特許第6002169号(P6002169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002169
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】オーガ装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/00 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   E02D7/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-84623(P2014-84623)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-203280(P2015-203280A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】南 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 正明
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−002071(JP,A)
【文献】 特開2010−168827(JP,A)
【文献】 特開平11−131471(JP,A)
【文献】 特開2000−054379(JP,A)
【文献】 特開2006−028772(JP,A)
【文献】 特開平06−272249(JP,A)
【文献】 特開昭58−011221(JP,A)
【文献】 特開平07−127060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00、7/06、7/20
E02D 7/26、13/00、17/13
E21D 17/00、19/00、19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取って地中に新たな杭を圧入する杭圧入機が備えているチャック装置によって把持された筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配されるオーガスクリューと、を備えたオーガ装置であって、
前記チャック装置が前記ケーシングの下部を把持し、前記チャック装置が前記杭を把持していない状態で、前記チャック装置で把持する杭を吊り込むための巻き揚げ機が、前記チャック装置の上面からの高さが前記杭の長さよりも高い位置に配設されており、
前記巻き揚げ機は、前記ケーシングと交差する方向に延在するアームと、前記アームに備えられたドラムに一端が固定され、他端に前記杭が繋がれて前記ドラムに巻き付けられるワイヤと、を有しており、
前記アームにおける前記ドラムの位置を切り替えることで、前記アームから垂下する前記ワイヤの位置を切り替えることを特徴とするオーガ装置。
【請求項2】
既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取って地中に新たな杭を圧入する杭圧入機が備えているチャック装置によって把持された筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配されるオーガスクリューと、を備えたオーガ装置であって、
前記チャック装置が前記ケーシングの下部を把持し、前記チャック装置が前記杭を把持していない状態で、前記チャック装置で把持する杭を吊り込むための巻き揚げ機が、前記チャック装置の上面からの高さが前記杭の長さよりも高い位置に配設されており、
前記巻き揚げ機は、前記ケーシングと交差する方向に延在するアームと、前記アームに備えられたドラムに一端が固定され、他端に前記杭が繋がれて前記ドラムに巻き付けられるワイヤと、を有しており、
前記ケーシングに対する前記アームの角度を切り替えることで、前記アームから垂下する前記ワイヤの位置を切り替えることを特徴とするオーガ装置。
【請求項3】
既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取って地中に新たな杭を圧入する杭圧入機が備えているチャック装置によって把持された筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配されるオーガスクリューと、を備えたオーガ装置であって、
前記チャック装置が前記ケーシングの下部を把持し、前記チャック装置が前記杭を把持していない状態で、前記チャック装置で把持する杭を吊り込むための巻き揚げ機が、前記チャック装置の上面からの高さが前記杭の長さよりも高い位置に配設されており、
前記巻き揚げ機は、前記ケーシングと交差する方向に延在するアームと、前記アームに備えられたドラムに一端が固定され、他端に前記杭が繋がれて前記ドラムに巻き付けられるワイヤと、を有しており、
前記アームは伸縮可能に構成されており、
前記アームを伸縮させることで、前記アームから垂下する前記ワイヤの位置を切り替え
ことを特徴とするオーガ装置。
【請求項4】
前記巻き揚げ機は、当該オーガ装置に吊り込んだ前記杭を、前記チャック装置の上面よりも上方における前記ケーシングに沿わせた位置に吊り下げることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のオーガ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭圧入機によって硬質地盤に杭を圧入する施工を行う際、地盤への杭の圧入効率を向上させるために、オーガ装置を用いたオーガ併用工法を採用することがある(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、オーガ併用工法では、下記工程にて杭の圧入施工を行う。
1.既設の杭列上を自走可能な杭圧入機のチャック装置にオーガ装置を設置する。
2.クレーンで吊った杭をオーガ装置に沿わすようにチャック装置にセットする。
3.オーガ装置で地盤を掘削しつつ、チャック装置で杭の圧入を行う。(圧入途中の杭を利用して杭圧入機が自走にて移動する。)
4.杭の圧入完了後、チャック装置にてオーガ装置を引き上げる。
5.「2」に戻り、杭の圧入を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−52285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の場合、クレーンは「2」の工程で杭を吊り込む作業を行うために必要ではあるが、杭を圧入する工期中クレーンは停止するため、次の杭の吊り込みまでクレーンオペレータは待機しなければならず、クレーン稼働率は低いものであった。
また、施工現場が狭隘地であると、クレーンで杭を吊り込むことが困難となる場合や、クレーン作業を可能にするために隣接する障害物を撤去しなければならない場合がある。何れの場合も作業スペースが狭いために、杭を吊り込む作業の効率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、効率よく杭を吊り込むことができるオーガ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取って地中に新たな杭を圧入する杭圧入機が備えているチャック装置によって把持された筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配されるオーガスクリューと、を備えたオーガ装置であって、
前記チャック装置が前記ケーシングの下部を把持し、前記チャック装置が前記杭を把持していない状態で、前記チャック装置で把持する杭を吊り込むための巻き揚げ機が、前記チャック装置の上面からの高さが前記杭の長さよりも高い位置に配設されており、
前記巻き揚げ機は、前記ケーシングと交差する方向に延在するアームと、前記アームに備えられたドラムに一端が固定され、他端に前記杭が繋がれて前記ドラムに巻き付けられるワイヤと、を有しており、
前記アームにおける前記ドラムの位置を切り替えることで、前記アームから垂下する前記ワイヤの位置を切り替えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は
既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取って地中に新たな杭を圧入する杭圧入機が備えているチャック装置によって把持された筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配されるオーガスクリューと、を備えたオーガ装置であって、
前記チャック装置が前記ケーシングの下部を把持し、前記チャック装置が前記杭を把持していない状態で、前記チャック装置で把持する杭を吊り込むための巻き揚げ機が、前記チャック装置の上面からの高さが前記杭の長さよりも高い位置に配設されており、
前記巻き揚げ機は、前記ケーシングと交差する方向に延在するアームと、前記アームに備えられたドラムに一端が固定され、他端に前記杭が繋がれて前記ドラムに巻き付けられるワイヤと、を有しており、
前記ケーシングに対する前記アームの角度を切り替えることで、前記アームから垂下する前記ワイヤの位置を切り替えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は
既設杭の上端側を掴み、その既設杭から反力を取って地中に新たな杭を圧入する杭圧入機が備えているチャック装置によって把持された筒状のケーシングと、前記ケーシング内に配されるオーガスクリューと、を備えたオーガ装置であって、
前記チャック装置が前記ケーシングの下部を把持し、前記チャック装置が前記杭を把持していない状態で、前記チャック装置で把持する杭を吊り込むための巻き揚げ機が、前記チャック装置の上面からの高さが前記杭の長さよりも高い位置に配設されており、
前記巻き揚げ機は、前記ケーシングと交差する方向に延在するアームと、前記アームに備えられたドラムに一端が固定され、他端に前記杭が繋がれて前記ドラムに巻き付けられるワイヤと、を有しており、
前記アームは伸縮可能に構成されており、
前記アームを伸縮させることで、前記アームから垂下する前記ワイヤの位置を切り替え
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のオーガ装置において、
前記巻き揚げ機は、当該オーガ装置に吊り込んだ前記杭を、前記チャック装置の上面よりも上方における前記ケーシングに沿わせた位置に吊り下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、杭の吊り込みを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のオーガ装置を用いたオーガ併用工法に関する説明図である。
図2】本実施形態のオーガ装置を用いたオーガ併用工法に関する説明図である。
図3】本実施形態のオーガ装置を用いたオーガ併用工法を説明するための上面図である。
図4】異なる構成の巻き揚げ機を有するオーガ装置を用いたオーガ併用工法に関する説明図(a)(b)である。
図5】オーガ装置の巻き揚げ機の変形例を示す説明図であり、アームを水平に維持した状態(a)と、アームを立ち上げた状態(b)である。
図6】オーガ装置の巻き揚げ機の変形例を示す説明図であり、アームを伸ばした状態(a)と、アームを縮めた状態(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るオーガ装置の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
オーガ装置1は、図1に示すように、筒状のケーシング2と、ケーシング2内に配されるオーガスクリュー3と、オーガスクリュー3を回転駆動させるオーガ駆動部4と、オーガ駆動部4に設けられた巻き揚げ機5等を備えて構成されている。
【0015】
ケーシング2は、後述する杭圧入機10のチャック装置15に支持されて、施工現場にて鉛直に立設された姿勢で設置される。
オーガスクリュー3の下端部には、オーガヘッド(図示省略)が交換可能に取り付けられている。
【0016】
オーガ駆動部4は、ケーシング2の上端に固設されており、オーガ駆動部4に設けられた巻き揚げ機5は、ケーシング2の上端よりも上の位置に配設されている。
巻き揚げ機5は、モーターなどの駆動機によって回転されるドラム51と、ドラム51に一端が固定されてドラム51に巻き付けられるワイヤ52と、を有している。
この巻き揚げ機5は、杭Pが他端に繋がれているワイヤ52をドラム51に巻き付けるようにして杭Pを吊り上げ、杭Pをオーガ装置1に吊り込むための機械(例えば、ウインチ)である。
【0017】
そして、後述する杭圧入機10によって硬質地盤に杭(例えば、鋼矢板)を圧入する際に、このオーガ装置1を杭圧入機10と併用してオーガ併用工法による杭の圧入施工を行うことができる。
【0018】
杭圧入機10は、図1に示すように、杭Pをチャック装置15で掴んで地中に圧入する装置であり、既に地中に埋設された既設の杭Pの上端側を掴んで支持する複数のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダーマスト14と、リーダーマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダーマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16等を備えている。
この杭圧入機10のリーダーマスト14には、オーガ装置1を作動させるためにオーガ駆動部4に接続される動力伝達綱6aを巻き取ったり繰り出したりするリール6が取り付けられている。動力伝達綱6aは、例えば、油圧ホースや電気ケーブルである。
【0019】
クランプ装置11は、サドル12の下面に設けられている。このクランプ装置11は、例えば、先に圧入された既設の杭Pの上端側を挟んだ状態で、図示しない油圧シリンダの駆動によりその杭Pの上端部を挟持して掴むことができる。つまり、クランプ装置11は、既設杭Pを掴むことで杭圧入機10を既設杭Pの上端部に固定する固定手段として機能する。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入機10が新たに杭Pを圧入したり、埋設されている杭Pを引き抜いたりすることができるように、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に固定し設置するようになっている。
なお、クランプ装置11が備える固定クランプ爪と可動クランプ爪とからなるクランプ爪や、可動クランプ爪を駆動させる油圧シリンダの構成や、クランプ爪が杭Pを掴む動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0020】
スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動して、リーダーマスト14とともにチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭Pの先に、新たな2本の杭を前後方向に並べて順次圧入することを可能にする。
【0021】
リーダーマスト14は、スライドベース13と一体的に前後に移動する。
また、リーダーマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回してチャック装置15の向きを変えることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角に曲げたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
【0022】
チャック装置15は、その背面側がリーダーマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダーマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
このチャック装置15の内部には、例えば、オーガ装置1のケーシング2を掴むケーシングチャックと、杭Pを掴むパイルチャックとが設けられている。ケーシングチャックは、チャック装置15に挿通されたケーシング2を、図示しない油圧シリンダの駆動により作動する爪部で把持して保持することができる。パイルチャックは、チャック装置15に挿通された杭Pを、図示しない油圧シリンダの駆動により作動する爪部で把持して保持することができる。
なお、チャック装置15が備えるケーシングチャックやパイルチャック、その爪部を駆動させる油圧シリンダの構成や動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0023】
そして、チャック装置15が把持した杭Pを地中に圧入する際、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭Pを把持してチャック装置15を下降させることと、杭Pを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、チャック装置15が昇降する1ストローク分ずつ杭Pを圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭Pを地中に圧入することが可能になっている。
同様に、杭Pを把持してチャック装置15を上昇させることと、杭Pを離してチャック装置15を下降させることを繰り返して、杭Pを地中から引き抜くことが可能になっている。
また、チャック装置15が把持したケーシング2(オーガ装置1)を地中に押し下げることや、地中から引き上げることも同様に行うことが可能になっている。
【0024】
上記した杭圧入機10は、既設杭Pの先に新たな杭Pをチャック装置15で圧入する動作と、クランプ装置11による既設杭Pの上端部の挟持と解除の動作と、サドル12に対するスライドベース13の前後動の動作と、を組み合わせることで、既設杭Pからなる杭列上を自走し移動することができる。
なお、杭圧入機10が杭列上を自走する動作は周知であるので、ここでは詳述しない。
【0025】
次に、オーガ装置1と杭圧入機10を協働させるオーガ併用工法によって杭の圧入施工を行うにあたり、オーガ装置1に杭Pを吊り込む手順について説明する。
ここでは、既設杭Pからなる杭列上を自走可能な杭圧入機10のチャック装置15に、既にオーガ装置1が設置されている状態であるものとする。
【0026】
まず、オーガ装置1の巻き揚げ機5からワイヤ52を繰り出し、フック52aが取り付けられているワイヤ52の他端を地上に下ろす。
また、施工現場に搬入されている杭Pの端部の吊り穴に、吊具52cに進退可能に設けられているピンを挿通して取り付け、その吊具52cに牽引ロープ52bを締結する。
次いで、牽引ロープ52bのループにワイヤ52のフック52aを架けた後、図1に示すように、巻き揚げ機5のドラム51にワイヤ52を巻き付けていき、ワイヤ52の他端に繋がれている杭Pを徐々に引き上げ、オーガ装置1に杭Pを吊り込む。
そして、図2に示すように、巻き揚げ機5は、オーガ装置1に吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿わせた位置に吊り下げる。この巻き揚げ機5が、杭Pの長さよりも高い位置に配設されていることにより、巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿った位置に吊り下げやすくなっている。
巻き揚げ機5によってオーガ装置1に吊り込まれた杭Pは、その下端部がチャック装置15の近傍であって、チャック装置15の直上に位置するように吊り下げられるので、吊り込んだ杭Pをチャック装置15に挿通しやすくなっている。
【0027】
こうして巻き揚げ機5のワイヤ52によって吊り下げられている杭Pをチャック装置15に保持させるように、作業者が杭Pを誘導しつつ、ワイヤ52を少しずつ繰り出していき、杭Pをチャック装置15に挿通してセットする。
そして、杭Pをチャック装置15にセットした後、吊具52cのピンを後退動作させて杭Pの吊り穴から取り外し、オーガ装置1と杭圧入機10を協働させて、周知のオーガ併用工法による杭Pの圧入施工を行うことができる。
【0028】
また、吊具52cは杭Pの圧入完了後、次の杭Pの吊り込み作業に利用する。
つまり、次の杭Pの吊り穴に吊具52cのピンを挿通して取り付け、その吊具52cに締結された牽引ロープ52bにフック52aを介して繋いだワイヤ52をドラム51に巻き付け、巻き揚げ機5で次の杭Pの吊り込みを行って、杭Pの圧入施工を繰り返す。
【0029】
このように、本実施形態のオーガ装置1は、杭Pをオーガ装置1および杭圧入機10に吊り込むための巻き揚げ機5を備えているので、効率よく杭Pを吊り込む作業を行うことができる。
特に、オーガ装置1に配設されている巻き揚げ機5が杭Pの長さよりも高い位置にあることで、巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿った位置に吊り下げやすくなっており、ケーシング2を保持しているチャック装置15に、吊り込んだ杭Pを挿通し易いので、オーガ併用工法による杭の圧入施工を行い易くなっている。
【0030】
また、オーガ装置1が、杭Pをオーガ装置1および杭圧入機10に吊り込むための巻き揚げ機5を備えているので、従来技術で杭の吊り込みに使用していたクレーンや、そのクレーンを操作するオペレータが不要になる。
例えば、図3に示すような、障害物となる壁Wに挟まれている狭隘地であって、クレーンによる作業が困難な施工現場であっても、杭圧入機10と、杭圧入機10のチャック装置15にセットしたオーガ装置1を稼働させることができ、施工現場に搬入した杭Pを載置するスペースがあれば、オーガ併用工法による杭Pの圧入施工を行い、杭列を造成する工事を行うことができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図4(a)(b)に示すように、オーガ装置1に配設されている巻き揚げ機5は、ケーシング2と交差する方向に延在するアーム53と、アーム53に備えられたドラム51に一端が固定され、他端(のフック52a)に杭Pが繋がれてドラム51に巻き付けられるワイヤ52と、を有する構成であってもよい。
アーム53は、オーガ駆動部4と一体的にケーシング2上で旋回可能に設けられている。
また、アーム53は水平方向に延在しており、ドラム51がアーム53上のレール(図示省略)に沿って水平方向に移動可能に設けられている。
【0032】
この巻き揚げ機5を備えたオーガ装置1と杭圧入機10を協働させるオーガ併用工法によって杭の圧入施工を行う場合、例えば、図4(a)に示すように、既設杭Pからなる杭列上を移動する搬送装置20によって、打設用の杭Pを杭圧入機10の後方から施工現場に搬入する。
次いで、杭Pの吊り穴に吊具52cのピンを挿通して取り付け、その吊具52cに締結された牽引ロープ52bにフック52aを介して繋いだワイヤ52をドラム51に巻き付けて、巻き揚げ機5で杭Pを吊り上げる。このとき、ドラム51はアーム53の先端側の動作位置に配置されている。
【0033】
次いで、図4(b)に示すように、アーム53を180°旋回させて、巻き揚げ機5で吊り上げた杭Pを杭圧入機10の前方に配した後、アーム53の先端側にあるドラム51を、アーム53の基端側の動作位置に移動させる。
こうして、アーム53におけるドラム51の位置を切り替えることで、アーム53から垂下するワイヤ52の位置を切り替えて、巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿った位置に吊り下げることができる。
この巻き揚げ機5によってオーガ装置1に吊り込まれた杭Pは、チャック装置15の直上に位置するように吊り下げられるので、吊り込んだ杭Pをチャック装置15に挿通しやすい。
このように、ドラム51とワイヤ52とアーム53を備えた構成の巻き揚げ機5が配設されたオーガ装置1によっても、効率よく杭Pを吊り込む作業を行うことができる。
【0034】
また、図5(a)(b)に示すように、ケーシング2に対するアーム53の仰俯角が切り替え可能な巻き揚げ機5を備えたオーガ装置1であってもよい。
巻き揚げ機5のアーム53は、ケーシング2に対するアーム53の角度(仰角・俯角)を切り替え可能にオーガ駆動部4に配設されており、アーム53とオーガ駆動部4に跨るように油圧シリンダ54が設けられている。なお、アーム53の基部がオーガ駆動部4に回動可能に軸支されており、アーム53の先端側にドラム51が設けられている。
この油圧シリンダ54のシリンダチューブ54aの端部がオーガ駆動部4に取り付けられ、ピストンロッド54bの端部がアーム53に取り付けられている。
そして、油圧シリンダ54がピストンロッド54bを引き込んだ際、図5(a)に示すように、アーム53は水平方向に延在するようになっている。
また、油圧シリンダ54がピストンロッド54bを押し出した際、図5(b)に示すように、アーム53はドラム51が設けられた先端を上げるように、ケーシング2に対するアーム53の角度を切り替えるようになっている。
【0035】
こうして、ケーシング2に対するアーム53の角度を切り替え、アーム53の向きを鉛直方向に近付けるようにすることで、アーム53から垂下するワイヤ52の位置を切り替えて、巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿った位置に吊り下げることができる。
この巻き揚げ機5によってオーガ装置1に吊り込まれた杭Pは、チャック装置15の直上に位置するように吊り下げられるので、吊り込んだ杭Pをチャック装置15に挿通しやすい。
このように、ケーシング2に対するアーム53の仰俯角が切り替え可能な巻き揚げ機5が配設されたオーガ装置1によっても、効率よく杭Pを吊り込む作業を行うことができる。
【0036】
また、図6(a)(b)に示すように、アーム53の長さを調整可能な巻き揚げ機5を備えたオーガ装置1であってもよい。
巻き揚げ機5のアーム53は、水平方向に延在しており、例えば、油圧シリンダなどの進退機構によって伸縮し、その水平方向の長さを変更可能に構成されている。
なお、アーム53の基端側にドラム51が設けられ、アーム53の先端側にドラム51から繰り出されたワイヤ52を垂下させるための滑車55が設けられている。
【0037】
そして、伸縮可能なアーム53の長さを縮めるように切り替え、図6(b)に示すように、アーム53の先端をオーガ駆動部4側に近付けるようにすることで、アーム53先端の滑車55から垂下するワイヤ52の位置を切り替えて、巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿った位置に吊り下げることができる。
この巻き揚げ機5によってオーガ装置1に吊り込まれた杭Pは、チャック装置15の直上に位置するように吊り下げられるので、吊り込んだ杭Pをチャック装置15に挿通しやすい。
このように、伸縮可能なアーム53を備え、ワイヤ52を垂下させる滑車55が設けられているアーム53の先端位置を切り替え可能な巻き揚げ機5が配設されたオーガ装置1によっても、効率よく杭Pを吊り込む作業を行うことができる。
【0038】
以上のように、杭Pの長さよりも高い位置に巻き揚げ機5が配設されているオーガ装置1であれば、巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをケーシング2に沿った位置に吊り下げやすく、オーガ併用工法による杭の圧入施工を行う場合に、効率よく杭Pをオーガ装置1および杭圧入機10に吊り込む作業を行うことができる。
【0039】
なお、以上の実施の形態においては、杭Pをオーガ装置1に吊り込むための巻き揚げ機5は、オーガ駆動部4に設けられてケーシング2の上端よりも上の位置に配設されているとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、巻き揚げ機5がケーシング2の周面に設けられていてもよい。
巻き揚げ機5で吊り込んだ杭Pをチャック装置15に投入できる高さに吊り下げることができれば、巻き揚げ機5が何れの位置に設けられていてもよい。
【0040】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 オーガ装置
2 ケーシング
3 オーガスクリュー
4 オーガ駆動部
5 巻き揚げ機
51 ドラム
52 ワイヤ
53 アーム
54 油圧シリンダ
55 滑車
6 リール
6a 動力伝達綱
10 杭圧入機
11 クランプ装置
12 サドル
13 スライドベース
14 リーダーマスト
15 チャック装置
16 メイン油圧シリンダ
20 搬送装置
P 杭
図1
図2
図3
図4
図5
図6