特許第6002020号(P6002020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002020
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/14 20060101AFI20160923BHJP
   H02K 1/06 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H02K1/14 Z
   H02K1/06 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-275600(P2012-275600)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2013-150543(P2013-150543A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-278124(P2011-278124)
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重善
(72)【発明者】
【氏名】竹口 俊輔
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−67650(JP,A)
【文献】 米国特許第5777421(US,A)
【文献】 特開昭56−10067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
H02K 16/00−16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転子がエアギャップを介して対向しており、巻き線軸が回転軸方向と平行なアキシャルギャップ式の回転電機であって、
前記固定子は、回転軸方向に突出するm個の巻き線用突極が、周方向に分布配置されており、前記巻き線用突極には、同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体からなり、
前記回転子は、同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体からなり、
前記固定子における複数の歯と前記回転子における複数の歯が、エアギャップを介してかみ合うように対向していることを特徴とする回転電機。但しmは2以上の整数。
【請求項2】
請求項1において、前記固定子と前記回転子は片側のみならず、前記回転子の両側において固定子が対向していることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1において、前記固定子と前記回転子は片側のみならず、前記固定子の両側に回転子が対向していることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1または2において、回転子は、軸方向に2極に磁化した永久磁石を同心円的で径方向に複数の歯を有した磁性体の回転子2個でサンドイッチ状に挟持して構成されたことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項において、回転子は、周方向にN極S極交互に2p極に磁化した永久磁石に同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体2p個の回転子片を配置磁化して形成した回転子であることを特徴とする回転電機。但しpは正の整数。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、少なくとも固定子は圧粉鉄心で構成され、必要によりオーバーハング構造の分割鉄心に巻き線後合体した固定子を用いることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項3において、固定子は、その軸方向厚さの中央部に巻線用溝が設けられたm個の圧粉鉄心で形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、回転子は、圧粉鉄心で構成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項において、前記圧粉鉄心には、樹脂コーティングおよび樹脂含浸のいずれか一方または双方の処理が施されていることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機や発電機であるアキシャルギャップ式の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機である回転電機は、市場より軽薄短小化の要求が強く、また最近は地球温暖化対策として、省エネルギー化や高効率化の要求も増加してきている。更に、低振動化、低騒化、そして安価であることも強い要求である。その中で、回転軸方向にエアギャップを有するアキシャルギャップ式回転電機は扁平で薄型に有利な構造であり、回転子を円盤状にすれば慣性も小さくできるので、一定速度運転や、可変速度運転にも適した回転電機であり、近年注目された回転電機の形態である。しかしラジアルギャップ式回転電機に比べると、エアギャップが小さく出来にくい等から高トルク化、高効率化の観点から問題を有したものでもあった。
一方で、関係する高トルク化をエアギャップの対向面積増加で行う技術として下記の特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2010/116921 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機はラジアルギャップ式とアキシャルギャップ式に大別される。
従来の一般的なラジアルギャップ式の回転電機で回転子に永久磁石を用いるブラシレスDCモータ(以下BLDCモータ)や同期発電機、あるいは回転子に永久磁石を用いないで磁性体の歯を有したスイッチドレラクタンスモータ(以下SRモータ)の場合の技術は、固定子鉄心を珪素鋼鈑で積層して構成し、安価と効率を重視する場合は巻き線は集中巻き方式を採用する。その理由は分布巻き方式ではトルク発生に寄与しないコイルエンド部が大きくなり銅損が増大し、効率が低下するためと集中巻きでは巻き線がシンプルでスロットへの直接巻き込が可能となり、巻き線が安価となるためである。集中巻き方式の場合は実用的に構成すれば主に回転電機のコストの面から固定子のスロット数は4〜12に制約される。
【0005】
そして回転電機の高効率化を追求したものとして固定子と回転子のエアギャップ部の対向面積を増大する手段による上記の特許文献1がある。この先行技術は、特許文献1中の図7(a)、(b)に代表されるが前述したSRモータの高トルク化の例が開示されているが、回転軸方向にエアギャップが直線的展開でなく、凹凸がかみ合うようにして、回転電機を構成している。このため実質的なエアギャップの対向面積は増大して、回転電機の高効率化、高トルク化となる。しかし、この回転電機はエアギャップが直線でないので、固定子と回転子を別々に完成させて固定子に回転子を挿入して組み立てることはできないものである。そのため巻き線作業を含めてその組み立て完成には通常の軸方向に直線のエアギャップ式回転電機と比較して時間を要し、コストの高いものとなる。本発明にはこの欠点を解決したものである。
【0006】
一方、軸方向にエアギャップを有するアキシャルギャップ式回転電機があるが、エアギャップが平面対向のため面ブレ等の問題があるためラジアルギャップ式ほどエアギャップを小さく出来にくいことがあり、そのためにラジアルギャップ式と比較して、高効率化、高トルク化で劣るため、扁平形状の電動機や起動停止をあまり行わないで定速回転重視の電動機等の特殊な用途以外はラジアルギャップ式より普及していない問題がある。本発明はこの点をも解決するものである。
【0007】
集中巻き方式のコイルエンドは分布巻きに比べて小さいので銅損が減少して効率は高くなるが、更に効率を高めるには回転子との対向面積とならないコイルエンドの占める面積部の活用が求められる。この解決策の一つに固定子巻き線極形状を軸方向あるいは回転周方向に飛び出させた所謂オーバーハングとした形状を圧粉鉄心で構成する手法がある。珪素鋼鈑の積層式ではこのオーバーハング構造は一般に困難あるいはコスト高となるため3次元に成形できる圧粉鉄心が有利となる。圧粉鉄心とは軟磁性鉄粉に少量の樹脂をバインダーとして、渦電流の絶縁のために混合して圧縮成形後焼成させたものである。圧粉鉄心は珪素鋼鈑積層式が2次元の単純形状であるのに対して3次元の複雑形状が可能で、更に鉄損の一部の渦電流損が少ない特長がある。上述した圧粉鉄心は磁束密度が珪素鋼鈑より小さいという短所があるが、オーバーハング形状では回転子との対向面積が増加するため高効率化に適したものと言える。
【0008】
本発明はこの圧粉鉄心の活用でその効果を顕著に発揮できるものでもある。
また高効率化を達成するには巻き線占積率を高める必要がある。集中巻き式でのスロットへの直接巻き込式はスロット開口部から銅線をノズルで巻きこむため巻き線占積率は20〜30%程度である。本発明の一つである分割式圧粉鉄心式によれば積層式では得られない飛躍的な巻き線占積率の向上も可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明を実現するには以下の手段による。
「手段1」
固定子と回転子がエアギャップを介して対向しており、巻き線軸が回転軸方向と平行なアキシャルギャップ式の回転電機であって、前記固定子は、回転軸方向に突出するm個の巻き線用突極が、周方向に分布配置されており、前記巻き線用突極には、同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体からなり、前記回転子は、同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体からなり、前記固定子における複数の歯と前記回転子における複数の歯が、エアギャップを介してかみ合うように対向していることを手段とする回転電機。但しmは2以上の整数。
「手段2」
手段1において、前記固定子と前記回転子は片側のみならず、前記回転子の両側において固定子が対向していることを手段とする回転電機。
「手段3」
手段1において、前記固定子と前記回転子は片側のみならず、前記固定子の両側に回転子が対向していることを手段とする回転電機。
「手段4」
手段1または2において、回転子は、軸方向に2極に磁化した永久磁石を同心円的で径方向に複数の歯を有した磁性体の回転子2個でサンドイッチ状に挟持して構成されたことを手段とする回転電機。
「手段5」
手段1乃至3のいずれか一の手段において、回転子は、周方向にN極S極交互に2p極に磁化した永久磁石に同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体2p個の回転子片を配置磁化して形成した回転子であることを手段とする回転電機。但しpは正の整数。
「手段6」
手段1乃至5のいずれか一の手段において、少なくとも固定子は圧粉鉄心で構成され、必要によりオーバーハング構造の分割鉄心に巻き線後合体した固定子を用いることを手段とする回転電機。
「手段7」
手段3において、固定子は、その軸方向厚さの中央部に巻線用溝が設けられたm個の圧粉鉄心で形成されていることを手段とする回転電機。
「手段8」
手段1乃至7のいずれか一の手段において、回転子は、圧粉鉄心で構成されていることを手段とする回転電機。
「手段9」
手段6乃至8のいずれか一の手段において、前記圧粉鉄心には、樹脂コーティングおよび樹脂含浸のいずれか一方または双方の処理が施されていることを手段とする回転電機。
【発明の効果】
【0010】
1)固定子歯と回転子歯間のエアギャップ対向部がかみ合い対向のため対向面積が増大しエアギャップ部パーミアンスの大きな高効率回転電機が実現する。
2)アキシャルギャップ式回転電機で、固定子と回転子の歯が同心円弧状のかみ合いのため、エアギャップを介し回転可能となり、回転子は軸を固定子の軸受けに挿入して簡単に組み立て出来るので、安価で高効率な回転電機が実現する。
3)回転子の両側に固定子を配置すれば、あるいはその逆に、固定子の両側に回転子を配置すれば、両者とも、小形で高効率回転電機となる。
4)回転子に永久磁石を用いることもでき、更に効率の高いものとなる。
5)圧粉鉄心によるオーバーハング構造で、回転子との対向面積が積層方式より増加でき、また巻き線長も短く出来るので銅損も減少し、高トルク化、高効率化となる。
6)圧粉鉄心により渦電流損が零に近く、特に高速時の鉄損が少なく高効率回転電機となる。
7)分割鉄心の合体に溶接等を用いれば作業が容易で堅牢であり、圧粉同士が直接溶接されるため、接合部の磁気抵抗が減少し高効率となり、安価で信頼性の高い回転電機が提供できる。
8)分割鉄心の合体に樹脂モールドを行う場合でも、溶接や円筒体を併用すれば更に堅牢で信頼性が高い回転電機となる。
9)オーバーハング式分割鉄心を用いればスロット間の開口部を小さくできるのでコギングトルクが小さくでき、低振動低騒音化となる。
10)圧粉鉄心成形時の加圧面圧は約800MPa必要であるので大きな径の鉄芯を作るにはその投影面積に見合った大きなパワーのプレス機が必要になり高価な設備となるが、m分割した鉄心はm分の一のプレス力で可能のためプレス設備費が安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明一例の回転電機の軸を含んだ断面図
図2図1の固定子を軸方向から見た図
図3図1の回転子を軸方向から見た図
図4】本発明の回転子の両側に固定子を設けた図
図5】別の本発明の回転子の両側に固定子を設けた図
図6】本発明の一例の回転子の分割鉄心構成を軸方向から見た図
図7】本発明の一例の回転子である分割鉄心の軸を含む断面図で、分割永久磁石とバックヨークを備えた図
図8】本発明の固定子の両側に回転子を設けた図
図9】別の本発明の固定子の両側に回転子を設けた図
図10】本発明一例の分割鉄心回転電機の軸を含んだ断面図
図11図10の固定子を軸方向から見た図
図12】従来技術の図
図13】本発明の実施形態と従来品の評価比較結果
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面によって説明する。
【0013】
図1は本発明の構成の一例を示したものであり、アキシャルギャップ式回転電機である。回転子には永久磁石を用いない場合の例であり、磁気吸引力のみを利用して回転トルクを発生させるSRモータやバリアブルレラクタンス型ステッピングモータ(以下VR形STMと略す)の場合に相当する。図2図1の固定子を軸方向から見た図であり、図3図1の回転子を軸方向から見た図である。図1から図3を参照して本発明の一例を説明する。符号1は磁性体より構成された固定子であり、6個の軸方向に突き出た巻き線極を持ち、その先端部には符号2なる歯部であり同心円弧状で径方向に3個の歯を有している。歯数は3に限定せず複数の歯でよい。符号3は巻き線であり固定子1の6個の軸方向に突き出た巻き線極に、この場合は符号2なる歯部より軸方向で左側に配備されている。符号4は磁性体よりなる回転子であり、符号6なる回転軸に固着されて、軸受け7で回転可能に支持されている。回転子4の軸方向で固定子と対向する部分は符号5なる同心円弧状で軸方向に3個の歯を有し、歯部2とかみ合うようにしてエアギャップを保って対向している。符号8は構造体でありブラケットとよばれ、固定子1に固定されて、固定子1と共に軸受け7で回転軸6を支持する。本発明の一例はこの様な構成でアキシャルギャップ式回転電機を形成する。このような構成にすれば次のような長所を有した回転電機が実現する。即ち固定子歯と回転子歯間のエアギャップ対向部がかみ合い対向のため対向面積が増大しエアギャップ部パーミアンスが大きくできるので高効率回転電機となる。磁束を通す起磁力はその大部分がエアギャップで消費されるがエアギャップ部パーミアンスが大きくできるのでこの部分での起磁力の消費が少なくて済むためである。またアキシャルギャップ式回転電機で、固定子と回転子の歯が同心円弧状のかみ合いのため、回転子は軸を固定子の軸受けに挿入して簡単に組み立て出来るので、安価で高効率な回転電機が実現する。この場合、かみ合う歯形は図示した矩形に限定されず、三角形や円弧曲線でもよく、平面対向よりその対向面積が増大してしかも周方向に回転可能な形状であればよい。この場合、固定子1や歯部2あるいは回転子4や歯部5の製作は珪素鋼鈑の積層式ではかなり困難であり、圧粉によれば容易に製作できる。また固定子は6極に限らず、実用的には2相では2極、4極、8極、12極、3相では6極、9極、12極、5相では5極、10極に適したものである。一般的には固定子極数mは2以上の正の整数であればよい。回転子極数は図1図3の例では4極であるが、ラジアルギャップ式のSRモータやVR形STMの場合と同じ極数の組み合わせが可能である。
【0014】
図4は本発明の一例であり、図1図3と基本構造は同じであるが、歯部のかみ合いを回転子の両側に固定子を設けたものである。そのため回転子9は両側に歯を有したものとなる。その他の部品は図1図3と同じなので説明は省略するが左右の固定子は符号10なるハウジング部で連結固定される。このような構成では小形で高効率回転電機となる。
【0015】
図5図4と固定子は略同じ構成であるが、回転子が異なり、磁性体よりなる図1と同様な歯を有した回転子を2個用いて軸方向に磁化した永久磁石を挟持した構成である。この場合、永久磁石N極から出た磁束は左側の回転子11を通り、左側の固定子を通過して、磁性体よりなるハウジング部13を経由して右側の固定子から右側の回転子11を通過して永久磁石12のS極にもどる閉磁路となる。この場合は永久磁石式回転電機となるので、図1図4と比較して、更に高効率な永久磁石式回転電機であるSTMやBLDCモータとなる。
【0016】
図6図1及び図3に開示した回転子をBLDCモータ等の永久磁石式回転電機にする場合の回転子鉄心の構成図である。この場合は図3に対して図6では回転子鉄心14は4個に分割されてお互いにある間隔を設けて、固定子との対向側の反対側でN極S極交互に4極に磁化された1枚の永久磁石15に密着配置される。あるいは図7に示した如く、更に永久磁石25を回転子鉄心14と略対向面積を同じにして4分割してその厚み方向にそれぞれ軸方向に磁化して4極にする場合は符号16なるバックヨークを用いることで永久磁石の磁束量を増加できる。図7に示した回転子は図1に示した固定子と組み合わせて使用することになる。また、図6において符号15なる永久磁石の代わりに、符号14なる4個の回転子鉄心を周方向に配置した時の周方向と符号14の軸方向厚み部で生まれる隙間に永久磁石を挿入し周方向に磁化することで、回転子鉄心14を図6に示した如くN極S極交互に4極磁化してもよい。図6図7に開示した回転子は一般的に表現すれば、周方向にN極S極交互に2p極に磁化した永久磁石に同心円弧的で径方向に複数の歯を有した磁性体2p個の回転子片を配置磁化して形成した回転子である。回転子極数は必ず偶数極のため2pと表現できる。この場合、pは正の整数であり、p=2の4極となる。
【0017】
図8は本発明の固定子の両側に歯を設けて回転子を固定子の両側で対向配置させた図である。符号17は固定子であり、その軸方向の両側に同心円弧状に歯を有している。例えば固定子17が6個あるとすればそれぞれ独立して60度間隔で配置されて符号18なる巻き線を有して樹脂モールド等で固定されて固定子を形成する。この場合も図1の構成より小形で高効率となる。この場合、固定子17の製作は珪素鋼鈑の積層式ではかなり困難であり、圧粉によれば容易に製作できる。
【0018】
図9図8の固定子鉄心17に所謂オーバーハングとよばれる巻き線溝30を設け、巻き線20をその溝部に格納配置したものである。このようにすれば図8のように巻き線部が固定子17の外周部からはみ出ることがなく、小形に寄与することになる。この場合の製作方法は固定子19を軸方向長の中央で2分割すれば圧粉鉄心が型で製作できる。なお、固定子の巻き線部は中央部に形成することが好ましいが、回転電機の仕様によっては、中央部を跨るように上側(図9の左側)、あるいは下側(図9の右側)のみに形成しても、あるいは複数の巻線に分割し配置形成してもかまわない。尚、本方式の固定子の両側の各々で前述した図6図7なる永久磁石式回転子を対向させれば更に高効率の回転電機となる。
【0019】
図10図1の固定子を圧粉分割鉄心で製作した場合の図である。図10の固定子21は巻き線を歯部外周より小さくした所謂オーバーハング式にして巻き線部が固定子歯部外周以内にしたものであり、この場合の6個に分割された固定子21は巻き線後に符号24等の磁性板を用い機械的で磁気的に結合される。あるいは図示は省略するが固定子21に磁性板24の形状、機能を有するように鍔を設けて6個を周方向に合体してもよい。これらの合体は溶接や接着、樹脂モールド等で行うことができる。図10において、その回転子を図6あるいは図7に示す回転子で置き換えると、更に高効率な永久磁石式回転電機であるSTMやBLDCモータとなる。
【0020】
図11図10の合体後の固定子部を軸方向から見た図である。この場合、図2と比較して固定子鉄心部の周方向間隔が狭くなっていることが分かる。これは回転子との対向面積の増加の他に、鉄心の分割スロット幅が小さくなり、コギングトルクが小さくなる。これは低振動低騒音の効果を生むことになる。
【0021】
図12は従来技術の図である。特許文献1の図12に相当する技術である。図12は21が固定子、22が回転子、23が固定子に巻かれた巻き線であるが、回転軸方向にエアギャップが直線的展開でなく、凹凸がかみ合うようにして、回転電機を構成している。このため実質的なエアギャップの対向面積は増大して、回転電機の高効率化、高トルク化となる。しかしこの回転電機はエアギャップが直線でないので、固定子と回転子を別々に完成させて固定子に回転子を挿入して組み立てることはできないものである。そのため巻き線作業を含めてその組み立て完成には通常の軸方向に直線のエアギャップ式回転電機と比較して大幅に時間を要しコストの高いものとなる。組み立てが困難ということは作業中に歩留まり、不良事故を起こしやすく信頼性にも問題を起こしやすいことになる。
【0022】
図13は、本発明の実施形態にかかる回転電機、具体的には、本願の回転電機であって、m=6、n=2とした場合(6巻き線極固定子、4極の永久磁石回転子)のブラシレスモータを製造し、負荷トルク特性―速度と負荷トルク特性―電流を測定して従来品と比較したものである。本発明の実施形態は、凹凸がかみ合ってエアギャップを構成するアキシャルギャップモータであるのに対して、従来品はモータサイズ及び構造は同一であるが、エアギャップの構造のみ異なり、従来方式の平面的に固定子極と回転子極が対向するものである。そして、本発明の実施形態及び従来品ともアキシャル方向のエアギャップ長を同じ値としての比較である。図13は、(1)負荷トルク−速度カーブと(2)負荷トルク−電流カーブを本発明の実施形態と従来品で比較したものである。例えば(1)の負荷トルク−速度カーブで速度が零となる最大トルク値をそのトルクに対応する(2)の負荷トルク−電流カーブより得られる電流値で割った所謂トルク定数は、本発明の実施形態が(T/I=250mNm/6.2A)、であるのに対して、従来品は(T/I=141mNm/6.82A)である。従って、トルク定数比は1.95倍となり、従来品に対して約2倍と改善されていることが測定データより証明された。
【0023】
以上で説明した本発明の回転電機において、圧粉鉄心は、強度や耐久性の向上の為に、樹脂コーティングおよび樹脂含浸のいずれか一方または双方の処理が施されていることが好ましい。ここで、これらの処理をするにあたり、その具体的な方法については特に限定することはなく、圧粉鉄心の表面を樹脂によりコーティングすることができる方法、および圧粉鉄心の内部にまで樹脂を含浸することができる方法であれば、いかなる方法をも採用することができる。具体的には、例えば、電着塗装、静電塗装、ディッピングなどを挙げることができる。なお、ここで用いられる樹脂については特に限定することはなく、各種樹脂を適宜選択して用いることができる。また、ディッピングを行う場合にあっては、一般的に用いられている液体状接着剤やワニスを含むディッピング液を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によるアキシャルギャップ式回転電機は電動機または発電機に活用でき、安価で堅牢で軽薄短小、高トルク化、高効率化に適した、きわめて実用的なものである。従って工業的に大きな貢献が期待される。
【符号の説明】
【0025】
1、17、19、21 固定子
2、5 歯部
3、18、20、23 巻き線
4、9、11、22 回転子
6 回転軸
7 軸受け
8 ブラケット
10、13 ハウジング
12、15、25 永久磁石
14 回転子鉄心
16 バックヨーク
24 磁性板
30 巻き線溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13