特許第6000997号(P6000997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000997
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】飛散塩分捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   G01N1/22 L
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-50569(P2014-50569)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-175646(P2015-175646A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 清次
(72)【発明者】
【氏名】福澄 博道
(72)【発明者】
【氏名】木本 厚徳
(72)【発明者】
【氏名】林 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘洋
(72)【発明者】
【氏名】仁保 航一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【審査官】 野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118267(WO,A1)
【文献】 実開昭58−002690(JP,U)
【文献】 特開平09−230056(JP,A)
【文献】 特開2011−085516(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3151369(JP,U)
【文献】 特開平05−249004(JP,A)
【文献】 実開昭62−079138(JP,U)
【文献】 実開昭55−161289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材が連なった帯状の飛散塩分捕獲体と、該飛散塩分捕獲体をその一部が曝露するように保持する保持装置とを備え、
前記保持装置は、
前記飛散塩分捕獲体の一部を曝露させるための開口と、該開口を挟んだ第1の室と第2の室とが設けられた筐体と、
前記第1の室に配され、前記飛散塩分捕獲体の未使用部分を巻き取って保持する第1の保持部と、
前記第2の室に配され、前記第1の保持部から巻き出されて前記開口の位置を通過した前記飛散塩分捕獲体の使用済み部分を巻き取って保持する第2の保持部と、
前記第2の室に配され、帯状のシート材を巻き取って保持する第3の保持部とを備え、
前記第2の保持部は、前記第3の保持部から巻き出された前記シート材と前記飛散塩分捕獲体の使用済み部分とを重ね合せて巻き取って保持し
前記第1の保持部と前記第2の保持部とは、上下に重ねて配されており、
前記筐体は、前記飛散塩分捕獲体をその幅方向に挟む一対の側板を備え、
前記一対の側板の横幅は、前記開口の位置においてその上下よりも狭く、前記開口の前側の左右両側が前記一対の側板によって遮蔽されずに開放されている飛散塩分捕獲装置。
【請求項2】
前記保持装置は、
前記第2の保持部を回転させる駆動部と、
未使用の前記素材が所定時間毎に順次前記第1の室から前記開口の位置に移動され、使用済の前記素材が所定時間毎に順次前記開口の位置から前記第2の室へ移動されるように、前記駆動部を制御する制御部と
を備える請求項1に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項3】
前記保持装置は、
前記第1の室と前記第2の室とに配され、前記飛散塩分捕獲体の前記開口の位置における姿勢を鉛直に維持するガイドローラーを備える請求項1又は請求項2に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項4】
前記飛散塩分捕獲体は、前記素材が張られた枠体を備え、
前記ガイドローラーは、前記枠体に当接し、前記素材には当接しないように構成されている請求項3に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項5】
前記筐体は、
前記第1の室に前記飛散塩分捕獲体を出し入れするための第1の開閉蓋と、
前記第2の室に前記飛散塩分捕獲体と前記シート材とを出し入れするための第2の開閉蓋とを備える請求項1から請求項までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項6】
前記保持装置を収容し、前記飛散塩分捕獲体に導風する導風口が設けられた箱を備える請求項1から請求項までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項7】
前記導風口が前記保持装置の周囲を囲うように前記箱に設けられている請求項6に記載の飛散塩分捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散塩分量を測定するために大気中に飛散している塩分を捕獲する飛散塩分捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統の絶縁碍子や鉄塔等の海塩粒子による塩害の予測を行うために、大気中に飛散している塩分(以下、単位体積あたりに含まれる塩分を気中塩分量、これに風速を乗じたものを飛散塩分量という)の量(飛散塩分量)を測定する必要があり、そのためには、大気中に飛散している塩分を捕獲する必要がある。JIS Z2382で規定されているドライガーゼ法は、窓が空いた木枠にガーゼをはめ込んで雨に濡れない風通しの良い場所に設置し、ガーゼに塩分を含んだ大気を通過させてガーゼに塩分を付着させ、その付着した塩分の量を測定するというものである。
【0003】
また、特許文献1に記載の外気導入装置では、外気を屋外構造物の内部に導入する外気導入部にテープ状の除塩フィルタを設け、この除塩フィルタで塩分を捕獲することで、外気中の塩分が屋外構造物の内部に入ることを防止している。ここで、特許文献1に記載の外気導入装置では、除塩フィルタの新規な面を外気導入部へ送り出し、塩分が付着した面を外気導入部から退避させる機構を設けることで、連続しての塩分の捕獲を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−85516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、百葉箱を鉄塔等の高所に設置してその中に上述のガーゼを設置することにより、高所での飛散塩分量を測定できる。この場合、ガーゼを所定期間毎に交換する必要があるが、交換作業の度に百葉箱を高所で上げたり下したりするのでは作業性が悪い。そのため、高所に設置した百葉箱の中で自動若しくは簡単な操作により、曝露位置において飛散塩分を捕獲するガーゼと未使用のガーゼとを交換できるようにすることが望ましい。ここで、使用済みのガーゼを巻き取った場合、使用期間の異なるガーゼが接触すること等により捕獲期間の異なる塩分が混ざり合って各期間の飛散塩分量を測定できなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、飛散塩分を捕獲する素材の交換を自動若しくは簡単な操作により実施できるようにすると共に、捕獲期間の異なる塩分が混ざり合わないように、使用済の素材を保管できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る飛散塩分捕獲装置は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能である素材が連なった帯状の飛散塩分捕獲体と、該飛散塩分捕獲体をその一部が曝露するように保持する保持装置とを備え、前記保持装置は、前記飛散塩分捕獲体の一部を曝露させるための開口と、該開口を挟んだ第1の室と第2の室とが設けられた筐体と、前記第1の室に配され、前記飛散塩分捕獲体の未使用部分を巻き取って保持する第1の保持部と、前記第2の室に配され、前記第1の保持部から巻き出されて前記開口の位置を通過した前記飛散塩分捕獲体の使用済み部分を巻き取って保持する第2の保持部と、前記第2の室に配され、帯状のシート材を巻き取って保持する第3の保持部とを備え、前記第2の保持部は、前記第3の保持部から巻き出された前記シート材と前記飛散塩分捕獲体の使用済み部分とを重ね合せて巻き取って保持し、前記第1の保持部と前記第2の保持部とは、上下に重ねて配されており、前記筐体は、前記飛散塩分捕獲体をその幅方向に挟む一対の側板を備え、前記一対の側板の横幅は、前記開口の位置においてその上下よりも狭く、前記開口の前側の左右両側が前記一対の側板によって遮蔽されずに開放されているものである。
【0008】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記保持装置は、前記第2の保持部を回転させる駆動部と、未使用の前記素材が所定時間毎に順次前記第1の室から前記開口の位置に移動され、使用済の前記素材が所定時間毎に順次前記開口の位置から前記第2の室へ移動されるように、前記駆動部を制御する制御部とを備えてもよい。
【0009】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記保持装置は、前記第1の室と前記第2の室とに配され、前記飛散塩分捕獲体の前記開口の位置における姿勢を鉛直に維持するガイドローラーを備えてもよい。
【0010】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記飛散塩分捕獲体は、前記素材が張られた枠体を備えてもよく、前記ガイドローラーは、前記枠体に当接し、前記素材には当接しないように構成されてもよい。
【0012】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記筐体は、前記第1の室に前記飛散塩分捕獲体を出し入れするための第1の開閉蓋と、前記第2の室に前記飛散塩分捕獲体と前記シート材とを出し入れするための第2の開閉蓋とを備えてもよい。
【0013】
前記飛散塩分捕獲装置は、前記保持装置を収容し、前記飛散塩分捕獲体に導風する導風口が設けられた箱を備えてもよい。前記導風口が前記保持装置の周囲を囲うように前記箱に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、飛散塩分を捕獲する素材の交換を自動若しくは簡単な操作により実施できると共に、捕獲期間の異なる塩分が混ざり合わないように、使用済の素材を保管できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す斜視図である。
図2】飛散塩分捕獲体を示す正面図である。
図3】保持装置を示す縦断面図である。
図4】保持装置を示す正面図である。
図5】保持装置を示す側面図である。
図6】保持装置の使用方法を説明するための縦断面図である。
図7】保持装置の使用方法を説明するための縦断面図である。
図8】他の実施形態に係る保持装置を示す側断面図である。
図9】他の実施形態に係る飛散塩分捕獲体を示す正面図である。
図10】他の実施形態に係る保持装置を示す側断面図である。
図11】他の実施形態に係る保持装置を示す正面図である。
図12】他の実施形態に係る飛散塩分捕獲体を示す正面図である。
図13】他の実施形態に係る保持装置を示す側断面図である。
図14】他の実施形態に係る保持装置を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。図1は、一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10を示す斜視図である。この図に示すように、飛散塩分捕獲装置10は、百葉箱1と、百葉箱1内に設置された保持装置100と、保持装置100が保持する飛散塩分捕獲体20(図2参照)とを備えている。百葉箱1は、直方体状の箱であり、四つの側面にガラリ2が設けられている。ガラリ2は、奥側へかけて上側に傾斜する整流板が縦に並んだ構成である。また、百葉箱1の上面には、飛散塩分捕獲体20を箱内に出し入れするための蓋3が設けられている。この蓋3の一辺がヒンジ(図示省略)を介して百葉箱1の上端の一辺に取り付けられており、蓋3のヒンジとは反対側の一辺と百葉箱1の上端の一辺とが蝶番9で着脱可能に固定されている。
【0017】
なお、百葉箱1の一の側面を前面といい、該一の側面と対向する面を後面という。また、百葉箱1の前面側を装置前側、百葉箱1の後面側を装置後側といい、百葉箱1の前後方向を装置前後方向という。また、装置前後方向と直交する横方向を装置左右方向という。
【0018】
図2は、飛散塩分捕獲体20を示す正面図である。この図に示すように、飛散塩分捕獲体20は、通気性を有し、飛散する塩分を捕獲可能である複数の矩形状(本実施形態では縦10cm×横10cmの正方形)のガーゼ22と、一列に並んだ複数のガーゼ22を保持する梯子状の枠体であるガーゼホルダー24とを備えている。ガーゼホルダー24は、ナイロン等の伸縮性の小さいシート材で形成されている。この飛散塩分捕獲体20では、ガーゼ22の周縁部がガーゼホルダー24の開口24Aの周縁部に貼り付けられることで、各ガーゼ22がガーゼホルダー24の内側に張られている。
【0019】
ここで、ガーゼ22には、当該ガーゼ22を識別するための表示である数字が記されている。この数字は使用する順序や使用する月等を特定するものである。即ち、使用する順序を特定する数字の場合は、ガーゼ22の設置数に応じて1,2,3,4,…となり、使用する月を特定する数字の場合は、例えば、4,5,6,7,…となる。
【0020】
図3は、保持装置100を示す縦断面図である。また、図4は、保持装置100を示す正面図であり、図5は、保持装置100を示す側面図である。これらの図に示すように、保持装置100は、飛散塩分捕獲体20の使用済部分と後述のフィルムFとを装置の上段で保持する上段保持部110と、飛散塩分捕獲体20の未使用部分を装置の下段で保持する下段保持部120と、これらを収納する筐体130とを備えている。
【0021】
筐体130は、上段保持部110を収納する直方体状の上段部131と、下段保持部120を収納する直方体形状の下段部132と、これらの間に配され装置前後方向に開口した中段部133とを備えている。この筐体130は、装置左右方向に対向する一対の側板134を備えており、この一対の側板134の矩形状の上部134Aが、上段部131の装置左右方向に対向する一対の側板を構成し、一対の側板134の矩形状の下部134Bが、下段部132の装置左右方向に対向する一対の側板を構成している。また、一対の側板134の上部134Aと下部134Bとの間の矩形状の中央部134Cが、中段部133の一対の側板を構成している。ここで、中央部134Cは、上部134A及び下部134Bよりも幅が狭くなっており、側板134の幅方向一端側(装置後側)に寄せて配されている。即ち、側板134の上部134Aと下部134Bとの間には、装置前側(幅方向他端側)から後側に凹んだ矩形状の凹部が形成されている。
【0022】
中段部133の上下には矩形状の開口が形成されており、上段部131内と下段部132内とは、中段部133を通して連通されている。ここで、中段部133の装置前後方向両側の矩形状の開口133A、133Bの横幅及縦幅は、ガーゼ22の横幅及び縦幅よりも大きくなっている。
【0023】
上段保持部110は、飛散塩分捕獲体20の使用済み部分とフィルムFとを巻き取って保持する上段カートリッジ112と、フィルムFを巻き取って保持するフィルムカートリッジ114とを備えている。上段カートリッジ112は、装置左右方向に対して平行に配された巻取軸112Aを備え、フィルムカートリッジ114は、巻取軸112Aの真上に巻取軸112Aに対して平行に配された巻取軸114Aを備える。巻取軸112A、114Aは、一対の側板134の上部134Aに設けられた軸受112B、114B(図5参照)に回転可能に支持されている。
【0024】
ここで、フィルムカートリッジ114から巻き出されたフィルムFの先端が、上段カートリッジ112に巻き取られた飛散塩分捕獲体20の先端の上に重ねられ、後続のフィルムFと飛散塩分捕獲体20とが互いに重ね合わされた状態で巻取軸112Aに巻き取られている。即ち、巻取軸112Aからその径方向外側へかけて、飛散塩分捕獲体20の使用済み部分とフィルムFとが交互に重なり合っており、使用時期が前後するガーゼ22の間にフィルムFが差し込まれている。なお、フィルムFは、ガーゼホルダー24と同様、ナイロン等の伸縮性の小さいシート材で形成されている。
【0025】
上段部131の底面、前面及び背面から巻取軸112Aの軸芯までの距離は、飛散塩分捕獲体20の全体とフィルムFの全体とを巻き取ったロールの直径よりも大きく設定されている。また、上段部131の上面、前面及び背面から巻取軸114Aの軸芯までの距離は、フィルムFの全体を巻き取ったロールの直径よりも大きく設定されている。さらに、飛散塩分捕獲体20の使用済み部分は、中段部133の上部の開口を通して上段部131内に挿入されて巻取軸112Aに巻き取られている。
【0026】
一方の側板134の上部134Aには、巻取軸112Aを回転させるモータ136が取り付けられている(図4参照)。また、他方の側板134の上部134Aには、カバー138が着脱可能に設けられている(図5参照)。このカバー138には軸受112B、114Bが設けられている。
【0027】
下段保持部120は、飛散塩分捕獲体20の未使用部分を巻き取って保持する下段カートリッジ122を備えている。下段カートリッジ122は、装置左右方向に平行に配された巻取軸122Aを備える。巻取軸122Aは、一対の側板134の下部134Bに設けられた軸受122B(図5参照)に回転可能に支持されている。
【0028】
下段部132の底面、上面、前面及び背面から巻取軸122Aの軸芯までの距離は、飛散塩分捕獲体20の全体を巻き取ったロールの直径よりも大きく設定されている。また、飛散塩分捕獲体20の未使用部分は、巻取軸122Aから巻き出されて中段部133の下部の開口を通して下段部132内から中段部133に挿入されている。さらに、カバー138が設けられた側板134には、カバー139が着脱可能に設けられている(図5参照)。このカバー139には、軸受122Bが設けられている。
【0029】
ここで、中段部133では、飛散塩分捕獲体20が開口133A、133Bを通して装置前後方向に露出するところ、ガーゼ22が開口133A、133Bの中に位置するように飛散塩分捕獲体20の下段カートリッジ122からの巻出し量が調整される。これにより、ガーゼ22が中段部133において曝露される。
【0030】
ここで、モータ136は、タイマ機能付きのモータ制御装置140(図4参照)によって所定期間(例えば、1か月間)おきに駆動され、飛散塩分捕獲体20を下段カートリッジ122から巻き出して未使用のガーゼ22を中段部133の開口133A、133Bの位置まで移動させる。以下、保持装置100の動作について説明する。
【0031】
図6及び図7並びに図3は、保持装置100の使用方法を説明するための立断面図である。まず、カバー138、139を側板134から取り外して(図5参照)、未使用の飛散塩分捕獲体20のロールを下段カートリッジ122の巻取軸122Aに装着し、未使用のフィルムFのロールをフィルムカートリッジ114の巻取軸114Aに装着する。
【0032】
次に、図6に示すように、飛散塩分捕獲体20を下段カートリッジ122から巻き出すと共に、フィルムFをフィルムカートリッジ114から巻き出して、これらの先端を互いに重ねあわせて上段カートリッジ112の巻取軸112Aに巻き付ける。そして、モータ136を駆動させてガーゼ22を中段部133の開口133A、133Bの位置まで移動させる。中段部133のガーゼ22は、開口133A、133Bを通して曝露され、飛散塩分を捕獲する。
【0033】
その後は、図3に示すように、所定期間経過後にモータ136が駆動されることで、順次、次の未使用のガーゼ22が、中段部133の開口133A、133Bの位置まで移動され、使用済みのガーゼ22が、フィルムFと共に上段カートリッジ112に巻き取られる。そして、最終的には、図7に示すように、全ての飛散塩分捕獲体20が下段カートリッジ122から巻き出され、全てのフィルムFがフィルムカートリッジ114から巻き出され、全ての飛散塩分捕獲体20と全てのフィルムFとが上段カートリッジ112に巻き取られる。この使用済みの飛散塩分捕獲体20とフィルムFとからなるロールを、カバー138を側板134から取り外して上段部131から抜き出す(図5参照)。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能であるガーゼ22が連なった帯状の飛散塩分捕獲体20と、該飛散塩分捕獲体20をその一部が曝露するように保持する保持装置100とを備える。この保持装置100は、飛散塩分捕獲体20の一部を曝露させるための開口133A、133Bと、該開口133A、133Bを挟んだ上段部131及び下段部132が設けられた筐体130と、下段部132に配され、飛散塩分捕獲体20の未使用部分を巻き取って保持する下段カートリッジ122と、上段部131に配され、下段保持部120から巻き出されて開口133A、133Bの位置を通過した飛散塩分捕獲体20の使用済み部分を巻き取って保持する上段カートリッジ112と、上段部131に配され、帯状のシート材であるフィルムFを巻き取って保持するフィルムカートリッジ114とを備える。
【0035】
ここで、上段カートリッジ112は、フィルムカートリッジ114から巻き出されたフィルムFと飛散塩分捕獲体20の使用済み部分とを重ね合せて巻き取って保持する。これによって、飛散塩分捕獲体20を下段部132に、フィルムFを上段部131に収納しておき、上段カートリッジ112を所定量ずつ回転させるという簡単な操作により、未使用のガーゼ22を所定時間毎に順次下段部132から開口133A、133Bの位置に移動させ、使用済のガーゼ22を所定時間毎に順次開口133A、133Bの位置から上段部131へ移動させることができる。この際、上段カートリッジ112において、使用期間の異なるガーゼ22が干渉すること等により捕獲期間の異なる塩分が混ざり合うことを防止できる。従って、飛散塩分を捕獲するガーゼ22の交換を百葉箱1の中で簡単な操作により実施できると共に、捕獲期間の異なる塩分が混ざり合わないように、使用済のガーゼ22を保管できる。
【0036】
また、保持装置100は、上段カートリッジ112の巻取軸112Aを回転させるモータ136と、未使用のガーゼ22が所定時間毎に順次下段部132から開口133A、133Bの位置に移動され、使用済のガーゼ22が所定時間毎に順次開口133A、133Bの位置から上段部131へ移動されるように、モータ136を制御するモータ制御装置140とを備える。これによって、飛散塩分を捕獲するガーゼ22の交換を百葉箱1の中において自動で実施できる。
【0037】
また、保持装置100において、上段カートリッジ112と下段カートリッジ122とは、上下に重ねて配されており、筐体130は、飛散塩分捕獲体20をその幅方向に挟む一対の側板134を備える。ここで、一対の側板134の横幅は、開口133A、133Bの位置(中央部134C)においてその上下(上部134A及び下部134B)よりも狭くなっている。即ち、曝露されているガーゼ22の前後の左右両側に障害物が存在しないように、保持装置100が構成されていることによって、装置前後方向から飛来した塩分のみならず、装置左右方向から飛来した塩分をガーゼ22で捕獲できる。従って、飛散塩分の捕獲量の減少を抑制でき、飛散塩分量の測定の精度を向上できる。
【0038】
また、筐体130は、下段部132に飛散塩分捕獲体20を出し入れするために側板134に着脱されるカバー139と、上段部131に飛散塩分捕獲体20とフィルムFとを出し入れするために側板134に着脱されるカバー138とを備える。これによって、未使用の飛散塩分捕獲体20及びフィルムFを夫々下段カートリッジ122及びフィルムカートリッジ114に装着したり、使用済みの飛散塩分捕獲体20及びフィルムFを上段カートリッジ112から取り外したりすることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10は、保持装置100を収容し、飛散塩分捕獲体20に導風する導風口が設けられた百葉箱1を備える。これによって、雨の影響を受けずに、風量に応じた量の飛散塩分をガーゼ22で捕獲できる。
【0040】
また、本実施形態に係る飛散塩分捕獲体20のガーゼ22には、各々を識別するための表示が記されている。この表示は、曝露位置に置かれて飛散塩分を捕獲するのに使用される月等である。よって、使用済のガーゼ22の管理を容易化できる。
【0041】
図8は、他の実施形態に係る保持装置200を示す側断面図であり、図9は、他の実施形態に係る飛散塩分捕獲体30を示す正面図である。図8に示すように、保持装置200は、上述の実施形態の上段カートリッジ112に替えて上段カートリッジ212を備える。この上段カートリッジ212は、巻取ロール212Aを備える。
【0042】
巻取ロール212Aの軸方向両端には、複数の針状の突起212Bが周方向に所定間隔おきに設けられている。ここで、図9に示すように、飛散塩分捕獲体30は、その全体がガーゼにより構成されており、そのガーゼには、使用期間を識別するための表示である数字と仕切線とが記されている。
【0043】
かかる保持装置200では、巻取ロール212Aが、その軸方向両端の突起212Bを飛散塩分捕獲体30及びフィルムFの幅方向両端に貫通させた状態で回転することにより、飛散塩分捕獲体30を下段カートリッジ122から巻き出し、フィルムFをフィルムカートリッジ114から巻き出す。
【0044】
図10は、他の実施形態に係る保持装置300を示す側断面図であり、図11は、該保持装置300を示す正面図である。また、図12は、他の実施形態に係る飛散塩分捕獲体40を示す正面図である。図10及び図11に示すように、保持装置300は、上段保持部310に配されたガイドローラー316と、下段保持部320に配されたガイドローラー326とを備える。
【0045】
ガイドローラー316、326は、中段部133を上下に挟むように互いに平行に、且つ巻取軸112A、114A、122Aに対して平行に配されており、飛散塩分捕獲体40が掛けられている。ここで、飛散塩分捕獲体40が、中段部133において鉛直になるようにガイドローラー316、326が配されている。
【0046】
また、ガイドローラー316、326のローラー部分316A、326Aは、軸方向の両端に配されてその間の部分には配されておらず、該ローラー部分316A、326Aは、ガーゼホルダー24にのみ当接し、ガーゼ22には当接していない。
【0047】
ここで、飛散塩分捕獲体40は、上述の飛散塩分捕獲体20、30に比してガーゼ22が多数設けられており、長尺になっている。そのため、図13に示す初期の状態では、下段カートリッジ122に巻き取られた飛散塩分捕獲体40のロールの直径が、上段カートリッジ112に巻き取られた飛散塩分捕獲体40及びフィルムFのロールの直径よりも大きくなるにあたり、これらの差が大きくなる。これにより、ガイドローラー316、326が無い場合には、飛散塩分捕獲体40の中段部133での傾きが大きくなる。同様に、図14に示す終期の状態においては、上段カートリッジ112に巻き取られた飛散塩分捕獲体40及びフィルムFのロールの直径が、下段カートリッジ122に巻き取られた飛散塩分捕獲体40のロールの直径よりも大きくなるにあたり、これらの差が大きくなる。これにより、ガイドローラー316、326が無い場合には、飛散塩分捕獲体40の中段部133での傾きが大きくなる。
【0048】
それに対して、本実施形態に係る保持装置300では、ガイドローラー316、326により、図13に示す初期の状態でも、図14に示す終期の状態でも、飛散塩分捕獲体40が、中段部133において鉛直になる。これにより、初期から終期まで、ガーゼ22を中段部133において鉛直な姿勢で曝露させることができる。従って、初期から終期まで同じ条件で飛散塩分を捕獲できる。
【0049】
ここで、ガイドローラー316、326は、飛散塩分捕獲体40のガーゼホルダー24に当接し、ガーゼ22には当接しないように構成されていることによって、ガーゼ22で捕獲した塩分がガイドローラー316、326によりガーゼ22から落とされることを防止でき、飛散塩分量の測定精度の低下を防止できる。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施形態では、飛散塩分捕獲体20、30、40を曝露位置の下側から曝露位置の上側へ送る構成を例に挙げたが、飛散塩分捕獲体20、30、40を曝露位置の上側から曝露位置の下側へ送るように構成してもよく、あるいは、飛散塩分捕獲体20、30、40を曝露位置の左右の一方側から曝露位置の左右の他方側へ送るように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、シート材としてフィルムFを例に挙げたが、シート材としては伸縮性が少ないと共に破れないだけの強度があるものであれば、紙等も用いることができる。ここで、シート材を2枚重ねるようにしてもよい。この場合、1枚のシート材に複数のガーゼ22から塩分が移すことを防止できるため、ガーゼ22に付着した塩分の量とシート材に付着した塩分の量とを加算して各捕獲期間の飛散塩分量を計測することができ、飛散塩分量の計測の精度を向上できる。さらに、上記実施形態では、保持装置100、200、300を百葉箱1の中に入れたが、保持装置100、200、300を雨の影響を受けない場所に設置する場合等には、百葉箱1を用いなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 百葉箱、2 ガラリ、3 蓋、9 蝶番、10 飛散塩分捕獲装置、20 飛散塩分捕獲体、22 ガーゼ、24 ガーゼホルダー、24A 開口、30 飛散塩分捕獲体、40 飛散塩分捕獲体、100 保持装置、110 上段保持部、112 上段カートリッジ、112A 巻取軸、112B 軸受、114 フィルムカートリッジ、114A 巻取軸、114B 軸受、120 下段保持部、122 下段カートリッジ、122A 巻取軸、122B 軸受、130 筐体、131 上段部、132 下段部、133 中段部、133A、133B 開口、134 側板、134A 上部、134B 下部、134C 中央部、136 モータ、138 カバー、139 カバー、140 モータ制御装置、200 保持装置、212 上段カートリッジ、212A 巻取ロール、212B 突起、300 保持装置、310 上段保持部、316 ガイドローラー、316A ローラー部分、320 下段保持部、326 ガイドローラー、326A ローラー部分
図1
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