(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002247
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】ロータリーヂーゼルエンジンにおける燃料反応性の階層化
(51)【国際特許分類】
F02B 55/14 20060101AFI20160923BHJP
F02B 53/00 20060101ALI20160923BHJP
F02B 53/02 20060101ALI20160923BHJP
F02B 53/10 20060101ALI20160923BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20160923BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20160923BHJP
F02D 41/38 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
F02B55/14 E
F02B53/00 J
F02B53/02 C
F02B53/10 G
F02B53/10 H
F02D19/08 Z
F02D41/02 375
F02D41/02 380F
F02D41/38 B
【請求項の数】25
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-554742(P2014-554742)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-508475(P2015-508475A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】US2013021875
(87)【国際公開番号】WO2013112347
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年3月31日
(31)【優先権主張番号】13/357,108
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506097988
【氏名又は名称】ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】レイツ,ロルフ,デニーズ
(72)【発明者】
【氏名】コジョン,セイジ,エル
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−032602(JP,U)
【文献】
特開昭51−010210(JP,A)
【文献】
特開平04−031630(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0192367(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/092365(WO,A1)
【文献】
米国特許第03310042(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0074470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 53/00,55/00
F02D 19/08
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I. ハウジングと、II. ロータを備えるロータリーエンジンの圧縮点火方法であって、
前記ロータは、
A. 前記ハウジング内で回転し、
B. 周囲に2以上のロータ面を持ち、前記ロータの回転の間、各ロータ面と前記ハウジングの間でチャンバーが画成され、
前記方法は、
a. 第1の時点で前記チャンバーの1つに第1の反応性を有する第1燃料チャージを供給するステップと、
b. その後、前記燃料チャンバーが第1燃料チャージを保持している間に前記チャンバーに、前記第1燃料チャージの反応性と異なる第2の反応性を有する第2燃料チャージを供給するステップ、
を備える、方法。
【請求項2】
前記第1燃料チャージ及び前記第2燃料チャージのうちの反応性が高い1つの燃料チャージによって燃焼が開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料チャージは、前記チャンバーが最小のサイズになったとき又はその後に、シリンダーのピーク圧力が得られるように、前記チャンバに供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料チャージは、
a. 前記チャンバーが最小のサイズとなったとき、又は
b. その後30°のロータの回転以内に、
シリンダーのピーク圧力が得られるように、前記チャンバーに供給される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
最高の燃料反応性領域が最低の燃料反応性領域と離れるように、前記チャンバー内で燃料反応性が段階的に変化する分布が得られるように、前記第2燃料チャージが前記チャンバーに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1燃料チャージは前記第2燃料チャージより低い反応性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
a. 前記第1燃料チャージが、
(1)前記チャンバーへの吸気口が開となったと時点と、(2)前記チャンバーへの吸気口が閉となった後、90°のロータの回転以内の間に、前記チャンバーに供給され、
b. 前記第2燃料チャージが、(1)前記チャンバーへの吸気口が閉となった時点と(2)前記チャンバーが最小のサイズとなる前のロータの回転が90°以内の間に、前記チャンバーに供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1燃料チャージは前記第2燃料チャージより低い反応性を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
a. 前記第1燃料チャージは、前記ハウジングの第1噴射器によって前記チャンバーに供給され、
b. 前記第2燃料チャージは、前記第1噴射器から離れた位置にある第2噴射器によって前記チャンバーに供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a. 前記第1燃料チャージは、前記チャンバーに開口する吸気口を介して前記チャンバーに供給され、
b. 前記第2燃料チャージは、前記ハウジング内の第2噴射器によって前記チャンバーに供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
a. 前記第1燃料チャージ及び前記第2燃料チャージの1つは第1燃料を含み、
b. 前記第1燃料チャージ及び前記第2燃料チャージの他方はディーゼル燃料を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a. 前記第1燃料チャージ及び前記第2燃料チャージの1つはガソリンを含み、
b. 前記第1燃料チャージ及び前記第2燃料チャージの他方は前記第1燃料と添加剤の混合物を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
a. 前記第1燃料チャージは、前記チャンバーへ第1タンクから供給され、
b. 前記第2燃料チャージは、前記チャンバーへ、(1)第2タンクのみから、又は(2)前記第1タンクからの材料と混合して供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
I. 周囲に2以上のロータ面を持つロータと、
II. 内部で前記ロータが回転するハウジングであり、前記ロータが前記ハウジング内で回転するとき、
A. 各ロータ面と前記ハウジングの間でチャンバーが画成され、
B. 各チャンバーはサイズが変化する、
ハウジングと、
III. 第1の反応性を有する燃料を収容する第1タンクと、
IV. 第2の反応性を有する材料を収容する第2タンク、
を備えるロータリーエンジンの圧縮点火燃焼方法であって、
前記方法は、
a. 第1の燃料チャージを第1の時点において前記第1タンクから前記チャンバーに供給するステップと、
b. 第2の燃料チャージを第1燃料チャージが前記チャンバー内に存在する第2の時点において前記チャンバーに供給するするステップであり、前記第2燃料チャージは前記第2タンクのみから、又は前記第1タンクからの燃料と組み合わせた材料を含むものである、ステップ、
を含む、方法。
【請求項15】
前記チャンバー内での燃焼は、前記第1及び第2燃料チャージのうちのより高い反応性を持つ1つの燃料チャージによって開始される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a.前記第1及び第2の燃料チャージのうちの1つはガソリンを含み、
b. 前記第1及び第2の燃料チャージの他方はディーゼル燃料を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
a. 前記第1及び第2の燃料チャージの1つは第1燃料を含み、
b. 前記第1及び第2の燃料チャージの他方は前記第1燃料と添加剤の混合物を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2の燃料チャージを受け取る前記チャンバーは、
a. (1)前記チャンバーへの吸気口の開口の時点と、(2)前記チャンバーへの吸気口が閉じられた後、前記ロータの回転が90°以内の間に、前記第1及び第2の燃料チャージのうちのより低い反応性を有する燃料チャージを受け入れ、
b. (1)前記チャンバーへの吸気口を閉じた時点と、(2)前記チャンバーが最小のサイズとなる前の前記ロータの回転が90°以内の間に、前記第1及び第2の燃料チャージのうちのより高い反応性を有する燃料チャージを受け入れる、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
a. 前記第1及び第2の燃料チャージのうちのより低い反応性を有する1つの燃料チャージは、前記チャンバー内へハウジング内の第1噴射器により噴射され、
b. 前記第1及び第2の燃料チャージのうちのより高い反応性を有する1つの燃料チャージは、前記ハウジング内の第2噴射器によって前記チャンバー内へ噴射され、前記第2噴射器は、前記ロータが前記ハウジング内で回転するとき、前記第1噴射器が、前記第2噴射器より前に前記チャンバーへ露出されるように、前記ハウジング内に位置している、
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
a. 複数のロータ面により画成される周囲を持つロータを有するロータリーエンジンであって、前記ロータはハウジング内で回転可能とされ、それにより各ロータ面と前記ハウジングとの間でチャンバーが画成され、各チャンバーは前記ハウジング内でロータが回転するに伴い、サイズが変化する、ロータリーエンジンと;
b. 第1の反応性を有する材料を収容する第1タンクと;
c. 第2の反応性を有する材料を収容する第2タンクと;
を含む圧縮点火燃焼システムであって:
前記燃焼システムは、
I. 前記第1タンクからの燃料を含む第1燃料チャージと、
II. 前記第2タンクからのみの材料又は前記第1タンクとからの燃料と組み合わせた材料を含む第2燃料チャージ、
の双方をチャンバーの1つに供給するように構成された、
圧縮点火燃焼システム。
【請求項21】
前記第1及び第2燃料チャージを受け入れるチャンバーはスパークプラグ又は他のスパーク源を備えず、より高い反応性を有する燃料チャージが前記チャンバー内で燃焼を開始する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
a. 前記第1及び第2タンクの1つはガソリンを収容し、
b. 前記第1及び第2タンクの他方はディーゼル燃料を収容する、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
a. 前記第1及び第2タンクの1つは第1燃料を収容し、
b. 前記第1及び第2タンクの他方は前記第1燃料と添加剤の混合物を収容する、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
a. 前記ハウジングは前記ロータに隣接して開口する吸気口を含み、
b. 前記燃焼システムは、前記チャンバーの1つに、
(1)(a) 前記吸気口が前記チャンバーへ開口したとき、及び (b) 前記吸気口が前記チャンバーに対して閉じた後、ロータの90°以内の回転、の間の時点において、前記第1及び第2の燃料チャージのより低い反応性を有する燃料チャージの1つを供給し、
(2)(a) 前記チャンバーに対する吸気口が閉じた後、及び (b) 前記チャンバーが最小のサイズとなる前で、ロータの90°以内の回転、の間の時点において、第1及び第2の燃料チャージのより高い反応性を有する燃料チャージの1つを供給するように構成される、
請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
a. 前記ハウジングに第1及び第2噴射器を更に含み、前記ロータが前記ハウジング内で回転するとき、前記第1噴射器が前記第2噴射器より前に前記チャンバーに露出するように、前記第1及び第2噴射器が前記ハウジングに沿って間隔を置いて配置され、
b. (1)前記第1噴射器により低い反応性を有する燃料チャージを噴射させ、
(2)続いて、前記第2噴射器により高い反応性を有する燃料チャージを噴射させるように構成される、
請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文献は「ロータリーエンジン(例えば、ワンケル ロータリーエンジン)の効率の改良に関し、特に、燃料反応性の階層化(即ち、エンジン燃焼室内の燃料反応性の空間的変化)を使用するロータリーエンジンの効率の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の企業等はエンジンの効率と排気ガスの低減を改善するためのに努力しているため、興味がロータリーエンジン、即ち、ロータ(ロータリーピストン)が、ロータとハウジングの間に形成され、ロータの回転に伴ってハウジングの回りを移動する1又は複数の燃焼室を持つハウジング内で回転する内燃エンジンに向けられている。多分、最もよく知られたロータリーエンジンのタイプはワンケルエンジンであり、ここでは三角形のようなロータがやや長円形の内部を持つハウジング内で偏心的に回転する(即ち、回転軸がその幾何学的軸と一致していない)。(他のタイプのロータとハウジングの形状もまた可能であるが、例えば、「四つ葉」型の内部を持つハウジング内の略四角形のロータ、ワンケル他の米国特許第2,988,065号参照)。ロータリーエンジンは、同一の出力を持つ往復ピストンエンジンと比較して比較的コンパクトで軽量であるため興味あるものであり、ロータリーエンジンをハイブリッド車(駆動力を与えるために内燃エンジンを他のエネルギー源、典型的には電気電池、と組み合わせた自動車)に使用できる魅力的な可能性のあるものとしている。特に、ロータリーエンジンは、電池動力電気自動車に使用してバッテリーが低下し始めたとき距離を伸ばすことを保証するように思われる。しかしながら、ロータリーエンジンは燃料効率と汚染物質排出の欠点を持ち、これらは広範囲の採用を妨げてきた。:燃焼室の比較的大きい表面積、及びエンジン室間のシール不良から生ずる圧力損失、エンジン出力を妨げる要因;燃焼室の細長の形状から生じる問題、フレームクエンチング(即ち、不良の燃焼伝播)及び長くなる燃焼期間は、更なる効率の妨げを生むと共に、高い煤煙排ガス(不燃焼又は部分燃焼の炭化水素)を生じ原因となる。
【0003】
より大きなエンジン効率を達成することについての関心は、また、ディーゼル(圧縮点火)エンジンを改良する努力へとつながってきた。(内燃機関だけにに詳しい読者にとって、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの主たる相違点は、燃焼が開始される方法にある。ガソリンエンジンは、また、一般にスパーク点火、又は“ST”エンジンと言われ、比較的燃料に富む空気と燃料混合体を、エンジンシリンダーに供給し、スパークにより混合体を点火してシリンダーの外方に向けてピストンを駆動して仕事を発生する。ディーゼルエンジンにおいては、圧縮点火エンジンとしても知られているように、ピストンがエンジンシリンダー内で空気を圧縮するにつれて燃料がシリンダー内に導入され、次に燃料が高圧に圧縮圧力/高温の下で点火し、ピストンをシリンダーから外方に向けて駆動して仕事を行う。)ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べてより高い効率となり易く、対燃料消費の出力は見事に高いものとなるが、不幸にして、汚染物質の排出、特に、煤塵と酸化窒素(NO
X)の排出が高くなる傾向にある。煤は通常は不完全燃焼に関係するものであり、したがって、燃焼温度を高くすることにより減少でき、又は、煤塵粒子の酸化を促進することにより減少することができる。NO
Xは、酸性雨として悪影響を及ぼすものであるが、高温のエンジンの状態に関係するものであり、したがって、排ガス再循環(EGR)のうような手段の使用により減少することができ、このEGRでは、エンジンの吸入空気が比較的不活性な排ガスにより希釈され(通常は排ガスを冷却した後)、これにより、燃焼室内の酸素を減らし、燃焼温度を最大値を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不幸にして、エンジンで煤の生成を減らす手段はNO
Xを増加し易くなり、また、NO
Xを減らす手段は煤塵の生成を増やす傾向にあり、この結果はしばしば“煤塵-NO
X トレードオフ”と称される。NO
Xと煤塵は、また、エンジンを出た後に(例えば、排ガス流内において)処理することができるが、このような後処理の方法は設備とその維持に費用がかかる傾向がある。一例として、排ガス流は触媒及び/又は尿素の注入、又は他のNO
Xの排出を減少/反応させる物質により処理する、及び/又は燃料を定期的に注入し、排ガス中に点火して微粒子トラップ(燃料効率を悪くする)内に集められた煤塵を焼尽することができる。これらのアプローチはかなりの複雑さを必要とするため、ディーゼルエンジンを使用するハイブリッド車は高価になる傾向にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願書面の終わりに記載したクレームにより確定される本発明は、少なくとも部分的に上述の問題を解決するエンジンとエンジン燃焼方法に向けられている。特に、本発明は、高い効率と低い排出ガスを持つロータリーディーゼル(圧縮点火)エンジンを包含する。ロータリーディーゼルエンジンが長く存在している間、前述のロータリー及びディーゼルエンジンの不利な点を被ってきているにも関わらず、これらの技術の組み合わせから得られる利点が殆ど得られていない。その結果、ロータリーディーゼルエンジンは特別の用途、例えば、飛行機のエンジン、に限られてきた。しかしながら、本発明は、自動車や他の通常の用途、特に、ハイブリッド車、に適用可能な高い効率と低い排気物を備えるロータリーディーゼルエンジンを可能にするものである。
【0006】
本発明の実例が
図1−4に示されており、内部でロータ104が回転するハウジング102を持つロータリーエンジン100を示している。ロータ104はその周囲にロータ面を有し(図においては、そのうちの1つのみに符号106が付されている)、ロータ104が回転するとき、チャンバー108が各ロータ面106とハウジング102の間で画成される(図面において、チャンバー108のうちの1つのみが符号が付されている)。 各チャンバ108は、回転の間、吸気行程(
図1のチャンバー108で示される)、圧縮行程(
図2のチャンバー108で示される)、出力(膨張)行程(
図3のチャンバー108で示される)及び排気行程(
図4のチャンバー108で示される)を実行するにつれて、サイズが変化する。第1及び第2の噴射器110,112が、吸気行程(
図1)及び/又は圧縮行程(
図2)の間にチャンバー108内に燃料チャージを噴射するために起動される。エンジン100はディーゼル(圧縮・点火)モードで作動し、ここでは、
図1の吸気行程において108が付されたチャンバーが吸気ポート114から空気を引き込む、又は空気が供給されると同時に吸気行程の間に噴射された燃料チャージを受け入れ;次に、108の付されたチャンバー内の空気と噴射された燃料は圧縮行程の間に圧縮され(以前の吸気ストロークの間及び/又は現行の圧縮行程の間に燃料が噴射される)、圧縮が進むに従いチャンバー108内の温度と圧力は増加して空気/燃料混合体は自然発火し(
図2);ラベル108のチャンバー内の燃焼混合体は膨張し(
図3)、動力出力を与え;次に、排気行程(
図4)の間、燃焼した副生成物は排気ポート116から放出される。
【0007】
特に
図1を参照すると、例示のエンジン100は、第1の反応性を有する第1物質(例えば、ガソリン)を収容する第1タンク118及び第1の反応性とは異なる第2の反応性を有する第2物質(例えば、ディージゼル燃料又は反応性改変添加物)を収容する第2タンク120を有している点ににおいて従来のロータリーディーゼルエンジンとはより際だって変わっている。これらのタンクは
図1に概略的に示されており、他の図面からは簡略化のために省いている。(反応性は、ディーゼル運転条件下、即ち、高圧、高温下において燃料の自然発火のし易さに関連する特性である。:高い反応性を持つ燃料は、低い反応性を持つ燃料より、高温・高圧下においてより自然発火し易い傾向を持つ。したがって、反応性は、一般には、燃料セタン価、又は燃料セタン価の逆数に対応する。)吸気及び/又は圧縮行程の間(それぞれ、
図1A、1B)、第1の燃料チャージがチャンバー108内に供給され、次に続いて第2燃料チャージがチャンバー108に供給され、これらの燃料チャージは異なる反応性を有している。燃料チャージの一方は、単純にタンクのうちの1つからの材料を含むものであり、例えば、第1噴射器110は、第1タンク118からのガソリンから成る燃料チャージを噴射することができる。他の燃料チャージは、したがって、他のタンクからの物質を含む、例えば、第2噴射器112は第2タンク120からのディーゼルから成る燃料チャージを噴射する、或いは、その替わりに、両方のタンクからの物質を含む、例えば、第1タンク118からのガソリンを(
図1の点線で示される供給ライン122により供給される)第2タンク120からの反応性改変添加剤を混合して供給することができる。
【0008】
噴射する燃料チャージのタイミングと量は、 チャンバー108内において、圧縮行程の間(
図2)、最も高い燃料反応性の領域が最も低い反応性の領域から離れるようにして、燃料反応性の階層化された分布がチャンバー108内で得られるようにされる。圧縮行程の間(
図2)及び/又は膨張行程の間(
図3)、燃料チャージはチャンバー108内で点火するため、燃焼が高い反応性の領域で始まり、そして体積エネルギー放出及び/又はフレーム伝播のようなメカニズムを介して低い反応性領域に広がっていく。燃料チャージのタイミング、量及び反応性を適当に調整することにより、燃焼が所望の時点で開始し、所望の速度(最大の熱出力の結果をもたらす制御された熱放出が得られる時間と速度)で進行するように調整され、一方において、(NOx生成を増加させ、燃料効率を低下させる)急速な圧力上昇と高いチャンバー(108)温度を抑制し、また、煤塵の生成を抑制する(チャンバー108内での注入された燃料の全てが少なくとも実質的に完全に消費されることに起因する)。 換言すると、チャンバー108内における反応性分布の調整は、燃焼プロセスの性質の調整を可能にする。反応性の階層化/段階的変化を低くすること(燃焼チャンバー108内における反応性がより均一となる)は、チャンバー108内における各位置が略等しい最初の発火の機会を持ち、最初に発火しない位置は急速にその隣接するものによって発火されるため、より高い燃焼率をもたらす傾向を与える。それとは逆に、反応性の階層化/段階的変化が大きくなると、より低い燃焼率をもたらす傾向を与える。
【0009】
好ましくは、第1燃料チャージは、第2燃料チャージより低い反応性を有し、吸気行程(
図1)及び/又は圧縮行程(
図2)の間、十分に早い時期に噴射され、最初の燃料チャージは、圧縮行程(
図2)の主たる期間、チャンバー108内で空気と高い割合で予備混合される。例えば、第1燃料チャージは
図1の吸気行程の開始の後(即ち、吸気口114がチャンバー108内に向けて開口するとき)で、且つチャンバー108への吸気口114が閉じられた後、ロータ104の回転角が略90°以内の間にチャンバー108内に導入される。より高い反応性の第2燃料チャージが、次に、チャンバー108内で十分に混合された低反応性の空気-燃料混合マトリックス内に噴射されて、高反応性領域を生成し、そこで燃焼が始まる。第2燃料チャージは、圧縮行程の略、最初の半分の間、例えば、チャンバー108への吸気口114の閉鎖と“上死点”即ち、圧縮行程(
図2)の終端でチャンバー108が最小のサイズとなって出力行程(
図3)が開始する時点より前のロータ104の約90°の回転の間に噴射される。
最も好ましくは、燃料チャージは、上死点においてチャンバー圧力の最高点が得られるように、又は、その後のロータ104の30°の回転以内で供給され、最大の出力を出せるようにする。
【0010】
第1及び第2燃料チャージ用の第1及び第2噴射器110,112は、
図1に示されるようにチャンバー108の内側周囲の周りに間隔を置いて設けることができ、ここでは第1噴射器110は、ロータ104がハウジング102内で回転するとき、第2噴射器の前でチャンバーに露出するようにされる。しかしながら、第1噴射器110はチャンバー108内に置かれる必要はなく。例えば、吸気口114の上流に位置するポート噴射器124(例えば、入口114内における吸気マニホルド及び/又はそこから延びる吸気ランナー)として設けることができる。それに替えて、第1及び第2噴射器110,112は同一の噴射器とする、即ち、第1及び第2燃料チャージは同じ噴射器により供給されるよにすることができる。 階層化された反応性と制御される燃焼の同一の目的が達成される限り、第1燃料チャージと同じ又は異なる反応性を持つ燃料チャージで追加的な燃料チャージを噴射することの可能である(これらの追加的燃料チャージは同じ又は異なる噴射器による)。このような追加的な燃料チャージは、第1及び第2噴射器110,112のいずれか、又は双方により、或いは、1又は複数の追加的な噴射器(図示せず)により、噴射することが可能である。
【0011】
燃料チャージは、例えば、第1タンク118(
図1)からのガソリン(低反応性を持つ)と、第2タンク120からのディーゼル燃料(高反応性を持つ)の個別のタンクからの通常の燃料とすることができる。これに替えて、或いは、追加して、1つのタンクからの燃料の反応性を適当な反応性改変剤を添加して 高低の間のレベルに改変することができる。一例として、第1噴射器110は、第1タンク118から(供給ライン122を経由して)単にガソリン又はディーゼルを含む最初の低反応性燃料チャージをチャンバー108に供給し、第2噴射器112は、第1タンク118からのガソリン又はディーゼルに第2タンク120からの反応性増強剤、例えば、ジ-第3過酸化ブチル(Di-Tertiary Butyl Peroxide(DTBP))、2-エチル硝酸ヘキシル(2-ethyl hexyl nitrate)、又は他のセタン改良剤を少量加えたもを供給することができる。このような装置は、多くの反応性改変剤は非常に希釈された量だけ必要となるだけであり、したがって、反応性改変剤を収容する小さいタンクが通常の燃料タンクと共に、また、燃料ライン(又は低反応性燃料ラインから分離した高反応性燃料ライン)に所望の量の反応性改変剤を供給する計測装置と共に設けられことがでえきるため、非常に有用性がある。使用できる他の装置は、同じ燃料で満たされるタンク118,120を設け、所望の反応性を達成するため、1又は複数の反応性改変剤を手動又は自動的に1又は複数のタンクに添加するものである。更なる本発明の利点、特徴及び目的は、図面に関連した以下の残りの記載から明かになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一例のロータリーエンジン100の吸気行程の概略的断面図であり、開いている吸気口114から空気をチャンバー108に引き込むためにロータ104が回転している。本発明の好ましい例では、噴射器124及び/又は110の1つは、好ましくは、1又は複数の低反応性燃料チャージをチャンバー108内に、燃料チャージがチャンバー108内で十分に拡散するように吸気行程の十分に早い時期に噴射し、高反応性燃料チャージが後に噴射器112により噴射され、吸気行程の後半部分において、又は圧縮行程(
図2)において燃焼が始まるチャンバー108内における1又は複数の領域を与える。
【
図2】
図1の噴射器124,110及び112と関連するタンク118,120及び供給ラインを除いて示される
図1のエンジンの概略図であり、エンジン100は圧縮行程にあり、チャンバー108内の空気と燃料が圧縮され、それにより燃焼の条件を生じさせている。
【
図3】膨張(出力)行程における
図1のエンジン100の概略図であり、空気と燃料が燃焼するにつれてチャンバー108内の容積が膨張し、ロータ104に動力を与える。
【
図4】排気行程における
図1のエンジン100の概略図であり、チャンバー108内の燃焼物質が開口した排気口116から排出される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の説明を更に進展させると、本発明は、ロータリーエンジンの利点、例えば、低振動で高回転出力で、且つコンパクト、軽量のエンジンをもたらし、一方、少なくとも、低効率で高い排気物のような不利な点を減らすものである。本発明に使用できるコンパクトなサイズ、低ノイズ、及びロータリーエンジンの簡略構造により、本発明は、ハイブリッド車に、例えば、電池が低充電状態となるとき、及び/又は電池を再充電するときに好適なものとなる。本発明は、また、内燃エンジンが使用される他の用途、例えば、通常の車の主たる動力源、及び/又は発電機、芝刈り機、チェーンソウなどにも好適なものとなる。
【0014】
上述のように、本発明は、チャンバー108に、チャンバー108が少なくとも実質的に均質な低反応度混合体を持つような、チャージマトリックス、タイミング、量及び他の特性(例。スプレーパターン及び浸透度))を与える燃料チャージを供給すること、また、その後の1又は複数の高反応度のチャージが最大の出力を出すための時機を調整された仕事放出を持つ制御された燃焼をもたらすと共に、望ましくない排出物とエンジン効率を制御するような低い温度と完全な燃焼をもたらすような燃料チャージの供給に大きく依存する。この手法は、反応性-制御圧縮着火(RCCI)として知られているが、先行特許出願(米国特許出願12/793,808 及び13/077,378)に記載されており、これらは、それらの内容が本出願書類の一部とみなされるように、ここに参照として組み入れられる)の発明者によって通常のディーゼルエンジン用として記載されており、これらの出願のコンセプトは本発明においても実施されている。最大の仕事出力を出すために、燃料チャージは、上死点又は上死点の後、最も好ましくは、上死点の僅かに後に(例えば、上死点から後の3〜30°のロータの回転位置)、シリンダーのピーク圧力が得られるように供給される。同様に、NOxの生成と効率を害する熱損失を抑制するため、CA50(即ち、全燃料質量の50%が燃焼)が上死点から後のロータ回転の略0〜15°の範囲で生じるようにすることが好ましい。
【0015】
燃料の噴射も、また、噴射された燃料がロータ表面106及び/又はチャンバー108の他の面、特に、ロータ104がハウジング102に当接するチャンバー108のエッジにおける頂部(交叉点)に衝突しないように形成され、タイミングが調整されることが好ましい。エンジンが添付図面に図示されるような場合には、理想的には、各噴射器110,112はハウジング102の周囲に配置され、少なくとも、噴射パターンが、ロータ104に衝突することなく、また、ロータ半径の90%以上には広がらないようにして燃料がチャンバー108の頂部に到達しないように、実質的にロータ面106の中心と整列したときに燃料チャージを噴射できるようにされる。
【0016】
これまで説明した本発明の種々の態様は単に例示的なものであり、本発明は種々の観点から変形が可能である。先ず、これまでの説明は全体として本発明のワンケル型ロータリーエンジンでの使用に焦点を当てたものであるが、他のロータリーエンジンの使用も可能であり、例えば、Saint-Hilaireに対する米国特許第6,164,263 号、Renegar に対する米国特許第6,659,965 号、Kimに対する米国特許第6,722,321号、Schpiro他に対する米国特許第6,987,729号、Okulovに対する米国特許第7,178,502号、Cobbsに対する米国特許第7,913,663号、及びこれらの特許において引用された特許及びこれらの特許を引用した特許のロータリーエンジンに同様に使用することが可能である。したがって、本発明は添付図面に記載された実施形態のものから非常に多くの変形を行うことが可能であろう。
【0017】
更に、燃料チャージはガソリン、ディーゼル燃料の使用、又は、反応性改変剤添加のガソリン又はディーゼル燃料の使用に限られるものではなく、その代わりのものとして幅広い範囲の他の燃料(添加剤の有無にかかわらず)、例えば、エタノール、メタノール、メタン、プロパン、又は他の物質が使用できる。燃料の反応性は添加剤(又は他の燃料)を添加する以外に、分解、加熱、蒸留、及び/又は車両の燃料経路における触媒などの車載装置の使用により、燃料の組成を変更する、及び/又は燃料を低反応性及び高反応性組成に分離する手段により改変することができる。また、反応性は、再循環排ガスが燃焼を抑制することができるため、EGR(排ガス再循環)又は同様の手段を使用するなどして、チャンバー内の空気の反応性を変えることにより効果的に改変できる。
更に、本発明は単に2つの燃料チャージの使用に限定されるものでないように、本発明は単に2つの反応性のレベルの使用に限定されるものでもない。一例として、3又はそれ以上の燃料チャージのそれぞれを他の燃料チャージと異なる反応性を持つようにすることもできる。
【0018】
本発明は、また、排ガス後処理、他の燃焼方式及び排ガス低減方策と整合するものである。これらの方策は、更に排ガスを減少させるものであり、また、本発明による排ガスは従来技術より減少するため、これらの方策に使用するための装置はより長い寿命を持ち、及び/又はより低廉なものとなるであろう。
【0019】
要約すると、本発明は、上述の好適な実施例に限定されるものでなく、以下に記載されたクレームだけに限定されるものである。したがって、本発明は、これらのクレームの範囲内における文言又は均等物に入る全ての異なる態様を包含するものである。