(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、及びカルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が300,000以上700,000以下であるアクリル系共重合体Aと、
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が1,000,000以上2,000,000以下であるアクリル系共重合体Bと、
前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対する含有量が20質量部以下の範囲であるイソシアネート系架橋剤と、
を含有し、前記アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)が、前記アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)以上である、偏光板用粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(MwB)に対する前記アクリル系共重合体Aの重量平均分子量(MwA)の比(MwA/MwB)が、0.5以下である請求項1又は請求項2に記載の偏光板用粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体Bに対する前記アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)が、質量基準で60/40〜80/20である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
前記アクリル系共重合体Aは、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、前記炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートを単独重合させた重合体のガラス転移温度との差の絶対値が30℃以上90℃以下であるガラス転移温度を有する単独重合体を形成し得る単量体に由来の構成単位とを含み、
前記アクリル系共重合体Bは、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位とを含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の偏光板用粘着剤組成物、並びにこれを用いた粘着剤付偏光板及び表示装置について詳細に説明する。
【0017】
<偏光板用粘着剤組成物>
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、及びカルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が300,000以上700,000以下であるアクリル系共重合体Aと、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が1,000,000以上2,000,000以下であるアクリル系共重合体Bと、イソシアネート系架橋剤とを用いて構成されている。さらに、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤の、前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対する含有量を20質量部以下の範囲とし、前記アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)と前記アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)とは、TgA≧TgBの関係を満たしている。
【0018】
また、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bに加えて、必要に応じて、更に、架橋剤やシランカップリング剤、その他添加剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
従来から、粘着剤を分子量の異なる複数種の共重合体を用いて構成する技術は知られている。しかし、単に一部の共重合体の分子量を小さくするのみでは、白抜け等の色ムラに対して応力緩和による効果は期待できるが、耐久性は著しく低下し、発泡や剥がれ等の発生が抑えられない。そのため、本発明においては、
架橋剤として比較的極性の高いイソシアネート系架橋剤を所定の比率で用いると共に、少なくとも高分子量側のアクリル系共重合体Bに極性基として水酸基を持たせ、低分子量側のアクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)を、アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)以上とする。これにより、低分子量側のアクリル系共重合体Aのイソシアネート系架橋剤との反応が促される。アクリル系共重合体を低分子量化することで応力緩和性が与えられ、しかも低分子量化に伴なう脆化が防止され、サイズの大小に関わらず、粘着剤における色ムラ(特に白抜け)の発生防止と耐久性の向上とがともに達成される。
【0020】
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、耐久性及び色ムラ(特に白抜け)防止に優れるため、19インチ以上の大型の表示パネル(すなわち大型の表示装置)に好適に用いることが可能であると同時に、19インチ未満(更には10インチ未満)の小型の表示パネル(すなわち小型の表示装置)にも好適に用いることが可能である。換言すれば、本発明の偏光板用粘着剤組成物は、大型の表示パネル用途の粘着剤を製造すると共に、原反の端部から小型の表示パネル用途の粘着剤を製造できるため、歩留まりが向上する。従って、大小の粘着剤を必要量に合わせて製造することが可能になり、在庫、保管の必要がなくなる利点もある。
【0021】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0022】
以下に各成分について詳述する。
−アクリル系共重合体A−
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、及びカルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が300,000以上700,000以下であるアクリル系共重合体Aの少なくとも一種を含有する。このアクリル系共重合体Aは、少なくとも、アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基を有する単量体とを共重合させた共重合体であり、さらに他のモノマーが共重合して該モノマー由来の構成単位を更に有するものであってもよい。
【0023】
アクリル系共重合体Aを構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1〜4のアルキルアクリレートが好ましく、特にはn−ブチルアクリレートが好ましい。
【0024】
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の、アクリル系共重合体A中における比率は、65.0〜99.5質量%が好ましく、65.0〜94.5質量%がより好ましく、75.0〜90.0質量%が特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、共重合体を構成する主成分として含有され、その含有比率が前記範囲内であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、タック性確保の点で有利である。
【0025】
本発明におけるアクリル系共重合体Aは、主成分として含有されるアルキル(メタ)アクリレートに加えて、さらに前記アルキル(メタ)アクリレートとは異なる単量体として、前記アルキル(メタ)アクリレート(好ましくはアルキルの炭素数1〜4)を単独重合させた重合体のガラス転移温度との差の絶対値が30℃以上90℃以下であるガラス転移温度を有する単独重合体を形成し得る単量体が共重合されている態様が好ましい。このような態様では、ガラス転移温度を高める、つまり樹脂の極性が上がってイソシアネート系架橋剤との反応性が高められ、耐久性をより向上させることができる。
中でも、前記差の絶対値が前記範囲にあるガラス転移温度を有する単独重合体を形成し得る単量体としては、メチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n−ブチルメタクリレートが好適である。特に好ましいアクリル系共重合体Aとしては、n−ブチルアクリレートと、メチルアクリレート及び/又はt−ブチルアクリレートとが共重合されている態様である。
【0026】
主成分として含有されるアルキル(メタ)アクリレートに加えて、これと異なる前記単量体(好ましくはメチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)を含む場合、この単量体に由来の構成単位の、アクリル系共重合体A中における比率は、5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。この含有比率が前記範囲内であると、イソシアネート系架橋剤との反応性が高められる点で有利である。
【0027】
アクリル系共重合体Aを構成するカルボキシ基を有する単量体としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましい。カルボキシ基を有する単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、共重合反応時に他の単量体との反応性が高く、未反応の単量体を低減できる点で、アクリル酸が好ましい。
【0028】
カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位の、アクリル系共重合体A中における比率は、0.5〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。カルボキシ基を有する単量体の含有比率が前記範囲内であると、ポットライフ性の確保と適度に樹脂架橋度を調整できることの観点で有利である。
【0029】
アクリル系共重合体Aの重量平均分子量は、300,000以上700,000以下である。重量平均分子量が前記範囲内であることは、偏光板用粘着剤組成物に含まれる複数の樹脂のうち、アクリル系共重合体Aが低分子量側の樹脂であることを示す。また、アクリル系共重合体Aの重量平均分子量が300,000未満と小さくなり過ぎると、剥がれ等が生じやすく、耐久性(特に大サイズ(例えば19インチ以上)用途に適用した際の耐久性)が低下する。逆に、アクリル系共重合体Aの重量平均分子量が700,000を超えて大きくなり過ぎると、分子サイズがアクリル系共重合体Bに近づき、アクリル系共重合体Aとの併用にしたことによる応力緩和が小さくなり、色ムラ(特に白抜け)の発生が抑えられない。これは、特に大サイズ(例えば19インチ以上)用途に適用した際に顕著に現れる。
【0030】
アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)としては、−50℃以上−30℃以下の範囲が好ましく、−48℃以上−40℃以下の範囲がより好ましい。TgAが−50℃以上であると、弾性率に調整することができ、耐久性、白抜け性に優れる。また、TgAが−30℃以下であると、粘性を極端に損なうことなくタック性、貼合適正に優れる。
【0031】
アクリル系共重合体Aの偏光板用粘着剤組成物中における含有量としては、後述する含有比率A/Bを満たす範囲で適宜選択することができるが、偏光板用粘着剤組成物の全固形分に対して、50質量%以上74質量%以下の範囲が好ましく、54質量%以上69質量%以下の範囲がより好ましい。アクリル系共重合体Aの含有量が前記範囲内であると、粘着剤に柔軟性が与えられ、応力緩和により色ムラ(特に白抜け)の発生が抑えられる。
【0032】
−アクリル系共重合体B−
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が1,000,000以上2,000,000以下であるアクリル系共重合体Bの少なくとも一種を含有する。このアクリル系共重合体Bは、少なくとも、アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシ基を有する単量体と、水酸基を有する単量体とを共重合させた共重合体であり、さらに他のモノマーが共重合して該モノマー由来の構成単位を更に有するものであってもよい。
【0033】
アクリル系共重合体Bを構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1〜8のアルキルアクリレートが好ましく、特にはn−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0034】
アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位の、アクリル系共重合体B中における比率は、93〜99.4質量%が好ましく、96〜99.4質量%がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、共重合体を構成する主成分として含有され、その含有比率が前記範囲内であると、最適な弾性率に調整することができ耐久性や粘着特性の点で有利である。
【0035】
アクリル系共重合体Bを構成するカルボキシ基を有する単量体としては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましい。カルボキシ基を有する単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、共重合反応時に他の単量体との反応性が高く、未反応の単量体を低減できる点で、アクリル酸が好ましい。
【0036】
カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位の、アクリル系共重合体B中における比率は、0.5〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。カルボキシ基を有する単量体の含有比率が前記範囲内であると、ポットライフ性の確保と適度に樹脂架橋度を調整することができる点で有利である。
【0037】
アクリル系共重合体Bを構成する水酸基を有する単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。水酸基を有する単量体の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、重合反応性が高く、得られた共重合体を含む組成としたときの架橋反応性に優れる点で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル部位の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、更に好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0038】
水酸基を有する単量体に由来の構成単位の、アクリル系共重合体B中における比率は、0.1〜2.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。水酸基を有する単量体の含有比率が前記範囲内であると、イソシアネート系架橋剤との反応性を確保することができ、耐久性を良好に維持するのに有利である。
【0039】
アクリル系共重合体Bの重量平均分子量は、1,000,000以上2,000,000以下である。重量平均分子量が前記範囲内であることは、偏光板用粘着剤組成物に含まれる複数の樹脂のうち、アクリル系共重合体Bが高分子量側の樹脂であることを示す。また、アクリル系共重合体Bの重量平均分子量が1,000,000未満と小さくなると、剥がれ等が生じやすく、耐久性(特に大サイズ(例えば19インチ以上)用途に適用した際の耐久性)が低下する。アクリル系共重合体Bの重量平均分子量が2,000,000を超えて大きくなり過ぎると、アクリル系共重合体Aを併用したことによる応力緩和効果が低下する。そのために、収縮に追従し難くなり、粘着剤に破断や剥離が生じやすく耐久性が悪化すると共に、特に小サイズ(例えば10インチ未満)用途に適用した際の色ムラ(特に白抜け)の発生が抑えられない。
【0040】
アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)としては、−50℃以上−40℃以下の範囲が好ましく、−50℃以上−45℃以下の範囲がより好ましい。TgBが−50℃以上であると、弾性率に調整することができ、耐久性、白抜け性に優れる。また、TgBが−40℃以下であると、粘性を極端に損なうことなくタック性、貼合適正に優れる。
【0041】
アクリル系共重合体Bの偏光板用粘着剤組成物中における含有量としては、後述する含有比率A/Bを満たす範囲で適宜選択することができるが、偏光板用粘着剤組成物の全固形分に対して、17質量%以上37質量%以下の範囲が好ましく、21質量%以上32質量%以下の範囲がより好ましい。アクリル系共重合体Bの含有量が前記範囲内であると、粘着剤中における高分子量成分の比率が保持され、耐久性が向上する。
【0042】
本発明におけるアクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bにおいて、それぞれを構成するアルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ基を有する単量体は、アクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bとで互いに異なってもよいし、同一であってもよい。
【0043】
本発明においては、前記アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA;℃)と、前記アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB;℃)とは、TgA≧TgBの関係を満たす。TgAがTgB未満であると、分子量が比較的小さいことに加え、イソシアネート系架橋剤との反応性が足りないため、発泡や剥がれ等の故障が生じやすく、耐久性に劣る。中でも、色ムラ(特に白抜け)の防止効果及び耐久性をより向上させる観点から、TgAとTgBとの差(TgA−TgB;℃)としては、1℃以上5℃以下の範囲が好ましく、1℃以上3℃以下の範囲がより好ましい。
【0044】
本明細書において、アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。下記式中のTg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、成分1、成分2、・・・・・及び成分nそれぞれの単独重合体のガラス転移温度であり、絶対温度(゜K)に換算し算出される。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの成分のモル分率である。
【0045】
[ガラス転移温度(Tg)の算出式]
【数1】
【0046】
なお、ここでいう「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」には、L.E.ニールセン著、小野木宣治訳「高分子の力学的性質」第11〜35頁に記載されている単量体のガラス転移温度が適用される。
【0047】
また、前記アクリル系共重合体Aの重量平均分子量(MwA)の、前記アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(MwB)に対する比(MwA/MwB)は、0.5以下が好ましい。MwA/MwBが0.5以下であることで、色ムラ(特に白抜け)の防止効果をより高めることができる。中でも、MwA/MwBは、前記同様の理由から、0.35以下がより好ましい。
【0048】
前記アクリル系共重合体Bに対する前記アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)としては、質量基準で60/40〜80/20の範囲が好ましい。含有比率A/Bが下限の比率以上であると、比較的分子量の小さいアクリル系共重合体Aの比率が多いため、応力緩和による色ムラ(特に白抜け)に対する改善効果が高く、しかもアクリル系共重合体A及びBのガラス転移温度がTgA≧TgBの関係を満たしていることで、アクリル系共重合体Aの比率が多いことによる耐久性の低下の懸念も少ない。また、含有比率A/Bが上限の比率以下であることで、低分子量化による応力緩和効果と、高分子量側のアクリル系共重合体Bの相対量が維持されることによる耐久性の維持とのバランスを保つことができる。
中でも、含有比率A/Bとしては、前記同様の理由から、65/35〜75/25の範囲がより好ましい。
【0049】
上記の中でも、本発明におけるアクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bとの組み合わせ態様としては、下記の(1)第1の態様〜(3)第3の態様が好ましい。即ち、
(1)第1の態様として、
アクリル系共重合体Aが、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、「前記炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートを単独重合させた重合体のガラス転移温度との差の絶対値が30℃以上90℃以下であるガラス転移温度を有する単独重合体を形成し得る単量体」に由来の構成単位と、を含み、
アクリル系共重合体Bが、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、を含む態様
(2)第2の態様として、
アクリル系共重合体Aが、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位と、メチルアクリレート及び/又はt−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、を含み、
アクリル系共重合体Bが、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、を含む態様
(3)第3の態様として、
アクリル系共重合体Aが、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、メチルアクリレート及び/又はt−ブチルアクリレートと、を含み、
アクリル系共重合体Bが、n−ブチルアクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、を含む態様
【0050】
本発明におけるアクリル系共重合体の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法を適用することができる。処理工程が比較的簡単で、かつ短時間で行なえることから、溶液重合が好ましい。
【0051】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。前記重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアゾ系化合物を用いることができる。
【0052】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量に調整することができる。
【0053】
本明細書において、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。即ち、下記(1)〜(3)にしたがって測定される。
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離シート(離型シート)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
<条件>
・GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
・カラム:TSK−GEL GMHXL(4本使用)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準試料 :標準ポリスチレン
・流速 :0.6ml/min
・カラム温度:40℃
【0054】
−イソシアネート系架橋剤−
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤の少なくとも一種を含有する。この架橋剤は、極性のある化合物であり、このような架橋剤を含む組成の場合に本発明の効果(色ムラ(特に白抜け)の防止及び耐久性の向上)がより奏される。
【0055】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート系化合物が好適に挙げられる。トリレンジイソシアネート系化合物としては、イソシアネートの2量体もしくは3量体、又はイソシアネートとトリメチロールプロパンポリオールとのアダクト体などの各種イソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物を用いることができる。
【0056】
トリレンジイソシアネート系化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートL」(商品名)などを好適に使用することができる。
【0057】
イソシアネート系架橋剤の偏光板用粘着剤組成物中における含有量は、アクリル系共重合体の合計量100質量部に対して、20質量部以下の範囲とする。イソシアネート系架橋剤の含有量が20質量部を越えると、凝集力が過多になり、高温高湿下に曝された際に偏光板(特にその保護用シートであるセルローストリアセテート(TAC))との間の接着性が低下しやすく、剥がれの発生が抑えられない。イソシアネート系架橋剤の含有量としては、8質量部以上20質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上15質量部以下の範囲がより好ましい。イソシアネート系架橋剤の含有量が8質量部以上であると、粘着剤層を貼着後の偏光板の収縮応力を抑制するのに良好な凝集力が発現し、白抜けの発生がより効果的に抑制される。
【0058】
−エポキシ系架橋剤−
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、前記イソシアネート系架橋剤と共に、エポキシ系架橋剤を含有していることが好ましい。偏光板用粘着剤組成物がエポキシ系架橋剤を含む場合、凝集力の調整が容易であり、高温高湿下に曝された場合でも、外観異常が抑えられる。
【0059】
エポキシ系架橋剤の例としては、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。
また、エポキシ系架橋剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、三菱ガス化学株式会社製の「TETRAD-X」、「TETRAD-C」(商品名)などを好適に使用することができる。
【0060】
エポキシ系架橋剤の偏光板用粘着剤組成物中における含有量としては、アクリル系共重合体Aとアクリル系共重合体Bの合計量に対して、0.001質量%以上0.1質量%以下の範囲が好ましい。エポキシ系架橋剤の含有量が前記範囲内であると、粘着剤層の凝集力を調整することができ、耐久性(耐湿熱性)での剥がれの発生を抑えることができる点で有利である。
【0061】
−シランカップリング剤−
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。偏光板用粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、偏光板が組み込まれた表示装置(例えば液晶表示装置)が高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光板又は液晶セルとの間に剥がれが起きにくい。本発明の偏光板用粘着剤組成物は、平滑なガラスに良好な接着力を示す点で好ましい。
【0062】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有シラン系化合物、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するシラン化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」(商品名)などを好適に使用することができる。
【0064】
シランカップリング剤の偏光板用粘着剤組成物中における含有量としては、アクリル系共重合体A及びアクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対して、0.01質量%以上2.0質量%以下の範囲が好ましい。シランカップリング剤の含有量が前記範囲内であると、粘着剤層の接着性をより向上させることができる。
【0065】
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、上記成分のほか、更に、紫外線吸収剤などの各種添加剤や溶剤などを適宜配合することができる。
【0066】
<粘着剤付偏光板>
本発明の粘着剤付偏光板は、少なくとも、偏光子と、既述の本発明の偏光板用粘着剤組成物の付与により偏光子上に形成された粘着剤層と、を設けて構成されている。
【0067】
偏光子としては、一般に、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用される。偏光子は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)等の保護用シートの間に保持された例えば3層構造(例えばTAC/偏光子/TAC)に構成された偏光板として用いることができる。
【0068】
例えばTAC/偏光子/TACの3層構造の偏光板の少なくとも一方面に、既述の本発明の偏光板用粘着剤組成物を付与することにより粘着剤層を設けることで、粘着剤付偏光板が作製される。この場合、偏光板上に組成物を付与してもよいが、好ましくは使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に付与する。偏光板用粘着剤組成物の付与は、液体の偏光板用粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などの塗布方法により好適に行なえる。中でも、塗布法によることが好ましい。
具体的には、本発明の偏光板用粘着剤組成物を保護用シート(剥離シート)上に塗工し、乾燥させ、保護用シート上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤付偏光板が作製される。
【0069】
保護用シート(剥離シート)上に付与された粘着剤組成物は、熱風乾燥機等を用いて70〜120℃で1〜3分程度の乾燥条件で乾燥されることが好ましい。
【0070】
更に、偏光板上に設けられた粘着層の露出面には、被着体に対する接触面を保護する観点から、露出面を保護するための保護用シート(剥離シート)を密着して設けておくことが好ましい。この保護用シートとしては、粘着層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートが好適に用いられる。表示パネルのガラス板等に貼り付けるときには、保護用シートを剥離し、露出した粘着材層の表面をガラス基板等に密着させる。
また、偏光板の粘着剤層が設けられていない側の表面(露出面)には、その表面を保護する表面保護シートを更に設けてもよい。表面保護シートには、PETフィルムの片面に粘着加工されたプロテクトフィルム等が好適に用いられる。
【0071】
粘着剤層の層厚としては、特に制限されるものではないが、乾燥後の厚みで1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下であり、更に好ましくは15μm以上30μm以下である。
【0072】
本発明の粘着剤付偏光板は、積層される液晶セルの大きさが19インチワイド(260mm×415mm)以上でも適用可能である。液晶セルの大きさが19インチワイド(260mm×415mm)以上であると、偏光板の熱や湿度の影響による膨張、収縮が大きくなる。したがって、従来の粘着剤付偏光板では、高温高湿下に曝された際に応力抑制が充分でないため、大型の表示装置(例えば液晶表示装置)の光源点灯時などにおいて、ベセル周辺に発生する「白抜け」の発生を抑制することができない。これに対して、本発明の粘着剤付偏光板では、共重合体の樹脂設計並びに架橋剤の種類及び量を適正した構成となっているため、高温高湿下に曝されても応力抑制が十分であり、19インチワイド(260mm×415mm)以上の大きさの液晶セルにも好適であり、また19インチ未満(更には10インチ未満)の小型の表示装置(液晶表示装置)に適用されても、適度な応力緩和性により白抜けの発生が抑えられる。
【0073】
<表示装置>
本発明の表示装置は、画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された既述の本発明の粘着剤付偏光板と、を設けて構成されている。
表示パネルとしては、液晶化合物が封入された液晶表示パネルや、有機エレクトロルミネッセンス表示パネルなどが挙げられる。
【0074】
本発明の表示装置の例としては、液晶表示パネルの両面に本発明の粘着剤付偏光板を、それぞれについて粘着剤層が液晶表示パネルの表面(例えばガラス基板の表面)に接触するように配置し、粘着剤層を介して液晶表示パネルの両面に偏光板を接着した構造(偏光板/粘着材層/液晶表示パネル/粘着材層/偏光板の構造)を備えた液晶表示装置を挙げることができる。
【0075】
以下、本発明の偏光板用粘着剤組成物、粘着剤付偏光板及び表示装置、並びにこれらの好ましい態様について示す。
<1> アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、及びカルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が300,000以上700,000以下であるアクリル系共重合体Aと、アルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位、カルボキシ基を有する単量体に由来の構成単位、及び水酸基を有する単量体に由来の構成単位を含み、重量平均分子量が1,000,000以上2,000,000以下であるアクリル系共重合体Bと、前記アクリル系共重合体A及び前記アクリル系共重合体Bの合計量100質量部に対する含有量が20質量部以下の範囲であるイソシアネート系架橋剤と、を含有し、前記アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(TgA)が、前記アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)以上である、偏光板用粘着剤組成物である。
【0076】
<2> 前記アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(TgB)が、−50℃以上−40℃以下である前記<1>に記載の偏光板用粘着剤組成物である。
<3> 前記アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(MwB)に対する前記アクリル系共重合体Aの重量平均分子量(MwA)の比(MwA/MwB)が、0.5以下である前記<1>又は前記<2>に記載の偏光板用粘着剤組成物である。
<4> 前記アクリル系共重合体Bに対する前記アクリル系共重合体Aの含有比率(A/B)が、質量基準で60/40〜80/20である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物である。
【0077】
<5> 前記アクリル系共重合体Aは、炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、前記炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートを単独重合させた重合体のガラス転移温度との差の絶対値が30℃以上90℃以下であるガラス転移温度を有する単独重合体を形成し得る単量体に由来の構成単位とを含み、
前記アクリル系共重合体Bは、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来の構成単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来の構成単位とを含む、前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物である。
【0078】
<6> 偏光子と、前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の偏光板用粘着剤組成物の付与により前記偏光子上に形成された粘着剤層とを有する粘着剤付偏光板である。
<7> 画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された前記<6>に記載の粘着剤付偏光板とを備えた表示装置である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0080】
(製造例A1)
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)79.0質量部、メチルアクリレート(MA)20.0質量部、アクリル酸(AA)1.0質量部、酢酸エチル(EAc)110質量部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.1質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、得られた混合物を撹拌しながら反応器内の混合物を65℃に昇温し、8時間保持して重合反応を行なった。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して固形分37.0質量%に調整した。このようにして、BA/MA/AA共重合体A1の溶液(アクリル系共重合体A)を得た。
【0081】
得られたBA/MA/AA共重合体A1について、以下に示す方法で重量平均分子量(Mw)の測定及びガラス転移温度(Tg)を算出した。結果は、下記表1に示す。
重量平均分子量は、既述の方法に従って、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により、TSK−GEL GMHXL(東ソー製のスチレン系ポリマー充填剤)をカラムとして測定し、ポリスチレン換算して求めた。
Tgは、既述のガラス転移温度(Tg)の算出式を用いて算出したモル平均ガラス転移温度である。
【0082】
(製造例A2〜A11)
製造例A1において、BA/MA/AA共重合体A1の合成に用いたn−ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、及びアクリル酸(AA)の比率を、下記表1に示すように変更すると共に、溶剤量や触媒量の調整により下記表1に示すように分子量を調節したこと以外は、製造例A1と同様にして、BA/MA/AA共重合体A2〜A11の溶液(アクリル系共重合体A)を得た。
また、各共重合体について、製造例A1の共重合体A1と同様にして、Mwの測定及びTgの算出を行なった。結果は、下記表1に示す。
【0083】
(製造例A12〜A14)
製造例A1において、合成に用いたn−ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、及びアクリル酸(AA)を、下記表2に示す構成モノマーに変更して合成を行ない、製造例A1と同様の方法により共重合体A12〜A11の溶液(アクリル系共重合体A)を得た。
また、各共重合体について、製造例A1の共重合体A1と同様にして、Mwの測定及びTgの算出を行なった。結果は、下記表2に示す。
【0084】
(製造例B1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)89.0質量部、メチルアクリレート(MA)9.5質量部、アクリル酸(AA)1.0質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.5質量部、酢酸エチル(EAc)90質量部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.03質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、得られた混合物を撹拌しながら反応器内の混合物を65℃に昇温し、8時間保持して重合反応を行なった。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して固形分17.0質量%に調整した。このようにして、BA/MA/AA/2HEA共重合体B1の溶液(アクリル系共重合体B)を得た。
また、共重合体B1について、製造例A1の共重合体A1と同様にして、Mwの測定及びTgの算出を行なった。結果は、下記表1に示す。
【0085】
(製造例B2〜B5、B7〜B9)
製造例B1において、BA/MA/AA/2HEA共重合体B1の合成に用いたn−ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、アクリル酸(AA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)の比率を、下記表1に示すように変更すると共に、溶剤量や触媒量の調整により下記表1に示すように分子量を調節したこと以外は、製造例B1と同様にして、BA/MA/AA/2HEA共重合体B2〜B5、B7〜B9の溶液(アクリル系共重合体B)を得た。
また、各共重合体について、製造例B1の共重合体B1と同様にして、Mwの測定及びTgの算出を行なった。結果は、下記表1に示す。
【0086】
(製造例B6)
製造例B1において、BA/MA/AA/2HEA共重合体B1の合成に用いたn−ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)の比率を下記表1に示すように変更し、メチルアクリレート(MA)9.5部を2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)15部に代えると共に、溶剤量や触媒量の調整により下記表1に示すように分子量を調節したこと以外は、製造例B1と同様にして、BA/2EHA/AA/2HEA共重合体B6の溶液(アクリル系共重合体B)を得た。
また、各共重合体について、製造例B1の共重合体B1と同様にして、Mwの測定及びTgの算出を行なった。結果は、下記表1に示す。
【0087】
(製造例B10〜B13)
製造例B1において、合成に用いたn−ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、アクリル酸(AA)、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を、下記表2に示す構成モノマーに変更して合成を行ない、製造例B1と同様の方法により共重合体B10〜B13の溶液(アクリル系共重合体B)を得た。
また、各共重合体について、製造例B1の共重合体B1と同様にして、Mwの測定及びTgの算出を行なった。結果は、下記表2に示す。
【0088】
(実施例1)
−粘着剤組成物の調製−
アクリル系共重合体Aとして、前記製造例A1で得たBA/MA/AA共重合体の溶液189.2質量部(BA/MA/AA共重合体の固形分:70.0質量部)と、アクリル系共重合体Bとして、前記製造例B1で得たBA/MA/AA/2HEA共重合体B1の溶液176.5質量部(BA/MA/AA/2HEA共重合体の固形分:30.0質量部)と、イソシアネート化合物としてコロネートL20質量部(日本ポリウレタン工業杜製のイソシアネート系化合物、有効成分:15質量部)と、エポキシ化合物としてTETRAD−X0.02質量部(三菱瓦斯化学杜製のエポキシ化合物、有効成分:0.02質量部)と、シラン化合物(SC剤)としてKBM−403(信越化学工業杜製のシランカップリング剤、有効成分:0.1質量部)0.1質量部とを充分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。
このとき、BA/MA/AA共重合体A1(アクリル系共重合体A)の重量平均分子量(MwA)とBA/MA/AA/2HEA共重合体(アクリル系共重合体B)の重量平均分子量(MwB)との分子量比(MwA/MwB)は0.33であり、Tgについては、アクリル共重合体Aの方がアクリル系共重合体Bよりも高くなっている。
【0089】
−光学フィルムサンプルの作製−
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルムの離型剤処理面に、乾燥後の塗工量が25g/cm
2となるように、粘着剤組成物を塗布した。次に、これを熱風循環式乾燥機を用いて100℃で90秒間乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしてTACフィルム/PVAフィルム/TACフィルムの積層構造を有するもの;約190μm〕の裏面と前記粘着剤層の表面とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、65%RHの環境条件下で10日間養生させ、光学フィルムサンプルとして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光ベースフィルムの積層構造を有する偏光フィルムを作製した。
【0090】
−評価−
上記で作製した偏光フィルムを用い、下記の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0091】
(1)タック性
JIS Z 0237に準じた方法により、傾斜式ボールタックの値を測定(傾斜板の角度=30°)し、停止したボールナンバーにより下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:ボールナンバーが7以上である。
B:ボールナンバーが5〜6である。
C:ボールナンバーが3〜4である。
D:ボールナンバーが3未満である。
【0092】
(2)耐久性
(2−1)4.3インチ(Dry,Wet)
前記「光学フィルムサンプルの作製」において作製した偏光フィルムを、吸収軸に対して長辺が45°になるようにカットした54mm×96mm(長辺)の試験片(4.3インチ)を用意し、この試験片から剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着材層の表面を、0.7mmの無アルカリガラス板(#1737、コーニング社製)の片面に密着させることにより、試験片をガラス板上に重ね、ラミネーターを用いて貼付して積層体とした。次に、この積層体にオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した。その後、高温低湿条件のDry環境(80℃、0%RH)、及び高温高湿条件のWET環境(60℃、90%RH)にそれぞれ500時間放置した。放置時間が経過した後、発泡、剥れの状態を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:発泡、剥れが全くみられなかった。
B:発泡、剥れが殆どみられなかった。
C:発泡、剥れが若干みられた。
D:発泡、剥れが顕著にみられた。
【0093】
(2−2)19インチ(Dry,Wet)
前記「(2−1)4.3インチ(Dry,Wet)」において、偏光フィルムをカットして得られる試験片のサイズを240mm×427mm(19インチ)に変更したこと以外は、「(2)耐久性(4.3インチ:Dry,Wet)」と同様の方法にて評価した。
【0094】
(3)色ムラ
(3−1)白抜け現象(4.3インチ)
前記「(2−1)4.3インチ(Dry,Wet)」におけるサイズと同サイズにカットした偏光フィルムの試験片を2枚用意し、0.7mmの無アルカリガラス板(#1737、コーニング社製)の両面に偏光軸が互いに直交するように貼付して、試験サンプルを作製した。次に、この試験サンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/m
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、ドライ環境(70℃、0%RH)下に500時間放置した。放置後、23℃、50%RHの条件下でそれぞれ液晶モニターのバックライト上に置き、白抜けの状態を目視で観察した。
<評価基準>
A:白抜けがまったく認められなかった。
B:白抜けがほとんど認められなかった。
C:白抜けが若干認められた。
D:白抜けが大きく認められた。
【0095】
(3−2)白抜け現象(7インチ)
前記「(3−1)白抜け現象(4.3インチ)」において、偏光フィルムをカットして得られる試験片のサイズを88mm×156mm(7.0インチ)に変更したこと以外は、「(3−1)白抜け現象(4.3インチ)」と同様の方法にて評価した。
【0096】
(3−3)白抜け現象(19インチ)
前記「(3−1)白抜け現象(4.3インチ)」において、偏光フィルムをカットして得られる試験片のサイズを240mm×427mm(19インチ)に変更したこと以外は、「(3−1)白抜け現象(4.3インチ)」と同様の方法にて評価した。
【0097】
(実施例2〜21、比較例1〜6)
実施例1において、アクリル系共重合体のモノマー組成や物性(Tg、Mw)、重量平均分子量、アクリル系共重合体A、Bの含有比率、架橋剤量を、下記表1〜表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、偏光フィルムを作製すると共に、評価を行なった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
前記表1〜表2に示されるように、実施例では、DRY環境及びWET環境に関わらず、発泡や剥がれの発生が抑えられており、良好な耐久性が得られた。また、サイズの大小に関わらず、白抜けの発生を効果的に抑制することができた。また、貼り合わせる際に生じやすい泡の巻き込みもなく、良好なタック性を示した。
【0101】
日本出願2012−128291の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。