。上清を除去し、新鮮なNPE+bFGF+EGFを添加して、ペレットを再懸濁させた。得られた細胞懸濁液を、40マイクロメートル細胞濾過器(Becton Dickinson)に通過させ、ラミニンコーティングT−75フラスコ(Becton Dickinson)又は低クラスター24ウェルプレート(Becton Dickinson)上にプレーティングして、NPE+bFGF+EGF培地中で、概説される研究のために十分な細胞数が得られるまで、増殖させた。
【0315】
細胞のプレーティング。従前に増殖培地中で増殖させた由来細胞(臍(022803)P12、(042103)P12、(071003)P12;胎盤(042203)P12)を、5,000細胞/トランスウェルインサート(24ウェルプレート用のサイズ)でプレーティングして、インサート内の増殖培地中で、1週間にわたって増殖させ、集密に到達させた。
【0316】
成体神経前駆細胞のプレーティング。ニューロスフェアとして、又は単一細胞として増殖させた神経前駆細胞を、NPE+bFGF+EGF中、ラミニンコーティング24ウェルプレート上に、約2,000細胞/ウェルの密度で播種して、1日の間、細胞の付着を促進させた。1日後、以下のスキームに従って、由来細胞を収容するトランスウェルインサートを追加した:
(1)トランスウェル(増殖培地中の臍由来細胞、200マイクロリットル)+神経前駆細胞(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
(2)トランスウェル(増殖培地中の胎盤由来細胞、200マイクロリットル)+神経前駆細胞(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
(3)トランスウェル(増殖培地中の成体ヒト皮膚繊維芽細胞[1F1853;Cambrex(Walkersville,MD)]P12、200マイクロリットル)+神経前駆細胞(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
(4)対照:神経前駆細胞単独(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
(5)対照:神経前駆細胞単独(NPEのみ、1ミリリットル)
【0317】
免疫細胞化学。共培養7日後、全ての条件を、室温で10分間にわたって、4%(w/v)冷パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して固定した。表15−1に列記されるエピトープに対する抗体を使用して、免疫細胞化学を実行した。簡潔には、培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,CA))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝した。次いで、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,OR))及びヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)と共にブロッキング溶液を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10マイクロモルのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
【0318】
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,NY))上で、適切な蛍光フィルターを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,CA))を使用して取り込んだ。3重染色サンプルに関しては、1回に1つのみの発光フィルターを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,CA))を使用して、階層モンタージュを調製した。
【表29】
【0319】
神経前駆細胞の分化の定量分析。海馬神経前駆細胞分化の定量化を検査した。各条件当り、最低1000細胞を計数し、少ない場合には、その条件内で観察された細胞の総数とした。所定の染色に関して陽性の細胞の百分率を、DAPI(核)染色によって判定されるように、陽性細胞の数を細胞の総数で除算することによって、評価した。
【0320】
質量分析& 2Dゲル電気泳動。共培養の結果としての、固有の分泌因子を同定するために、培養物の固定の前に採取した馴化培地サンプルを、−80℃で一晩凍結させた。次いで、限外濾過スピン装置(分画分子量30kD)に、サンプルを適用した。保持液を、免疫アフィニティークロマトグラフィー(抗Hu−アルブミン;IgY)に適用した(免疫アフィニティーは、これらのサンプルからアルブミンを除去しなかった)。濾液を、MALDIによって分析した。この透過物を、Cibachron Blueアフィニティークロマトグラフィーに適用した。サンプルを、SDS−PAGE及び2Dゲル電気泳動によって分析した。
【0321】
結果
由来細胞の共培養は、成体神経前駆細胞の分化を刺激する。臍由来細胞又は胎盤由来細胞との共培養の後に、成体ラット海馬由来の、共培養された神経前駆細胞は、中枢神経系の3つの全ての主要系統に沿った、有意な分化を呈した。この効果は、共培養5日後に、明確に観察され、数多くの細胞が、複雑な突起を作り出し、分裂中の前駆細胞に固有の、相の明るい特徴を喪失していた。反対に、bFGF及びEGFの非存在下で、単独で増殖させた神経前駆細胞は、健常性が見られず、生存に限界があった。
【0322】
この手順の完了後、未分化幹細胞及び前駆細胞(ネスチン)、未熟ニューロン及び成熟ニューロン(TuJ1)、星状細胞(GFAP)、並びに成熟乏突起神経膠細胞(MBP)の指標となるマーカーに関して、培養物を染色した。3つの全ての系統に沿った分化が確認されたが、対照条件は、大多数の細胞中でのネスチン陽性染色の保持によって証明されるように、有意な分化を呈さなかった。臍由来細胞及び胎盤由来細胞の双方が、細胞の分化を誘導したが、3つの全ての系統に関する分化の程度は、臍由来細胞との共培養の場合よりも、胎盤由来細胞との共培養の場合のほうが小さかった。
【0323】
臍由来細胞との共培養の後に、分化した神経前駆細胞の百分率を定量化した(表15−2)。臍由来細胞は、成熟乏突起神経膠細胞(MBP)の数を、有意に増進させた(双方の対照条件での0%に対して、24.0%)。更には、共培養は、培養下のGFAP+星状細胞及びTuJ1+ニューロンの数を増進させた(それぞれ、47.2%及び8.7%)。これらの結果は、共培養後に前駆細胞状態が喪失したことを示す、ネスチン染色(対照条件4での71.4%に対して、13.4%)によって確認された。
【0324】
分化はまた、成体ヒト繊維芽細胞によっても影響を受けるものと考えられたが、そのような細胞は、成熟乏突起神経膠細胞の分化を促進することは不可能であり、感知し得る量のニューロンを生成することも不可能であった。しかしながら、定量化されなかったものの、繊維芽細胞は、神経前駆細胞の生存を増進させるものと思われた。
【表30】
【0325】
固有化合物の同定。臍由来共培養及び胎盤由来共培養からの馴化培地を、適切な対照(NPE培地±1.7%血清、繊維芽細胞との共培養からの培地)と共に、差異に関して検査した。潜在的に固有な化合物を同定して、それらの対応する2Dゲルから切除した。
【0326】
要約。臍由来細胞又は胎盤由来細胞との、成体神経前駆細胞の共培養は、それらの細胞の分化を生じさせる。この実施例で提示される結果により、臍由来細胞との共培養後の成体神経前駆細胞の分化が、特に顕著であることが示される。具体的には、有意な百分率の成熟乏突起神経膠細胞が、臍由来細胞の共培養物内に生成された。臍由来細胞と神経前駆細胞との接触の欠如を考慮すると、この結果は、臍由来細胞から放出された可溶性因子の機能(栄養作用)であるものと考えられる。
【0327】
幾つかの他の観察結果が得られた。第1に、EGF及びbFGFが除去された対照条件では、極めて少数の細胞しか存在しなかった。殆どの細胞が死滅し、平均して、1ウェル当たり約100以下の細胞が存在した。第2に、EGF及びbFGFが全体を通して培地中に保持された対照条件では、分化が殆ど存在しないことが予測されるが、これは、通常、この培地が増殖培地であるためである。約70%の細胞が、それらの前駆細胞状態(ネスチン+)を保持することが観察されたが、約30%は、GFAP+(星状細胞の指標)であった。このことは、そのような顕著な増殖が、この手順の過程全体を通して生じたことにより、前駆細胞間の接触が、この分化を誘導したためである可能性がある(Song,H.ら、2002年、Nature 417(6884):39〜44)。
【0328】
(実施例16)
臍由来細胞及び胎盤由来細胞の移植
臍由来細胞及び胎盤由来細胞は、再生療法に関して有用である。生分解性材料と共にSCIDマウス内に移植された臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞によって産生される、組織を評価した。評価する材料は、バイクリル不織布、35/65 PCL/PGA発泡体、及びRAD 16自己集合性ペプチドヒドロゲルとした。
【0329】
方法及び材料
細胞培養。胎盤由来細胞及び臍由来細胞を、ゼラチンコーティングフラスコ内の、増殖培地(DMEM−低グルコース(Gibco(Carlsbad CA))、15%(v/v)ウシ胎児血清(カタログ#SH30070.03;Hyclone(Logan,UT))、0.001%(v/v)βメルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,MO))、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco))中で増殖させた。
【0330】
サンプルの調製。100万個の生存細胞を、15マイクロリットル増殖培地中、直径5mm、厚さ2.25mmのバイクリル不織布スカフォールド(64.33ミリグラム/cc;ロット#3547−47−1)又は直径5mmの35/65 PCL/PGA発泡体(ロット# 3415−53)上に播種した。2時間にわたって細胞を付着させた後、更なる増殖培地を追加して、これらのスカフォールドを覆った。スカフォールド上で一晩、細胞を増殖させた。細胞を有さないスカフォールドもまた、培地中でインキュベートした。
【0331】
RAD16自己集合性ペプチド(3D Matrix(Cambridge,MA)、物質移動合意書の下)を、水中無菌1%(w/v)溶液として得て、使用直前に、ダルベッコ変法培地(DMEM;Gibco)中で、10%(w/v)スクロース(Sigma(St.Louis,MO))、10mM HEPES中の、1×10
6細胞と、1:1で混合した。RAD16ヒドロゲル中の細胞の最終濃度は、1×10
6細胞/100マイクロリットルとした。
【0332】
試験材料(N=4/Rx)
1.バイクリル不織布+1×10
6臍由来細胞
2.35/65 PCL/PGA発泡体+1×10
6臍由来細胞
3.RAD 16自己集合性ペプチド+1×10
6臍由来細胞
4.バイクリル不織布+1×10
6胎盤由来細胞
5.35/65 PCL/PGA発泡体+1×10
6胎盤由来細胞
6.RAD 16自己集合性ペプチド+1×10
6胎盤由来細胞
7.35/65 PCL/PGA発泡体
8.バイクリル不織布
【0333】
動物の調製。動物福祉法の現行要件に従って、動物を取り扱い、維持した。上記公法との準拠性は、動物福祉規則(9 CFR)を遵守し、「the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(第7版)」で公布された現行標準に従うことによって達成した。
【0334】
マウス(ハツカネズミ)/Fox Chase SCID/オス(Harlan Sprague Dawley,Inc.(Indianapolis,Indiana))、5週齢。SCIDマウスの、全ての取り扱いは、フード下で実施された。マウスを個々に秤量して、60ミリグラム/kgのKETASET(塩酸ケタミン、Aveco Co.,Inc.(Fort Dodge,Iowa))及び10ミリグラム/kgのROMPUN(キシラジン、Mobay Corp.(Shawnee,Kansas))と生理食塩水との混合物の、腹腔内注射を使用して麻酔した。麻酔導入の後、動物用電気バリカンを使用して、背側頸部区域から背側腰仙区域までの、動物の背部全体の毛を刈り取った。次いで、その区域を、二酢酸クロルヘキシジンを使用して擦り洗いし、アルコールですすぎ、乾燥させ、有効ヨウ素1%のヨードフォア水溶液を塗布した。眼用軟膏を眼に塗布して、麻酔期間中の組織の乾燥を防止した。
【0335】
皮下移植技術。それぞれ約1.0cmの長さの、4つの皮膚切開部を、マウスの背部上に作製した。2つの頭蓋部位を、背外側胸部領域の上に、触診した肩胛骨の下縁の5mm尾側で、一方は脊柱の左に、もう一方は右に、横方向で配置した。別の2つは、尾の仙腰レベルの臀筋区域の上に、触診した腸骨稜の約5mm尾側で、正中線の各側上に1つずつ、横方向で配置した。実験計画に従って、これらの部位内に、植え込み片を無作為に定置した。下層の結合組織から皮膚を分離して、小さいポケットを作製し、その切開部の約1cm尾側に、植え込み片を定置した(又はRAD16に関しては、注射した)。適切な試験材料を、皮下空間内に植え込んだ。皮膚の切開部は、金属クリップで閉鎖した。
【0336】
動物の飼育。マウスは、研究の過程全体を通して、17.8℃〜26.1℃(64°F〜79°F)の温度、及び30%〜70%の相対湿度の範囲内で、マイクロアイソレーターケージ内で個別に飼育し、約12時間の明期/12時間の暗期のサイクルで維持した。温度及び相対湿度は、可能な限り、記載の範囲内に維持した。食餌は、Irradiated Pico Mouse Chow 5058(Purina Co.)からなるものとし、水は自由に摂取させた。
【0337】
指定の時間間隔で、二酸化炭素吸入によってマウスを安楽死させた。皮下移植部位を、それらの部位を覆う皮膚と共に切除して、組織学のために凍結した。
【0338】
組織学。植え込み片と共に切除した皮膚を、10%中性緩衝ホルマリン(Richard−Allan(Kalamazoo,MI))で固定した。サンプルを、上を覆う隣接組織と共に、中央で2等分して、パラフィン処理を施し、慣用の方法を使用して割面上に埋め込んだ。マイクロトームによって、5マイクロメートルの組織切片を得て、慣用の方法を使用して、ヘマトキシリン及びエオシン(Poly Scientific(Bay Shore,NY))で染色した。
【0339】
結果
30日後の、SCIDマウス内に皮下移植された発泡体(細胞を有さず)内への組織の内植は、最小限のものであった。対照的に、臍由来細胞又は胎盤由来細胞と共に植え込まれた発泡体内には、広範囲の組織充填が存在した。バイクリル不織布スカフォールド内には、ある程度の組織の内植が観察された。臍由来細胞又は胎盤由来細胞が播種された、不織布スカフォールドでは、マトリックス沈着及び成熟血管の増大が示された。
【0340】
要約。合成吸収性不織布/発泡体ディスク(直径5.0mm×厚さ1.0mm)又は自己集合性ペプチドヒドロゲルに、ヒト臍又はヒト胎盤のいずれかに由来する細胞を播種し、SCIDマウスの背棘領域内の両側に皮下移植した。それらの結果は、分娩後由来細胞が、生分解性スカフォールド内の良質の組織形成を、劇的に増大させることが可能である点を実証した。
【0341】
(実施例17)
神経修復での臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の使用
網膜神経節細胞(RGC)障害は、成体哺乳類CNSでの、様々な修復方策に関するモデルとして、広範に使用されている。成体齧歯類RGC軸策の眼球後切断は、頓挫性の新芽形成(Zeng BYら、J.Anat.186:495〜508(1995年))及び親細胞集団の死滅の進行(Villegas−Perezら、J Neurosci.8:265〜80(1988年))を生じさせることが実証されている。軸策切断されたRGCの生存、及びそれらの軸策の再生に対する、様々な外因性因子及び内因性因子の刺激作用が、数多くの研究によって実証されている(Yip及びSo、Prog Retin Eye Res.19:559〜75(2000年);Fischer Dら、Exp Neurol.172:257〜72(2001年))。更には、細胞移植を使用して、断裂した神経軸策の再生を促進することができる点が、他の研究によって実証されている(Liら、2003年;Ramon−CuetoA.ら、Neuron 25:425〜35(2000年))。それゆえ、脊髄、末梢神経、陰部神経、視神経に影響を及ぼす神経障害、又は神経の損傷が生じる恐れがある傷害による、他の疾患/外傷の治療のために、細胞ベースの療法を利用することができる点が、これらの研究及び他の研究によって実証されている。
【0342】
自己集合性ペプチド(PuraMatrix(商標),米国特許第5,670,483号、同第5,955,343号、US/PCT出願第US2002/0160471号、国際公開第02/062969号)は、3Dで細胞を封入し、2Dコーティング内に細胞をプレーティングするための、細胞付着用のスカフォールドとして、又は懸濁培養物中の微小担体としての機能を果たすように、開発されている。3次元細胞培養は、固有の再現性及び細胞のシグナル伝達事項を有する、動物由来材料(マウス肉腫抽出物)か、あるいは天然ECMの物理的ナノメートルスケール及び化学的属性に近似させることができない、遙かに大きい合成スカフォールドのいずれかを必要としている。RAD 16(NH2−(RADA)
3−COOH)及びKLD(NH2−(KLDL)
3−COOH)は、インビボ細胞外マトリックス(ECM)(3D Matrix,Inc(Cambridge,MA))と同様のスケールでナノ繊維へと自己集合する、小さい(RAD16は5ナノメートル)オリゴペプチド断片として合成される。この自己集合は、培養培地又は生理環境中に見出される、一価又は二価の陽イオンによって開始される。この実施例で説明されるプロトコルでは、RAD 16は、眼の欠損部内への、臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の植え込みのための、微小担体として使用された。この実施例では、臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の移植が、成体ラット視神経軸策の再生モデルで、有効性をもたらし得ることが実証される。
【0343】
方法及び材料
細胞。ヒト成体の臍由来細胞及び胎盤由来細胞並びに繊維芽細胞(継代数10)の培養物を、1継代にわたって増殖させた。全ての細胞を、最初に、100単位/ミリリットルのペニシリン、100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン、0.25マイクログラム/ミリリットルのアンホテリシンB(Invitrogen(Carlsbad,CA))を有する増殖培地中、ゼラチンコーティングT75フラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。継代数11で、細胞をトリプシン処理し、トリパンプルー染色を使用して生存率を判定した。簡潔には、50マイクロリットルの細胞懸濁液を、50マイクロリットルの0.04%w/vトリパンプルー(Sigma(St.Louis,MO))と組み合わせ、血球計数器を使用して、生存細胞数を概算した。次いで、サプリメントフリーの、LeibovitzのL−15培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))中で、細胞を3回洗浄した。次いで、製造元の推奨に従って緩衝させ、等張性とした、25マイクロリットルのRAD−16(3DM Inc.(Cambridge,MA))中200,000細胞の濃度で、細胞を懸濁させた。100マイクロリットルの、サプリメントフリーのLeibovitzのL−15培地を、この細胞/マトリックス懸濁液の上に添加して、使用まで湿潤状態に維持した。これらの細胞/マトリックス培養物は、移植を実施するまで、標準大気条件下で維持した。移植の時点で、過剰な培地を除去した。
【0344】
動物及び外科処置。Long Evansメスラット(体重220〜240グラム)を使用した。腹腔内トリブロモエタノール麻酔下(20ミリグラム/体重100g)で、視神経を露出させ、視神経鞘を、視神経円板から約2ミリメートルで眼内切開して、神経鞘から神経を引き上げ、微細なハサミによる完全な離断を可能にした(Li Yら、2003年、J.of Neuro.23(21):7783〜7788)。離断の完了は、近位断端と遠位断端との完全な分離を、目視観察することによって確認した。対照群は、移植を実施しない障害ラットからなるものとした。移植ラット内では、RAD−16中に播種した培養分娩後細胞を、1本の微小鉗子を使用して、近位断端と遠位断端との間に挿入した。RAD−16中の約75,000細胞が、この断裂した視神経内に植え込まれた。1本の微小鉗子を使用して、細胞/マトリックスを、断裂切断部内に塗布した。この断裂視神経鞘を、10/0ブラック単繊維ナイロン(Ethicon,Inc.(Edinburgh,UK))で閉鎖した。それゆえ、間隙は、神経の切断近位端と切断遠位端とを、互いに近位に引き寄せることによって閉鎖された。
【0345】
細胞注射を実行した後、移植後10日間にわたって、デキサメタゾン(2ミリグラム/キログラム)を動物に注射した。この研究の期間中、移植の2日前から研究終了時まで、経口サイクロスポリンA(210ミリグラム/リットルの飲料水;得られる血中濃度:250〜300マイクログラム/リットル)(Bedford Labs(Bedford,Ohio))で動物を維持した。食物及び水は、自由に摂取させた。移植後30日目又は60日目に、動物を致死させた。
【0346】
CTB適用。動物を致死させる3日前に、麻酔下で、30〜50ミリメートルの先端部を有するガラス製マイクロピペットを、水晶体の後方の強膜に通して接線方向に挿入し、そのガラス体内に、1%逆行性トレーサー−コレラ毒素B(CTB)水溶液(List Biologic(Campbell,CA))の4〜5マイクロリットルのアリコートを、2回注入した。動物に固定液を潅流させ、同じ固定液中で1時間、視神経を収集した。これらの視神経を、一晩、スクロース中に移した。20マイクロメートルのクリオスタット切片を、0.1モルのグリシン中で30分間インキュベートし、2.5%ウシ血清アルブミン(BSA)(Boeringer Mannheim(Mannheim,Germany))及び0.5% triton X−100(Sigma(St.Louis,MO))を含有するPBS溶液中でブロックし、その後、PBS中2%正常ウサギ血清(NRS)(Invitrogen(Carlsbad,CA))、2.5% BSA、及び2% Triton X−100(Sigma(St.Louis,MO))を含有するPBS中に1:4000で希釈したヤギ抗CTB抗体(List Biologic(Campbell,CA))を含有する溶液中で、ブロックし、PBS中2% Triton−X100中に1:200で希釈したビオチン化ウサギ抗ヤギIgG抗体(Vector Laboratories(Burlinghame,CA))中で、室温で2時間、インキュベートした。この後に、PBS中1:200のストレプトアビジン−グリーン(Alexa Flour 438;Molecular Probes(Eugene,OR))中で、室温で2時間にわたって染色した。次いで、染色された切片をPBS中で洗浄し、共焦点顕微鏡法のために、ヨウ化プロピジウムで対比染色した。
【0347】
組織学調製。簡潔には、CTB注射の5日後に、4%パラホルムアルデヒドをラットに潅流させた。ラットに4立方センチメートルのウレタンを与え、次いでPBS(0.1モル)で、次いで4%パラホルムアルデヒドで潅流した。脊髄を切断し、頭部から骨を除去して、小丘を露出させた。次いで、小丘を摘出して、4%パラホルムアルデヒド中に定置した。眼の外側の周囲を、可能な限り後方に至るまで切断することによって、眼を摘出した。眼の裏側上に存在する視神経を切断しないように、注意を払った。眼を摘出し、筋肉を切断して視神経を露出させ、次いで、この視神経を、4%パラホルムアルデヒド中に定置した。
【0348】
結果
障害単独。視神経の管後方切断の1か月後、網膜に付着した神経部分内に、幾つかのCTB標識された軸策が特定された。切断部に至近の200マイクロメートル内に、軸策は、幾つかの側副枝を主軸と直角に出しており、切断面で、神経腫状の縺れとして終端することが認められた。近位断端と遠位断端との間の、この切断部では、血管新生化した結合組織の2〜3ミリメートルの部分によって、間隙が進行的に橋渡しされることが観察されたが、しかしながら、この橋渡し区域内への軸策の進展は認められなかった。それゆえ、傷害のみを受けた動物では、遠位断端に到達する軸策成長は、観察されなかった。
【0349】
RAD−16の移植。切断部内へのRAD−16の移植後には、血管新生化した結合組織の可視的な内植が観察された。しかしながら、近位断端と遠位断端との間には、内植する軸策は観察されなかった。これらの結果により、この状況では、RAD−16単独の適用では、軸策の再生を誘導するために十分ではないことが実証される。
【0350】
臍帯組織由来細胞及び胎盤由来細胞の移植。断裂した視神経内への細胞の移植は、視神経の再成長を刺激した。ある程度の再成長はまた、繊維芽細胞が植え込まれた条件でも観察されたが、これは、移植された胎盤由来細胞で観察された再成長と比較すると、最小限のものであった。視神経の再成長は、胎盤由来細胞が移植された動物の4/5で、成体皮膚繊維芽細胞が移植された動物の3/6で、また、臍由来細胞が移植された動物の1/4で観察された。再成長が観察された状況では、CTB標識によって、網膜神経節細胞の軸策の再生が確認され、この軸策は、移植区域を貫通することが実証された。神経膠瘢痕化のレベルを判定するために、GFAP標識もまた実行した。このGFAP発現は、近位断端で増強され、神経再支配された移植片全体に、ある程度の免疫染色が観察された。
【0351】
要約。これらの結果は、移植されたヒト成体胎盤由来細胞及び臍帯組織由来細胞が、切断された網膜神経節細胞の軸策の再生を刺激し、導くことが可能である点を実証する。
【0352】
(実施例18)
ドーパミン作動性神経の修復での、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の使用
分娩後臍由来細胞及び胎盤由来細胞を、パーキンソン病などの神経変性疾患を治療するためのモデルとしての、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)−障害齧歯類での、機能改善を付与する能力に関して、試験した(Eisenhofer,G.ら(2003年)FASEB J.17L1248〜1255;Rios M.ら(1999年)J.Neurosci.1999:3519〜26;Xu Y.ら(1998年)J.Neurosci.Res.54:691〜7)。
【0353】
方法及び材料
動物モデル及び群化。6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)による、線条体、SNc、又は黒質線条体路の、実質内神経化学障害は、パーキンソン病に関する確実な齧歯類モデルとして、一般的に使用される。6−OHDAは、ドーパミン作動性ニューロンを破壊して、パーキンソン病の発症をもたらす。内側前脳束内に6−OHDAで障害を加え、パーキンソン病表現型を誘導するための、2ヶ月齢のメスSprague−Dawleyラット(275〜300g)を、Charles River Laboratories(Montreal,Canada)より直接購入した。
【0354】
到着後、移植を施す前に、馴化のための1週間の期間を動物に与え、以下で説明される巧緻足到達試験に必要な絶食の間を除き、実験期間の全体を通して、自由採食させた。ラットは、1つのケージ当り2匹が飼育され、体重の変動に関して毎日モニタリングして、12:12時間の明:暗サイクルの明期中に、試験した。動物の管理及び実験は、Canadian Guide for the Care and Use of Laboratory animalsに従って実施され、全ての手順が、Laval UniversityのInstitutional Animal Care Committeeによって承認された。6−OHDA障害に関連する行動的欠陥を、手術の2週間半後に、アポモルヒネ負荷によって評価した。
【0355】
回転スコアを使用して、動物を4つの群に割り当てた。移植は、この研究に関与する2人の研究者によって、盲検で実行した。3つの群には、異なる細胞型を移植し(n=18/細胞型;研究グループには知らせず)、1つの群には、ビヒクル(細胞培養培地)を受容させ、対照(n=6)として機能させた。ラットは、移植の後4週間、8週間、及び16週間で致死させた(各時点で、n=6/細胞型、及び対照n=2)。それぞれの致死の前に、3つの行動測定:アポモルヒネ負荷、巧緻足到達試験、及び頭部旋回を使用して、定期的にラットを評価した。
【0356】
細胞移植。ヒト成体の臍由来細胞、胎盤由来細胞、及び繊維芽細胞の(原)細胞(継代数10)を、1継代にわたって増殖させた。全ての細胞を、最初に、増殖培地中、ゼラチンコーティングT75フラスコ上に、5,000細胞/cm
2で播種した。後続の継代に関しては、全ての細胞を以下のように処理した。トリプシン処理の後、生存率に関するトリパンブルー染色の後に、生存細胞を計数した。簡潔には、50マイクロリットルの細胞懸濁液を、50マイクロリットルのトリパンブルー(Sigma(St.Louis MO))と組み合わせ、血球計数器を使用して、生存細胞数を概算した。細胞をトリプシン処理して、DMEM:低グルコース培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))(この培地は、血清フリー及びサプリメントフリーである)中で3回洗浄した。ヒト臍由来細胞、胎盤由来細胞、及び繊維芽細胞の培養物(継代数11)をトリプシン処理して、LeibovitzのL−15培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))中で2回洗浄した。細胞(2×10
5細胞/注射)を、2マイクロリットルの、LeibovitzのL−15培地(Invitrogen(Carlsbad,CA))中に再懸濁させた。
【0357】
動物の外科処置。全ての手順は、IACUC−承認プロトコル(Centre de Recherche du CHUL,Local RC−9800,2705 Blvd Laurier,Ste−Foy,Quebec,Canada G1V 4G2)に従って実施された。移植は、ケタミン/キシラジン(75/10mg/kg、腹腔内投与)麻酔下で、小動物用定位フレーム(モデル900、David Kopf Instruments(Tujunga,CA))内に動物を載置して実施した。各移植は、電動マイクロインジェクションユニット(モデルUMPII、David Kopf Instruments(Tujunga,CA))注入ポンプ内に装填された5μLマイクロシリンジ(Hamilton Company(Reno,NV))に取り付けられる、26ゲージステンレス鋼ベベルニードル(45°)を通して、細胞を注入することによって実行された。細胞(又は培養培地)は、総計2μL/動物を、1.0μL/分/部位の速度で、100,000細胞/μLの平均濃度で、以下の座標に従って、線条体内に注入した(より濃度が低い場合には、全ての動物内に、同じ数の細胞を一貫して移植するために、注射の容量を調整した):A=ブレグマの前方0.5mm、L=正中線の側方3.0mm、V=硬膜の垂直下方−4.7mm(部位1)及び−4.5mm(部位2)、切歯棒を両耳間線の下方−2.5mmに設定。細胞注射の完了後、ニードルを引き抜く前に、細胞の拡散を可能にするように、更に3分間、ニードルを定位置に残置した。ラットは、移植の1日前に、30mg/kgのサイクロスポリンA(CsA 25mg/mL、オリーブ油中に希釈、Bedford Laboratories(Bedford,OH))で処理し、残りの実験の期間は、皮下(s.c.)注射によって、15mg/kg/日のCsAを与えた。対照としての機能を果たす動物には、CsAを受容させなかった。全ての動物には、外科処置の前に、述前処置として、10mLのラクテート及び0.03mg/kgのブプレノルフィンを受容させ、外科処置後3日間は、1日2回(ラクテートは1日1回)受容させた。
【0358】
アポモルヒネ回転挙動試験。ラットは、最初に、移植の2週間半前に、その後、様々な時点の致死(移植の後4週間、8週間、及び16週間)の2日前に、検証した。腹腔内注射によって、各ラットに0.05mg/kgの用量を受容させ、直ちにアポモルヒネ負荷装置(球面ボウル)内に定置した。ラットの胸部の周囲の、肘の真後ろに定置される、1つの弾性体からなるハーネスを、ベルクロ取り付け具によって、約40.6cm(16インチ)のロープに取り付け、そのロープを、ラットによって行なわれる全身の旋回の総数を記録するコンピュータに接続される、ロタメータ(Rotometer System,San Diego Instruments(San Diego,CA))に取り付ける。分析に使用する最終スコアは、対側性の旋回の総数から、同側性の旋回の総数を差し引くことによって、導き出した。統計分析は、反復測定ANOVAの使用(SAS統計プログラム)によって実行した。
【0359】
頭部旋回。ベースラインを確立するために、動物を、移植の前に試験し、次いで、移植後の2週間ごとに検証した。各ラットは、1回の検証につき3回、5分ごとに60秒間、身体に対する頭部の位置に関して試験した。その頭部の頭部偏向(10°を超える偏向を、頭部旋回と見なした)の総数を、左側と右側とで別個に記録して、3分間にわたる、1分ごとの平均の旋回数を、双方の側に関して算出した。育成及び毛づくろいを含めた、ラットの活動とは関係なく、評価を行なった。左旋回と右旋回との、平均数の差を算出して、行動回復を判定し、反復測定ANOVAを、アポモルヒネ負荷に関して実行した。
【0360】
巧緻足到達。巧緻前肢到達能力を、従前に公開されたプロトコル(Mooreら、2001年 Exp Neurol.2001 172(2):363〜76)を介して、移植後4週間、8週間、及び16週間で評価した。この装置は、2つの区画を有する、網状のガラス容器で構成される。ラットが中に定置される主室(長さ300mm×高さ115mm×幅103mm)は、通気孔を備える別の滑動構成要素を有する。より狭い区域が、この室から外に導かれており(185mm×115mm×60mm)、その長さに沿って62mmの高さで延びる、幅22mmの中央のプラットホームを収容する。このプラットホームの両側上には、中に7段の階段が配置される、19mmのトラフが存在する。ラットは、このプラットホーム上に登り、各段の内部の小さいウェルから、45mgの食物ペレットを収集する。ラットが上に登るプラットホームは、十分に狭いため、ラットが方向転換して、左足を右のトラフに到達させることを阻止し、又はその逆も同様に阻止する。ラットが、食物ペレットを、プラットホームの側面から単純に掻き上げることができないようにするため、プラットホームの頂部は、両側に5mm張り出している(Mooreら、2001年)。このバージョンの試験は、4つの構成要素:馴化、訓練、食物欠乏、及び試験へと分割される、12日間にわたって実施される。馴化:(1〜3日目)ラットを、毎日20分間、空の箱内に入れ、その後、ラットを箱から取り出して、それらのラットのホームケージに戻す。訓練:(4 & 5日目)各試験セッションに関して、階段2〜6を、一段当り6×45mg食物ペレットで餌を付け、片側当り合計30個のペレットとして、ラットを試験ケージ内に定置する。ラットを、この装置内に20分間放置し、その後、ホームケージにラットを戻す。食物欠乏:(6 & 7日目)ラットを食物欠乏させて、毎日、試験/訓練の直後の4時間、摂食させる(水は常に維持される)。試験:(8〜12日目)各ラットを、20分間、5日間にわたって試験する。階段2〜6には、訓練プロトコルと同様に、餌を付ける。試験後、ラットをケージから取り出して、それらのラットのホームケージに戻し、4時間自由に摂食させる。各ラットによって取得され、摂食されたペレットの数を算出して、左足及び右足の双方に関して、別個に記録する。それらの比を、試験の最終5日間に関して平均し、各ラットに関する平均正確度スコアを得て、反復測定ANOVAを使用して分析する。
【0361】
組織学。致死の時点で、ペントバルビタール(60mg/mL、[0.1mL/100g])の腹腔内注射によって、動物を深麻酔させ、0.1%ヘパリンを含有する0.9%生理食塩水、その後の0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH 7.4中、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で、心臓内潅流させた。潅流の後、脳を収集して、PFA 4%中で6時間にわたって後固定し、次いで、PBS中20%のスクロース中に定置した。凍結マイクロトーム(Leica Microsystems(Montreal,Canada))上で、脳を厚さ35μmの切片とし、連続方式で収集して、不凍液中に保存し、その後、各実験のために回収して、PBS中で洗浄した。
【0362】
免疫組織学に関しては、PBS(0.1M、pH 7.4)中で、切片を3回洗浄し、PBS中0.4%のTriton X−100、5%のNGSを含有する溶液中で、60分間プレインキュベートした。次いで、以下の組合せによる一次抗体中、切片を4℃で一晩インキュベートした:0.4%のTriton X−100を有するPBS中に希釈される、ウサギ抗−Iba−1(Wako Pure Chemicals Industries(Richmond,VA);1:1000)及びマウス抗−ED1(Serotech(Raleigh,NC);1:1000)、ウサギ抗−グリア繊維酸性タンパク質(GFAP、DakoCytomation(Mississauga,ON);1:4000)及びマウス抗−ヒトミトコンドリア(Chemicon(Temecula,CA);1:500)若しくはウサギ抗−GABA(Chemicon(Temecula,CA);1:200)(抗ヒトミトコンドリアともまた組み合わされる)。PBS中での洗浄後、切片を、二次抗体;PBS中、Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ウサギ高度交差吸着(Molecular Probes(Eugene,OR);1:200)及びRhodamine Red−Xヤギ抗マウス高度交差吸着(Jackson Immunoresearch(West Grove,PA);1:200)中で、2時間半、室温(RT)でインキュベートした。洗浄後、切片を、0.022%のDAPI(Molecular Probes(Eugene,OR))を含有するPBS中でインキュベートして洗浄し、ゼラチンコーティングされたスライド上に載置して、自製DABCO封入剤(ポリビニールアルコール、DABCO、トリス−HCl(1.0M、pH 8.0)、蒸留水、グリセロール)を使用してカバーガラスで覆い、ネールポリッシュで封止した。蛍光染色は、Hamamatsu 1394 ORCA−285モノクロームカメラに接続され、Simple PCIソフトウェアバージョン5.3.0.1102(Compix Inc Imaging Systems(PA,USA))によって活用される、i90 Nikon蛍光顕微鏡を使用して評価した。
【0363】
双方の一次抗体が同じ宿主内で産生された、二重免疫蛍光の場合、0.1MのPBS中で切片を洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.4% Triton X−100(双方ともSigma(St.Louis,MO)より)を含有する、0.1MのPBS中でプレインキュベートした。第1の一次抗体:マウス抗ビメンチン(Sigma(St.Louis,MO));1:5000)、抗チューブリンイソ型β III(Chemicon(Temecula,CA))又はマウス抗ニューロン特異的核タンパク質(NeuN、Chemicon(Temecula,CA);1:5000)と共に、室温で1時間インキュベートした後に、切片を洗浄し、0.1MのPBS、1% BSA、及び0.4% Triton X−100中、二次抗体FITC抱合ヤギ抗マウスIgG(Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA);1:400)を含有する溶液中で、1時間インキュベートした。PBS中での洗浄後、切片を、5%正常マウス血清(Jackson Immunoresearch(West Grove,PA))と共に1時間インキュベートし、次いで、再び洗浄した後、一次抗体の宿主種に対して過剰のFabフラグメント抗体(20μg/mL、Jackson Immunoresearch(West Grove,PA))と共に1時間インキュベートし、更にPBSですすいだ。次いで、切片を、1% BSA及び0.4% Triton X−100を含有するPBS中で、第2の一次抗体:マウス抗ヒトミトコンドリア(Chemicon(Temecula,CA);1:500)と共に、室温で1時間インキュベートした。PBS中で数回洗浄した後に、最後に、0.1MのPBS、1% BSA、0.4% Triton X−100中で、切片を、ローダミンヤギ抗マウスIgG(Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA);1:400)と共に、1時間インキュベートした。次いで、切片を洗浄し、DAPI(Molecular Probes(Eugene,OR))と共に7分間インキュベートして、上述のように載置して、カバーガラスで覆った。
【0364】
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫染色に関しては、切片を、pH 7.4の、0.1MのPBS中で3回洗浄し、3%過酸化物中に、室温で30分間定置した。その後、0.1MのPBS中で切片を洗浄し、次いで、0.1MのPBS、0.1% Triton X−100(Sigma(St.Louis,MO))、及び5%正常ヤギ血清(NGS,Wisent Inc.(St−Jean−Baptiste de Rouville,QC))を含有する溶液中で、室温で30分間プレインキュベートした。PBS、0.1% Triton X−100、及び5% NGS中で、切片を、抗TH(Pel−Freez(Rogers,AR);1:5000)と共に、4℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、0.1MのPBS中で切片を洗浄し、0.1% Triton X−100、5% NGS、及びビオチン化ヤギ抗ウサギ(Vector Laboratories(Burlington,ON);1:1500)を含有するPBS溶液中で、室温で1時間インキュベートした。0.1MのPBS中で3回洗浄した後に、切片を、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(ABC Elite kit、Vector Laboratories(Burlington,ON))の溶液中に、室温で1時間定置した。0.05%の3.3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB、Sigma(St.Louis,MO))及び0.1%の30%水素ペルオキシダーゼを含有する、トリス緩衝溶液中に、これらの切片を室温で定置することによって、抗体を顕現させた。0.05Mトリス緩衝液中での洗浄、及びその後のPBS洗浄によって、反応を停止させた。ゼラチンコーティングスライド上に切片を載置して、一晩風乾させ、エタノール濃度を段階的に上昇させて脱水し、DPX封入剤(Electron Microscopy Science(Hatfield,PA))を使用してカバーガラスで覆った。
【0365】
結果
体重のモニタリング。動物の体重を毎日モニタリングした。
図1に示すように、ラットは、移植後2週間で、緩慢かつ着実な体重増加を示した。移植の3、4週間後、7週間後、及び15週間後に記録された体重減少は、恐らくは、階段試験に必要な絶食によるものであった。第1のアポモルヒネ負荷後の、若干の体重減少の継続は、恐らくは、一時的な食欲不振によるものであった。8週目に致死させるように予定された、細胞型1の2匹の動物は、体重減少の進行のために、4週目に致死させるように予定された2匹のラットと交換した(ラット#27、49)。移植の8週間後に、細胞型1のラット#60は、同様の理由のために、予定よりも1日早く致死させなければならなかった。移植の10週間後、細胞型2の更なるn=2の動物が、下痢を患い、著しい体重減少を示した。これらの動物には、ラクテート注射が毎日与えられたが、これらの付加的な予防措置の24時間後に、ケージ内での死亡が判明した。第2群の別の2匹のラットも、同様の健康問題を示し始め、予防的に致死させた。第2群の残りのn=2を、最終的に致死させた(第2群の動物の最後の潅流から24時間後)。第3群のラット#40もまた、第2群で観察されたものと同様の健康問題により、実験プロトコル13週中に致死させた。第1群のラット#66は、15週目に、ケージ内で死亡していることが判明した。事前の徴候は、第2群及び第3群の不健康な動物で観察されたものに類似していた。要約すると、第2群の動物(残りn=6)を、移植の10週間後に致死させ、第1群及び第3群の動物を、予定通りに、移植の16週間後に致死させた(各群に関してn=5)。略語:BB:行動ベースライン;TP:移植。
【0366】
アポモルヒネ負荷。4つの群全て(細胞1、2、3、ビヒクル)を、反復測定ANOVA(変数:回転数)を使用して分析したところ、「時間」因子のみが有意であり(p=0.0048)、全ての群に関して「時間」効果が示されることが明らかとなった。多重比較により、「0」時点(ベースライン)と移植4週間後との間での、全ての群の有意な機能回復(回転数の減少)が示された(
図2)。この減少は、4週目の時点の後、経時的に維持された。移植16週間後の最終時点は、この時点以前に第2群を致死させたため、反復測定ANOVAを使用して分析することは不可能であった(
図2)。
【0367】
6−OHDAで個別に障害を加えたが、外科的介入(移植)を施さなかった5匹の動物の一群を、反復測定ANOVA分析に追加した。この群が反復測定ANOVAの計算に追加される場合、相互作用群/時間のみが、有意性に向けた強い傾向(p=0.0985)を有する。より有意な数の動物によって、この有意な結果への傾向が裏付けられた可能性がある。この傾向が、経時的な機能回復を示すものであったことを考慮して、更なる分析により、臍細胞(細胞1)のみが、経時的に有意な有益効果を誘導したこと(p=0.0056)、及び頭蓋内の外科的介入を施さなかった障害動物は、経時的な機能回復に向けた傾向を示さなかったこと(この結果は、p=0.0655で、有意ではない)が明らかとなった。
【0368】
頭部旋回。頭部旋回は、細胞移植の後に動物によって実行される、同側性の回転の総数を表す。試験した時点(移植後2週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、及び16週間)では、細胞を移植した動物とビヒクル単独を受容させた動物との間には、有意差は観察されなかった(
図3)。頭部旋回は、純粋に主体的なものであり、障害後の、左又は右に頭部を回転させる、ラットの自然な傾向を判定する。全ての群を、反復測定ANOVAを使用して分析した(変数:頭部左旋回の数と頭部右旋回の数との差)。この研究での時間の経過と共に、頭部旋回に関して偏りが存在しないという点で、改善が示されたが、しかしながら、このことは、全ての群で明らかなものであった(
図3)。
【0369】
階段試験。この試験を使用したところ、移植群と対照群との間の有意差は確認されなかった。この階段試験は、階段内の食物を獲得するために精緻な運動が必要とされる、20分の試験期間内での食物摂取を測定した。全ての群を、反復測定ANOVAを使用して分析した(変数:獲得したペレットに対する摂食したペレットの比)。この試験を使用したところ、摂食挙動の差異が経時的に観察されることが判定されたが、しかしながら、各群の間では、有意差を判定することができなかった(
図4)。
【0370】
免疫染色。H&E切片は、移植後1日目に、良好な細胞の生着を示した。細胞は、移植後8週間までは、ヒト核抗原染色によって、移植部位内で特定されたが、このヒト細胞の数は、移植片内では、時間に対応して減少していた。現時点では、このモデル系でのインビボ移植の後に、分娩後由来細胞が神経表現型へと分化したことが確認されているデータは、存在しない。
【0371】
細胞移植片を、小神経膠マーカーIba−1の存在に関して分析した。
図5aに示すように、Iba−1は、特にビヒクル対照と比較して、各細胞型によって豊富に発現された。Iba−1の発現は、経時的に減退する傾向があることが判明した(
図5a)。移植動物でのED−1の評価は、マクロファージ反応が移植後に明白であり、繊維芽細胞が移植された動物を除く全ての群で、ED−1の染色のレベルが経時的に減少することを示した(
図5b)。DAPI染色は、全般的に、研究の持続期間の全体を通して、一定のまま維持された(
図5c)。
【0372】
同様に、移植後の反応性星状細胞の数を判定するための、移植片内のグリア繊維酸性タンパク質(GFAP)のレベルの判定により、移植片又はビヒクルの投与の後、最初に反応性星状細胞が特定され、効果が経時的に減衰することが示された(
図6a)。移植片内の細胞の分化を示す他の観察結果と一致して、ビメンチンは、移植後4週間の細胞内で豊富に発現することが判明したが、次の12週間にわたって、発現は着実に減退した(
図6b)。
【0373】
ヒトチロシンヒドロキシラーゼに関する染色は、陰性であった。それゆえ、使用した処置条件下では、臍細胞又は胎盤細胞のいずれも、ドーパミン作動性細胞へと分化しなかった。
【0374】
要約
これらの結果は、臍細胞の植え込みが、アポモルヒネ負荷に対する挙動応答性によって評価されるような、パーキンソン病の6−OHDAモデルでの経時的な機能改善をもたらすことを実証した。階段試験及び頭部旋回試験の双方を実行して、種々の神経回路及び/又は神経機構の活性化に対する効果を判定した。これらの試験パラメーターを使用したところ、差異は確認されず、それゆえ、臍移植を受容した動物で、4週目及び8週目に示された明確な利益に関する機序は、未だ解明されていない。
【0375】
免疫組織化学染色は、細胞生着の後に、細胞分化の証拠が存在しないことを実証した。これらの研究では、神経細胞分化、又はより具体的には、ドーパミン作動性分化を、実証することができなかった。それゆえ、移植片部位での細胞分化に関する証拠を、検証することができなかった。このことは、臍細胞移植の後の、アポモルヒネ負荷による挙動に観察された改善は、再生細胞の潜在能力の結果によるものではなく、栄養応答による可能性が高いことを、更に示唆する。
【0376】
TH−免疫陽性細胞は、いずれの時点でも、いずれの細胞型内にも観察されなかった。しかしながら、THは、ドーパミンを産生するための唯一の細胞経路ではない。ドーパミンは、チロシナーゼ経路を介して、チロシンヒドロキシラーゼから独立して産生することができる。更には、ドーパミンは、チロシナーゼの存在下で、チロシンヒドロキシラーゼを共有結合的に修飾して、不活性化する。更には、移植細胞は、食後の血漿中のDOPA(食物からのアミノ酸)の、DOPAへの処理を可能にすることができる。
【0377】
(実施例19)
RayBio(登録商標)及びBD Powerblot(商標)サイトカインアレイ
RayBio(登録商標)ヒトサイトカイン抗体アレイCシリーズ1000を使用して、分娩後由来細胞及び溶解物中の、120のタンパク質の発現を分析した。この分析により、UTCの特性評価が提供され、これらの細胞にとって重要な栄養因子の、発現スペクトルが同定された。
【0378】
材料及び方法
細胞の増殖及び採取。臍由来細胞を、増殖培地を有するゼラチンコーティングフラスコ内に、5,000細胞/cm
2で播種し、3〜4日間、増殖させた(25,000細胞/cm
2の目標採取密度)。細胞を、トリプシンを使用して採取し、収集して、300rcfで5分間、遠心分離した。トリプシン/培地を、吸引によって除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で、細胞を3回洗浄した。
【0379】
細胞の洗浄及び分取。洗浄後、PBS中に細胞を10
7細胞/mLで再懸濁させ、1.5mLの滅菌シリコーン処理した微小遠心管内に、1mLアリコートとして供給した。これらの細胞を、300rcfで5分間遠心分離して、PBSを吸引によって除去した。細胞を溶解して、アレイによって分析するか、又は分析のために、溶解して凍結乾燥させた。
【0380】
凍結乾燥サンプルの調製。3ロットの細胞(UTCロットL040405、L052505、L050505)を、液体窒素(LN2)中に60秒間浸漬することによって、最終的な凍結乾燥のために調製した。次いで、LN2から管を取り出し、直ちに37℃の水浴中に、60秒間、又は解凍されるまで浸漬した(3分の最大インキュベーション時間)。このプロセスを、更に2回繰り返した。これらの凍結−解凍サンプルを、13,000rcfで10分間、4℃で遠心分離し、氷上に定置した。各管から、上清液を取り出した。全タンパク質含量を判定するために、溶解物をPBS中に希釈し、この希釈液を、Bradfordアッセイによって分析した。
【0381】
凍結乾燥のために、溶解物で標識された複数の1.5mL滅菌クライオバイアルを、オートクレーブ処理して冷却した熱転移ブロック内に装填した。規定の全タンパク質濃度の、溶解物上清液のアリコートを、クライオバイアル内に装填した。熱ブロックを収容する、蓋をしていないクライオバイアルを、オートクレーブ処理した未使用のオートクレーブポーチ内へ、無菌的に装填した。このポーチを、凍結乾燥機内に装填した。
【0382】
適用溶解物を有する試験材料を、FTS Systems Dura−Stop MP Stoppering Tray Dryer内に装填し、以下の勾配プログラムを使用して凍結乾燥させた。全ての工程は、2.5℃/分の勾配率、及び100−mTバキュームを有するものとした。
【表31】
【0383】
細胞ペレットの調製。凍結細胞ペレット(ロット063004B、022803、050604B、072804、120304、071404C、090304)を、RIPA緩衝液(50mMのTris Hcl、pH8、150mMのNaCl、1% NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、及び0.1% SDS)と、RayBio(登録商標)サイトカインアレイ1000.1キット(Raybiotech Inc.(Norcross,GA))内に提供される細胞溶解緩衝液との、1:1混合物を使用して溶解した。ガラスビーズ(Sigma(MO))を使用して、完全な細胞溶解を達成した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford,IL))を使用して測定した。
【0384】
RayBio(登録商標)アレイ分析。アレイ1000.1を構成する、RayBio(登録商標)アレイVI及びアレイVIIを、各サンプル由来の等量のタンパク質を使用して、一晩プロービングした。残りのプロトコルを、製造元の指針に従って続行した。膜上のスポットを定性分析することにより、目的のタンパク質を同定した。サンプル間の定量的比較に関しては、これらのスポットを、濃度測定法によって、及びELISAによって確認される発現の変化によって、分析することが可能であった。
【0385】
結果
総計10の異なるUTC集団を分析した。48のタンパク質が定性的に同定され、それらを表19−1に列記した。一部のタンパク質は、全てのサンプル内で比較的高濃度で発現したが、他のタンパク質は、特定のサンプル内で発現した。
【表32】
【0386】
要約
RayBio(登録商標)アレイにより、遺伝子アレイ及び/又はELISA分析によって従前に同定された、タンパク質の発現が確認される。特定の疾患の治療に有益な、様々な栄養因子が同定されている。例えば、UTC内では、FGF、TGF−b、及びGCSFが同定されており、これらの増殖因子は、急性脳卒中及び脳卒中の回復の動物モデルでの改善と共に、従前に同定されている。更には、パーキンソン病に明確に関連する、BDNF、BMP−4、BMP−6、及びTGF−b1が、UTC内で同定されている。提示された全てのデータは、定性的に評価されるが、目的のタンパク質に関する発現のレベルの定量分析は、保留中である。
【0387】
(実施例20)
臍由来細胞内でのテロメラーゼ発現
テロメラーゼは、染色体の完全性を保護し、また細胞の複製寿命を延長するために役立つ、テロメア繰り返し体を合成するように機能する(Liu,Kら、PNAS,1999年:96:5147〜5152)。テロメラーゼは、テロメラーゼRNAテンプレート(hTE
R)、及びテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の、2つの成分からなる。テロメラーゼの調節は、hTE
Rではなく、hTERTの転写によって決定される。hTERTmRNAに関するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、それゆえ、細胞のテロメラーゼ活性を判定するための、公認された方法である。
【0388】
細胞単離。リアルタイムPCR実験を実行して、ヒト臍帯組織由来細胞のテロメラーゼ産生を判定した。ヒト臍帯組織由来細胞を、上述の実施例に従って調製した。全般的には、正常な分娩後の、National Disease Research Interchange(Philadelphia,Pa.)から得た臍帯を洗浄して、血液及び残渣を除去し、機械的に解離させた。次いで、その組織を、培養培地中、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼを含む消化酵素と共に、37℃でインキュベートした。ヒト臍帯組織由来細胞を、上記の実施例に記載される方法に従って培養した。間葉系幹細胞及び正常皮膚線維芽細胞(cc−2509ロット# 9F0844)を、Cambrex(Walkersville、Md)から得た。多能性ヒト精巣胚性癌(テラトーマ)細胞株nTera−2細胞(NTERA−2 cl.Dl)、(Plaiaら、Stem Cells,2006年;24(3):531〜546を参照)を、ATCC(Manassas,Va.)より購入し、上述の方法に従って培養した。
【0389】
全RNAの単離。RNeasy(登録商標)kit(Qiagen(Valencia,Ca.))を使用して、RNAを細胞から抽出した。RNAを、50マイクロリットルのDEPC−処理水で溶出させ、−80℃で保存した。ランダムヘキサマーを、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems(Foster City,Ca.))と共に、25℃で10分間、37℃で60分間、及び95℃で10分間使用して、RNAを逆転写した。サンプルを、−20℃で保存した。
【0390】
リアルタイムPCR。Applied Biosystems Assays−On−Demand(商標)(TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイとしても既知)を、製造元の仕様書(Applied Biosystems)に従って使用して、cDNAサンプルに対してPCRを実行した。この市販のキットは、ヒト細胞内のテロメラーゼに関してアッセイするために、広く使用される。簡潔には、hTERT(ヒトテロメラーゼ遺伝子)(HsOO162669)及びヒトGAPDH(内部対照)を、ABI prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems)と共に7000配列検出システムを使用して、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間とし、その後に、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルとした。PCRデータは、製造元の仕様書に従って分析した。
【0391】
ヒト臍帯組織由来細胞(ATCC受託番号PTA−6067)、線維芽細胞、及び間葉系幹細胞を、hTERT及び18S RNAに関してアッセイした。表20−1に示すように、hTERT、またそれゆえテロメラーゼは、ヒト臍帯組織由来細胞内では検出されなかった。
【表33】
【0392】
ヒト臍帯組織由来細胞(単離株022803、ATCC受託番号PTA−6067)及びnTera−2細胞をアッセイしたところ、それらの結果は、ヒト臍帯組織由来細胞の2つのロットでは、テロメラーゼの発現を示さなかったが、一方で、テラトーマ細胞株は、高レベルの発現を表した(表20−2)。
【表34】
【0393】
それゆえ、本発明のヒト臍帯由来細胞は、テロメラーゼを発現しないということを、結論付けることができる。
【0394】
(実施例21)
ALSの治療での臍帯組織由来細胞の使用
この研究は、ヒト臍帯組織由来細胞(「hUTC」)の、ALSの症状を呈する患者にhUTCを投与することができる臨床パラダイムを模倣する、疾患の発症、又は発症の1週間後のいずれかでの、疾患修飾効果を評価した。具体的には、この研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のSOD1 G93Aラットモデルでの、ヒト臍帯組織由来細胞(「hUTC」)の有効性を判定することとした。動物の生存及び自発運動機能に対する、hUTCの投与の効果を、髄腔内注射を介したhUTC送達の後に評価した。
【0395】
髄腔内注射を介したhUTCの局所送達の理論的根拠は、疾患発症の部位に、細胞を正確に送達するためであった。更には、この投与経路は、血液脳関門を迂回することにより、脊髄内の被験物質に関する潜在的反応部位への、迅速なアクセスが可能になる(Ochs Gら(1999年)J Pain Symptom Manage.18:229Y32)。自発運動活性の機能評価を、Basso、Beattie、及びBresnahan(BBB)試験(Basso DMら(1996年)Exp.Neurol.139:244〜256)、並びに傾斜面動作試験(Rivilin AS,Tator CH.(1977年)J Neurosurg 47(4):577;Lindberg RLら(1999年)J.Clin Invest.103(8):1127〜1134)で、週に1回実行した。
【0396】
現時点では、SOD1 G93A齧歯類モデルが、ALSに関する唯一のタイプの動物モデルである。このモデルは、ALSに対する様々な薬剤/化合物の有効性に関して、他の研究者によって示されるような、この疾患に関する新たな療法(Karussisら(2010年)Arch Neurol.67(10):1187〜94;Xuら(2009年)J Comp Neurol.514(4):297〜309;Xuら(2006年)Transplantation.82(7):865〜75;Garbuzova−Davis Sら(2003年)J.Hematother Stem Cell Res.12(3):255〜70;Galanら(2010年)Neurologia.25(8):467〜469;Kimら(2010年)Neurosci Lett.468(3):190〜4;Gros−Louisら(2010年)J Neurochem.113(5):1188〜99;Israelson Aら(2010年)Neuron.26;67(4):575〜87)をスクリーニングするための、有用で、費用対効果の大きい方法である。
【0397】
方法及び材料
Dr.David S.Howland(University of Washington,Seattle)によって供給された、SOD1 G93Aオスラットを、Taconic(Germantown,NY)からのN(SD)メスラットと交配させた。ラットは、1匹のオス:1匹のメスの対で、1週間にわたって交配させた。子孫は、21日齢で離乳させて遺伝子型を同定し、陽性の遺伝子導入の仔ラットを、本研究への登録のために特定した。表現型分散を低減するために、同腹仔のオス仔ラットを、元のメスの種畜と戻し交配させることによって、コロニーを繁殖させた。この研究での全ての動物の管理及び外科手順は、Johns Hopkins Medical InstitutionsのAnimal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコルに従って実施した。
【0398】
hUTC(ヒト臍帯組織から単離)を、米国特許第7,510,873号で説明されるような冷凍ストックから解凍して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に希釈した。それらの細胞を、1500×gで5分間、遠心分離して、次いで、再びPBS中に再懸濁させ、計数した。細胞濃度を2000万細胞/ミリリットルに調節して、この懸濁液の50マイクロリットルを、各ラットに対して、髄腔内に送達した。
【0399】
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子に関して陽性の動物を、本研究に登録した。これらの動物を、月2回秤量して、それらの動物の体重が、2回の連続測定に関して下落したときを判定し、その時点を疾患発症として定義した。これは、ALSの齧歯類モデルで疾患発症を判定するための、高感度かつ極めて客観的な尺度である(Xuら(2006年)Transplantation.82(7):865〜75)。疾患が発症したラットを、対ごとに、ビヒクル群又は細胞処置群へと無作為に割り当てた。
【0400】
本研究は、2つの集団を有するものとした(表21−1)。各集団は、2つの群を含むものとした。第1集団の第1群は、疾患発症時に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、ビヒクル対照)の、単一の髄腔内注射を受けるものとした。第1集団の第2群は、おおよその疾患発症時に、100万のhUTC細胞で処置した。細胞は、髄腔内注射を介して、PBS中で送達した。第2集団の第3群は、おおよその疾患発症の1週間後に、単一の髄腔内注射を使用して、PBS(ビヒクル対照)で処置した。第2集団の第4群は、おおよその疾患発症の1週間後に、100万のhUTC細胞を有する遺伝子組み換え型で処置した。細胞は、髄腔内注射を介して、PBS中で送達した。
【表35】
【0401】
損傷を最小限に抑え、動物の迅速な回復を最大化するために、経皮注射法を採用して、SOD1ラットの腰椎槽のCSF内へと、細胞を髄腔内に送達した。動物を、Kopf定位装置上に載置して、ガス麻酔(イソフルラン:酸素:亜酸化窒素=1:33:66)で麻酔した。腰部の毛を剃り、ラットの下腹部の下に円筒形支持要素を定置して、腰椎の椎間腔を伸展させた。25G×2.54cm(1”)ニードルが装着された、200〜500μLのマイクロシリンジを使用して、細胞を送達した。50マイクロリットルの細胞を収容するマイクロシリンジを有するニードルを、L4〜5又はL6〜S1椎間腔のくも膜下腔内に、緩徐に挿入した。馬尾の刺激の身体的徴候(すなわち、尾又は後肢のフリック)が観察された場合、細胞を、くも膜下腔内に、1分間の期間にわたって、緩徐に注入した。シリンジを2分間定位置に保持し、次いで、ニードルを引き抜いた。ヨウ素中に浸漬した綿棒先端部で、ニードルの挿入ポイントを1分間圧迫し、次いで、動物を取り外して、温熱パッド上に置き、回復させた。動物が覚醒した後、その動物のケージに、動物を戻した。
【0402】
疾患進行及び潜在的治療有効性を、2つの機能評価:(1)自発運動活性(週1回の測定);(2)体重(週2回の測定)を通じてモニタリングした。自発運動試験には、Basso、Beattie、及びBresnahan(BBB)試験(Bassoら(1995年)J Neurotrauma 1995;12(1):1;Bassoら(1996年)Exp.Neurol.139:244〜256)、並びに傾斜面動作試験(Rivlin AS,Tator CH.(1977年)J Neurosurg 47(4):577)を含めた。
【0403】
BBBのスコア付けに関しては、ラットを落ち着かせ、開放野外に適応させた。ラットが、開放野外内を継続的に歩行した後、処置に関して盲検の2人の試験者が、観察者内及び観察者間の高い再現性を伴う、21段階評価のBBB自発運動評価尺度を使用して、4分間の試験セッションを実施した。この開放野外試験を、ビデオテープに録画した。このテープから、2人の試験者は、1分間の期間中に実行された後肢(HL)の運動の数を定量的に評価し、この期間は、カメラから各HLの全体が見える場合の、4分間の試験セッションにわたるエピソードの複合体とした。この1分間の時間制限により、各動物の右HL及び左HLは、同じ長さの時間に関して査定されることが確保されたが、これは、カメラから、双方のHLの全体が常に見えるとは限らないためである。試験者のスコアが一致しなかった場合には、影像をスローモーションで再査定した。観察可能な後肢の運動が存在しない場合は、スコアを0として、最初のポイントを、独立した関節運動に対して与えるものとした。より多くの関節が運動を示し、かつ/又はその運動がより広範囲であった場合に、スコアを向上させるものとした。自発運動が増大するにつれて、足の足底配置、体重の支持、及び前肢と後肢との共調運動に対してポイントを与えるものとした。最終ポイントは、トウクリアランス、胴体の安定性、及び尾の位置によって達成されるものとした。
【0404】
傾斜面は、ゴム製波形板上にその位置を維持する動物の能力を評価する、別の行動的課題であり、この板は、5°の増分で上昇させるものとした。動物が、その体重を5秒間支持することができる最大角度を、耐久角度として定義する。この試験は、自発運動に必要とされる、感覚フィードバック、共調運動、及び筋力を検査する。
【0405】
疾患の末期は、動物が横倒しに定置された場合に、20秒以内に正しい位置に戻ることができないほど重篤な麻痺によって、判定されるものとした。この時点でのBBBスコア及び傾斜面スコアは、双方ともゼロであるが、これは、SOD1突然変異体ラットに関して頻繁に使用される終了点であり、Johns Hopkins UniversityのAnimal Care and Use Committeeの要件と一致するものである。
【0406】
BBBスコア及び傾斜面スコアを、反復測定分散分析(ANOVA)によって分析し、その後にFisher LSDポストホック試験によって分析して、ビヒクルと細胞処置群との差異を査定した。2つの群の間で、疾患発症齢及び死亡齢を比較することによって(スチューデントt検定で)、並びにKaplan−Meier生存分析、その後のログランク検定を使用して、処置の効果としての疾病の経過を分析した。
【0407】
組織学的分析
宿主運動ニューロンの状態を、腰椎隆起(L4〜5)内の運動ニューロンのクレシルバイオレット染色によって調査した(データは示さず)。運動ニューロンの数は、大幅に減少し、多くのニューロンは、幹細胞の群及び対照群の双方で、変性プロファイルとして現れ、全ての脊髄組織が疾患の末期で獲得されるという事実と一致するパターンであった。ヒト特異的抗核抗体でICC染色を使用したところ、脊髄実質の内側には、生存幹細胞は見出されなかった。双方の群からのL4−L5前根を、トルイジンブルー染色によって研究した。軸索変性及び脱髄が顕著であり、幹細胞の群及び対照群の双方で同様であり、疾患の末期でのこれらの組織標本の獲得と一致していた。
【0408】
結果
Kaplan−Meierプロットは、処置の経過の全体にわたる、対照の動物と比較した細胞処置群(第1群及び第2群はn=10、第3群及び第4群はn=8)に関する、動物の生存の増大が、本研究で残りの動物よりも長く生きた第1群の1匹の動物を除き(
図7A)、疾患発症(
図7A、第1集団)又は発症の1週間後(
図7B、第2集団)のいずれかで開始したことを示す。双方の集団で、ビヒクルを受容した動物と、hUTCを注射された動物とでは、疾患発症の平均時間に差異はなかったが(
図8)、平均寿命は、hUTCの髄腔内投与の後に向上し、特に第2集団で、動物は、疾患の発症齢は同様であるが、ビヒクル群よりも15.75日(2.25週、P<0.035)長い寿命を有した。
【0409】
図9は、疾患発症でのhUTCの投与(
図9A及び
図9B)、又は疾患発症の1週間後のhUTCの投与(
図9C及び
図9D)が、BBB試験並びに傾斜面動作試験でのスコアの向上と関連したことを示しており、ビヒクルのみを受容した動物と比較して、hUTCを移植された動物で、より緩慢な筋力低下の進行が示される。これらの結果は、hUTCが、このモデルで、自発運動活性を保持することが可能であり得る点を示唆する。
【0410】
それゆえ、以下の表21−2に要約される、この実施例で開示されるデータにより、hUTCの髄腔内注射が、ALSのラットモデルで、運動ニューロンの機能を保持し、寿命を延長させることができる点が示される。
【表36】
【0411】
表21−2に関する定義
疾患発症:2つの連続的時間に関して、体重の減少が判明する時点。これは、ALSの齧歯類モデルでの疾患発症を判定するための、高感度かつ極めて客観的な尺度である(Xuら(2006年))。
【0412】
疾患の末期の判定:動物が横倒しに定置された場合に、20秒以内に正しい位置に戻ることができず(SOD1突然変異体ラットに関して頻繁に使用される終了点)、また動物を安楽死させなければならない(Israelsonら、2010年)ほど、麻痺が重篤である段階。
【0413】
疾患持続期間:疾患発症時から疾患の末期までの期間。
【0414】
寿命:出生時から安楽死までの期間。
【0415】
(実施例22)
ALSの予防的処置での臍帯組織由来細胞の使用
hUTCの疾患修飾効果を、予防的処置として、疾患発症の前(10週齢又は12週齢)に評価した。臨床的に有利な投与経路の代表である、静脈内尾静脈注射を介して、細胞を投与した。自発運動活性の機能評価を、Basso、Beattie、及びBresnahan(BBB)試験、並びに傾斜面動作試験で、週に1回実行した。
【0416】
研究の目的及び範囲
この研究の目的は、SOD1 G93Aラット被験体に実施されるような、遺伝子導入ラットのALSの臨床面に対する、臍帯由来の自己複製可能かつ増殖可能な細胞の、予防的役割を、Koliatsos及び共同研究者による研究(Yanら(2006年)Stem Cells 24:1976〜1985;Yanら(2007年)PLoS Med 4:e39;Xuら(2006年)Transplantation 82:865〜875)で発表された主要な方法論の道筋に沿って調査することとした。2つの集団を選択した:(1)10週齢で臍帯由来細胞又はビヒクルを受容させた、10週の集団;(2)12週齢で細胞又はビヒクルを受容させた、12週の集団。各集団内では、A群(殆どの場合で、奇数番号の動物として盲検化される)が、臍帯由来細胞を受容するように指定され、B群(殆どの場合で、偶数番号の動物として盲検化される)が、ビヒクル処置に委ねられた。Koliatsos Labによる先行の研究(Yanら(2006年);Xuら(2006年))で提唱されるような、移植片対宿主イベントの免疫防御は、実行しなかった。以下の分析は、極めて可変性の集団から、可変性の少ない集団へ、また最終的には疾患発症及び重篤性に関して最適化された集団へと、コロニーの表現型を移行させることを考慮している。
【0417】
交配及び表現型の最適化−疾患発症及び寿命についての観察結果
表現型分散を低減するために、同腹仔のオス仔ラットを、元のメスの種畜と戻し交配させることによって、SOD1ラットのコロニーを繁殖させた。基準は、オスの種畜の疾患発症時間を、90〜120日の範囲内にするべきものとした。そうではない場合、その子孫の表現型は、「不安定」になり、すなわち、疾患発症が、180日齢及びそれ以上にまでも変動する恐れがあることが観察された。この研究に使用する動物を産生するために使用された、最初の種蓄は、この90〜120日の枠外であり、それらの子孫に、実質的な表現型の変動を引き起こす問題があった。表現型の変動の影響を減少させるために、A群に指定された各動物は、B群に指定された同腹仔からの同性の動物と、最初に対にされた。10週の集団でのA群及びB群に関する、平均疾患発症時間は、それぞれ、153.15±12.71日及び154.0±13.75日であり、A群及びB群に関する寿命は、それぞれ、202.0±10.32日及び202.75±17.31日であった。12週の集団でのA群及びB群に関する、平均疾患発症時間は、それぞれ、149.0±27.58日及び146.5±28.53日であり、A群及びB群に関する寿命は、それぞれ、180.5±30.25日及び174.88±35.87日であった。A群での平均疾患発症時間及び寿命の双方とも、B群よりも長かったが、これらの差異は、統計的に有意なものではなかった。12週の集団での最後の2つの対は、遺伝子型に乱れのないSOD1ラット、すなわち、90〜120日の枠内の疾患発症時間を有する、SOD1ラットの子孫で構成されていたため、これらのラットを、同じ集団内の他のラットとは別個に分析した。A群及びB郡内の、これらの2つの対の平均疾患発症時間は、114.5±0.5日及び111.0±0.61日であり、統計的に有意な差異ではなかった。A群に委ねられた、これらの2つの対からの被験体の寿命は、133.5±0.03であり、すなわち、B群内の被験体の寿命(123.0±0.41日)よりも10日長かった。
【0418】
生存曲線パターン
ログランク分析で研究されたKaplan−Meyer曲線は、10週の集団及び12週の集団の実験(
図10及び
図11)での、A群とB群との有意差を示すものではなかった。しかしながら、12週の集団の実験では、改善された生存を示す、A群の傾向が存在し、A群及びB群に関する生存時間の中央値は、それぞれ、194日及び185日であった(
図11を参照)。12週の集団の実験では、最後の2つの対の間には有意差が存在しなかったが、生存曲線分析により、A群がより長く生存し得るという有望な傾向が示される(
図12)。
【0419】
2つの集団内の動物の行動試験−傾斜面データ及びBBBデータ:反復測定ANOVA(RM ANOVA)を使用する、これら2つの試験からのシリアルデータを、2つの方法で分析した。第1のモードでは、最初の動物が疾患の徴候を示す1週間前に開始したデータを収集して、比較分析を実行した(
図13〜18の左上のパネル)。第2のモードでは、疾患発症の時点で開始したデータを収集した(
図13〜18の左下のパネル)。これらの分析を実行する際、「代償性」補正もまた適用して、極めて異種の生存曲線(遺伝子型分散による)によって引き起こされる、曲線偏差因子を取り除いた(
図13〜18の右のパネル)。この補正を適用する際、死亡時に近い動物からの、最低の挙動試験スコアを採択して、後続の時点での同じ群からの生存動物のスコアと共に入力した(代替的方法は、このデータ点を、その後の行動データセットから除去して、より少ないnの動物に対する分析を行なうことである)。傾斜面データ及びBBBデータに対するRM ANOVAの結果は、疾患発祥及び生存に関する補正並びに調節にも関わらず、10週の集団及び12週の集団の実験での、2つの群の間の有意差を示すものではなかった(
図13〜15、
図17)。しかしながら、12週の集団の実験からの最後の2つの対を、上記の交配セクションで説明された理由に関して分析したところ、それらの行動結果は、生存研究からのものと同様の分散を有することが判明した(上記参照;
図16、18)。これらの2つの対の間には、行動スコアについての統計的差異は存在しなかったが、B群に勝る、A群の良好な動作の傾向が存在した。
【0420】
組織学的分析
幹細胞注射の有無に関わらず、全てのSOD1ラットを、それらのラットの疾患が末期となった際に(BBBスコア<3)殺処分した。4% PFAでの潅流の後、それらの動物の脳及び他の器官を収集して凍結保護し、更なる処理のために凍結させた。関連の器官/組織からの切片上に、残余のヒト幹細胞が存在するか否かを調査するために、ヒト特異的核(HNu)抗体を使用する免疫細胞化学を実行した。これらの組織には、腰髄(関連の治療標的として)及び肺(予想される高濃度の注射幹細胞を有する器官対照として)を含めた。HNu染色は、末期動物内のこれらの器官内の移植細胞に関して、いずれの生存も示すものではなかった。
【0421】
脊髄切片についての観察結果:G93A SOD1ラットは、ヒトALSの多くの主症状を再現する。SOD1ラットの脊髄内での運動ニューロンの変性は、下肢の筋肉を神経支配する腰部の運動ニューロンから、呼吸筋を神経支配する頚部及び胸部の運動ニューロンへと進行する。動物は、飢餓性衰弱及び呼吸不全により死亡する。この実験の組織学的目的は、中期疾患動物由来の適切な組織の欠如、及び実質的な表現型の拡散により、限定されたものであった。利用可能な脊髄組織は、末期で殺処分した動物由来のものであり、幹細胞注射の仮定的保護効果を使用した動物内でさえも、大半の運動ニューロンが変性していた。それゆえ、組織学的分析の唯一の価値は、生細胞又は死細胞で処置した動物の脊髄内での、肉眼的神経病理学を表すことであった。そのような5つの脊髄を処理した。それぞれの脊髄から、腰髄のL4〜6の領域全体にわたって300μmごとに等間隔の、6対の切片を研究した。この対の一方の切片を、クレシルバイオレットで染色し、他方をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。3つの場合を、奇数番号の動物から採択し、2つの場合を、偶数番号の動物から採択した。
【0422】
染色された切片は、正常な脊髄の肉眼的外観を露呈させ、脊髄の全ての主要区分の輪郭が、明確に示された(
図19A及び
図19B)。腫瘍は検出されなかった(
図19A及び
図19B)。SOD1 G93A動物の運動ニューロンの表現型に基づいて予測されたように、偶数番号及び奇数番号の動物の双方で、運動ニューロンの重度の損失が存在した。前角の好塩基球の輪郭内に存在する核小体の数に基づく、2つの群からの数を、100Xの倍率で計数すると、2つの群の間には、運動ニューロン細胞数の、感知し得る傾向は存在しなかった(偶数番号の動物、423;奇数番号の動物、418)。分割細胞誤差に関するAbercrombieの調節を使用して、2つの群の間の、核小体の直径の予想される差異を補正した(Ni=ni.t/t+d、式中、ni=計数された数、t=切片の厚さ、及びd=平均輪郭直径)。
【0423】
細胞処置動物からのBBBの評価及びスコアは、未処置の動物よりも良好な傾向を示す。それゆえ、この研究の結果は、疾患発症により近い投与の時期又は疾患発症後の投与の時期が、より良好な治療有効性を有し得ることを示唆する。
【0424】
(実施例23)
神経前駆細胞の分化に関する栄養因子
中枢神経系(CNS)内の神経幹細胞は、自己複製することができ、ニューロン、乏突起神経膠細胞、及び星状細胞へと分化することができるような、複能性である。これらの細胞は、傷害の後に活性化され、ニューロン新生を開始することができる。しかしながら、この分化の効率は極めて低く、新たに産生されるニューロンは、恐らくは、何らかの機能的シナプスの形成の欠損により、殆どが短命である。細胞ベースの産物の、外来性の送達は、ニューロン新生及び新たなシナプスの形成を増進させ、その結果として、この問題を克服することができるため、外傷又は変性状態での機能回復を改善することができる。近年の研究は、細胞ベースの技術が、複数の神経学的疾患に関する有効な療法であり得ることを示唆している。根本的な機序を理解するために、成体神経幹細胞の分化に対するhUTCの効果を判定した。
【0425】
材料及び方法
細胞培養。
ヒト臍組織由来細胞(hUTC)を解凍して(ロット番号22042008、継代P3又はP4)、T75フラスコ及び/又はT225フラスコ上に播種し、Hayflick増殖培地(DMEM−低グルコース(Gibco、カタログ番号11885−084)、15% v/vウシ胎児血清(FBS、Hycloneカタログ番号SH30070.03IR)、4mMのGlutamax(Gibco、カタログ番号3505−061)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号15070063))中で、一晩若しくは48時間培養して、集密の層を形成した。細胞が集密の層に到達した後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Invitrogen、カタログ番号25200−056)で、それらの細胞を3回洗浄し、DMEM血清フリー培地で、指示される通り8時間又は24時間インキュベートした。TrypLE(商標)(Gibco、カタログ番号12604−021)を使用して、細胞を剥離させ、Guava(登録商標)計器(Guava Technologies)を使用して定量化した。
【0426】
成体ラットの海馬神経幹細胞(ロット番号R0706F0009、Millipore、カタログ番号SCR022)を解凍して(P3又はP4)、ポリLオルニチン(Sigma、カタログ番号P3655)及びラミニン(Sigma、カタログ番号2020)T75コーティングフラスコ(Corning、カタログ番号:430641)上に播種し、B27サプリメント(Invitrogen、カタログ番号17504044)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及びFGF−2(Millipore、カタログ番号GF003)を有する、DMEM/F12(Millipore、カタログ番号DF−042−B)中で、製造元の使用説明書に従って培養した。細胞が80%の集密度となった際に、Accutase(登録商標)(Millipore、カタログ番号SCR005)を使用して、それらの細胞を剥離させ、Guava(登録商標)計器を使用して定量化した。分化アッセイに関しては、それらの細胞を、コーティングされた6ウェルプレート(Millipore、カタログ番号PICL06P05)上に、20,000細胞/cm
2で播種した。
【0427】
共培養アッセイ。
共培養アッセイに関しては、6ウェルトランスウェル(Corningカタログ番号3450)システムを使用した。成体ラットの海馬神経幹細胞を、ウェルの底面上に、単独で、又はhUTCと共に、20,000細胞/cm
2でプレーティングした。これらの培養物を、B27サプリメントを有し、FGFを有さない、DMEM/F12でインキュベートし、その培地の半分を、1日おきに新鮮培地と交換した。
【0428】
RNA/タンパク質の抽出。
AllPrep RNA/タンパク質キット(Qiagen、カタログ番号80404)を、製造元の使用説明書に従って使用して、RNA及びタンパク質を調製した。6ウェルプレート内で増殖させた細胞に関して使用した溶解緩衝液を、それに応じてスケールアップさせた。
【0429】
cDNAの合成及びゲノムDNAの取り出し。
この手順は、mRNAの単離、及びその後のQuantiTect(登録商標)逆転写キット(Qiagen、カタログ番号205313)を使用するcDNAの調製であった。ゲノムDNAの取り出しを、cDNAの合成の前に、製造元の使用説明書に従って実行した。cDNAの合成は、製造元の使用説明書に従って、20マイクロリットルの総容積で、QuantiTect(登録商標)RTキットを使用して、成体ラットの海馬神経幹細胞から単離した全RNAのうちの0.5マイクログラムで実行した。
【0430】
定量的TaqMan PCR。
PCRを、光学96ウェル反応プレート内のABI 7000リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、カタログ番号4306737)で、20マイクロリットルの最終容積で実行した。齧歯類の転写は、10マイクロリットルの2xTaqMan universal PCRマスターミックス(Applied Biosystems、カタログ番号4364338)、1マイクロリットルの20X TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems、カタログ番号4331182)を含有する反応混合物;GFAP(アッセイID:Rn 00566603_m1)、ネスチン(Rn00364394_R1)、ミエリン塩基性タンパク質(アッセイID:Rn00566745_m1)、Sox2(rn00584808_m1)、チューブリンβ IIIイソ型(アッセイID:Rn 00594933_m1)、及びGAPDH(アッセイID:99999916_s1)で検出した。1マイクロリットルのテンプレートDNA、及び8マイクロリットルのRNアーゼフリー水(Sigma、カタログ番号W4502)を調製した。増幅は、50℃で2分間のUNG活性化工程、その後の95℃で10分間のテンプレート変性工程で開始して実行した。95℃で15秒間の変性、及び60℃で1分間の混合プライマーアニーリング/伸長の、40サイクルを実行した。
【0431】
タンパク質免疫ブロット法。
細胞溶解物全体(20マイクログラム)を、Laemmli緩衝液(Boston Bioproducts、カタログ番号BP−111R)中で3分間煮沸することによって、変性させた。その後、それらのサンプルを、トリスグリシンSDS泳動緩衝液(Boston Bioproducts、カタログ番号BP−150)中、10%トリス−グリシンゲル(Invitrogen、カタログ番号:EC6078BOX)上で、40mAで1時間、SDS−PAGEによって分離させた。転写緩衝液(25mMトリス塩基;192mMグリシン;10%(v/v)メタノール)中、半乾燥電気泳動Trans−Blot(登録商標)Cell(Bio−Rad)を使用して、それらのタンパク質を、0.45マイクロメートルPVDF膜(Invitrogen、カタログ番号LC2005)上に転写した。この転写は、25Vで45分間実行した。PBST(PBS+0.1%(v/v)Tween 20)中、3%(w/v)BSAを使用して、室温で1時間、膜をブロックした。一次抗体を使用して、室温で1時間、ブロットをプロービングした。その後、PBSTで膜を3回洗浄した後、西洋わさびペルオキシターゼで抱合された二次抗体と共に、PBS中1:5000で、室温で1時間、インキュベートした。SuperSignal(登録商標)West Dura長時間持続基質(Pierce、カタログ番号34076)を使用して、シグナルを検出した。以下の抗体を使用した:抗チューブリンIII βイソ型(1:250、Millipore、カタログ番号MAB 1637);抗GFAP(1:2000、DAKO、カタログ番号Z0334);抗Sox(1:1000、Abcam、カタログ番号ab59776);抗MBP(1:500、Millipore、カタログ番号MAB 382)抗GAPDHペルオキシダーゼ抱合体(1:5000、Sigma、カタログ番号G9295);ヤギ抗マウスIgG HRP(R&&D systems、カタログ番号HAF007);ヤギ抗ウサギIgG HRP(Sigma、カタログ番号A0545)。
【0432】
フローサイトメトリー。
成体ラットの海馬神経幹細胞を、共培養アッセイの後に、Accutase(登録商標)を使用して剥離させ、1%パラホルムアルデヒドを含有するPBS中に、一時的に懸濁させた。次いで、細胞を、ブロッキング緩衝液(0.3% Triton X−100(Sigma、カタログ番号T9284)を有するPBS)及び0.3%ヤギ血清(Millipore、カタログ番号S26)で15〜30分間、その後、ブロッキング緩衝液中一次抗体で(1:200、ただし、GFAPに関しては1:2000で)1時間、室温で再懸濁させてインキュベートした。その後、緩衝液(0.3% Triton X−100を有するPBS)で、これらの細胞を3回洗浄した後、例えば、Rフィリコエリトリン抱合ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes、カタログ番号P−2771MP)及びAlexa Fluor(登録商標)488抱合ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes、カタログ番号A−11029)などの、適切なフルオロフォア抱合二次抗体と共に(1:400)、ブロッキング緩衝液中で、45分間インキュベートした。その後、染色した細胞を、洗浄緩衝液で3回洗浄して、PBS中に懸濁させ、フローサイトメトリー(FACScalibur(商標))を使用することによって、分析を施した。
【0433】
免疫細胞化学。
共培養アッセイ後5日目に24ウェルプレート上に播種した、成体ラットの海馬神経幹細胞を、冷PBSで洗浄し、3%パラホルムアルデヒドを使用して、4℃で20分間固定した。固定した細胞を、PBSで2回洗浄し、その後、ブロッキング緩衝液で透過処理して(室温で15分)、一次抗体と共に(1:200、ただし、GFAPに関しては1:2000で)、室温で1時間インキュベートした。染色した細胞を、洗浄緩衝液中で3回洗浄した後、適切なフルオロフォア抱合二次抗体と共にインキュベートした。最終洗浄の後(洗浄緩衝液中で5回)、染色した細胞を、共焦点蛍光顕微鏡(Olympus)によって検査した。20X対物レンズを使用して、全ての画像を取り込んだ。
【0434】
結果
hUTCは、神経幹細胞の分化を誘導する。
神経幹細胞の分化に対するhUTCの効果を検討するために、FGF−2を添加する場合、又は添加しない場合で、共培養実験を実行した。FGF−2を添加しない場合、細胞の分化が不十分となる傾向がある。hUTCを使用する場合、又は使用しない場合の、3日後の神経幹細胞の分化能を分析するために、リアルタイムPCR、ウエスタン分析、及びフローサイトメトリーによって、神経細胞マーカー並びに非神経細胞マーカーを定量化した。細胞表現型を、重要なマーカー遺伝子:前駆細胞に関してはSOX;星状細胞に関してはグリア繊維酸性タンパク質(GFAP);ニューロンに関してはチューブリンβ III、及び乏突起神経膠細胞に関してはミエリン塩基性タンパク質(MBP)を測定することによって、同定した。それらの結果は、hUTCが、GFAPの転写の増大を誘導したことを示し、その増大は、外来性のFGF−2の存在下では、更に高いものであった。チューブリンβ IIIイソ型の発現は、hUTC及びFGF−2の存在下では、3倍高いものであった。GFAPタンパク質のレベルもまた、増大した。フローサイトメトリーは:(1)GFAPの発現を呈した細胞の明確な集団;及び(2)チューブリンβ III陽性細胞の、明確であるが小さい集団を示した。同様のタンパク質の発現が、培地中のFGF−2の非存在下又は存在下で、観察された。アジ化ナトリウム及びデオキシグルコースによって化学的に損傷させた神経幹細胞を使用して、同じ実験系を実行した。この虚血性神経幹細胞を、hUTCで処置した場合、同様の転写及びタンパク質発現の傾向が観察されたが、ただし、FGF−2の存在下では、GFAPの転写物が100〜200倍増大する。
【0435】
リアルタイムPCRによって定量化された、神経細胞転写物及び非神経細胞転写物。
成体ラットの海馬神経幹細胞を、hUTCと、間接的(表23−1)又は直接的(表23−2)のいずれかで、共培養した。転写レベルは、対照細胞(神経幹細胞単独)に比べて増大した倍数で表される。これらの結果を、2つの独立した実験のセットから作表する。データは、±S.D.の平均値である。
【表37】
【表38】
【0436】
要約。hUTCによって分泌された因子は、インビトロでの、グリア細胞及び神経細胞への、神経幹細胞の分化を促進した。
【0437】
(実施例24)
PC12細胞をモデルとして使用する、神経前駆細胞の分化に関する栄養因子
PC12細胞は、神経分化に関する有用なモデル系である。これらの細胞は、培養下で無限に増殖するが、神経増殖因子(NGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮増殖因子(EGF)、並びに恐らくはインターロイキン6(IL−6)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、及び白血病阻害因子(LIF)を含めた、特定の因子で処置される場合、ニューロン様細胞へと分化することができる。従前の研究は、hUTCが、インビトロで神経栄養因子を分泌することを示している。本研究の目的は、hUTCからの可溶性因子が、PC12細胞の分化を促進することが可能であるか否かを、判定することとした。
【0438】
材料及び方法
細胞培養及び馴化培地。
400万のヒト臍組織由来細胞(hUTC)を解凍して(ロット番号1027、継代数2又は継代数4)、T75フラスコ上に播種し、Hayflick増殖培地(DMEM−低グルコース(Gibco、カタログ番号11885−084)、15% v/vウシ胎児血清(FBS、Hycloneカタログ番号SH30070.03IR)、4mMのGlutamax(Gibco、カタログ番号3505−061)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号1070063)中で、一晩培養した。翌日、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Invitrogen、カタログ番号25200−056)で、それらの細胞を3回洗浄し、Roswell Park Memorial Institute 1640(RPMI、ATCC、カタログ番号30−2001)、0.5%加熱不活性化ウマ血清(Gibco、カタログ番号26050088)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンと共に、48時間インキュベートした。この培地を取り出して、2,500rpmで5分間、遠心分離した。
【0439】
PC12細胞のサブクローンである、Neuroscreen−1細胞(ロット番号NS1081219、Cellomics、カタログ番号R04−0001−C1)を解凍して(P2又はP6)、コラーゲンIコーティングフラスコ(Nunc、カタログ番号132707)上に播種し、10%加熱不活性化ウマ血清、5% FBS(ATCC、カタログ番号30−2020)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有する、RPMI中で、製造元の使用説明書に従って培養した。これらの細胞が、70%の集密度となった際に、TrypLE(商標)(Gibco、カタログ番号12604−021)を使用して、それらの細胞を剥離させ、Guava(登録商標)計器を使用して定量化した。分化アッセイに関しては、それらの細胞を、コラーゲンコーティングされた6ウェルプレート(Millipore、カタログ番号PICL06P05)上に、20〜30,000細胞/cm
2で播種した。
【0440】
増殖因子及び馴化培地を使用する処置。
Neuroscreen−1細胞を、PBSで3回洗浄し、RPMI及び0.5%ウマ血清で、18〜24時間休止させた後、10ng/mLヒト神経増殖因子β(NGF、Millipore、カタログ番号GF028)又は馴化培地を使用して処置した。それらの細胞を、4日間培養した。
【0441】
神経突起伸長アッセイ。
神経突起伸長キットを、製造元の使用説明書に従って使用して(Thermo Fisher Scientific)、神経突起伸長の免疫細胞化学的評価を実行した。規定の時点での、NGF又はhUTC馴化培地を使用した処置の後、PBS中4%パラホルムアルデヒドを使用して、37℃で20分間、細胞を固定した。細胞体及び突起を、抗β IIIチューブリン一次抗体、その後にAlexa Fluor(登録商標)488抱合二次抗体を使用して、標識した。細胞核を標識するために、Hoechst 33258染色剤を、固定液中に含めた。次いで、自動画像取り込み及び分析のために、Cellomics ArrayScan(登録商標)VTIハイコンテンツ撮像プラットホーム内に、プレートを装填した。このシステムは、電動ステージを使用して、個々のウェル内のフィールドを、自動的に焦点合わせして走査する、倒立エピ蛍光顕微鏡に基づくものである。蛍光画像を、青チャネル(核)及び緑チャネル(細胞体及び突起)用の、多重帯域通過発光フィルター並びに整合励起フィルターを使用して生成し、高解像度の電荷結合素子カメラで取得した。取得した画像を、Neuronal Profiling bioapplication(Thermo Fisher Scientific)を使用して、ArrayScan(登録商標)ソフトウェアによって分析し、画像内の有効細胞のそれぞれに関して、1つの細胞当りの神経突起の長さの合計、1つの細胞当りの神経突起、並びに枝分かれ部位及び細胞体領域を含めた、様々な形態学的パラメーターを測定した。細胞は、神経突起の長さの合計が、>5マイクロメートルであった場合に、分化しているとして定義されたが、この長さは、NGF非存在下の細胞内での、神経突起の長さの合計の2倍である。少なくとも500細胞/ウェルの分析のために、10×の対物レンズを使用して、十分な数のフィールドを取得した。
【0442】
結果
hUTCが、neuroscreen−1細胞でのニューロン新生を誘導するか否かを査定するために、馴化培地(培養hUTC由来)を使用して、休止PC12細胞を、4日間培養した。陽性対照のために、neuroscreen−1細胞を、10ng/mLのNGFで処置した。NGF又は馴化培地の効果を、顕微鏡検査によって観察した。NGF又はhUTC馴化培地の非存在下では、細胞は、比較的小さく、丸みを帯びており、可視の神経突起を殆ど有さない。2〜4日間の、NGF又は馴化培地を使用した処置は、神経突起の伸長ネットワークを有する、若干大きい細胞体を生じさせた。NGF又は馴化培地に曝した後には、神経突起の長さの漸増が存在した。40%を超える細胞が、馴化培地への曝露の4日後に分化した。neuroscreen−1細胞の分化を定量化するために、βチューブリンイソ型III抗体で細胞を標識し、画像を取得して、Neuronal Profiling BioApplicationによって、分析した。NGFで処置したPC12細胞、及びhUTC馴化培地で処置したPC12細胞の双方で、1つの細胞当りの神経突起の長さ、神経突起の数、及び枝分かれ部位の増大が存在した。それゆえ、hUTC馴化培地は、PC12細胞の分化を誘導するために十分である。
【0443】
NGF及びhUTC 48時間馴化培地によって誘導された、Neuroscreen−1細胞(表24−1)。
Neuroscreen−1細胞を、12ウェルプレート上で4日間、0.5%ウマ血清RPMI中で(陰性対照)、又は20ng/mLのNGF(陽性対照)、又は48時間馴化培地を使用して、増殖させた。4日後に、「材料及び方法」で説明されるように、細胞を固定して染色した。これらの結果を、2つの独立した実験のセットから作表さする。データは、±S.D.の平均値である。
【表39】
【0444】
要約:hUTCによって分泌される可溶性因子は、形態学的変化によって示されるような、PC12細胞でのニューロン新生を誘導することが、結果により示された
【0445】
(実施例25)
筋萎縮性側索硬化症のための、hUTCの複数回投与に関する予言的プロトコル
本研究の結果は、hUTCが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のSOD1 G93Aラットモデルに、単回投与で有効であり得ることを示唆する。それゆえ、更なる研究により、hUTCの反復投与が、この疾患モデルでの追加的有効性を有し得ることを、実証することができる。
【0446】
SOD1 G93Aは、髄腔内の空隙又は大槽内に直接注射されるhUTCを使用して、疾患発症の時点、若しくは疾患発症に近い時点で、hUTCで処置することができる。細胞は、週に1回、又はそれよりも多い頻度、若しくは少ない頻度で、注射することができる。損傷を最小限に抑え、動物の迅速な回復を最大化するために、SOD1ラットの腰椎槽のCSF内へ、hUTC細胞産物を髄腔内送達するための、経皮注射法を使用することができる。Kopf定位装置上に、動物を載置して、ガス麻酔(イソフルラン:酸素:亜酸化窒素=1:33:66)で麻酔する。腰部の毛を剃り、ラットの下腹部の下に円筒形支持要素を定置して、腰椎の椎間腔を伸展させる。25G×2.54cm(1”)ニードルが装着された、200〜500μLのマイクロシリンジを使用して、細胞を送達する。空のマイクロシリンジを有するニードルを、L4〜5又はL6〜S1椎間腔のくも膜下腔内に、緩徐に挿入する。馬尾の刺激の身体的徴候、すなわち、尾又は後肢のフリックが観察された場合、細胞を、くも膜下腔内に、1分間の期間にわたって、緩徐に注入する。シリンジを、2分間定位置に保持し、次いで除去する。ヨウ素中に浸漬した綿棒先端部で、ニードルの挿入ポイントを1分間圧迫し、次いで、動物を取り外して、温熱パッド上で意識回復させる。動物が覚醒した後、その動物のケージに、動物を戻す。
【0447】
動物は、種々の用量レベルでhUTCで処置することができ、一定量の総注射量が送達される。動物は、末期まで、ほぼ隔週の間隔でhUTCで処置し、評価することができる。
【表40】
【0448】
疾患進行及び潜在的治療有効性を、2つの成果測定:(1)機能的自発運動活性(週1回の測定);(2)体重(週2回の測定)を通じてモニタリングする。自発運動試験は、Basso、Beattie、及びBresnahan(BBB)試験(Bassoら(1995年)J Neurotrauma 1995;12(1):1;Bassoら(1996年)Exp.Neurol.139:244〜256)、並びに傾斜面動作試験(Rivlin AS,Tator CH.(1977年)J Neurosurg 47(4):577)を含む。
【0449】
BBBのスコア付けに関しては、ラットを落ち着かせ、開放野外に適応させる。ラットが、開放野外内を継続的に歩行した後、処置に関して盲検の2人の試験者が、観察者内及び観察者間の高い再現性を伴う、21段階評価のBBB自発運動評価尺度を使用して、4分間の試験セッションを実施する。この開放野外試験を、ビデオテープに録画する。このテープから、2人の試験者は、1分間の期間中に実行された後肢(HL)の運動の数を定量的に評価し、この期間は、カメラから各HLの全体が見える場合の、4分間の試験セッションにわたるエピソードの複合体とする。この1分間の時間制限により、各動物の右HL及び左HLは、同じ長さの時間に関して査定されることが確保されるが、これは、カメラからは、双方のHLの全体が常に見えるとは限らないためである。試験者のスコアが一致しない場合には、影像をスローモーションで再査定する。観察可能な後肢の運動が存在しない場合は、スコアを0として、最初のポイントを、独立した関節運動に対して与えるものとした。より多くの関節が運動を示し、かつ/又はその運動がより広範囲であった場合に、スコアが向上する。自発運動が増大するにつれて、足の足底配置、体重の支持、及び前肢と後肢との共調運動に対してポイントが与えられる。最終ポイントは、トウクリアランス、胴体の安定性、及び尾の位置によって達成される。
【0450】
傾斜面は、ゴム製波形板上にその位置を維持する、動物の能力を評価する、別の行動的課題であり、この板は、5°の増分で上昇させるものとした。動物が、その体重を5秒間支持することができる最大角度を、耐久角度として定義する。この試験は、自発運動に必要とされる、感覚フィードバック、共調運動、及び筋力を検査する。
【0451】
疾患の末期は、動物が横倒しに定置された場合に、20秒以内に正しい位置に戻ることができないほど重篤な麻痺によって判定され、これは、SOD1突然変異体ラットに関して頻繁に使用される終了点である。この時点でのBBBスコア及び傾斜面スコアは、双方ともゼロである。
【0452】
本発明は、上記で説明され、例示された実施形態に、限定されるものではない。添付の特許請求の範囲内での、変型形態及び修正が可能である。
【表41】
【0453】
〔実施の態様〕
(1) 筋萎縮性側索硬化症を治療するための有効量で、患者に臍帯組織由来細胞を投与することを含む、筋萎縮性側索硬化症の治療方法であって、前記臍帯組織由来細胞が、実質的に血液を含まない、ヒト臍帯組織から単離され、培養下での自己複製及び増殖が可能であり、他の表現型の細胞へと分化する潜在能力を有し、少なくとも40回の倍加を経ることができ、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−A、B、Cのそれぞれを発現し、
(b)CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、又はHLA−DR、DP、DQのいずれも発現せず、
(c)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜の骨髄細胞である、ヒト細胞と比べて、インターロイキン8、レチクロン1(reticulon 1)、及びケモカイン受容体リガンド(C−X−Cモチーフ)リガンド3の発現の増大、の特性を有する、方法。
(2) 前記臍帯組織由来細胞が、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記臍帯組織由来細胞が、投与の前に、神経細胞株へと分化するように、インビトロで誘導される、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記臍帯組織由来細胞が、星状細胞、乏突起神経膠細胞、ニューロン、神経前駆細胞、神経幹細胞、又は他の複能性若しくは多能性の幹細胞のうちの、少なくとも1種の他の細胞型と共に投与される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記臍帯組織由来細胞が、前記患者の神経系内の、既定の部位に投与される、実施態様1に記載の方法。
【0454】
(6) 前記臍帯組織由来細胞が、注射又は注入によって投与される、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記臍帯組織由来細胞が、静脈内注射又は髄腔内注射によって投与される、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記臍帯組織由来細胞が、植え込み可能な装置内部に封入されて投与される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記臍帯組織由来細胞が、前記細胞を含むマトリックス又はスカフォールドの植え込みによって投与される、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記臍帯組織由来細胞が、前記患者の前記神経系に対して、栄養作用を及ぼす、実施態様1に記載の方法。
【0455】
(11) 前記臍帯組織由来細胞が、前記神経変性状態の治療を促進する遺伝子産物を産生するように、遺伝子組み換えされる、実施態様1に記載の方法。
(12) 有効量の、実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団を、患者に投与することを含む、筋萎縮性側索硬化症の治療方法であって、前記臍帯組織由来細胞の集団が、実質的に血液を含まない、ヒト臍帯組織から単離され、培養下での自己複製及び増殖が可能であり、他の表現型の細胞へと分化する潜在能力を有し、少なくとも40回の倍加を経ることができ、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−A、B、Cのそれぞれを発現し、
(b)CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、又はHLA−DR、DP、DQのいずれも発現せず、
(c)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜の骨髄細胞である、ヒト細胞と比べて、インターロイキン8、レチクロン1、及びケモカイン受容体リガンド(C−X−Cモチーフ)リガンド3の発現の増大、の特性を有する、方法。
(13) 前記臍帯組織由来細胞が、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、投与の前に、神経細胞株へと分化するように、インビトロで誘導される、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、星状細胞、乏突起神経膠細胞、ニューロン、神経前駆細胞、神経幹細胞、又は他の複能性若しくは多能性の幹細胞のうちの、少なくとも1種の他の細胞型と共に投与される、実施態様12に記載の方法。
【0456】
(16) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、前記患者の神経系内の、既定の部位に投与される、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、注射又は注入によって投与される、実施態様12に記載の方法。
(18) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、静脈内注射又は髄腔内注射によって投与される、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、植え込み可能な装置内部に封入される、実施態様12に記載の方法。
(20) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、前記細胞を含むマトリックス又はスカフォールドの植え込みによって投与される、実施態様12に記載の方法。
【0457】
(21) 前記実質的に均質な臍帯組織由来細胞の集団が、前記患者の前記神経系に対して、栄養作用を及ぼす、実施態様12に記載の方法。
(22) 臍帯組織由来細胞を含む医薬組成物を、筋萎縮性側索硬化症を治療するための有効量で、患者に投与することを含む、筋萎縮性側索硬化症の治療方法であって、前記臍帯組織由来細胞が、実質的に血液を含まない、ヒト臍帯組織から単離され、培養下での自己複製及び増殖が可能であり、他の表現型の細胞へと分化する潜在能力を有し、少なくとも40回の倍加を経ることができ、
(a)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−A、B、Cのそれぞれを発現し、
(b)CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、又はHLA−DR、DP、DQのいずれも発現せず、
(c)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜の骨髄細胞である、ヒト細胞と比べて、インターロイキン8、レチクロン1、及びケモカイン受容体リガンド(C−X−Cモチーフ)リガンド3の発現の増大、の特性を有する、方法。
(23) 前記臍帯組織由来細胞が、hTERT又はテロメラーゼを発現しない、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記臍帯組織由来細胞が、投与の前に、神経細胞株へと分化するように、インビトロで誘導される、実施態様22に記載の方法。
(25) 前記医薬組成物が、星状細胞、乏突起神経膠細胞、ニューロン、神経前駆細胞、神経幹細胞、又は他の複能性若しくは多能性の幹細胞のうちの、少なくとも1種の他の細胞型と共に投与される、実施態様22に記載の方法。
【0458】
(26) 前記医薬組成物が、前記患者の神経系内の、既定の部位に投与される、実施態様22に記載の方法。
(27) 前記医薬組成物が、注射又は注入によって投与される、実施態様22に記載の方法。
(28) 前記医薬組成物が、静脈内注射又は髄腔内注射によって投与される、実施態様22に記載の方法。
(29) 前記医薬組成物が、植え込み可能な装置内部に封入される、実施態様22に記載の方法。
(30) 前記医薬組成物が、前記細胞を含むマトリックス又はスカフォールドの植え込みによって投与される、実施態様22に記載の方法。