特許第6002209号(P6002209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002209
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】押出成形用金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/26 20060101AFI20160923BHJP
   B28B 3/20 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   B28B3/26 A
   B28B3/20 E
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-507176(P2014-507176)
(86)(22)【出願日】2012年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2012058363
(87)【国際公開番号】WO2013145210
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 誠
(72)【発明者】
【氏名】河野 秀一
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−276487(JP,A)
【文献】 特開2010−247536(JP,A)
【文献】 特開2011−157614(JP,A)
【文献】 特開2010−024518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/20−3/26
B29C 33/00
B29C 47/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面と、
前記第一の面の反対側に形成された第二の面と、
前記第一の面から前記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、
前記第二の面から前記第一の面に向かって、前記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型の製造方法であって、
金型の素材を所定形状に加工するとともに、前記成形部において、前記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、
前記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、前記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、
前記酸化層を除去する酸化層除去工程とを行い処理面を得ることを特徴とする押出成形用金型の製造方法。
【請求項2】
前記原料供給部は、さらに、前記第一の面に形成された第一開口部と、前記第二貫通孔と連通する部分に形成された第二開口部とを有し、
前記原料供給部の幅は、前記第一開口部から前記第二開口部にかけて小さくなっている請求項1に記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項3】
前記成形部は、複数の前記第二貫通孔がつながって格子状に形成されたスリット溝である請求項1又は2に記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項4】
金型の素材を所定形状に加工するとともに、前記原料供給部において、前記第一貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、
前記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、前記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、
前記酸化層を除去する酸化層除去工程とを行い処理面を得る請求項1〜3のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項5】
前記処理面の表面粗さRaは、0.1〜5.0μmである請求項1〜4のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項6】
前記処理面の硬度は、300〜1500Hvである請求項1〜5のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項7】
前記金型の素材は、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金である請求項1〜6のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項8】
前記酸化層除去工程では、流動研磨を用いる請求項1〜7のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項9】
前記原料供給部に供給する成形原料は、炭化ケイ素である請求項1〜8のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項10】
前記加工工程では、形彫り放電加工を用いる請求項1〜9のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項11】
前記酸化層形成工程では、前記加工変質層を酸素雰囲気下で500〜1000℃に加熱する請求項1〜10のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【請求項12】
前記酸化層形成工程では、前記加工変質層を窒素雰囲気下で所定の温度である500〜1000℃に加熱昇温後、酸素雰囲気下で5〜180分間維持する請求項1〜10のいずれかに記載の押出成形用金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出成形用金型の製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両及び建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中のスス等のパティキュレートが、環境又は人体に害を及ぼすことが近年問題となっている。そこで、多孔質セラミックからなるハニカム構造体を用いることにより、排ガス中のパティキュレートを捕集し、排ガスを浄化するパティキュレートフィルタが種々提案されている。
【0003】
このようなハニカム構造体としては、耐熱性及び強度に優れるという観点から、炭化ケイ素等のセラミック材料等を含む混合物に押出成形、脱脂、焼成等の処理を行うことによって作製される角柱形状のハニカム焼成体が接着剤層を介して複数個結束されたものが用いられている。
【0004】
一般に、ハニカム構造体を製造する際には、押出成形用金型を用いて成形原料を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を製造している。
【0005】
ハニカム成形体を製造するための押出成形用金型としては、成形原料を供給するための原料供給部と、上記原料供給部に連通して格子状に設けられ、成形原料をハニカム成形体の形状に成形するためのスリット溝とを有する金型が知られている。
金型の素材を上記形状に加工する方法として、例えば、ドリル等の刃物を用いたマシニング加工が広く用いられている(特許文献1)。また、金型の素材が超硬合金等のように硬い場合や製造する金型の形状が複雑な場合は、放電加工が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−131425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ドリル等の刃物を用いたマシニング加工により作製した金型(特許文献1)では、被加工部位に多数のクラックを含む加工変質層が形成される。また、放電加工により作製した金型では、被加工部位にクラックや微小穴等の欠陥が形成された加工変質層が形成される。
ここで、加工変質層とは、加工によって材質的に変化した表面層のことをいう。その原因は、機械的エネルギーによるもの、熱エネルギーによるもの、又は、この両者を合わせたもの等が考えられる。
これらの加工変質層は非常に脆いため、このような金型を用いて成形原料を繰り返し押出成形すると、成形原料と金型の表面とが接触して摩擦が生じることにより、金型の表面に摩耗が生じ易くなる。特に、成形原料として、硬度の高い炭化ケイ素粉末等を主成分とする原料を使用した場合、金型の表面に摩耗がより生じ易くなる。その結果、押出成形されたハニカム成形体のセル壁の厚さが厚くなり、設計値からずれたハニカム成形体が成形される。そのため、金型の使用が困難となり、金型のライフが短くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、耐摩耗性に優れ、金型のライフを向上させることが可能押出成形用金型の製造方法提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の押出成形用金型では、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であって、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含むことを特徴とする。
【0010】
上記酸化層形成工程と上記酸化層除去工程とを含むことにより、得られた処理面の脆性が改善される。
従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、処理面に摩耗が生じにくくなる。その結果、金型のライフを向上させることができる。
なお、金型のライフを向上させるとは、金型を使用するにつれて、第二貫通孔の内壁面の摩耗により押出成形されたハニカム成形体のセル壁の厚さが厚くなることや、第二貫通孔の内壁面の摩耗のバラツキにより押出成形されたハニカム成形体のセル壁の厚さにバラツキが生じることを防ぐことをいう。
【0011】
請求項2に記載の押出成形用金型では、上記原料供給部は、さらに、上記第一の面に形成された第一開口部と、上記第二貫通孔と連通する部分に形成された第二開口部とを有し、上記原料供給部の幅は、上記第一開口部から上記第二開口部にかけて小さくなっている。
上記原料供給部の幅が、上記第一開口部から上記第二開口部にかけて小さくなっていると、成形原料が原料供給部から成形部に流れやすくなるため、成形原料が押出成形用金型内で詰まりにくくなる。
【0012】
請求項3に記載の押出成形用金型では、上記成形部は、複数の上記第二貫通孔がつながって格子状に形成されたスリット溝である。
上記成形部が、複数の上記第二貫通孔がつながって格子状に形成されたスリット溝であると、上記押出成形用金型を用いて成形原料を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体が得られる。
【0013】
請求項4に記載の押出成形用金型では、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記原料成形部において、上記第一貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含む。
上記工程により、上記第一貫通孔の内壁面に処理面が形成されていると、第一貫通孔の内壁面の脆性が改善される。従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、第一貫通孔の内壁面に摩耗が生じにくくなる。その結果、第一貫通孔の形状を、成形原料が原料供給部から成形部に流れやすい形状に維持できるため、成形原料を繰り返し押出成形しても、成形原料が押出成形用金型内で詰まりにくくなる。
【0014】
請求項5に記載の押出成形用金型では、上記処理面の表面粗さRaは、0.1〜5.0μmである。
上記処理面の表面粗さRaが0.1〜5.0μmであると、成形原料を繰り返し押出成形しても、成形原料と処理面との接触による摩擦がより生じにくくなることにより、処理面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをより向上させることができる。
上記処理面の表面粗さRaが5.0μmを超えると、成形原料を繰り返し押出成形した際に、成形原料と処理面とが接触して摩擦が生じ、処理面に摩耗が促進される場合がある。
【0015】
請求項6に記載の押出成形用金型では、上記処理面の硬度は、300〜1500Hvである。
上記処理面の硬度が300〜1500Hvであると、成形原料を繰り返し押出成形しても、金型の表面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをより向上させることができる。
上記処理面の硬度が300Hv未満であると、成形原料を繰り返し押出成形した際、金型の表面に摩耗が生じ易くなる場合がある。
上記処理面の硬度が1500Hvを超えると、このような硬度の処理面を含む押出成形用金型を製造することが困難になる場合がある。
【0016】
請求項7に記載の押出成形用金型では、上記金型の素材は、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金である。
上記金型の素材が炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金であると、金型の表面の硬度がより高くなる。従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、金型の表面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをさらに向上させることができる。
【0017】
請求項8に記載の押出成形用金型では、上記酸化層除去工程において流動研磨を用いる。
上記酸化層除去工程では、流動研磨を用いることにより、酸化層が充分に除去された処理面を得ることができ、このような処理面は加工変質層と比較して脆性が改善される。従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、処理面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをさらに向上させることができる。
【0018】
請求項9に記載の押出成形用金型では、上記原料供給部に供給する成形原料は炭化ケイ素である。
成形原料として硬度の高い炭化ケイ素を使用した場合であっても、処理面に摩耗が生じにくくなり、金型のライフを向上させることができる。
【0019】
請求項10に記載の押出成形用金型の製造方法では、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型の製造方法であって、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とを行い処理面を得ることを特徴とする。
【0020】
上記酸化層形成工程では、加工変質層を加熱することにより、加工変質層の表面から内部に向かって徐々に酸化が起こり、剥離性に優れた酸化層が形成される。その結果、上記酸化層除去工程において、酸化層を簡単に除去し、処理面を得ることができる。
【0021】
請求項11に記載の押出成形用金型の製造方法では、上記加工工程において、形彫り放電加工を用いる。
上記加工工程に形彫り放電加工を用いると、硬度の高い金型の素材であっても、所定形状に好適に加工することができる。また、上記加工工程に形彫り放電加工を用いると、製造する金型の形状が複雑であっても、好適に加工することができる。
【0022】
請求項12に記載の押出成形用金型の製造方法では、上記酸化層形成工程において、上記加工変質層を酸素雰囲気下で500〜1000℃に加熱する。
上記加工変質層を酸素雰囲気下で500〜1000℃に加熱すると、加工変質層を充分に酸化することができる。
上記加工変質層の加熱温度が500℃未満であると、加工変質層が充分に酸化されない場合がある。
上記加工変質層の加熱温度が1000℃を超えると、加工変質層の下層にある金型の素材が熱により変質して、本来の物性を示さない場合がある。
【0023】
請求項13に記載の押出成形用金型の製造方法では、上記酸化層形成工程において、上記加工変質層を窒素雰囲気下で所定の温度である500〜1000℃に加熱昇温後、酸素雰囲気下で5〜180分間維持する。
ハニカム成形体を作製するために用いられる押出成形用金型では、高い寸法精度が要求される。
上記酸化層形成工程において、加熱昇温後に酸素を導入し、一定の温度を維持しながら酸化処理を行うことにより、酸化処理中の酸素濃度を調節することができる。その結果、均一な厚さの酸化層を形成することができるため、寸法精度良く金型を製造することができる。
【0024】
請求項14に記載の押出成形用金型の製造方法では、上記酸化層除去工程において流動研磨を用いる。
上記酸化層除去工程では、流動研磨を用いることにより、酸化層を簡単に除去することができる。
【0025】
請求項15に記載のハニカム構造体の製造方法では、押出成形用金型を用いて成形原料を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する工程と、上記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する工程と、少なくとも1つのハニカム焼成体を用いてセラミックブロックを作製する工程とを含むハニカム構造体の製造方法であって、上記押出成形用金型は、第一の面と、
上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備え、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含む押出成形用金型であることを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム成形体を作製する工程において、ハニカム成形体のセル壁の厚さが厚くなることや、セル壁の厚さにバラツキが生じることを防ぐことができるため、好適にハニカム構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の一例を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す押出成形用金型の一部拡大図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の製造過程において、加工工程後のスリット溝表面の断面を示すSEM画像である。
図3図3は、図1に示す押出成形用金型の正面拡大図である。
図4図4(a)〜図4(c)は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の製造方法を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型を用いて押出成形されたハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6図6(a)は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示すハニカム焼成体のA−A線断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0029】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型、押出成形用金型の製造方法及びハニカム構造体の製造方法の一実施形態である第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
まず、本実施形態に係る押出成形用金型について説明する。
本実施形態に係る押出成形用金型では、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であって、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含むことを特徴とする。
【0031】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の一例を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す押出成形用金型の一部拡大図である。
図1(a)及び図1(b)は、成形原料を押し出す方向に平行な方向における押出成形用金型の断面図である。ここで、成形原料を押し出す方向は、図1(a)中及び図1(b)中に矢印aで示す。
【0032】
図1(a)及び図1(b)に示すように、押出成形用金型100は、第一の面10aと、第一の面10aの反対側に形成された第二の面10bと、第一の面10aから第二の面10bに向かってに形成された第一貫通孔111を有する原料供給部11と、第二の面10bから第一の面10aに向かって、第一貫通孔111と連通するように形成された第二貫通孔121を有する成形部12とを備える。成形部12は、複数の第二貫通孔121がつながって格子状に形成されたスリット溝である。
ここで、原料供給部11は、成形原料を供給するために形成され、成形部12は、原料供給部11を通過した成形原料をハニカム成形体の形状に成形するために形成されている。
なお、押出成形用金型100を固定するための外枠20は、必要に応じて備えられていればよい。
【0033】
以下、成形部12において第二貫通孔121の内壁面を、スリット溝12の表面として説明する。
スリット溝12の表面には処理面13が形成されている。
本実施形態に係る押出成形用金型では、スリット溝12の表面に処理面13が形成されていることを必須の構成要素としている。しかしながら、係る必須の構成要素に加えて、原料供給部11における第一貫通孔111の内壁面、第一の面10a、第二の面10b等に処理面13が形成されていてもよい。
【0034】
押出成形用金型100の素材は、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金、炭化タングステンとコバルトとその他微量粒子(例えば、TiC、TiN等)とを混合して焼結した超硬合金、工具鋼、ステンレス鋼、又は、アルミニウム合金等であることが望ましく、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金であることがより望ましい。
ここで、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金の硬度は、一般に、1000〜1500Hvである。
【0035】
図2は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の製造過程において、加工工程後のスリット溝表面の断面を示すSEM画像である。
図2に示す押出成形用金型の素材としては、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金を用いた。また、スリット溝は放電加工を用いて形成した。
【0036】
図2に示すように、加工工程後のスリット溝12の表面には、加工変質層26が形成されている。加工変質層26は、金型の素材である炭化タングステン及びコバルトが溶融して焼結した層であるが、放電加工を行った際の熱エネルギーによりクラックや微小穴等の欠陥が形成されている。
【0037】
加工変質層26の厚み(図2中、両矢印eで示す長さ)は0.1〜20μmであることが望ましい。
加工変質層の厚みは、SEM画像から測定することができる。上記範囲の最小値は、加工変質層26の厚みが小さいと思われる任意の10箇所の厚みの平均値である。また、上記範囲の最大値は、加工変質層26の厚みが大きいと思われる任意の10箇所の厚みの平均値である。
【0038】
そして、加工変質層26の下には、炭化タングステン粒子201とバインダーであるコバルト202とからなる正常層27が形成されている。
炭化タングステン粒子201の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが望ましい。また、コバルト202の含有率は、3〜20%であることが望ましい。
【0039】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型のスリット溝12の表面には、処理面13が形成されている。つまり、図2に示す加工変質層26が形成されたスリット溝12の表面に酸化層形成工程及び酸化層除去工程を行うことにより、加工変質層26が除去され、処理面13が得られる。このように、処理面13とは、加工変質層26が除去されて得られた面のことをいう。
また、処理面13の下には、炭化タングステン粒子201とバインダーであるコバルト202とからなる正常層27が形成されている。
各製造工程については、後述する本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法にて詳細を説明する。
【0040】
処理面13の表面粗さRaは、0.1〜5.0μmであることが望ましい。
なお、表面粗さRaは、JIS規格(規格番号:JIS B 0601)に準拠した中心線平均粗さであり、例えば、触針式表面粗さ測定器等により測定することができる。
【0041】
処理面13の硬度は、300〜1500Hvであることが望ましい。なお、上記硬度は、JIS規格(規格番号:JIS Z 2244)に準拠して測定したビッカース硬度である。
【0042】
ビッカース硬さ試験では、まず、硬度測定を行う基材の表面に、ダイヤモンド圧子(対面角=136°)と呼ばれる先端がひし形になっている針のようなものを試験力F(kgf)で押し込む。そして、これにより残った圧痕の対角線の長さd(mm)(2方向の平均)から計算される表面積S(mm)と、試験力F(kgf)とから、下記式によって硬度を算出することができる。
硬度(Hv)=F(kgf)/S(mm)=0.1892F(kgf)/d(mm
【0043】
成形原料を押し出す方向に平行な方向における原料供給部11の長さは、特に限定されないが、3〜20mmであることが望ましい。
成形原料を押し出す方向に平行な方向における原料供給部11の長さが上記範囲内であると、成形原料を容易に押し出すことができる。
【0044】
原料供給部11の幅(図1(b)中、両矢印bで示す長さ)は、特に限定されないが、1.0〜1.5mmであることが望ましい。
原料供給部11の幅が上記範囲内であると、成形原料を容易に押し出すことができる。
なお、原料供給部11の幅とは、原料供給部11の断面形状が円形である場合は、円の直径を意味する。また、原料供給部11の断面形状が多角形である場合は、多角形の各頂点を通る仮想外接円の直径を意味する。
【0045】
図1(b)に示すように、原料供給部11は、さらに、第一の面10aに形成された第一開口部112と、第二貫通孔121と連通する部分に形成された第二開口部113とを有する。そして、原料供給部11の幅(図1(b)中、両矢印bで示す長さ)は、第一開口部112から第二開口部113にかけて小さくなっている。
【0046】
スリット溝12は、ハニカム成形体のセル壁又は外周壁の厚さに対応するスリット幅(図1中、両矢印cで示す長さ)を有している。スリット幅は、30〜1000μmであることが望ましく、60〜500μmであることがより望ましい。
【0047】
成形原料を押し出す方向に平行な方向におけるスリット溝12の長さは、特に限定されないが、1〜4mmであることが望ましい。
成形原料を押し出す方向に平行な方向におけるスリット溝12の長さが上記範囲内であると、成形原料を容易に押し出すことができる。
【0048】
図3は、図1に示す押出成形用金型の正面拡大図である。
図3に示すように、スリット溝12は、原料供給部11と連通するように格子状に設けられている。
そして、スリット溝12同士が交わる箇所を交点14としたとき、交点14の数は、100〜500個/inchであることが望ましく、200〜400個/inchであることがより望ましい。
【0049】
原料供給部11は、通常、スリット溝12が交差する位置に対応して設けられている。
具体的には、図3に示すように、スリット溝12同士の交点のうち隣接する交点をそれぞれ14a及び14bとしたとき、原料供給部11は交点14a上に設けられている。
【0050】
成形原料は、作製するハニカム成形体(ハニカム構造体)の構成材料に応じて選択すればよい。
成形原料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、又は、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、又は、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、シリカ、又は、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等を挙げることができる。その中でも特に、炭化ケイ素であることが望ましい。
【0051】
次に、本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法について説明する。
本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法では、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型の製造方法であって、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とを行い処理面を得ることを特徴とする。
【0052】
図4(a)〜図4(c)は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の製造方法を模式的に示す断面図である。図4(a)〜図4(c)は、成形原料を押し出す方向に平行な方向における押出成形用金型の断面図である。ここで、成形原料を押し出す方向は、図4(a)〜図4(c)中に矢印aで示す。
【0053】
まず、金型の素材を所定形状に加工する加工工程を行う。
具体的には、図1に示すように、金型の素材を切削することにより、第一の面10aから第二の面10bに向かって第一貫通孔111を形成した後、第二の面10bから第一の面10aに向かって、第一貫通孔111と連通するように第二貫通孔121を形成する。成形部12は、複数の第二貫通孔121がつながって格子状に形成されたスリット溝である。
以下、成形部12において第二貫通孔121の内壁面を、スリット溝12の表面として説明する。
原料供給部11及びスリット溝12の形状等については、既に説明したため、その詳細な説明は省略する。
【0054】
原料供給部及びスリット溝を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ドリル等の刃物を用いたマシニング加工等が挙げられる。
また、金型の素材が超硬合金等のように硬い場合や、製造する金型の形状が複雑な場合は、放電加工等が挙げられる。放電加工とは、被工作物と工具電極の間に電圧をかけて放電させ、その爆発エネルギーで被工作物を除去していく加工方法である。放電加工には、形状電極を使用して被工作物に転写加工を行う形彫り放電加工、細いワイヤ電極を用いて被工作物を自在な形に切断するワイヤ放電加工、及び、棒電極を用いて非常に小径な穴を空けることが可能な細穴放電加工の3種類があるが、その中でも、形彫り放電加工であることが望ましい。
【0055】
上記加工工程により、図4(a)に示すように、スリット溝12の表面に加工変質層46が形成される。加工変質層46には、クラックや微小穴等の多数の欠陥48が形成される。ここで、図4(a)に示す加工変質層46は、図2に示す加工変質層26に相当する。加工変質層については、既に説明したため、その詳細な説明は省略する。
そして、加工変質層46の下には、クラックや微小穴等の欠陥のない正常層47が形成されている。
【0056】
次に、加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程を行う。
具体的には、加工変質層46を酸素雰囲気下で500〜1000℃に加熱して行うことが望ましい。また、加工変質層46を窒素雰囲気下で所定の温度である500〜1000℃に加熱昇温後、酸素雰囲気下で5〜180分間維持することがより望ましい。
【0057】
加熱方法としては、例えば、電気炉を用いて加熱することが望ましい。
【0058】
上記酸化層形成工程により、図4(b)に示すように、加工変質層46が酸化層49に変わる。
例えば、加工変質層46が炭化タングステン(WC)及びコバルト(Co)からなる層である場合、酸化処理を行うことにより、酸化タングステン(WO)、タングステン及びコバルトの酸化物(CoWO)、酸化コバルト(CoO)からなる酸化層49に変わる。WC又はCoは、WO、CoWO又はCoOに酸化されることにより、体積が増える。また、これに伴い、クラックや微小穴等の欠陥48も大きくなる。このようにして、剥離性に優れた酸化層が得られる。
【0059】
最後に、酸化層を除去する酸化層除去工程を行う。
酸化層を除去する方法としては、流動研磨が望ましい。具体的には、研磨材を原料供給部へ均等に導入し、スリット溝から押し出す作業を繰り返すことにより行う。
研磨材としては、粒度が#100〜#1000の炭化ケイ素が望ましい。その中でも特に、粒度が#600(平均粒径25.8μm)の炭化ケイ素が望ましい。
【0060】
また、研磨条件としては、研磨圧力が1〜10MPa、研磨温度が10〜50℃、研磨時間が5〜48時間であることが望ましい。
研磨圧力、研磨温度、研磨時間が上記範囲内であると、酸化層を充分に除去し、平坦な面を有する処理面を得ることができる。
【0061】
上記酸化層除去工程により、図4(c)に示すように、酸化層49が除去され、処理面43が得られる。そして、処理面43の下には、クラックや微小穴等の欠陥のない正常層47が形成されている。
処理面については、既に説明したため、その詳細な説明は省略する。
以上の工程によって、本実施形態に係る押出成形用金型を製造することができる。
【0062】
最後に、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るハニカム構造体の製造方法では、押出成形用金型を用いて成形原料を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する工程と、上記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する工程と、少なくとも1つのハニカム焼成体を用いてセラミックブロックを作製する工程とを含むハニカム構造体の製造方法であって、上記押出成形用金型は、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備え、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含む押出成形用金型であることを特徴とする。
【0063】
(1)まず、セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物(成形原料)を調製する。
具体的には、まず、セラミック粉末と、有機バインダと、液状の可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0064】
上記セラミック粉末は、作製するハニカム成形体(ハニカム構造体)の構成材料に応じて選択すればよい。
ハニカム成形体の構成材料の主成分としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、シリカ、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等を挙げることができる。
ハニカム成形体の構成材料の主成分の中では、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。
本明細書において、「主成分が炭化ケイ素である」とは、セラミック粉末が炭化ケイ素を60重量%以上含有することをいう。主成分が炭化ケイ素である場合、炭化ケイ素のみならず、ケイ素結合炭化ケイ素も含まれる。また、炭化ケイ素以外の構成材料の主成分についても同様である。
【0065】
(2)次に、上記湿潤混合物(成形原料)を押出成形することにより、所定の形状のハニカム成形体を作製する。
この際、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて押出成形を行う。
【0066】
図5は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型を用いて押出成形されたハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図である。図5に示すハニカム成形体500には、多数のセル501がセル壁502を隔てて長手方向(図5中、両矢印fの方向)に並設されるとともに、その周囲に外周壁503が形成されている。
【0067】
(3)その後、上記ハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製する。
さらに、ハニカム成形体の乾燥体を、所定の条件で脱脂処理(例えば、200〜500℃)、及び、焼成処理(例えば、1400〜2300℃)を行う。
上記の工程を経ることにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、周囲に外周壁が形成されたハニカム焼成体を作製することができる。
なお、上記ハニカム成形体の乾燥体の脱脂処理及び焼成処理の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0068】
本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の製造方法においては、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体を作製することもできる。この場合、上記(3)の工程において、乾燥後、ハニカム成形体の乾燥体が有するセルの所定の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填してセルを封止する。その後、上述した脱脂処理及び焼成処理を行うことにより、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体を作製することができる。
ここで、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0069】
図6(a)は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に示すハニカム焼成体のA−A線断面図である。
図6(a)及び図6(b)に示すハニカム焼成体600には、多数のセル601がセル壁602を隔てて長手方向(図6(a)中、矢印gの方向)に並設されるとともに、その周囲に外周壁603が形成されている。そして、セル601のいずれかの端部は、封止材604で封止されている。
従って、一方の端面が開口したセル601に流入した排ガスG(図6(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、必ずセル601を隔てるセル壁602を通過した後、他方の端面が開口した他のセル601から流出するようになっている。排ガスGがセル壁602を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル壁602は、フィルタとして機能する。
【0070】
このように、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体を含むハニカム構造体は、セラミックフィルタとして好適に使用することができる。また、セルのいずれの端部も封止されていないハニカム焼成体を含むハニカム構造体は、触媒担持体として好適に使用することができる。
【0071】
(4)続いて、少なくとも1つのハニカム焼成体を用いてセラミックブロックを作製する。
一例として、複数のハニカム焼成体が接着材層を介して結束されてなるセラミックブロックを作製する方法について説明する。
まず、上記ハニカム焼成体のそれぞれの所定の側面に、接着材層となる接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成し、この接着剤ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、ハニカム焼成体の集合体を作製する。
次に、ハニカム焼成体の集合体を加熱して接着剤ペースト層を乾燥、固化させて接着材層とすることにより、セラミックブロックを作製する。
ここで、接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0072】
(5)その後、セラミックブロックに切削加工を施す。
具体的には、ダイヤモンドカッター等を用いてセラミックブロックの外周を切削することにより、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0073】
(6)さらに、円柱状のセラミックブロックの外周面に、外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
また、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
以上の工程によって、ハニカム構造体を製造することができる。
【0074】
図7は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図7に示すハニカム構造体700では、ハニカム焼成体600が複数個ずつ接着材層701を介して結束されてセラミックブロック703を構成し、さらに、このセラミックブロック703の外周に外周コート層702が形成されている。なお、外周コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
このような、ハニカム焼成体が複数個結束されてなるハニカム構造体は、集合型ハニカム構造体ともいう。
【0075】
以下、本実施形態に係る押出成形用金型、及び、押出成形用金型の製造方法の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態に係る押出成形用金型では、加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とを含む。酸化層形成工程と上記酸化層除去工程とを含むことにより、得られた処理面の脆性が改善される。従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、処理面に摩耗が生じにくくなる。その結果、金型のライフを向上させることができる。
【0076】
(2)本実施形態に係る押出成形用金型では、処理面の表面粗さRaは、0.1〜5.0μmである。処理面の表面粗さRaが上記範囲内であると、成形原料を繰り返し押出成形しても、成形原料と処理面との接触による摩擦がより生じにくくなることにより、処理面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをより向上させることができる。
【0077】
(3)本実施形態に係る押出成形用金型では、処理面の硬度は、300〜1500Hvである。処理面の硬度が上記範囲内であると、成形原料を繰り返し押出成形しても、金型の表面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをより向上させることができる。
【0078】
(4)本実施形態に係る押出成形用金型では、金型の素材は、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金である。金型の素材が上記超硬合金であると、金型の表面の硬度がより高くなる。従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、金型の表面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをさらに向上させることができる。
【0079】
(5)本実施形態に係る押出成形用金型では、酸化層除去工程において流動研磨を用いる。流動研磨により、酸化層が充分に除去された処理面を得ることができ、このような処理面は加工変質層と比較して脆性が改善される。従って、成形原料を繰り返し押出成形しても、処理面に摩耗がより生じにくくなる。その結果、金型のライフをさらに向上させることができる。
【0080】
(6)本実施形態に係る押出成形用金型では、原料供給部に供給する成形原料は炭化ケイ素である。成形原料として硬度の高い炭化ケイ素を使用した場合であっても、処理面に摩耗が生じにくくなり、金型のライフを向上させることができる。
【0081】
(7)本実施形態に係る押出成形用金型では、原料供給部は、さらに、第一の面に形成された第一開口部と、第二貫通孔と連通する部分に形成された第二開口部とを有し、上記原料供給部の幅は、上記第一開口部から上記第二開口部にかけて小さくなっている。
原料供給部の幅が、第一開口部から第二開口部にかけて小さくなっていると、成形原料が原料供給部から成形部に流れやすくなるため、成形原料が押出成形用金型内で詰まりにくくなる。
【0082】
(8)本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法では、加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とを含む。酸化層形成工程では、加工変質層を加熱することにより、加工変質層の表面から内部に向かって徐々に酸化が起こり、剥離性に優れた酸化層が形成される。その結果、上記酸化層除去工程において、酸化層を簡単に除去し、処理面を得ることができる。
【0083】
(9)本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法における加工工程では、形彫り放電加工を用いる。形彫り放電加工を用いると、硬度の高い金型の素材であっても、所定形状に好適に加工することができる。また、形彫り放電加工を用いると、製造する金型の形状が複雑であっても、好適に加工することができる。
【0084】
(10)本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法における酸化層形成工程では、加工変質層を酸素雰囲気下で500〜1000℃に加熱して行う。加工変質層の加熱温度が上記範囲内であると、加工変質層を充分に酸化することができる。
【0085】
(11)本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法における酸化層形成工程では、加工変質層を窒素雰囲気下で所定の温度である500〜1000℃に加熱昇温後、酸素雰囲気下で5〜180分間維持する。ハニカム成形体を作製するために用いられる押出成形用金型では、高い寸法精度が要求される。酸化層形成工程において、加熱昇温後に酸素を導入し、一定の温度を維持しながら酸化処理を行うことにより、酸化処理中の酸素濃度を調節することができる。その結果、均一な厚さの酸化層を形成することができるため、寸法精度良く金型を製造することができる。
【0086】
(12)本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法における酸化層除去工程では、流動研磨を用いる。流動研磨を用いることにより、酸化層を簡単に除去することができる。
【0087】
(実施例)
以下、本実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
実施例1では、本発明の第一実施形態をより具体的に示す。
(実施例1)
まず、金型素材として、材質が炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金を準備した。ここで、金型素材の硬度は、1200Hvであった。
次に、形彫り放電加工により、上記金型素材を図1(a)に示すような形状に加工した。具体的には、まず、第二貫通孔を形成する第二の面を周囲よりも突出させるように外周部を加工した。次に、第一の面から第二の面に向かって断面形状が円形の第一貫通孔を形成した。その後、第二の面から第一の面に向かって、第一貫通孔と連通するように、第二貫通孔を形成した。
【0089】
形彫り放電加工は、形彫放電加工機(三菱電機(株)製、EA8PV)を用い、電流ピーク値を5〜20Aに設定して行った。
【0090】
上記加工により形成されたスリット溝の表面には、加工変質層が形成された。
【0091】
続いて、加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、加工変質層を酸化層に変えた。
酸化処理は、まず、加工変質層を窒素雰囲気下において、1時間かけて室温から700℃まで加熱昇温後、酸素雰囲気下(酸素濃度:20.8%)で105分間維持した。その後は、窒素雰囲気下で室温まで下げた。加熱は、電気炉を用いて行った。
【0092】
最後に、酸化層の除去を行った。
酸化層の除去は、流動研磨を用いて行った。流動研磨は、研磨材を原料供給部へ均等に導入し、スリット溝から押し出す作業を繰り返すことにより行った。研磨材としては、粒度が#600(平均粒径25.8μm)の炭化ケイ素を用いた。また、研磨圧力は6MPa、研磨温度は30°、研磨時間は24時間とした。
【0093】
酸化層の除去については、マイクロ顕微鏡((株)キーエンス製、VHK−100)を用いて、スリット溝表面の断面を観察することにより確認した。
以上の工程により、押出成形用金型を製造した。
【0094】
実施例1で製造した押出成形用金型について、下記の通り、スリット幅の摩耗量を測定した。
スリット幅摩耗量の測定は、第二貫通孔が形成された第二の面から深さ方向に30μmの地点において行った。また、スリット幅摩耗量の測定は、ハニカム成形体のセル壁に対応するスリット溝のうち任意に10箇所を選んで行った。そして、これら10箇所について測定した値の平均値を表1に示す。
【0095】
(スリット幅摩耗量の測定)
まず、スリット溝表面の流動研磨を行った。流動研磨は、研磨材を原料供給部へ均等に導入し、スリット溝から押し出す作業を繰り返すことにより行った。研磨材としては、粒度が#320(平均粒径46.2μm)の炭化ケイ素を用いた。また、研磨圧力は6MPa、研磨温度は30°、研磨時間は24時間とした。
その後、寸法測定器((株)ミツトヨ製、UMAP302)を用いて、スリット幅の摩耗量を測定した。
【0096】
(比較例1)
比較例1では、酸化層形成工程及び酸化層除去工程を行っていないこと以外は、実施例1と同様に押出成形用金型を製造し、スリット幅の摩耗量を測定した。測定した結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1の結果からわかるように、スリット溝表面に処理面が形成された実施例1では、スリット溝表面に処理面が形成されていない比較例1に比べて、スリット溝表面の脆性が改善され、スリット幅の摩耗量が小さいことがわかる。従って、スリット溝表面に処理面が形成された実施例1では、金型のライフを向上させることができる。
【0099】
(その他の実施形態)
本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造されるハニカム構造体は集合型ハニカム構造体であるが、1つのハニカム焼成体からなるハニカム構造体(一体型ハニカム構造体)を製造してもよい。
【0100】
一体型ハニカム構造体を製造する場合には、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、本発明の第一実施形態において説明したハニカム成形体の大きさに比べて大きく、その外形が異なる他は、本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム成形体を作製する。
つまり、得られるハニカム成形体の形状に対応する断面形状を有する他は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型と同様の構成を有する押出成形用金型を用いてハニカム成形体を作製すればよい。
【0101】
その他の工程は、本発明の第一実施形態で説明したハニカム構造体の製造工程と同様である。ただし、ハニカム構造体が1つのハニカム焼成体からなるため、ハニカム焼成体の集合体を作製する必要はない。また、円柱状のハニカム成形体を作製する場合には、セラミックブロックの外周を切削する必要はない。
【0102】
本発明の実施形態に係る押出成形用金型において、金型本体の原料供給部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、成形原料を押し出す方向に平行な断面形状が矩形状、テーパー形状、又は、台形状等を挙げることができる。
これらの中では、成形原料の押出しが容易である点で、断面形状がテーパー形状であることが望ましい。
【0103】
同様に、本発明の実施形態に係る押出成形用金型において、金型本体のスリット溝の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、成形原料を押し出す方向に平行な断面形状が矩形状、又は、テーパー形状等を挙げることができる。
これらの中では、スリット溝の形成が容易である点で、断面形状が矩形状であることが望ましい。
【0104】
本発明の押出成形用金型は、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であって、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含むことが必須の構成要素である。
また、本発明の押出成形用金型の製造方法は、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型の製造方法であって、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とを行い処理面を得ることが必須の構成要素である。
また、本発明のハニカム構造体の製造方法は、押出成形用金型を用いて成形原料を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する工程と、上記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する工程と、少なくとも1つのハニカム焼成体を用いてセラミックブロックを作製する工程とを含むハニカム構造体の製造方法であって、上記押出成形用金型は、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備え、金型の素材を所定形状に加工するとともに、上記成形部において、上記第二貫通孔の内壁面には加工変質層が形成される加工工程と、上記加工変質層を加熱して酸化処理を行うことにより、上記加工変質層を酸化層に変える酸化層形成工程と、上記酸化層を除去する酸化層除去工程とから得られる処理面を含む押出成形用金型であることが必須の構成要素である。
係る必須の構成要素に、本発明の第一実施形態、及び、本発明のその他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、原料供給部の形状、スリット溝の形状等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0105】
10a 第一の面
10b 第二の面
11 原料供給部
12 成形部(スリット溝)
13、43 処理面
14(14a、14b) スリット溝同士の交点
26、46 加工変質層
49 酸化層
100 押出成形用金型(金型)
111 第一貫通孔
112 第一開口部
113 第二開口部
121 第二貫通孔
500 ハニカム成形体
501、601 セル
502,602 セル壁
600 ハニカム焼成体
700 ハニカム構造体
703 セラミックブロック
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図2