(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一及び第二の回転軸の回転を相互に伝達するように第一及び第二の回転軸の間に配されて当該第一及び第二の回転軸を相互に連結する軸連結機構であって、第一の回転軸の回転により回転される一方、回転により第一の回転軸を回転させるように第一の回転軸に連結される第一の連結基体と、第二の回転軸の回転により回転される一方、回転により第二の回転軸を回転させるように第二の回転軸に連結される第二の連結基体と、軸方向における第一の連結基体及び第一の回転軸間と軸方向における第二の連結基体及び第二の回転軸間とのうちの少なくとも一方の間で規定されると共に軸方向における長さが可変である隙間と、第一及び第二の回転軸のうちの一方の回転軸との間で前記隙間を規定する第一及び第二の連結基体のうちの一方の連結基体が当該一方の回転軸に対して当該隙間の軸方向の長さを減少する軸方向に所定量移動した後に当該一方の連結基体を当該一方の回転軸に対して相対的に軸方向に不動となるように当該一方の回転軸に接触する接触面並びに当該一方の連結基体が当該一方の回転軸に対して当該隙間の軸方向の長さを減少する軸方向に所定量移動した後に第一及び第二の連結基体のうちの他方の連結基体を当該一方の回転軸に対して相対的に回転方向に不動となるように当該一方の回転軸に接触する接触面のうちの少なくとも一方の接触面と、前記隙間に配される弾性部材とを具備しており、第一の連結基体は、第一の回転軸の回転により回転される一方、回転により第一の回転軸を回転させるように第一の回転軸に連結される第一の基部と、この第一の基部の軸方向の一方の面に形成されていると共に回転方向において互いに逆方向に傾斜した少なくとも一対の第一のカム面とを具備しており、第二の連結基体は、第二の回転軸の回転により回転される一方、回転により第二の回転軸を回転させるように第二の回転軸に連結される第二の基部と、この第二の基部の軸方向の一方の面に形成されていると共に回転方向において互いに逆方向に傾斜して該少なくとも一対の第一のカム面に相補的な形状を有しており、且つ、当該少なくとも一対の第一のカム面に対して回転方向において相対的に滑り移動自在に該少なくとも一対の第一のカム面に接触した一対の第二のカム面とを具備しており、前記一方の連結基体は、一対の第一のカム面に対する一対の第二のカム面の相対的な滑り移動で当該少なくとも一方の連結基体に連結される第一及び第二の回転軸のうちの少なくとも一方の回転軸に対して軸方向に移動して当該隙間の軸方向の長さの増減を生じさせるべく、当該少なくとも一方の回転軸に対して軸方向に可動に連結されるようになっており、弾性部材は、当該隙間の軸方向の長さの増減で弾性的に伸縮されるように、当該隙間に配されている軸連結機構。
第一の連結基体は、第一の回転軸の軸方向の端部に一体的に形成された嵌合突起が嵌合すると共に第一の基部に形成された嵌合凹所を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの一方における回転は、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっている請求項1に記載の軸連結機構。
第一の連結基体は、第一の回転軸の軸方向の端部に形成された嵌合凹所に嵌合すると共に第一の基部に一体的に形成された嵌合突起を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの一方における回転は、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっている請求項1又は2に記載の軸連結機構。
第二の連結基体は、第二の回転軸の軸方向の端部に一体的に形成された嵌合突起が嵌合すると共に第二の基部に形成された嵌合凹所を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの一方の回転は、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっている請求項1から3のいずれか一項に記載の軸連結機構。
第二の連結基体は、第二の回転軸の軸方向の端部に形成された嵌合凹所に嵌合すると共に第二の基部に一体的に形成された嵌合突起を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの一方の回転は、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載の軸連結機構。
互いに相対的に滑り移動自在に接触した一対の第一のカム面と一対の第二のカム面とは、第一の基部に対する第二の基部の相対的な回転で、弾性部材の弾性力に抗しつつ相対的に滑り移動して第一の基部に対して第二の基部を相対的に軸方向に離反させるようになっている請求項1から5のいずれか一項に記載の軸連結機構。
第一の基部に対する第二の基部の相対的な軸方向の離反距離は、第一のカム面及び第二のカム面の傾斜角と第一の基部に対する第二の基部の相対的な回転量とに依存している請求項6に記載の軸連結機構。
一対の第一のカム面は、軸方向に対して交差した第一の平坦面を回転方向において間にして配されており、一対の第二のカム面は、軸方向に対して交差した第二の平坦面を回転方向において間にして配されている請求項1から7のいずれか一項に記載の軸連結機構。
第一の基部は、第一の回転軸に軸方向に相対的に移動自在に連結されるようになっており、第二の基部は、第二の回転軸に軸方向に不動に連結されるようになっている請求項1から8のいずれか一項に記載の軸連結機構。
第一の基部は、第一の回転軸に軸方向に不動に連結されるようになっており、第二の基部は、第二の回転軸に軸方向に相対的に移動自在に連結されるようになっている請求項1から8のいずれか一項に記載の軸連結機構。
第一の基部は、第一の回転軸に、第二の基部は、第二の回転軸に、夫々軸方向に相対的に移動自在に連結されるようになっている請求項1から8のいずれか一項に記載の軸連結機構。
二つの弾性部材を具備しており、一方の弾性部材は、軸方向における第一の連結基体及び第一の回転軸間の軸方向における長さが可変の隙間に配されるようになっており、他方の弾性部材は、軸方向における第二の連結基体及び第二の回転軸間の軸方向における長さが可変の隙間に配されるようになっている請求項13に記載の軸連結機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
斯かる電動式パワーステアリング装置において、剛性の軸連結機構を介してステアリング軸と回転軸とを連結する場合、電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動が軸連結機構、ウォームギヤ及びウォームホイール並びにステアリング軸を介してステアリングホイールに伝達されて運転者に不快な操舵感を生じさせる虞がある上に、ウォームギヤのバックラッシュに起因する歯打ち等の異音、振動が生じる虞があり、これを回避するために軸連結機構に弾性体を介在させることが提案されているが、衝撃、振動の低減を重視して斯かる弾性体をより柔軟なものにすると、柔軟な弾性体はクリープ変形が生じ易いために、弾性体への繰り返し荷重による弾性体の永久的な変形で軸連結機構にガタが生じて、これによってもまた運転者の操舵感覚が不快なものとなる虞がある一方、耐久性を重視してスペーサを硬質なものにすると、前記と逆にガタのない点で操舵感覚は良くなるが、上述の通りステアリングホイールに伝達された衝撃、振動で操舵感覚が不快なものとなる上に、ウォームギヤのバックラッシュに起因する歯打ち等の異音、振動を低減することができない。
【0005】
特許文献2には、回転伝達部材とウォーム軸との間に、弾性を有する回転伝達部材を介装して、バックラッシュに起因する歯面同士の衝突音(ラトル音)を低減すると共にステアリングホイールの操作性やステアリングホイール戻りを良好に維持するようにした軸連結機構が提案されているが、本軸連結機構では、弾性を有する回転伝達部材は、軸方向の圧縮変形に加えて、回転方向の弾性的な捩れ変形を生じるようになっているために、繰り返しの捩れ変形により早期に劣化する虞を有する。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、弾性体に回転方向の弾性的な捩れ変形を生じさせないで、例えば、電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動のステアリングホイールへの伝達及びウォームギヤのバックラッシュに起因する歯打ち等の異音、振動を低減でき、運転者の操舵感覚の向上を図り得て、早期の劣化を回避できる軸連結機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一及び第二の回転軸の回転を相互に伝達するように第一及び第二の回転軸の間に配されて当該第一及び第二の回転軸を相互に連結する本発明の軸連結機構は、第一の回転軸の回転により回転される一方、回転により第一の回転軸を回転させるように第一の回転軸に連結される第一の連結基体と、第二の回転軸の回転により回転される一方、回転により第二の回転軸を回転させるように第二の回転軸に連結される第二の連結基体と、軸方向における第一の連結基体及び第一の回転軸間と軸方向における第二の連結基体及び第二の回転軸間とのうちの少なくとも一方の間で規定されると共に軸方向における長さが可変である隙間と、第一及び第二の回転軸のうちの一方の回転軸との間で前記隙間を規定する第一及び第二の連結基体のうちの一方の連結基体が当該一方の回転軸に対して当該隙間の軸方向の長さを減少する軸方向に所定量移動した後に当該一方の連結基体を当該一方の回転軸に対して相対的に軸方向に不動となるように当該一方の回転軸に接触する接触面並びに当該一方の連結基体が当該一方の回転軸に対して当該隙間の軸方向の長さを減少する軸方向に所定量移動した後に第一及び第二の連結基体のうちの他方の連結基体を当該一方の回転軸に対して相対的に回転方向に不動となるように当該一方の回転軸に接触する接触面のうちの少なくとも一方の接触面と、前記隙間に配される弾性部材とを具備しており、第一の連結基体は、第一の回転軸の回転により回転される一方、回転により第一の回転軸を回転させるように第一の回転軸に連結される第一の基部と、この第一の基部の軸方向の一方の面に形成されていると共に回転方向において互いに逆方向に傾斜した少なくとも一対の第一のカム面とを具備しており、第二の連結基体は、第二の回転軸の回転により回転される一方、回転により第二の回転軸を回転させるように第二の回転軸に連結される第二の基部と、この第二の基部の軸方向の一方の面に形成されていると共に回転方向において互いに逆方向に傾斜して該少なくとも一対の第一のカム面に相補的な形状を有しており、且つ、当該少なくとも一対の第一のカム面に対して回転方向において相対的に滑り移動自在に接触した一対の第二のカム面とを具備しており、前記一方の連結基体は、一対の第一のカム面に対する一対の第二のカム面の相対的な滑り移動で当該少なくとも一方の連結基体に連結される第一及び第二の回転軸のうちの少なくとも一方の回転軸に対して軸方向に移動して当該隙間の軸方向の長さの増減を生じさせるべく、当該少なくとも一方の回転軸に対して軸方向に可動に連結されるようになっており、弾性部材は、当該隙間の軸方向の長さの増減で弾性的に伸縮されるように、当該隙間に配されている。
【0008】
本発明の軸連結機構によれば、第一の連結基体は、回転方向において互いに逆方向に傾斜した少なくとも一対の第一のカム面を具備しており、第二の連結基体は、少なくとも一対の第一のカム面に回転方向において相対的に滑り移動自在に接触した一対の第二のカム面を具備しており、第一及び第二の連結基体のうちの少なくとも一方の連結基体は、一対の第一のカム面に対する一対の第二のカム面の相対的な滑り移動で当該少なくとも第一の連結基体に連結される第一及び第二の回転軸のうちの少なくとも一方の回転軸に対して軸方向に移動して当該隙間の軸方向の長さの増減を生じさせるべく、当該少なくとも一方の回転軸に対して軸方向に可動に連結されるようになっており、弾性部材は、該隙間の軸方向の長さの増減で弾性的に伸縮されるように、当該隙間に配されているために、第一の連結基体に対する第二の連結基体の微小な相対的な回転では、一対の第一のカム面に対する一対の第二のカム面の滑り移動が生じ、この滑り移動で隙間の軸方向の長さが減少し、この長さの減少で弾性部材が軸方向に縮められる結果、例えば第一の連結基体の第二の連結基体に対する微小な相対的な回転は、弾性部材の軸方向の短縮で吸収されて第二の連結基体へ伝達されず、而して、例えば、第一の連結基体の微小な回転の起因となる第一の回転軸に連結された電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動の第二の連結基体を介してのステアリングホイールへの伝達を低減できる上に、例えば、第二の回転軸に連結されたウォームギヤ(ウォーム軸)と当該ウォームギヤに噛み合うと共にステアリング軸に連結されたウォームホイールとの間のバックラッシュに起因する振動を弾性部材の軸方向の伸縮で吸収できてウォームギヤとウォームホイールとにおける歯打ち等の異音の発生をなくし得、運転者の操舵感覚の向上を図り得る一方、第二の連結基体に対する第一の連結基体の一定以上の相対的な回転で隙間の軸方向の長さが所定量以上減少して弾性部材が軸方向に所定量以上縮められると、一方の回転軸への接触面の接触により、一方の連結基体及び他方の連結基体のうちの少なくとも一方を一方の回転軸に対して相対的に軸方向に不動とし得る結果、一対の第一のカム面に対する一対の第二のカム面の滑り移動が生じなくなり、例えば、第一の連結基体の回転が第二の連結基体に伝達されて、第二の連結基体が第一の連結基体の回転に連れて回転される結果、第一の回転軸に連結された電動モータの回転出力軸の回転が第二の回転軸に連結されたウォームギヤを介して当該ウォームギヤに噛み合うウォームホイールに伝達されて、ウォームホイールの回転でステアリング軸も回転され、而して、ステアリング軸に連結されたステアリングホイールの手動による操舵を補助することができ、しかも、軸方向に伸縮する弾性部材に回転方向の弾性剪断変形(捩れ変形)を生じさせないで、一対の第一のカム面に対する一対の第二のカム面の滑り移動を生じさせる結果、弾性部材の早期の劣化を回避できて、耐久性の向上を図り得る。
【0009】
本発明において、第一の連結基体は、第一の回転軸の軸方向の端部に一体的に形成された嵌合突起が嵌合すると共に第一の基部に形成された嵌合凹所を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの一方における回転は、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっていても、これと共に又はこれに代えて、第一の連結基体は、第一の回転軸の軸方向の端部に形成された嵌合凹所に嵌合すると共に第一の基部に一体的に形成された嵌合突起を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの一方における回転は、第一の連結基体と第一の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっていてもよい。
【0010】
本発明において、第二の連結基体は、第二の回転軸の軸方向の端部に一体的に形成された嵌合突起が嵌合すると共に第二の基部に形成された嵌合凹所を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの一方の回転は、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっていても、これと共に又はこれに代えて、第二の連結基体は、第二の回転軸の軸方向の端部に形成された嵌合凹所に嵌合すると共に第二の基部に一体的に形成された嵌合突起を有しており、当該嵌合凹所に嵌合された嵌合突起を介して、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの一方の回転は、第二の連結基体と第二の回転軸とのうちの他方に伝達されるようになっていてもよい。
【0011】
本発明の軸連結機構では、互いに相対的に滑り移動自在に接触した一対の第一のカム面と一対の第二のカム面とは、第一の基部に対する第二の基部の相対的な回転で、弾性部材の弾性力に抗しつつ相対的に滑り移動して第一の基部に対して第二の基部を相対的に軸方向に離反させるようになっていてもよく、この場合、第一の基部に対する第二の基部の相対的な軸方向の離反距離は、第一のカム面及び第二のカム面の傾斜角と第一の基部に対する第二の基部の相対的な回転量とに依存してもよい。
【0012】
本発明の軸連結機構の好ましい例では、一対の第一のカム面は、軸方向に対して交差した第一の平坦面を回転方向において間にして配されており、一対の第二のカム面は、軸方向に対して交差した第二の平坦面を回転方向において間にして配されており、斯かる例では、カム面の機械的強度を維持できて、カム面の変形を防止できる。
【0013】
本発明の軸連結機構では、第一の基部は、第一の回転軸に軸方向に相対的に移動自在に連結されるようになっている一方、第二の基部は、第二の回転軸に軸方向に不動に連結されるようになっていてもよく、この場合、弾性部材は、軸方向における第一の連結基体及び第一の回転軸間の軸方向における長さが可変の隙間に配されるようになっているとよく、これらに代えて、第一の基部は、第一の回転軸に軸方向に不動に連結されるようになっている一方、第二の基部は、第二の回転軸に軸方向に相対的に移動自在に連結されるようになっていてもよく、この場合、弾性部材は、軸方向における第二の連結基体及び第二の回転軸間の軸方向における長さが可変の隙間に配されるようになっているとよい。
【0014】
本発明では、第一の基部は、第一の回転軸に、第二の基部は、第二の回転軸に、夫々軸方向に移動自在に連結されるようになっていてもよく、この場合、本発明の軸連結機構は、二つの弾性部材を具備しており、一方の弾性部材は、軸方向における第一の連結基体及び第一の回転軸間の軸方向における長さが可変の隙間に配されるようになっており、他方の弾性部材は、軸方向における第二の連結基体及び第二の回転軸間の軸方向における長さが可変の隙間に配されるようになっているとよい。
【0015】
弾性部材は、好ましい例では、その弾性力により、第一の基部に対して第二の基部を相対的に軸方向に接近させるようになっている。
【0016】
本発明では、弾性部材の早期の劣化を防止することができる限り、所定量を超えない弾性部材の一定以上の圧縮で、一方の回転軸への接触面の接触を介する第一の連結基体と第二の連結基体との回転の相互の伝達に先立って、斯かる弾性部材を介して第一の連結基体と第二の連結基体との回転が相互に伝達されるようになっていてもよい。
【0017】
本発明の軸連結機構は、電動式パワーステアリング装置用のものであってもよく、この場合、第一の回転軸は、電動モータの出力回転軸に連結されるようになっており、第二の回転軸は、互いに噛み合うウォームギヤ及びウォームホイールを介して自動車のステアリング軸に連結されるようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弾性体に回転方向の弾性的な捩れ変形を生じさせないで、例えば、電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動のステアリングホイールへの伝達及びウォームギヤのバックラッシュに起因する歯打ち等の異音、振動を低減でき、運転者の操舵感覚の向上を図り得て、早期の劣化を回避できる軸連結機構を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0021】
図1から
図17において、電動式パワーステアリング装置の電動モータ側の回転軸2及びウォーム軸側の回転軸3の軸心Oの周りのR方向の回転を相互に伝達するように回転軸2及び3の間に配されて当該回転軸2及び3を相互に連結する本例の電動式パワーステアリング装置用としての軸連結機構1は、回転軸2のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により同方向に回転軸2を回転させるように回転軸2に連結された連結基体4と、回転軸3のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸3を同方向に回転させるように回転軸3に連結された連結基体5と、軸方向であるA方向における連結基体4及び回転軸3間及びA方向における連結基体5及び回転軸3間のうちの少なくとも一方の間、本例では連結基体5及び回転軸3間のA方向における長さLが可変の隙間6に配される弾性部材7とを具備している。
【0022】
回転軸2のA方向の端部11の端面12には、特に
図10及び
図11に示すように、当該端面12からA方向に突出した嵌合突起13が一体的に形成されており、嵌合突起13は、R方向に等角度間隔をもって離間していると共に夫々径方向に伸びて一体形成されている三個の突部14を具備している。
【0023】
回転軸3のA方向の端部15には、特に
図12及び
図13に示すように、当該端部15の端面16で開口した有底の凹所17が形成されており、凹所17は、小径円孤内周面18、R方向において小径円孤内周面18を挟んでR方向に等角度間隔をもって離間して形成された三個の大径円弧内周面20、大径円弧内周面20の夫々のR方向の一方の縁部27を小径円弧内周面18に連接すると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びる一方の平坦な内側面25、大径円弧内周面20の夫々のR方向の他方の縁部28を小径円弧内周面18に連接すると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びる他方の平坦な内側面26及び円形内底面21で規定されており、而して、凹所17は、円柱状の凹所部23と、凹所部23の径方向の外縁においてR方向に等角度間隔をもって離間した円弧状の三個の凹所部24とを具備している。
【0024】
連結基体4は、特に
図2から
図5に示すように、回転軸2のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸2を同方向に回転させるように回転軸2に連結された基部31と、基部31のA方向の一方の面32に一体的に形成されていると共にR方向において互いに逆方向に傾斜した三対のカム面33及び34とを具備している。
【0025】
基部31は、嵌合突起13と相補的な形状を有すると共にA方向の一方の面41で開口した嵌合凹所42を有した円柱部43と、円柱部43の径方向の円筒状の外周面44に一体的に形成されていると共にR方向に等角度間隔をもって離間して径方向に突出した円弧状の三個の径方向突部45と、円柱部43及び径方向突部45のA方向の一方の端面46に一体的に形成されていると共にR方向に等角度間隔をもって離間してA方向に突出した円弧状の三個の軸方向突部47とを具備しており、三対のカム面33及び34の夫々は、三個の軸方向突部47の夫々のA方向の端面に形成されている。
【0026】
円柱部43の嵌合凹所42には、回転軸2のA方向の端部11に一体的に形成された嵌合突起13が嵌合しており、当該嵌合凹所42に嵌合された嵌合突起13を介して、連結基体4と回転軸2とのうちの一方におけるR方向の回転は、連結基体4と回転軸2とのうちの他方に伝達されるようになっている。
【0027】
円柱部43は、円柱状の凹所部23にA方向に移動自在に配されており、円柱部43の外周面44においてR方向に等角度間隔をもって離間して露出した三個の円弧外周面の夫々は、回転軸3の小径円弧内周面18の夫々に摺動自在に接している。径方向突部45の夫々は、凹所部24の夫々に配されており、径方向突部45の軸心周りの方向に伸びた円弧外周面39の夫々は、大径円弧内周面20の夫々に摺動自在に接している。
【0028】
円弧状の三個の径方向突部45のR方向の長さは、円弧状の三個の凹所部24のR方向の長さよりも短く、軸心Oから径方向に放射状に伸びた径方向突部45のR方向の平坦な外側面35及び36において、例えば
図14に示すように、外側面35は、内側面25に対してR方向の隙間37をもって配されており、外側面36は、内側面26に対してR方向の隙間38をもって配されている。隙間37及び38のR方向の幅は、連結基体4の回転軸3に対する相対的なR方向の回転において夫々増減し、例えば
図19に示すように外側面36が内側面26に接触した状態では、隙間38の幅はゼロとなる一方、隙間37の幅は最大幅Dとなり、また、図示しないが、外側面35が内側面25に接触した状態では、隙間38の幅は最大幅Dとなる一方、隙間37の幅はゼロとなる。外側面35が内側面25に接触した状態又は外側面36が内側面26に接触した状態においては、連結基体4及び回転軸3の一方のR方向の回転は、連結基体5を介さずに連結基体4及び回転軸3の他方に直接に伝達される。接触面としての内側面25及び26並びに外側面35及び36の夫々は、剛性回転伝達面として機能する。
【0029】
連結基体5は、特に
図6から
図9に示すように、回転軸3のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸3を同方向に回転させるように回転軸3に連結された基部51と、基部51のA方向の一方の面52に一体的に形成されていると共にR方向において互いに逆方向に傾斜してカム面33及び34の夫々に相補的な形状を有しており、且つ、カム面33及び34にR方向において相対的に滑り移動自在に接触した三対のカム面53及び54とを具備している。
【0030】
回転軸3の凹所17にA方向に移動自在に嵌合された基部51は、凹所部23と相補的な形状を有していると共にA方向の一方の面52で閉塞されており、且つ、A方向の他方の面55で開口している有底の凹所62を有した円柱部63と、円柱部63の径方向の円筒状の外周面64に一体的に形成されていると共にR方向に等角度間隔をもって離間して径方向に突出した円弧状の三個の径方向突部65と、円柱部63及び径方向突部65のA方向の一方の端面66に一体的に形成されていると共にR方向に等角度間隔をもって離間してA方向に突出した円弧状の三個の軸方向突部67とを具備しており、三対のカム面53及び54の夫々は、三個の軸方向突部67の夫々のA方向の端面に形成されている。
【0031】
基部51は、面55と回転軸3の円形内底面21との間にA方向の隙間6をもって回転軸3にA方向に摺動自在に嵌合される。
【0032】
円柱部63は、円柱状の凹所部23にA方向に移動自在に配されており、円柱部63の外周面64は、回転軸3の小径円弧内周面68にA方向に摺動自在に接している。径方向突部65の夫々は、凹所部24の夫々に配されており、径方向突部65に軸心周りの方向に伸びた円弧外周面69は、大径円弧内周面70にA方向に摺動自在に接している。
【0033】
円弧状の三個の径方向突部65のR方向の長さは、円弧状の三個の凹所部24のR方向の長さと等しく、軸心Oから径方向に放射状に伸びた径方向突部65のR方向の平坦な剛性回転伝達面である側面75及び76において、側面75は、内側面25にA方向に摺動自在に接しており、側面76は、内側面26にA方向に摺動自在に接している。このようにA方向に摺動自在に回転軸3に嵌合される連結基体5は、側面75及び76が内側面25及び26に接しているので、回転軸3に対して相対的にR方向に不動であり、回転軸3のR方向の回転と共に回転されるようになっている。
【0034】
面55で開口していると共に弾性部材7が嵌挿された凹所62は、円柱部63の小径円孤内周面68、R方向において小径円孤内周面68を挟んでR方向に等間隔をもって離間して形成された円弧状の三個の突起の大径円孤内周面70、大径円孤内周面70の夫々のR方向の一方の縁部71を小径円孤内周面68に連接すると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びた一方の平坦な側面73、大径円孤内周面70の夫々のR方向の他方の縁部72を小径円孤内周面68に連接すると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びた他方の平坦な側面74及び円柱部63の円形内底面77で規定されており、而して、凹所62は、円柱状の凹所部79と、凹所部79の径方向の外縁においてR方向に等角度間隔をもって離間した円弧状の三個の凹所部80とを具備している。
【0035】
互いに相対的に滑り移動自在に接触した一対のカム面33及び34と一対のカム面53及び54とは、基部31に対する基部51の相対的なR方向の回転で、弾性部材7の弾性力に抗しつつ相対的に滑り移動して基部31に対して基部51を相対的にA方向に離反させるようになっている。基部31に対する基部51の相対的なA方向の離反距離は、カム面33及び34並びにカム面53及び54の傾斜角と基部31に対する基部51の相対的なR方向の回転量とに依存している。
【0036】
一対のカム面33及び34は、A方向に対して交差した平坦面40をR方向において間にして配されており、一対のカム面53及び54は、A方向に対して交差した平坦面56をR方向において間にして配されている。連結基体4及び5が平坦面40及び56を夫々有していることにより、カム面33及び34並びに53及び54の機械的強度を維持できて、当該カム面33及び34並びに53及び54の変形を防止できる。
【0037】
例えば
図15に示す円柱状の弾性部材7は、回転軸2及び3並びに連結基体4及び5よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であってウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体から一体形成されている。
【0038】
軸心Oと同心に配された弾性部材7の外周面81は、円柱部63の小径円孤内周面68に接しており、弾性部材7のA方向の一方の円形の面82は、円柱部63の円形内底面77に接しており、弾性部材7のA方向の他方の円形の面83は、回転軸3の円形内底面21に接している。斯かる弾性部材7は、凹所6279の円柱状の凹所部79に嵌挿されており、当該凹所部79からA方向に部分的に突出して隙間6を弾性的に維持している。弾性部材7は、その弾性力により、基部31に対して基部51を相対的にA方向に接近させるようになっている。
【0039】
以上の軸連結機構1では、運転者によるステアリングホイールの手動操作において、ステアリングホイールに加えられるトルクを検出するトルク検出器からの検出信号により制御される電動モータが作動されると、回転軸2がR方向に回転されて連結基体4が同方向に回転され、この回転により、例えば
図18に示すようにカム面33及び34の一方がカム面53及び54の一方を押圧しながら滑り移動を生じ、この滑り移動において連結基体5は、円形内底面21にA方向に接近移動して弾性部材7に弾性変形を生じさせる。前記回転において隙間6のA方向の長さが所定量以上減少して弾性部材7がA方向に所定量以上縮められると、例えば
図19に示すように、連結基体4の径方向突部45の外側面35及び36の一方が内側面25及び26の一方に接触し、この接触により、カム面33及び34の一方のカム面53及び54の一方に対するA方向の押圧力が生じなくなって連結基体4を回転軸3に対して相対的にA方向に不動とし得る結果、前記滑り移動が生じなくなり、連結基体4のR方向の回転は、外側面35及び36の一方並びに内側面25及び26の一方を介して回転軸3に直接に剛性的に伝達される。連結基体5は、連結基体4及び回転軸3のR方向の回転に連れて同方向に回転する。これにより、軸連結機構1は、ステアリングホイールのR方向の回転力に対して回転軸2のR方向の回転力を付加し、回転軸2に連結された電動モータの回転出力軸の回転が回転軸3に連結されたウォームギヤを介して当該ウォームギヤに噛み合うウォームホイールに伝達されて、ウォームホイールの回転でステアリング軸も回転され、而して、ステアリング軸に連結されたステアリングホイールの手動による操舵を補助することができ、しかも、A方向に伸縮する弾性部材7にR方向の弾性剪断変形(捩れ変形)を生じさせることがない。
【0040】
軸連結機構1では、連結基体4に対する連結基体5の微小なR方向の相対的な回転では、一対のカム面33及び34に対する一対のカム面53及び54の滑り移動が生じ、この滑り移動で隙間6のA方向の長さが減少し、この長さの減少で弾性部材7がA方向に縮められる結果、例えば連結基体4の連結基体5に対する微小なR方向の相対的な回転は、弾性部材7のA方向の短縮で吸収されて連結基体5へ伝達されず、而して、例えば、連結基体4の微小なR方向の回転の起因となる回転軸2に連結された電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動の連結基体5を介してのステアリングホイールへの伝達を低減できる上に、例えば、回転軸3に連結されたウォームギヤ(ウォーム軸)と当該ウォームギヤに噛み合うと共にステアリング軸に連結されたウォームホイールとの間のバックラッシュに起因する振動を弾性部材7のA方向の伸縮で吸収できてウォームギヤとウォームホイールとにおける歯打ち等の異音の発生をなくし得、運転者の操舵感覚の向上を図り得る。軸連結機構1によれば、一対のカム面33及び34に対する一対のカム面53及び54の滑り移動を生じさせ、しかも弾性部材7にR方向の弾性剪断変形(捩れ変形)を生じさせることがない結果、弾性部材7の早期の劣化を回避できて、耐久性の向上を図り得る。
【0041】
回転軸2及び3のR方向の回転を相互に伝達するように回転軸2及び3の間に配されて当該回転軸2及び3を相互に連結する軸連結機構1によれば、回転軸2のR方向の回転によりR方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸2をR方向に回転させるように回転軸2に連結される連結基体4と、回転軸3のR方向の回転によりR方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸3をR方向に回転させるように回転軸3に連結される連結基体5と、A方向における連結基体4及び回転軸2間とA方向における連結基体5及び回転軸3間とのうちの少なくとも一方の間、本例では連結基体5及び回転軸3間で規定されると共にA方向における長さが可変である隙間6と、回転軸3との間で隙間6を規定する連結基体5が回転軸3に対して隙間6のA方向の長さを減少するA方向に所定量移動した後に連結基体4を回転軸3に対して相対的にR方向に不動となるように当該回転軸3に接触する接触面としての外側面35及び36と、隙間6に配される弾性部材7とを具備しており、連結基体4は、回転軸2のR方向の回転によりR方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸2をR方向に回転させるように回転軸2に連結される基部31と、基部31のA方向の一方の面32に形成されていると共にR方向において互いに逆方向に傾斜した少なくとも一対のカム面33及び34とを具備しており、連結基体5は、回転軸3のR方向の回転によりR方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸3をR方向に回転させるように回転軸3に連結される基部51と、基部51のA方向の一方の面52に形成されていると共にR方向において互いに逆方向に傾斜して当該少なくとも一対のカム面33及び34に相補的な形状を有しており、且つ、少なくとも一対のカム面33及び34に対してR方向において相対的に滑り移動自在に接触した一対のカム面53及び54とを具備しており、回転軸3との間で前記隙間6を規定する連結基体5は、一対のカム面33及び34に対する一対のカム面53及び54の相対的な滑り移動で当該連結基体5に連結される回転軸3に対してA方向に移動して当該隙間6のA方向の長さの増減を生じさせるべく、当該回転軸3に対してA方向に可動に連結されるようになっており、弾性部材7は、当該隙間6のA方向の長さの増減で弾性的に伸縮されるように、当該隙間6に配されるために、連結基体5が回転軸3に対してA方向の長さを減少するA方向に所定量移動した後に連結基体4のR方向の回転をカム面33、34、53及び54を介さずに回転軸3に直接に伝達することができて、隙間6のA方向の長さの所定量以上の減少を回避することができ、弾性部材7の大きな圧縮変形を防止することができ、しかも、弾性部材7にR方向の弾性的な捩れ変形を生じさせないで、例えば、電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動のステアリングホイールへの伝達及びウォームギヤのバックラッシュに起因する歯打ち等の異音、振動を低減でき、運転者の操舵感覚の向上を図り得て、早期の劣化を回避できる。
【0042】
尚、軸連結機構1は、基部31に代えて、回転軸2にA方向に移動自在に連結される基部を具備していてもよく、この場合、弾性部材7に加えて、連結基体4及び回転軸2間のA方向における長さが可変の隙間に配される他の弾性部材を具備していてもよい。
【0043】
また、軸連結機構1は、カム面33及び34の一方のカム面53及び54の一方に対する滑り移動に基づいて、弾性部材7が弾性変形を生じて連結基体5が回転軸3に対してA方向において接近移動した後に回転軸3の円形内底面21に接触する連結基体5の接触面としての面55、換言すれば、回転軸3との間で隙間6を規定する連結基体5が回転軸3に対して隙間6のA方向の長さを減少するA方向に所定量移動した後に連結基体5を回転軸3に対して相対的にA方向に不動となるように当該回転軸3に接触する接触面としての面55を具備していてもよく、斯かる場合には、当該連結基体5の回転軸3に対するA方向における所定量以上の接近移動は面55の円形内底面21に対する接触によって禁止される結果、連結基体4のR方向の回転は、弾性部材7の一定以上の弾性変形を伴わずに、カム面33及び34の一方並びにカム面53及び54の一方を介して剛性的に連結基体5に伝達され、連結基体5に伝達されたR方向の回転は回転軸3に剛性的に伝達される。斯かる軸連結機構1においても弾性部材7の大きな圧縮変形を防止して弾性部材7の早期の劣化を防止することができる。
【0044】
図20から
図27において、電動式パワーステアリング装置の電動モータ側の回転軸102及びウォーム軸側の回転軸103の軸心Oの周りのR方向の回転を相互に伝達するように回転軸102及び103の間に配されて当該回転軸102及び103を相互に連結する本発明の他の例の電動式パワーステアリング装置用としての軸連結機構100は、回転軸102のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により同方向に回転軸102を回転させるように回転軸102に連結された連結基体104と、回転軸103のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸103を同方向に回転させるように回転軸103に連結された連結基体105と、A方向における連結基体104及び回転軸103間及びA方向における連結基体105及び回転軸103間のうちの少なくとも一方の間、本例では連結基体105及び回転軸103間のA方向における長さLが可変の隙間106に配される弾性部材107とを具備している。
【0045】
回転軸102のA方向の端部111の端面112には、特に
図20に示すように、上述の嵌合突起13が一体的に形成されている。
【0046】
回転軸103のA方向の端部115には、特に
図20及び
図27に示すように、当該端部115の端面116からA方向に突出していると共に連結基体105に嵌合する嵌合突起117が一体的に形成されている。嵌合突起117は、端面116からA方向に伸びて一体的に形成された円柱部118と、円柱部118の径方向の円筒状の外周面119及び端面116に一体的に形成されていると共にR方向に等角度間隔をもって離間して径方向に突出した円弧状の二個の径方向突部120とを具備している。
【0047】
連結基体104は、特に
図21及び
図22に示すように、回転軸102のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸102を同方向に回転させるように回転軸102に連結された基部131と、基部131のA方向の一方の面132に一体的に形成されていると共にR方向において互いに逆方向に傾斜した三対のカム面133及び134とを具備している。
【0048】
基部131は、上述の嵌合凹所42を有した円柱部43及び円弧状の三個の軸方向突部47とを具備しており、カム面133及び134は、カム面33及び34と同様に形成されて前記軸方向突部47の夫々のA方向の端面に形成されている。
【0049】
基部131の嵌合凹所42には、回転軸102の嵌合突起13が嵌合しており、当該嵌合凹所42に嵌合された嵌合突起13を介して、連結基体104と回転軸102とのうちの一方におけるR方向の回転は、連結基体104と回転軸102とのうちの他方に伝達されるようになっている。
【0050】
連結基体105は、特に
図23から
図25に示すように、回転軸103のR方向の回転により同方向に回転される一方、R方向の回転により回転軸103を同方向に回転させるように回転軸103に連結された基部151と、基部151のA方向の一方の面152に一体的に形成されていると共にR方向において互いに逆方向に傾斜してカム面133及び134の夫々に相補的な形状を有しており、且つ、カム面133及び134にR方向において相対的に滑り移動自在に接触した三対のカム面153及び154とを具備している。
【0051】
基部151は、嵌合突起117と挿補的な形状を有すると共にA方向の一方の面161で開口した嵌合凹所162を有した円柱部163と、円柱部163のA方向の一方の端面166に一体的に形成されていると共にR方向に等角度間隔をもって離間してA方向に突出した円弧状の三個の軸方向突部167とを具備しており、三対のカム面153及び154の夫々は三個の軸方向突部167の夫々のA方向の端面に形成されている。三対のカム面153及び154の夫々は、上述の三対のカム面53及び54の夫々と同様に形成されている。
【0052】
円柱部163の嵌合凹所162には、回転軸103の嵌合突起117がA方向に移動自在に嵌合しており、当該嵌合凹所162に嵌合された嵌合突起117を介して、連結基体105と回転軸103とのうちの一方におけるR方向の回転は、連結基体105と回転軸103とのうちの他方に伝達されるようになっている。
【0053】
嵌合凹所162は、小径円弧内周面168、R方向において小径円弧内周面168を挟んでR方向に等角度間隔をもって離間して形成された二個の大径円弧内周面170、大径円弧内周面170の夫々のR方向の一方の縁部171を小径円弧内周面168に連接すると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びる一方の平坦な内側面173、大径円弧内周面170の夫々のR方向の他方の縁部172を小径円弧内周面168に連接すると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びる他方の平坦な内側面174及び円形内底面177で規定されており、而して、凹所162は、円柱状の凹所部179と、凹所部179の径方向の外縁においてR方向に等角度間隔をもって離間した円弧状の二個の凹所部180とを具備している。
【0054】
斯かる嵌合凹所162には、回転軸103の嵌合突起117がA方向に移動自在に嵌挿される。連結基体105の小径円弧内周面168は、回転軸103の嵌合突起117のA方向の先端面121に対してA方向の長さLが可変する隙間106をもって配される。
【0055】
嵌合突起117の外周面119は、円柱部163の小径円弧内周面168にA方向に摺動自在に接しており、径方向突部120の夫々は、凹所部180の夫々に配されており、嵌合突起117の外周面119においてR方向に等角度間隔をもって離間して二個の径方向突部120に配された軸心周りの方向に伸びた二個の円弧外周面122は、大径円弧内周面170の夫々にA方向に摺動自在に接している。
【0056】
円弧状の二個の径方向突部120のR方向の長さは、円弧状の二個の凹所部180のR方向の長さと等しく、円弧外周面122のR方向における両縁部を外周面119に連接していると共に軸心Oから径方向に放射状に伸びている径方向突部120の平坦な外側面125及び126の夫々は、内側面173及び174にA方向に摺動自在に接している。このようにA方向に摺動自在に回転軸103に嵌合される連結基体105は、剛性回転伝達面としての外側面125及び126が内側面173及び174に接しているので、回転軸103に対して相対的にR方向に不動であり、当該連結基体105のR方向の回転は回転軸103に直接に伝達される。
【0057】
互いに相対的に滑り移動自在に接触した一対のカム面133及び134と一対のカム面153及び154とは、基部131に対する基部151の相対的なR方向の回転で、弾性部材107の弾性力に抗しつつ相対的に滑り移動して基部131に対して基部151を相対的にA方向に離反させるようになっている。基部131に対する基部151の相対的なA方向の離反距離は、カム面133及び134並びにカム面153及び154の傾斜角と基部131に対する基部151の相対的なR方向の回転量とに依存している。
【0058】
一対のカム面133及び134は、A方向に対して交差した平坦面140をR方向において間にして配されており、一対のカム面153及び154は、A方向に対して交差した平坦面156をR方向において間にして配されている。連結基体104及び105が平坦面140及び156を夫々有していることにより、カム面133及び134並びに153及び154の機械的強度を維持できて、当該カム面133及び134並びに153及び154の変形を防止できる。
【0059】
連結基体105は、隙間106のA方向の長さLの所定量以上の減少を回避するべく、回転軸103に対しての当該隙間106のA方向の長さを減少するA方向の所定量の移動後に当該回転軸103に対してA方向に不動となるように、当該回転軸103に連結されている。軸連結機構100では、回転軸103との間で隙間106を規定する連結基体105が回転軸103に対して隙間106のA方向の長さを減少するA方向に所定量移動した後に連結基体105を回転軸103に対して相対的にA方向に不動となるように当該回転軸103の先端面121に接触する接触面としての円形内底面177を具備しているために、連結基体105を回転軸103に対するA方向の所定量以上の接近移動は円形内底面177の先端面121に対する接触によって禁止される結果、連結基体104のR方向の回転は、弾性部材107の一定以上の弾性変形を伴わずに、カム面133及び134の一方並びにカム面153及び154の一方を介して剛性的に連結基体105に伝達され、連結基体105に伝達されたR方向の回転は回転軸103に剛性的に伝達される。斯かる軸連結機構100によれば、弾性部材107の大きな圧縮変形を防止して弾性部材107の早期の劣化を防止することができる。
【0060】
弾性部材107は、特に
図26に示すように、回転軸103並びに連結基体104及び105よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であってウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体から一体形成されている円盤部191と、円盤部191の中央をA方向に貫通して形成されていると共に、嵌合突起117と挿補的な形状を有している貫通孔192とを具備している。
【0061】
円盤部191のA方向の一方の円形の面193は、回転軸103の端面116に接しており、円盤部191のA方向の他方の円形の面194は、円柱部163の面161に接しており、貫通孔192には、嵌合突起117がA方向に移動自在に嵌挿されている。弾性部材107は、面161から端面116までの間隔を弾性的に維持することによって隙間106を弾性的に維持している。斯かる弾性部材107は、その弾性力により、基部131に対して基部151を相対的にA方向に接近させるようになっている。
【0062】
以上の軸連結機構100では、運転者によるステアリングホイールの手動操作において、ステアリングホイールに加えられるトルクを検出するトルク検出器からの検出信号により制御される電動モータが作動されると、回転軸102がR方向に回転されて連結基体104が同方向に回転され、この回転により、カム面133及び134の一方がカム面153及び154の一方を押圧しながら滑り移動を生じ、この滑り移動において連結基体105は端面116に対してA方向に接近移動して弾性部材107に弾性変形を生じさせる。カム面133及び134の一方のカム面153及び154の一方に対する滑り移動に基づいて、弾性部材107が弾性変形を生じて連結基体105が回転軸103に対してA方向において接近移動して当該連結基体105の円形内底面177が回転軸103の嵌合突起117の先端面121に接触した場合には、当該連結基体105の回転軸103に対する接近移動は禁止される結果、連結基体104のR方向の回転は、弾性部材107の一定以上の弾性変形を伴わずに、カム面133及び134の一方並びにカム面153及び154の一方を介して連結基体105に剛性的に伝達され、連結基体105に伝達されたR方向の回転は回転軸103に剛性的に伝達される。これにより、軸連結機構100は、ステアリングホイールのR方向の回転力に対して回転軸102のR方向の回転力を付加し、回転軸102に連結された電動モータの回転出力軸の回転が回転軸103に連結されたウォームギヤを介して当該ウォームギヤに噛み合うウォームホイールに伝達されて、ウォームホイールの回転でステアリング軸も回転され、而して、ステアリング軸に連結されたステアリングホイールの手動による操舵を補助することができ、しかも、A方向に伸縮する弾性部材107にR方向の弾性剪断変形(捩れ変形)を生じさせることがない。
【0063】
軸連結機構100では、連結基体104に対する連結基体105の微小なR方向の相対的な回転では、一対のカム面133及び134に対する一対のカム面153及び154の滑り移動が生じ、この滑り移動で隙間106のA方向の長さが減少し、この長さの減少で弾性部材107がA方向に縮められる結果、例えば連結基体104の連結基体105に対する微小なR方向の相対的な回転は、弾性部材107のA方向の短縮で吸収されて連結基体105へ伝達されず、而して、例えば、連結基体104の微小なR方向の回転の起因となる回転軸102に連結された電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動の連結基体105を介してのステアリングホイールへの伝達を低減できる上に、例えば、回転軸103に連結されたウォームギヤ(ウォーム軸)と当該ウォームギヤに噛み合うと共にステアリング軸に連結されたウォームホイールとの間のバックラッシュに起因する振動を弾性部材107のA方向の伸縮で吸収できてウォームギヤとウォームホイールとにおける歯打ち等の異音の発生をなくし得、運転者の操舵感覚の向上を図り得る。軸連結機構100によれば、一対のカム面133及び134に対する一対のカム面153及び154の滑り移動を生じさせ、しかも弾性部材107にR方向の弾性剪断変形(捩れ変形)を生じさせることがない結果、弾性部材107の早期の劣化を回避できて、耐久性の向上を図り得る。
【0064】
尚、本例の軸連結機構1及び100は、電動式パワーステアリング装置に用いられて好適であるが、これに代えて、例えば、車輪のバンプおよびリバウンドに伴うキャンバー角や対地トレッドの変化を抑制して操縦安定性能を高めるべく、車両のサスペンション装置のアッパーリンクおよびロアリンクを伸縮制御する伸縮アクチュエータであって、例えば自動車のサスペンションのナックルと車体とを連結する伸縮アクチュエータとしてのトーコントロールアクチュエータに用いられてもよく、この場合、連結基体4及び104並びに連結基体5及び105の一方は、車体側に位置するトーコントロールアクチュエータのブラシ付きのモータの回転軸に連結された減速機の出力部材である回転軸に連結され、且つ、連結基体4及び104並びに連結基体5及び105の他方は、ナックル側に位置するトーコントロールアクチュエータの送りねじ機構の入力部材である回転軸に連結されてもよい。