特許第6001623号(P6001623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001623
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】インバータ制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20160923BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20160923BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02P29/024
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-241127(P2014-241127)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-107052(P2015-107052A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0147051
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユソク
(72)【発明者】
【氏名】リ チェ ムン
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−001574(JP,A)
【文献】 特開2007−008294(JP,A)
【文献】 特開2012−236531(JP,A)
【文献】 特開2005−094995(JP,A)
【文献】 特開平08−181722(JP,A)
【文献】 特開2013−111467(JP,A)
【文献】 特開2006−197769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0165431(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0296375(US,A1)
【文献】 特開2007−189825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータで、インバータ部の下部スイッチング素子のエミッタ端に配置されたレッグシャント抵抗から2相電流を受信して、3相電流を決定する第1の決定部と、
決定された3相電流の異常有無を判別する判別部と、及び
前記判別部が異常値が発生したと判断した場合、該当異常値の電流を補正する補正部と、を含み、
前記判別部は、
固定子電圧と逆起電力との差を用いて、異常有無の判別のための基準値を設定する基準値生成部と、
異常値の判別のための境界を生成する境界設定部と、及び
固定子電圧と逆起電力との差と、基準値との差異の絶対値が境界よりも大きい場合、電流が異常値であることを決定する第2の決定部と、を含み、
前記基準値は、次の式を通じて設定されることを特徴とするインバータ制御装置。
【数1】
【請求項2】
前記基準値は、
固定子電圧と逆起電力との差をローパスフィルタリング(LPF)したものであることを特徴とする請求項に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記境界は、
固定子電圧と逆起電力との差の、最大値と最小値との差に、所定の定数を乗じた値であることを特徴とする請求項またはに記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記補正部は、次の式を通じて異常値の固定子電流を補正することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【数2】
【請求項5】
前記補正部によって補正された異常値の電流を受信して、電動機の回転子磁束を再推定する推定部をさらに含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【請求項6】
再推定された回転子磁束を用いて、同期座標系上の固定子のd軸及びq軸の電流制御命令を更新して前記インバータ部を制御する制御部をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のインバータ制御装置。
【請求項7】
レッグシャント抵抗から検出された2相電流を用いて、インバータから出力される3相電流を決定するステップと、
固定子電圧と逆起電力との差を用いて、異常有無の判別のための基準値を設定するステップと、
異常値の判別のための境界を決定するステップと、
固定子電圧と逆起電力との差と、基準値との差異の絶対値が境界よりも大きい場合、電流が異常値であることを決定するステップと、及び
電流が異常値と決定された場合、異常値の電流を補正するステップと、を含み、
前記基準値は、次の式を通じて設定されることを特徴とするインバータ制御方法。
【数3】
【請求項8】
補正された異常値の電流を受信して、電動機の回転子磁束を再推定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のインバータ制御方法。
【請求項9】
再推定された回転子磁束を用いて、同期座標系上の固定子のd軸及びq軸の電流制御命令を更新して前記インバータのインバータ部を制御するステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のインバータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御装置及び方法に関するものであって、より詳しくには、レッグ−シャント抵抗を用いて、各相電流を測定するインバータを制御する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータとは、電気的に直流を交流に変換する装置であって、常用電源から供給された電力を入力され、インバータ内で電圧と周波数を可変させて電動機に供給することによって、電動機の速度を制御する。
【0003】
図1は、一般的なインバータシステムの構成図である。
【0004】
図に示すように、電動機2を駆動するインバータ1は、3相電源を入力として、整流部10がDC電源に変換し、DC−リンクキャパシタ20がこれを蓄積した後、インバータ部30がDC−リンクキャパシタ20に蓄積されたDC電源を再びAC電源に変換し、電圧と周波数を可変して、電動機2を駆動する。したがって、インバータ1を可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency;VVVF)システムともいう。
【0005】
最近、小容量のインバータでは、製品の原価競争力の確保のために、シャント抵抗を用いて電流を検出する方法を多く用いる。シャント抵抗を用いた電流検出方式は、シャント抵抗の位置によって、DC−リンクシャント抵抗の電流検出方式、出力相シャント抵抗の電流検出方式、及びレッグ−シャント抵抗の電流検出方式などに分けられる。
【0006】
図2は、レッグシャント抵抗の電流検出方式を説明するための構成図である。
【0007】
図に示すように、シャント抵抗をインバータ部30の下部絶縁ゲートのバイポーラトランジスタ(Insulated gate bipolar transistor;IGBT)22のエミッタ端に配置した状態で電流を検出する方法であって、低コストで回路を実現することができ、瞬時電流も検出することができるメリットがある。
【0008】
しかし、レッグシャント抵抗を用いる方式は、IGBTのパルス幅変調(Pulse Width Modulation;PWM)のスイッチング状態によって電流検出領域が制限される問題点がある。
【0009】
図3は、レッグシャント型のインバータの電流検出制限領域を説明するための例示図であり、図4は、レッグシャント型のインバータで相電流を検出する区間を説明するための例示図である。
【0010】
空間ベクトルPWM(Space Vector PWM;SVPWM)は、6個の活性化ベクトルと、2個のゼロベクトルとで構成されており、PWM制御部は、インバータの3相出力電圧をd−q変換を通じてd軸とq軸間の2次元平面上の低圧基準ベクトルV*に変換する。V*は、隣接する2つの活性化ベクトルとゼロベクトルとの組み合わせで構成される。
【0011】
図4に示すように、セクタ1(図3参照)では、PWM1/2周期の間、ゼロベクトルV0(0,0,0)、活性化ベクトル1 V1(1,0,0)、活性化ベクトル2 V2(1,1,0)、及びゼロベクトルV7(1,1,1)の順にスイッチングベクトルを印加し、残りのPWM1/2周期の間、その逆順に、スイッチングベクトルを印加する(これを「対称SVPWM」という)。
【0012】
図2のような構造において、レッグシャント型のインバータの各相の電流検出は、各相の下部IGBTがターンオン(turn on)されシャント抵抗23に電流が流れるときに可能である。また、インバータ3相の電流検出は、図4に示すように、インバータが3相平行な条件で、少なくとも下部IGBTが2つ以上ターンオンされる区間で可能である。
【0013】
2つのIGBTがターンオンされ、2つの相の電流検出が可能であれば、ius+ ivs+iws=0の関係式に基づいて、残りの1つの相の電流も計算を通じて間接検出が可能である。つまり、SVPWMで、キャリアと比較する各相の基準電圧が最も高い相を除いた残りの2つの相の電流を検出すると、残りの1つの相の電流も間接検出が可能である。図3で分類したセクタによって変わり、その結果は、表1の通りである。
【0014】
【表1】
【0015】
このようなレッグシャント型のインバータで電流検出制限領域を外れるように制御する方法として、電圧基準ベクトルが電流検出制限領域に進入する場合、電圧基準ベクトルの角と大きさを変調して、検出制限領域から外れるように制御するものがあり、これは、次の数式1に従う。
【0016】
【数1】
【0017】
このとき、tdtは、インバータのデッドタイムであり、trsは、電流検出回路の遅延時間であり、tsnは、ADコンバータのサンプリング時間であり、Tsamp_minは、レッグ−シャント抵抗の電流検出の最小検出時間である。
【0018】
しかし、上記の従来技術では、予測された電流検出不可領域の外部で電流検出が正確に行われていない状況に対する対処は考慮していない。
【0019】
一方、センサレスベクトル制御方式のインバータでは、エンコーダのような別の速度検出装置を用いらず、図5のように回転子の磁束を推定し、その推定した回転子の磁束で回転子の回転速度を推定する。図5は、回転子磁束推定部の例示図である。
【0020】
図5に示すように、回転子の磁束を検出して回転子の回転速度を推定する場合、測定した電流が瞬時的でも物理的な実際の電流と大きく異なる場合、回転子磁束推定部をはじめとした、その他のいくつかのセンサレスベクトル制御モジュールが不安定に動作する可能性が発生する。
【0021】
【数2】
【0022】
誘導電動機のセンサレス間接ベクトル制御方式は、数式2のように、同期角θeを計算して、電圧指令ベクトルの計算に用いることになるが、このために、回転子の速度wrとwsl値を正確に求めなければならない。
【0023】
回転子の速度wrは、推定された回転子の磁束で推定し、数式1でのように、スリップ速度wslは、同期座標系上のq軸電類とd軸電類との比に比例する。
【0024】
レッグ−シャント型インバータは、図3のSVPWMの出力電圧ベクトル図上でセクタが変わる部分である(011)、(101)、(110)のベクトルの境界付近では、上の数式1により定義された電流検出不可領域の外部でも電流情報を不完全に読み取る確率が非常に高いことを実験的に確認した。
【0025】
図6は、レッグシャント抵抗の電流検出回路の限界性能を補完していなかったとき、インバータのセンサレス制御の不安定な現象を観測した実験波形であり、図7は、レッグシャント型のインバータで検出した電流をローパスフィルタリング(low pass filtering)した実験波形である。
【0026】
図6を参照すると、一定の負荷動作中であるため、ieqsに脈動が発生してはならない。また、図7で、左の波形は、3相電流を2相に座標変換した結果であって、黄色の波形は、d軸の固定子電流、赤色の波形は、q軸の固定子電流であり、緑色の波形は、比較のために、U相電流をオシロスコープで実測したものである。右の波形は、左の固定子電流ベクトルを相図示(phase plot)した結果である。
【0027】
つまり、出力電圧ベクトル図のベクトルの頂点付近に位置する三角形の内側だけでなく、ゼロベクトル時間が十分に確保されるものと見られる、当該ベクトルの境界線付近の領域でも、不完全な電流情報で読み取ることができることを実験的に確認した。
【0028】
上記のような問題は、レッグシャントによって検出された実際の電流と大きく異なる電流が連続的に検出されるのではなく、1サンプル程度検出されるときは、磁束推定部の積分時に、短い時間のサンプリング時間を乗じて、その値を積算するため、推定された磁束の大きさには大きな影響を及ぼさないものと判断することができる。
【0029】
しかし、インバータによって制御される電動機に一定の負荷以上(定格の約100%の負荷)を印加し、停止座標系上の固定子の電流ベクトルのd−qの軸座標平面の上に相図示(phase plotting)すると、図6に示すように、異常値の電流値(outlier point)が観測される瞬間、電流ベクトル(ieds)の角と大きさが瞬時にジャンプする現象が実験的に観測される。そして、次のステップでは、既存のベクトルの値の近くに逆行して戻ってくる現象が観測される。
【0030】
それだけでなく、該当状況で、固定子磁束推定部に積分対象項として動作する固定子電圧と固定子逆起電力との差、vs−Rs・isは、大きな瞬時ピーク値を有することになるが、この演算のため、整数演算のみを扱う中低価のマイクロコントローラユニット(Micro−Controller Unit;MCU)とデジタル信号処理機(Digital Signal Processor;DSP)で、計算上の解像度を高めるために、変数を比較的広い領域に対して取る場合、変数のオーバーフロー(over−flow)が発生することがあり、これによって、変数が初期化され、推定磁束のステップ変化(step variation)が発生し、この後は、磁束推定が正しくなされず、インバータの脱調現像などが発生し得る問題点がある。
【0031】
また、図6を参照すると、同期座標系上の固定子電流のd軸の成分は、定数(constant)の指令にも瞬時にステップ変化が繰り返して見えることを観測することができる。このような現象は、数式2のスリップ速度の計算にエラーを引き起こす可能性があり、同期角の計算の性能に大きな影響を与える誘導電動機の間接ベクトル制御方式のセンサレス制御性能に推定速度誤差などの副作用をもたらす可能性のある問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明が解決しようとする技術的課題は、レッグ−シャント抵抗方式によって測定した電流が電流検出不可領域にあることを判別し、誘導電動機の固定子及び回転子の磁束を補正してインバータを制御するための、インバータ制御装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施形態のインバータ制御装置は、インバータで、インバータ部の下部スイッチング素子のエミッタ端に配置されたレッグシャント抵抗から2相電流を受信して、3相電流を決定する第1の決定部と、決定された3相電流の異常有無を判別する判別部と、及び、前記判別部が異常値が発生したと判断した場合、該当異常値の電流を補正する補正部と、を含む。
【0034】
本発明の一実施形態のインバータ制御装置は、前記第1の決定部から受信した相電流を固定子の停止座標系の電流に変換する変換部をさらに含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記判別部は、固定子電圧と逆起電力との差を用いて、異常有無の判別のための基準値を設定する基準値生成部と、異常値の判別のための境界を生成する境界設定部と、及び、固定子電圧と逆起電力との差と、基準値との差異の絶対値が境界よりも大きい場合、電流が異常値であることを決定する第2の決定部と、を含む。
本発明の一実施形態において、前記基準値は、固定子電圧と逆起電力との差をローパスフィルタリング(LPF)したものである。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記境界は、固定子電圧と逆起電力との差の、最大値と最小値との差に、所定の定数を乗じた値である。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記補正部は、次の式を通じて異常値の固定子電流を補正する。
【0038】
【数3】
【0039】
本発明の一実施形態のインバータ制御装置は、前記補正部によって補正された異常値の電流を受信して、電動機の回転子磁束を再推定する推定部をさらに含む。
【0040】
本発明の一実施形態のインバータ制御装置は、再推定された回転子磁束を用いて、同期座標系上の固定子のd軸及びq軸の電流制御命令を更新して前記インバータ部を制御する制御部をさらに含む。
【0041】
また、上記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施形態のインバータ制御方法は、レッグシャント抵抗から検出された2相の電流を用いて、インバータから出力される3相電流を決定するステップと、固定子電圧と逆起電力との差を用いて、異常有無の判別のための基準値を設定するステップと、異常値の判別のための境界を決定するステップと、固定子電圧と逆起電力との差と、基準値との差異の絶対値が境界よりも大きい場合、電流が異常値であることを決定するステップと、及び、電流が異常値と決定された場合、異常値の電流を補正するステップと、を含む。
【0042】
本発明の一実施形態のインバータ制御方法は、補正された異常値の電流を受信して、電動機の回転子磁束を再推定するステップをさらに含む。
【0043】
本発明の一実施形態のインバータ制御方法は、再推定された回転子磁束を用いて、同期座標系上の固定子のd軸及びq軸の電流制御命令を更新して前記インバータのインバータ部を制御するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0044】
このような本発明の一実施形態によれば、レッグ−シャント型のインバータの相電流の異常値を判別して、電流を該当ステップの電流を補正し、これを磁束推定に反映することによって、インバータのベクトル制御性能の安定性を確保することができる。
【0045】
また、本発明は、中負荷で、相電流の異常値が制御命令に適用されることを防止して、MCU/DSPの変数がオーバーフローしないように予防し、インバータの脱調の可能性を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】一般的なインバータシステムの構成図である。
図2】レッグシャント抵抗の電流検出方式を説明するための構成図である。
図3】レッグシャント型のインバータの電流検出制限領域を説明するための例示図である。
図4】レッグシャント型のインバータで相電流を検出する区間を説明するための例示図である。
図5】回転子磁束推定部の例示図である。
図6】レッグシャント抵抗の電流検出回路の限界性能を補完していなかったとき、インバータのセンサレス制御の不安定な現象を観測した実験波形である。
図7】レッグシャント型のインバータで検出した電流をローパスフィルタリングした実験波形である。
図8】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置の構成図である。
図9図8の異常値判別部の一実施形態の詳細構成図である。
図10】本発明の一実施形態に係るインバータ制御方法を説明するための一実施形態のフローチャートである。
図11】本発明で異常値の電流検出を確認することを説明するための一例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、様々な変更を加えることができ、種々の実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明において詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
以下、添付された図面を参照して、本発明に係る好ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0048】
図8は、本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置の構成図であって、図1のようなシステムに適用されるものであり、図2のように、レッグ−シャント抵抗23で検出した電流を受信し、インバータ部30のスイッチングをベクトル制御するものである。
【0049】
図に示すように、本発明のインバータ制御装置は、3相電流決定部50、座標変換部60、異常値判別部70、及び補正部80を含み、補正部80からの出力が、図5の回転子磁束推定部40に入力され、回転子磁束推定部40から推定された磁束を基に、電流制御部90がインバータ1を制御するものである。
【0050】
3相電流決定部50は、各相の下部IGBTがターンオンされた場合にのみ電流を検出するために、レッグ−シャント抵抗23で検出した2相電流を受信して、3相の電流を決定することができる。このとき、その関係は、上で示した表1の通りである。このように決定された3相電流は、図示していない格納部に格納することができる。
【0051】
座標変換部60は、検出された相電流を座標変換し、固定子の停止座標系d、q軸の電流に変換することができる。これを数式で表すと、次の通りである。
【0052】
【数4】
【0053】
図9は、図8の異常値判別部の一実施形態の詳細構成図である。
【0054】
図に示すように、本発明の異常値判別部70は、基準値生成部71、境界設定部72、及び決定部73を含む。
【0055】
基準値生成部71は、固定子電圧と逆起電力との差(vs−Rs・is)を用いて、基準値を設定することができる。まず、基準値生成部71は、検出された電流の異常有無を判別するために、図5の固定子磁束推定部の積分器Aの入力である固定子電圧と逆起電力との差を用いて、次のように数式を定義する。以下で、下付き添字d、qは、座標軸、sは、固定子、上付き添字eは、同期座標系であることを示す。
【0056】
【数5】
【0057】
境界設定部72は、異常値(outlier)の判別のための境界(boundary radius)をd、q軸に対して、それぞれ、次のように設定することができる。
【0058】
【数6】
【0059】
補正部80は、異常値判別部70から、異常値が発生したことを受信した場合、異常値の固定子電流を次式を用いて補正することができる。
【0060】
【数7】
【0061】
図5に示すように構成される回転子磁束推定部40は、このように補正された異常値の固定子電流を受信して、回転子磁束を次のように再推定することができる。
【0062】
【数8】
【0063】
この後、電流制御部90は、再推定された回転子磁束を基に、該当ステップの同期座標系上の固定子のd軸及びq軸の電流制御命令を更新し、インバータ1を制御することができる。
【0064】
図10は、本発明の一実施形態に係るインバータ制御方法を説明するための一実施形態のフローチャートである。図に示すように、本発明のインバータ制御方法で、3相電流決定部50は、レッグ−シャント抵抗23で検出した2相電流を受信して、3相電流を表1の関係によって決定することができる(S10)。この後、座標変換部60は、検出された相電流を座標変換し、数式4のように、停止座標系のd軸及びq軸の電流に変換することができる(S15)。
【0065】
【数9】
【0066】
決定部73は、固定子電圧と逆起電力との差と、基準値との差異の絶対値が境界よりも大きい場合、該当ステップでの電流が異常値であると決定することができる(S30、S35、S40)。
【0067】
補正部80は、該当ステップでの電流が異常値であると判別された場合、数式7を用いて、異常値の固定子電流を補正し(S45)、回転子磁束推定部40は、補正された異常値の固定子電流を受信して、数式8を用いて、回転子磁束を再推定することができる(S50)。
【0068】
電流制御部90は、再推定された回転子磁束を基に、該当ステップの同期座標系上の固定子のd軸及びq軸の電流制御命令を更新して、これを、インバータ1のインバータ部30に送信すると、インバータ部30は、該当電流制御命令によりスイッチングを行うことができる。
【0069】
図11は、本発明において、異常値の電流検出を確認することを説明するための一例示図である。
【0070】
図において、ピンク色の波形は、磁束推定部40の積分器Aの入力波形であって、固定子電圧と逆起電力との差(vs−Rs・is)である。異常電流が入力される瞬間、明確に区別されることが分かり、本発明によると、この値を基準として、異常値の電流が検出されることが分かる。
【0071】
本発明は、レッグシャント型のインバータの相電流の異常値を判別して、電流を該当ステップの電流を補正し、これを磁束推定に反映することにより、インバータのベクトル制御性能の安定性を確保することができる。
【0072】
また、本発明は、中負荷で、相電流の異常値が制御命令に適用されることを防止して、MCU/DSPの変数がオーバーフローしないように予防し、インバータの脱調の可能性を下げることができる。
【0073】
以上、本発明に係る実施例を説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な範囲の実施例が可能であることを理解することができるだろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、次の特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0074】
50 3相電流決定部
60 座標変換部
70 異常値判別部
80 補正部
90 電流制御部
図1
図2
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図9
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図11