【実施例】
【0030】
実施例に係る車体前部構造10について説明する。
図1、
図2に示すように、車体前部構造10は、車体11の左右側に設けられた左右のフロントサイドフレーム12,13と、左フロントサイドフレーム12および右フロントサイドフレーム13に架設されたクロスメンバ15と、クロスメンバ15に沿って設けられたパワーステアリング装置16とを備えている。
【0031】
また、車体前部構造10は、クロスメンバ15の車体後方に設けられたダッシュパネル17と、ダッシュパネル17側の左フロントサイドフレーム12に設けられた左マウント部18と、ダッシュパネル17側の右フロントサイドフレーム13に設けられた右マウント部19とを備えている。
【0032】
さらに、車体前部構造10は、クロスメンバ15および左マウント部18に支持された左サスペンションアーム21と、クロスメンバ15および右マウント部19に支持された右サスペンションアーム(図示せず)と、左フロントサイドフレーム12および右フロントサイドフレーム13に架設されたダッシュクロスメンバ24と、クロスメンバ15およびダッシュクロスメンバ24に架設された左右の補強部材25,26とを備えている。
左右のサスペンションアーム21は、独立懸架式サスペンションの「いわゆる、Γ(ガンマ)字型またはA型ロアアームである。
【0033】
図3に示すように、左フロントサイドフレーム12は、車体11の左側において車体前後方向に配置されている。左フロントサイドフレーム12は、前端部12a(
図1参照)から略中央部12bまで略水平に延出される前部31と、略中央部12bから後端部12cまで車体後方に向けて下り勾配に延出される後傾斜部32と備えている。
左フロントサイドフレーム12の後傾斜部32で、かつ、左サスペンションアーム21の上方にフレーム屈曲部33が形成されている。フレーム屈曲部33は、車体前方から入力する衝撃荷重で車幅方向へ好適に折曲がり可能に形成されている。
【0034】
図1に戻って、右フロントサイドフレーム13は、左フロントサイドフレーム12と同様に、前部31および後傾斜部32を備え、後傾斜部32にフレーム屈曲部33(図示せず)が形成されている。
左フロントサイドフレーム12および右フロントサイドフレーム13は、左右対称の部材であり、各構成部に同じ符号を付し、右フロントサイドフレーム13の詳しい説明を省略する。
【0035】
左フロントサイドフレーム12の略中央部12bおよび右フロントサイドフレーム13の略中央部12bにクロスメンバ15が架設されている。クロスメンバ15が車幅方向に延出され、クロスメンバ15に沿ってパワーステアリング装置16のステアリングチューブ35が設けられている。クロスメンバ15の底部37のうち、左端部に左取付部15aが設けられ、右端部に右取付部15bが設けられている。
【0036】
また、左フロントサイドフレーム12の後端部12cおよび右フロントサイドフレーム13の後端部12cにダッシュクロスメンバ24が架設されている。ダッシュクロスメンバ24が車幅方向に延出され、ダッシュクロスメンバ24にダッシュパネル17の下部17aが設けられている。
ダッシュパネル17は、エンジンルーム38の後側に設けられ、エンジンルーム38および車室を仕切る板材である。
【0037】
図4、
図5に示すように、左フロントサイドフレーム12のうち、ダッシュパネル17側の部位12dに左マウント部18が下方から設けられている。左マウント部18は、左フロントサイドフレーム12のダッシュパネル17側の部位12dから下方に向けて膨出されたブラケット41と、ブラケット41の内部に設けられたガセット39と、ガセット39およびブラケット41の底部41aに設けられた後締結ナット42とを備えている。
【0038】
左マウント部18に左サスペンションアーム21の後締結部47が締結され、クロスメンバ15の左脚部76に左サスペンションアーム21の前締結部44が締結されている。よって、クロスメンバ15の左脚部76および左マウント部18に左サスペンションアーム21が支持される。
ここで、左マウント部18は、左フロントサイドフレーム12のうち、ダッシュパネル17側の部位12dに設けられている。よって、左マウント部18の剛性が左フロントサイドフレーム12で確保されている。これにより、後締結部47(すなわち、左サスペンションアーム21)が左マウント部18に好適に支持される。
【0039】
図2に示すように、左サスペンションアーム21は、ナックル51の下部に連結する連結部43aを有するアーム本体43と、アーム本体43の前端部43bに設けられた前締結部44と、アーム本体43の後端部43cに設けられた後締結部47とを備えている。
ナックル51に左前輪52(
図1参照)が取り付けられている。
【0040】
図4、
図5に戻って、前締結部44は、アーム本体43の前端部43bに設けられた弾性部45と、弾性部45に設けられたカラー46とを備えている。カラー46は、車体前後方向へ向けて延ばされ、前後の端部がクロスメンバ15の左脚部76に接触した状態に配置されている。このカラー46がアーム本体43の前端部43bに弾性部45を介して取り付けられている。
【0041】
カラー46に前締結ボルト(締結部材)54が貫通され、前締結ナット55にねじ結合されることにより、クロスメンバ15の左脚部76に前締結部44が締結される。この状態において、前締結部44が左脚部76の空間79に収納される。よって、クロスメンバ15の左脚部76とともに前締結部44が車体後方に移動する。
【0042】
後締結部47は、アーム本体43の後端部43cに設けられた弾性部48と、弾性部48に設けられたカラー49とを備えている。カラー49は、上下方向へ向けて延ばされた状態で配置され、アーム本体43の後端部43cに弾性部48を介して取り付けられている。
カラー49に後締結ボルト(締結部材)57が下方から貫通され、後締結ナット42にねじ結合されることにより、左マウント部18に後締結部47が締結される。すなわち、カラー49は、弾性部48の弾性変形により傾斜可能に支持され、かつ、左マウント部18に片持支持されている。
【0043】
左マウント部18および右マウント部19(
図1参照)は、左右対称の部材であり、以下、右マウント部19の詳しい説明を省略する。
また、左サスペンションアーム21および右サスペンションアームは、左右対称の部材であり、以下、右サスペンションアームの詳しい説明を省略する。
【0044】
図2に戻って、左マウント部18および右マウント部19(
図1参照)の車体後方にダッシュクロスメンバ24が設けられている。ダッシュクロスメンバ24の底部24aのうち、左端部に左取付部(マウント部の後方取付部)24bが設けられ、右端部に右取付部(マウント部の後方取付部)24cが設けられている。
【0045】
すなわち、左取付部24bがダッシュクロスメンバ24の左端部で形成され、右取付部24cがダッシュクロスメンバ24の右端部で形成されている。よって、左取付部24bおよび右取付部24cの剛性がダッシュクロスメンバ24で確保される。
ダッシュクロスメンバ24の左取付部24bおよびクロスメンバ15の左取付部15aに左補強部材25が架設されている。この状態において、左補強部材25が左フロントサイドフレーム12のフレーム屈曲部33(
図3参照)より下方に配置される。
【0046】
また、
図1に示すように、ダッシュクロスメンバ24の右取付部24cおよびクロスメンバ15の左取付部15bに右補強部材26が架設されている。この状態において、右補強部材26が右フロントサイドフレーム13のフレーム屈曲部(図示せず)より下方に配置される。
左補強部材25および右補強部材26は、左右対称の部材であり、以下、右補強部材26の詳しい説明を省略する。
【0047】
図5、
図6に示すように、左補強部材25は、クロスメンバ15の左取付部15aおよびダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに架設されることにより車体前後方向に延出されている。この左補強部材25は車体前後方向の略中央に屈曲部61を有する。
屈曲部61は、車体11に車体前方から衝撃荷重が入力した場合に、入力した衝撃荷重で折り曲げられる部位である。
【0048】
左補強部材25は、一例として、鋼板をプレス成形することにより形成され、外形が帯状に形成される略平坦なプレート部62と、プレート部62から下方に膨出される剛性部64とを有する。
プレート部62の前端部が複数のボルト67・ナット68でクロスメンバ15の左取付部15aに下方から締結されている。よって、左補強部材25の前端部25aがクロスメンバ15の左取付部15aに締結されている。
【0049】
また、プレート部62の後端部が複数のボルト71・ナット72(
図3参照)でダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに下方から締結されている。よって、左補強部材25の後端部25bがダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに締結されている。
ダッシュクロスメンバ24は車体の骨格を形成する剛性の高い部材である。よって、ダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに左補強部材25の後端部25bが強固に支持される。
これにより、車体11に車体前方から衝撃荷重が入力した場合に、入力した衝撃荷重による屈曲部61の折曲げが好適に促進される。
【0050】
図2に示すように、クロスメンバ15の左取付部15aに左補強部材25の前端部25aが締結され、ダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに左補強部材25の後端部25bが締結されることにより、左補強部材25が左取付部15aおよび左取付部24bに架設される。よって、クロスメンバ15(特に、クロスメンバ15の左脚部76)やダッシュクロスメンバ24が左補強部材25で補強される。
クロスメンバ15の左脚部76は、左サスペンションアーム21の前締結部44を支持する部位である。これにより、左サスペンションアーム21の前締結部44をクロスメンバ15の左脚部76で良好に支持できる。
【0051】
図5、
図6に示すように、プレート部62は、後端部の近傍に後支え部63を有する。後支え部63は、プレート部62の後端部の近傍部位から車幅方向外側に張り出されている。
後支え部63が左サスペンションアーム21の後締結部47に下方から当接されている。左サスペンションアーム21の後締結部47は左マウント部18に下方から当接されている。
この状態において、後締結ボルト57が後支え部63から後締結部47に差し込まれ、差し込まれた後締結ボルト57が左マウント部18の後締結ナット42にねじ結合される。よって、左マウント部18に後締結部47および後支え部63が下方から締結される。
【0052】
換言すれば、後締結部47に後支え部63が後締結ボルト57および後締結ナット42で下方から締結される。この状態において、後締結部47が屈曲部61およびダッシュクロスメンバ24の左取付部24b間に配置される。
左マウント部18に後締結部47および後支え部63が下方から締結されることにより、後締結部47を後支え部63(すなわち、左補強部材25)で支えることができる。これにより、後締結部47が左マウント部18に強固に取り付けられた状態に保たれ、後締結部47(すなわち、左サスペンションアーム21)が好適に支持される。
【0053】
プレート部62から剛性部64が下方に膨出されている。剛性部64は、左補強部材25の前端部25aおよび後端部25b間で車体前後方向に延出されている。この剛性部64は、車幅方向外側に形成された第1ビード部65と、第1ビード部65より車幅方向内側に形成された第2ビード部66とを有する。
第1ビード部65は、左補強部材25の前端部25aから後支え部63まで車体後方向に向けて延び、かつ、下方に向けて膨出されている。第2ビード部66は、左補強部材25の前端部25aから後端部25bまで車体後方向に向けて延び、かつ、下方に向けて膨出されている。
【0054】
ここで、左補強部材25は、プレート部62の前端部がクロスメンバ15の左取付部15aに複数のボルト67・ナット68で取り付けられている。また、プレート部62の後端部がダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに複数のボルト71・ナット72(
図3参照)で取り付けられている。さらに、プレート部62の後支え部63が後締結部47に締結されている。
プレート部62は第1ビード部65や第2ビード部66より高い位置に配置されている。よって、プレート部62をクロスメンバ15の左取付部15a、ダッシュクロスメンバ24の左取付部24bや後締結部47に締結させることにより、ボルト67、ボルト71や後締結ボルト57の頭部を上方に配置でき、車両の最低地上高を確保できる。
【0055】
さらに、プレート部62が略平坦に形成されている。よって、プレート部62および後締結部47間の間隔(クリアランス)Sが好適に確保される。これにより、後締結部47の弾性部48が弾性変形する際に、後締結部47の移動をプレート部62で抑える虞がない。
すなわち、車両の走行中に左サスペンションアーム21の移動が確保され、左サスペンションアーム21の動作が保証される。
【0056】
また、左補強部材25は、第1ビード部65および第2ビード部66が下方に向けて膨出され、かつ、第1ビード部65および第2ビード部66の各ビード屈曲部65a,66aが下方に折れ曲がるように膨出されている。よって、剛性部64は、屈曲部61で下方に折曲がり可能に形成されている。
すなわち、左補強部材25は、車体11に車体前方から衝撃荷重が入力した場合に、入力した衝撃荷重で屈曲部61から下方に折れ曲がるように形成されている。
【0057】
ここで、屈曲部61およびダッシュクロスメンバ24の左取付部24b間に後締結部47が配置されている。すなわち、屈曲部61が後締結部47より車体前方に配置されている。
よって、車体11に入力した衝撃荷重で左補強部材25の屈曲部61が下方に折れ曲がることにより、左補強部材25の後支え部63で後締結部47に下方、かつ、車体後方への荷重を好適に作用させることができる。
後締結部47に作用する下方、かつ、車体後方への荷重で、後締結部47を左マウント部18から良好に外すことができる。
【0058】
図4、
図7に示すように、クロスメンバ15は、車幅方向に延ばされたメンバ本体75と、メンバ本体75の左端部75aに設けられた左脚部76と、メンバ本体75の右端部に設けられた右脚部77(
図1参照)とを備えている。
さらに、クロスメンバ15は、左補強部材25の前端部25aが取り付けられる左取付部15aと、右補強部材26の前端部26aが取り付けられる右取付部15b(
図1参照)とを備えている。
クロスメンバ15の左取付部15aは、クロスメンバ15の底部37で、かつ、底部37の左端部に相当する部位である。
左脚部76および右脚部77は、左右対称の部材であり、以下、右脚部77の詳しい説明を省略する。
【0059】
左脚部76は、メンバ本体75の左端部75aから左フロントサイドフレーム12の前部31まで上方に向けて延ばされ、前部31に上端部76aが連結されている。よって、メンバ本体75の左端部75aおよび左フロントサイドフレーム12の前部31で左脚部76の剛性が確保されている。剛性が確保された左脚部76に前締結部44を締結することにより、前締結部44が左脚部76で強固に支持される。
この左脚部76は、車幅方向外側に向けて開口され、かつ、下方に向けて開口された空間79を備えている。空間79は、開口から前締結部44を収納可能に形成されている。
【0060】
図5に示すように、空間79に前締結部44が収納された状態で、前締結部44が左脚部76の前壁76bおよび後壁76cに前締結ボルト54・前締結ナット55で締結される。前締結部44は前締結ボルト54を軸にして上下方向に回動自在に支持されている。
【0061】
図2、
図4に戻って、クロスメンバ15の左取付部15aに左補強部材25の前端部25aが複数のボルト67・ナット68(ナット68は
図5参照)で下方から締結されている。クロスメンバ15の左取付部15aは、左脚部76より車幅方向内側に配置されている。よって、左補強部材25の前端部25aが前締結部44より車幅方向内側に配置される。
【0062】
このように、左脚部76が車幅方向外側や下方へ向けて開口され、かつ、左補強部材25の前端部25aが前締結部44より車幅方向内側に配置されている。よって、左サスペンションアーム21が前締結ボルト54を軸にして上下方向(矢印A方向)に移動することが許容される。
これにより、車両の走行中に左サスペンションアームの上下方向の動作が保証される。
【0063】
図1、
図7に示すように、クロスメンバ15の車体前方側においてクロスメンバ15に沿ってパワーステアリング装置16のステアリングチューブ35が配置されている。ステアリングチューブ35は、左右端部に左右の取付ブラケット36(右取付ブラケットは図示せず)を有する。
【0064】
クロスメンバ15の車体前方側にステアリングチューブ35が配置された状態で、左取付ブラケット36がメンバ本体75の頂部78のうち左端部78aにボルト81・ナット82(
図8参照)で取り付けられる。また、右取付ブラケットが、左取付ブラケット36と同様に、メンバ本体75の頂部78にボルト・ナットで取り付けられる。
これにより、クロスメンバ15にステアリングチューブ35が取り付けられる。
【0065】
図8に示すように、メンバ本体75の頂部78のうち左端部78a(すなわち、パワーステアリング装置16が設けられる部位)に左取付ブラケット36がボルト81・ナット82で取り付けられる。
頂部78の左端部78aの下方にクロスメンバ15の左取付部15aが位置する。クロスメンバ15の左取付部15aに左補強部材25の前端部25aが複数のボルト67・ナット68で締結されている。よって、頂部78のうち左端部78a(すなわち、パワーステアリング装置16が設けられる部位)が左補強部材25の前端部25aで補強される。
これにより、パワーステアリング装置16がクロスメンバ15の頂部78に強固に支持されている。
【0066】
図9に示すように、クロスメンバ15および左フロントサイドフレーム12が左ブレース部85で連結されている。また、クロスメンバ15および右フロントサイドフレーム13が右ブレース部86で連結されている。
【0067】
左ブレース部85は、一例として、鋼板で直線状に延出するように形成され、両側縁に補強用の折曲片が形成されている。右ブレース部86は、左ブレース部85と同様に、鋼板で直線状に延出するように形成され、両側縁に補強用の折曲片が形成されている。
左ブレース部85および右ブレース部86が車体11の底部に取り付けられることにより、車体11の底部が補強される。
【0068】
具体的には、クロスメンバ15の底部37のうち車幅方向中央部15cにおいて、左ブレース部85の前端部85aに右ブレース部86の前端部86aが下方から重ね合わされている。この状態で、左ブレース部85の前端部85aおよび右ブレース部86の前端部86aがボルト88で締結されている。
【0069】
左ブレース部85は、車体後方に向けて車幅方向左外側に傾斜するように延出されている。右ブレース部86は、車体後方に向けて車幅方向右外側に傾斜するように延びている。これにより、左ブレース部85および右ブレース部86がクロスメンバ15から車体後方に向けて徐々に広がるように略V字状に延出されている。
【0070】
左ブレース部85は、左フロントサイドフレーム12の後端部12cの底部に中央部85bがボルト89で下方から締結され、左サイドシル28に後端部(図示せず)が設けられている。
また、右ブレース部86は、右フロントサイドフレーム13の後端部12cの底部に中央部86bがボルト91で下方から締結され、右サイドシル29に後端部(図示せず)が設けられている。
よって、クロスメンバ15、左フロントサイドフレーム12および右フロントサイドフレーム13が左ブレース部85および右ブレース部86で補強される。
【0071】
ここで、クロスメンバ15にはパワーステアリング装置16や左右のサスペンションアーム21の各前締結部44が支持されている。また、左右のフロントサイドフレーム12,13には左右のサスペンションアーム21の各後締結部47が支持されている。さらに、ダッシュクロスメンバ24は左右のフロントサイドフレーム12,13に架設されている。
【0072】
よって、パワーステアリング装置16などの操舵系部品や、左右のサスペンションアーム21を支持する部材の剛性(いわゆる、支持剛性)を左ブレース部85および右ブレース部86で高めることができる。
これにより、パワーステアリング装置16などの操舵系部品や、左右のサスペンションアーム21などを車体11で強固に支持できる。
【0073】
つぎに、本発明に係る車体前部構造10で車体前方から入力した衝撃荷重を吸収する例を
図10に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、左フロントサイドフレーム12にフレーム屈曲部33を備え、フレーム屈曲部33の下方に左補強部材25を配置した。左補強部材25をクロスメンバ15およびダッシュクロスメンバ24に架設し、かつ、左補強部材25に屈曲部61を備えた。
【0074】
この状態において、車体11(具体的には、左フロントサイドフレーム12の前端部12a)に車体前方から衝撃荷重F1が入力する。入力した衝撃荷重F1で左フロントサイドフレーム12のフレーム屈曲部33が車幅方向に折れ曲がる。フレーム屈曲部33が折れ曲がることにより、左フロントサイドフレーム12の前部31が車体後方に向けて矢印Bの如く移動する。
【0075】
よって、左フロントサイドフレーム12の前部31とともにクロスメンバ15が車体後方に矢印Cの如く移動する。クロスメンバ15には、左補強部材25の前端部25aが締結されている。
よって、クロスメンバ15が車体後方に移動することにより、左補強部材25の前端部25aに荷重F2が入力する。入力した荷重F2で左補強部材25が屈曲部61からボルト71(左補強部材25の後端部25bをダッシュクロスメンバ24の左取付部24bに締結するボルト)を支点にして想像線で示すように矢印Dの如く下方に折れ曲がる。
【0076】
左補強部材25が屈曲部61から折れ曲がることにより、左フロントサイドフレーム12の車体後方への屈曲を左補強部材25で抑制する虞がない。これにより、左フロントサイドフレーム12を車体後方へ好適に屈曲させて、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに入力した衝撃荷重F1を良好に吸収できる。
【0077】
図10(b)に示すように、左サスペンションアーム21の後締結部47に左補強部材25の後支え部63が締結されている。よって、左補強部材25の屈曲部61が下方に矢印Dの如く折り曲げられることにより、左補強部材25から後締結部47に下方、かつ、車体後方への荷重F3が作用する。
【0078】
後締結部47に荷重F3が作用することにより、後締結部47が締結される左マウント部18を破断、または、左マウント部18から後締結部47を外すことができる。
これにより、左フロントサイドフレーム12の車体後方への屈曲を左サスペンションアーム21で抑制する虞がなく、左フロントサイドフレーム12の前端部12a(
図10(a)参照)に入力した衝撃荷重F1を一層良好に吸収できる。
【0079】
また、左サスペンションアーム21の後締結部47は、カラー49が弾性部48の弾性変形により傾斜可能に支持され、かつ、左マウント部18に片持支持されている。
一方、左サスペンションアーム21の前締結部44は、クロスメンバ15の左脚部76の空間79に収納され、左脚部76とともに前締結部44を車体後方に移動させることができる。
【0080】
ここで、
図10(a)に示すように、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに入力した衝撃荷重F1でフレーム屈曲部33を屈曲する際に、クロスメンバ15とともに左サスペンションアーム21の前締結部44が車体後方に向けて矢印Cの如く移動する。
前締結部44が移動することにより、剛体であるアーム本体43が車体後方に矢印Eの如く移動する。
【0081】
図10(b)に示すように、アーム本体43が矢印Eの如く移動することにより、アーム本体43で後締結部47の弾性部48を押圧し、弾性部48でカラー49を車体後方に向けて矢印Eの如く押圧する。
ここで、後締結部47の後締結ボルト57は、ねじ部(すなわち、上端部)が後締結ナット42を介して左マウント部18に支持されている。
【0082】
この状態で、弾性部48が弾性変形することにより、カラー49が車体後方に向けて直線92で示すように下り勾配に傾斜される。よって、後締結部47が締結されている左マウント部18の破断や変形が促進され、左マウント部18から後締結部47を後締結ナット42とともに良好に外すことができる。
これにより、左フロントサイドフレーム12の車体後方への屈曲を促進させて、左フロントサイドフレーム12の前端部12a(
図10(a)参照)に入力した衝撃荷重F1を一層良好に吸収できる。
【0083】
また、屈曲部61が後締結部47より車体前方に配置されている。よって、入力した衝撃荷重F1で屈曲部61が下方に折れ曲がることにより、左補強部材25(具体的には、後支え部63)から後締結部47に下方、かつ、車体後方への荷重F3を好適に作用させることができる。
これにより、後締結部47を左マウント部18から良好に外すことができる。
【0084】
なお、本発明に係る車体前部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、クロスメンバ15および左フロントサイドフレーム12が左ブレース部85で連結され、クロスメンバ15および右フロントサイドフレーム13が右ブレース部86で連結される例について説明したが、これに限定するものではない。
【0085】
例えば、クロスメンバ15およびダッシュクロスメンバ24の左端部を左ブレース部85で連結し、クロスメンバ15およびダッシュクロスメンバ24の右端部を右ブレース部86で連結することも可能である。
これにより、実施例と同様に、パワーステアリング装置16などの操舵系部品や、左右のサスペンションアーム21を支持する部材の剛性(いわゆる、支持剛性)を高めることができ、各部材を車体11で強固に支持できる。
【0086】
また、前記実施例で示した車体前部構造、車体、左右のフロントサイドフレーム、クロスメンバ、パワーステアリング装置、ダッシュパネル、左右のマウント部、左右のサスペンションアーム、ダッシュクロスメンバ、左右の補強部材、フレーム屈曲部、アーム本体、前締結部、後締結部、弾性部、カラー、屈曲部、プレート部、剛性部、第1、第2のビード部、左右の脚部および左右のブレース部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。