【文献】
T.Kogai and H.Yatsuda,Liquid Sensor Using SAW and SH-SAW on Quartz,Proceeding of Ultrasonics Symposium, 2006, IEEE,米国,2006年10月 2日,pp.552-555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
表面弾性波に対する圧電基板上の伝搬特性に基づいて液体等の媒質の伝導率、比誘電率、粘性率等の計測を実現する表面弾性波センサは、その表面弾性波の波長が電磁波の波長の100万分の1と極めて短いために、小型化や軽量化が可能であり、しかも、人体に有害な媒質への適用に併せて、無調整化が可能であって、人手が介在することなく高い精度が得られるため、多様な分野のセンサとして採用されつつある。
【0003】
図9は、従来の表面弾性波センサの構成例を示す図である。
図において、圧電基板81上には、2つのすだれ状電極(IDT:Interdigital Transducer)(以下、「IDT」という。)82-1、82-2が対向して形成され、これらのIDT82-1、82-2の間には、計測対象である液体が接触し、あるいは滴下する反応場83が配置される。圧電基板上81上におけるIDT82-1、82-2の周りには矩形の壁体84-1、84-2が個別に接合され、これらの壁体84-1、84-2の頂部には板状のガラス85-1、85-2がそれぞれ接合される。IDT82-1には、一対のボンディングワイヤ86-11、86-12を介して図示されない励振回路の出力が接続される。IDT82-2は、一対のボンディングワイヤ86-21、86-22を介して図示されないセンス回路の入力に接続される。このようにして構成される表面弾性波センサの本体は所定の台座部材87の頂部に固定され、その頂部の端部は、上記ボンディングワイヤ86-11、86-12、86-21、86-22を短絡や既述の液体との接触から保護する樹脂88でコーティングされる。
【0004】
このような構成表面弾性波センサでは、IDT82-1は、上記励振回路によって与えられる50MHz〜250MHzの高周波信号で励振され、その高周波信号を表面弾性波に変換する。この表面弾性波は、圧電基板81の表面近傍を伝搬し、反応場83を介してIDT82-2に到達する。IDT82-2は、このようにして到達した表面弾性波を電気信号
に変換して既述のセンス回路に引き渡す。
【0005】
IDT82-2に到達する表面弾性波のレベルや位相は、測定対象として反応場83に接触し、あるいは滴下した液体の導電率、比誘電率、粘性率等に応じて異なる値になる。
したがって、センス回路は、このような表面弾性波が変換されることによって与えられた電気信号に基づいて、測定対象である液体の電気的特性、あるいはその液体の成分や性質を間接的に検出することができる。
【0006】
また、IDT82-1、82-2は、圧電基板81上で「壁体84-1およびガラス85-1」と、「壁体84-2およびガラス85-2」とによってそれぞれ封止される。したがって、これらのIDT82-1、82-2は、上記測定対象である液体に直接接触することなく、電気−音響変換を行うトランスジューサとして作動することができる。
【0007】
なお、本発明に関連した従来例としては、例えば、特許文献1に開示されるように、「弾性表面波デバイスにそれぞれ対応する特性値信号と液体の特性値との相関関係を示す各演算式が記憶された記憶装置と、液体の特性値を測定する際に、記憶装置に記憶されている複数の演算式またはテーブルのなかから液体の特性値を検出するのに適した演算式を選択し、この選択した演算式を有する弾性表面波デバイスからの特性値信号を入力して特性値を演算するマイクロコンピュータとを備えることにより、測定範囲を広く確保し、その測定範囲内において精度よく液体の特性値を測定できる」点に特徴がある「表面弾性波デバイスを用いた液体の特性値測定装置」がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下に列記する各実施形態では、
図9に示す従来例と同じ構成要素については、同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0021】
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態を示す図である。
図において、
図9に示す従来例との構成の相違点は、ガラス85-1、85-2の頂部の全域に亘って樹脂88がコーティングされた点にある。
本実施形態では、液体は、樹脂88によって阻まれるため、
図1の破線部および網掛け部に示すように、ガラス85-1、85-2の頂部に直接接触し、あるいは滴下することはない。
【0022】
また、IDT82-1、82-2と液体との距離は、両者の間にガラス85-1、85-2に併せて、樹脂88の層が介在するため、従来例より大きくなる。
さらに、このような樹脂88の比誘電率は、一般に、液体の比誘電率(≒80)に比べて大幅に小さい「10」未満である。
【0023】
すなわち、ガラス85-1、85-2の頂部の間には、理論的には樹脂88を介して静電結合路が形成され得るが、その静電結合路の結合度は従来例において形成されていた静電結合路の結合度より大幅に小さくなり、かつ発生する直達波のレベルも従来例より大幅に低く抑えられる。
【0024】
したがって、本実施形態によれば、従来例に比べて、樹脂88によってコーティングされる領域をガラス85-1、85-2の頂部の全域に拡大する軽微な構成の変更により、既述の直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0025】
〔第二の実施形態〕
図2は、本発明の第二の実施形態を示す図である。
本実施形態では、樹脂88は、以下に列記する点で、
図1に示す実施形態とは異なる形態でガラス85-1、85-2の頂部にコーティングされる。
【0026】
(1) ガラス85-1、85-2の頂部の内、反応場83に近接した所定の幅の領域(以下、「特定の領域」という。)にコーティングされる。
(2) 上記特定の領域にコーティングされる樹脂の厚みは、反応波83からガラス85-1、85-2の頂部への液体の溢れを回避する堰として十分な厚みに設定される。
【0027】
本実施形態では、樹脂88は、ガラス85-1、85-2の頂部の全域にコーティングされないが、既述の第一の実施形態と同様に、これらのガラス85-1、85-2の頂部に液体が直接接触し、あるいは滴下することが回避される。
【0028】
また、IDT82-1、82-2と上記液体との距離は、その液体の量が多い場合であっても、樹脂88が上記堰として機能している状態では、既述の第一の実施形態における同様の距離より大きくなる。
【0029】
したがって、本実施形態によれば、樹脂88がコーティングされるガラス85-1、85-2の頂部上の領域を拡大する軽微な構成の変更により、直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0030】
また、本実施形態では、ガラス85-1、85-2の頂部の中央部は、樹脂88によってコーティングされない。したがって、これらのガラス85-1、85-2の下に封止されたIDT82-1、82-2等の状態の目視による確認は、従来例と同様に可能である。
【0031】
〔第三の実施形態〕
図3は、本発明の第三の実施形態を示す図である。
本実施形態と、既述の第一の実施形態との構成の相違点は、ガラス85-1、85-2に代えて、ガラス31-1、31-2が備えられ、これらのガラス31-1、31-2の頂部には樹脂88がコーティングされない点にある。また、ガラス31-1、31-2の厚みは、
図1に示すガラス85-1、85-2の厚みtと、第一の実施形態においてこれらのガラス85-1、85-2の頂部にコーティングされていた樹脂88の厚みTとの和(=t+T)以上に設定さ
れる。
【0032】
すなわち、IDT82-1、82-2の間には、ガラス31-1、液体、ガラス31-2を介して静電結合路が形成されても、その静電結合路の結合度は従来例において形成されていた静電結合路の結合度より大幅に小さくなり、かつ発生する直達波のレベルも従来例より大幅に低く抑えられる。
【0033】
したがって、本実施形態によれば、厚みが大きなガラス31-1、31-2がガラス85-1、85-2に代えて備えられる軽微な構成の変更により、直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0034】
〔第四の実施形態〕
図4は、本発明の第四の実施形態を示す図である。
本実施形態と、既述の第1の実施形態との構成の相違点は、壁体84-1、84-2に代えて、壁体41-1、41-2が備えられ、かつガラス85-1、85-2の頂部に樹脂88がコーティングされない点にある。また、壁体41-1、41-2の高さは、
図1に示す実施形態における壁体84-1、84-2の高さhと、ガラス85-1、85-2の頂部にコーティングされた樹脂88の厚みTとの和(=h+T)以上に設定される。
【0035】
すなわち、本実施形態では、ガラス85-1、85-2の頂部には液体が直接接触し、あるいは滴下し得るが、その液体とIDT82-1、82-2との距離は、既述の第一の実施形態における距離より長く設定される。さらに、IDT31-1、31-2とガラス85-1、85-2との間におけるそれぞれの空間の比誘電率は、一般に、樹脂88の比誘電率より大幅に小さな値(≒1)となる。
【0036】
すなわち、IDT31-1、31-2の間には、以下(1)〜(5)に列記するように液体が介在する静電結合路が形成されるが、その静電結合路の結合度は従来例においてガラス85-1、85-2の頂部の間に液体を介して形成される静電結合路の結合度より大幅に小さくなり、かつ発生する直達波のレベルも従来例より大幅に低く抑えられる。
【0037】
(1) IDT82-1とガラス85-1の底部との間に形成される空間
(2) 誘電体であるガラス85-1の底部と頂部との間
(3) ガラス85-1とガラス85-2との双方の頂部に接触し、誘電体として機能する液体(4) 誘電体であるガラス85-2の頂部と底部との間
(5) ガラス85-2の底部とIDT82-2との間に形成される空間
【0038】
したがって、本実施形態によれば、サイズが異なる壁体41-1、41-2が壁体84-1、84-2に代えて適用される軽微な構成の変更により、直達波に起因する測定精度の低下が
大幅に抑圧される。
【0039】
〔第五の実施形態〕
図5は、本発明の第五の実施形態を示す図である。
図において、
図9に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) ガラス85-1、85-2の頂部の全域に導電性の膜(以下、「導電膜」という。)51-1、51-2が形成され、これらの導電膜51-1、51-2が接地される。
(2) 樹脂88のコーティングは、上記導電膜51-1、51-2が形成された後に施される。
【0040】
本実施形態では、反応場83から液体が溢れても、その液はガラス85-1、85-2の頂部には接触せず、接地された導電膜51-1、51-2に接触するため、IDT82-1、82-2と液体との静電的な結合は、これらの導電膜51-1、51-2によって阻止される。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、従来例に比べて、ガラス85-1、85-2の頂部の全域に接地された導電膜51-1、51-2がそれぞれ形成される軽微な構成の変更により、既述の直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0042】
なお、本実施形態では、壁体84-1、84-2の頂部に対するガラス85-1、85-2の接着が感光性の樹脂を介して行われる場合には、その樹脂の露光を疎外する要因となる導電膜51-1、51-2の形成は、このような露光の工程の後で行われる。
【0043】
〔第六の実施形態〕
図6は、本発明の第六の実施形態を示す図である。
図において、
図9に示す従来例との構成の相違点は、ガラス85-1、85-2に代えてガラス61-1、61-2が備えられ、これらのガラス61-1、61-2が以下の何れかの形態で構成された点にある。
(1) 疎水性のガラスとして構成される。
(2) 頂部および底部の双方、または頂部のみの全面に疎水性のコーティングが施される。
【0044】
本実施形態では、ガラス61-1、61-2に滴下した液体は、上記疎水性により弾かれるため、これらのガラス61-1、61-2の頂部に滞留することなく排除される。
したがって、本実施形態によれば、疎水性のガラス61-1、61-2がガラス85-1、85-2に代えて備えられる軽微な構成の変更により、既述の直達波に起因する測定精度の低
下が大幅に抑圧される。
【0045】
なお、本実施形態では、ガラス61-1、61-2は、従来例と同様の高さの壁体84-1、84-2の頂部に接合されることによって取り付けられている。
しかし、ガラス61-1、61-2は、既述の第一ないし第五の実施形態の何れに組み合わせられてもよく、これらのガラス61-1、61-2の頂部における液体の滞留を速やかに排除できるように、例えば、反応場83の方向に傾斜した状態で取り付けられてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、反応場83は、その反応場83からの液体の溢れの制限を目的として、親水加工が施され、あるいは親水性の膜あるいは素材で覆われてもよい。
【0047】
〔第七の実施形態〕
図7は、本発明の第七の実施形態を示す図である。
図において、
図1に示す第一の実施形態との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 圧電基板81上における反応場83とIDT82-1、82-2との距離がそれぞれ所定の値δずつ大きく設定される。
【0048】
(2) 圧電基板81上における反応場83とIDT82-1、82-2との間における表面弾性波の伝搬路は、上記所定の値δずつ長く形成される。なお、以下では、このような伝搬路の内、反応場83とIDT82-1、82-2との間にそれぞれ延長された2つの区間については、「付加伝搬路」と称し、符号「71-1」、「71-2」を付して表記する。
(3) これらの付加伝搬路71-1、71-2は、それぞれ直近のIDT82-1、82-2と共に封止される。
【0049】
本実施形態では、IDT82-1、82-2と反応場83にある液体との静電結合は、これらのIDT82-1、82-2と液体との間隔が上記δに亘って広くなるため、粗となる。
したがって、本実施形態によれば、圧電基板81上における反応場83とIDT82-1、82-2との間に上記付加伝搬路71-1、71-2が付加される軽微な構成の変更により、既述の直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
なお、本実施形態は、第一の実施形態に改良が施されることによって構成されているが、既述の第二ないし第六の何れの実施形態との組み合わせとして構成されてもよい。
【0050】
〔第八の実施形態〕
図8は、本発明の第八の実施形態を示す図である。
図において、
図6に示す第六の実施形態との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) ガラス61-1、61-2に代えて、1枚のガラス72が配置される。
(2) このようなガラス72は、反応場83との間に、既述の液体が流れる隙間73を形成する。
(3) ガラス72の頂部と底部との間には、上記隙間74に流入する液体を導く流入口74aと、この隙間74から流出する液体を外部に導く流出口74bとが形成される。
【0051】
本実施形態では、測定の対象となる液体は、上記流入口74aおよび隙間73を介して反応場83上に導かれ、その隙間73から流出口74bを介して外部に排出される。
また、反応場83は、このようなガラス72によって覆われるため、液体が直接滴下することはない。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、液体が供給される形態や経路に関する制約が緩和され、反応場上における液体の厚みに制限がないことに起因する既述の静電結合の増加が緩和される。
なお、本実施形態では、ガラス61-1、61-2に代わって設けられた1枚のガラス72によって、反応場83に液体が直接滴下することが回避されている。
【0053】
しかし、本実施形態はこのような構成に限定されず、ガラス72は、例えば、以下の通りに構成されてもよい。
(1) ガラス61-1、61-2とが別体のガラスとして構成され、かつ壁体84-1、84-2によって支持され(壁体84-1、84-2の間に架設され)る。
(2) 樹脂88その他の部材と共に一体に形成される。
【0054】
上述した各実施形態では、本発明は、反応場83における液体等の媒質の有無、あるいはその媒質の成分の検出を実現する表面弾性波センサに適用されている。
しかし、本発明は、このような媒質に限らず、例えば、上記液体に代わる媒体として気体、煙等に適応するセンサ、あるいは体内の抗原抗体反応等の計測を実現するバイオセンサにも適用可能である。
【0055】
また、上述した各実施形態では、IDT82-1、82-2は、所望の高周波信号(電気信号)と表面弾性波とのエネルギー変換を行うことができるならば、すだれ状電極に限定されず、どのような形状、構造および寸法の電極であってもよい。
【0056】
さらに、上述した各実施形態では、本発明は、トランスバーサル型の表面弾性波センサに適用されている。しかし、本発明は、SAW共振型、あるいはラダー型のセンサにも同様に適用可能である。
【0057】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0058】
以下、本願に開示された発明を整理し、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0059】
[第1の表面弾性波センサ] 圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極を個別に封止する複数の封止部材を有し、前記圧電基板上で前記複数の電極で囲まれた反応場における前記表面弾性波の伝搬特性として、前記反応場における媒質の有無あるいは特性を検出する表面弾性波センサであって、
前記複数の封止部材に個別に被装され、前記複数の電極と前記媒質との電気的結合を阻止し、または粗とする複数の覆部材を備えた
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
このような構成の表面弾性波センサでは、複数の覆部材は、前記複数の封止部材に個別に被装され、前記複数の電極と前記媒質との電気的結合を阻止し、または粗とする。
【0060】
すなわち、複数の封止部材の間には、理論的には複数の覆部材と、これらの覆部材の間に介在する媒質とを介して静電結合路が形成されるが、その静電結合路の結合度は、このような覆部材が介在することなく媒質のみを介して形成される静電結合路の結合度より大幅に小さくなる。
【0061】
したがって、従来例に比べて、直達波のレベルが低く抑えられ、その直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0062】
[第2の表面弾性波センサ] 第1の表面弾性波センサにおいて、
前記複数の覆部材は、
前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離を制限する
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
このような構成の表面弾性波センサでは、前記複数の覆部材は、前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離を制限する。
【0063】
すなわち、複数の封止部材の間には、理論的には複数の覆部材と、これらの覆部材の間に介在する媒質とを介して静電結合路が形成されるが、その静電結合路の結合度は、このような覆部材が介在することなく媒質のみを介して形成される静電結合路の結合度より大幅に小さくなる。
【0064】
したがって、従来例に比べて、直達波のレベルが低く抑えられ、その直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0065】
[第3の表面弾性波センサ] 第1の表面弾性波センサにおいて、
前記複数の覆部材は、
前記複数の封止部材の頂部の端部に凸設され、前記頂部に対する前記媒質の被着または滴下を阻止する
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0066】
このような構成の表面弾性波センサでは、前記複数の覆部材は、前記複数の封止部材の頂部の端部に凸設され、前記頂部に対する前記媒質の被着または滴下を阻止する。
【0067】
すなわち、媒質の量が多い場合であっても、その媒質が複数の覆部材によって堰き止める状態では、複数の封止部材の間における静電結合の結合度が小さく抑えられる。
したがって、このような静電結合に起因して生じる直達波のレベルが従来列より低く抑えられ、測定精度の低下が大幅に抑圧される。
【0068】
[第4の表面弾性波センサ] 第1の表面弾性波センサにおいて、
前記複数の覆部材の頂部は、
前記複数の封止部材の頂部を被包し、かつ接地可能な導電体である
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
このような構成の表面弾性波センサでは、前記複数の覆部材の頂部は、前記複数の封止部材の頂部を被包し、かつ接地可能な導電体である。
【0069】
すなわち、媒質は、上記導電体によって阻まれるために、複数の封止部材の頂部には接触しない。
【0070】
したがって、これらの導電体が接地されている状態では、既述の封止部材の頂部の間には、媒質を介する静電結合路は形成されず、このような静電結合路を介して直達波が発生することに起因する測定精度の低下が回避される。
【0071】
[第5の表面弾性波センサ] 第4の記載の表面弾性波センサにおいて、
前記導電体は、
前記複数の封止部材の頂部に成膜された
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
このような構成の表面弾性波センサでは、前記導電体は、前記複数の封止部材の頂部に成膜される。
【0072】
すなわち、媒質は、上記導電体によって阻まれるために、複数の封止部材の頂部には接触しない。
【0073】
したがって、これらの導電体が接地されている状態では、既述の封止部材の頂部の間には、媒質を介する静電結合路は形成されず、このような静電結合路を介して直達波が発生することに起因する測定精度の低下が回避される。
【0074】
[第6の表面弾性波センサ] 圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極を個別に封止する複数の封止部材を有し、前記圧電基板上で前記複数の電極で囲まれた反応場における前記表面弾性波の伝搬特性として、前記反応場における媒質の有無あるいは特性を検出する表面弾性波センサであって、
前記媒質の主成分は、水であり、
前記複数の封止部材の頂部は、
疎水性の部材で形成され、または疎水加工が施された
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0075】
このような構成の表面弾性波センサでは、前記媒質の主成分は、水である。前記複数の封止部材の頂部は、疎水性の部材で形成され、または疎水加工が施される。
【0076】
すなわち、複数の封止部材の頂部に滴下した媒質は、上記疎水性により弾かれるため、これらの封止部材の頂部に滞留することなく排除される。
したがって、既述の直達波に起因する測定精度の低下が大幅に抑圧される。
[第7の表面弾性波センサ] 第6の表面弾性波センサにおいて、
前記反応場を被包し、かつ親水性を有する親水性被包部材を有する
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0077】
このような構成の表面弾性波センサでは、前記反応場を被包し、かつ親水性を有する親水性被包部材を有する。
【0078】
すなわち、媒質の量が多くても、前記反応場から複数の封止部材の表面にこぼれ落ちる可能性が少なくなる。
したがって、既述の直達波に起因して測定精度が低下する可能性が低くなる。
[第8の表面弾性波センサ] 圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極を個別に封止する複数の封止部材を有し、前記圧電基板上で前記複数の電極で囲まれた反応場における前記表面弾性波の伝搬特性として、前記反応場における媒質の有無あるいは特性を検出する表面弾性波センサであって、
前記複数の封止部材の頂部は、
前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離を制限する厚みで形成された
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0079】
このような構成の表面弾性波センサでは、前記複数の封止部材の頂部は、前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離を制限する厚みで形成される。
【0080】
すなわち、複数の封止部材の頂部の間には媒質を介して静電結合路が形成されても、その静電結合路の結合度は、これらの封止部材の厚みが薄い場合における同様の結合度に比べて大幅に小さくなる。
したがって、既述の直達波に起因して測定精度が低下する可能性が低くなる。
【0081】
[第9の表面弾性波センサ] 圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極を個別に封止する複数の封止部材を有し、前記圧電基板上で前記複数の電極で囲まれた反応場における前記表面弾性波の伝搬特性として、前記反応場における媒質の有無あるいは特性を検出する表面弾性波センサであって、
前記圧電基板に接合される前記複数の封止部材の端部は、
前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離が制限される寸法で形成された
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0082】
このような構成の表面弾性波センサでは、前記圧電基板に接合される前記複数の封止部材の端部は、前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離が制限される寸法で形成される。
【0083】
すなわち、複数の封止部材の頂部の間には媒質を介して静電結合路が形成され得るが、複数の電極の間に複数の封止部材および媒質を介して形成される静電結合路の結合度は、上記最小の距離が長いほど小さな値となる。
したがって、既述の直達波に起因して測定精度が低下する可能性が低くなる。
【0084】
[第10の表面弾性波センサ] 圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極圧電基板上に形成され、かつ電気信号と表面弾性波とのエネルギー変換を行う複数の電極を個別に封止する複数の封止部材を有し、前記圧電基板上で前記複数の電極で囲まれた反応場における前記表面弾性波の伝搬特性として、前記反応場における媒質の有無あるいは特性を検出する表面弾性波センサであって、
前記複数の電極と前記反応場との間には、
前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離が制限される距離に亘って前記表面弾性波が伝搬可能な付加伝搬路が個別に形成され、
前記複数の封止部材は、
前記複数の電極毎に、前記反応場との間に形成された付加伝搬路を併せて封止する
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0085】
このような構成の表面弾性波センサでは、前記複数の電極と前記反応場との間には、前記複数の電極と前記媒質との間における最小の距離が制限される距離に亘って前記表面弾性波が伝搬可能な付加伝搬路が個別に形成される。前記複数の封止部材は、前記複数の電極毎に、前記反応場との間に形成された付加伝搬路を併せて封止する。
【0086】
すなわち、複数の電極と反応場にある媒質との静電結合は、これらの電極と媒質との間隔が既述の付加伝搬路の長さに亘って広くなるために、粗となる。
したがって、既述の直達波に起因して測定精度が低下する可能性が低くなる。
【0087】
[第11の表面弾性波センサ] 第1ないし第10の表面弾性波センサの何れかにおいて、
前記反応場を覆い、かつ前記反応場との間に前記媒質が流れる隙間を形成する隙間形成部材を備えた
ことを特徴とする表面弾性波センサ。
【0088】
すなわち、反応場上に計測の対象として位置する媒質の層の厚みは上記隙間のサイズおよび形状により制限され、しかも、その反応場に対して媒質が直接滴下することは、形成部材によって阻止される。
【0089】
したがって、媒質の多様な供給路や供給の方法に対する柔軟な適応が可能となり、かつ反応場上にある媒質の厚みに制限がないことに起因する既述の静電結合の増加が緩和される。