特許第6001520号(P6001520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001520
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】ターボファンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/62 20060101AFI20160923BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   F04D29/62 C
   F04D29/28 R
   F04D29/28 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-227807(P2013-227807)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86827(P2015-86827A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年2月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】709002303
【氏名又は名称】日清紡メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】和田 泉
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4821084(JP,B2)
【文献】 特開2005−155510(JP,A)
【文献】 特許第5077035(JP,B2)
【文献】 特許第4294046(JP,B2)
【文献】 特開平10−274196(JP,A)
【文献】 特開平8−159091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28 − 29/30
F04D 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部にモータの回転軸に固定されるボスを有する主板と、吸込み導風壁を形成するシュラウドと複数の羽根部材を熱可塑性樹脂で別々に成形し、
前記主板は、前記複数の羽根部材との嵌合部を有し、
前記シュラウドは前記複数の羽根部材との嵌合部を有し、
前記羽根部材は中空成形またはブロー成形で一体となるように成形した羽根部材であり、
前記複数の羽根部材を、前記主板と前記シュラウドの前記複数の嵌合部に回転軸に平行に嵌合させ超音波溶着にて一体化するターボファンの製造方法であって、
前記羽根部材を中空成形またはブロー成形するために前記羽根部材に形成するエアー吸引穴は、前記羽根部材の前記主板の嵌合部または前記シュラウドの嵌合部に嵌め込まれる部位に設けたことを特徴とするターボファンの製造方法。
【請求項2】
前記主板と前記羽根部材との嵌合部、及び前記シュラウドと前記羽根部材との嵌合部に溶着エッジを設けたことを特徴とする請求項1に記載のターボファンの製造方法。
【請求項3】
前記シュラウドと前記羽根部材との嵌合部に設けた溶着エッジは、嵌合部の中央から羽根部材の正圧側または負圧側に偏らせて設けたことを特徴とする請求項1または請求項に記載のターボファンの製造方法。
【請求項4】
前記シュラウドと前記羽根部材との嵌合部に設けた溶着エッジは、嵌合部の中央に設けたことを特徴とする請求項1または請求項に記載のターボファンの製造方法。
【請求項5】
前記羽根部材は、主板との嵌合部、及びシュラウドとの嵌合部に溶着エッジを設けたことを特徴とする請求項1または請求項に記載のターボファンの製造方法。
【請求項6】
前記羽根部材のエアー吸引穴が、羽根部材が挿入される前記主板側の嵌合部又はシュラウド側の嵌合部に塞がれるような形態で溶着エッジを設けたことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のターボファンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に搭載される熱可塑性樹脂にて成形されるターボファンに係り、溶着組立性の向上及び生産性向上を図ったターボファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のターボファンは、主板と裏側に開口をもつ袋状の中空構造の複数の翼とが熱可塑性樹脂にて一体成形されたファン本体と、シュラウドとで構成されている。 また、ファン本体のそれぞれの翼には翼先端部から翼中空部に連通する嵌合メス部が形成され、シュラウドの各翼相当位置にはシュラウドよりファン高さ方向に延出する嵌合オス部が形成されている。
【0003】
そして、シュラウドの嵌合オス部はファン本体の嵌合メス部に挿入後、シュラウドの表面とファン本体の傾斜面となる翼先端溶着部及びシュラウドの嵌合オス部の側面とファン本体の嵌合メス部の側面が固着されて一体となり、ターボファンが形成されている。このように形成されたシュラウドとファン本体の両者を固着させる際、シュラウドの嵌合オス部とファン本体の嵌合メス部とにより、容易かつ正確に位置決めが可能なため、製造精度が向上すると共に、生産性を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来のターボファンは上述のように構成され、シュラウドとファン本体の固着時の製造精度が向上し、生産性の向上が可能である。しかし、シュラウドとファン本体との溶着面は、シュラウドの表面とファン本体の傾斜面となる翼先端溶着部及びシュラウドの嵌合オス部の側面とファン本体の嵌合メス部の側面であり、シュラウドとファン本体の組立て溶着時にターボファンの回転軸方向(上下方向)に両者が加圧されるが、ファン本体の翼先端溶着部は翼の回転方向に傾斜設置されているので翼先端溶着部は傾斜面となり、そのために上下方向の力が逃げ、翼に水平方向の力が付加されて溶着力が低下し、均等に溶着されないおそれがある。
【0005】
また、水平方向の力を吸収するのは、シュラウドの嵌合オス部とファン本体の嵌合メス部の側面のみであるため、シュラウドの嵌合オス部とシュラウドの接続面に応力が集中して破損するおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するために特許文献2のターボファン及びその製造方法が提案開示されている。
しかし特許文献2の形状のターボファンは、図14に示すような形状である。図14には示していないが、ターボファンの翼部分と底板は一体成形されているので成形用の金型が複雑になるという問題があった。またシュラウドにも翼部分と同数の、翼部分と固着接合するための凸状嵌合部が設けられている。従ってシュラウドを成形する金型も複雑になり、製造コストが上昇するという問題があった。
【0007】
また特許文献1及び特許文献2のターボファンは、主板と翼部分は一体化されており、製造する金型が複雑となり、製品のコストを押し上げる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3509456号公報
【特許文献2】特開2007−120445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような問題を解決するために、本発明は、ターボファンの構成部品である主板、シュラウド、及び中空成形又はブロー成形により一体化した羽根部材(翼)を、超音波溶着にて組み立て一体化したターボファンを提供する。本発明により、複雑な金型を使用することなく、ターボファンを製造することができ、そのコストを格段に低減することができる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、従来のターボファンに比べて生産性に優れ、安価なターボファンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1発明のターボファンは、中央部にモータの回転軸に固定されるボスを有する主板と、吸込み導風壁を形成するシュラウドと複数の羽根部材を熱可塑性樹脂で別々に成形し、前記主板は、前記複数の羽根部材との嵌合部を有し、前記シュラウドは前記複数の羽根部材との嵌合部を有し、前記羽根部材は中空成形またはブロー成形で一体となるように成形した羽根部材であり、前記複数の羽根部材を、前記主板と前記シュラウドの前記複数の嵌合部に回転軸に平行に嵌合させ超音波溶着にて一体化したことを特徴とする。
【0012】
第1発明によれば、ターボファンを、主板、シュラウド及び羽根部材をそれぞれ別々に製造し、組み立てしてターボファンを超音波溶着にて固着させている。また羽根部材は中空成形又はブロー成形で一体化されたものである。各構成部材を成形する金型の形状が簡素化されターボファンの製造コストが格段に安価となる。更に各構成部材を超音波溶着により組立てているので、ターボファンをレーザ溶接法に比べて安価に製造することができる。更に羽根部材を一体成形したものであり、ターボファンを製造する際の歩留まりを向上させることができる。
【0013】
第2発明のターボファンは、第1発明において、前記羽根部材を中空成形またはブロー成形するために前記羽根部材に形成するエアー吸引穴は、前記羽根部材の前記主板の嵌合部または前記シュラウドの嵌合部に嵌め込まれる部位に設けたことを特徴とする。
【0014】
第2発明によれば、羽根部材を中空成形またはブロー成形により成形する際に形成されるエアー吸引穴は、羽根部材が主板側の嵌合部に嵌め込まれる部位、又は羽根がシュラウド側の嵌合部に嵌め込まれる部位のいずれかに設けられている。従ってエアー吸引穴は、主板側の羽根部材の嵌合部又はシュラウド側の羽根部材の嵌合部に収まるので、羽根部材の内部の中空の空間と外気は連通しにくいので羽根部材の正圧側および負圧側が薄肉であっても羽根部材としての強度を保つことができる。
【0015】
第3発明のターボファンは、第1発明または第2発明において、前記主板と前記羽根部材との嵌合部、及び前記シュラウドと前記羽根部材との嵌合部に溶着エッジを設けたことを特徴とする。
【0016】
第3発明によれば、主板とシュラウドが羽根部材と接合される部分には溶着エッジが設けられているので、過度な加圧力を加えることなく超音波溶着をすることができる。従ってターボファンの品質を確保するとともに、歩留まりを向上させることができる。
【0017】
第4発明のターボファンは、第1発明から第3発明のいずれか1つの発明において、前記シュラウドと前記羽根部材との嵌合部に設けた溶着エッジは、嵌合部の中央から羽根部材の正圧側または負圧側に偏らせて設けたことを特徴とする。
【0018】
第4発明によれば、羽根部材がシュラウドに嵌合される部分に、その中央から偏らせて溶着エッジが設けられているので、超音波溶着加工の加圧力が主板またはシュラウドを通じて羽根部材に加えられても羽根部材が適正な姿勢を保持して超音波溶着をすることができる。従ってターボファンの品質を確保するとともに、歩留まりを向上させることができる。
【0019】
第5発明のターボファンは、第1発明から第3発明のいずれか1つの発明において、前記シュラウドと前記羽根部材との嵌合部に設けた溶着エッジは、嵌合部の中央に設けたことを特徴とする。
【0020】
第5発明によれば、羽根部材の風を押し出す正圧面とその反対面がその頂部から底部に亘り同一形状である羽根部材の場合、第4発明と同様の効果を発現する。
【0021】
第6発明のターボファンは、第1発明から第3発明のいずれか1つの発明において、前記羽根部材は、主板との嵌合部、及びシュラウドとの嵌合部に溶着エッジを設けたことを特徴とする。
【0022】
第6発明によれば、第4発明及び第5発明と同様の効果を発現する。
【0023】
第7発明のターボファンは、第1発明から第6発明のいずれか1つの発明において、前記羽根部材のエアー吸引穴が、羽根部材が挿入される前記主板側の嵌合部又はシュラウド側の嵌合部に塞がれるような形態で溶着エッジを設けたことを特徴とする。
【0024】
第7発明によれば、羽根部材のエアー吸引穴が、羽根部材が挿入される前記主板側の嵌合部又はシュラウド側の嵌合部に塞がれるような形態で溶着エッジを設けている。従って羽根部材が主板側の嵌合部とシュラウド側の嵌合部に嵌め込まれ超音波溶着で接合されると、羽根部材の内部の中空の空間と外気は完全に連通しなくなり、第2発明の効果が更に顕著に発現する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のターボファンの主板、シュラウド及び羽根部材の組立時のセット状態を示す斜視図。
図2】本発明のターボファンの完成した状態を示す斜視図。
図3】本発明のターボファンの主板の全体概略図。
図4図3の主板と羽根部材との嵌合部の拡大図。
図5図3の主板と羽根部材との嵌合部の溶着エッジの説明図。
図6図3の主板と羽根部材とを嵌合させた状態の説明図。
図7】本発明のターボファンのシュラウドを裏側から見た全体概略図。
図8図7のシュラウドと羽根部材との嵌合部の拡大図。
図9図7のシュラウドと羽根部材との嵌合部の拡大図。
図10図7のシュラウドと羽根部材とを嵌合させた状態の説明図。
図11】本発明のターボファンの羽根部材の全体概略図。
図12】羽根部材の成形工程の説明図。
図13】主板における嵌合部の溶着エッジの別形態の説明図。
図14】従来型のターボファンの完成した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のターボファンについて図1から図14により説明する。
【0027】
図1は本発明のターボファンの主板、シュラウド及び羽根部材の組立時のセット状態を示す斜視図、図2は本発明のターボファンの完成した状態を示す斜視図、図3は本発明のターボファンの主板の全体概略図、図4図3の主板と羽根部材との嵌合部の拡大図、図5図3の主板と羽根部材との嵌合部の溶着エッジの説明図、図6図3の主板と羽根部材とを嵌合させた状態の説明図、図7は本発明のターボファンのシュラウドを裏側から見た全体概略図、図8図7のシュラウドと羽根部材との嵌合部の拡大図、図9図7のシュラウドと羽根部材との嵌合部の拡大図、図10図7のシュラウドと羽根部材とを嵌合させた状態の説明図、図11は本発明のターボファンの羽根部材の全体概略図、図12図11の羽根部材を成形する工程の説明図、図13は主板における嵌合部の溶着エッジの別形態の説明図、及び図14は従来型のターボファンの完成した状態を示す斜視図である。
【0028】
図2において、本発明のターボファン1は、円板状の主板2、ファンの吸込導風路を形成するシュラウド3、及び主板2とショラウド3を接続する複数の羽根部材4により構成されている。各部品は、熱可塑性樹脂を用いて個別に射出成形される。羽根部材4は、主板2及びシュラウド3の周辺部に複数個所設けた嵌合部に嵌め込んで組立て接合される。接合は、超音波溶着により接合される。尚羽根部材4の構造は、<3>にて詳述するが、図1に示すように、風を押し出す正圧面とその反対面である負圧面を有する。正圧面と負圧面は、ターボファンの送風特性を実現するために所要の曲面形状を呈する。但し、図14に示すように、風を押し出す正圧面とその反対面(負圧面)がその頂部から底部に亘り同一形状(ストレート)である場合もある。
【0029】
従来、各部材を個別で成形し、組立接合する場合は、超音波溶着にて接合することは、難しくレーザ溶接法にて行なわれていた。レーザ溶接法は、接合する対象物に加圧力を加える必要がなく、レーザ照射により接合することができる。しかしながら、その装置は高価なものである。従ってその装置により製造されたターボファンは高価なものとなる。本発明はこのような問題を解決するためのものである。本発明は、個別に成形した構成部材を図1のように配置して超音波溶着により組立接合することを可能とするものである。発明者は、構成部材の構成及び構造に種々改良を加え、本発明に到達した。以下各部材の構成及び構造について説明する。
【0030】
<1>主板の構造
主板2は、図3に示すように、その中央部にモータを覆うように形成された凸形状のハブ22と、ハブ22の中心部にモータのシャフトが高さ方向(図1から図3の上下方向)に挿入されて固定されるボス21とを有している。また主板の周縁部には、図3に示すように、羽根部材4と組立接合する際に羽根部材を嵌込む嵌合部23を羽根部材4の個数分設けられている。
【0031】
嵌合部23は、図4のように構成されている。所定高さ及び厚さを有して主板上に立設し周回するように形成した壁部231、ピン部232及び溶着エッジ233により構成されている。図11に示す羽根部材4は、後述する中空成形やブロー成形により一体にて成形されたものである。この羽根部材4の底部42は、この嵌合部23に嵌込まれる。この時、羽根部材4の底部42には図11に示す穴46が設けられており、この穴にピン232が挿通する(図6参照)。羽根部材4の底部42は、この壁部231とピン232により嵌め込まれ位置決めされる。また嵌合部23に羽根部材4の底部42が嵌め込まれると、図6に示すように羽根部材の底部42の底面が溶着エッジ233に接触する状態となる。溶着エッジは、図4及び図5に示すように、ピン232を囲むように、壁部231に沿うように内側に2列設けられている。その断面は、略三角形状を呈している。
【0032】
図6は、主板2と羽根部材4が超音波溶着により接合される直前の状態を示している。鋏合部23を図4及び図5のように構成することにより、超音波溶着時の加圧力を受けても安定した姿勢で接合することができる。
【0033】
<2>シュラウドの構造
シュラウド3を図7により説明する。図7は、図1及び図2のシュラウド3を、嵌合部33が見えるように裏面から見た図面である。シュラウド3は、図7に示すように、中央部には大きな開口部31を有している。また周辺部32には、主板2に嵌合された羽根部材4に相対する位置に、羽根部材の頂部43(図11参照)と嵌合する嵌合部33を羽根部材と同数備えている。周辺部32は、外周方向に略傾斜面を呈している。嵌合部33は、図8に示すように、羽根部材の頂部43の形状に合わせて階段状を呈し、その壁部332に沿って羽根部材4の頂部43が嵌まり込み位置決めされるように構成されている。嵌合部33は、以下本実施形態の形状に即して嵌合凹部33という。
【0034】
また嵌合凹部33の天井部331には、図9に示すように、溶着エッジ333が設けられている。溶着エッジは、階段部分の天井部に、一列設けられている。この溶着エッジ333は、嵌合凹部33の天井部331の中央ではなく壁部332に対して羽根部材の正圧面側(羽根部材が風を押し出す面側)または負圧面側(正圧面側と反対面側)に偏らせて設けている。尚本実施例の図9では正圧側に偏らせている。溶着エッジの断面は、略三角形状を呈している。この嵌合凹部に羽根部材4の頂部43が嵌め込まれると、頂部43は溶着エッジ333に接触する状態となる(図10参照)。
【0035】
羽根部材4の形状が、図14の羽根部材のように、風を押し出す正圧面とその反対面がその頂部から底部に亘り同一形状(ストレート)である羽根部材の場合、溶着エッジは以下の構成とすることができる。すなわち、嵌合凹部33の天井部331に設けた溶着エッジ333は、嵌合凹部33の壁部332に沿ってその嵌合凹部の中央に設ける構成とすることができる。
【0036】
図10は、シュラウド3と羽根部材4が超音波溶着により接合される直前の状態を示している。鋏合凹部33を図8及び図9のように構成することにより、超音波溶着時の加圧力を受けても安定した姿勢で接合することができる。
【0037】
<3>羽根部材の構造
羽根部材4について、図11及び図12により説明する。羽根部材は、複数枚あるので、ターボファンを軽量化するために、内部を空洞化する必要がある。このため本発明の羽根部材4は、中空成形又はブロー成形により一体化され成形される。図11に示すように、羽根部材4は、主板2の嵌合部23に嵌り込む底部42とシュラウド3の嵌合凹部33に嵌り込む頂部43を備えている。羽根部材の翼の部分相当する正圧面は44であり、負圧面は45である。また底部42には、主板2の嵌合部23のピン232が挿通する穴46が設けられている。この穴46は、ブロー成形時に形成されるエアー吸引穴である。図示しないが、この穴46は、羽根部材4の頂部43に設けることもできる。この場合は、穴46に挿通するピンは、嵌合凹部33に設けることとなる。主板2とシュラウド3は、各々の嵌合部23と嵌合凹部33に複数の羽根部材4の底部42と頂部43を嵌め込み組み立てられ超音波溶着で接合される。
【0038】
図12により、羽根部材4をブロー成形で一体化成形する成形方法について説明する。ブロー成形は、公知の方法を使用することができる。概略以下のように図12の工程1〜工程4により成形される。
1)工程1
ノズルNから溶融した筒状の樹脂Rを、金型Mが開いた間の空間に流し込む。
2)工程2
金型Mを閉じ筒状の樹脂Rを挟み込む。
3)工程3
閉じた金型Mの合わせ面からノズルnを挿入し、ノズルnからエアーを注入し樹脂Rが中空の羽根部材4として成形され冷却される。
4)工程4
金型Mを開き羽根部材4を取り出す。
【0039】
このようなブロー成形により肉厚がほぼ均一であり、内部空間が中空な羽根部材4が得られる。
【0040】
本発明の羽根部材4は、図11に示すように、エアー吸引穴46が形成されている。この穴46は、図6に示すように主板23の嵌合部233の底部にその穴は塞がれて、主板を超音波溶着で接合される。従って羽根部材の内部と外気が連通しにくくなり、羽根部材の剛性が高まり上下方向の加圧力が加えられても変形しにくい構造となっている。
【0041】
また主板、シュラウド及び羽根部材を一体に接合した後の羽根部材の剛性を向上させる手段として以下のような方法を採用することができる。その方法について図13により説明する。図13(a)は、嵌合部23の斜視図であり、図13(b)は、嵌合部23を上方から視た図である。
【0042】
主板2の羽根部材4との嵌合部23に設ける溶着エッジとして、図4の溶着エッジ233以外にピン232の周りに溶着エッジ234と235も設けている。これにより、羽根部材の穴46にピン232が挿通した後に超音波溶着すると溶着エッジ234と235が溶融し羽根部材4の穴46とピン232の間の隙間を埋めることになる。これにより羽根部材の内部空間と外気は完全に連通しなくなり、羽根部材の剛性は更に高まることになる。従ってターボファン成形時の加圧力に対しての剛性が高まり、更に品質の良いターボファンが得られる。またターボファンの性能向上にも繋がる。
【0043】
また超音波溶着時に作用する溶着エッジは、これまでの説明では、主板の嵌合部とシュラウドの嵌合凹部に設けていた。しかしこれに限定されるものではなく、例えば以下の構成とすることもできる。すなわち、溶着エッジは、嵌合部に設けるのではなく、羽根部材の底部42と頂部43に設ける構成とすることもできる。
【0044】
<4>ターボファンの組立接合
上記ように構成された、主板2、シュラウド3及び複数の羽根部材4を図1に示すように、主板2の嵌合部23に羽根部材4の底部42を嵌め合せ、シュラウド3の嵌合凹部33に羽根部材4の頂部43を嵌め合せし仮組を行なう。このように仮組されたものを、以下「ワーク」と称する。この状態で、羽根部材4の底部42は、図6に示すように主板2の嵌合部23の溶着エッジと接触している状態である。また、羽根部材4の頂部43は、図10に示すようにシュラウド3の嵌合凹部33の溶着エッジと接触している状態である。
【0045】
このように仮組されたワークを超音波溶着機の治具上に載置する。ワークのシュラウド3の所定位置を超音波溶着機のホーンが接触加圧して、溶着エッジが溶融しワークは一体化される。ワークを超音波溶着機の治具上に載置する方法は、図1に示すように主板2を治具上にセットしても良いし、反転してシュラウドを治具上にセットしても良い。
【0046】
この超音波溶着加工の過程において、主板2の嵌合部23の構成、シュラウド3の嵌合凹部33の構成、及び羽根部材4を嵌め込んだ構成が相互に作用し、各部材が位置ズレすることなく、また羽根部材4と超音波溶着することができる。従って超音波溶着加工により安定した品質のターボファンを得ることができる。しかも製造コストは、レーザ溶接法に比べ格段に安価である。
【符号の説明】
【0047】
1 ターボファン
2 主板
21 ボス
22 ハブ
23 嵌合部
231 壁部
232 ピン部
233 溶着エッジ
234 溶着エッジ
235 溶着エッジ
3 シュラウド
31 開口部
32 周辺部
33 嵌合凹部
331 天井部
332 壁部
333 溶着エッジ
4 羽根部材
41 本体
42 羽根部材の底部
43 羽根部材の頂部
44 羽根部材の正圧面
45 羽根部材の負圧面
46 穴
M 金型
N ノズル
n ノズル
R 樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14