(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摺動案内部に対する前記前縁固定部の座の屈曲角と、前記摺動案内部に対する前記後縁固定部の座の屈曲角とは異なる角度に設定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の車両のウェビングガイド構造。
前記前縁固定部と前記後縁固定部は、前記ピラー部材と前記側壁部材とにそれぞれ前記摺動案内部の延出方向に略沿って延出する締結部材によって固定されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両のウェビングガイド構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のウェビングガイド構造は、ウェビング挿通孔を有するガイド部材が単一のボルトによってピラー部材の上部に締結固定されている。このため、シートベルト装置の使用時に、乗員からウェビングに引き出し方向の大きな荷重が入力されると、その荷重がガイド部材と単一のボルトを介してピラー部材の上部に伝達されるが、上記従来のウェビングガイド構造の場合、ピラー部材の上部は、複数のパネル材の組み合わせによって補強部が構成されているため、入力荷重を充分な剛性によって受け止めることができる。
【0006】
しかし、上記従来のウェビングガイド構造においては、ウェビングからの入力荷重を充分な剛性によって受け止めるために、ピラー部材を複数のパネル材によって補強する必要があり、部品点数の増加によって重量の増加や製造コストの高騰を来すことが懸念される。
【0007】
そこでこの発明は、部品点数の増加を抑制しつつ、ウェビングからの入力荷重を高い剛性をもって車体に支持させることができる車両のウェビングガイド構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車両のウェビングガイド構造は、上記課題を解決するために、リトラクタ(例えば、実施形態のリトラクタ15)から上方に引き出されたシートベルト装置のウェビング(例えば、実施形態のウェビング16)を、車体に取り付けられたガイド部材(例えば、実施形態のガイド部材20)によって
乗員着座方向に向きを変えて案内する車両のウェビングガイド構造において、車体には、車室の車幅方向外側に配置されるピラー部材(例えば、実施形態のピラー部材10)と、前記ピラー部材よりも車室の車幅方向内側にあって当該ピラー部材に結合される側壁部材(例えば、実施形態の保持ブロック19、ホイールハウスガセット12、リヤホイールハウス11)と、が設けられ、前記ガイド部材は、前記ピラー部材に結合される前縁固定部(例えば、実施形態の前縁固定部22)と、前記側壁部材に結合される後縁固定部(例えば、実施形態の後縁固定部23)と、両側の端部が前記前縁固定部と前記後縁固定部とに連結されて、前記ピラー部材及び前記側壁部材との間でウェビング引き出し開口(例えば、実施形態の引き出し開口21)を形成するガイド本体(例えば、実施形態のガイド本体24)と、を有し、前記前縁固定部と前記後縁固定部は、前記ウェビングの幅以上に離間して前記ピラー部材と前記側壁部材とに結合されるようにした。
【0009】
これにより、ガイド部材は、前縁固定部と後縁固定部とでピラー部材と側壁部材に跨って車体側に固定される。この状態で、ガイド部材のガイド本体とピラー部材及び側壁部材との間にはウェビング引き出し開口が形成され、リトラクタから上方に引き出されたウェビングはそのウェビング引き出し開口に挿通される。シートベルト装置の使用時に、乗員からウェビングに引き出し方向の荷重が入力されると、その荷重は、ガイド部材の前縁固定部と後縁固定部を通して車体のピラー部材と側壁部材とに分散されて支持されることになる。特に、前縁固定部と後縁固定部は、ウェビングの幅以上に離間してピラー部材と側壁部材とに結合されているため、ウェビングに入力された引き出し方向の荷重は車体側のより広い範囲に分散されて支持されることになる。したがって、ウェビングからの入力荷重は高い剛性を持って車体に支持される。
また、車体のピラー部材と側壁部材は、これらに跨って取り付けられるガイド部材とともにウェビング引き出し開口を挟んで閉断面を構成するようになる。車体の剛性はこの閉断面によって高められる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る車両のウェビングガイド構造において、前記ガイド本体は、略直線状に延出して前記ウェビングを摺動自在に案内する摺動案内部(例えば、実施形態の摺動案内部25)と、前記摺動案内部の延出方向の一端に屈曲して連設される屈曲部(例えば、実施形態の第2屈曲部27)と、を有し、前記ガイド部材は、前記側壁部材に対する前記後縁固定部の固定点(例えば、実施形態の固定点F1)と前記ピラー部材に対する前記前縁固定部の固定点(例えば、実施形態の固定点F2)を結ぶ線分から突出する突出領域(例えば、実施形態の前方突出領域32)を有する。
【0011】
この場合、ガイド部材は突出領域を有するため、その突出領域に上方から荷重が入力されると、前縁固定部の固定点と後縁固定部の固定点を結ぶ線分を中心とした捩れが生じ易くなる。したがって、ガイド部材は前後方向や車幅方向の入力荷重に対しては高い剛性をもって支持することができ、上方から荷重が入力されたときには、自身の捩じれ変形によってその入力荷重を柔軟に受け止めることができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る車両のウェビングガイド構造において、前記ガイド部材は、車体取付状態において、全域が上下略対称になる形状に形成されるようにした。
【0013】
この場合、車体の幅方向の両側に左右対称形状の取付部が設けられているときには、ガイド部材を車幅方向の左右で半回転させて使い分けることにより、車体の左右で共通のガイド部材を用いることができる。したがって、仕様の異なる部品を多数製造する必要がなくなるため、製品コストの削減を図ることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に係る車両のウェビングガイド構造において、前記摺動案内部に対する前記前縁固定部の座の屈曲角(例えば、実施形態の屈曲角a1)と、前記摺動案内部に対する前記後縁固定部の座の屈曲角(例えば、実施形態の屈曲角a2)とは異なる角度に設定されるようにした。
【0015】
この場合、ガイド部材の組付時に、ガイド部材の前後を誤って車体側に固定しようとすると、前縁固定部や後縁固定部の座の角度が車体側の取付面と合致しなくなる。したがって、組付け作業者にガイド部材の前後が逆であることを早期に気づかせることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4のいずれか1項に係る車両のウェビングガイド構造において、前記前縁固定部と前記後縁固定部は、前記ピラー部材と前記側壁部材とにそれぞれ前記摺動案内部の延出方向に略沿って延出する締結部材(例えば、実施形態のボルト28,29)によって固定されるようにした。
【0017】
この場合、シートベルト装置の使用時に、ウェビングから摺動案内部の延出方向と略直交する方向に荷重が入力されると、その荷重は各締結部材に支持強度上有利なせん断荷重として受け止められるようになる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る車両のウェビングガイド構造において、前記前縁固定部と前記後縁固定部のいずれか一方の締結部材の挿通部は長孔によって構成されるようにした。
【0019】
この場合、ガイド部材の製造誤差や、ピラー部材と側壁部材の組付誤差等があっても、一方の締結部材の挿通部の長孔によってその誤差を吸収し、ガイド部材をピラー部材と側壁部材に対して容易に組み付けることができる。
請求項7に係る発明は、請求項2〜6のいずれか1項に係る車両のウェビングガイド構造において、前記ガイド部材は、前記ガイド本体が略水平になるように前記ピラー部材と前記側壁部材とに結合されるようにした。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、シートベルト装置の使用時に、ウェビングからの入力荷重がガイド部材の前縁固定部と後縁固定部を通して車体のピラー部材と側壁部材に分散されて支持されるため、部品点数の増加を抑制しつつ、ウェビングからの入力荷重を高い剛性をもって車体に支持させることができる。
また、この発明の場合、車体のピラー部材と側壁部材がこれらに跨って取り付けられるガイド部材とともに閉断面を構成するため、部品点数の増加を招くことなく車体の剛性を効率良く高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、前後と上下については、特別に断らない限り車体に対しての前後と上下を意味するものとする。また、図中矢印FRは車両の前方側を指し、矢印UPは、車両の上方を、矢印LHは、車両の左側方をそれぞれ指すものとする。
【0023】
図1は、実施形態に係る車両の後部座席と室内を示す図である。
図1に示すように、車両の後部座席には、左シート1Lと右シート1Rの間に中央シート1Cが設けられ、左シート1Lが中央シート1Cと一体に形成されている。各シート1L,1R,1Cは、乗員mの臀部を支持するシートクッション2と、シートクッション2の後部に傾動可能に連結されるシートバック3と、シートバック3の上部に取り付けられて、乗員mの頭部及び首部を支持するヘッドレスト4と、を備えている。また、車体側の左シート1Lのシートバック3の左側部に隣接する位置と、右シート1Rのシートバック3の右側部に隣接する位置には樹脂製のシートサイドトリム5が取り付けられている。
図1においては、左シート1L側のシートサイドトリム5のみが図示されている。
【0024】
図2は、左シート1Lの側部のシートサイドトリム5を取り去った左側の車体側部を示す図である。なお、図示は省略されているが、右側の車体側部は、後に詳述するシートベルト装置14の構造も含め、左側の車体側部と左右が反転した同様の構造とされている。
図2において、符号10は、図示しないリヤドアの後側の開口縁に位置される車体のピラー部材である。ピラー部材10は、車室のうちの左シート1Lの車幅方向外側位置において、フロア部からルーフ部に向かって延出している。ピラー部材10の下半部には、図示しない後輪の上半部の上方と車室内側を覆うパネル材であるリヤホイールハウス11が取り付けられている。リヤホイールハウス11の前縁部には、その前縁部と、前縁部の上方側の骨格部材13を連結するパネル部材であるホイールハウスガセット12が一体に結合されている。
【0025】
図3は、車室内の左シート1Lの側部の部分断面上面図である。
図2,
図3に示すように、ホイールハウスガセット12は、ピラー部材10の後縁部に接合される前縁フランジ12aと、前縁フランジ12aの後端部から車幅方向内側に屈曲する前壁12bと、前壁12bの車幅方向内側の端部から車体後方側に向かって屈曲する内壁12cとを備え、前壁12bと内壁12cがピラー部材10に対して車幅方向内側に突出している。内壁12cの車幅方向内側の面に隣接する位置には、左シート1Lのシートバック3が傾動可能に配置されている。
【0026】
ホイールハウスガセット12の前壁12bの下縁には、左シート1L用のシートベルト装置14のリトラクタ15が取り付けられている。
シートベルト装置14は、リトラクタ15にウェビング16が巻回され、リトラクタ15から上方に引き出されたウェビング16がホイールハウスガセット12の上端部からシートサイドトリム5の前面側に引き出されるようになっている。シートサイドトリム5の上端部には、
図1に示すように、ウェビング16を前方に引き出すための開口部17が形成されている。開口部17から引き出されたウェビング16の先端部は、左シート1Lのシートクッション2の左側部を経由して図示しない車体フロアのシートベルトアンカに結合されている。開口部17から引き出されたウェビング16にはタングプレート18が挿通されている。左シート1Lのシートクッション2の右側部からは、基端側が図示しない車体フロアに固定されたバックル9が引き出されている。ウェビング16側のタングプレート18は、バックル9に対して脱着可能とされている。
【0027】
ウェビング16は、初期状態ではリトラクタ15に巻き取られており、乗員mが手で引き出してタングプレート18をバックル9に固定することにより、乗員mの主に胸部と腹部を左シート1Lに対して拘束する。また、リトラクタ15には、ウェビング16を巻き取り方向に付勢する図示しない巻き取りばねと、ウェビング16が急激に引き出された場合や車両に衝撃が入力された場合等にウェビング16の引き出しをロックする図示しない緊急ロック機構が内蔵されている。
【0028】
また、ホイールハウスガセット12のリトラクタ15の取付け位置よりも上方側部位には、金属製のプレート材から成る保持ブロック19が取り付けられている。保持ブロック19は、末広がり状の基端がホイールハウスガセット12の内壁12cに接合され、内壁12cから前方側に略円弧状に突出する支持壁19aと、ホイールハウスガセット12の前壁12bから前方に弧状に膨出する膨出壁19bとを備え、膨出壁19bの車幅方向内側の端部が略直角に屈曲して支持壁19aに接続されている。膨出壁19bの内壁12cとの連接部を除く周縁部には接合フランジ19cが延設され、その接合フランジ19cがホイールハウスガセット12の前壁12bに接合されている。したがって、保持ブロック19は、ホイールハウスガセット12の前壁12bとの間に、車幅方向に沿って延出する略半円状の筒状閉空間を形成し、その車幅方向内側の端部に支持壁19aが結合されている。
なお、この実施形態の場合、保持ブロック19は、リヤホイールハウス11とホイールハウスガセット12とともに車体の側壁部材を構成している。
【0029】
ところで、保持ブロック19(側壁部材)とピラー部材10には、リトラクタ15から上方に引き出されたウェビング16を案内するためのガイド部材20が取り付けられている。ガイド部材20は、リトラクタ15から上方に引き出されたウェビング16を前方側に向きを変え、シートサイドトリム5の開口部17に向くようにウェビング16の引き出し方向を案内する。このガイド部材20は、右側の車体側部にも同様に設けられている。
【0030】
図4は、車室内の左シート1Lと右シート1Rの各側部を併せて記載した部分断面上面図である。同図においては、車幅方向の中央領域が一部破断されている。図中符号Cは、車両の車幅方向の中心線である。また、
図5は、ガイド部材20の斜視図であり、
図6は、ガイド部材20を車体に取り付けた状態で略水平方向から見た正面図である。
ガイド部材20は、金属製の棒状部材から成り、ピラー部材10の車室側壁に結合される前縁固定部22と、車体の側壁部材である保持ブロック19の支持壁19aに結合される後縁固定部23と、両側の端部が前縁固定部22と後縁固定部23とに連結されて、ピラー部材10、ホイールハウスガセット12、及び保持ブロック19との間で引き出し開口21(ウェビング引き出し開口)を形成するガイド本体24と、を有している。
【0031】
ガイド本体24は、略直線状に延出して外周面によってウェビング16を摺動自在に案内する円柱状の摺動案内部25と、摺動案内部25の一端部側から車体前方側に屈曲する第1屈曲部26と、摺動案内部25の他端部側から車体後方側に屈曲する第2屈曲部27(屈曲部)と、を有している。ガイド部材20は、直線状の金属ワイヤーの離間した二位置を相反方向にそれぞれ屈曲させて第1屈曲部26と第2屈曲部27とが形成され、延出方向の各端縁が径方向に押し潰され、その押し潰された部分が前縁固定部22と後縁固定部23とされている。
【0032】
前縁固定部22と後縁固定部23は、摺動案内部25の延出方向(軸線方向)に略沿う方向において押し潰されている。前縁固定部22と後縁固定部23の押し潰されて偏平になった各部分は、
図3に示すように、ピラー部材10の車室内側面と、保持ブロック19の支持壁19aの車室内側面とにそれぞれ重ね合せられる座22a,23aとされている。前縁固定部22と後縁固定部23の各座22a,23aは、ピラー部材10と保持ブロック19に締結部材であるボルト28,29によって締結固定されている。前縁固定部22と後縁固定部23の各座22a,23aには、ボルト28,29が挿入される挿通孔30,31(挿通部)が形成されているが、前縁固定部22側の挿通孔30は円形状に形成され、後縁固定部23側の挿通孔31は長孔によって構成されている。また、前縁固定部22と後縁固定部23とは、ウェビング16の幅以上離間してピラー部材10と保持ブロック19に締結固定されている。
【0033】
ここで、ガイド部材20は、前述の前縁固定部22と後縁固定部23のボルト28,29による締結によって側面視で全体が略水平になるようにして車体側に固定される。ガイド部材20は、このようにして車体に取り付けられると、前縁固定部22とそれに連続する第1屈曲部26が車体後方側に向かって直線状に延出し、後縁固定部23とそれに連続する第2屈曲部27が車体前方側に向かって直線状に延出している。また、ガイド部材20の摺動案内部25は、第1屈曲部26側から第2屈曲部27側に向かって車体後方側に若干傾斜しつつ、ほぼ車幅方向に沿って直線状に延出している。
ガイド部材20の前縁固定部22と後縁固定部23を車体側に固定するボルト28,29は、車幅方向に略沿うように、つまり摺動案内部25の延出方向に略沿うように延出して、その状態で車体側に締結固定される。
【0034】
また、ガイド部材20は、
図3に示すように、車体に取り付けられた状態において、後縁固定部23の保持ブロック19に対するボルト29の固定点F1と、前縁固定部22のピラー部材10に対するボルト28の固定点F2を結ぶ線分Lよりも車体前方側に突出する前方突出領域32(突出領域)を有している。
さらに、ガイド部材20は、摺動案内部25の軸線に対する前縁固定部22の座22aの屈曲角a1と、摺動案内部25の軸線に対する後縁固定部23の座23aの屈曲角a2とは異なる角度に設定されている。ただし、ガイド部材20は、車体取付状態において、全域が上下略対象になる形状に形成されている。
【0035】
この実施形態に係るウェビングガイド構造の場合、リトラクタ15から上方に引き出されたウェビング16は、ガイド部材20の後方の引き出し開口21とシートサイドトリム5の開口部17を通してシート1L,1Rの前方側に引き出されている。そして、乗員mがシートベルト装置14を装着しているときに、ウェビング16が乗員mの上半身によって強く前方に引っ張られてリトラクタ15のロック機構が作動すると、ウェビング16の引っ張り荷重がガイド部材20のガイド本体24に作用する。
【0036】
このとき、ウェビング16からガイド部材20のガイド本体24に入力された荷重は、前縁固定部22と後縁固定部23を介して車体側部のピラー部材10と、それよりも車幅方向内側の保持ブロック19やホイールハウスガセット12、リヤホイールハウス11等に分散されて支持される。特に、この実施形態に係るガイド部材20においては、前縁固定部22と後縁固定部23がウェビング16の幅以上に大きく離間してピラー部材10と保持ブロック19とに結合されているため、ウェビング16の引っ張り方向の荷重は車体側の広い範囲に分散されて支持される。
したがって、この実施形態に係るウェビングガイド構造においては、車体側の補強部材の追加等による部品点数の大幅な増加を招くことなく、ウェビング16からの入力荷重を高い剛性をもって車体に支持させることができる。
【0037】
また、この実施形態に係るウェビングガイド構造においては、ガイド部材20の前縁固定部22と後縁固定部23が、それぞれ車体側部のピラー部材10と、ピラー部材10よりも車幅方向内側の車体側壁部材である保持ブロック19に結合されるとともに、ガイド部材20がピラー部材10や保持ブロック19等とともに略水平方向で閉断面(引き出し開口21)を形成しているため、ウェビング16を案内するガイド部材20によって車体側部の車幅方向や前後方向の剛性を効率良く高めることができる。
【0038】
さらに、この実施形態に係るウェビングガイド構造においては、ガイド本体24が略水平になるようにガイド部材20が車体に取り付けられるとともに、車体に対する後縁固定部23の固定点F1と前縁固定部22の固定点F2を結ぶ線分Lよりも車体前方側に突出する前方突出領域32がガイド本体24に設けられている。このため、ガイド部材20は、車幅方向や前後方向から荷重が入力されたときにはその入力荷重を高い剛性をもって支持することができるが、
図6中の矢印で示すように、上方から前方突出領域32に大荷重が入力されたときには、固定点F1,F2を結ぶ線分Lを中心とする捩れ変形が容易に生じる。したがって、このウェビングガイド構造の場合、乗員荷重がガイド部材20の前方突出領域32に上方から作用したとき等には、ガイド部材20の捩れ変形によって乗員荷重を柔軟に受け止めることができる。
【0039】
また、この実施形態に係るウェビングガイド構造の場合、ガイド部材20が、車体取付状態で全域が上下略対称になる形状とされているため、
図4に示すように、車体の取付部が左右両側で対称形状である場合には、共通のガイド部材20を車幅方向の左右で半回転させて使い分けることができる。したがって、この構造を採用することにより、車体左右でそれぞれ専用部品を作り分ける必要がなくなり、その結果、製品コストの削減を図ることが可能となる。
【0040】
また、この実施形態に係るウェビングガイド構造では、ガイド部材20の前縁固定部22の座22aの屈曲角a1と、後縁固定部23の座23aの屈曲角a2とが異なる角度に設定されている。このため、ガイド部材20を車体に取り付ける際に、
図7中の仮想線で示すように、ガイド部材20の前後を誤って車体に固定しようとすると、前縁固定部22や後縁固定部23の座22a,23aの角度が車体側の取付面と合致しなくなる。したがって、この構造を採用することにより、ガイド部材20を車体に組み付ける作業者にガイド部材20の前後が逆であることを早期に気づかせることができる。
【0041】
また、この実施形態のウェビングガイド構造の場合、ガイド部材20の前縁固定部22と後縁固定部23が、ガイド部材20の摺動案内部25の延出方向に略沿う方向で、ピラー部材10と保持ブロック19にそれぞれボルト28,29によって締結されている。このため、シートベルト装置14の使用時に、ウェビング16からガイド部材20の摺動案内部25に、摺動案内部25の延出方向と略直交する方向に荷重が入力されると、その荷重はボルト28,29に支持強度上有利なせん断荷重として受けさめられることになる。したがって、この構造を採用することにより、ガイド部材20の支持剛性と強度を効率良く高めることができる。
【0042】
さらに、この実施形態に係るウェビングガイド構造においては、ガイド部材20の後縁固定部23に形成される挿通孔31が長孔によって構成されているため、ガイド部材20の製造誤差や、車体の側壁部材の組付誤差等があっても長孔によってその誤差を吸収し、ガイド部材20をピラー部材10と車体の側壁部材に対して容易に組み付けることができる。この実施形態においては、ガイド部材20の後縁固定部23の挿通孔31が長孔によって構成されているが、前縁固定部22の挿通孔30を長孔によって構成するようにしても良い。
【0043】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。