特許第6001806号(P6001806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6001806マルチキャリア信号を送信する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001806
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】マルチキャリア信号を送信する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04J 11/00 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   H04J11/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-504713(P2016-504713)
(86)(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公表番号】特表2016-524825(P2016-524825A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2015054028
(87)【国際公開番号】WO2015128420
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】14156875.8
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイトケンパー,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】バッジ,ジャマル
(72)【発明者】
【氏名】楠目 勝利
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/025883(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0268837(US,A1)
【文献】 C. Lele et al.,Channel estimation with scattered pilots in OFDM/OQAM,2008 IEEE 9th Workshop on Signal Processing Advances in Wireless Communications,2008年 7月 6日,pp.286-290
【文献】 J. -P. Javaudin et al.,Pilot-aided channel estimation for OFDM/OQAM,Vehicular Technology Conference, 2003. VTC 2003-Spring. The 57th IEEE Semiannual,2003年 4月22日,Volume:3,pp.1581-1585
【文献】 Jamal Bazzi et al.,Power Efficient Scattered Pilot Channel Estimation for FBMC/OQAM,SCC 2015; 10th International ITG Conference on Systems, Communications and Coding; Proceedings of,2015年 2月 2日,pp.1-6
【文献】 France Telecom, Orange,Some practical aspects for OFDM/OQAM channel estimation[online],3GPP TSG-RAN WG1#43,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_43/Docs/R1-051458.zip>,2005年10月31日,R1-051458
【文献】 SeungWon Kang et al.,Robust Channel Estimation Scheme to the Intrinsic Interference of IOTA Function in OFDM/OQAM-IOTA Sy, Vehicular Technology Conference, 2006. VTC-2006 Fall. 2006 IEEE 64th,2006年 9月28日
【文献】 荒川 和洋 et al.,下りリンクOFDM/Offset QAM−IOTA MIMO多重におけるチャネル推定法,電子情報通信学会総合大会講演論文集,2007年 3月 7日,p.501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア信号を送信する方法であって、
前記信号は、前記時間周波数空間におけるシンボルを含む前記オフセット直交振幅変調OQAMのタイプであり、
前記シンボルは、
パイロットシンボルと、
プリコーディングシンボルと、
他のシンボルと、
のうちの1つであり、
該方法は、
前記パイロットシンボルが前記受信機によって受信されたとき、該パイロットシンボルの前記内部干渉が所定の離散値集合の中からの1つの値を有するように強制的にするよう前記プリコーディングシンボルが選択され、前記集合が、0と異なる少なくとも1つの要素を含む、
ことを特徴とする、マルチキャリア信号を送信する方法。
【請求項2】
前記シンボルは、実数値シンボルを変調することによって形成され、及び/又は前記内部干渉は、前記復調信号の虚部に対応する、請求項1に記載の送信方法。
【請求項3】
前記オフセット直交振幅変調は、フィルタバンクマルチキャリアオフセット直交振幅変調FBMC/OQAM又はOFDM/OQAMのうちの一方である、請求項1又は2に記載の送信方法。
【請求項4】
前記プリコーディングシンボルの前記選択は、次の基準、すなわち、
前記プリコーディングシンボルの前記送信電力が削減されることと、
前記パイロットシンボルの前記受信電力が増加されることと、
前記2つの基準の間のトレードオフと、
のうちの少なくとも1つに従って行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項5】
前記基準は、前記送信機と前記受信機との間でシグナリングされ、及び/又は
前記所定の離散値集合の前記構成は、前記送信機と前記受信機との間でシグナリングされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項6】
前記所定の離散値集合は、複数の所定の値集合のうちの1つであり、
前記集合の前記選択は、前記リンク状態に従って行われ、及び/又は
前記複数の所定の値集合間の切り替えの前記方策は、前記リンク状態に従って前記送信機と前記受信機との間でシグナリングされる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項7】
前記リンク状態は、次のパラメータ、すなわち、前記送信機と前記受信機との間の信号対雑音比と、信号対干渉比と、チャネル品質インジケータとのうちの少なくとも1つを考慮に入れる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項8】
プリコーディングシンボルは、前記時間周波数空間において前記パイロットシンボルを囲むシンボルの前記第1のリングに属する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の送信方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって送信されたマルチキャリア信号を受信する方法であって、
チャネル推定が、パイロットシンボルに基づいており、
前記時間周波数空間内の座標m,nにおける受信された前記パイロットシンボルは、
【数1】
であり、ここで、
【数2】
は、前記送信された実数パイロット信号であり、Xは、前記内部干渉であり、
【数3】
は、加法雑音であり、
該方法は、チャネル推定が、以下のステップ、すなわち、
(i)前記チャネルの電力を推定するステップと、
(ii)前記受信されたパイロットシンボルの電力を、該パイロットシンボルの電力をステップ(i)の前記推定されたチャネルの電力によって除算することによって推定するステップと、
(iii)前記パイロットシンボルの虚部の値を、前記パイロットシンボルの前記既知の値
【数4】
と、ステップ(ii)の結果とに基づいて、所定の離散値集合の中からの1つの値Xとして認識するステップと、
(iv)前記チャネル係数
【数5】
を、前記受信されたパイロットシンボルに基づいて、前記式
【数6】
に従って推定するステップと、
によって実行されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって送信されたマルチキャリア信号を受信する方法。
【請求項10】
シンボルは、前記信号を複素数値シンボルに復調することによって形成され、及び/又は
前記内部干渉は、前記復調信号の虚部に対応する、請求項9に記載の受信する方法。
【請求項11】
前記チャネルの電力
【数7】
は、前記パイロットシンボルを囲むデータシンボルの前記受信電力を平均することによって推定される、請求項9又は10に記載の受信する方法。
【請求項12】
前記受信されたパイロットシンボルの電力は、該パイロットシンボルの電力を、前記式
【数8】
に従って、ステップ(i)の前記推定されたチャネルの電力によって除算することによって推定される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記パイロットシンボルの前記値及び前記時間周波数空間におけるロケーションは、前記マルチキャリア信号の受信を行うことを意図した少なくとも1つの受信機に知られている、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
マルチキャリア信号を送信する装置であって、
前記信号は、前記時間周波数空間におけるシンボルを含む前記オフセット直交振幅変調OQAMのタイプであり、
前記シンボルは、
パイロットシンボルと、
プリコーディングシンボルと、
他のシンボルと、
のうちの1つであり、
該装置は、
前記パイロットシンボルが前記受信機によって受信されたとき、該パイロットシンボルの前記内部干渉が所定の離散値集合の中からの1つの値を有するように強制的にするよう前記プリコーディングシンボルを選択するモジュールを備え、前記集合が、0と異なる少なくとも1つの要素を含む、
ことを特徴とする、マルチキャリア信号を送信する装置。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で実行されると、該コンピュータが請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を実行することを可能にするコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャリア信号を送信する方法及び装置に関し、より詳細には、FBMC/OQAMと、チャネル推定性能を改善し、したがって全体的な送信性能を改善するプリコーディングの使用とに基づく送信方式に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタバンクマルチキャリア(FBMC)オフセット直交振幅変調(OQAM)は、次のように簡潔に紹介することができる。すなわち、FBMC/OQAMは、各サブキャリアがスタガードOQAMを用いて変調されるマルチキャリア変調方式である。複素数値シンボルを所与のシンボルレートで送信する従来のOFDMと比較すると、FBMC/OQAMは、2分の1の情報ビット数を表す実数値シンボルを2倍のシンボルレートで送信する。これに基づくと、双方のメカニズムは、同じスペクトル効率を有する。しかしながら、FBMC/OQAMは、サイクリックプレフィックス(CP)を追加することなく動作するので、より有用性の高いビットレートを提供し、したがって、より良好なスペクトル効率を提供する。
【0003】
図1は、時間領域及び周波数領域におけるCP−OFDMシステム及びFBMC/OQAMシステムの信号構造を示している。CP−OFDMの場合、シンボル継続時間がτであることを見て取ることができ、これは、CP−OFDMがτごとに複素数値を有することを意味する。他方、FBMC/OQAMは、τ/2ごとに実数値を有し、これはτ/2のシンボル継続時間を意味する。サブキャリア間隔は、双方のシステムについてfである。
【0004】
加えて、時間領域及び周波数領域の双方における十分に局在化したフィルタを用いたパルス成形は、周波数オフセット並びにドップラ効果及び二重分散チャネルに対するより高いロバスト性を提供する。
【0005】
しかしながら、これらの全ての利点は、複素場における直交性を実数場に緩和することを犠牲にして成り立ち、その結果、QAMの代わりにOQAMを用いることが必要になる。
【0006】
図2は、CP−OFDM及びFBMC/OQAMのブロック図を示している。相違点は、CP−OFDMにおける複素数値QAMシンボルと比較して、FBMC/OQAMでは、IFFTへの入力として実数値OQAMシンボルを有することによって要約することができる。g(t)及びf(t)は、それぞれ、送信機合成フィルタバンク(SFB)及び受信機解析フィルタバンク(AFB)におけるパルス成形関数を表している。FBMC/OQAMの場合には、CPが挿入されていないこともこれらの図から明らかである。
【0007】
FBMC/OQAM変調では、連続時間FBMC/OQAM信号のベースバンドの式を以下のように記述することができる。
【数1】
ここで、Mはサブキャリア数であり、
【数2】
はサブキャリアの間隔であり、gはパルス形状であり、φm,nは追加のパルス位相である。am,nは、サブキャリアm及び時間nにおける実数送信シンボルを表す。
【0008】
受信機側において受信信号をベースバンドにしたものは、以下のように記述することができる。
【数3】
ここで、*は畳み込み演算を示し、h(t)はチャネルインパルス応答であり、η(t)は加法雑音である。
【0009】
(m,n)における復調された受信信号は、次のように記述することができる。
【数4】
ここで、Hm,nは、位置(m,n)におけるチャネルの複素応答を表し、
【数5】
は、フィルタ特性を表す不確定性関数である。上記式から、FBMC/OQAMシステムの実数直交性に起因して、内部干渉として知られているAFBの出力における余分な雑音を有する虚数成分を見て取ることができる。
【0010】
図3は、送信機及び受信機におけるFBMC/OQAMの時間格子及び周波数格子を示している。受信機において、位置(m,n)における送信実数データは、もはや実数値ではない。全ての周囲のデータシンボルが、虚数領域において干渉する。
【0011】
復調信号の式は、以下の2つの有効な仮定を考慮に入れることによって単純化することができる。
・時間領域及び周波数領域の双方において十分に局在化したフィルタを用いると、内部干渉は、位置(m,n)の8つの直接の近傍からのみ来ると仮定することができる;
・チャネルは、位置(m,n)のこの近傍内では一定不変と仮定することができる。
【0012】
そこで、上記式は、以下の式に単純化することができる。
【数6】
【0013】
図4は、8つの直接の近傍からの単純化した内部干渉を示している。
【0014】
その実数直交性に起因して、OQAMシンボルの検出は、以下の2つのステップで行われるべきである。
・チャネル等化、
・実部の取り出し。
【数7】
【0015】
これは、チャネル係数が受信機において知られている場合にしか有効ではなく、これは、現実のシステムには当てはまらない。チャネル係数を最初に推定しなければならない。
【0016】
FBMC/OQAMマルチキャリア変調方式のチャネル推定問題は、次のように説明することができる。すなわち、スキャッタードパイロットに基づく技法を用いてチャネル係数を推定するために、位置(m,n)における実数値パイロットが送信されるものと仮定する。この場合、受信機側における受信パイロットシンボルは、以下となる。
【数8】
ここで、
【数9】
は、受信機において知られている送信実数パイロットであり、
【数10】
は、周囲の送信データに依存したランダム値であるとともに受信機において知られていない内部干渉である。
【0017】
コヒーレントチャネル推定を行うには、受信信号を送信パイロットによって除算する必要がある。
【数11】
【0018】
この式を用いると、以下の2つの知見を認識することができる。
・コヒーレントチャネル推定は、受信機における未知のランダムな内部干渉
【数12】
に起因して行うことができない;
・もし、
【数13】
が受信機において知られている場合、擬似パイロット
【数14】
の電力が大きいほど、雑音の影響が低減されるので、チャネル推定の性能はより良好になる。
【0019】
しかし、FBMC/OQAMのチャネル推定の主な問題は依然として解決されていない。内部干渉は知られていない。したがって、チャネル推定は、単純な実施では行うことができない。
【0020】
この問題に対処する提案は、非特許文献1及び2において行われている。
【0021】
これらの非特許文献は、受信機におけるランダムな内部干渉を、例えば0のような1つの特定の値に強制的にすることによってこの問題に対処している。これは、周囲のシンボルのうちの1つをプリコーディングシンボルとして確保することによって行われる。そのため、この場合、データは、7つの周囲のシンボル上で送信され、8番目の周囲のシンボルは、受信機において内部干渉をキャンセルするプリコーディングシンボルとして用いられる。これは、図5に示されている。図5では、パイロットシンボル及びプリコーディングシンボルがマーキングされている。
【0022】
周囲の7つのデータシンボルからの内部干渉は、以下のように記述することができる。
【数15】
【0023】
受信機においてこの干渉をキャンセルするために、プリコーディングシンボルは、以下のように選択されるべきである。
【数16】
【0024】
この方法を用いると、
【数17】
は、受信機において0に等しく、受信パイロットシンボルは、以下のように記述することができる
【数18】
【0025】
既知のパイロット
【数19】
で除算することによって、チャネル係数
【数20】
を直接推定することができる。
【0026】
この式から、次のことがわかる。すなわち、提案されたプリコーディングは、内部干渉が、送信機においてともに知られているデータ及び不確定性関数に依存しているので可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】J.-P. Javaudin、D. Lacroix、及びA. Rouxel、「Pilot-aided channel estimation for OFDM/OQAM」、VTC Spring, 2003
【非特許文献2】C. Lele、R. Legouable、及びP. Siohan、「Channel estimation with scattered pilots in OFDM/OQAM」、SPAWC, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、このプリコーディング方式を用いると、パイロットシンボルを囲むデータシンボルの値に応じて、プリコーディングシンボルの送信電力が非常に高くなる可能性がある。
【0029】
したがって、本発明の目的は、プリコーディングシンボルの送信の所要電力に対するより大きな柔軟性及びこの所要電力の制御を有することであり、例えば、プリコーディングシンボルを送信するのに必要とされる電力を削減する可能性を有することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
1つの実施の形態によれば、マルチキャリア信号を送信する方法であって、
前記信号は、前記時間周波数空間におけるシンボルを含む前記オフセット直交振幅変調OQAMのタイプであり、
前記シンボルは、
パイロットシンボルと、
プリコーディングシンボルと、
他のシンボルと、
のうちの1つであり、
該方法は、
前記パイロットシンボルが前記受信機によって受信されたとき、該パイロットシンボルの前記内部干渉が所定の離散値集合の中からの1つの値を有するように強制的にするよう前記プリコーディングシンボルが選択され、前記集合が、0と異なる少なくとも1つの要素を含む、
ことを特徴とする、方法が提供される。
【0031】
この方法は、送信機及び/又は受信機にとって好ましくない場合がある1つの特定のプリコーディングシンボルを送信機に強制的に選ばせるのではなく、プリコーディングを選択及び決定する或る自由を送信機に可能にするという点において効果及び利点を有する。
【0032】
1つの実施の形態によれば、前記シンボルは、実数値シンボルを変調することによって形成され、及び/又は前記内部干渉は、前記復調信号の虚部に対応する。
【0033】
これは、複素数値シンボル、すなわち実部及び虚部を有するシンボルが送信されるシンボルレートの2倍で実数値シンボルの送信を行うことができるという点において効果及び利点を有する。
【0034】
1つの実施の形態によれば、前記オフセット直交振幅変調は、フィルタバンクマルチキャリアオフセット直交振幅変調FBMC/OQAM又はOFDM/OQAMのうちの一方である。
【0035】
これは、この送信方法がサイクリックプレフィックス(CP)の追加なしで動作し、したがって、従来のOFDM送信よりも有用性の高いビットレートを提供し、したがって、より良好なスペクトル効率も提供するという効果及び利点を有する。
【0036】
1つの実施の形態によれば、前記プリコーディングシンボルの前記選択は、次の基準、すなわち、
前記プリコーディングシンボルの前記送信電力が削減されることと、
前記パイロットシンボルの前記受信電力が増加されることと、
前記2つの基準の間のトレードオフと、
のうちの少なくとも1つに従って行われる。
【0037】
これは、送信機が、プリコーディングシンボルを適切に選択する手段として、必要とされる送信電力、パイロットシンボルの受信電力、及び/又はそれらの双方の組み合わせを制御することが可能になるという点において効果及び利点を有する。したがって、この効果によって、更に、パイロットシンボルの受信を改善することができると同時に、送信電力消費が同じままであるか又は削減もされ、そのため、全体的な送信方法を従来の送信方法よりも電力効率よくすることができ及び/又は送信をより効果的にすることができる。
【0038】
1つの実施の形態によれば、前記プリコーディングシンボルの前記選択が前記送信機によって行われる際に従う前記基準は、前記送信機と前記受信機との間でシグナリングされる。
【0039】
これは、受信機が、送信機によって送信された基準を用いて内部干渉を決定することができるという効果及び利点を有する。これによって、受信機の受信手順が単純化される。
【0040】
1つの実施の形態によれば、前記所定の離散値集合の前記構成は、前記送信機と前記受信機との間でシグナリングされる。
【0041】
これは、受信機が、送信機と受信機との間でシグナリングされた所定の離散値集合を用いて内部干渉を決定することができるという効果及び利点を有する。これによって、受信機は、所定の離散値集合の中からの1つの値として内部干渉を決定することができるので、受信機の受信手順が単純化される。
【0042】
1つの実施の形態によれば、前記所定の離散値集合は、複数の所定の値集合のうちの1つであり、前記集合の前記選択は、前記リンク状態に従って行われる。
【0043】
これは、プリコーディングシンボルの選択が送信機によって行われる際に従う基準のシグナリングを、所定の集合のIDを送信することだけで効率的に行うことができるという効果及び利点を有する。さらに、リンク状態に従った所定の離散値集合の選択は、劣悪な及び/又は変化するチャネル状態及び干渉状態の下であっても、送信機側及び受信機側において、現在の干渉及びチャネル品質に従って送信方法を動的に採用及び最適化することができ、したがって、送信方法の効率、例えば、関連する電力を更に改善することができる。
【0044】
1つの実施の形態によれば、前記リンク状態は、次のパラメータ、すなわち、前記送信機と前記受信機との間の信号対雑音比と、信号対干渉比と、チャネル品質インジケータとのうちの少なくとも1つを考慮に入れる。
【0045】
これは、送信機が、送信機及び受信機に容易に入手可能である共通のチャネル品質インジケータを用いて、前述したようにプリコーディングシンボルの選択を制御し、送信機と受信機との間の通信リンクに好ましい電力特性及び送信特性を取得することができるという効果及び利点を有する。
【0046】
1つの実施の形態によれば、前記複数の所定の値集合間の切り替えの前記方策は、前記リンク状態に従って前記送信機と前記受信機との間でシグナリングされる。
【0047】
これは、複数の所定の値集合の中で送信機が選択した値集合のシグナリングが行われる頻度を少なくすることができるという効果及び利点を有し、例えば、シグナリングは、送信機が、リンク状態の変化を求めたことに応答し、それに応じてその選択を変更したときにのみ行われる。
【0048】
1つの実施の形態によれば、プリコーディングシンボルは、前記時間周波数空間において前記パイロットシンボルを囲むシンボルの前記第1のリングに属する。
【0049】
これは、時間領域及び周波数領域の双方において十分に局在化したフィルタを用いると、シンボルの内部干渉がシンボルの直接の近傍からしか来ないと仮定することができ、したがって、送信機側においては、プリコーディングシンボルの選択を介して、受信機において得られた内部干渉を制御することを単純化することでき、受信機自体においては、内部干渉を決定することを単純化することができるという効果及び利点を有する。
【0050】
1つの実施の形態によれば、上記の実施形態のうちの1つによるマルチキャリア信号を送信する方法によって送信されたマルチキャリア信号を受信する方法であって、
チャネル推定が、パイロットシンボルに基づいており、
前記時間周波数空間内の座標m,nにおける受信された前記パイロットシンボルは、
【数21】
であり、ここで、
【数22】
は、前記送信された実数パイロット信号であり、Xは、前記内部干渉であり、
【数23】
は、加法雑音であり、
該方法は、チャネル推定が、以下のステップ、すなわち、
(i)前記チャネルの電力を推定するステップと、
(ii)前記受信されたパイロットシンボルの電力を、該パイロットシンボルの電力をステップ(i)の前記推定されたチャネルの電力によって除算することによって推定するステップと、
(iii)前記パイロットシンボルの虚部の値を、前記パイロットシンボルの前記既知の値
【数24】
と、ステップ(ii)の結果とに基づいて、所定の離散値集合の中からの1つの値Xとして認識するステップと、
(iv)前記チャネル係数
【数25】
を、前記受信されたパイロットシンボルに基づいて、前記式
【数26】
に従って推定するステップと、
によって実行されることを特徴とする、方法が提供される。
【0051】
これは、パイロットシンボルの虚部についての正確な情報なしで、チャネル電力推定及び推定された受信パイロットシンボルの電力のみに基づいてチャネル係数を推定することができるという効果及び利点を有する。
【0052】
1つの実施の形態によれば、この方法は、シンボルが、前記信号を複素数値シンボルに復調することによって形成されることを含み、及び/又は前記内部干渉は、前記復調信号の虚部に対応する。
【0053】
これは、シンボルの実部及び虚部を内部干渉についての情報に基づいて区別することができるという効果及び利点を有する。
【0054】
1つの実施の形態によれば、前記チャネルの電力
【数27】
は、前記パイロットシンボルを囲むデータシンボルの前記受信電力を平均することによって推定される。
【0055】
これは、位置(m,n)における受信電力を正確に知る必要がなく、推定することができるという効果及び利点を有する。
【0056】
1つの実施の形態によれば、前記受信されたパイロットシンボルの電力は、該パイロットシンボルの電力を、前記式
【数28】
に従って、ステップ(i)の前記推定されたチャネルの電力によって除算することによって推定される。
【0057】
これは、受信パイロットシンボルの電力を推定することができるという効果及び利点を有する。
【0058】
上記実施の形態によるマルチキャリア信号を送信する方法及び受信する方法の1つの実施の形態によれば、前記パイロットシンボルの前記値及び前記時間周波数空間におけるロケーションは、前記マルチキャリア信号の受信を行うことを意図した少なくとも1つの受信機に知られている。
【0059】
これは、送信機側及び受信機側において、パイロットシンボルの存在を、チャネル推定を行うことに利用することができるという効果及び利点を有する。
【0060】
1つの実施の形態によれば、マルチキャリア信号を送信する装置であって、
前記信号は、前記時間周波数空間におけるシンボルを含む前記オフセット直交振幅変調OQAMのタイプであり、
前記シンボルは、
パイロットシンボルと、
プリコーディングシンボルと、
他のシンボルと、
のうちの1つであり、
該装置は、
前記パイロットシンボルが前記受信機によって受信されたとき、該パイロットシンボルの前記内部干渉が所定の離散値集合の中からの1つの値を有するように強制的にするよう前記プリコーディングシンボルを選択するモジュールを備え、前記集合が、0と異なる少なくとも1つの要素を含む、
ことを特徴とする、装置が提供される。
【0061】
1つの実施の形態によれば、前記装置は、上記実施の形態のうちの1つによる方法を実行するために1つの又は複数のモジュールを更に備える。
【0062】
1つの実施の形態によれば、コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で実行されると、該コンピュータが本発明の実施形態のうちの1つによる方法を実行することを可能にするコンピュータプログラムコードを含む、コンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】時間領域及び周波数領域におけるCP−OFDM通信及びFBMC/OQAM通信の信号構造を示す図である。
図2】CP−OFDMマルチキャリア変調方式又はFBMC/OQAMマルチキャリア変調方式を実行するためのシステムのブロック図である。
図3】時間領域及び周波数領域におけるFBMC/OQAMマルチキャリア変調方式のシンボルを示す図である。
図4】シンボルの8つの直接の近傍からの単純化された内部干渉を示す図である。
図5】パイロットシンボルの8つの直接の近傍からの単純化された内部干渉を有する送信機及び受信機におけるパイロットシンボル及びプリコーディングシンボルを含むシンボルを示す図である。
図6】パイロット位置における内部干渉を所定の離散値集合の中からの値に強制的にするプリコーディングシンボルを有する概略的な信号構造を示す図である。
図7】データの信号対雑音比(SNR)に対する種々のチャネル推定方式のチャネル推定性能の平均二乗誤差(MSE)評価を示す図である。
図8】送信シンボルプリコーディングのSNRに対する種々のチャネル推定方式のチャネル推定性能のMSE評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
最初に、この説明において用いられる幾つかの用語を以下の省略形のリストに定義する。
CP−OFDM サイクリックプレフィックス直交周波数分割多重化
FBMC フィルタバンクマルチキャリア
OQAM オフセット直交振幅変調
SFB 合成フィルタバンク
AFB 解析フィルタバンク
SNR 信号対雑音比
MSE 平均二乗誤差
【0065】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
【0066】
1つの実施形態では、従来技術との相違は、少なくとも、受信パイロットのランダムな虚部が可能値集合の中からの1つとなるようにプリコーディングシンボルを選択することにある。そのため、パイロット位置における内部干渉を強制的に0にするのではなく、1つの実施形態によれば、この内部干渉を強制的に値Xにし、このXは、送信機が値集合{α,α,α,...}から選択することが提案される。
【0067】
しかし、Xの値は、受信機側において知られていないので、チャネル推定を実行する前に推定しなければならない。
【0068】
本発明の1つの態様によれば、プリコーディングシンボルは、受信パイロットの内部干渉が離散値集合の中からの1つの値に強制的にされるように、送信機側において選択される。
【数29】
【0069】
このプリコーディングシンボルは、以下のように記述することができる。
【数30】
【0070】
受信機において、受信パイロットシンボルは、以下のように記述することができる。
【数31】
【0071】
図6は、パイロット位置における内部干渉を値X∈{α,α,α,...}に強制的にするプリコーディングシンボルを有する概略的な信号構造を示している。
【0072】
これらの2つの式から、プリコーディングシンボルの選択が少なくとも以下の2つの効果を有することを得ることができる。
・送信機におけるプリコーディングシンボルの送信電力が影響を受ける;
・受信機における受信パイロットシンボルの電力が影響を受ける。
【0073】
換言すれば、送信機側におけるX∈{α,α,α,...}の選択は、
・プリコーディングシンボルの送信電力を最小にするか、又は
・受信パイロットシンボルの電力を最大にするか、又は
・上記2つの効果の間のトレードオフを得るか、又は
・他の任意の基準を満たす、
ために行うことができる。
【0074】
受信機側では、Xの値は知られておらず、したがって、チャネル推定を直接行うことができない。しかしながら、Xの値は、3つのステップを通じて容易に推定することができる。受信パイロットの式を再び記載すると、以下のとおりである。
【数32】
・ステップ1:受信機は、パイロット位置の周囲のデータシンボルの受信電力の平均をとることによってチャネル
【数33】
の電力を推定することができる。
・ステップ2:受信機は、受信パイロットシンボルの電力をステップ1からのチャネルの推定電力によって除算することによって、送信パイロットシンボルの電力を推定する。
【数34】
【0075】
ここで、
【数35】
は受信機において知られているので、Xの推定値が得られる。
・ステップ3:受信機は、以下のチャネル係数を推定する。
【数36】
【0076】
異なる所定の離散値集合{α,α,α,...},{β,β,β,...},{δ,δ,δ,...},...を定義して、シグナリングによって送信機と受信機との間で交換することができる。
【0077】
送信機は、システムステータス、例えば信号対雑音比(SNR)に従って、1つの所定の離散値集合を選択する。これは、異なるSNRの範囲には、異なる所定の離散値集合を用いることができることを意味する。送信機は、どの所定の離散値集合が用いられているのかを受信機にシグナリングしなければならない。
【0078】
単純化されたシステムモデルを用いて、上記に説明したチャネル推定を実行する新規な方法及び技法を従来技術と比較することにする。
【0079】
図7は、dBでのデータのSNRに対する、上記に説明したチャネル推定を実行する新規な方法及び技法のチャネル推定性能の平均二乗誤差(MSE)を従来技術と比較して示している。破線のプロットは、受信パイロットの内部干渉が0に強制的にされる従来技術のチャネル推定を表している。実線のプロットは、選択されたXの値が受信機において知られている、チャネル推定を実行する新規な方法及び技法を表している。このシミュレーションでは、Xの値は、プリコーディングシンボルの送信電力を最小にするように選択されている。これらの2つのプロット間の約2dBの利得は、パイロットシンボルの受信電力がより高いことに起因している。
【0080】
点線のプロットは、受信機においてXの推定を用いてチャネル推定を実行する新規な方法及び技法を表している。高いSNR値では、提案した解決策が、従来技術のチャネル推定よりも性能が優れている。しかしながら、シミュレーションパラメータはヒューリスティックに選択されているので、低いSNRでは、性能は劣化する。例えば、チャネル状態に対するX用の値集合を採用することによって、性能は、低いSNRについても改善する。
【0081】
図8は、送信プリコーディングシンボルのSNRに対するMSEのプロットを示している。チャネル推定を実行する新規な方法及び技法は、従来技術のチャネル推定よりも常に性能が優れており、利得は、最大で約8dBにまで達することができる。
【0082】
所与のデータのSNRについて、新規なものと従来技術によるものとの双方のチャネル推定方法及び技法についてのプリコーディングシンボルの送信電力及びパイロットシンボルの受信電力が比較される。以下の表は、この比較を示している。
【0083】
【表1】
【0084】
チャネル推定を実行する新規な方法及び技法は、プリコーディングシンボルの送信電力を削減すると同時に、チャネル推定性能を改善するパイロットシンボルの受信電力を増大させることを明らかに見て取ることができる。
【0085】
要約すると、チャネル推定を実行する新規な方法及び技法の利点は、次のように述べることができる。
・チャネル推定を実行する新規な方法及び技法は、より低いMSEを達成することができるので、従来技術のチャネル推定技法よりも性能が優れている。
・チャネル推定を実行する新規な方法及び技法は、プリコーディングシンボルの送信電力の削減を達成することができる。
・チャネル推定を実行する新規な方法及び技法は、受信パイロットシンボルの電力を増大させることができ、したがって、全体的なチャネル推定性能を改善することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8