特許第6001210号(P6001210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6001210内視鏡システム及び内視鏡システムのための制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001210
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】内視鏡システム及び内視鏡システムのための制御装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160923BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   A61B1/00 320B
   G02B23/24 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-503874(P2016-503874)
(86)(22)【出願日】2015年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2015067490
(87)【国際公開番号】WO2015198946
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-132771(P2014-132771)
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】梅本 義孝
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−221519(JP,A)
【文献】 特開平09−166908(JP,A)
【文献】 特開2007−319547(JP,A)
【文献】 特開平07−140411(JP,A)
【文献】 実開平06−033776(JP,U)
【文献】 特開平02−097290(JP,A)
【文献】 特開昭62−181694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部を含む内視鏡と、
制御信号を一端子による一線として出力する制御部と、
前記制御信号に基づく接地電位よりも高い第1の電位を出力する第1の端子と前記制御信号に基づく前記接地電位よりも高い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続される、前記第1の電位と前記第2の電位との電位差に応じて正方向及び負方向に動作可能な作動器と、
前記作動器の動作状況に係る動作情報を取得する動作情報取得部と、
前記動作状況と当該動作状況を得るための前記制御信号との関係である制御情報に含まれる補正情報を記憶する記憶部と、
前記制御部から出力された前記制御信号と前記動作情報に基づいて得られた前記動作状況とが前記制御情報と整合しているか否かを判定し、整合していないときには整合するように前記補正情報に対する補正を行う補正部と
前記挿入部を前進又は後退させるために、前記挿入部に設けられ、前記作動器によって駆動されるパワーユニットと
を備える内視鏡システム
【請求項2】
前記制御部と前記駆動部との接続系統数は1であり、
前記駆動部は、反転回路を含み、前記制御部から入力された1つの前記制御信号に基づいて、前記第1の電位と前記第2の電位とを出力する、
請求項1に記載の内視鏡システム
【請求項3】
前記作動器は、正転及び反転可能な直流モータである、請求項2に記載の内視鏡システム
【請求項4】
前記作動器の駆動量を取得するエンコーダをさらに備え、
前記動作情報取得部は、前記駆動量を前記動作情報として取得する、請求項3に記載の内視鏡システム
【請求項5】
前記補正部は、前記制御部が前記作動器を静止させるための前記制御信号を出力しているときの前記動作状況に基づいて前記補正を行う、請求項2に記載の内視鏡システム
【請求項6】
前記制御信号は、パルス幅変調を利用しており、
前記駆動部は、前記第1の端子から前記制御信号のデューティ比に基づく前記第1の電位を出力し、前記第2の端子から前記制御信号のデューティ比に基づく前記第2の電位を出力する、
請求項1に記載の内視鏡システム
【請求項7】
前記補正部は、前記作動器を静止させるための、前記制御信号のデューティ比を決定する、請求項6に記載の内視鏡システム
【請求項8】
前記動作情報取得部は、前記第1の電位と前記第2の電位とを前記動作情報として取得する、請求項1に記載の内視鏡システム
【請求項9】
入力に応じて前記制御信号を変化させるための調整信号が出力される入力部をさらに備え、
前記補正部は、前記調整信号が入力される前に前記補正を行う、
請求項1に記載に内視鏡システム
【請求項10】
制御信号を一端子による一線として出力する制御部と、
前記制御信号に基づく接地電位よりも高い第1の電位を出力する第1の端子と前記制御信号に基づく前記接地電位よりも高い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続される、前記第1の電位と前記第2の電位との電位差に応じて正方向及び負方向に動作可能な作動器の動作状況に係る動作情報を取得する動作情報取得部と、
前記動作状況と当該動作状況を得るための前記制御信号との関係である制御情報に含まれる補正情報を記憶する記憶部と、
前記制御部から出力された前記制御信号と前記動作情報に基づいて得られた前記動作状況とが前記制御情報と整合しているか否かを判定し、整合していないときには整合するように前記補正情報に対する補正を行う補正部と
を備える内視鏡システムのための制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム及び内視鏡システムのための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転可能な螺旋状の凸部を有する回転筒体が挿入部の周囲に設けられた内視鏡システムが例えば日本国特開2007−319547号公報に開示されている。日本国特開2007−319547号公報には次のような技術が開示されている。この内視鏡では、回転筒体が長手軸周りに回転することで、螺旋状の凸部が周囲の組織を手繰り、挿入部はその長手軸方向に前進又は後退し得る。このような回転筒体の先端部と基端部とには、それぞれ回転数を検知するためのセンサが設けられている。先端部と基端部との回転数の差に基づき、回転筒体を回転させるモータへの電力供給が制御される。
【0003】
上述の回転筒体のようなパワーユニットを有する内視鏡システムでは、挿入部の前進及び後退を可能とするために、パワーユニットの回転体は、正転及び反転の両方向へ回転できることが必要である。このとき、電源や回転方向の切り替えを行うための構成を含む駆動回路は単純であることが好ましい。一方、この回転は正確に制御される必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、単純な構成を有しつつ正確な制御が可能な内視鏡システム及び内視鏡システムのための制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、内視鏡システムは、挿入部を含む内視鏡と、制御信号を一端子による一線として出力する制御部と、前記制御信号に基づく接地電位よりも高い第1の電位を出力する第1の端子と前記制御信号に基づく前記接地電位よりも高い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続される、前記第1の電位と前記第2の電位との電位差に応じて正方向及び負方向に動作可能な作動器と、前記作動器の動作状況に係る動作情報を取得する動作情報取得部と、前記動作状況と当該動作状況を得るための前記制御信号との関係である制御情報に含まれる補正情報を記憶する記憶部と、前記制御部から出力された前記制御信号と前記動作情報に基づいて得られた前記動作状況とが前記制御情報と整合しているか否かを判定し、整合していないときには整合するように前記補正情報に対する補正を行う補正部と、前記挿入部を前進又は後退させるために、前記挿入部に設けられ、前記作動器によって駆動されるパワーユニットとを備える。
【0007】
本発明の一態様によれば、内視鏡システムのための制御装置は、制御信号を一端子による一線として出力する制御部と、前記制御信号に基づく接地電位よりも高い第1の電位を出力する第1の端子と前記制御信号に基づく前記接地電位よりも高い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続される、前記第1の電位と前記第2の電位との電位差に応じて正方向及び負方向に動作可能な作動器の動作状況に係る動作情報を取得する動作情報取得部と、前記動作状況と当該動作状況を得るための前記制御信号との関係である制御情報に含まれる補正情報を記憶する記憶部と、前記制御部から出力された前記制御信号と前記動作情報に基づいて得られた前記動作状況とが前記制御情報と整合しているか否かを判定し、整合していないときには整合するように前記補正情報に対する補正を行う補正部とを備える。
【0008】
本発明によれば、単純な構成を有しつつ正確な制御が可能な内視鏡システム及び内視鏡システムのための制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る生体内導入装置の構成例の概略を示す図である。
図2図2は、パワーユニット制御部の構成例の概略を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る駆動部の構成例の概略を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るパワーユニット制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係る駆動部の構成例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る内視鏡システムとしての生体内導入装置1の構成の概略を図1に示す。この図に示すように、生体内導入装置1は、内視鏡100と、コントローラ200と、モニタ310と、入力部360とを備える。内視鏡100は、生体内に挿入されるように構成された細長形状をした挿入部110を備える。また、内視鏡100は、内視鏡100の各種操作を行うための操作部160を備える。操作部160は、使用者によって保持される。ここでは、挿入部110の先端の側を先端側と称し、操作部160の側を基端側と称することにする。内視鏡100の操作部160とコントローラ200とは、ユニバーサルケーブル190によって接続されている。
【0011】
挿入部110は、最も先端側に設けられた先端硬性部112と、先端硬性部112の基端側に設けられた湾曲部114と、湾曲部114の基端側に設けられた蛇管部116とを有する。湾曲部114は、操作部160に設けられた図示しない操作ノブの回転に応じて能動的に湾曲するように構成されている。蛇管部116は、外力によって受動的に湾曲する。
【0012】
先端硬性部112には、撮像素子120が設けられている。撮像素子120は、挿入部110の例えば先端側の被写体像に基づく画像信号を生成する。撮像素子120で取得された画像信号は、挿入部110及びユニバーサルケーブル190を通る撮像信号用信号線122を介してコントローラ200に送信される。また、先端硬性部112には、被写体を照明するための図示しない照明窓が設けられている。照明窓には、コントローラから延びる図示しないライトガイドが接続されている。コントローラ内に設けられた光源から射出された光は、ライトガイドによって導かれて、照明窓から射出する。照明窓から射出する光によって、被写体は照明される。また、先端硬性部112には、鉗子等の処置具が通される処置具チャンネルチューブの開口部が設けられている。
【0013】
挿入部110の蛇管部116には、パワーユニット(スパイラルユニット)130が取付けられている。パワーユニット130は、蛇管部116の周囲に、蛇管部の長手軸回りに回転可能に設けられた円筒状の装着ユニット(ベースチューブ)132を有する。装着ユニット132の外周面にはフィン134が設けられている。フィン134は、装着ユニット132の長手軸を中心とする螺旋状に設けられている。フィン134は、装着ユニット132の回転に応じて回転する。
【0014】
装着ユニット132は、操作部160に設けられたアクチュエータ150に、ギヤボックス144内のギヤ及びドライブシャフト146を介して接続されている。入力部360を用いた操作によってアクチュエータ150が動作すると、その駆動力はギヤボックス144内のギヤ及びドライブシャフト146によって伝達される。その結果、装着ユニット132及びフィン134は、それらの長手軸周りに時計回り及び反時計回りに回転し得る。
【0015】
フィン134が例えば管腔壁といった壁部に接した状態で、装着ユニット132及びフィン134が回転すると、挿入部110には先端側又は基端側への推進力が作用する。例えば小腸や大腸においては、小腸や大腸の内壁に存在する襞をフィンが手繰り寄せることによって、挿入部110に推進力が作用する。このような推進力によって、管腔における挿入部110の挿入性及び抜去性が向上する。
【0016】
モニタ310は、例えば液晶ディスプレイといった一般的な表示素子である。モニタ310は、後述の画像処理部290の制御下で、例えば内視鏡画像を表示する。
【0017】
入力部360は、例えばフットスイッチを含む。入力部360は、アナログスイッチ等で構成される第1の入力部362と第2の入力部364とを含む。生体内導入装置1は、第1の入力部362がオンになったとき、フィン134が例えば時計回りに回転するようにアクチュエータ150が動作するように構成されている。また、生体内導入装置1は、第2の入力部364がオンになると、フィン134が例えば反時計回りに回転するようにアクチュエータ150が動作するように構成されている。その結果、第1の入力部362がオンになったとき、挿入部110は先端側に前進し、第2の入力部364がオンになったとき、挿入部110は基端側に後退する。このように、入力部360には、ユーザの指示が入力される。入力部360から出力される信号を調整信号と称することにする。入力部360からは、ユーザによるフットスイッチの踏み込みの程度に応じた値を有する調整信号が出力される。この値に基づいて、フィン134の回転速度は制御される。
【0018】
コントローラ200は、生体内導入装置1の各部の制御を行う。コントローラ200は、画像処理部290を備える。画像処理部290は、撮像素子120から画像信号を取得し、この画像に対して必要な画像処理を施す。画像処理部290は、画像処理した画像信号をモニタ310に出力し、モニタ310に画像を表示させる。
【0019】
コントローラ200は、パワーユニット130の動作を制御するための制御装置として機能するパワーユニット制御部210を備える。アクチュエータ150とパワーユニット制御部210とは、アクチュエータ電流信号用信号線156で接続されている。
【0020】
パワーユニット制御部210を中心とした構成を図2に示すブロック図を参照して説明する。内視鏡100に設けられたアクチュエータ150は、作動器として機能するモータ152と、エンコーダ154とを備える。モータ152は、パワーユニット130を動作させる動力源である。挿入部110を前進及び後退させるために、パワーユニット130の装着ユニット132は、正転及び反転する。このため、モータ152は、正転及び反転する。本実施形態では、モータ152は、直流モータである。エンコーダ154は、モータ152の回転量を検出する。
【0021】
パワーユニット制御部210は、制御部220と、駆動部230と、動作情報取得部240と、記憶部250とを備える。
【0022】
制御部220は、例えばCPUやASICを含む。制御部220は、入力部360からユーザが希望するモータ152の回転方向及び回転速度に係る情報を表す調整信号を取得する。制御部220は、入力部360から取得した調整信号に基づいて、駆動部230へ出力する制御信号を調整する。制御部220は、この制御信号を駆動部230へ出力する。
【0023】
本実施形態に係る制御では、パルス幅変調(Pulse Width Modulation;PWM)を利用した制御信号が用いられている。すなわち、制御部220から駆動部230へは、矩形波が出力される。制御部220の出力は、1端子を用いた1線の出力である。すなわち、制御部220と駆動部230との接続系統数は1である。制御部220から出力される矩形波は例えば0V及び5Vの信号である。
【0024】
また、制御部220は、後述するように、モータ152を正しく駆動するために、制御信号の補正を行うために、補正部222を含む。補正部222は、モータ152を正しく駆動するために必要な制御情報に含まれる補正情報を決定する。ここで、制御情報は、制御部220が出力する制御信号とモータ152の駆動量との関係含む情報である。補正情報は、この制御情報に含まれる関係を補正するための情報である。制御部220は、決定された補正情報を含む制御情報を用いて制御信号を作成する。
【0025】
記憶部250は、制御部220が出力する制御信号とモータ152の駆動量との関係含む制御情報や、この制御情報に含まれる制御情報を補正するための情報である補正情報を記憶する。補正情報は、補正部222によって適宜に変更される。
【0026】
駆動部230は、制御部220から入力された矩形波に基づいて、モータ152を駆動する回路を含む。駆動部230の回路構成の一例を図3を参照して説明する。
【0027】
制御部220の出力端は駆動部230の入力端と接続されている。駆動部230の入力端には、ローパスフィルタ231が接続されている。ローパスフィルタ231は、抵抗とコンデンサとからなるローパスフィルタが2段設けられているものである。すなわち、ローパスフィルタ231は、入力端と出力端との間に抵抗が接続されて出力端と接地端との間にコンデンサが接続された構成を有するローパスフィルタが2組直列に接続された構成を有する。制御部220から出力された矩形波は、まずこのローパスフィルタ231によってFV変換される。すなわち、図3に示すように、制御部220から出力される矩形波のオン状態のパルス幅Aとオフ状態のパルス幅Bとの比をデューティ比としたときに、ローパスフィルタ231によって、矩形波は、デューティ比に応じた電圧値に変換されることになる。例えばデューティ比100:0のときにはローパスフィルタ231の出力端は5Vとなり、デューティ比50:50のときにはローパスフィルタ231の出力端は2.5Vとなり、デューティ比0:100のときにはローパスフィルタ231の出力端は0Vとなる。
【0028】
ローパスフィルタ231の出力端には、第1の増幅器232の入力端が接続されている。ローパスフィルタ231を通過した信号は、第1の増幅器232のゲインに応じて増幅される。
【0029】
第1の増幅器232の出力端には、第1の回路233と第2の回路234とが並列に接続されている。第1の回路233は、第2の増幅器235を含む。第1の回路233は、第1の増幅器232で増幅された信号の電位を所定の値だけ増加させる。一方、第2の回路234は、−1倍の反転増幅器236と第3の増幅器237とが直列に接続された回路構成を含む。第2の回路234は、第1の増幅器232で増幅された信号の電位を反転させたうえで、その電位を所定の値だけ増加させる。第1の回路233の出力端と第2の回路234の出力端とは、それぞれモータ152の入力端子に接続されている。
【0030】
駆動部230の回路は、制御部220から出力される制御信号のデューティ比に比例した出力値が、第1の回路233の出力端と第2の回路234の出力端との比となるように調整されている。例えば、モータ152の定格電圧が24Vのとき、次のように調整されている。すなわち、制御信号のデューティ比が90:10のとき、第1の回路233の出力端は27Vとなり、第2の回路234の出力端は3Vとなる。このとき、モータ152には、+24Vの電圧が印加される。また、制御信号のデューティ比が50:50のとき、第1の回路233の出力端は15Vとなり、第2の回路234の出力端は15Vとなる。このとき、モータ152には、電圧が印加されない。制御信号のデューティ比が10:90のとき、第1の回路233の出力端は3Vとなり、第2の回路234の出力端は27Vとなる。このとき、モータ152には、−24Vの電圧が印加される。このように、駆動部230は、制御信号に基づく接地電位よりも高い第1の電位を出力する第1の端子と制御信号に基づく前記接地電位よりも高い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部として機能する。
【0031】
駆動部230により、制御部220から出力される矩形波のデューティ比に応じた電圧がモータ152に印加される。駆動部230のような構成によれば、電源はプラス側の電源のみでよく、また、制御部220の出力端子は1つでよい。すなわち、1線式の構成を有することで、例えばCPUを用いて構成される制御部220の出力端子の使用数を1ピンのみに削減することができる。以上のように本実施形態に係る回路は極めて単純な構成を有する。また、アナログ回路による高い応答及び線形性は、パワーユニット130を速度制御する本実施形態において効果を奏する。なお、電源はプラス側の電源のみでよいと記載したが、電源はマイナス側の電源のみでもよい。
【0032】
仮にモータ152の端子の一方を接地した場合、モータ152を正転及び反転させるためには、モータ152の他方の端子へプラスの電圧値とマイナスの電圧値とを入力する必要がある。この場合、プラスの電源とマイナスの電源とが必要になる。これに対して本実施形態によれば、マイナスの電源は不要である。
【0033】
また、モータ152を正転させるときには、一方の端子をプラス側に接続して他方の端子を接地し、モータ152を反転させるときには、一方の端子を接地して他方の端子をプラス側に接続するという方法も存在する。しかしながら仮にこのような構成を採用した場合、例えば電界効果トランジスタを用いたスイッチング回路が必要となる。これに対して本実施形態によれば、スイッチング回路が不要である。その結果、スイッチング回路を制御するための信号が不要となり、制御部220の出力端子数を削減することができる。
【0034】
なお、ここではプラスの電源又はマイナスの電源のみでモータ152を正転及び反転させる回路の例を示したが、駆動部230の回路構成はこれに限らない。プラスの電源とマイナスの電源とを用意できる場合、駆動部230の回路構成の自由度は高まる。プラスの電源とマイナスの電源とを用意できる場合でも、駆動部230は、制御信号に基づく基準電位よりも高い第1の電位を出力する第1の端子と制御信号に基づく前記基準電位よりも高い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部として機能し得る。また、この場合、駆動部230は、制御信号に基づく基準電位よりも低い第1の電位を出力する第1の端子と制御信号に基づく前記基準電位よりも低い第2の電位を出力する第2の端子とを有する駆動部として機能し得る。すなわち、制御部220から出力される制御信号のデューティ比に応じた出力値が第1の端子と第2の端子とから出力されるように、駆動部230は構成され得る。さらに、プラスの電源とマイナスの電源とを用意できる場合、駆動部230は、制御部220の出力端子を1つとする1線式であり、かつ単純である種々の回路構成をとり得る。
【0035】
図2に戻って説明を続ける。動作情報取得部240は、エンコーダ154の出力を取得して、このエンコーダの出力に基づいて、モータの動作状況に係る動作情報を取得する。動作情報取得部240は、取得した動作情報を制御部220へと出力する。モータ152の動作状況に係る動作情報は、制御部220によるフィードバック制御に用いられる。すなわち、制御部220は、動作情報取得部240が取得したモータ152の回転量の情報を用いて、速度制御によってモータ152の動作を制御する。
【0036】
また、動作情報取得部240が取得した動作情報は、矩形波である制御信号の補正にも用いられる。例えば理想的にはデューティ比が50:50であるとき、第1の回路233と第2の回路234との出力端の電圧は共に15Vとなり、モータ152は停止する。しかしながら、駆動部230に含まれる各素子の個体差や、その特性の経年変化、温度などの環境等によって、デューティ比が50:50の矩形波が制御部220から駆動部230に入力されても、モータ152が回転することがあり得る。そこで本実施形態のパワーユニット制御部210では、モータ152が意図しない動作をしないように制御部220の出力が補正される。すなわち、動作情報取得部240の出力値に基づいて、制御部220の補正部222は、デューティ比が50:50のときにモータ152がわずかに正転していることを検出した場合、例えばモータ152を静止させるためのデューティ比を49:51とするように補正を行う。上述の補正情報は、例えば、モータ152を静止させるためにはデューティ比を50:50ではなく49:51に補正する必要があることを表す情報である。以上のような補正を行うことで、モータ152の動作は正確に制御され得る。
【0037】
駆動部230に含まれる素子に高精度の素子が用いられれば上述のような補正は不要となる可能性もある。しかしながらこの場合、装置全体がコストアップしてしまう。これに対して本実施形態によれば、適切な動作を行う装置を安価に製造することができる。なお、このような補正は、装置の出荷時には必須となる。また、装置の起動時に自動的に実施されることが好ましい。
【0038】
以上のように、内視鏡100の挿入部110を前進及び後退させるための駆動システム10は、パワーユニット制御部210と、アクチュエータ150と、入力部360とを含む。
【0039】
本実施形態に係る生体内導入装置1の動作について説明する。生体内導入装置1は、例えば体腔内の観察に用いられる。生体内導入装置1の使用時には、使用者は、例えば左手で操作部160を把持し、右手で蛇管部116を保持しながら挿入部110を被検者の体内に挿入する。さらに、使用者は、例えばフットスイッチである入力部360を足で操作することでフィン134を回転させて、挿入部110を前進又は後退させる。このとき、使用者はモニタ310を観察しながら生体内導入装置1を操作する。
【0040】
パワーユニット制御部210の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。この制御は、例えばコントローラ200の電源が入力されたときに実行される。初めに、上述の補正が行われる。
【0041】
ステップS101において、制御部220は、記憶部250に記憶されている最新の補正情報を含む制御情報を取得する。
【0042】
ステップS102において、制御部220は、取得した制御情報に基づいて、モータ152を静止させるための矩形波を制御信号として出力する。例えば補正が必要でないとき、制御部220は、デューティ比が50:50の矩形波を出力する。ステップS103において、制御部220は、エンコーダ154の出力に基づいて、動作情報取得部240が算出した現在のモータ152の動作状況に係る動作情報を取得する。
【0043】
ステップS104において、制御部220は、モータ152が静止しているか否かを判定する。モータ152が静止していないと判定されたとき、処理はステップS105に進む。ステップS105において、制御部220は、補正情報を再設定する。その後、処理はステップS102に戻る。したがって、その後、再設定された補正情報が含まれる制御情報に基づいて、制御信号の出力が行われる。例えばモータ152を静止させるための矩形波として、デューティ比が49:51の矩形波が出力されるようになる。
【0044】
ステップS104の判定においてモータ152が静止していると判定されたとき、処理はステップS106に進む。ステップS106において、制御部220は、現在用いられている補正情報を記憶部250に記憶させる。ステップS107において、制御部220は、動作可能である旨を通知する。例えば制御部220は、動作可能である旨をモニタ310に表示させる。これ以降、ユーザによる操作に従って、パワーユニット130が動作する。この際、補正情報が更新された制御情報が用いられる。
【0045】
ステップS108において、制御部220は、入力部360への入力に基づく調整信号を取得する。入力部360へは、ユーザによってフィン134を正転させるか反転させるか、及びその回転量に係る情報が入力される。調整信号はこれらの情報を表す信号である。ステップS109において、制御部220は、調整信号と制御情報とに基づいて、制御信号のデューティ比を決定する。ステップS110において、制御部220は、決定したデューティ比の矩形波を制御信号として出力する。その結果、モータ152が回転し、パワーユニット130は動作する。
【0046】
ステップS111において、制御部220は、終了の指示が入力されたか否かを判定する。終了の指示は、例えばパワーユニット130の使用が終了したとき、入力される。終了の指示が入力されていないと判定されたとき、処理はステップS108に戻る。一方、終了の指示が入力されていると判定されたとき、処理は終了する。
【0047】
本実施形態によれば、制御部220と駆動部230との接続系統数を1として、さらに駆動部230を安価な回路構成としても、モータ152を正確に制御することができる。上述の補正は制御部220から出力される矩形波である制御信号のデューティ比を調整するのみによって行われるので、駆動部230の回路構成を複雑にすることもない。また、デューティ比を調整することによる補正によれば、デジタル値である電圧値を用いて補正する場合などと比較して、容易に高精度な補正が実現され得る。また、補正にはエンコーダ154の出力が用いられているが、エンコーダ154は、モータ152の動作を制御するために元来必要なものであるので、補正のために新たに駆動システム10に構成要素を追加することにもならない。
【0048】
なお、上述の例では、補正は、モータ152を静止させる条件で行われている。しかしながらこれに限らない。モータ152を所定の速度で回転させる際の制御信号と動作情報とに基づいて、補正が行われてもよい。
【0049】
上述の実施形態では、エンコーダ154の出力に基づいてモータ152の駆動を制御する速度制御を行う例を示した。しかしながら制御方法はこれに限らない。生体への負荷を考慮して、モータ152に流れる電流値やモータ152に印加される電圧値等を用いたトルク制御が用いられてもよい。すなわち、速度制御ではフィン134の回転が周囲の生体組織によって阻害されたとき、当該生体組織に高負荷が掛かる可能性がある。これに対してトルク制御では、生体組織に掛かる負荷が制限される。この場合、エンコーダ154の出力値は制御に必要がないため常にモニタされないことも考えられる。本実施形態の駆動システム10の構成は、このようにエンコーダ154の出力値が常にモニタされない場合にも効果を奏する。
【0050】
上述の実施形態では、モータ152の動作状況を、エンコーダ154の出力に基づいて取得している。しかしながら、これに限らない。例えば第1の回路233の出力端の電位及び第2の回路234の出力端の電位を取得して、これらの値をモータ152の動作状況を表す動作情報として用いてもよい。すなわち、第1の回路233の出力端と第2の回路234の出力端との電位差と、制御信号との関係が、所定の関係になるように補正が行われてもよい。
【0051】
また、本実施形態の駆動システム10は、パワーユニット130を駆動するためのシステムとして説明した。しかしながらこれに限らず、本実施形態に係る技術は、各種ユニットを駆動する駆動システムに用いられ得る。例えば、本実施形態に係る技術は、電動湾曲内視鏡の湾曲機構の駆動にも用いられ得る。用途に応じて作動器としてのモータ152は、他の動力源に置換され得る。
【0052】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。第1の実施形態に係る制御では、パルス幅変調を利用した制御信号が用いられており、制御部220から駆動部230へは、矩形波が出力される。これに対して本実施形態では、制御部220からは、アナログ信号が出力される。
【0053】
本実施形態に係る駆動部230の回路構成の一例を図5に示す。図5に示すように、第1の実施形態の駆動部230と比較して、パルス幅信号をアナログ信号に変換するローパスフィルタ231がない。その他の回路構成は、第1の実施形態の駆動部230と同様である。すなわち、制御部220から出力されたアナログ信号は、第1の増幅器232に入力される。
【0054】
本実施形態では、図4を参照して説明した処理において以下の点が第1の実施形態と異なる。すなわち、ステップS102において、制御部220は、モータ152を静止させるための電圧値を有するアナログ信号を制御信号として出力する。例えば、制御部220が0Vから5Vまでの電圧値を出力できるときを考える。補正が必要でないとき、制御部220は、2.5Vの電圧を出力する。ステップS104において、モータ152が静止していないと判定されたとき、ステップS105において、補正情報が再設定される。すなわち、ステップS102における制御部220の出力は、例えば2.4Vに変更される。
【0055】
また、ステップS109において、制御部220は、調整信号と制御信号とに基づいて、出力電圧値を決定する。ステップS110において、制御部220は、決定した出力電圧値を有するアナログ信号を制御信号として出力する。その結果、モータ152が回転し、パワーユニット130は動作する。
【0056】
本実施形態によっても、制御部220と駆動部230との接続系統数を1として、さらに駆動部230を単純で安価な回路構成としても、モータ152を正確に制御することができる。
図1
図2
図3
図4
図5