(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る内燃機関の吸気装置の第1実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、車両に搭載されたエンジンシステム1の構成図を示している。エンジンシステム1は、内燃機関としてのディーゼルエンジン10(以下、単にエンジンという)と、そのエンジン10の運転に必要な各種構成とを備える形で構成されている。なお、本実施形態では、エンジン10は、4つの気筒11(シリンダ)を有した4気筒エンジンである。エンジン10は、各気筒11において、吸気、圧縮、燃焼、排気の4行程を経て動力を生み出す4ストローク機関である。吸気、圧縮、燃焼、排気の4行程による燃焼サイクル(「720°CA」周期)が、例えば各気筒11間で「180°CA」ずらして逐次実行される。
図1の右側の気筒11から順に1番から4番までの番号を付けたときに、例えば、1番、3番、4番、2番の気筒11の順に燃焼サイクルが実行される。
【0013】
各気筒11には、筒内(気筒11の内部)に吸入される吸入空気(ガス)の導入口となる吸気ポートとして、スワール生成ポート12とタンブル生成ポート13の2つの吸気ポートが接続されている。それら吸気ポート12、13は、気筒11の上部に設けられたエンジンヘッド内に形成されている。スワール生成ポート12は、筒内に吸入されるガスにスワール流(横渦)を生じさせる吸気ポートである。タンブル生成ポート13は、筒内に吸入されるガスにタンブル流(縦渦)を生じさせる吸気ポートである。これら2つの吸気ポート12、13により、インジェクタ(図示外)から噴射された燃料と吸気ポート12、13から吸入されたガスとの混じりを良くできる。
【0014】
また、スワール生成ポート12と筒内とを繋ぐ開口171にはその開口171の開閉を行う吸気バルブ141が設けられている。同じく、タンブル生成ポート13と筒内とを繋ぐ開口172にはその開口172の開閉を行う吸気バルブ142が設けられている。また、各気筒11には、筒内での燃焼後のガスを筒内から排出する排気ポートが接続されている。その排気ポートと筒内とを繋ぐ開口にはその開口の開閉を行う排気バルブ15が設けられている。
【0015】
エンジンシステム1には、筒内に吸入される新気が流れる吸気通路21が設けられている。その吸気通路21には、上流側から、新気を圧縮する過給器31、過給器31で圧縮された新気を冷却するインタークーラ32が設けられている。また、インタークーラ32より下流の吸気通路21には、新気量を調整するスロットル33が設けられている。そのスロットル33より下流の吸気通路21から、各気筒11(厳密にはエンジンヘッド)に繋がる通路22(インテークマニホールドの通路。以下、EGRリーンガス通路という)が分岐している。各EGRリーンガス通路22は各気筒11のスワール生成ポート12に接続されている。EGRリーンガス通路22及び吸気通路21には、新気のみ又は新気にEGRバルブ41の開度に応じたEGRガスが混ざったガスglean(以下、EGRリーンガスという)が流れる。
【0016】
また、各気筒11には、各気筒11から排出される排気ガスをまとめて排気通路27に渡すためのエキゾーストマニホールド23が接続されている。なお、排気通路27には、上流側から、排気ガスからエネルギーを回収する過給器のタービン37(可変ノズルターボ(VNT))、排気ガスに対して所定の処理を行う後処理装置38、排気ガスの流量を調整する排気絞り弁39がこの順で配置されている。後処理装置38は、排気ガス中のCO、HC等を酸化して除去する酸化触媒や排気ガス中のPMを除去するDPFなどである。
【0017】
後処理装置38より下流の排気通路27に一端が接続され、他端が過給器37よりも上流にて吸気通路21に接続された低圧EGR通路28が設けられている。その低圧EGR通路28は排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路21に還流するための通路である。低圧EGR通路28には、その低圧EGR通路28を流れるEGRガスを冷却する低圧EGRクーラ40や、そのEGRガスの流量を調整する低圧EGRバルブ41が設けられている。なお、これら低圧EGR通路28、低圧EGRクーラ40及び低圧EGRバルブ41を有した低圧EGRシステムが備えられていなくても良い。この場合には、吸気通路21には新気のみが流れることになる。
【0018】
エキゾーストマニホールド23には、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流させるための高圧EGR通路24が接続されている。その高圧EGR通路24には、高圧EGR通路24を流れるEGRガスを冷却する高圧EGRクーラ34や、そのEGRガスの流量を調整する高圧EGRバルブ35が設けられている。その高圧EGRバルブ35より下流の高圧EGR通路24からは、各気筒11(厳密にはエンジンヘッド)に繋がる通路25(以下、EGRリッチガス通路という)が分岐している。各EGRリッチガス通路25は、各気筒11のタンブル生成ポート13に接続されている。EGRリッチガス通路25には、EGRリーンガス通路22を流れるガス、すなわちEGRリーンガスよりもEGRガスの濃度が濃い(排気濃度が高い、酸素濃度が低い)ガスgrich(以下、EGRリッチガスという)が流れる。
【0019】
また、エンジンシステム1には、吸気通路21と高圧EGR通路24とを接続する接続通路29が設けられている。その接続通路29は、EGRリーンガス通路22に分岐する前の吸気通路21と、EGRリッチガス通路25に分岐する前の高圧EGR通路24とを接続している。その接続通路29により、吸気通路21及びその下流のEGRリーンガス通路22を流れるガスの圧力と、高圧EGR通路24及びその下流のEGRリッチガス通路25を流れるガスの圧力とを同等にできる。その結果、筒内において、圧力の違いによりEGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層分布が乱れるのを抑制できる。
【0020】
さらに、低圧EGR通路28から還流されるEGRガスやEGRリッチガス通路25を流れるEGRリッチガス(排気ガス)だけではEGR率の目標値(目標EGR率)を達成できない場合には、接続通路29を介して高圧EGR通路24から吸気通路21にEGRガスを流し、又は吸気通路21から高圧EGR通路24に新気を流すことで、目標EGR率を達成できるようになっている。すなわち、目標EGR率が高い場合には、接続通路29を介して高圧EGR通路24から吸気通路21にEGRガスを流して吸気通路21及びEGRリーンガス通路22を流れるEGRリーンガスのEGR濃度を高くすることで、EGR率を上げることができる。反対に目標EGR率が低い場合には、接続通路29を介して吸気通路21から高圧EGR通路24に新気を流して高圧EGR通路24及びEGRリッチガス通路25を流れるEGRリッチガスのEGR濃度を低くすることで、EGR率を下げることができる。なお、EGR率は、筒内に吸入されるEGRガス(排気ガス)の量を、筒内に吸入されるガスの総吸入量(新気の吸入量+EGRガスの吸入量)で割った値である。
【0021】
エンジンシステム1には、各バルブ(スロットル33、EGRバルブ35、41、吸気バルブ141、142、排気バルブ15など)の開閉(開閉時期や開度など)やインジェクタなどを制御することでエンジン10の運転を制御するECU50が設けられている。そのECU50は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータを主として構成されている。ECU50には、エンジン10の回転数を検出する回転数センサ61や、車両を運転する運転者の要求トルクを車両側に知らせるための運転操作部に相当するアクセルペダルの操作量(踏み込み量)を検出するアクセルセンサ62が接続されている。そして、ECU50は、それらセンサから入力されたエンジン回転数、アクセルペダルの操作量等に基づき、燃料噴射時期や噴射量や目標EGR率を決定したり、各バルブの開閉を制御したりする。また、ECU50は、自身が実行する処理のプログラム等の各種情報を記憶したROM、RAM等のメモリ51を備えている。
【0022】
ECU50は、エンジン10から排出されるエミッションを抑制するために、EGRリーンガスとEGRリッチガスとが筒内で成層分布するように、それらEGRリーンガス、EGRリッチガスを筒内に吸入させている。詳細には、ECU50は、吸気行程の間中、スワール生成ポート12からEGRリーンガスを吸入し続ける。また、ECU50は、EGRリーンガスの吸入開始に遅れてEGRリッチガスの吸入を開始させる。これにより、EGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層化を実現している。
【0023】
ここで、
図2は、吸気行程におけるクランク角に対する各吸気バルブ141、142のリフト量変化を示している。
図2において、ライン201は、スワール生成ポート12に設けられた吸気バルブ141のリフト量変化を示している。ライン202は、タンブル生成ポート13に設けられた吸気バルブ142のリフト量変化を示している。なお、
図2は、例えば、1番目の気筒11の吸気行程の期間(クランク角が0°〜180°CAの期間)での、1番目の気筒11の各吸気バルブ141、142のリフト量変化を示している。2番〜4番目の気筒11の各吸気バルブ141、142のリフト量変化も
図2と同様となっている。すなわち、1番目の気筒11の次に吸気行程が行われる3番目の気筒11の各吸気バルブ141、142は、3番目の気筒11の吸気行程の期間(180°〜360°CAの期間)において、
図2と同様のリフト量変化を示す。3番目の気筒11の次に吸気行程が行われる4番目の気筒11の各吸気バルブ141、142は、4番目の気筒11の吸気行程の期間(360°〜540°CAの期間)において、
図2と同様のリフト量変化を示す。4番目の気筒11の次に吸気行程が行われる2番目の気筒11の各吸気バルブ141、142は、2番目の気筒11の吸気行程の期間(540°〜720°CAの期間)において、
図2と同様のリフト量変化を示す。
【0024】
図2に示すように、ECU50は、タンブル生成ポート13に設けられた吸気バルブ142の開弁開始時期を、スワール生成ポート12に設けられた吸気バルブ141の開弁開始時期から遅らせている。さらに、ECU50は、吸気バルブ142のリフト量を吸気バルブ141のリフト量より小さくしている。なお、各吸気バルブ141、142の閉弁時期は同じとなっている。なお、
図2において、ライン201(吸気バルブ141)のリフトが開始されてから、ライン201及びライン202(吸気バルブ141、142)のリフトが終了するまでの期間が1気筒当たりの吸気行程の期間である。
【0025】
図3は、各吸気バルブ141、142が
図2のように制御されたときの各吸気ポート12、13から吸入されるガスの流量のクランク角に対する変化を示している。
図3において、ライン203は、スワール生成ポート12から吸入されるガス、つまりEGRリーンガスの吸気流量を示している。ライン204は、タンブル生成ポート13から吸入されるガス、つまりEGRリッチガスの吸気流量を示している。
図3のライン203が示すように、EGRリーンガスは吸気行程の間中、吸入され続ける。これに対し、吸気バルブ141の開弁に対して吸気バルブ142の開弁が遅れる結果、EGRリッチガスは、吸気行程の前半よりも後半で吸気流量が増加している(ライン204参照)。
【0026】
また、
図4は、スワール生成ポート12から筒内110に吸入されるガスの流れ(スワール流)と、タンブル生成ポート13から吸入されるガスの流れ(タンブル流)とを模式的に示している。
図4に示すように、スワール流(EGRリーンガス)は筒内110の外周寄りに吸入されるのに対し、タンブル流(EGRリッチガス)は筒内110の中央寄りに吸入される。その結果、
図5に示すように、吸気行程終了時(圧縮行程開始時)では、筒内110の下部(ピストン16側)にEGRリーンガスgleanが配置され、上部(吸気バルブ側)にEGRリッチガスgrichが配置される。詳細には、筒内110の上部の中央付近にEGRリッチガスgrichが配置され、そのEGRリッチガスgrichの周りにEGRリーンガスgleanが配置される。このように、圧縮行程開始時に、EGRリーンガスgleanとEGRリッチガスgrichとを筒内110で層状に分布させることができる。
【0027】
その後、圧縮行程の終了時になると、
図6に示すように、インジェクタ47の直下の中央エリア163にEGRリッチガスgrichを、つまり、排気濃度が高い(酸素濃度が低い)ガスを配置できる。また、中央エリア163の周りのスキッシュエリア162(ピストン16の上面外周部とエンジンヘッドの間の隙間)にEGRリーンガスgleanを配置できる。さらに、ピストン16の上面(頂部)にはキャビティ161が形成されており、そのキャビティ161の底面(以下、キャビティ底面161という)にEGRリーンガスgleanを配置できる。
【0028】
また、
図7は、
図6と同様に圧縮行程終了時における筒内の様子を示し、筒内の各部における排気濃度の違いを色の濃淡の違いで表した図である。
図7において、色が濃くなるほど排気濃度が高いことを示している。
図7に示すように、EGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層化を行うことにより、中央エリア163は排気濃度を高く(酸素濃度を低く)、キャビティ底面161やスキッシュエリア162は排気濃度を低く(酸素濃度を高く)することができる。
【0029】
中央エリア163は、酸素量が多くかつ温度が高くなりやすいエリアであり、窒素と酸素が結びついてNOxが発生しやすいエリアとなっている。これに対し、キャビティ底面161やスキッシュエリア162は、酸素量が少なくスモーク(煤)が発生しやすいエリアである。よって、中央エリア163に配置された、酸素濃度が低いEGRリッチガスgrichの層はNOxの低減に寄与し、スキッシュエリア162及びキャビティ底面161に配置された、酸素濃度が高いEGRリーンガスgleanの層はスモークの低減に寄与する。つまり、
図6、
図7のように層状に配置することで、エミッション(NOx、スモーク)を低減できる。
【0030】
上述したように、エンジンシステム1では、EGRリーンガスが流れる通路とEGRリッチガスが流れる通路とを上流にて接続する接続通路29やEGRバルブ35、41の開度調整により、平均EGR率を調整でき、目標EGR率を達成できるようになっている。ところが、タンブル生成ポート13から吸入するEGRリッチガスの吸入量(EGRリッチガス量)を目標EGR率にかかわらず固定とすると、目標EGR率によっては接続通路29からEGRリーンガスとEGRリッチガスとの混合が進み、筒内でのEGR成層化の程度が低下してしまう。そのことを
図8を参照して説明する。
図8は、EGR率が低いときと高いときとで、タンブル生成ポート13から吸入されたEGRリッチガス量に応じてEGR成層化の程度がどのように変化するかを模式的に示した図である。なお、EGR成層化の程度とは、吸気行程の後、圧縮行程が終了した段階で最も排気濃度が高い部分(最も酸素濃度が低い部分)と最も排気濃度が低い部分(最も酸素濃度が高い部分)との差を意味する。
図8において、ライン205は、EGR率が低いときにおけるEGRリッチガス量に対するEGR成層化の程度の変化を示している。ライン206は、EGR率が高いときにおけるEGRリッチガス量に対するEGR成層化の程度の変化を示している。
【0031】
EGR成層化の程度を高くするためには、スワール生成ポート12からはできるだけ排気ガスが混ざっていないガス、つまり新気のまま吸入し、タンブル生成ポート13からはできるだけ新気が混ざっていないガス、つまりEGRガス(排気ガス)のまま吸入するのが望ましい。つまり、EGR成層化の程度を高くするためには、接続通路29を介して吸気通路21から高圧EGR通路24に流入する新気(EGRリーンガス)、高圧EGR通路24から吸気通路21に流入するEGRガス(EGRリッチガス)をできるだけ少なくするのが望ましい。
【0032】
例えば、目標EGR率が30%であるとすると、スワール生成ポート12からは1回の吸気行程で吸入される総吸入量の70%の新気が吸入され、タンブル生成ポート13からは総吸入量の30%のEGRガスが吸入されたときに、理論上、EGR成層化の程度は最も高くなる。一方で、タンブル生成ポート13から例えば総吸入量の20%のEGRリッチガス(EGRガス)しか吸入されなかった場合には、目標EGR率30%を満足させるためには、残り10%分のEGRガスを接続通路29から吸気通路21に流入させて、スワール生成ポート12から吸入する必要がある。そうすると、EGRリーンガス通路22を流れるEGRリーンガスと、EGRリッチガス通路25を流れるEGRリッチガスとの間で排気濃度の差が小さくなってしまい、筒内においてEGR成層化の程度が低下してしまう。
【0033】
反対に、タンブル生成ポート13から例えば総吸入量の40%のEGRリッチガスが吸入された場合には、そのEGRリッチガスがEGRガスそのものとすると目標EGR率30%を超えてしまうので、接続通路29から高圧EGR通路24に10%分の新気を流入させて、EGRリッチガスの排気濃度を薄める必要がある。この場合も、EGRリーンガスとEGRリッチガスとの間で排気濃度の差が小さくなってしまい、筒内においてEGR成層化の程度が低下してしまう。つまり、目標EGR率を固定とすると、
図8の各ライン205、206で示すように、EGRリッチガス量が少なすぎても多すぎてもEGR成層化の程度が低下してしまう。具体的に言うと、EGRリッチガス量がゼロから増えていくにしたがって、EGR成層化の程度は最初は上昇していく。そして、さらに、EGRリッチガス量が増えていくと、EGR成層化の程度は反対に低下していく。
【0034】
また、例えば、目標EGR率が40%のときでは、スワール生成ポート12からは1回の吸気行程で吸入される総吸入量の60%の新気が吸入され、タンブル生成ポート13からは総吸入量の40%のEGRガスが吸入されたときに、理論上、EGR成層化の程度は最も高くなる。つまり、目標EGR率が変わると、EGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係も変わる。具体的には、
図8に示すように、EGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係を示すラインが、EGR率の増加によりEGRリッチガス量が増加する方向にシフトする。つまり、EGR率が低いときのライン205よりも、EGR率が高いときのライン206のほうが、EGR成層化の程度を最高にするためのEGRリッチガス量が増加する。
【0035】
そのため、
図8に示すように、例えばEGR率にかかわらずEGRリッチガス量をX1で固定とした場合には、EGR率が低いとき(ライン205)にはEGR成層化の程度を高くできるものの、EGR率が高くなったときには(ライン206)、EGR成層化の程度が低下してしまう。
【0036】
そこで、ECU50は、吸気行程終了時に
図5のように成層分布するようにEGRリーンガスとEGRリッチガスとを吸入しつつ、目標EGR率が高いときには、低いときに比べてEGRリッチガス量が増加するように、吸気バルブ142の制御の仕方を変更している。具体的には、ECU50は、
図9で示すように、目標EGR率に応じて吸気バルブ142のリフト量や開弁開始時期を変更している。
図9は、クランク角に対する各吸気バルブ141、142のリフト量の変化を示し、詳細には、ライン207は吸気バルブ141のリフト量を、ライン208は目標EGR率が低いときにおける吸気バルブ142のリフト量を、ライン209は目標EGR率が高いときにおける吸気バルブ142のリフト量を示している。
【0037】
ECU50は、
図9のライン208、209で示すように、目標EGR率が高いときには、低いときに比べて、吸気バルブ142のリフト量を大きくしたり、開弁開始時期を進角させたりする。なお、リフト量の変更と、開弁開始時期の変更のどちらか一方のみを行っても良いし、両方を行っても良い。
【0038】
図10は、目標EGR率が低いときにおける、つまり、
図9のライン207、208のように各吸気バルブ141、142を制御したときにおけるクランク角に対する吸気流量の変化を示している。
図10のライン210は、スワール生成ポート12から吸入されるEGRリーンガスの吸気流量を示している。
図10のライン211は、タンブル生成ポート13から吸入されるEGRリッチガスの吸気流量を示している。
図11は、目標EGR率が高いときにおける、つまり、
図9のライン207、209のように各吸気バルブ141、142を制御したときにおけるクランク角に対する吸気流量の変化を示している。
図11のライン212は、スワール生成ポート12から吸入されるEGRリーンガスの吸気流量を示している。ライン213は、タンブル生成ポート13から吸入されるEGRリッチガスの吸気流量を示している。
【0039】
図10、
図11のライン211、213の比較によると、目標EGR率が増加して、
図9のライン208からライン209のように吸気バルブ142のリフト量や開弁開始時期を変更することで、EGRリッチガスの吸気流量が増加していることがわかる。このとき、目標EGR率に応じて吸気バルブ142のリフト量や開弁開始時期をどの程度変更するかは、
図8の関係を考慮して決定する。具体的には、例えば
図8において、EGR率が低いときにはEGRリッチガス量がX1(ライン205でEGR成層化の程度が最高になるときのEGRリッチガス量)になるように吸気バルブ142のリフト量や開弁開始時期を決定する。また、EGR率が高いときにはEGRリッチガス量がX2(ライン206でEGR成層化の程度が最高になるときのEGRリッチガス量)になるように吸気バルブ142のリフト量や開弁開始時期を決定する。これにより、EGR率が低いときも高いときも接続通路29から流入するガス量を少なくでき、結果、EGR成層化の程度を高い値に維持できる。
【0040】
具体的には、ECU50は、例えば
図12のフローチャートの処理により、EGR率に応じた吸気バルブ142の制御を実行する。具体的には、先ず、エンジン10の運転状態として、回転数センサ61(
図1参照)が検出したエンジン回転数と、エンジン10の負荷とを取得する(S11)。なお、エンジン10の負荷として、具体的には、アクセルセンサ62(
図1参照)が検出するアクセルペダルの操作量に基づいてECU50自身が求めた燃料噴射量を取得する。
【0041】
次に、S11で取得したエンジン10の運転状態(エンジン回転数、負荷)に基づいて目標EGR率を設定する(S12)。具体的には、メモリ51(
図1参照)に、エンジン10の運転状態に応じた目標EGR率のマップをあらかじめ記憶しておき、そのマップと、S11で取得した今回の運転状態とから、目標EGR率を設定する。
【0042】
次に、S12で設定した目標EGR率に応じた吸気バルブ142のリフト量(開度)や開弁開始時期を決定する(S13)。具体的には、目標EGR率ごとに、
図8で示すようなEGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係をあらかじめ調べておく。そして、得られたEGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係に基づいて、各目標EGR率においてEGR成層化の程度が高くなるEGRリッチガス量(例えばEGR成層化の程度が最高になるEGRリッチガス量)を求める。そして、そのEGRリッチガス量にするための吸気バルブ142のリフト量や開弁開始時期を求める。得られた目標EGR率ごとのリフト量や開弁開始時期をメモリ51に記憶しておく。
【0043】
ここで、
図13は、メモリ51に記憶された目標EGR率ごとの吸気バルブ142の開度(リフト量)のテーブル300を例示している。また、
図14は、メモリ51に記憶された目標EGR率ごとの吸気バルブ142の開弁開始時期のテーブル310を例示している。テーブル300には、目標EGR率が格納されるEGR率格納欄301と、そのEGR率格納欄301に格納された各目標EGR率に応じた吸気バルブ142の開度が格納される開度格納欄302とが設けられている。同様に、テーブル310には、目標EGR率が格納されるEGR率格納欄311と、そのEGR率格納欄311に格納された各目標EGR率に応じた吸気バルブ142の開弁開始時期が格納される開時期格納欄312とが設けられている。なお、
図13、
図14のEGR率格納欄301、311の各欄には、目標EGR率の範囲が格納されている。
【0044】
図13の開度格納欄302には、
図9で説明したように、目標EGR率が高くなるほど大きい開度が格納される。つまり、
図13において、開度A1よりも開度A2のほうが大きく、その開度A2よりも開度A3のほうが大きい。
図14の開時期格納欄312には、
図9で説明したように、目標EGR率が高くなるほど進角した開弁開始時期が格納される。なお、目標EGR率に応じて開度だけを変更する場合には、
図14のテーブル310は不要であり、目標EGR率に応じて開弁開始時期だけを変更する場合には、
図13のテーブル300は不要である。
【0045】
そしてS13では、S12で設定した今回の目標EGR率に応じた開度や開弁開始時期を、メモリ51に記憶された
図13、
図14のテーブル300、310から読み出す。
【0046】
次に、各気筒11の吸気行程において、S12で決定した作動プロフィール(開度や開弁開始時期)で吸気バルブ142を作動させる(S14)。これによって、目標EGR率に応じてEGRリッチガス量が増減し、これにより、目標EGR率が変化してもEGR成層化の程度を高い値に維持できる。S14の後、
図12のフローチャートの処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、目標EGR率に応じて吸気バルブ142の制御の仕方を変更しているので、接続通路29からEGRリーンガス通路22に流入するEGRリッチガス、EGRリッチガス通路25に流入するEGRリーンガスの流入量を少なくできる。これにより、EGR成層化の程度が低下するのを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、EGRリーンガスとEGRリッチガスとが別々の吸気ポートから吸入されるので、特許文献1のように、同じ吸気ポートからバルブの切り替えで交互に吸入する場合に比べて、EGR成層化の程度を向上できる。特許文献1の方法では、新気とEGRガスとの吸入を切り替えるバルブの応答時間に、それら新気、EGRガスとが混合してしまい、結果、EGR成層化の程度が低下してしまう。また、本実施形態では、スワール生成ポートに設けられた吸気バルブと、タンブル生成ポートに設けられた吸気バルブとの間で開弁時期に差を設けた可変バルブ機構を採用することで、成層化を実現している。これにより、吸気バルブ以外に、EGRリーンガスやEGRリッチガスの吸入を制御するバルブを設ける必要がないので、バルブ数を削減できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図15は本実施形態のエンジンシステムの構成図を示している。なお、
図15において、
図1と変更が無い部分には同一符号を付している。
図15のエンジンシステム2は、吸気制御バルブ42とアクチュエータ43とが設けられている点で
図1のエンジンシステム1と異なっており、それ以外は
図1のエンジンシステム1と同じである。
【0050】
吸気制御バルブ42は、EGRリッチガス通路25に設けられ、そのEGRリッチガス通路25の開閉を行うバルブである。吸気制御バルブ42としては例えばバタフライ弁やシャッター弁などが用いられる。吸気制御バルブ42の設置位置はできるだけ吸気バルブ142に近いほうが良い。なぜなら、吸気バルブ142から吸気制御バルブ42までの容積が小さくなり、吸気流量の制御性が良くなるからである。吸気制御バルブ42はタンブル生成ポート13内に設けられていたとしても良い。なお、吸気制御バルブ42は、各気筒11のEGRリッチガス通路25ごとに設けられている。
【0051】
アクチュエータ43は、吸気制御バルブ42に接続してその吸気制御バルブ42を作動させる。そのアクチュエータ43は、例えばモータであったり、油圧、負圧で作動するアクチュエータであったりする。なお、アクチュエータ43は、吸気制御バルブ42ごとに設けられたとしても良いし、4つの吸気制御バルブ42間で共通のアクチュエータであったとしても良い。
【0052】
本実施形態のECU50は、吸気行程中に吸気制御バルブ42の開閉の制御を行うことで、EGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層化を実現する。ここで、
図16は、吸気行程において吸気制御バルブ42をどのように開閉させるかを説明する図である。詳細には、
図16は、クランク角に対する吸気バルブ141、142のリフト量の変化(
図16(A))、吸気制御バルブ42の開度の変化(
図16(B))、各吸気ポート12、13から吸入されるガスの流量の変化(
図16(C))を示している。なお、
図16(A)〜(C)間で横軸のクランク角が同じとなっている。なお、
図16(B)において、吸気制御バルブ42が閉弁状態の開度を0°、全開状態の開度を90°としている。また、
図16(C)において、ライン214は、スワール生成ポート12から吸入されるガス、つまりEGRリーンガスの吸気流量を示している。ライン215は、タンブル生成ポート13から吸入されるガス、つまりEGRリッチガスの吸気流量を示している。
【0053】
図16(A)に示すように、本実施形態では、ECU50は、両吸気バルブ141、142(
図15参照)を同期して作動させる。また、
図16(B)に示すように、ECU50は、吸気制御バルブ42を吸気バルブ142の開弁開始時期に遅れて開弁、つまり吸気行程の途中から開弁するように、アクチュエータ43を駆動させる。なお、
図16(B)では、吸気行程の終了時で吸気制御バルブ42が全開となる例を示しているが、ECU50は、吸気行程の終了前に吸気制御バルブ42を全開にし、その後、吸気行程の終了時には閉弁するようにしても良い。これによって、
図16(C)のライン214で示すように、EGRリーンガスは、吸気行程の間中(吸気行程の前半、後半ともに)、吸入され続ける。これに対し、ライン215で示すように、EGRリッチガスは、吸気行程の前半よりも後半で吸気流量が増加している。なお、
図16(C)では、吸気行程の前半にもEGRリッチガスが多少吸入されていることを示しているが、これは吸気制御バルブ42の漏れなどによるものであり、意図した吸入ではない。
【0054】
EGRリーンガスとEGRリッチガスとが
図16(C)のように吸入される結果、吸気行程終了時に
図5のように成層分布させることができ、圧縮行程終了時に
図6のように成層分布させることができる。よって、エミッションを抑制できる。
【0055】
そして、ECU50は、第1実施形態と同様の趣旨で、目標EGR率が高いときには低いときに比べてEGRリッチガス量が増加するように、吸気制御バルブ42の開度を大きくしたり、開弁開始時期を進角させたりする。具体的には、メモリ51には、
図13、
図14と同様の、目標EGR率ごとの吸気制御バルブ42の開度や開弁開示時期のテーブルが記憶される。そして、
図12のS13では、そのテーブルから、今回の目標EGR率に応じた吸気制御バルブ42の開度や開弁開始時期を読み出す。続くS14では、各気筒11の吸気行程において、S13で読み出した開度や開弁開始時期で吸気制御バルブ42を作動させる。これによって、接続通路29からEGRリーンガス通路22に流入するEGRリッチガス、EGRリッチガス通路25に流入するEGRリーンガスの流入量を少なくでき、ひいてはEGR成層化の程度が低下するのを抑制できる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、両吸気バルブ141、142間で開弁時期に差を設ける必要がないので、吸気バルブの制御が容易となる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱いない限度で種々の変更が可能である。例えば4つの気筒を有したエンジンシステムに本発明を適用した例を説明したが、単気筒エンジンや4気筒エンジン以外の多気筒エンジンの吸気に本発明を適用しても良い。また、上記実施形態では、ディーゼルエンジンの吸気に本発明を適用した例を説明したが、ガソリン直噴エンジンの吸気に本発明を適用しても良い。