特許第6001036号(P6001036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001036
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/02 20060101AFI20160923BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   F03D1/02
   F03D1/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-230251(P2014-230251)
(22)【出願日】2014年11月13日
(65)【公開番号】特開2016-94853(P2016-94853A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】専徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖男
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−092651(JP,A)
【文献】 特表2003−514193(JP,A)
【文献】 特開2013−231381(JP,A)
【文献】 特開2014−084718(JP,A)
【文献】 特開2009−213487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/02
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一回転軸上に前後に並べて配置された水平軸風車である第1風車及び第2風車と、前記第1風車及び前記第2風車を支持するナセルと、前記ナセルを地上から支持するタワーとを備える風力発電装置であって、
前記第1風車及び前記第2風車は、回転軸周りに並べて配置された複数の翼を備え、
前記第1風車の前記翼と前記第2風車の前記翼とは、回転軸に対する前記翼の傾斜角度である傾斜角が90度未満であり、風を受けたときに前記第1風車と前記第2風車とが互いに逆方向に回転するように配置され
さらに前記第1風車及び前記第2風車の前記傾斜角を制御する傾斜角制御手段を備えることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
さらに前記第1風車及び前記第2風車の回転軸周りの円軌道に対する前記翼のねじれ角度であるピッチ角を制御するピッチ制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記ナセルは、前記タワーの長軸周りに回転自在に前記タワーに連結され、
前記第1風車及び前記第2風車の回転軸が風向と平行になるように前記ナセルの回転角度を制御するヨー制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
鳥類が視認可能に少なくとも前記第1風車及び前記第2風車が緑色の外観を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平軸風車を備え、風力により発電する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置に用いられる風車において、発電効率を向上すべく翼を大型化する傾向があるが、これに伴い低周波領域の振動及び騒音、鳥類の衝突(バードストライク)の問題が顕著になってきている。これらに対して、問題を解決すべく種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、風車がタワーの風下に位置するダウンウィンド式の水平軸風車において、低周波騒音を低減すべく、縦渦を発生させタワー後流とその外部との風速差を低減させる渦生成部材をタワーに備える水平軸風車が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また風洞式プロペラ形風車において、騒音を防止すべく風車の回転により風洞内に生じる音波を干渉させて打ち消す波板を備えるとともに、風車が設置されている風洞内への小鳥や昆虫の侵入を防止する補助プロペラを備える風力発電装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−2726号公報
【特許文献2】特開2007−291903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の水平軸風車によれば、ダウンウィンド式の水平軸風車における低周波騒音を低減させることができるが、風車がタワーの風上に位置するアップウィンド式の風車に適用することができない。またタワーに渦生成部材を設置するコストがかかってしまう。
【0007】
特許文献2に記載の風力発電装置によれば、風洞内における騒音の発生、小鳥や昆虫の侵入を防止することが可能であるが、風洞を有していない風力発電装置に適用することができない。
【0008】
このように風力発電装置において、振動、騒音、鳥類の衝突(バードストライク)の問題に対し、さらなる改良が求められている。
【0009】
本発明の目的は、風車の回転による振動及び騒音の発生を防止可能な風力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、同一回転軸上に前後に並べて配置された水平軸風車である第1風車及び第2風車と、前記第1風車及び前記第2風車を支持するナセルと、前記ナセルを地上から支持するタワーとを備える風力発電装置であって、前記第1風車及び前記第2風車は、回転軸周りに並べて配置された複数の翼を備え、前記第1風車の前記翼と前記第2風車の前記翼とは、回転軸に対する前記翼の傾斜角度である傾斜角が90度未満であり、風を受けたときに前記第1風車と前記第2風車とが互いに逆方向に回転するように配置され、さらに前記第1風車及び前記第2風車の前記傾斜角を制御する傾斜角制御手段を備えることを特徴とする風力発電装置である。
【0011】
また本発明の風力発電装置は、さらに前記第1風車及び前記第2風車の回転軸周りの円軌道に対する前記翼のねじれ角度であるピッチ角を制御するピッチ制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明において、前記ナセルは、前記タワーの長軸周りに回転自在に前記タワーに連結され、前記第1風車及び前記第2風車の回転軸が風向と平行になるように前記ナセルの回転角度を制御するヨー制御手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また本発明の風力発電装置は、鳥類が視認可能に少なくとも第1風車及び第2風車が緑色の外観を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の風力発電装置によれば、第1風車の翼と第2風車の翼とは、回転軸に対し90度未満の角度で傾斜しているので、回転軸に対し直交した翼を有する風車に比べて小径化が可能であり、低周波領域の振動及び騒音の発生を低減することができる。また風を受けたときに第1風車と第2風車とが互いに逆方向に回転するので、それぞれの風車で発生する振動及び騒音が互いに打ち消し合い、振動及び騒音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態の風力発電装置1の側面図である。
図2図1の風力発電装置1の正面図である。
図3図1の第1風車31の傾斜角51を示す側面図である。
図4図1の第1風車31及び第2風車41のピッチ角52、53を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態の風力発電装置1の側面図である。図2は、図1の風力発電装置1の正面図である。図3は、図1の第1風車31の傾斜角51を示す側面図である。図4(a)は、図1の第1風車31のピッチ角52を示す背面図である。図4(b)は、図1の第2風車41のピッチ角53を示す背面図である。なお図2において、第2風車41は省略している。
【0018】
本発明の第1実施形態の風力発電装置1は、同一回転軸上に前後に並べて配置された水平軸風車である第1風車31及び第2風車41と、第1風車31及び第2風車41を支持するナセル12と、ナセル12を地上から支持するタワー11とを備え、風力により第1風車31と第2風車41とが互いに逆方向に回転し発電を行う。また風力発電装置1は、後述する、図示しないヨー制御手段、傾斜角制御手段、及びピッチ制御手段を備える。
【0019】
タワー11は、円筒体の支持構造物であり、タワー11の荷重を地盤に伝える基盤(図示省略)に据え付けられている。タワー11は、特定のものに限定されるものではなく、ナセル12を長軸周りに回転自在に支持することが可能な公知のタワーを用いることができる。またタワー11の高さも、特定の高さに限定されるものではない。なお基盤は、特定のものに限定されるものではなく、公知の基盤を用いることができる。
【0020】
ナセル12は、タワー11に回転自在に連結された回転基台21と、回転基台21の上部に取付けられている支持部材22とを備え、支持部材22に第1風車31及び第2風車41の回転軸となるシャフト23が取付けられ、シャフト23を介して第1風車31及び第2風車41を支持している。ナセル12は、図示しないヨー制御手段により、第1風車31及び第2風車41の回転軸(シャフト23)が風向と平行になるように回転角度が制御される。
【0021】
ヨー制御手段としては、例えば、風車に発生する空気力を利用して自律的に回転角度を制御するフリーヨーや、風車の回転軸の向きと風向との差を検知し動力を用いて強制的に回転角度を制御する制御ヨー等の公知の手段を用いることができる。また風向に追従可能であれば、単に尾翼(図示省略)を設けたものでもよい。
【0022】
回転基台21は、正面視において逆蒲鉾形であり、タワー11の長軸周りに回転自在にタワー11の上端部に連結されている。また回転基台21は、ヨー制御手段や後述する傾斜角制御手段、ピッチ制御手段の構成機器(図示省略)、発電機34、44と電気設備との中継機器(図示省略)等を収納することもできる。
【0023】
支持部材22は、正面視において逆V字状の板材であり、回転基台21の上面の長手方向の両端に立設されており、上部にシャフト23が固定されている。なお支持部材22の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、第1風車31及び第2風車41が回転自在なように、シャフト23を支持可能な形状であればよい。
【0024】
シャフト23は、円柱体であり、支持部材22に固定されている。なおシャフト23は、円柱体に限定されるものではなく、例えば、円筒体でもよい。シャフト23は、第1風車31及び第2風車41の回転軸となる。
【0025】
第1風車31は、風を受ける翼32と、翼32が取付けられ風力により回転するハブ33と、ハブ33の回転力により電力を発生させる発電機34とを備え、ハブ33が回転自在なようにシャフト23に取付けられている。
【0026】
翼32は、断面が六角形の扁平な板材であり、ハブ33の周方向に等間隔に10枚、取付けられている。また10枚の各翼32は、図3に示すように回転軸(シャフト23)に対し、90度未満の角度で傾斜しており、第1風車31の輪郭が円錐台形状となるようにハブ33に取付けられている。以下、回転軸に対する翼32の傾斜角度を傾斜角51と呼ぶ。
【0027】
さらに10枚の各翼32は、回転軸(シャフト23)周りの円軌道に対し、ねじれるように取付けられている。以下、回転軸周りの円軌道に対する翼32のねじれ角度をピッチ角52と呼ぶ。傾斜角51及びピッチ角52の決め方については後述する。
【0028】
ハブ33は、上面に凸部35を有する円板体であり、図示しない軸受を備え、軸受を介してシャフト23に回転自在に取付けられているとともに、回転力を伝達可能に発電機34に連結されている。ハブ33の底面には、前述した要領で翼32が取付けられている。なおハブ33の形状は、特定の形状に限定されるものではない。
【0029】
発電機34は、シャフト23に固定されており、ハブ33の回転力により電力を発生させる。発電機34は、回転力により電力を発生させる公知の誘導発電機、同期発電機、多極同期発電機等を用いることができる。また発電機34は、電力系統に連系するための電気設備(図示省略)に接続されている。なお電気設備は、地上等に設置される公知の風力発電装置に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0030】
第2風車41は、基本的構成は第1風車31と同じであるが翼42のピッチ角53が異なる。第2風車41は、風を受ける翼42と、翼42が固定され風力により回転するハブ43と、ハブ43の回転力により電力を発生させる発電機44とを備え、第1風車31の発電機34の後端にハブ43の凸部45が近接するようにシャフト23に固定されている。
【0031】
第2風車41の翼42は、ピッチ角53が第1風車31の翼32のピッチ角52と180度異なるようにハブ43に取付けられている。これにより第1風車31と第2風車41とは、風力により互いに逆方向に回転する。本実施形態において傾斜角51は、第1風車31の傾斜角51と同じであるが、異なっていてもよい。第2風車41のハブ43、発電機44は、第1風車31のものと同じなので説明を省略する。
【0032】
第1風車31及び第2風車41の翼32、42の形状、数、間隔、傾斜角51及びピッチ角52、53は、特定のものに限定されるものではなく、少なくとも第1風車31と第2風車41とが互いに逆方向に回転し、互いの振動及び騒音を打ち消し合うように決められていればよく、発電効率の向上や低周波領域の振動及び騒音の低減等を考慮し適宜最適に決めることができる。ただし第1風車31及び第2風車41が小径になるように翼32、42の傾斜角51等が決められていると、低周波領域の振動及び騒音が発生し難くなり、より好ましい。
【0033】
なお風力発電装置1は、図示しない傾斜角制御手段及びピッチ制御手段を備え、風向や風速により翼32、42の傾斜角51及びピッチ角52、53を制御することが可能である。なお傾斜角制御手段及びピッチ制御手段としては、モータや油圧装置等を用いた公知の傾斜角制御装置及びピッチ制御装置等を用いることができる。
【0034】
本実施形態の風力発電装置1は、外観が緑色になるように、タワー11、ナセル12、シャフト23、支持部材22、第1風車31及び第2風車41が彩色されている。これにより鳥類が風力発電装置1を視認し易くなり、衝突を回避することが可能となる。なお少なくとも第1風車31及び第2風車41を外観が緑色になるように彩色することで、第1風車31及び第2風車41への鳥類の衝突を回避することができる。
【0035】
また本実施形態の風力発電装置1において、構成要素の材質は、特定の材質に限定されるものではなく、公知の風力発電装置と同様の材質で形成することができる。
【0036】
次に本実施形態の風力発電装置1の作用について説明する。風力発電装置1は、ヨー制御手段により、第1風車31及び第2風車41の回転軸(シャフト23)が風向と平行になるようにナセル12がタワー11の長軸周りに回転し、第1風車31と第2風車41とが風を受けて互いに逆方向に回転する。第1風車31と第2風車41とが互いに逆方向に回転することで、それぞれの風車で発生する振動及び騒音が互いに打ち消し合い、振動及び騒音の発生が防止される。
【0037】
また傾斜角制御手段及びピッチ角制御手段により、風速に合わせて発電効率が高まるように第1風車31及び第2風車41の傾斜角51及びピッチ角52、53が制御される。ただし、少なくとも第1風車31と第2風車41との回転方向が互いに逆方向になるように制御される。
【0038】
本実施形態の風力発電装置1によれば、第1風車31及び第2風車41の翼32、42が回転軸(シャフト23)に対し90度未満の角度で傾斜しているので、風を受け易く、回転軸に直交した翼を有する風車に比べて第1風車31及び第2風車41の小径化が可能であり、低周波領域の振動及び騒音の発生を低減することができる。さらに第1風車31と第2風車41とが互いに逆方向に回転することで、それぞれの風車で発生する振動及び騒音が互いに打ち消し合い、振動及び騒音の発生を防止することが可能となる。
【0039】
またヨー制御手段、傾斜角制御手段、ピッチ角制御手段を備え、風向や風速に合わせてナセル12の回転角度、翼32、42の傾斜角51及びピッチ角52、53を制御することができるので、発電効率を向上可能であるとともに、強風発生時の第1風車31及び第2風車41の故障を防止することができる。
【0040】
さらに風力発電装置1は、鳥類が認識し易い緑色の外観を有しているので、鳥類の衝突を回避可能であるとともに、丘陵地等に設置する場合に景観を保つことができる。
【0041】
以上、第1実施形態の風力発電装置1を用いて、本発明の風力発電装置を説明したが、本発明の風力発電装置は、上記実施形態に限定されるものではなく要旨を変更しない範囲で変形することができる。例えば、本発明の風力発電装置は、必ずしも、ヨー制御手段、傾斜角制御手段、ピッチ角制御手段を有していなくてもよい。
【0042】
また第1実施形態の風力発電装置1は、第1風車31及び第2風車41がそれぞれ発電機34、44を有しているが、第1風車31と第2風車41とが互いに反対方向に回転することで発電する一つの発電機を共有するように構成することもできる。
【0043】
また風力発電装置1の外観は、緑色に限定されるものではなく、例えば、鳥類が視認し易いように光を反射する鏡面であってもよい。ただし景観を保つ上では、緑色が好ましい。
【0044】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0045】
1 風力発電装置
11 タワー
12 ナセル
23 シャフト
31 第1風車
32、42 翼
41 第2風車
51 傾斜角
52、53 ピッチ角
図1
図2
図3
図4