(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、第2実施形態以降では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。なお、以下の実施形態で得られた衝撃吸収体は、自動車用内装材その他の産業資材に利用され、特に自動車のドアトリムの内側等に取り付け、衝突時のエネルギーを吸収して乗員を保護するなどの衝撃吸収体として好適なものである。
【0013】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る衝撃吸収体とその金型を示す正面断面図である。
【0014】
−全体構成−
図1に示すように、本実施形態では、下金型12と上金型14とで構成される衝撃吸収体成型用の金型(モールド)10を用いる。この金型10では、下金型12と上金型14とが開閉自在にヒンジ結合されている。下金型12は上部中央部に凹状の下型キャビティ16が形成され、上金型14はこの下型キャビティ16の上端開放部を閉塞する蓋体として形成されており、上金型14と下金型12とを閉じた状態では下型キャビティ16内の空間が上金型14で閉じられた状態になる。下型キャビティ16内の空間では、硬質ポリウレタンフォームを含む衝撃吸収体20が成型される。
【0015】
また、本実施形態では、下金型12の上部には真空成型法により予め下型キャビティ16の表面と同一形状に成型された離型フィルム18が設置されている。この離型フィルム18は下金型12の上端面に固定ピン(図示せず)により止められ、下金型12の上端面に配設されたフィルムエアーシール用パッキンと更にフィルム押え(何れも図示せず)とで挟持されて下金型12に強固に固定されている。かかる固定状態で数十回の繰り返しの脱型にてもフィルムのズレは生じず、また、脱型作業も容易に行うことができる。離型フィルム18を成型するには、フィルムの熱収縮などを考慮し、衝撃吸収材成型用の金型10とは別であるフィルム部材成型用金型を用いて成型することが好ましい。
【0016】
一方、下金型12の底部には、箱状の空気室Sが形成されており、この空気室Sには、圧力調整バルブ22を介装するエアー管24の一端が接続され、該エアー管24の他端は真空ポンプ等のエアー導入・吸引装置(不図示)と連結されている。この空気室Sと下型キャビティ16とは複数のエアー連通孔26によって連通されている。
【0017】
ここで、離型フィルム18は、衝撃吸収体20との分離性を良好にし、繰り返し使用が可能であるものが望ましい。即ち、衝撃吸収体20の成型品と分離するものには、プラスチック製フィルムとしてはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムがあるが、ポリエチレンフィルムは伸び、変形が起こり易く、数回の使用しかできない。これに対し、衝撃吸収体20との分離時に伸び、変形が少なく、かつ分離性の良いポリプロピレンのフィルムを使用することが上記の観点より好ましい。
【0018】
さらに、衝撃吸収体20に含まれる硬質ポリウレタンフォームは軟質ウレタンフォームと異なり、許容範囲を超えた力を加えると座屈変形、つまり破壊されてしまうものである。一方、離型時には硬質ポリウレタンフォームは内部の反応熱で膨張しており、金型10の側面を0.5〜1kg/cm
2 程度の力で押している。このような力で硬質ポリウレタンフォームを含む衝撃吸収体20が金型10の側面を押していても、本実施形態では、上記のように離型フィルム18を金型10に設置し、離型フィルム18と下型キャビティ16との間にエアー連通孔26から空気圧を加えることで、比較的スムーズに成型品が下金型12から上がってくる、つまり離型させることができる。
この離型フィルム18の厚さは0.3〜1.0mm、特に0.3〜0.6mmであることが好適である。0.3mmよりも薄いと十分な強度が維持できず、成型時に離型フィルム18が破損する場合がある。一方、1.0mmよりも厚くなると、製品寸法誤差が大きくなり、金型を大きめに作らざるを得ない問題が生じ、脱型時の離型フィルム18の変形が起こりにくくなり、また、成型品の形状によって複雑なものは離型フィルム18と下金型12が分離しにくくなる場合がある。
【0019】
また、離型フィルム18は、予め真空成型法によって成型しておくことが望ましい。なお、予め真空成型法によって成型しておくと、衝撃吸収対20を成型し、脱型した後に、離型フイルム18が元の状態に十分に追随し復元しやすい。
【0020】
また、真空成型法ではなく、プレス成型法により所定の形状に形成した場合、このプレス成型法では、雄型形状のコーナー部が局部的に押されて製造されることになるため、形状が完全に下型キャビティ16に沿うことがやや困難で、下金型12からの浮きが生じ易い。また、離型フィルムのコーナー部が破れ易く、耐久性が劣る。特に下型キャビティ16が深い形状の場合には狭い隙間を薄いフィルムがすべり、伸ばされることになるので、離型フィルム18が薄くなり易い。また、離型フィルム18に均等に力が加わることが好ましいが、フィルム厚が薄いため、上金型14が離型フィルム18を均等に押すことが困難となり、片当たりして、成型品に薄さがでたりキャビティ形状に合うものを製造することができない場合が考えられる。なお、真空成型法は公知の方法を採用し得るが、本実施形態では、例えばポリプロピレンフィルムを180〜200℃、15〜20秒間程度加熱したものを真空成型することがよい。
【0021】
−衝撃吸収体20の構成−
以上のような金型10で成型される衝撃吸収体20は、第1の衝撃吸収材20Aと、第2の衝撃吸収材20Bと、仕切部材20Cと、を備えている。
この衝撃吸収体20には、抜きテーパーを設けることが脱型を容易にし、押し上げる際にヘコミや傷等が生じることなく、抵抗力も少なくなるため好ましい。このため、衝撃吸収体20の厚さや大きさにより異なるが3°以上、特に3°〜5°の範囲にテーパー角度θを形成することが好適である。
【0022】
衝撃吸収体20の第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとは、それぞれ硬質ポリウレタンフォーム28A,28Bを含んでおり、好ましくはこれら硬質ポリウレタンフォーム28A,28Bを主成分として含んでいる。なお、「主成分」とは、第1の衝撃吸収材20A,第2の衝撃吸収材20Bを構成する構成成分のうち、全体の50%超含有されている成分を表し、第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bに硬質ポリウレタンフォーム28A,28B以外の不純物等が混じっていてもよい。
硬質ポリウレタンフォーム28A,28Bの原料となる硬質ポリウレタン発泡材料としては、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを主成分とし、更に触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤、その他の助剤を所望により配合したものを使用し得る。これらの成分としては硬質ポリウレタンフォーム28A,28Bの製造に通常使用する公知のものを使用でき、またその使用量も常用量とすることができる。また、第1の衝撃吸収材20A及び第2の衝撃吸収材20Bの圧縮応力は、主材として用いる硬質ポリウレタンフォームの圧縮応力を基準に調整することができる。前記硬質ポリウレタンフォームの圧縮応力は、原料となる硬質ポリウレタン発泡材料中に、原料やその他助剤の種類、含有量などで調整することができる。また、所望の圧縮応力を有する硬質ポリウレタン発泡材料は、市販されているものから適宜入手することができる。
【0023】
また、第2の衝撃吸収材20Bは、第1の衝撃吸収材20Aと圧縮応力が異なっている。
このように第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとで圧縮応力(圧縮破壊応力とも呼ばれる)が互いに異なれば、衝撃吸収性能が異なることになり、それぞれ求められる性能に応じて、衝撃吸収体20内の適切な箇所に配置される。すなわち、
図2(A)及び(B)に示されるように例えば車体前方は小柄で体重の軽い乗員が当たる傾向にあるため座屈荷重の小さい衝撃吸収性能、車体後方は大柄で体重の重い乗員が当たる傾向にあるため座屈荷重の大きい衝撃吸収性能が求められる場合、車体前後方向に対応して衝撃吸収材20Aと20Bとを配列する構成が望ましい。
なお、衝撃吸収性能は、圧縮応力以外に他のパラメータ(衝撃吸収材の材料(助剤など)の配合比)によっても変化し得るが、硬質ポリウレタンフォームに限っては、衝撃吸収性能は他のパラメータに比べて圧縮応力に大きく依存する。したがって、本実施形態では、圧縮応力のみに着目し、他のパラメータを無視して説明している。
【0024】
このような第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとの間には、仕切部材20Cが配置されている。
仕切部材20Cは、金型10とは別個独立したものであり、後述するように成型された第1の衝撃吸収材20A及び第2の衝撃吸収材20Bと一体的に脱型されるものである。このように仕切部材20Cを金型10にではなく、衝撃吸収体20に設けたことで、衝撃吸収体20の強度を維持することができる(不足しにくい)。また、仕切部材20Cがあることで第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとを同じ金型10で同時に成型できるので、生産性を高めることができる。
そして、本実施形態では、生産性をより高めるという観点や衝撃吸収材20Aと20Bとの接着性を高めるという観点から第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bと同じように硬質ポリウレタンフォームを含んでおり、好ましくは硬質ポリウレタンフォームを主成分として含んでいる。なお、「主成分」とは、仕切部材20Cを構成する構成成分のうち、全体の50%超含有されている成分を表し、仕切部材20Cに硬質ポリウレタンフォーム以外の不純物等が混じっていてもよい。
硬質ポリウレタンフォーム28A,28Bと同様に、仕切部材20Cに硬質ポリウレタンフォームの原料となる硬質ポリウレタン発泡材料としては、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを主成分とし、更に触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤、その他の助剤を所望により配合したものを使用し得る。これらの成分としては硬質ポリウレタンフォームの製造に通常使用する公知のものを使用でき、またその使用量も常用量とすることができる。
【0025】
さらに、本実施形態では、仕切部材20Cの衝撃吸収性能を第1の衝撃吸収材20Aの衝撃吸収性能に合わせて、仕切部材20Cの衝撃吸収性能が衝撃吸収体20全体の衝撃吸収性能に与える影響を抑制するという観点から、仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aとの圧縮(破壊)応力差が、仕切部材20Cと第2の衝撃吸収材20Bとの圧縮(破壊)応力差よりも小さくされている。具体的に、第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力をa(N/cm
2)とし、第2の衝撃吸収材20Bの圧縮応力をb(N/cm
2)とし、仕切部材20Cの圧縮応力をc(N/cm
2)としたとき|a−c|<|b−c|の関係式を満たすように、仕切部材20Cの圧縮応力が設定されている。好ましくは、仕切部材20Cの衝撃吸収性能が衝撃吸収体20の衝撃吸収性能に与える影響をより抑制するという観点から、仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aとの圧縮応力差が、第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力の±20%以内(|a−c|≦a×(20/100))となるように、仕切部材20Cの圧縮応力が設定されている。また、第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力(a)と、第2の衝撃吸収材20Bの圧縮応力(b)との差(Δ|a−b|)は、目的によって適宜決定されうるが、例えば、70%超98%以下(a×(70/100)<|a−b|≦a×(98/100))が好ましく、80%以上95%以下(a×(80/100)≦|a−b|≦a×(95/100))であることが更に好ましい。
また、第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力が第2の衝撃吸収材20Bの圧縮応力より大きい場合に、この圧縮応力の大きい第1の衝撃吸収材20Aに仕切部材20Cの圧縮応力を合わせることが好ましい。仕切部材20Cの保管時や金型10への挿入時に破損すること抑制できるためである。
なお、本実施形態の圧縮応力差は、例えば株式会社島津製作所製のオートグラフなどの圧縮試験機を用いて個々の圧縮応力を測定することで確認することができる。
【0026】
ここで、仕切部材20Cは、硬質ポリウレタンフォームを含んでいるので、上述したように衝撃吸収性能については他のパラメータは無視して圧縮応力のみに着目するが、圧縮応力について衝撃吸収性能に置き換えても説明する。
【0027】
図3は、仕切部材20Cの衝撃吸収性能と第1の衝撃吸収材20Aの衝撃吸収性能をそれぞれ示すグラフ図である。
【0028】
図3に示すように、荷重の値のうち、略一定となる衝撃吸収波形を示す仕切部材20Cの座屈荷重G1(kN)と第1の衝撃吸収材20Aの座屈荷重G2(kN)との差が、仕切部材20Cの座屈荷重G1(kN)と第2の衝撃吸収材20Bの座屈荷重(不図示)との差よりも小さくされており、且つ、座屈荷重G1(kN)前後で荷重が略一定となる衝撃吸収波形を示す仕切部材20Cの一定荷重領域のストローク(変位)の長さL1(m)と、座屈荷重G2(kN)前後で荷重が略一定となる衝撃吸収波形を示す第1の衝撃吸収材20Aの一定荷重領域のストロークの長さL2(m)との差が、座屈荷重G1(kN)前後で荷重が略一定となる衝撃吸収波形を示す仕切部材20Cの一定荷重領域のストロークの長さL1(m)と、座屈荷重(不図示)前後で荷重が略一定となる衝撃吸収波形を示す第2の衝撃吸収材20Bの一定荷重領域のストロークの長さ(不図示)との差よりも小さくされている。
また、仕切部材20Cの座屈荷重G1(kN)が、第1の衝撃吸収材20Aの座屈荷重G2(kN)の±20%以内となっており、且つ、座屈荷重G1(kN)のときに波形が略一定となる仕切部材20Cの一定荷重領域のストロークの長さL1(m)が、第1の衝撃吸収材20Aの一定荷重領域のストロークの長さL2(m)の±20%以内となっていることが好ましい。
長さL1(m)及びL2(m)についてより具体的に説明すると、仕切部材20Cに荷重を与えたときに、当該荷重により圧縮するストロークに対する荷重を表す第1の波形P1、及び、第1の衝撃吸収材20Aに仕切部材20Cと同じように荷重を与えたときに、当該荷重により圧縮するストロークに対する荷重を表す第2の波形P2において、第1の波形P1におけるストロークに対する荷重が連続して±20%以内にあるストロークの長さL1(m)が、第2の波形P2におけるストロークに対する荷重が連続して±20%以内にあるストロークの長さL2(m)に対して±20%以内となっていることが好ましい。
【0029】
図1に戻って、仕切部材20Cの厚さは、10mm以上50mm以下であることが好ましい。10mm以上であると成型がし易くなり、耐久性も向上するからである。また、50mm以下であると材料費を低減でき、さらに衝撃吸収体20の衝撃吸収性能に与える影響を抑制できるからである。さらにまた、衝撃吸収体20の衝撃吸収性能に与える影響を抑制できるという観点から、仕切部材20Cの厚さは、30mm以下であることがより好ましい。
例えば、
図1においては、仕切部材20Cの紙面左右方向の厚みの平均値が上記範囲内であることが好ましい。
【0030】
さらに、仕切部材20Cの形状は特に限定されないが、コストを抑制するという観点から板状部材とされていることが好ましく、金型10に対する抜き差しが容易という観点やモールドで仕切部材20Cを形成する場合脱型が容易(抜きテーパーにより脱型する)という観点から板状部材でも台形とされていることがより好ましい。また、取扱が容易という観点から板状部材でも表面が平らであることが好ましい。
さらにまた、仕切部材20Cの形状が板状部材の場合、仕切部材20Cが第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bと同様に硬質ポリウレタンフォームを含んでいるため、他の樹脂を用いた場合などと比べてもともと仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力(衝撃吸収性能)が近く、仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力(衝撃吸収性能)を合わせようとしても、圧縮応力に対する仕切部材20Cの厚みの影響を気にする必要がない。したがって、他の樹脂を用いた場合などと比べて仕切部材20Cに厚みをもたせることができ(厚くすることができ)、取扱い易く且つ金型10に入れ易くなり、生産性が高くなる。
また、第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとを区分する仕切部材20Cは、上金型14に接触するほど上方まで延設され、第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとを区分する形状であることが望ましい。すなわち仕切部材20Cによって下型キャビティ16内部を完全に2分割することで、第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bの原料となる硬質ポリウレタン発泡材料同士が混じり合うことを抑制し、衝撃吸収性能の安定した衝撃吸収体20とすることができる。
【0031】
図4は、第1実施形態に係る下金型12の下型キャビティ16と、仕切部材20Cとの関係を示した図である。
【0032】
下型キャビティ16には、仕切部材20Cが嵌合する支持溝30が引き抜き方向に設けられている。支持溝30は仕切部材20Cの位置決めと保持を行い、
図4(A)に示すように引き抜き方向にテーパーが付いていても(d1<d2)よい。また、離型のし易さを考慮し支持溝30の幅が仕切部材20Cより大きく、仕切部材20Cとの間に間隙が設けられていてもよい。さらに、第1の衝撃吸収材20A及び第2の衝撃吸収材20Bの2種類のみならず3種類以上の衝撃吸収材を使用することもできる。この場合は複数の仕切部材20Cが必要となるので、支持溝30もまた仕切部材20Cと同数が必要となる。
【0033】
衝撃吸収体20を下金型12より取り出す際には仕切部材20Cが支持溝30に沿って引き抜き方向に引き抜かれるので、引き抜き工程の邪魔になる虞はなく、また支持溝30の引き抜き方向にテーパーがついていれば更に引き抜きが容易となる。
また、上述したように仕切部材20Cが硬質ポリウレタンフォームを含んでいるため、樹脂製に比べて厚みをもたせることができ、仕切部材20Cの形状によっては、支持溝30の深さを浅くでき、さらに仕切部材20Cが複雑な形状(板状であっても表面がV字形状など)であれば支持溝30が無くても自立することができる。支持溝30が不要となれば、金型10の汎用性が高まり、もって生産性が高くなる。
【0034】
−衝撃吸収体20の製造方法−
以下、金型10を用いた衝撃吸収体20の製造方法について説明する。
図5は、本発明の第1実施形態に係る衝撃吸収体20の製造工程図である。
【0035】
本実施形態では、予め、仕切部材20Cを成型しておく。仕切部材20Cを成型するには、モールド成型やスラブ成型などを用いることができる。
【0036】
そして、成型した仕切部材20Cを下金型12内に配置することにより、金型10内の下型キャビティ16を少なくとも2区画に区分する配置工程を行う。
その際、エアー導入・吸収装置で空気吸引して離型フィルム18を下型キャビティ16に沿った成型開始前の形状(
図1、
図5(A)参照)にしておき、この離型フィルム18の上側に仕切部材20Cを配置する。
【0037】
次に、上述した仕切部材20Cを配置したまま第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bと一体的に成型する成型工程を行う。
この成型工程では、具体的に、
図5(A)に示すように、2区画の一方の区画に第1の硬質ポリウレタン発泡材料、2区画の他方の区画に第2の硬質ポリウレタン発泡材料をそれぞれ入れて、上金型14を閉じる。そして、注入した硬質ポリウレタン発泡材料をそれぞれ発泡させて膨張させる。
【0038】
最後に、第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bと仕切部材20Cとを一体的に衝撃吸収体20として金型10から離型する離型工程を行う。
具体的に、成型工程で膨脹が終了した段階で上金型14を型開きし、エアー導入・吸引装置を作動させ、エアー管24、空気室S、及びエアー連通孔26(
図1参照)を介して、離型フィルム18と下型キャビティ16との間隙Nにエアーを吹き込み、
図5(B)に示すように、成型品を構成する衝撃吸収体20を仕切部材20Cと共に押し上げる。
【0039】
その際、離型フィルム18は端部のみ下金型12に固定されているので、空気圧で離型フィルム18と衝撃吸収体20とが押し上げられ、このときに離型フィルム18が衝撃吸収体20から分離することになる。所定量の空気を入れると所定位置で離型フィルム18の浮き上がりが止まり、衝撃吸収体20が金型10から離型(脱型)される。
【0040】
離型(脱型)の際の空気圧は0.5kg/cm
2以上、特に1〜5kg/cm
2 であることが好ましい。なお、成型品の形状や大きさにより異なるが、空気圧5kg/cm
2付近にまで高めれば、ほとんどの形状の成型品を離型させることができる。また通常は、間隙Nに注入される流体は空気を用いるが、空気に替えて水などの液体を用いてもよい。さらに、離型フィルム18を用いず何らかの吸着手段を使用し、または人手で脱型させてもよいことは言うまでもない。
【0041】
その後、エアー導入・吸引装置を作動させて離型フィルム18と下型キャビティ16との間のエアーを吸引すると、離型フィルム18は予め真空成型されているので容易に元の形状に戻ることができ、下型キャビティ16面上に再設置されて、離型フィルム18の再使用が可能となる。従って、効率よく確実にキュア時間を縮めることが可能となり、一回の成型にかかるモールド使用時間を短縮して単位時間当りの成型回数を増やし生産性を上げることができる。また、エアーにより、成型品である衝撃吸収体20を全体的に均等に押し上げることができるため、衝撃吸収体20に無理な力がかからず、特に80℃±10℃でのキュア時間を効果的に縮めることができ、これによりモールド使用時間を短縮して単位時間当たりの成型回数を約30%も増やして生産性を上げることができる。
【0042】
−効果−
ここで、従来では、例えば
図12及び
図13に示すように、下金型12に当該下型12と同様の材質の仕切部材Aを一体的に設け、仕切部材Aで区切られた各区分に複数の異なる材料を供給することによって、異なる圧縮応力をもつ複数の衝撃吸収材を一体成形して衝撃吸収体を製造している。
このような構成であると、仕切部材Aの高さが高い場合、
図13(A)のように衝撃吸収体に形成される凹部Cが深くなり、
図13(B)に示すように脱型時或いは成型後の使用時に境界部分となる箇所の強度が不足して脆弱部Bとなり、
図13(C)のように破損する虞がある。また
図12(A)のように仕切部材Aの高さが不足すれば
図12(B)に示すように発泡原料(硬質ポリウレタン発泡材料など)の投入条件等によっては、複数種の硬質ポリウレタン発泡材料を投入しても両者の境界が一定とならず、衝撃吸収体としての性能(弾性、硬度、およびその分布)が製品毎に安定しにくくなる虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、以上で説明したように、仕切部材20Cが、第1の衝撃吸収材20A及び第2の衝撃吸収材20Bと一体的に衝撃吸収体20として脱型されるものである。このように仕切部材20Cを金型10にではなく、衝撃吸収体20に設けたので、衝撃吸収体20の強度を保つことができる(不足しない)。また、仕切部材20Cがあることで第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとが混じることなく同じ金型10で同時に成型できるので、生産性を高めることができる。
【0044】
また、仕切部材20Cは、第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bと同じように硬質ポリウレタンフォームを含んでいるので、第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bと異なる材料で構成する場合に比べて、生産性をより高めることができる。 さらに、硬質ポリウレタンフォームは自己接着性を有しているため、仕切部材20Cと、第1の衝撃吸収材20A及び第2の衝撃吸収材20Bとの接着性を高めることができる。
【0045】
また、仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aとの圧縮(破壊)応力差が、仕切部材20Cと第2の衝撃吸収材20Bとの圧縮(破壊)応力差よりも小さくされているので、仕切部材20Cの衝撃吸収性能が第1の衝撃吸収材20Aの衝撃吸収性能に合うことに繋がり、仕切部材20Cの衝撃吸収性能が衝撃吸収体20全体の衝撃吸収性能に与える影響を抑制することができる。
【0046】
また、仕切部材20Cの形状が板状部材の場合、仕切部材20Cが第1の衝撃吸収材20Aや第2の衝撃吸収材20Bと同様に硬質ポリウレタンフォームを含んでいるため、樹脂製などと比べてもともと仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力(衝撃吸収性能)が近く、仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aの圧縮応力(衝撃吸収性能)を合わせようとしても、圧縮応力に対する仕切部材20Cの厚みの影響を気にする必要がない。したがって、樹脂製などと比べて仕切部材20Cに厚みをもたせることができ(厚くすることができ)、取扱い易く且つ金型10に入れ易くなり、生産性が高くなる。
【0047】
また、下金型12に離型フィルム18を取り付け、衝撃吸収体20を下金型12から離型させる際に、離型フィルム18と下型キャビティ16の表面との間を空気で加圧することで仕切部材20Cを離型フィルム18から分離させている。これにより、衝撃吸収体20の外形形状が複雑であっても、金型からの離型が容易である。
【0048】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る衝撃吸収体とその金型を示す正面断面図である。
【0049】
−構成−
図6に示すように、本実施形態においても第1実施形態と同様、下金型12と上金型14とで構成される衝撃吸収材成型用の金型(モールド)10を用いる。以下、第1実施形態と同様の部分は記載を省略する。
【0050】
金型10で成型される第2実施形態に係る衝撃吸収体100は、硬質ポリウレタンフォーム28Aを含む第1の衝撃吸収材100Aと、硬質ポリウレタンフォーム28Bを含む第2の衝撃吸収材100Bと、仕切部材100Cを一部構成とした囲み部材102とで構成される。第1の衝撃吸収材100Aは表面の少なくとも一部を囲み部材102で被覆される一方で、第1の衝撃吸収材100Aと第2の衝撃吸収材100Bとの間を区分する位置に囲み部材102の仕切部材100Cが設けられ、衝撃吸収体100の内部を第1の衝撃吸収材100Aと第2の衝撃吸収材100Bとに区分されている。
【0051】
囲み部材102は、例えば
図7に示すような所謂バスタブ形の容器形状でよく、下金型12の内面に沿ってこれと接する露出部材100Dと、下型キャビティ16内部を複数区画に区分する仕切部材100Cとを備え、液状の硬質ポリウレタン発泡材料を注入する方向(上)が開いた容器形状として成型される。
また、囲み部材102と第1の衝撃吸収材100Aとの圧縮(破壊)応力差が、囲み部材102と第2の衝撃吸収材100Bとの圧縮(破壊)応力差よりも小さくされている。第1実施形態と同様に、囲み部材102の衝撃吸収性能を第1の衝撃吸収材100Aの衝撃吸収性能に合わせて、囲み部材102の衝撃吸収性能が衝撃吸収体100全体の衝撃吸収性能に与える影響を抑制するためである。
また、第2の衝撃吸収材100Aの衝撃吸収性能に与える影響を抑制するという観点から、囲み部材102の露出部材100Dは、囲み部材102の衝撃吸収性能を合わせる側である第1の衝撃吸収材100A側に配置されている。
【0052】
−製造方法−
以下、金型10を用いて衝撃吸収体100を製造することについて説明する。
【0053】
本実施形態では、予め、下金型12のキャビティ形状に沿った外形の囲み部材102を成型しておく。囲み部材102は本実施形態では硬質ポリウレタンフォームを含んでいる。囲み部材102を成型するには、離型フィルム18を成型する際に用いた金型で真空成型法により成型する。別の金型でも成型は可能だが、この場合は同じ金型を用いることができるので、新たに金型を設ける必要がなく、コスト・工数などを削減することができる。
【0054】
成型された囲み部材102を下金型12内に配置する。その際、エアー導入・吸収装置で空気吸引して離型フィルム18を下型キャビティ16に沿った成型開始前の形状(
図6参照)にしておき、この離型フィルム18の上側に囲み部材102を配置する。
【0055】
このとき囲み部材102の一方の壁として設けられ、第1の衝撃吸収材100Aと第2の衝撃吸収材100Bとを区分する仕切部材100Cは、
図6に示すように上金型14に接触するほど上方まで延設され、衝撃吸収材100A,100Bを完全に区分する形状であることが望ましい。すなわち仕切部材100Cによって下型キャビティ16内部を完全に2分割することで、第1の衝撃吸収材100Aと第2の衝撃吸収材100Bの原料となる硬質ポリウレタン発泡材料同士がより混じり合わず、衝撃吸収性能の安定した衝撃吸収体100とすることができる。
【0056】
さらに、破壊応力の異なる液状の硬質ポリウレタン発泡材料を下金型12内の下型キャビティ16を2分割する仕切部材100Cの両側に注入し、上金型14を閉じる。
【0057】
そして、注入した硬質ポリウレタン発泡材料を発泡させて膨張させる。膨脹が終了した段階で上型を型開きし、エアー導入・吸引装置を作動させ、エアー管24、空気室S、及びエアー連通孔26を介して、離型フィルム18と下型キャビティ16との間隙Nにエアーを吹き込み、成型品を構成する衝撃吸収体100を囲み部材102と共に押し上げる。
【0058】
その際、離型フィルム18は端部のみ下金型12に固定されているので、空気圧で離型フィルム18と衝撃吸収体20とが押し上げられ、このときに離型フィルム18が囲み部材102および囲み部材102で被覆されていない第2の衝撃吸収材100Bから分離することになる。所定量の空気を入れると所定位置で離型フィルム18の浮き上がりが止まり、衝撃吸収体100が金型10から離型(脱型)される。
【0059】
その後、エアー導入・吸引装置を作動させて離型フィルム18と下型キャビティ16との間のエアーを吸引すると、離型フィルム18は予め真空成型されているので容易に元の形状に戻ることができ、下型キャビティ16面上に再設置されて、離型フィルム18の再使用が可能となる。
【0060】
−効果−
以上説明したように、本実施形態では、下型キャビティ16に沿った外形を有する囲み部材102を予め成型する。
【0061】
従って、囲み部材102を予め成型せずに離型フィルム18の上側に単純形状の囲み部材を配置して硬質ポリウレタン発泡材料を注入して衝撃吸収体を成型した場合に比べ、たとえ第1の衝撃吸収材100Aの表面形状が複雑であっても、囲み部材102が第1の衝撃吸収材100Aの意図した位置、形状に容易に高精度で配置されて第1の衝撃吸収材100Aを形成し、しかも第1の衝撃吸収材100Aを被覆する囲み部材102が剥がれ難い衝撃吸収体100とすることができる。
すなわち、第1の衝撃吸収材100Aが比較的単純な形状であれば成型後に囲み部材102を貼付する方法も考えられるが、第1の衝撃吸収材100Aが複雑な表面形状であった場合、この表面に囲み部材102を正しく貼付することは工数、工作精度等の点から難しいのに対して、上記のように本発明に係る製造方法を用いることによって、複雑な表面形状の第1の衝撃吸収材100Aであっても所望の位置に囲み部材102を設けることができる。
【0062】
そして、囲み部材102を成型する際に真空成型で成型しているので、囲み部材102の外形が複雑な形状であっても容易に製造することができる。また、囲み部材102を成型する金型として、離型フィルム18を成型した金型を用いることができる。従って、新たに金型を設置する必要がない。
【0063】
さらに、囲み部材102が第1の衝撃吸収材100A及び第2の衝撃吸収材100Bと一体的に衝撃吸収体20として脱型されるので、囲み部材102がない場合に比べて、衝撃吸収体100の強度を保つことができる(不足しない)。また、囲み部材102があることで第1の衝撃吸収材100Aと第2の衝撃吸収材100Bとを同じ金型10で同時に成型できるので、生産性を高めることができる。
【0064】
また、囲み部材102は、第1の衝撃吸収材100Aや第2の衝撃吸収材100Bと同じように硬質ポリウレタンフォームを含んでいるので、第1の衝撃吸収材100Aや第2の衝撃吸収材100Bと異なる材料で構成する場合に比べて、生産性をより高めることができる。さらに、硬質ポリウレタンフォームは自己接着性を有しているため、囲み部材102と、第1の衝撃吸収材100A及び第2の衝撃吸収材100Bとの接着性を高めることができる。
【0065】
また、囲み部材102と第1の衝撃吸収材100Aとの圧縮(破壊)応力差が、囲み部材102と第2の衝撃吸収材100Bとの圧縮(破壊)応力差よりも小さくされているので、囲み部材102の衝撃吸収性能が第1の衝撃吸収材100Aの衝撃吸収性能に合うことに繋がり、囲み部材102の衝撃吸収性能が衝撃吸収体100全体の衝撃吸収性能に与える影響を抑制することができる。ただし、囲み部材102は仕切部材100C以外に露出部材100Dを含んでいるため、第1実施形態に比べて、衝撃吸収体100の体積全体に占める第1の衝撃吸収材100Aの体積が小さくなる。したがって、第1実施形態で説明したように、露出部材100Dを省略して仕切部材20Cのみとした方が好ましい。
【0066】
また、衝撃吸収体100を成型する際に囲み部材102の内側に硬質ポリウレタン発泡材料を注入しており、第1の衝撃吸収材100Aは囲み部材102の内側に成型される。従って、第1の衝撃吸収材100Aの表面から硬質ポリウレタンフォームの粉落ち現象を低減することができる。
【0067】
[変形例]
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わせて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0068】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、下金型12に離型フィルム18を設けて、離型フィルム18により脱型する場合を説明したが、吸着手段や人手で脱型する場合は、離型フィルム18を省略することができる。この場合、必要に応じて下型キャビティ16の表面に離型剤を塗布しておいてもよく、また、下型キャビティ16の表面にフッ素樹脂コーティングしておくことも可能である。
【0069】
また、硬質ポリウレタンフォーム28A、28B(100A,100B)の2種類のみならず3種類以上の硬質ポリウレタンフォームを使用することもできる。この場合は複数の仕切部材20C(100C)を用意する。
【0070】
図8は 第1実施形態の他の形態に係る下金型12の下型キャビティ16と、仕切部材20Cとの関係を示す図である。
図8(A)に示すように、本形態は離型フィルム18に支持部200と支持溝202を設けて仕切部材20Cを保持する。硬質ポリウレタン発泡材料を仕切部材20Cで区分された下型キャビティ16内に注入し、発泡させて膨張させ、第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bと一体的に成型し、仕切部材20Cと合わせて下金型12より取り出すことで衝撃吸収体20とする。
このとき支持溝202だけでは仕切部材20Cの支持と位置決めが難しい場合には、例えば仕切部材20Cの第1の衝撃吸収材20A側にのみ脚部204を設け、下型キャビティ16内に配置した際に自立できる構造とされていてもよい。なお、第1の衝撃吸収材20A側にのみ脚部204を設け、第2の衝撃吸収材20B側に脚部を設けないようにしたのは、第2の衝撃吸収材20Bの衝撃吸収性能に影響を与えないようにするためである。
支持溝202は離型フィルム18の内面において、支持部200の間に設けられた引き抜き方向の溝であり、引き抜き方向にテーパーがついていてもよく、また支持部200の内面形状も同様にテーパーがついていてもよい。
この構造とすることにより下金型12には
図4に示すような支持溝30を設ける必要がなく、専用に下金型12を用意する必要がない。このため下金型12を流用できるのでコストを低減でき、また製造ラインの変更を迅速かつ容易に行うことができる。
【0071】
図9は、第1実施形態の他の形態に係る下金型12の下型キャビティ16と、仕切部材20Cとの関係を示す図である。
図9に示すように、本形態は離型フィルム18を下金型12の下型キャビティ16に設け、衝撃吸収体20を下金型12より取り出し易くした構成であり、さらに離型フィルム18に支持部300と支持溝302を設けて仕切部材20Cを保持する。支持溝302は
図8に示した構造とは異なり、離型フィルム18の深さ方向(引き抜き方向)にわたって設けられており、仕切部材20Cを保持しながら位置決めを行う。さらに
図8と同様に、硬質ポリウレタン発泡材料を仕切部材20Cで区分された下型キャビティ16内に注入し、発泡させて膨張させ、仕切部材20Cを一体的に取り込んだ第1の衝撃吸収材20Aと第2の衝撃吸収材20Bとからなる衝撃吸収体20を成型し、下金型12より取り出すことで衝撃吸収体20とする。
このとき仕切部材20Cは両端を保持されているので、確実に所望の位置で保持され且つ下型キャビティ16内部での位置精度も保たれる。支持溝302は離型フィルム18の内面において、引き抜き方向に設けられた溝であり、
図9(B)に示すように引き抜き方向にテーパーがついていてもよく、また支持部300の形状も同様にテーパーがついていてもよい。
この構造とすることにより下金型12には
図4に示すような支持溝30を設ける必要がなく、専用に下金型12を用意する必要がない。このため下金型12を流用できるのでコストを低減でき、また製造ラインの変更を迅速かつ容易に行うことができる。
【0072】
また、第2実施形態の囲み部材102の形状も、所謂バスタブ状の容器形状以外の形状であってもよい。
図10は、第2実施形態の他の形態に係る囲み部材400を示す図である。
図10(A)に示すように、囲み部材400は仕切部材100Cの両側面が空いており単純な帯状の形状とされ、これにより成型された衝撃吸収体20は、
図10(B)に示すように表面積において囲み部材400で被覆された部分の占める割合の少ない形状とされる。
この構成によれば、囲み部材400を
図10(A)のように単純な一枚板を折り曲げた形状とすることで加工を容易なものとし、また露出した部分と囲み部材400で被覆された部分との衝撃吸収性能の差を小さくしたい場合に、例えば
図10(B)のように囲み部材400に拘束される部分のうち2面が露出部材100Dとされるため、両者の衝撃吸収性能を近付けることができる。これにより、求められる衝撃吸収性能の差によって第2実施形態と本形態、あるいは
図10(C)に示すように下金型12に接する1面のみを空けた両実施形態の中間形状などから任意の形状を性能に応じて適宜選択することができ、所望の衝撃吸収性能を備えた衝撃吸収体とすることができる。
【0073】
また、第1実施形態や第2実施形態では真空成型された離型フィルム18を下金型12にしか配設していないが、上金型14にも同様にポリプロピレンフィルムを配設することができる。特に上金型14にキャビティを有し、そのキャビティ形状が複雑な場合では、上金型14のキャビティと同形状に真空成型した離型フィルムを配設することが好ましい。
【0074】
また、第1実施形態では、
図4(A)に示すように仕切部材20Cの表面が平らの板状部材である場合を説明したが、仕切部材20C(硬質ポリウレタンフォーム)の自己接着性のみでは、接着性が足りない場合には、
図11に示すように、仕切部材20Cの表面の中で第1の衝撃吸収材20A側にのみ凹凸部500を有するようにしてもよい。このようにすることで、仕切部材20Cと第1の衝撃吸収材20Aとの接着面積を増やすことができる。
また、直接接着性を高めるという観点から、仕切部材20Cと、第1の衝撃吸収材20A及び第2の衝撃吸収材20Bとの間の少なくとも一方に、仕切部材20Cの自己接着性よりも接着力の高い接着層(不図示)を備えるようにしてもよい。
【0075】
なお、本発明の使用例としては、車室と、車室の内部に配置された衝撃吸収体20(又は100)と、を備える自動車が挙げられる。例えば
図2(A)に示すように自動車の乗員はその体格によって最適なシートポジションが異なるが、主として車体前後方向にシートをスライドさせて最適なポジションを得ている。
【0076】
この時、体格の大きい乗員P1はシートを車体後方に、体格の小さい乗員P2はシートを車体前方に調整するが、身体の大きく体重の重い人には吸収エネルギーが大きく、身体の小さく体重の軽い乗員には衝撃吸収材は吸収エネルギーが小さいこと望ましい。このため、
図2(A)、(B)に示すように車体前後方向で衝撃吸収性能(変位/入力の関係)の異なる複数種類の衝撃吸収材を一体成形する必要がある。本発明の構成を適用することで、上記の要求を好適に満たす衝撃吸収体20(又は100)とすることができる。
【0077】
また、
図2(A)に示すように衝撃吸収体20(又は100)が設けられる面は車内の側壁であっても、あるいは天井などの内面であってもよく、また場所による衝撃吸収性能の変化は
図2(A)に示す方向に限らず、分布の異なるものを複数配置するなど種々の応用が考えられる。