(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001012
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】減圧マイクロ波抽出装置を用いて抽出した水抽出物を利用した風味呈味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/12 20160101AFI20160923BHJP
【FI】
A23L27/12
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-135989(P2014-135989)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-13076(P2016-13076A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2014年7月2日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504432529
【氏名又は名称】日本フレーバー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】高林 美穂
(72)【発明者】
【氏名】梶山 久美子
(72)【発明者】
【氏名】下村 健太
【審査官】
小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−274670(JP,A)
【文献】
特開昭59−146562(JP,A)
【文献】
特表2008−514651(JP,A)
【文献】
特許第4849578(JP,B2)
【文献】
J. Food. Eng,2014年 4月,Vol.139,p31-42
【文献】
Food Chem.,2011年,Vol.125,p255-261
【文献】
高知県工業技術センター研究報告,2011年,Vol.42,p29-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C11B9/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類または柑橘類由来素材を原料とし、減圧装置により減圧下におかれた前記原料に対して30〜60℃でマイクロ波発生装置により発生させたマイクロ波を導入、照射しつつ気化蒸気を得て、前記気化蒸気を凝縮することにより抽出処理を行う減圧マイクロ波照射抽出処理により得られた水抽出物を有効成分として1〜50重量%含有する風味呈味改善剤を高甘味度甘味料を含有する飲食品に添加することにより、被添加物である前記飲食品における前記高甘味度甘味料に由来する風味及び呈味のうち甘味以外の特有の後口の嫌味を緩和して前記高甘味度甘味料に由来する甘味の風味及び呈味を改善する飲食品の風味呈味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料、飲料、ゼリー、アイスクリーム、その他食品に添加することにより風味や呈味の改善効果を発揮する風味呈味改善
方法に関するものである。
なお、ここでいう風味及び呈味改善とは、原料である柑橘類の風味を強化または付香するものではなく、不快臭味を有する飲食品の香りや味をマスキングや軽減したりなど、本来の好ましい風味及び呈味の一部を害することなく変化させることを言う。
【背景技術】
【0002】
現代社会において様々な食品が氾濫しており、実に多様な製品が開発され食されている。そのなかで健康志向の食品開発を行うことは消費拡大を図る上で重要であり、各社で活発に開発が行われている。消費者のイメージする健康志向の飲食品としては、従来よりビタミン摂取などを目的とした果汁を含む飲食品、ダイエットなどを目的とした高甘味度甘味料を含む低カロリーの飲食品、腸内環境改善などを目的とした乳製品を含む飲食品に加え、最近では熱中症対策などを目的として塩分を含む飲食品などが挙げられる。
【0003】
これらの飲食品は健康志向の消費者のニーズを満たす一方で、香りや味などの嗜好性の面では必ずしもニーズを満たすものではない場合がある。即ち、原材料そのものや加工の際に生じる不快臭味が問題となる。例えば、柑橘果汁を濃縮加工する際に生じる加熱臭やイモ臭、高甘味度甘味料の甘味の後切れの悪さや苦味、乳及び脱脂粉乳をはじめとする乳製品のカゼイン臭、精製塩の塩角(鋭い塩味)などは健康志向の強い消費者とはいえ、可能であれば風味や呈味をマスキングや軽減して避けたいものである。一方で、ナチュラルな風味や呈味のある飲食品はいつの時代でも着実に消費者に受け入れられている。これらの理由によって、健康志向でかつ美味しい食品を提供するために不快臭味だけを抑えて改善し、本来の好ましいナチュラルな風味や呈味を感じさせることの出来る素材の探究、開発が求められている。
【0004】
従来技術において、呈味調整剤について幾つかの物質、抽出物などが開示されている。
すなわちフタライド類を有効成分とする飲食品の呈味調整剤(特許文献1)、環状ジペプチド(特許文献2)、酸化処理した動植物油脂の高沸点成分混合物、または酸化処理した動植物油脂から低沸点成分を除去した蒸留物残渣の精製処理物(特許文献3)、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチ由来の抽出物(特許文献4)、茶の水及び/又は水溶性有機溶媒で抽出して得られた抽出物(特許文献5)、フラボン誘導体(特許文献6)、ワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体(特許文献7)などが知られている。
【0005】
また、果実由来の素材を用いた呈味調整剤に関しては、水蒸気蒸留法により植物性素材から香気成分を溜出させて得られた溜出液を気液向流接触蒸留法に供し得られるナチュラルフレーバーを、飲食品に添加することを特徴とする飲食品の呈味調整方法(特許文献8)が知られている。この特許文献8においては、呈味増強作用があることは報告されているが、飲食品の香りや味をマスキングや軽減させることは記載されていない。また、抽出操作として二段階の操作が必要である上、その含有成分についての記述はなく、具体的な成分組成については明らかになっていない。
さらに、水分の存在下で植物材料にマイクロ波照射を受けさせて凝縮及び濃縮されたアロマおよびフレーバー化合物をストリップする方法(特許文献9)が知られている。この特許文献9においても、ストリップしたアロマおよびフレーバー凝縮液及び濃縮液を、その植物材料に加え戻すという、本来その植物材料が持つ呈味の増強作用があることは報告されているが、飲食品の香りや味をマスキングや軽減させることは記載されていない。
【0006】
また、ステビア甘味料の風味を最適化する天然香料(文献10)が知られている。この文献10には当該天然香料を用いれば、ステビアなどの人工甘味料の遅い甘味の発現性を早めたり、後味の苦味をマスキングしたりできることが報告されている。しかし、当該天然香料なるものがどのようなものか、どのような手段で得られるものか、どのような成分を含んでいるかなど一切の開示はなく、具体的な成分組成については明らかになっていない。
【0007】
【特許文献1】特開2011−103873
【特許文献2】特開2010−166911
【特許文献3】特開2005−306667
【特許文献4】特開2006−296357
【特許文献5】特開2005−137286
【特許文献6】特開平06−335362
【特許文献7】再表2005/004635
【特許文献8】特開2011−092044
【特許文献9】特開昭64−060328
【非特許文献1】月間フードケミカル、2011年3月1日,Vol.27,No.3,pp.23-27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
香料、飲料、ゼリー、アイスクリーム、その他食品に添加する風味呈味改善剤において、柑橘類をはじめとする植物性素材や植物由来素材の抽出物を成分に配合することはきわめて有効な手法である。それらの素材は、人間の感性に訴える風味及び呈味を提供する成分を多数含むため、食品に添加すれば、本来その食品が持つ風味及び呈味が調整されることとなる。一方で食品の中には素材そのものや加工の際に生じる不快臭味を有するものがある。そこで、柑橘類をはじめとする植物性素材や植物由来素材の抽出物を成分に配合した風味呈味改善剤とすれば、より効果的なマスキング効果が得られることが期待できる。そのため、如何に、植物性素材および植物由来素材の成分を損なわずに抽出するかが重要である。
【0009】
上記の従来技術の特許文献1から特許文献8に示した技術を用いて植物性素材または植物由来素材から抽出する場合、抽出操作時に素材そのものに熱がかかって得られた抽出物が一部劣化する恐れがあったり、あるいは、抽出工程が複雑で抽出操作の過程において得られた抽出物が一部劣化する恐れがあったりする等の問題がある。
【0010】
そこで本発明者は、植物性素材又は植物由来素材の抽出過程において熱を加えずに風味及び呈味の改善効果を奏することができる成分を劣化させることなく抽出する技術を研究してきた。
本発明者は、風味及び呈味改善効果を向上すべく様々な方法を研究した結果、柑橘類または柑橘類由来素材を減圧マイクロ波抽出装置によって処理した
水抽出物を香料製剤に添加すると優れた風味及び呈味改善効果があることを見出した。
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、柑橘類又は柑橘類由来素材の抽出過程において熱を加えずに、風味及び呈味改善効果を奏することができる成分を劣化させることなく抽出し、当該成分を香料、飲料、ゼリー、その他食品等に添加することにより被添加物である飲食品の呈する風味に対してマスキング効果を発揮する風味呈味改善
方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、植物性素材または植物由来素材の自然な風味や呈味感を向上させる呈味調整剤を研究していたところ、柑橘類または柑橘類由来素材を原料として、減圧装置による減圧下において、原料に対してマイクロ波発生装置により発生させたマイクロ波を導入、照射しつつ抽出処理を行う手法を用いれば、被添加物である飲食品の呈する風味及び呈味の一部をマスキングして風味及び呈味改善効果を有する
水抽出物が得られることを発見した。
【0013】
本発明では、植物性素材または植物由来素材を原料として、減圧装置による減圧下において、原料に対してマイクロ波発生装置により発生させたマイクロ波を導入、照射しつつ抽出処理を行う手法を“減圧マイクロ波照射抽出処理”と呼ぶ。
【0014】
この減圧マイクロ波照射抽出処理で使用するマイクロ波は、例えば、マグネトロンを発生源とする2.45GHz、915MHz等のISMバンドの周波数を用いたもので良く、そのマイクロ波を試料に照射することにより極性分子のみがエネルギーを吸収し短時間で加熱することが出来る。さらに減圧装置により減圧した状況でマイクロ波抽出処理を行うことにより、原料に過度な温度がかからない状態、例えば、30〜60℃で原料が気化する現象が起こる。
【0015】
例えば、食品を蒸留タンク内に投入し、真空ポンプなどの減圧装置による負圧印加により蒸留タンク内を減圧状態に保ち、マイクロ波を照射すると、比較的に低温(例えば、30〜60℃)にて気化が起こり、この気化した成分を冷却凝縮器で液体に戻して
水抽出物を得る。このように、マイクロ波照射により低温で植物性素材または植物由来素材の成分を蒸発させることができるため、従来の水蒸気蒸留法のように原料に水を注水する必要もなく、原料を高温状態まで加熱せずに済み、抽出時間も短時間(1時間程度)で素材に含まれる
水抽出物を抽出できる。
【0016】
この“減圧マイクロ波照射抽出処理”により得られた
水抽出物は、熱が比較的かからない状態で抽出されたものであるため、優れた風味及び呈味改善効果を奏する有効成分が抽出できることが分かった。このように、本発明の風味呈味改善
方法は、より一層、天然食材に近いナチュラルな風味及び呈味改善効果がある。即ち、被添加物の原材料そのものや加工に伴う不快臭味だけを抑えて改善し、本来の好ましいナチュラルな風味や呈味を感じさせることが出来る。さらに“減圧マイクロ波照射抽出処理”では一工程で抽出物を得ることが可能であるため風味及び呈味改善効果を奏する
水抽出物の抽出工程を簡素化することも可能であることが分かった。
【0017】
つまり、本発明の風味呈味改善
方法は、柑橘類または柑橘類由来素材を原料とし、減圧装置により減圧下におかれた前記原料に対してマイクロ波発生装置により発生させたマイクロ波を導入、照射しつつ気化蒸気を得て、前記気化蒸気を凝縮することにより抽出処理を行う減圧マイクロ波照射抽出処理により得られた
水抽出物を有効成分とする、被添加物である飲食品の風味及び呈味の一部をマスキングして風味及び呈味を改善する風味呈味改善剤
を用いるものである。
【0018】
なお、呈味とは味を感じさせるものであり、風味とは香りと味を感じさせるものである。本発明の風味呈味改善
方法に用いる水抽出物は芳香性は低いが風味呈味を制御できるものである。ここでは、特に、風味呈味改善とは、本来被添加物が有する自然な香りは阻害せず、被添加物である飲食品の呈する加工臭などの風味をマスキングしたり軽減させたりすることを言う。よって本発明の風味呈味改善剤によって感じる感覚は呈味とも表現することも出来るし、風味として表現することも出来、人間の味覚や嗅覚において感受される、香りづけ、味付け、風合いを含むものである。
【0019】
“減圧マイクロ波照射抽出処理”を利用することにより得られた
水抽出物はそのまま使用しても良いし、他の既存の水蒸気蒸留法、圧搾法、溶剤抽出法、油脂吸着法、超臨界流体抽出法のいずれかの方法で得られた精油やその他香料原料に対して任意の割合で風味及び呈味改善用途物質として配合したものを調製することも可能である。
【0020】
本発明の風味呈味改善
方法は、様々な飲料、酒類、その他食品等に
適用することにより、ナチュラルな風味及び呈味の改善を行うことが出来る。ナチュラルな風味及び呈味改善とは、柑橘果汁を濃縮加工する際に生じる加熱臭やイモ臭、高甘味度甘味料の甘味の後切れの悪さや苦味、乳及び脱脂粉乳をはじめとする乳製品のカゼイン臭、精製塩の塩角(鋭い塩味)など、これらの不快臭味だけを抑えて改善し、本来の好ましいナチュラルな風味や呈味を感じさせることであり、即ちマスキング効果である。
被添加物は特に限定されないが、飲料としてはサイダー、レモン、コ―ラなどの炭酸飲料や果汁、果汁入りの飲料、コーヒー飲料、乳性飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料等の茶飲料、ミネラルウォーター、フルーツシロップ、乳酸菌飲料、乳及び乳製品などが挙げられる。酒類ではウイスキー、ラム、カシャッサ、ウォッカ、ジン、テキ―ラ、ブランデー、ラク、アラック、白酒、ビール類、ワイン、ウーゾ、焼酎、ビール、果実酒、黄酒、日本酒、どぶろく、マッコリ、みりん、馬乳酒、蜂蜜酒、リモンチェッロ等の酒類や、それに関連するアルコール飲料及びノンアルコール飲料が挙げられる。その他菓子、冷菓、食品等ではゼリー、ハードキャンディー、水飴、ガム、ヨーグルト、アイスクリーム、醤油、みりん、ソース、ドレッシング、ポン酢等の調味料、シトラス系及びフルーツ系香料の食品添加物が挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の風味呈味改善
方法によれば、飲食品の呈する風味をマスキングする風味及び呈味改善用途物質として、飲料、ゼリー、ハードキャンディー、ガム等の食品に添加することにより、本来の風味を妨げず加工臭等をナチュラルに風味及び呈味改善することができる。
なお、“減圧マイクロ波照射抽出処理”後の残渣は半乾燥〜乾燥状態であり、廃液が出ないことや二酸化炭素排出量削減などの効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の風味呈味改善
方法の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示したものに限定されるものではないことは言うまでもない。
以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0023】
本発明の風味呈味改善剤を精製する方法について説明する。
本発明の風味呈味改善剤は、出発原料となる素材に対して“減圧マイクロ波照射抽出処理”という抽出処理を用いて
水抽出物を得ることにより精製する。
本発明で用いる“減圧マイクロ波照射抽出処理”は、柑橘類または柑橘類由来素材を出発原料として、減圧装置による減圧下において、原料に対してマイクロ波発生装置により発生させたマイクロ波を導入、照射しつつ抽出処理を行う。
【0024】
図1は、本発明の飲食品の呈する風味をマスキングする風味呈味改善剤を精製する流れを簡単にまとめて表した図である。
図2は、“減圧マイクロ波照射抽出処理”の加工を行う減圧マイクロ波発生装置100のシステム構成を簡単に表したものである。
減圧マイクロ波発生装置100は、タンク110、減圧装置120、マイクロ発生装置130、凝縮器140、精油及び水抽出物貯留部150を備えた構成となっている。
【0025】
原料である柑橘類はミカン科ミカン亜科に属するもので特に限定されないが、以下の植物の果実または果実由来の残渣物、花、葉、茎、根、木部等が挙げられる。柑橘類由来素材は、その一部に柑橘類由来の物質を含むものであり、例えば、柑橘類を一次加工して得られた素材や、柑橘類と非柑橘類の混合物や合成物を一次加工して得られた素材や、非柑橘類の加工物を柑橘類に混合した素材などが挙げられる。
(1)カンキツ属
ミカン類としては、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、タチバナ、カラマンシー等が挙げられる。
オレンジ類としては、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、ブラッドオレンジ、ベルガモット等が挙げられる。
グレープフルーツ類としては、グレープフルーツ、オランジェロ等が挙げられる。
香酸柑橘類としては、ユズ、ダイダイ、カボス、スダチ、レモン、シークヮーサー、ライム、シトロン、ブッシュカン、三宝柑等が挙げられる。
雑柑類としては、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、ジャバラ、スウィーティー等が挙げられる。
タンゴール類としては、イヨカン、清見、タンカン、マーコット、シラヌヒ、せとか等が挙げられる。
タンゼロ類としては、セミノール、サマーフレッシュ、スイートスプリング、タンジェロ等が挙げられる。
ブンタン類としては、ブンタン、晩白柚、河内晩柑等が挙げられる。
(2)その他の属
カラタチ類とキンカン類が挙げられる。
【0026】
タンク110は、原料となる柑橘類または柑橘類由来素材が収容される容器であって密閉性が高いものとなっている。なお、タンク110には原料を攪拌するための攪拌装置を備えた構成が良い。攪拌装置は、タンク内110底部の中心に配設された攪拌翼111と、タンク110の底面の下方に配設されたモータ112を備えた構成となっており、モータ112の駆動により攪拌翼111がタンク110内で回転し、原料を撹拌できる。
【0027】
タンク110には、後述するマイクロ波発生装置130により発生したマイクロ波を導く導波管113が接続されている。導波管113の数は限定されず、1本でも複数本でも良い。その配置も特に限定されないが、タンク110内にマイクロ波を均等に照射するため、配置を工夫しておくことが好ましい。
【0028】
また、タンク110には、後述するようにマイクロ波発生装置130から導かれて照射されたマイクロ波により気化した蒸気を外部に導くための配管114が設けられている。配管114は後述する減圧装置120および凝縮器140に接続されている。
【0029】
減圧装置120は、タンク110内の圧力を減圧する装置である。マイクロ波照射中にも減圧するため、配管114を介してタンク110内から内部の気体、気化蒸気を引き抜く。
減圧装置120の装置構成は特に限定されないが、例えば、必要な減圧力(例えば、−120〜0kPa)を発生できる減圧ポンプで良い。
【0030】
マイクロ波発生装置130は、マイクロ波を発生及び照射できるものであれば特に限定されないが、例えば、マグネトロン、ジャイロトロン、クライストロン、進行波管等の電子管を利用した発振機、水晶振動子等の固有振動を増幅するソリッドステート式発振機等のその他の公知のマイクロ波発生装置130を使用することも可能である。
例えば、マグネトロンであれば、2.45GHz、915MHz等のISMバンドの周波数を用いたもので良い。
【0031】
マイクロ波を原料に照射することにより原料中の極性分子のみがエネルギーを吸収し短時間で加熱することが出来る。さらに減圧装置により減圧した状況でマイクロ波抽出処理を行うことにより、原料に過度な温度がかからない状態、例えば、30〜60℃で原料が気化する現象が起こるものとなっている。
【0032】
凝縮器140は、配管114を介してタンク110内から引き抜かれた気化蒸気を冷却し、液体に戻して回収する装置である。凝縮器140は短時間に気化蒸気を液体化するために冷却装置141が設けられている。配管114を介して凝縮器140内に導入された有用成分を含有する気化蒸気が冷却装置141の冷媒により冷却されて液化し、凝縮器140の底部にある精油及び水抽出物貯留部150内に回収される。
【0033】
柑橘類または柑橘類由来素材を原料として“減圧マイクロ波照射抽出処理”を用いて抽出した結果物は、精油及び水抽出物貯留部150内に溜まる液体である。この液体は、比重により分離しており、液体の上層には精油、下層には芳香蒸留水等の水抽出物となって
おり、下層の水抽出物が本発明に用いられる呈味風味改善剤として精製される。
【0034】
次に、柑橘類または柑橘類由来素材を原料として“減圧マイクロ波照射抽出処理”を用いて抽出する流れを簡単にまとめて説明する。
【0035】
まず、
図1のフロー101に示すように、これら原料をタンク110に投入する。
なお、原料に液分が多い場合は特に抽出溶媒がなくても良いが、原料の種類や原料の状態に応じて適切な抽出溶媒を入れることも可能である。少量の水を用いれば十分な場合が多いが、水のほか、原料の種類や原料の状態に応じて、エタノール等のアルコール類、エーテル類、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル等を用いても良い。
【0036】
次に、
図1のフロー102に示すように、減圧装置120を稼働させてタンク内の気体を抜いて気圧を減圧し、また、フロー103以降も減圧装置120による稼働を継続して原料から発生する気化蒸気を吸引し続ける。
次に、
図1のフロー103に示すように、マイクロ波発生装置130を稼働させてマイクロ波を発生させてマイクロ波導波管113を介してタンク110内に導き、原料に対して照射する。
次に、
図1のフロー104に示すように、原料から発生した気化蒸気をタンク110から凝縮器140に引き込む。なお、この構成例では減圧装置120による吸引力を利用して気化蒸気を凝縮器140に引き込む。
次に、
図1のフロー105に示すように、凝縮器140において気化蒸気を凝縮し、液化する。気化蒸気は液化して精油及び水抽出物貯留部150内に溜まることとなる。
以上の流れの中で、フロー102からフロー105までは装置を組み合わせたシステムとして自動的に処理することができ、連続した一工程とすることができる。
【0037】
減圧マイクロ波抽出物として得られるものは、抽出に用いた柑橘類原料により一部異なるが、リモネン、β‐ミルセン、α−ピネン、β‐ピネン、サビネン、β−カリオフィレン、β‐フェランドレン、ターピノレン、4−ターピネオール等の精油成分を含むものである。また、リナロール、α−ターピネオール、1−オクタノ−ル、ゲラニオール、4−ターピネオール、ネロール、ゲラニオール、ゲラニアール、ネラール、リモネン、β-ミルセン等の水抽出物成分を含むものである。
【0038】
得られた減圧マイクロ波抽出物は、そのまま飲料、ゼリー等の食品に添加し、風味呈味改善剤として使用することも可能であるが、RO膜濃縮などの方法により濃縮したものを使用することも出来る。また乳糖やデキストリン、アラビアガム等の既知の賦形剤を適宜添加して、スプレードライ、凍結乾燥等の方法により粉末化することも出来る。
【0039】
例えば、減圧マイクロ波抽出装置を用いて得られた精油抽出物を香料製剤に添加する場合、香料製剤中に0.01重量%以上含まれるように調製することが望ましい。この際、多くの精油を溶解するには適時乳化剤を使用し、乳化あるいは、可溶化するのが望ましい。
【0040】
また、例えば、減圧マイクロ波抽出装置を用いて得られた水抽出物を香料製剤に添加する場合、香料製剤中に1〜50重量%好ましくは5〜20重量%が含まれるように調製することが望ましい。
【0041】
例えば、本発明の風味呈味改善
方法の飲食品への適用例としては、柑橘類の濃縮果汁含有飲食品への適用が挙げられる。減圧マイクロ波抽出装置を用いて得られた
水抽出物を配合した香料製剤あるいは
水抽出物そのものを、柑橘類の濃縮果汁を使用した飲料、ゼリー、ハードキャンディー、ガム等食品に添加することにより、その濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭のマスキングをすることも出来る。
【0042】
柑橘類の濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭のマスキングに関しては、従来技術として、例えばアセトアルデヒドを多く含む香料製剤あるいは抽出物そのものを使用することで果実のフレッシュ感を付与でき、結果としてマスキングすることは可能である。しかしアセトアルデヒドは揮発性が非常に高く安定性の面で問題があり、またそのフレッシュすぎる果実の香気を強調して付与することで本来の果汁の香気を大幅に変化させてしまうことも問題である。一方、本発明おいて得られた減圧マイクロ波
水抽出物は柑橘系素材由来の抽出物であり、従来技術のような高濃度のアセトアルデヒドを有効成分として利用するものではないため、あくまでナチュラルな香気で風味及び呈味を改善し、本来その果汁が持つ香気を妨げることなく加熱臭、イモ臭をマスキングでき、また揮発性の面でも安定性に優れるものである。
【0043】
ここでいう柑橘類の濃縮果汁とはミカン科ミカン亜科に属するものを原料として加熱等により水分を除去して濃縮したものであり、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、タチバナ、カラマンシー、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、ブラッドオレンジ、ベルガモット、グレープフルーツ、オランジェロ、ユズ、ダイダイ、カボス、スダチ、レモン、シークヮーサー、ライム、シトロン、ブッシュカン、三宝柑、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、ジャバラ、スウィーティー、イヨカン、清見、タンカン、マーコット、シラヌヒ、せとか、セミノール、サマーフレッシュ、スイートスプリング、タンジェロ、ブンタン、晩白柚、河内晩柑、カラタチ、キンカン等の濃縮果汁をさす。
【0044】
本発明の風味呈味改善剤の他の飲食品の適用例としては、高甘味度甘味料含有飲食品への適用が挙げられる。減圧マイクロ波抽出装置を用いて得られた
水抽出物を配合した香料製剤あるいは
水抽出物そのものを、高甘味度甘味料を使用した飲料、ゼリー、ハードキャンディー、ガム等食品に添加することにより、その甘味料特有の不快な苦味、エグ味及び収斂味などをマスキングすることも出来る。
【0045】
ここでいう高甘味度甘味料とはショ糖と比較して数百倍〜数千倍の高い甘味をもつものであり、アリテーム、アスパルテーム、アセスルファムK、エリスリトール、甘草抽出物、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン、グリチルリチン酸2ナトリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、ステビア、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム等をさす。
【0046】
また、本発明の風味呈味改善剤の他の飲食品の適用例としては、乳製品含有飲食品への適用が挙げられる。減圧マイクロ波抽出装置を用いて得られた
水抽出物を配合した香料製剤あるいは
水抽出物そのものを、乳及び脱脂粉乳をはじめとする乳製品を使用した飲料、ゼリー、ハードキャンディー、ガム等食品に添加することにより、その乳及び乳製品特有の不快なカゼイン臭などをマスキングすることも出来る。
【0047】
ここでいう乳及び乳製品とは主に牛乳もしくはそれを加工したものであり、牛乳、クリーム、バター、チーズ、ホエイパウダー、クリームパウダー、全粉乳、脱脂粉乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、発酵乳、乳酸菌飲料等をさす。
【0048】
また、本発明の風味呈味改善剤の他の飲食品の適用例としては、精製塩などの塩分含有飲食品への適用が挙げられる。減圧マイクロ波抽出装置を用いて得られた
水抽出物を配合した香料製剤あるいは
水抽出物そのものを、塩分を使用した飲料、ゼリー、ハードキャンディー、ガム等食品に添加することにより、その特有の鋭い塩角などをマスキングすることも出来る。
【0049】
なお、ここでいう塩分とは塩化ナトリウムを主成分とするものであり、精製塩、天然塩、再生塩等がある。主成分の塩化ナトリウム以外に、塩化ナトリウム以外のナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩なども含まれ得るものである。
【0050】
本発明の風味呈味改善剤を配合したモデル飲料と、比較試料を配合したモデル飲料を用意し、その風味及び呈味改善効果の検証を試みた。検証方法としては、風味及び呈味改善効果の確認であるため官能試験を採用した。
【実施例1】
【0051】
実施例1として、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を柑橘類の濃縮果汁含有のモデル飲料に添加し、その柑橘類の濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭のマスキング効果の検証を試みた。
使用する香料製剤は、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤S、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を添加した本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A群(A1〜A7)、非柑橘類であるバニラの減圧マイクロ波
水抽出物を添加した比較試料の香料製剤Bを作成した。(表1)
【表1】
【0052】
柑橘類の濃縮果汁含有のモデル飲料としては、下記表2の処方例1の配合にて作製した。
なお、処方1の香料製剤の違いによって、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤Sを配合したモデル飲料S、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A群(A1〜A7)を配合したモデル飲料A群(A1〜A7)、比較試料の香料製剤Bを配合したモデル飲料Bが作製される。
【表2】
【0053】
(官能評価)
表2で調製したモデル飲料を訓練されたパネラーにて官能評価を実施し、その結果を表3に示した。
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤Sを配合したモデル飲料Sでは、柑橘類の濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭が強く感じられるが、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A群を配合したモデル飲料A群(A1〜A7)では柑橘類の濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭が感じられにくくなっており、マスキング効果が確認できた。
その一方で、比較試料の香料製剤Bを配合したモデル飲料Bでは柑橘類の濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭が強く感じられるため、マスキング効果が確認されなかった。
以上の結果より、減圧マイクロ波抽出装置により得られた柑橘類素材の
水抽出物を配合した本発明の風味呈味改善
方法を適用すれば、柑橘類の濃縮果汁特有の加熱臭、イモ臭に対する風味及び呈味改善効果があることが確認された。
【表3】
【実施例2】
【0054】
実施例2として、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を高甘味度甘味料含有のモデル飲料に添加し、その高甘味度甘味料特有の後口の嫌味の緩和効果の検証を試みた。
使用する香料製剤としては、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤S’と、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を添加した本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A’群(A’1〜A’7)、非柑橘類であるバニラの減圧マイクロ波
水抽出物を添加した比較試料の香料製剤B’を作成した(表4)。
【表4】
【0055】
高甘味度甘味料含有のモデル飲料としては、下記表5に示した処方例2から処方例6の配合にてそれぞれ作製した。
なお、処方例2から処方例6の合計5パターンの処方例のそれぞれにおいて、香料製剤の違いによって、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤Sを配合したモデル飲料S、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A’群(A’1〜A’7)を配合したモデル飲料A’群(A’1〜A’7)、比較試料の香料製剤B’を配合したモデル飲料B’が作製される。つまり、5パターンの処方例それぞれに対して香料製剤の違いによるモデル飲料が9通り作製されるので、合計45種類のモデル飲料が作製されることとなる。
【表5】
【0056】
(官能評価)
表5で調製した高甘味度甘味料含有のモデル飲料を訓練されたパネラーにて官能評価を実施し、その結果を表6に示した。
比較試料の香料製剤S’を配合したモデル飲料S’では、処方例2から処方例6のいずれの処方例であっても、高甘味度甘味料特有の後口の嫌味が強く感じられるが、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A’群を配合したモデル飲料A’群(A’1〜A’7)では処方例2から処方例6のいずれの処方例であっても高甘味度甘味料特有の後口の嫌味が感じられにくくなっており、高甘味度甘味料特有の後口の嫌味の緩和効果が確認できた。
その一方で、比較試料の香料製剤B’を配合したモデル飲料B’では処方例2から処方例6のいずれの処方例であっても高甘味度甘味料特有の後口の嫌味が強く感じられるため、高甘味度甘味料特有の後口の嫌味の緩和効果が確認されなかった。
以上の結果より、本発明の風味呈味改善
方法を適用すれば、高甘味度甘味料特有の後口の嫌味に対する風味及び呈味改善効果があることが確認できた。
【表6】
【実施例3】
【0057】
実施例3として、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を乳製品含有のモデル飲料に添加し、その乳製品特有のカゼイン臭のマスキング効果の検証を試みた。
実施例3で使用する香料製剤は、実施例1で使用した表1のものと同様のものとする。つまり、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤Sと、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を添加した本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A群(A1〜A7)、非柑橘類であるバニラの減圧マイクロ波
水抽出物を添加した比較試料の香料製剤Bを作製した。
乳製品含有のモデル飲料は、下記表7に示した処方例7の配合にて作製した。
なお、使用する香料製剤の違いによって、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤Sを配合したモデル飲料S、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A群(A1〜A7)を配合したモデル飲料A1〜A7、比較試料の香料製剤Bを配合したモデル飲料Bの9通りのモデル飲料が作製されることとなる(表7)。
【表7】
【0058】
(官能評価)
表7で調製したモデル飲料を訓練されたパネラーにて官能評価を実施し、その結果を表8に示した。
比較試料の香料製剤Sを配合したモデル飲料Sでは、乳製品特有のカゼイン臭が強く感じられるが、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A群を配合したモデル飲料A群(A1〜A7)では乳製品特有のカゼイン臭が感じられにくくなっており、乳製品特有のカゼイン臭のマスキング効果が確認された。
その一方で、比較試料の香料製剤Bを配合したモデル飲料Bでは乳製品特有のカゼイン臭が強く感じられてしまうため、乳製品特有のカゼイン臭のマスキング効果が確認できなかった。
以上の結果より、本発明の風味呈味改善
方法を適用すれば、乳製品特有のカゼイン臭に対する風味及び呈味改善効果があることが確認された。
【表8】
【実施例4】
【0059】
実施例4として、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を精製塩含有のモデル飲料に添加し、その塩角の軽減効果の検証を試みた。
実施例4の検証に使用する香料製剤は実施例2で使用した表4に示したものと同様とする。つまり、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤S’、柑橘類の減圧マイクロ波
水抽出物を添加した本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A’群(A’1〜A’7)、非柑橘類であるバニラの減圧マイクロ波
水抽出物を添加した比較試料の香料製剤B’を作製した。
精製塩含有のモデル飲料としては、配合する香料製剤の違いによって、
水抽出物未添加の比較試料の香料製剤S’を配合したモデル飲料S’、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A’群(A’1〜A’7)を配合したモデル飲料A’1〜A’7、比較試料の香料製剤B‘を配合したモデル飲料B’の合計9通りのモデル飲料を作製した(表9)。
【表9】
【0060】
(官能評価)
表9で調製したモデル飲料を訓練されたパネラーにて官能評価を実施し、その結果を表10に示した。
比較試料の香料製剤Sを配合したモデル飲料S’では精製塩特有の塩角が強く感じられるが、本発明の風味呈味改善剤の香料製剤A’群を配合したモデル飲料A’(A’1〜A’7)では精製塩特有の塩角が感じられにくくなっており、塩角の軽減効果が確認できた。
その一方で、比較試料の香料製剤B’を配合したモデル飲料B’では精製塩特有の塩角が強く感じられるため、塩角の軽減効果が確認できなかった。
以上の結果より、本発明の風味呈味改善
方法を適用すれば、精製塩の塩角に対する風味及び呈味改善効果があることが確認できた。
【表10】
【0061】
以上、本発明の風味呈味改善剤の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の風味呈味改善
方法は、柑橘類または柑橘類由来素材を利用することにより比較的簡単な操作で
水抽出物を得て、そのまま、またはそれらを香料成分として配合することで
適用することができる。
本発明の風味呈味改善方法は、飲料、ゼリー、ハードキャンディー、ガム等の食品に
適用することで、被添加物である飲食品の呈する加工臭等の不快臭味をマスキングし、ナチュラルな風味をもたらす風味呈味改善
方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の飲食品の呈する風味をマスキングする風味呈味改善剤を精製する流れを簡単にまとめて表した図である。
【
図2】減圧マイクロ波照射抽出処理の加工を行う減圧マイクロ波発生装置100の システム構成を簡単にまとめて表した図である。
【符号の説明】
【0064】
100 減圧マイクロ波発生装置
110 タンク
111 撹拌翼
112 モータ
113 マイクロ波導波管
114 配管
120 減圧装置
130 マイクロ発生装置
140 凝縮器
150 精油及び水抽出物貯留部