(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前輪を転舵可能に支持する左右一対のフロントフォーク(12)と、フロントフォークの後方に配置されたラジエータ(38)と、ラジエータの左右外方を前方から後方にかけて覆う左右一対のシュラウド(40)とを備え、
前記フロントフォーク(12)を車幅方向で前記左右一対のシュラウド(40)の間に配置し、前記ラジエータ(38)の後方にエンジン(30)を配置し、このエンジン(30)の前部上方にライダーの着座するシート(46)の前端を配置した鞍乗り型車両において、
前記シュラウド(40)は、その最前端部(60)を前記ラジエータ(38)の上部前方に配置し、最外側部(70)を前記ラジエータ(38)より前方に配置するとともに、
前記最外側部(70)を前端部に有する本体部(52)を備え、
側面視で前記本体部(52)の前端部から前記フロントフォーク(12)の後端に向けて前方内側へ斜めに延出し、外表面でライダーの脚(F)をガイドし内表面で走行風を整流する延出部(50)を備えるとともに、
前記延出部(50)は、その最先端部(60)から斜め上がりに後方へ延出し上方側ほど車両内方へ入りこむ斜面をなす上延出部(62)と、斜め下がりに後方へ延出し下方側ほど車両内方へより入りこむ斜面をなす下延出部(64)を備え、
前記下延出部(64)に車幅方向へ貫通するスリット(68)が上下方向へ長く形成されていることを特徴とするラジエータシュラウドの構造。
前記スリット(66・68)は細長形状をなし、その長手方向が前記上部稜線(76)又は下部稜線(78)に沿って配置されることを特徴とする請求項3に記載されたラジエータシュラウドの構造。
前記延出部(50)は、正面視で、前記ラジエータ(38)のラジエータコア(38a)よりも外側に配置されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載されたラジエータシュラウドの構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前方からシュラウド内側へ取り込まれる走行風は、フロントフォークの外側面を通過するとき、フロントフォークにより流線を外側へ曲げられてシュラウドの内側へ入るので、シュラウドの内面へ衝突して乱流化することがある。乱流化すると導風効率が低下してしまうので、フロントフォークの直後にて整流しながら導風することが求められる。
しかし、シュラウドの先端が単純に拡開する従来例では、シュラウド前部における内面の角度は、フロントフォークを通過した走行風が衝突するような角度となり、整流効率をより高くすることが難しくなる。また、上記公知例のように、先端の端末部を内側へ曲げる処理が一般におこなわれているが、このような端末処理程度の曲げでは、整流効果の向上は期待できない。そこで、本願は、導風効率を向上できるシュラウドの構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、ラジエータシュラウドの構造に係る請求項1に記載した発明は、
前輪を転舵可能に支持する左右一対のフロントフォーク(12)と、フロントフォークの後方に配置されたラジエータ(38)と、ラジエータの左右外方を前方から後方にかけて覆う左右一対のシュラウド(40)とを備え、
前記フロントフォーク(12)を車幅方向で前記左右一対のシュラウド(40)の間に配置
し、前記ラジエータ(38)の後方にエンジン(30)を配置し、このエンジン(30)の前部上方にライダーの着座するシート(46)の前端を配置した鞍乗り型車両において、
前記シュラウド(40)は、その最前端部(60)を前記ラジエータ(38)の上部前方に配置し、最外側部(70)を前記ラジエータ(38)より前方に配置するとともに、
前記最外側部(70)を前端部に有する本体部(52)を備え、
側面視で前記本体部(52)の前端部から前記フロントフォーク(12)の後端に向けて前方内側へ斜めに延出し、外表面で
ライダーの脚(F)をガイドし内表面で走行風を整流する延出部(50)を備え
るとともに、
前記延出部(50)は、その最先端部(60)から斜め上がりに後方へ延出し上方側ほど車両内方へ入りこむ斜面をなす上延出部(62)と、斜め下がりに後方へ延出し下方側ほどより車両内方へ入りこむ斜面をなす下延出部(64)を備え、
前記下延出部(64)に車幅方向へ貫通するスリット(68)が上下方向へ長く形成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、上記請求項1において、
前記本体部(52)と前記延出部
(50)との境界部は、前記最外部
(70)から上後方へ延びる上部稜線
(76)と下後方に延びる下部稜線
(78)をなし、
前記延出部
(50)は、前記上部稜線
(76)及び下部稜線
(78)から前方に延出していることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、上記請求項
1又は2において、
前記上延出部(62)に車幅方向へ貫通するスリット(66)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は、上記請求項3において、前記スリット(66・68)は細長形状をなし、その長手方向が前記上部稜線
(76)又は下部稜線
(78)に沿って配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は、上記請求項2〜4のいずれか1項において、前記延出部
(50)は、正面視で、前記ラジエータ
(38)のラジエータコア
(38a)よりも外側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、本体部の前端部からフロントフォークの後端に向けて前方内側へ斜めに延出して外表面で脚を
ガイドするとともに内表面で走行風を整流する延出部を備えたので、内表面は、フロントフォークの外面を通過した走行風を、直後にシュラウドの前部内側へ入れてガイドすることができ、走行風を整流してラジエータへ送ることができる。しかも、シュラウドの前部は斜め内側へ曲がって前方へ延出する延出部であるから、フロントフォークを通過した走行風の乱流化を防いで整流することができ、導風効率を向上させることができる。
さらに、下延出部に車幅方向へ貫通するスリットを設けたので、コーナリング時に車両を車幅方向に傾けると、スリットを介して車幅方向に空気が抜けるようになる。このため車両を傾けるときの横風抵抗を下げることができ、シュラウドを大型化してライダーの足をガイドする面を大型化しつつもコーナリング時の操作性を良好にできる。また、スリットとしたことでライダーの脚がシュラウドの外面に沿ってスムーズに移動できる。
そのうえ、下延出部の内側へ入ってくる走行風を、下延出部の外側からスリットを通ってきた風により乱流化しにくくして、導風量の増大に貢献できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、本体部の前端部にて、最外部を上下に挟んで、延出部が内側斜め前方へ延出するので、シュラウド内に入った走行風を後方に向かって外に漏らすことなく後方へガイドすることができ、ラジエータの冷却を良好とする。
【0012】
請求項3の発明によれば、
上延出部に車幅方向へ貫通するスリットを設けたので、コーナリング時に車両を車幅方向に傾けると、スリットを介して車幅方向に空気が抜けるようになる。このため車両を傾けるときの横風抵抗を下げることができ、シュラウドを大型化してライダーの足をガイドする面を大型化しつつもコーナリング時の操作性を良好にできる。また、スリットとしたことでライダーの脚がシュラウドの外面に沿ってスムーズに移動できる。
そのうえ、上延出部の内側へ入ってくる走行風を、上延出部の外側からスリットを通ってきた風により乱流化しにくくして、導風量の増大に貢献できる。
【0013】
請求項4の発明によれば、 スリットは細長形状をなし、その長手方向を上部稜線又は下部稜線に沿って配置したので、稜線の前方において稜線に隣接してスリットを設けることができる。このため、特に直進進行時は、スリットから稜線部分に位置する延出部と本体部との境界部に形成される凹部の内側に走行風を送ってシュラウド内の走行風をラジエータへ向けて広い範囲でガイドすることができ、ラジエータの冷却効率を良好とする。
【0014】
請求項5の発明によれば、延出部を正面視でラジエータコアよりも外側に配置したので、ラジエータコアの前方を覆わないように延出部を配置できる。このため、延出部によってシュラウドを大型化してライダーの足をガイドする面を大型化しつつも、ラジエータコアに直接流れる走行風を最大限とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜7に基づいて一実施形態を説明する。なお、本願において、前後・左右の各方向は適用する車両を規準とし、必要に応じて図中に、前方をFr、左側をLH、右側をRHとして矢示する。また、内外は車両中心側を内側、反対側を外側とする。
【0017】
図1は、荒地を走行するモトクロス仕様の自動2輪車であり、本願における鞍乗り型車両の一例である。モトクロス仕様の場合は、荒地走行時に脚Fを前方へ出して支えることがある。
図1に示すように、この車両は、車両フレーム10の前部で左右一対のフロントフォーク12を介して前輪14を支持し、後部でリヤアーム16を介して後輪18を支持する。13はフロントバイザーである。
【0018】
車両フレーム10は、前端部に設けられてフロントフォーク12を支持するヘッドパイプ20(
図5参照)と、このヘッドパイプ20から斜め下がりに後方へ延出する左右一対のメインフレーム22と、メインフレーム22の後端部から下方へ延出する左右一対のピボットフレーム24と、ヘッドパイプ20からメインフレーム22の下方を斜め下がりに一本で延出するダウンフレーム26と、このダウンフレーム26及びピボットフレーム24の下端間を連絡する左右一対のアンダーフレーム28とを備える。
【0019】
車両フレーム10には車両中央のエンジン30が前輪14及び後輪18間に支持されている。フロントフォーク12はトップブリッジ32及びボトムブリッジ34を介してヘッドパイプ20へ回動自在に支持され、ハンドル36により操舵される。
エンジン30は水冷式であり、前方に配置されたラジエータ38により冷却される。ラジエータ38の側方はシュラウド40により覆われている。シュラウド40の前部内側にはフロントフェンダ42の後部が配置される。この後部はラジエータ38の前方まで延びている。
【0020】
シュラウド40は、ラジエータ38の側方を覆って、ラジエータ38へ導風して冷却効率を高める部材である。また、走行時に車両を支えるため前方へ脚Fを出したとき、この脚Fが交差することがある部分でもあり、このときの脚Fをシュラウド40がガイドするようにもなっている。
【0021】
シュラウド40の前端部はフロントフォーク12に重なり、上部はエンジン30上方にてメインフレーム22に支持される燃料タンク44の側面へボルト40aで固定され、下部はボルト40bでラジエータ38の側部へ取付けられる。また、後部は燃料タンク44の下部に沿って後方へ延出し、燃料タンク44の後端側部へボルト40cで取付けられる。
燃料タンク44の後方にはシート46が配置されている。
【0022】
ここで、ラジエータ38について
図2〜6により説明する。ラジエータ38は、ダウンフレーム26を挟んで左右にそれぞれ設けられ、内側部がブラケット90にて、ラバー92を介してダウンフレーム26の側面へ取付けられる(
図3及び
図6参照)。
左右のラジエータ38は、フロントフォーク12及びフロントフェンダ42の後方に配置され、それぞれの受風面を前方へ向け、かつ若干内側を向くように傾斜した状態で配置されている(
図6参照)。
【0023】
フロントフォーク12は内側部を、フロントフェンダ42に形成された逃げ凹部42a(
図4)へ入れて、フロントフェンダ42の側方に対する突出を少なくしている。各ラジエータ38の外側には、前方へ突出するシュラウド40が配置され、走行風WDをラジエータ38へ導くようになっている。なおラジエータ38は左右に分離したものではなく、左右一体のものでもよい。
【0024】
図2に示すように、ラジエータ38は、本体部であって冷却風の受風面をなすラジエータコア部38aと、その上側に設けられる上側水タンク38b及び下側に設けられる下側水タンク38cを備える。上側水タンク38bには注入口が設けられ、ここにキャップ38dが取付けられている。上側水タンク38bはホース39aにてエンジン30のシリンダへ接続され、下側水タンク38cはホース39bにてエンジン30の水ポンプへ接続されている。なお、
図5における39cは、左右のラジエータの下側水タンク38c間を連結するホースである。
【0025】
ラジエータ38の前面には、ルーバー93が取付けられている(
図5参照)。ルーバー93は複数のフィン94を一体化したものである。各フィン94は斜め外方を向いて傾斜し、シュラウド40の内面に沿って内向きに案内される走行風WDをラジエータコア38aへ導くようになっている(
図6参照)。外側のフィン94は、ラジエータ38の外側部に設けられたブラケット96に設けられた係止部96aにより係止される。
【0026】
次に、シュラウド40について、
図2を中心にして
図2〜6により詳細に説明する。なお、
図3〜5は、フロントバイザー13及びフロントフォーク12並びにその関連部品を除いた状態を示している。
シュラウド40は、適当な樹脂より成形され、延出部50、本体前部52、本体後部54を一体に有する。但し、延出部50は本体前部52と別体に形成してから一体になるよう組み立ててもよい。
本体前部52及び本体後部54からなる部分は、従来のシュラウド部分に相当する本体部であり、本体前部52及び本体後部54も一体もしくは別体に形成される。
【0027】
延出部50は本体部の前端部へ新たに付加した部分に相当し、本体前部52の前方側を部分的に前方かつ内側へ折り曲げて延出させたものであり(3参照)、内面はラジエータ38へ走行風をガイドする整流面をなし、外面はライダーの脚Fをガイドするガイド面をなす。また、延出部50は、本体前部52の前端部における上下方向中間部のみとなる比較的上下方向幅が狭い範囲で設けられ、側面視で横向きの略V字状をなしている。
前方へ突出する最先端部60は、ラジエータシュラウド40の最前端に位置し、フロントフォーク12の後端と前後方向でほぼ同じ位置になる。側方に重なっている。なお、最先端部60は、車幅方向でフロントフォーク12から外側方へ離れて位置する(
図4、6参照)。
【0028】
延出部50は、側面視で本体前部52の前端部からフロントフォーク12の後端に向けて前方内側へ斜めに延出している。なお、側面視における最先端部60の位置は、フロントフォーク12の近傍であれば足り、フロントフォーク12の後端よりも若干前方に配置されてもよく、また、フロントフォーク12の後端よりも後方へ若干離れていてもよい。
【0029】
なお、延出部50は、シュラウド全体においても、走行時に車両を支えるため前方へ出した脚F(
図1参照)をガイドすることが多い部分であり、最先端部60から斜め上がりに後方へ延出する上延出部62と斜め下がりに後方へ延出する下延出部64を備える。このような脚Fの操作は、本実施形態のようなモトクロス仕様車両において特に頻繁となる。
【0030】
上延出部62は上方側ほどより車両内方へ入りこむ斜面をなし、スリット66が形成されている。また、下延出部64は上延出部62と逆に、下方側ほどより車両内方へ入りこむ斜面をなし、スリット68が上下方向へ長く形成されている。
上延出部62と下延出部64の接続部は、最先端部60から後方へ延びる稜線69をなし、その後端部は本体前部52の最外側部70へ達している。最外側部70はシュラウド40における最大側方突出部である。
【0031】
最先端部60及び最外側部70は、ラジエータ38の上端部近傍かつ前方に位置している。また、ボトムブリッジ34の近傍となる、その後側かつ下方に位置する。最先端部60及びその近傍部は側面視でフロントフォーク12の上へ重なっている。また、最先端部60は最外側部70よりも前方かつ下方に位置し、稜線69は前方へ斜め下がりになっている。
【0032】
本体前部52は延出部50より大きな側面視横向きの略V字状をなし、最外側部70より斜め上がり後方へ延びる上側腕部72と、最外側部70より斜め下がり後方へ延びる下側腕部74を備え、上側腕部72は上部稜線76を介して上延出部62へ連続し、下側腕部74は下部稜線78を介して下延出部64へ連続する。
【0033】
スリット66は上部稜線76に沿って長く延びる細長形状をなし、上延出部62を表裏に貫通してスリット68より大きな開口を形成している。スリット66は、稜線69近くに一つだけで設けられる。
一方、スリット68は2つ設けられ、それぞれ下部稜線78に沿って細長く延び、下部稜線78に沿って前後方向へ並ぶように配置され、前側のスリット68は前端部が稜線69近くに位置している。スリット68はそれぞれ下延出部64を表裏に貫通しており、その大きさはスリット66よりも小さい。
なお、スリット66及びスリット68の大きさ、形状、数は任意に設定できる。
【0034】
上側腕部72の上端部は、燃料タンク44の側面上まで延びており、その先端部にはボルト40aの取付部が設けられている。下側腕部74の下端部は、ラジエータ38の下端部近傍まで延び、下端部近傍にはボルト40bの取付部が設けられている。ボルト40bはラジエータ38の外側に設けられるブラケット96(
図6参照)に取付けられる。
【0035】
本体後部54は前後方向へ延び、その後端部にボルト40c(
図1参照)の取付部が設けられる横長部80と、その前端部から下方へ延びる縦長部82とを一体に有する。
横長部80の前端部81は若干前方斜め下がりに傾斜し、下側腕部74の上部にて後端縁部が前方へ向かって曲がることにより形成された段部75へ後方から接続している。
【0036】
段部75の前端部位置は、上下方向において最外側部70と同じ程度の高さにあり、上側腕部72の後端縁部下端と接続している。段部75は、横長部80の前端部81と下側腕部74との接続部における稜線となっている。
横長部80の前端部81と上側腕部72の後端縁部との間に排気開口84が形成され、この排気開口84からラジエータ38上方の空気を矢示aのように外方へ排出できる。
【0037】
縦長部82は下側腕部74の後端縁部に稜線86を介して接続するとともに、下側腕部74の下端部近傍へ向かって下方へ延びている。縦長部82の後縁部は、横長部80における前端部81の下方縁部と共に、ラジエータ38の後方空間を開放する空間を形成し、ここからシュラウド40の内側にてラジエータ38を通ったラジエータ排風が矢示bのように後方へ排出される。
【0038】
図4に示すように、シュラウド40は前方へ向かって拡開しているが、前端部は延出部50により、内側へ向かって開口を狭めるように傾斜し、最先端部60は、最外側部70よりも寸法Aだけ内方へ突出している。
また、シュラウド40は、外側方へ凸に湾曲する整流曲面をなし(
図6参照)、走行風WDはこの整流曲面に沿って流れ、内向きに流れを変えられ、さらにフィン94により案内される。
【0039】
図6に示すように、ラジエータコア部38aの横幅(前方投影面における横幅)をBとしたとき、延出部50の先端60との間にCなる間隙がある。すなわち、最先端部60はラジエータコア部38aの外側部よりもCだけ外方へ出ている。このため、延出部50の先端50aは、ラジエータコア部38aの前面へ入り込まず、延出部50がラジエータコア部38aの前方を一部でも覆うことはない。
なお、先端50aは若干内側へ曲げられた端末構造をなしている。但し、この端末構造は端縁部をエッジにせず接触感を良好にするためのものであり、延出部50のような整流面のある走行風ガイド機能を備えたものではない。
【0040】
また、延出部50は内側へ曲がり、先端60が最外側部70よりも寸法Aだけ内方へ突出しているので(
図4)、ラジエータコア部38の前方へ入り来まない。
したがって、
図5に示すように、正面視では、延出部50の面積は極めて小さなものとなり、僅かな内方張り出し量でラジエータコア部38aの外方に位置する。
【0041】
しかも、延出部50の下延出部64は上下方向の長さが短く、その下端は、ラジエータ38の上下方向略中間部にある。このため、下延出部64の下方は、下側腕部74の一部を挟んで外側のフィン94へ続いている。下側腕部74の
図5で見えている部分以外は外側のフィン94の後方へ隠れている。したがって、
図2及び3に示すように、延出部50の下方には側面視でフィン94の一部が露出する。このようにすると、延出部50を可及的に小さくすることができる。
【0042】
次に、本実施形態の作用を説明する。
図4、6において、走行風WDは、フロントフォーク12及びフロントフェンダ42の外側を通って、シュラウド40にガイドされてラジエータ38へ案内され、ラジエータ38を冷却する。
このとき、走行風WDは、フロントフォーク12の外側を通るときフロントフォーク12及びその近傍のフロントフェンダ42により流線を外側へ曲げられるが、その側方に延出部50が位置するため、直に延出部50によりガイドされ、乱流化が防がれ、整流された状態で後方へ流れるので、ラジエータコア38aへ効率よく導風できる。
【0043】
しかも、延出部50は内側へ入り込むように逆傾斜しているため、流線が外方へ曲がった走行風WDもスムーズにガイドできる。
このとき、延出部50は、本体前部52の前端部にて、最外側部70を上下に挟んで、内側斜め前方へ延出するので、シュラウド40内に入った走行風を外に漏らすことなく後方に向かってガイドすることができ、ラジエータの冷却を良好とする。
【0044】
また、延出部50は、内側へ入り込むものの、正面視で、ラジエータコア38aの前面へ入り込まないよう、ラジエータ38のラジエータコア38aより外側に設けられているため、ラジエータコア38aへ直接流れる走行風WDの風量を最大限にすることができる。
またラジエータコア38aの前方を覆うことなく開放しているので、ラジエータコア38aの前方に受風面積に相当する導風空間を確保して取り込む風量を減少させないようにできる。
【0045】
そのうえ、延出部50を設けることにより、脚Fのガイド面を大きくすることができる。このとき、シュラウド40のガイド面の面積を大きくしても、脚Fの動きに影響しないようになっている。しかも、ガイド面が内向きの曲面をなすので、脚Fが動きやすくなる。
このため、延出部50によってシュラウド40を大型化してライダーの足をガイドする面を大型化しつつも、ラジエータコア38aに直接流れる走行風を最大限とすることができる。したがって、この延出部50を有するシュラウド40の構造は、その前部にて脚Fをガイドする機会が多いモトクロス仕様車両に好適なものとなる。
【0046】
さらに、スリット66、スリット68を設けたことにより、直進走行時における導風量の増加とコーナリング時における横風抵抗減少を実現できる。これを
図7により説明する。
図7は延出部50の模式化した水平断面であり、図中の(a)(b)は直進時、(c)及び(d)はコーナリング時を示す。また、断面部位は
図6と同様とする。
【0047】
まず、直進走行においては、(a)に示すスリットが形成されていない場合は、走行風WDは下延出部64(延出部50)の内側へ入ったとき、下部稜線78近傍となる下延出部64と下側腕部74(本体前部52)との間に屈曲凹部65があるため、この部分で矢示cのように乱流化する可能性がある。
【0048】
ところが、本願の下延出部64にはスリット68があるため、(b)に示すように、走行風WDの一部は、矢示dのように、下延出部64外側からスリット68を通って屈曲凹部65へ入る。このため、矢示eのように下延出部64の内側へ入ってくる走行風WDは、スリット68を通ってきた矢示dの風により、速やかに後方へ押し流されるので、乱流化しにくくなる。このため、乱流化を防ぎ、導風量の増大に貢献できる。
【0049】
しかも、スリット68を細長形状とし、その長手方向を下部稜線78に沿わせ、下部稜線78の前方にスリット68を細長く設けることにより、直進時に走行風WDをスリット68からラジエータ38へ送ることができ、かつ開口面積を大きくすることができる。
【0050】
次に、コーナリング時について説明する。(c)に示すスリットのない状態で、コーナリング時に車両をバンクすると、シュラウド40は側方から横風fを受けることになり、車両倒し込み時における比較的大きな横風抵抗となり、迅速なコーナリングを阻害する。
一方、(d)に示すように、スリット68が存在すると、この横風は一部が矢示gのように、スリット68を通って外から内へ抜けるため、車両倒し込みの横風抵抗が少なくなる。このため、シュラウド40を大きくしても、車両倒し込み時の横風抵抗を少なくしてコーナリングを容易にすることができる。
【0051】
一般に、走行中において車両を支持するためシュラウド40の外表面に沿って脚Fを前方へ出すことがあり、シュラウド40は脚Fをガイドする部分でもある。この機能のためにシュラウド40の前方部分をできるだけ前方へ出して大きくすることが望まれているが、シュラウド40の前方部分を大きくすると、側方面積が増大するため、コーナリング時にバンクして車両を倒し込むとき、横風抵抗が大きくなってしまう。このため、シュラウド40の前方部分を前方へ出して脚Fのガイドを良好にすることと、横風抵抗を少なくすることは両立できていなかったが、本願発明により両立を実現できた。
【0052】
また、細長いスリットにしたことで、スリット68の近傍にて脚Fスムーズに通過させることができる。
なお、この説明は、延出部50のうち、下延出部64及びスリット68についてのものであったが、上延出部62及びスリット66についても同様である。
【0053】
次に、
図8及び
図9に基づいて、別実施形態を説明する。
図8は
図2に相当する部位を示し、
図9は
図5に相当する正面図である。なお、この実施形態に係るシュラウド40Aは延出部の形状のみを変更したものである。したがって、変更部のみ対応する前実施形態の符号にAを付けて示し、変更のない部分は前実施形態の対応符号をそのまま使用すものとする。
これらの図において、この実施形態における下延出部64Aが大きく形成され、その下端部が下側腕部74の下端部近傍まで拡大され、
図3等では下延出部64の下方に露出されていたフィン94が覆われている点で前実施形態と相違する。但し、
図9に示すように、正面視で下延出部64Aの下部を含む延出部50A全体がラジエータコア38aの外側に位置することに変わりはない。このようにすると、延出部50Aをより大型化することができる。