特許第6001337号(P6001337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6001337制御器の故障時に電気式真空ポンプを始動するための等価回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001337
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】制御器の故障時に電気式真空ポンプを始動するための等価回路
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/52 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   B60T13/52
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-128108(P2012-128108)
(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公開番号】特開2012-254788(P2012-254788A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】10 2011 077 107.7
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・クンツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブリュクス
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−295230(JP,A)
【文献】 特開平07−251736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00 − 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキブースタ装置(300)で電気式真空ポンプ(200)を始動するための等価回路(100)において、
該等価回路が、ブレーキ操作を表す信号(111)を供給するための第1信号入力部(110)と、前記電気式真空ポンプの一次制御装置(140)の基準信号(121)を供給するための第2信号入力部(120)と、前記電気式真空ポンプ(200)を制御するための信号出力部(130)とを備え、
前記第1信号入力部(110)と前記信号出力部(130)とが、前記第1信号入力部(110)にブレーキ操作を表す信号が入力された場合に前記電気式真空ポンプ(200)を始動する信号が前記信号出力部(130)で出力されるように相互接続されており、
前記第2信号入力部(120)が、前記一次制御装置(140)の作動が可能であることを表す基準信号(121)が前記第2信号入力部(120)に印加されている場合には前記電気式真空ポンプを始動する信号の出力が前記信号出力部(130)で抑制されるように前記信号出力部(130)に接続されていること
を特徴とする、等価回路。
【請求項2】
ブレーキ操作を表す信号が、ブレーキライト、ブレーキライトスイッチ、ブレーキ圧センサ、力センサ、力スイッチ、ペダル距離センサおよび/またはペダル角度センサの信号である、請求項1に記載の等価回路。
【請求項3】
前記等価回路が、前記一次制御装置(140)とは別個の電流供給部を備える、請求項1または2に記載の等価回路。
【請求項4】
前記別個の電流供給部が、前記信号出力部(130)を介した信号の出力時に前記真空ポンプ(200)にも作動に不可欠な電圧を供給するように設計されている、請求項3に記載の等価回路。
【請求項5】
前記等価回路が監視回路を備え、該監視回路により、前記等価回路(100)の作動可能性を監視することができ、エラー発生時にはエラー信号が出力可能である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の等価回路。
【請求項6】
前記等価回路が遅延モジュール(150)を備え、該遅延モジュール(150)によって前記電気式真空ポンプ(200)を始動する信号(131)が、前記ブレーキ操作を表す信号(111)の入力後に、規定可能な遅延t1をもって前記信号出力部(130)で出力可能である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の等価回路。
【請求項7】
前記電気式真空ポンプ(200)を始動する信号(131)が、前記遅延モジュール(150)によって時間t2だけ、ブレーキ操作を表す信号(111)の印加時間を超えて前記信号出力部(130)で出力可能である、請求項6に記載の等価回路。
【請求項8】
ブレーキブースタシステム(300)のESP制御器(140)による電気式真空ポンプ(200)の制御時に機能不良を補償するための方法であって、次の方法ステップ:
ブレーキ操作を表す信号(111)を等価回路(100)に供給するステップと、
前記ESP制御(140)の作動可能性を表す基準信号(121)を前記等価回路(100)に供給するステップと、
前記電気式真空ポンプ(200)を始動する信号(131)を生成するステップと
を含む方法において、
前記ESP制御(140)の作動可能性を表す信号が前記等価回路(100)の信号入力部(120)に印加されている場合には、前記等価回路(100)の信号出力部(130)で、前記電気式真空ポンプ(200)を始動する信号(131)の出力を抑制することを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記電気式真空ポンプ(200)を始動する前記信号(131)の生成および/または前記等価回路(100)の前記信号出力部(130)における出力を、ブレーキ操作を表す信号(111)が時間t1だけ印加されている場合に遅延する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電気式真空ポンプ(200)を始動する信号(131)の生成および/または前記等価回路(100)の前記信号出力部(130)における出力が、ブレーキ操作を表す信号(111)が時間t2だけブレーキ操作を表す信号の印加時間を超えて印加された場合に前記信号出力部(130)で出力される、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるブレーキ増幅装置に使用される等価回路に係り、特に制御器の故障時に電気式真空ポンプを始動するための等価回路に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車では、運転手は制動時にブレーキブースタによって支援される。ブレーキブースタによって、自動車を制動するために不可欠な操作力が低減される。このためにブレーキブースタによって提供される補助力は、一般に自動車で使用される負圧式ブレーキブースタではブレーキブースタ内に形成された負圧と大気圧との間の差圧により生成される。
【0003】
ブレーキブースタを配置した場合にもブレーキペダルは従来の増幅器のないブレーキシステムの場合と同様にブレーキマスタシリンダに直接に作用し、マスタブレーキシリンダは、ブレーキ力を伝達するために使用されるブレーキ液をブレーキと連通する管路システム内に圧送する。ブレーキブースタによって、圧送圧力はシリンダ内のダイアフラムを介して支援され、ブレーキブースタの停止位置で、すなわち、ブレーキが操作されていない場合にダイアフラムの両側に負圧が印加されている。ブレーキペダルの操作により、弁を介して、ペダルに向いた側でダイアフラムに大気圧が印加され、これにより、調節された差圧に基づいて、ペダルに加えられたブレーキ力を同じ作用方向に支援する力が生じる。
【0004】
この場合、ブレーキブースタ内で不可欠な負圧を様々な形式で生成することができる。吸入管路に絞り弁を有する内燃機関では、周辺圧力に対して低減された圧力が絞り弁の後方で生成され、この圧力をブレーキブースタ内に案内することができる。もちろん、この負圧は、エンジンの部分負荷領域にのみ配置されている。絞り弁が完全に開かれている全負荷時には、ブレーキブースタに案内することができる負圧は生じない。
【0005】
例えば、ディーゼルエンジンまたはガソリン直接噴射を行う現在のガソリンエンジンの場合のように絞り弁のない内燃機関では、負圧式ブレーキブースタを作動するために不可欠な負圧を他の方法で生成する必要がある。負圧の生成は、例えば機械式真空ポンプ(MVP)または電気式真空ポンプ(EVP)によって行うことができる。一般に、より簡単な構成およびより良好な調整可能性を備えていることにより、現在の車両で不可欠な負圧を生成するためにはEVPが使用される。さらに、EVPは、内燃機関の作動状態とは無関係に真空を生成できるという利点を有する。これは、スタートー・ストップ機能を有する車両、ハイブリッド車両または電動車両においては特に重要である。
【0006】
ポンプの制御および調整は制御器により行われる。このようなEVPの制御部は、現在では一般に車両に組み込まれているエレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESP)を収容する制御器に様々な形で組み込まれている。ESPは、アンチ・ロックブレーキシステムおよびスリップ制御機構を介して、車両の個々のホイールへの駆動力およびブレーキ力の分配に影響を及ぼす。
【0007】
制御器のエラーにより真空ポンプをもはや駆動することができない場合にはブレーキブースタを作動するための負圧が提供されていないので、運転手はブレーキブースタの支援なしに車両を制動しなければならない。このような場合にもブレーキ装置が減速作用に関して法規を充たすことが構造的に保障されている必要がある。しかしながら、減速に関して法規が充たされたとしても、真空が供給されないことより生じるブレーキ装置の操作力は運転手にとって少なくとも不快なものとして感じられ、苛立たしい場合さえもある。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、ブレーキブースタ装置で電気式真空ポンプを始動するための等価回路が提案され、この等価回路は、ブレーキ操作を表す信号を供給するための第1信号入力部と、例えばESP制御器など電気式真空ポンプの一次制御装置の基準信号を供給するための第2信号入力部と、電気式真空ポンプを制御するための信号出力部とを備え、第1信号入力部と信号出力部とは、第1信号入力部にブレーキ操作を表す信号が入力された場合に電気式真空ポンプを始動する信号が信号出力部で出力されるように相互接続されており、第2信号入力部は、ESP制御器の作動が可能であることを表す基準信号が第2信号入力部に印加されている場合には電気式真空ポンプを始動する信号の出力が信号出力部で抑制されるように信号出力部に接続されている。
【0009】
本発明による等価回路により、EVPの一次制御装置としてのESP制御器が故障または停止した場合にもブレーキ増幅を保持するために十分な真空の供給が確保されている。
【0010】
本発明による等価回路は、ブレーキが操作されたか否かを評価する。このために、例えばブレーキライトスイッチの情報を考慮することができる。代替的および/または付加的に、ブレーキ操作を検出するためにブレーキライト、ブレーキ圧センサ、力センサ、力スイッチ、ペダル距離センサおよび/またはペダル角度センサの情報を考慮することができる。ブレーキ操作が検出された場合、EVPを制御するための制御信号が生成される。ブレーキ操作の評価と並んで、等価回路はEVPの一次制御装置の作動状態もしくは作動可能性に関する情報を基準信号の形式で受け取る。一次制御装置の作動が可能であり、EVPのエラーがない制御が基準信号にしたがって一次制御装置により確保された場合、等価回路によって生成された制御信号のEVPへの出力が抑制される。基準信号がなく、したがって一次制御装置の作動が可能ではないと仮定される場合、等価回路によって生成された制御信号がEVPに出力され、ブレーキブースタへの十分な真空の供給が確保される。
【0011】
本発明の一構成では、等価回路は、一次制御装置(140)とは別個の電流供給部を備える。これにより、作動確実性がさらに高まる。この場合、有利には、別個の電流供給部は、自動車のシステム始動時にこの別個の電流供給部の使用可能性が、大きいタイムラグなしに確保されるように設計されている。
【0012】
本発明の別の構成によれば、別個の電流供給部は、信号出力部を介した真空ポンプへの信号の出力時に、作動に不可欠な電圧を真空ポンプにも供給するように設計されている。これにより、システムのさらなる冗長性が得られる。
【0013】
本発明の別の構成によれば、等価回路は監視回路を備え、この監視回路により、等価回路の作動可能性を監視することができ、エラー発生時にはエラー信号を出力することができる。これにより、機能不良を早期に突き止め、作動確実性を保障することができる。
【0014】
本発明による等価回路の一構成では、等価回路は遅延モジュールを備え、この遅延モジュールによって電気式真空ポンプを始動する信号を、ブレーキ操作を表す信号の入力後に規定可能な遅延t1をもって信号出力部で出力することができる。これにより、有利には信号の質による不都合な影響を防止することができる。別の一構成では、遅延モジュールによって、時間t2だけブレーキ操作を表す信号の印加時間を超えて、電気式真空ポンプを始動する信号を信号出力部で出力することができる。これにより、ブレーキ解除時にブレーキブースタで生じる真空損失を補償することができる。
【0015】
さらに本発明は、ブレーキブースタシステムの一次制御装置による電気式真空ポンプの制御時に機能不良を補償するための方法であって、次の方法ステップ:
ブレーキ操作を表す信号を等価回路に供給するステップと、
一次制御装置の作動可能性を表す基準信号を等価回路に供給するステップと、
電気式真空ポンプを始動する信号を生成するステップと
を含む方法において、
一次制御装置の作動可能性を表す信号が等価回路の信号入力部に印加されている場合には、等価回路の信号出力部で、電気式真空ポンプを始動する信号の出力を抑制することを特徴とする方法に関する。
【0016】
本発明による方法の一構成では、電気式真空ポンプを始動する信号の生成および/または等価回路の信号出力部における出力は、ブレーキ操作を表す信号が時間t1だけ印加されている場合に遅延される。これにより、信号の質に起因する不都合な影響を回避することができる。
【0017】
本発明による方法の別の構成では、電気式真空ポンプを始動する信号の生成および/または等価回路の信号出力部における出力は、ブレーキ操作を表す信号が時間t2だけブレーキ操作を表す信号の印加時間を超えて印加された場合に信号出力部で出力される。これにより、ブレーキの解除によってブレーキブースタに起こり得る真空損失を補償することができる。
【0018】
本発明による方法の別の構成では、一次制御装置の作動準備を示す基準信号が等価回路に印加されていない場合には、電気式真空ポンプを始動する信号が等価回路の信号出力部でブレーキ操作を表す信号の有無とは無関係にパルス状に出力される。これにより、一次制御装置が故障した場合にもブレーキブースタへの連続的な真空供給を確保することができ、ブレーキ操作を確実に監視することができ、このことは、システムのさらなる冗長性ひいては故障に対する安全性に貢献する。
【0019】
次に本発明を図面に基づきさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一次制御装置が作動可能な場合の本発明による等価回路の機能概略図である。
図2】一次制御装置が故障した場合の本発明による等価回路の機能概略図である。
図3】真空ポンプへの制御信号の出力遅延を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、一次制御装置140が作動可能な場合の本発明による等価回路100の作動概略図を示す。ブレーキブースタ装置300で電気式真空ポンプ200を始動するための等価回路100は、ブレーキ操作を表す信号111を供給するための第1信号入力部110と、電気式真空ポンプ200の一次制御装置140の基準信号121を供給するための第2信号入力部120とを備える。この場合、例えばESP制御器が一次制御装置140としての役割を果たすことができる。さらに等価回路は、電気式真空ポンプ200を制御するための信号出力部130を備える。第1信号入力部110と信号出力部130とは相互に接続されており、ブレーキ操作を表す信号111が第1信号入力部110に入力された場合には電気式真空ポンプ200を始動する信号131が信号出力部130で出力される。第2信号入力部120は信号出力部130に接続されており、一次制御装置140が作動可能であることを表す基準信号121が第2信号入力部120に印加されている場合には、信号出力部130において電気式真空ポンプ200を始動する信号131の出力が抑制される。電気式真空ポンプ200の始動は、作動可能な一次制御装置140によって得られる。さらに等価回路100では、信号131の出力を信号111の入力に対して遅延して行うことができる遅延モジュールが配置されている。
【0022】
図2は、一次制御装置140が故障した場合の本発明による等価回路の作動概略図を示す。一次制御装置140に故障が生じ、これにより、一次制御装置140の作動が可能でない場合、電気式真空ポンプ200を一次制御装置140によって始動することができない。一次制御装置140の作動が可能ではないので信号入力部120には基準信号121が印加されていない。電気式真空ポンプ200を始動するためにブレーキ操作を表す信号111が信号入力部110に印加されているので、等価回路によって生成される制御信号131の出力は抑制されずに信号出力部130を介して電気式真空ポンプ200に出力される。これにより、一次制御装置140の作動が可能ではない場合にもブレーキ操作時には電気式真空ポンプ200が始動され、ブレーキブースタ装置300への十分な真空供給が確保される。
【0023】
図3は、真空ポンプへの制御信号の出力遅延を示す。遅延モジュール150は、電気式真空ポンプを始動する信号131の出力を、信号入力部110における信号111の入力に対してt1だけ遅延する。これにより、信号111の質に起因して生じる可能性のある不都合な影響を防止することができる。さらに遅延モジュール150によって、信号131の出力を信号111の印加よりもt2だけ遅延させて行うことができ、これにより、電気式真空ポンプによりブレーキ操作時間を超えても真空が生成され、ブレーキ解除により生じるブレーキブースタにおける真空損失を補償することができる。さらに遅延モジュール150は電気式真空ポンプを始動する信号131をパルス状に出力することができる。このために信号131は時間t3にわたって出力され、時間t4にわたって出力が抑制される。このように電気式真空ポンプを始動する信号131がパルス状に出力されることにより、ブレーキの継続操作時に、真空ポンプが継続的に作動し、これに伴い真空ポンプが熱により過剰に負荷されることが防止される。
【符号の説明】
【0024】
100 等価回路
110 第1信号入力部
111 信号
120 第2信号入力部
121 基準信号
130 信号出力部
131 信号
140 一次制御信号
150 遅延モジュール
200 電気式真空ポンプ
300 ブレーキブースタ装置
図1
図2
図3