(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部の係止部は、一方の角部に前記挿入機器の先端構成部の開口部を掛けて、他方の角部に前記揺動台の起上された前記先端部を掛けて挟み持ち、前記挿入機器の前記先端構成部の位置決めされた状態を保持することを特徴とする請求項4に記載の挿入機器の洗浄具。
前記移動規制部は、前記開口部内の所望する洗浄対象部位に対して、前記洗浄口からそれぞれに異なる方向に噴出された前記流体が直接的に衝突する位置に、前記先端構成部を位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の挿入機器の洗浄具。
前記移動規制部は、前記開口部内の所望する洗浄対象部位に対して、前記洗浄口からそれぞれに異なる方向に噴出された前記流体が直接的に衝突する位置に、前記先端構成部を位置決めすることを特徴とする請求項8に記載の挿入機器の洗浄具。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る挿入機器の洗浄具について説明する。
まず、本実施形態の洗浄具の洗浄対象の一例として、内視鏡装置の挿入部の先端に設けられた処置具揺動台(以下、揺動台と称する)を含む先端部について説明する。
図1は、洗浄対象となる内視鏡装置のシステム構成を示す図である。
図2Aは、挿入機器先端に設けられる揺動台を含む先端構成部の上面図、
図2Bは、先端構成部を前面から見た外観構成を示す図である。
図3は、
図2Aに示す先端構成部内の倒置状態にある揺動台の横断面の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、内視鏡装置1は、主として、内視鏡本体となる挿入機器2と、挿入機器2に照明光を供給する光源装置3と、挿入機器2の先端部に配設される図示しない撮像ユニットで撮像された映像信号に対して画像処理を施すビデオプロセッサを含む制御部4と、撮影された観察画像とその画像に関する情報を表示する表示部5と、表示部5に表示された観察画像を含む画像情報を印刷する印刷部6と、映像信号を記録する記録部7と、で構成される。ここでは、医療用内視鏡装置を挿入機器の一例としているが、これに限定される必要はない。挿入機器2は、他にも、工業用の内視鏡、照明光学系及び観察光学系を有しない、例えば、カテーテルやオーバチューブ等で、洗浄対象となる開口部又は部位が周面側から出し入れされる構成の挿入機器であれば、本実施形態の洗浄具により洗浄を行うことができる。
【0016】
図1に示すように、挿入機器2は、主として、挿入部11と操作部12とで構成される。挿入部11は、操作部12と連結している可撓性を有する可撓管部13と、可撓管部13の先端と連結する湾曲部14と、湾曲部14の先端に設けられた揺動台を収容する先端構成部15とを有している。操作部12は、ユニバーサルコード16により光源装置3及び制御部4に接続されている。挿入部11の基端部と操作部12との間には、鉗子等を挿入部内に導入するための鉗子口17が設けられている。
【0017】
図3に示すように、挿入機器の先端部である先端構成部15は、湾曲部14の節輪14aが嵌め込まれて、湾曲部14と連結している。先端構成部15は、例えばSUS等の金属によって本体部21が形成され、さらに本体部21の周面は、電気絶縁性を有するカバー部22で覆われた積層構造である。
【0018】
図2A及び
図2Bに示すように、先端構成部15の外周面の一部は平坦化され、その平坦化された部分は、長手軸方向に二分されて、一方側には、外周面から段差25aを設けて平坦な観察面25が形成され、他方側には、開口部27が形成されている。観察面25には、照明光が照射される照明窓部23及び、図示しない撮像素子が内部に配置されている観察窓部24が配置されている。この観察面25の近傍には、ノズル部26が配設され、生理食塩水等の洗浄液を噴出して照明窓部23と観察窓部24が適宜、洗浄される。尚、この観察面25は、後述する回転方向規制部42hに対する基準位置(基準面)となっている。
【0019】
また他方側の開口部27は、
図3に示すように、先端構成部15の側周面に開口する。開口部27内の格納室(又は、揺動台収納室)28には、揺動可能に処置具揺動台(以下、揺動台と称する)31が設置されている。
図1及び
図3に示すCは、挿入部11及び先端構成部15の長尺となる方向であり、長手軸方向を示している。
【0020】
回動可能に軸支する起上軸32と、揺動台31に一端が連結される牽引ワイヤ33と、牽引ワイヤの他端に連結さるた操作部12に設けられた起上操作部34と、で構成される駆動機構により揺動台31は、回動して起上または倒置される。このように、狭い格納室28内に揺動台31とその駆動機構が設置されているため、例えば、起上軸32周りや揺動台31の裏面などの開口部27から見て陰となる箇所に付着した体液や生体組織片による汚れが落ちにくくなっている。揺動台31は、起上するタイプだけではなく、処置具を左右に振るタイプであってもよい。
【0021】
次に、第1の実施形態に係る洗浄具41について説明する。
図4Aは、本実施形態の洗浄具の外観構成を示す図、
図4Bは、洗浄具に挿入機器を装着して洗浄する状態を示す図、
図5は、洗浄具本体を前方側から見た図、
図6Aは、挿入機器が装着された時の洗浄具の横断面を示す図、
図6Bは、挿入機器が装着された時の洗浄具を前方側から見た図である。以下に説明する洗浄具において、挿入機器の先端部である先端構成部15を差し入れる側を洗浄具の後方とし、先端構成部15の先端部が当接する側を前方とする。
【0022】
本実施形態の洗浄具41は、大別して、洗浄具本体42と送液機構43とで構成される。洗浄具本体42は、透明部材を用いて、先端構成部15が装着される中空な収納部を有する。送液機構43は、洗浄具本体42の継ぎ手部42gに連結する注入チューブ49と、注入チューブ49に連結するシリンジ連結部47と、シリンジ連結部47の分岐する吸液端47dから延びる吸引チューブ48と、浮き上がりを防止し吸引チューブ48の吸水口を兼ねる筒形状のおもり50と、洗浄用の流体を流動させるためのポンプ手段となるシリンジ46と、を有している。洗浄具本体42を含めて以下に説明する洗浄具41は、透明部材で作成されていることが好ましい。透明部材を用いることにより、汚れの落ち具合いを外側から確認が容易になる。また、注入チューブ49と洗浄具本体42とを着脱構造とすることにより、種々の挿入機器の先端部の形状に合わせて洗浄具本体42を作成すれば、汎用性の高い洗浄具として使用できる。
【0023】
シリンジ連結部47は、三方に分岐するT字形状を成し、内部に貯留室(洗浄液63を一時的に貯留させるためのスペース)47gが形成され、3つの端部のうち、2つの端部には開口する吸液端47d及び送液端47eが設けられて、それぞれの内部には逆止弁47b,47cが配置されている。もう1つの端部は、シリンジ取り付け端47aとしてシリンジ46を連結する。シリンジ46とシリンジ連結部47を組み合わせることで、ポンプとして機能する。これらの逆止弁47b,47cは、弁部が移動により、流路を閉塞したり開口したりする公知な構造でよく、例えば、弾性部材からなる円形の仕切り板に、流路よりも大径の弁部となるようにC字形のスリットを切り込んだ構成でもよい。
【0024】
図4A,4Bに示すシリンジ連結部47において、送液端47e内には、連結部本体の内圧が正圧の時に弁部が外側に向って回動することで開状態となり、負圧の時に弁部が弁座に吸引されて閉状態となる逆止弁47cが設けられる。また、吸液端47d内には、連結部本体の内圧が負圧の時に弁部が内側に向って回動することで開状態となり、正圧の時に弁部が弁座に押しつけられて閉状態となる逆止弁47bが設けられている。これは、シリンジ46のプランジャ46aを引き出すことで、連結部本体の内圧が負圧となり、洗浄液63が貯留室47g内及びシリンジ46内に流入し、プランジャ46aを押し込むことで連結部本体の内圧が正圧となり、貯留室47g内及びシリンジ46内から洗浄液63が流出する。洗浄液63を送液するシリンジに変わって、送液ポンプ等の送液手段を用いてもよい。
【0025】
本実施形態の洗浄具41による挿入機器の洗浄について説明する。
図4Bは、洗浄具41に挿入機器2の先端構成部15を装着した状態を示している。洗浄具41の洗浄具本体42に、後述する位置決めを行って先端構成部15を装着し、排水トレイ61内に設置する。この時、排水トレイ61内に予め水等の液体を入れておき、洗浄具本体42を沈めておくことにより、開口部42fから洗浄液63が勢いよく排出された場合に、液体で勢いを弱くして、排水トレイ61の周囲に飛び散ることを防止することも可能である。また、別途、飛散防止のためのトレイカバーを用意してもよい。尚、少なくとも排水トレイ61は、透明部材で作成されていることが好ましい。透明部材を用いることにより、汚れの落ち具合いを外側から確認することが容易になる。洗浄具本体42は、外部形状が円筒形を成しているが、内部が先端構成部15が装着できる中空形状であれば、外部形状は限定されるものではなく、矩形の箱形形状であってもよい。
【0026】
次に、洗浄液63で満たした吸水トレイ62に吸引チューブ48の吸水口50を沈めるように配置する。シリンジ46のプランジャ46aを引いて、吸水トレイ62内の洗浄液63をシリンジ連結部47の貯留室47g内及びシリンジ46内まで汲み上げて満たす。さらにプランジャ46aを押すことで、注入チューブ49から洗浄具本体42に送液され、後述する2つの洗浄口から異なる角度で供給(ここでは、噴出)し、揺動台を含む格納室28内を洗浄する。使用後の洗浄液63は、付着物と共に格納室28から開口部(
図6Aに示す開口部42f)を通じて排水トレイ61に排出される。また同時に、格納室28内から流れ出た洗浄液63は、洗浄具本体42に装着している先端構成部15の周辺部分を洗浄しながら、後述するクリアランスを通り抜けて、排水トレイ61に排出される。
【0027】
図6A,6Bを参照して、洗浄具本体42について説明する。
本実施形態の洗浄具本体42は、注入チューブ49が連結する洗浄液63の受給口となる継ぎ手部42g内の1つの流路42kが本体内部で2つの異なる角度の流路42i,42jに分岐され、それぞれの流路先端に第1,第2の洗浄口42a,42bが配置される構成である。
【0028】
この例では、第1の洗浄口42aは、先端構成部15の長手軸方向と直交する方向に噴出される例を記載している。また、第2の洗浄口42bは、先端部の前方から後方に向かい斜め下方向に噴出されている。勿論、第1,第2の洗浄口42a,42bの噴出する方向は、限定されるものではなく、設計により、適宜変更される。
【0029】
洗浄具本体42は、後方に先端構成部15を差し入れるための装入口42cが設けられ、前方には先端構成部15が当接する軸方向規制部42d(第1の移動規制部)が設けられ、内周面上方に前述した先端構成部15の観察面25と対向する回転方向規制部42h(第2の移動規制部)及び、使用後の洗浄液63が外部に排出されるための開口部42fが設けられている。
【0030】
軸方向規制部42d及び回転方向規制部42hは、移動規制部を構成し、先端構成部15を洗浄具本体42内の予め定めた装着位置に位置決めを行う。尚、装着位置は、第1,第2の洗浄口42a,42bの噴出する洗浄液63が格納室28内の洗浄対象箇所に直接衝突する位置とする。
【0031】
本実施形態では、洗浄に使用された洗浄液63の排水は、開口部42fの他に、先端構成部15の外周面と、洗浄具本体42の内周面との間のクリアランスを通じて排出してもよい。さらに、クリアランスでカバーできない程、洗浄液63の排液量が多い場合には、その内周面の一部に排水が可能な凹型溝状の隙間(図示せず)を内周面上に沿って長手軸方向に形成してもよい。
【0032】
図6Aに示すように、先端構成部15は、装入口42cから洗浄具本体42に差し入れて、観察面25と回転方向規制部42hを対向させながら、先端を軸方向規制部42dの位置決め壁42eに当接させることにより、先端構成部15の軸方向と回転方向の位置決めが行われる。この後、起上操作部34の操作により、揺動台31の先端部が第1の洗浄口42aと第2の洗浄口42bとの間に位置するように起上させて、洗浄具本体42の内周面に当接させ、位置決め状態を保持させる。
【0033】
この揺動台31の先端部を位置決め状態を保持させる保持部と称し、この先端部が当接する洗浄本体42の内周面を保持面とする。この保持面は、揺動台31が完全に倒れる位置と完全に起上する位置の中間の位置に設定され、揺動台31の位置決めを行う揺動台角度規制部とする。尚、洗浄具本体42を透明樹脂等で作成することにより、揺動台31を洗浄具本体42の上内面に当接させても、揺動台31には損傷を与えることは無い。
【0034】
洗浄具本体42の流路42k,42i,42j及び第1,第2の洗浄口42a,42bについて説明する。尚、実施形態では、それぞれが直線的な流路の先端に洗浄口に設けられているため、分岐箇所から角度を設けて流路を配設した構成を示しているが、洗浄液63の噴出方向及び洗浄液63が到達する位置が異なるように洗浄口が設けられれば、流路の経路自体は特に限定されるものではない。さらに、流路の径を流入口の流路42kから第1,第2の洗浄口42a,42bまでの流路42i,42jの径を先細りに狭めるように形成することで、噴出される洗浄液63の噴出圧力を高めてもよい。また、第1,第2の洗浄口42a,42bを狭めてノズルとして機能させることで、噴出される洗浄液63の噴出圧力を高めることも可能である。
【0035】
図6Aに示すように、本体内で流路42kは、少なくとも2つの流路42i,42jに分岐すると共に、その分岐箇所で洗浄液63の送液方向(噴出角度)が異なるように、流路42iと流路42jの軸方向の間に任意の角度差による傾きが設けられている。第1,第2の洗浄口42a,42bは、先端構成部15の開口部27から格納室28内に対して、異なる噴出角度で格納室28内に洗浄液63a,63bを噴出するように、各流路先端として、本体内周面上に間隔を空けて開口されている。
【0036】
第1の洗浄口42aは、洗浄対象部位として、先端構成部15の格納室28の前方側面(位置決め壁42e)に接する面の裏側から底面を通って起上する揺動台31の裏面側に掛かる範囲に、直接的に洗浄液63aを噴出する。また、第2の洗浄口42bは、洗浄対象部位として、格納室28の後方から底面及び揺動台31の起上軸32周りや牽引ワイヤ33等に向けて直接的に洗浄液63bを噴出する。ここでは、第1の洗浄口42aと第2の洗浄口42bから、共に挿入機器2の長手軸と交差し、且つ異なる方向(又は、異なる噴出角度)で先端構成部15の格納室28へ洗浄液63を噴出する。
【0037】
また、洗浄具本体42は、前後の両端が開口され、内視鏡等の挿入機器の先端構成部15に対して、先端の開口部42fだけでは無く、前述したように、洗浄具本体42との間のクリアランスを大きくとり、使用後の洗浄液63や汚物が外に流れやすいように構成されている。尚、本実施形態では、第1,第2の洗浄口42a,42bの2箇所に洗浄口を設けた構成例について説明したが2箇所以上の複数であってもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、挿入機器2の先端構成部15が位置決めされた状態を保持し、離間して配置された第1の洗浄口42aと第2の洗浄口42bから、互いに異なる方向(又は、異なる噴出角度)で先端構成部15の格納室28へ洗浄液63を噴出することにより、格納室28内に配設された揺動台31を含む種々の部位に対して、それぞれに高い送水力で直接的に洗浄液63を噴出させて洗浄を行うことができる。
このように、複数の箇所から異なる角度で噴出された洗浄液63は、直接的に洗浄対象部位に衝突するだけではなく、格納室28内に複雑な水流を発生させて、より効果的な洗浄を実現する。尚、異なる位置にある洗浄口からの分出角度は、同一であってもよい。
【0039】
また、意図せずに装着した洗浄具本体42が位置ずれまたは外れ出たとしても、筒状に先端構成部15を覆っており、第1の洗浄口42aと第2の洗浄口42bから噴出された洗浄液63a,63bは、洗浄具本体42の一部の内周面(壁面)に衝突し、長手軸方向に流れて排水トレイ61内に留まるため、直接、作業者には洗浄液63が掛かることはない。さらに、洗浄具本体42を水中内に沈めて洗浄を行うことで使用後の洗浄液63が水中内に排出され、先端構成部15が洗浄具本体42から外れ出たとしても、外部への使用後の洗浄液63の飛散を防止することができる。また、注入チューブ49と洗浄具本体42とを着脱構造とすることにより、種々の挿入機器の先端部の形状に合わせて洗浄具本体のみを作成すれば、汎用性の高い洗浄具として使用できる。
【0040】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る洗浄具本体の横断面構成を示す図である。本実施形態では、前述した第1の実施形態における先端構成部15の固定方式が異なるだけであり、これ以外の構成部位は、前述した第1の実施形態とは同等である。前述した第1の実施形態では、先端構成部15の位置決めを保持するために、揺動台31が起上されて、揺動台31の先端部を洗浄具本体42の平坦な内周面を保持面として当接させている。
【0041】
本実施形態では、
図7に示すように、洗浄具本体42の保持面の箇所に凸形状の係止部52mを形成して、起上された揺動台31の先端部が角部に掛かるようにする。この構成では、係止部52mの角部が第1の洗浄口42aと第2の洗浄口42bとの間に形成され、第2の洗浄口42bを含めた突起形状となっている。
この係止部52mの角部分に揺動台31の先端部を起上させて掛けることにより、先端構成部15が前進して、その先端面が位置決め壁52eに押しつけられることとなり、先端構成部15の位置決め状態が保持される。
【0042】
以上のように本実施形態の洗浄具は、前述した第1の実施形態の作用効果に加えて、挿入機器の先端構成部15が差し入れられて位置決めされた後に、揺動台31の先端部を起上させて係止部52mに掛けることで、係止部52mと位置決め壁52eの両側を押圧して掛かり、先端構成部15の位置決め状態を保持することができる。
【0043】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る挿入機器の洗浄具本体の外観構成を示す図である。本実施形態は、前述した第1,2の実施形態の洗浄具本体における軸方向規制部の形成位置を変更し、この軸方向規制部が前述した第2の実施形態における係止部としても利用される構成であり、洗浄具本体65の軸方向規制部65mの前後両側を、先端構成部15の開口部27の基端側のカバー部22aと、揺動台31の先端部で挟み持つことで位置決め状態を保持する。本実施形態において、位置決め状態の保持部位以外の構成は、前述した第2の実施形態と同等である。
【0044】
本実施形態の洗浄具本体65は、前後に開口する円筒形状を成し、外周面に注入チューブ49が連結する継ぎ手部65gが設けられている。継ぎ手部65g内の1つの流路65kが本体内部で2つの異なる角度の流路65i,65jに分岐され、それぞれの流路先端に第1,第2の洗浄口65a,65bが設けられている。第1,第2の洗浄口65a,65bは、先端構成部15の開口部27から格納室28内に対して、異なる噴出角度で格納室内に洗浄液63a,63bを噴出するように、各流路先端で本体内周面に間隔を空けて2箇所で開口するように設けられている。
図8において、第1の洗浄口65aから噴出される洗浄液63aは、先端構成部15の長手軸方向と直交する方向に噴出される例を記載している。
【0045】
洗浄具本体65の内周面上で、先端構成部15が装入口65cから差し込まれた際に、開口部27の基端側のカバー部22aが当接するように、突起形状の軸方向規制部65mが設けられている。この軸方向規制部65mの設置位置は、軸方向規制部65mの後端の角部にカバー部22aが当接した位置で、前述した第1の実施形態の第1,第2の洗浄口42a,42b(本実施形態では、洗浄口65a,65b)と同じ噴出角度で同等の格納室28内の位置に洗浄液63a,63bが噴出されるように設定される。また、前述した第2の実施形態における係止部52mと同様に、軸方向規制部65mの前方側の角部へ揺動台31の先端部を起上させて掛けると、先端構成部15が押されてカバー部22aにより押圧される。これにより、軸方向規制部65mの前後の角部がカバー部22aと揺動台31の先端部で挟まれた状態となり、洗浄具本体65が位置決めされた状態が保持されて先端構成部15に装着される。
【0046】
このように構成された本実施形態の洗浄具は、前述した第2の実施形態の作用効果に加えて、軸方向規制部65mを洗浄具本体65の前面から内部に移動しているため、先端構成部15の先端部を当接させる必要が無く、先端部を当接させることに適さない挿入機器であっても適用することができる。また、軸方向規制部65mは、後方側の角部に挿入機器2の開口部27の基端側のカバー部22aを当接させて位置合わせを行い、さらに前方側の角部に起上させた揺動台31の先端部を宛がうことで、軸方向規制部65mを挟み、先端構成部15の先端部の位置決め状態を保持させることができる。使用後の洗浄液63を排出する際に、洗浄具本体52の全前面が洗浄液63の排出の開口部となるため、洗浄液63の排出水量が増加しても対応することができる。
【0047】
[第4の実施形態]
図9は、第4の実施形態に係る挿入機器が装着された時の洗浄具本体の横断面を示す図である。本実施形態は、洗浄具本体の第1,第2の洗浄口から噴出される洗浄液63の圧力により、先端構成部15の先端部の位置決め状態を保持させる構成である。本実施形態において、洗浄具本体の流路72i,72j及び第1,第2の洗浄口72a,72b以外の構成は、前述した第1の実施形態と同等である。
【0048】
本実施形態の洗浄具本体72は、注入チューブ49が連結する洗浄液63の受給口となる継ぎ手部72g内の1つの流路72kが本体内部で2つの異なる角度の流路72i,72jに分岐され、それぞれの第1,第2の洗浄口72a,72bに送液する構成である。
【0049】
この例では、流路72iは、後方から斜め下方の前方に鋭角で向かう角度α1に設定され、流路72jは、同様に後方から斜め下方の前方に鋭角で向かい、角度α1よりも大きい角度β1(但し、90度未満)に設定される。本実施形態では、第1の洗浄口72aから洗浄液63aの噴出される方向と流路72iの長手軸方向とは同軸上にあり、噴出角度と角度α1は同じである。また、第2の洗浄口72bから洗浄液63bの噴出される方向と流路72jの長手軸方向とは同軸上にあり、噴出角度と角度β1は同じである。
【0050】
これらの第1,第2の洗浄口72a,72bから噴出された洗浄液63a,63bは、先端構成部15の格納室28の所定位置(第1の実施形態と同じ衝突位置)に衝突して、洗浄を行う。具体的には、第1の洗浄口72aから噴出された洗浄液63aは、格納室28の前方側面及び底面から揺動台31の裏面側の範囲に直接的に掛かり洗浄する。また、第2の洗浄口72bから噴出された洗浄液63aは、揺動台31の起上面及び格納室28の後方から底面及び揺動台31の起上軸32周りや牽引ワイヤ33の取り付け箇所等に直接的に掛かり洗浄する。
【0051】
このような構成により、本実施形態の洗浄具は、噴出された洗浄液63a,63bによる圧力が先端構成部15の格納室28を軸方向規制部72dへ押しつける方向に働き、先端構成部15の先端部を位置決めされた状態を保持する。
【0052】
また、洗浄液63bによる圧力の働く方向(角度β1)は、洗浄液63aによる圧力の働く方向(角度α1)よりも大きい角度である。つまり、異なる角度で洗浄液63a,63bを噴出させることにより、洗浄液63aによる圧力は、格納室28を軸方向規制部72dへ押しつける方向に働く力の割合が高く、洗浄液63bによる圧力は、格納室28を洗浄具本体の内周面側へ押しつける方向に働く力の割合が高くなっている。従って、洗浄液63aの圧力により軸方向規制部72dへ押し付けられ、洗浄液63bの圧力により、先端構成部15の浮き上がりを防止することができる。勿論、第1,第2の洗浄口72a,72bの噴出する方向については、角度は限定されるものではなく、設計により適宜変更される。噴出された洗浄液63a,63bによる圧力が先端構成部15の格納室28を軸方向規制部72dへ押しつける方向に働けば、鋭角であるα1とβ1とは、同一角度であってもよい。
【0053】
[第5の実施形態]
図10は、第5の実施形態に係る挿入機器が装着された時の洗浄具本体の横断面を示す図である。本実施形態は、前述した第4の実施形態と同様に、洗浄具本体の第1,第2の洗浄口から噴出される洗浄液63の送水力(圧力)により、先端構成部15の先端部の位置決め状態を保持させる構成である。本実施形態において、洗浄具本体の流路82i,82j及び第1,第2の洗浄口82a,82b以外の構成は、前述した第1の実施形態と同等である。
【0054】
本実施形態の洗浄具本体82は、洗浄液63の受給口となる継ぎ手部82g内の1つの流路82kが本体内部で2つの異なる角度の流路82i,82jに分岐され、それぞれの第1,第2の洗浄口82a,82bに送液する構成である。尚、流路82iの径の断面積が流路82jの径の断面積よりも大きく設定され、第1の洗浄口82aが噴出する時間当たりの洗浄液量[第1の送水量]は、第2の洗浄口82bの洗浄液量[第2の送水量]よりも多くなり、洗浄液63aによる送水力が洗浄液63bよりも大きくなるように設定されている。
【0055】
この例では、流路82iは、後方から斜め下方の前方に鋭角(長手軸の後方からの角度)で向かう角度α2に設定される。一方、流路82jは、前方から斜め下方の後方に鈍角で向かう角度β2(90度以上)に設定される。この例では、分岐した後、流路82iと流路82jは、(β−α)の角度差を有している。
図10において、第1の洗浄口82aから洗浄液63aの噴出される方向と流路82iの長手軸方向とは同軸上にあり、噴出角度と角度α2は同じである。また、第2の洗浄口82bから洗浄液63bの噴出される方向と流路82jの長手軸方向とは同軸上にあり、噴出角度と角度β2は同じである。
【0056】
これらの第1,第2の洗浄口82a,82bから噴出された洗浄液63a,63bは、先端構成部15の格納室28の洗浄対象部位に直接衝突して洗浄を行う。即ち、第1の洗浄口82aから噴出された洗浄液63aは、格納室28の前方側面及び底面から揺動台31の裏面側の範囲に直接的掛かり洗浄する。また、第2の洗浄口82bから噴出された洗浄液63bは、格納室28の後方側の底面及び揺動台31の起上軸32周りや牽引ワイヤ33の取り付け箇所等に直接的に掛かり洗浄する。
【0057】
このような構成により、本実施形態の洗浄具は、噴出された洗浄液63aと洗浄液63aの送水力の差分による圧力が先端構成部15の格納室28を軸方向規制部82dへ押しつける方向に働き、先端構成部15の先端部を位置決めされた状態を保持することができる。勿論、この位置決め状態の保持に必要な圧力に応じて、第1,第2の洗浄口82a,82bの噴出される洗浄液量(径の断面積)及び洗浄液63a,63bが噴出される方向は、設計により適宜変更される。尚、本実施形態及び第4の実施形態では、2つの洗浄口を設けた例について説明しているが、送水力の圧力によって先端構成部15の位置決め状態が保持され、格納室内を十分に洗浄することができるのであれば、洗浄口は、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0058】
[第6の実施形態]
図11Aは、第6の実施形態に係る挿入機器が装着された時の洗浄具本体の横断面を示す図、
図11Bは、洗浄具本体を後方から見た概念図である。本実施形態は、洗浄具本体92に装着された挿入機器の先端構成部15の位置決め状態を保持する保持部材93を設けた構成例である。本実施形態において保持部材以外の構成は、前述した第1の実施形態と同等である。
【0059】
図11Aに示すように、洗浄具本体92の後方には、装着された先端構成部15を左右両側から挟み持つ筒形状の保持部材93が嵌合されて取り付けられている。この保持部材93は、弾性部材を用いて、洗浄具本体92の後方の段差を設けられた取り付け部92nに嵌合される円筒部93aと、円筒部93aからテーパー状に広がる段差を経て開口面が楕円形状の保持部93bとで構成される。保持部93bは、狭まった辺(
図11Bの矢印93bの箇所)の両側からn方向に働く弾性力で先端構成部15を左右両側から挟持し、前述した実施形態における位置決めされた状態で先端構成部15を保持する。また、
図11Bに示す楕円形状の保持部93bにおける先端構成部15の上下に生じる彎月状の空隙93cは、洗浄液63の排出路として利用される。
【0060】
このような構成により、洗浄具本体92に位置決めされて装着された先端構成部15は、保持部材93により挟持されて位置決め状態が保持される。この保持された状態で、噴出された洗浄液63が洗浄対象部位へ直接的に衝突して洗浄が行われる。また、洗浄後の洗浄液63は、洗浄具本体92との間のクリアランスを通過して、保持部材93の空隙93cから排出される。
【0061】
また、意図しない状況下で、洗浄具本体92から先端構成部15が外れ出たとしても、洗浄具本体92と保持部材93により、噴出の進行方向が拡散されて、洗浄液63の勢いが弱まり、開口部92f及び空隙93cから外部に排出されるため作業者には、洗浄液63が掛かることはない。さらに、第1の実施形態と同様に、洗浄具本体84を水中内に沈めて洗浄を行うことで使用後の洗浄液63が水中内に排出され、外部に先端構成部15が洗浄具本体84から外れ出たとしても、外部への使用後の洗浄液63の飛散を防止することができる。
【0062】
[第7の実施形態]
図12は、第7の実施形態に係る洗浄具に用いるシリンジの外観構成を示す図、
図13Aは、挿入機器が装着された時の洗浄具本体の横断面を示す図、
図13Bは、挿入機器が装着された時の洗浄具本体を前方側から見た図、及び
図14は、洗浄具に挿入機器を装着して洗浄する状態を示す図である。
本実施形態は、前述した注入チューブ、シリンジ連結部、シリンジ及び吸引チューブにより構成された送液機構に代わって、
図12に示すシリンジ46と先細りノズル94とを用いている。
【0063】
本実施形態の洗浄具は、内部が円筒形状の中空を成す収納部を有する洗浄具本体101と、洗浄液63を供給するシリンジ46及び先細りノズル94からなる送液機構と、で構成される。
【0064】
洗浄具本体101は、先細りノズル94が着脱可能に差し込まれる洗浄液63の受給口となる継ぎ手部101g、101hと、継ぎ手部101g、101h内に形成される先細りノズル94の外形状に一致するガイド孔101i、101jと、ガイド孔101i、101jから先細りノズル94の先端を洗浄具本体101内に突出させるための開口部101a,101bとを有する。さらに、洗浄具本体101は、後方に先端構成部15を差し入れるための装入口101cが設けられ、前方には先端構成部15が当接する軸方向規制部101dが設けられ、内周面上方に先端構成部15の観察面25と対向する回転方向規制部101m及び、使用後の洗浄液63(63a,63b)が外部に排出されるための開口部101fが設けられている。軸方向規制部101d及び回転方向規制部101mは、移動規制部を構成し、先端構成部15を洗浄具本体101内の予め定めた装着位置に位置決めを行う。
【0065】
継ぎ手部101g、101hは、平行して洗浄液63が前方斜め上方から後方斜め下方に注入されるように、洗浄具本体101の長手軸に対して後方から角度γ(鈍角)に設定される。格納室28内の揺動台31は、起上されて先端部が洗浄具本体101の内周面に当接し、位置決めされた状態の先端構成部15を保持している。
【0066】
開口部101aは、差し込まれた先細りノズル94の先端が、起上された揺動台31の裏面側を通過した位置まで突出し、格納室28内の底面に洗浄液63が直接衝突する位置となるように、開口径が設定されている。同様に、開口部101bは、差し込まれた先細りノズル94の先端が揺動台31の牽引ワイヤ33の直前の位置まで突出し、格納室28内の起上軸32周りやその周辺部に洗浄液63が直接衝突する位置となるように、開口径が設定されている。
【0067】
また本実施形態では、
図13Bに示すように、継ぎ手部101gは、洗浄液63aが格納室28内に対して、垂直に噴出できるように、ガイド孔101iの先細りノズル94を保持する角度が設定されている。また、継ぎ手部101hは、洗浄液63bが格納室28内に対して、噴出した洗浄液63が内部を周回するように、ガイド孔101jの先細りノズル94を保持する角度が垂直より傾いた角度に設定されている。
【0068】
図14を参照して、洗浄具による挿入機器の洗浄について説明する。
洗浄具本体101に、先端構成部15を位置決めして装着し、排水トレイ61内に設置する。この時、排水トレイ61内に予め水等の液体を入れて、洗浄具本体101を沈めておけば、洗浄具本体101から排出された洗浄液63の勢いを弱くして、排水トレイ61の周囲に飛び散ることを防止することも可能である。
【0069】
次に、先細りノズル94の先端を容器に収納される洗浄液63内に入れて、プランジャ46aを引き、洗浄液63を吸引してシリンジ46内に収容する。先細りノズル94を継ぎ手部101gのガイド孔101iの開口から突き当たるまで差し入れて装着する。この時、他方のガイド孔101jの開口が密閉されるように、継ぎ手部101hを漏れ防止用キャップ95で密栓する。この密栓は、継ぎ手部101gから洗浄液63を注入した際に、ガイド孔101jに逆流して、継ぎ手部101hから溢れ出ないようにするために、使用される。
【0070】
次に、プランジャ46aをシリンジ46内に押し込み、収容している洗浄液63を先細りノズル94の先端から勢いよく格納室28内に噴出させる。噴出された洗浄液63aは、格納室28内の揺動台31の裏面側と格納室28の底面に直接的に衝突して洗浄を行う。この時、洗浄液63aは、揺動台31の表側(起上面側)や起上軸32周りや牽引ワイヤ33の取り付け箇所等に回り込み、洗浄する。洗浄後の洗浄液63aは、開口部101f及び、先端構成部15と洗浄具本体101の間のクリアランスを流れ出て、排水トレイ61内に排出される。尚、洗浄液63aは、クリアランスを流れ出る際に、先端構成部15の周辺部分を洗浄しながら、排水トレイ61に排出される。
【0071】
次に、シリンジ46を継ぎ手部101gから抜き取り、漏れ防止用キャップ95を継ぎ手部101hから継ぎ手部101gに移動させて密栓を行う。シリンジ46に新たな洗浄液63を吸引して収納した後、先細りノズル94を継ぎ手部101hに差し入れる。続いて、プランジャ46aをシリンジ46内に押し込み、洗浄液63bを先細りノズル94の先端から勢いよく格納室28内に噴出させる。
【0072】
噴出された洗浄液63bは、格納室28内の揺動台31の表側(起上面側)や起上軸32周りや牽引ワイヤ33の取り付け箇所等に直接的に衝突して洗浄を行う。また、この時、洗浄液63bは、揺動台31の裏面側に回り込んで洗浄する。洗浄後の洗浄液63bは、洗浄液63aと同様に、開口部101f及びクリアランスを流れ出て、排水トレイ61内に排出される。尚、洗浄液63bは、クリアランスを流れ出る際に、先端構成部15の周辺部分を洗浄しながら、排水トレイ61に排出される。
【0073】
尚、継ぎ手部101gと継ぎ手部101hとの間隔を同時に2本のシリンジが取り付けられる間隔に形成して、2本のシリンジの取り付けて、交互に、または同時にプランジャを押して洗浄することも可能である。但し、同時にプランジャを押す場合、2つのプランジャが片手で届く範囲でない、または排水トレイ61にシリンジ46が固定されていなければ、二人の作業者により行うこととなる。
【0074】
このような構成により、装着された先細りノズル94の先端が洗浄対象部位の直前まで容易に届くため、先細りノズル94から噴出された洗浄液63a,63bが揺動台31の裏側、また起上軸32周りや牽引ワイヤ33の取り付け箇所等を強力に洗浄することができる。また、洗浄具は、洗浄具本体101とシリンジ46のみの構成であり、低コストで実現することができる。
【0075】
[第8の実施形態]
図15Aは、第8の実施形態に係る洗浄具に用いるシリンジの外観構成を示す図、
図15Bは、シリンジが取り付けられる洗浄具本体の横断面を示す図である。
本実施形態は、前述した第7の実施形態において、洗浄液の送液機構がシリンジ46と先細りノズル94の組み合わせにより構成されていたが、本実施形態ではシリンジのみで構成される例である。
【0076】
図15Aに示すシリンジ102は、プランジャ102aと、比較的短い先細りの形状の先端部102bが一体的に取り付けられた筒本体(注射筒)とで構成される。洗浄具本体103は、前述した第7の実施形態における洗浄具本体101と同等な構成であり、継ぎ手部103g,103hのガイド孔103i,103jがシリンジ46の先端部102bの外形形状に合うように形成されている。
このような構成により、前述した第7の実施形態と同等の効果を奏することができ、さらに部品点数が減ることから、コストが低くなり、また構成部品の管理も容易になる。