特許第6002267号(P6002267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6002267
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】車輪速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/488 20060101AFI20160923BHJP
   G01P 1/02 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   G01P3/488 F
   G01P1/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-61855(P2015-61855)
(22)【出願日】2015年3月25日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 明彦
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 達也
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−148840(JP,A)
【文献】 特開2009−063452(JP,A)
【文献】 特開2006−275639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/488
G01P 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石(20)と、
前記磁石(20)によって発生する磁界の、磁性回転体(80)の回転に伴う変化を検知する検知素子(16)と、
前記検知素子(16)を保持した導体(18a〜18c)と、
前記磁石(20)を保持穴(52)内に収容する磁石収容部(50)を有するとともに、挿通孔(40)が形成された保持部材(12)と、
前記保持部材(12)に外嵌されて前記磁石(20)、前記検知素子(16)及び前記導体(18a〜18c)を収容したケーシング(14)と、
を備える車輪速度センサ(10)であって、
前記導体(18a〜18c)が直線状に延在する直線部位(24)を有し、且つ前記直線部位(24)の長手方向一端部が、前記保持部材(12)の前記挿通孔(40)に挿通されることを特徴とする車輪速度センサ(10)。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ(10)において、前記保持部材(12)の前記挿通孔(40)に対する前記直線部位(24)の挿入方向と、前記磁石(20)の前記磁石収容部(50)への挿入方向とが一致することを特徴とする車輪速度センサ(10)。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセンサ(10)において、前記導体(18a〜18c)は、前記直線部位(24)から折曲されて直線状に延在する第2の直線部位(26)と、前記第2の直線部位(26)から折曲されて前記直線部位(24)に平行な折り返し部位(28)とを有し、
前記保持部材(12)は、前記直線部位(24)に当接する第1当接部(36)と、前記第1当接部(36)から折曲されて前記第2の直線部位(26)に当接する第2当接部(46)とを有し、
前記第2当接部(46)に、前記折り返し部位(28)が係合する係合凹部(48)が形成されていることを特徴とする車輪速度センサ(10)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ(10)において、前記保持穴(52)内に、前記保持穴(52)の内壁と前記磁石(20)の間に介在する弾性体(54)が設けられていることを特徴とする車輪速度センサ(10)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ(10)において、前記導体(18a〜18c)の前記直線部位(24)に、該直線部位(24)の延在方向に対して交差する方向に突出した突部(30a〜30d)が形成され、
前記保持部材(12)に係止部(38a〜38f)が形成され、
前記突部(30a〜30d)が前記係止部(38a〜38f)によって係止されていることを特徴とする車輪速度センサ(10)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ(10)において、前記導体(18a〜18c)に電気的に接続される導線を取り付けるためのカプラ(58)を有し、
前記カプラ(58)は、前記ケーシング(14)の延在方向に対して交差する方向に延在することを特徴とする車輪速度センサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石と検知素子によって車輪の回転速度を検知する車輪速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
四輪及び二輪を含む自動車車体には、車輪の回転速度を検出するべく、車輪速度センサが搭載される。なお、車輪速度センサは、例えば、金属製ギアの近傍に配設される。この場合において、車輪速度センサを構成する検知素子に対し、金属製ギアの歯部の接近又は離間が繰り返される。この接近又は離間に対応し、車輪速度センサを構成する磁石の磁界が変化する。検知素子が磁界の変化を検知すると、磁界の強弱に応じた電気信号が発信される。この電気信号の強弱に基づき、車輪の回転速度が求められる。
【0003】
この種の車輪速度センサとして、特許文献1に記載された回転数センサが知られている。この従来技術では、導線の複数箇所が略直角に折曲された状態で、樹脂からなるケーシング内に埋設されている。このような回転数センサは、予め折曲した導線と検知素子を成形型内に収容した後、該成形型内に溶融樹脂を導入するインサート成形を行うことで得られる。すなわち、溶融樹脂が冷却硬化することに伴い、ケーシングが形成されるとともに、導線及び検知素子がケーシングに封入される。換言すれば、導線及び検知素子がケーシングに固着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−289865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、導線を複雑に折曲する必要があるために煩雑である。しかも、インサート成形では、成形型内に収容した導線や検知素子が、流動する溶融樹脂によって押圧される。このため、導線や検知素子が位置ズレを起こしたり、場合によっては変形を起こしたりする懸念がある。
【0006】
このように、従来技術に係る車輪速度センサには、作製することが容易ではなく、従って、生産コストを低廉化することが容易ではないという不都合がある。
【0007】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、構成が簡素であり、このために生産コストを低廉化することが可能な車輪速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、磁石(20)と、
前記磁石(20)によって発生する磁界の、磁性回転体(80)の回転に伴う変化を検知する検知素子(16)と、
前記検知素子(16)を保持した導体(18a〜18c)と、
前記磁石(20)を保持穴(52)内に収容する磁石収容部(50)を有するとともに、挿通孔(40)が形成された保持部材(12)と、
前記保持部材(12)に外嵌されて前記磁石(20)、前記検知素子(16)及び前記導体(18a〜18c)を収容したケーシング(14)と、
を備える車輪速度センサ(10)であって、
前記導体(18a〜18c)が直線状に延在する直線部位(24)を有し、且つ前記直線部位(24)の長手方向一端部が、前記保持部材(12)の前記挿通孔(40)に挿通されることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、検知素子を保持した導体における直線部位の長手方向一端部を、保持部材に形成した挿通孔に挿通するようにしている。このため、検知素子や導体を保持部材内に埋設する必要がない。すなわち、インサート成形を行う必要がないので、成形型内に検知素子や導体を予め収容するという煩雑な作業を行う必要もない。しかも、インサート成形を行わないので、検知素子や導体が位置ズレを起こしたり、変形したりすることが回避される。
【0010】
また、導体が直線部位を有する簡素な形状であるので、保持部材の形状も簡素となる。従って、車輪速度センサの構成が簡素となる。
【0011】
加えて、この構成では、導体の挿通孔への挿入方向と、ケーシングを保持部材に外嵌する際のケーシングに対する保持部材の相対的な進行方向(ケーシング内への保持部材の挿入方向)とを一致させることができる。このため、いわゆる一方向組み立てを行うことができるので、ケーシングや保持部材の姿勢を変化させる必要がない。従って、車輪速度センサを組立装置で組み立てる場合には、該組立装置の構成を簡素化することができる。ケーシングや保持部材の姿勢を変化させるための機構を設ける必要がないからである。
【0012】
これにより、設備投資が低廉化する。また、組み立てが容易であることと、構成が簡素であることとが相俟って車輪速度センサを短時間で効率よく組み立てることができるので、車輪速度センサの生産効率が向上する。以上のような理由から、車輪速度センサの生産コストの低廉化を図ることができる。
【0013】
なお、保持部材(12)の挿通孔(40)に対する直線部位(24)の挿入方向と、磁石(20)の磁石収容部(50)への挿入方向とを一致させることが好ましい。この構成では、磁石(20)も一方向組み立てによって保持部材(12)に保持させることができる。従って、車輪速度センサ(10)の生産効率が一層向上し、生産コストの一層の低廉化に寄与する。
【0014】
導体(18a〜18c)には、直線部位(24)から折曲されて直線状に延在する第2の直線部位(26)と、前記第2の直線部位(26)から折曲されて前記直線部位(24)に平行な折り返し部位(28)とを形成することが好ましく、また、保持部材(12)には、前記直線部位(24)に当接する第1当接部(36)と、前記第1当接部(36)から折曲されて前記第2の直線部位(26)に当接する第2当接部(46)とを設けることが好ましい。さらに、前記第2当接部(46)に、前記折り返し部位(28)が係合する係合凹部(48)を形成するとよい。
【0015】
この構成では、導体が保持部材の第1当接部及び第2当接部に当接することで保持部材に堅牢に保持される。しかも、折り返し部位が係合凹部に係合される。このため、導体が位置ズレを起こすことが困難となる。
【0016】
また、保持穴(52)内には、該保持穴(52)の内壁と前記磁石(20)の間に介在する弾性体(54)を設けることが好ましい。弾性体(54)が保持穴(52)の内壁と磁石(20)の間に噛み込み、該磁石(20)を堰止するストッパとして機能する。このため、磁石(20)が位置ズレを起こすことが困難となる。
【0017】
さらに、導体(18a〜18c)の前記直線部位(24)に、該直線部位(24)の延在方向に対して交差する方向に突出した突部(30a〜30d)を形成し、且つ保持部材(12)に係止部(38a〜38f)を形成することが好ましい。この場合、前記突部(30a〜30d)をこの係止部(38a〜38f)によって係止することができるので、導体(18a〜18c)を位置決めすることができる。従って、導体(18a〜18c)の挿通孔(40)からの突出長さを規定することが容易となる。すなわち、導体(18a〜18c)の挿通孔(40)からの突出長さを揃えることができる。
【0018】
そして、導体(18a〜18c)に電気的に接続される導線を取り付けるためのカプラ(58)を、前記ケーシング(14)の延在方向に対して交差する方向に延在させることが好ましい。これにより、車輪速度センサ(10)の長手方向寸法を短尺化することができる。従って、車輪速度センサ(10)の取付スペースを狭小化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検知素子を保持した導体における直線部位の長手方向一端部を、保持部材に形成した挿通孔に挿通するようにしているので、簡素な構成の車輪速度センサを、煩雑な作業を伴うインサート成形を行うことなく得ることができる。
【0020】
また、この車輪速度センサを組み立てる際、導体の挿通孔への挿入方向と、ケーシングを保持部材に外嵌する際のケーシングに対する保持部材の相対的な進行方向(ケーシング内への保持部材の挿入方向)とを一致させ、いわゆる一方向組み立てを行うことができる。従って、ケーシングや保持部材の姿勢を変化させる必要がないので、組立作業が容易となる。
【0021】
以上のような理由から、車輪速度センサを短時間で効率よく組み立てることができる。その結果、車輪速度センサの生産効率が向上するので、車輪速度センサの生産コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る車輪速度センサの分解斜視図である。
図2図1に示す磁石収容部の概略平面断面図である。
図3図1の車輪速度センサをギアの歯部に近接配置した状態を示す概略側面図である。
図4図1の車輪速度センサを別の姿勢でギアの歯部に近接配置した状態を示す概略側面図である。
図5図1の車輪速度センサをギアのボス部に近接配置した状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車輪速度センサにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において「下」、「上」というときには、図面における下方、上方を指すものとする。ただし、これは、図面を参照した説明の理解を容易にするための便宜的な呼称であり、車輪速度センサを実使用する際の方向を特定したものではない。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る車輪速度センサ10の分解斜視図である。この車輪速度センサ10は、保持部材12と、該保持部材12に外嵌されるケーシング14を有する。
【0025】
保持部材12には、検知素子としてのホールIC16、導体としての3本のバスバー18a〜18c、及び磁石20が保持される。以下、この点につき詳述する。
【0026】
ホールIC16は、3本の接続端子22a〜22cを有する。一方、バスバー18aは、水平方向に沿って直線状に延在する第1直線部位24と、該第1直線部位24に対して略直交するように鉛直下方に折曲された第2直線部位26と、第2直線部位26に対して略直交するように水平方向に折曲され、第1直線部位24と平行な折り返し部位28とを有する。なお、バスバー18b、18cはバスバー18aと同様に構成されており、従って、同一の構成要素には同一の参照符号を付す。
【0027】
ホールIC16の3本の接続端子22a〜22cは、バスバー18a〜18cを構成する前記第2直線部位26に対向する。バスバー18a〜18cの各第2直線部位26に接続端子22a〜22cの各々が接合されることにより、ホールIC16がバスバー18a〜18cに保持される。なお、接合は、例えば、溶接によって行われる。
【0028】
バスバー18a〜18cを構成する第1直線部位24は、第2直線部位26及び折り返し部位28に比して長尺である。該第1直線部位24には、延在方向に対して略直交する方向に指向する4個の突部30a〜30dが突出形成される。突部30a、30bは第1直線部位24を挟んで互いに対向し、同様に、突部30c、30dも第1直線部位24を挟んで互いに対向する。
【0029】
また、折り返し部位28は、第1直線部位24と同一方向に延在する。このため、バスバー18a〜18cは、鉛直方向に沿って延在する第2直線部位26の下端部から折り返し部位28が水平方向に沿って突出するとともに、該第2直線部位26の上端部から第1直線部位24が折り返し部位28と同一方向に突出した形状となっている。
【0030】
保持部材12は、略円柱状をなし且つ係合突起32が形成された基部34と、該基部34の一底面から板状に突出した形状の第1当接部36とを有する。この第1当接部36上に第1直線部位24が当接することにより、バスバー18a〜18cが保持される。
【0031】
ここで、第1当接部36には、鉛直上方に向かって立ち上がった係止部38a〜38fが立設されている。バスバー18aの突部30a、30bは、係止部38a、38bの手前側に位置する。また、基部34には、第1直線部位24の端部を挿通するための挿通孔40が形成されており、該挿通孔40の幅方向寸法は、バスバー18aの突部30c、30dが設けられた部位の幅方向寸法よりも小さく設定されている。このため、各第1直線部位24の長手方向端部が挿通孔40に挿通されると、突部30c、30dが挿通孔40の開口近傍の外壁に引っ掛かる。すなわち、突部30a〜30dが係止部38a、38b、及び基部34に係止され、これにより、バスバー18aがホールIC16側へ移動することが規制される。
【0032】
同様に、バスバー18bの突部30a、30bは係止部38c、38dに係止され、突部30c、30dは挿通孔40の開口近傍の外壁に引っ掛かる。さらに、バスバー18cの突部30a、30bは係止部38e、38fに係止され、突部30c、30dは挿通孔40の開口近傍の外壁に引っ掛かる。以上により、バスバー18b、18cがホールIC16側へ移動することが規制される。
【0033】
なお、挿通孔40に挿通された第1直線部位24の長手方向端部は、取付フランジ部42の後方に設けられた中空のコネクタ部44内に進入する。
【0034】
保持部材12は、さらに、第1当接部36に対して略直交する方向に折曲され、鉛直下方に向かって延在する第2当接部46を有する。第1直線部位24が第1当接部36に載置されたとき、該第2当接部46が第2直線部位26に当接する。
【0035】
第2当接部46は、第2直線部位26に比して長尺に設定される。そして、バスバー18a〜18cの折り返し部位28に対応する位置には、該折り返し部位28と同一方向に延在する3個の係合凹部48が形成される。折り返し部位28は、各係合凹部48に挿入されることで係合凹部48に係合している。この係合と、第2直線部位26が第2当接部46に当接することとが相俟って、バスバー18a〜18cが基部34側に向かって移動することが規制される。
【0036】
第1当接部36と第2当接部46に囲まれる位置には、中空の磁石収容部50が設けられる。磁石収容部50に形成された保持穴52には、その開口から通された磁石20が挿入される。磁石20としては、例えば、フェライト系永久磁石が採用される。
【0037】
図2に示すように、保持穴52の内壁には、弾性を示す弾発部材(例えば、ゴム等)からなるストッパ54が設けられる。このストッパ54に堰止されることにより、磁石20が保持穴52内で堅牢に位置決め固定される。
【0038】
前記取付フランジ部42には、ボルト用孔56が貫通形成される。該ボルト用孔56に通された図示しないボルトが所定の部材に螺合されることにより、車輪速度センサ10が前記部材に取り付けられる。
【0039】
コネクタ部44には、カプラ58が連結される(図3参照)。カプラ58内には、コネクタ部44内に進入したバスバー18a〜18cの長手方向一端部、すなわち、第1直線部位24の端部と電気的に接続される端子60a〜60c(図4及び図5参照)が設けられる。なお、カプラ58は、保持部材12及びケーシング14の長手方向に対し、略直交する方向に指向して延在するように連結されている。
【0040】
ケーシング14は、短寸の大径部62と、長寸の小径部64とを有する中空体である。大径部62には、内壁から外壁にかけて係合孔66が貫通形成されている。この係合孔66に前記係合突起32が通されることにより、ケーシング14が保持部材12に位置決め固定される。
【0041】
なお、保持部材12とケーシング14の間はOリング68によってシールされる。
【0042】
本実施の形態に係る車輪速度センサ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0043】
車輪速度センサ10は、以下のようにして組み立てられる。すなわち、はじめに、保持部材12を成形する。保持部材12は、例えば、成形型内に溶融樹脂を導入する射出成形によって作製することができる。このとき、バスバー18a〜18cやホールIC16を成形型内に収容する必要はない。
【0044】
次に、保持部材12の磁石収容部50に磁石20を収容する。すなわち、保持穴52に磁石20を挿入する。この際、磁石20は、保持穴52内を、保持部材12の第2当接部46側から基部34側に向かうように移動する。そして、図2に示すように、保持穴52の内壁に設けられたストッパ54が、内壁と磁石20との間の空間に噛み込む。この噛み込みにより磁石20が堰止され、保持穴52内で堅牢に位置決め固定される。
【0045】
以上とは別に、バスバー18a〜18cの各第2直線部位26に対し、ホールIC16の3本の接続端子22a〜22cのそれぞれを、例えば、溶接によって接合する。その結果、ホールIC16がバスバー18a〜18cに保持される。
【0046】
次に、ホールIC16を保持したバスバー18a〜18cの各第1直線部位24を、第1当接部36の上端面に沿って進行させる。第1直線部位24の長手方向端部は挿通孔40に挿通され、さらに、コネクタ部44内に進入する。このとき、該長手方向端部は、第2当接部46側から基部34側に向かう方向で挿通孔40に挿入される。
【0047】
バスバー18a〜18cの進行に伴い、最終的に、突部30c、30dが挿通孔40の開口近傍の外壁に引っ掛かるとともに、突部30a、30bが係止部38a〜38fに引っ掛かる。すなわち、突部30a、30bが係止部38a〜38fで係止され、且つ突部30c、30dが基部34に係止される。また、バスバー18a〜18cの各第2直線部位26が第2当接部46に当接するとともに、各折り返し部位28が係合凹部48にそれぞれ係合する。バスバー18a〜18cは、保持穴52の開口に交差する。
【0048】
以上により、バスバー18a〜18cがホールIC16側、及び基部34側へ移動することが規制されるとともに、第1直線部位24の端部の、コネクタ部44内での突出長さが規定される。また、第1直線部位24が第1当接部36に当接することに伴い、バスバー18a〜18cが保持部材12に保持されるとともに、ホールIC16がバスバー18a〜18cを介して保持部材12に保持される。
【0049】
次に、磁石20、ホールIC16及びバスバー18a〜18cを保持した保持部材12の第1当接部36及び第2当接部46を、磁石20、ホールIC16及びバスバー18a〜18cごとケーシング14内に挿入する。この際、ケーシング14は、保持部材12の第2当接部46側から基部34側に向かうように相対的に移動される。その結果、大径部62が基部34に外嵌されるとともに、基部34の係合突起32が大径部62の係合孔66に通って係合し、ケーシング14が保持部材12に対して位置決め固定される。なお、保持部材12とケーシング14の間は、Oリング68が介在することでシールされる。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、予め成形された保持部材12に対し、磁石20と、ホールIC16を保持したバスバー18a〜18cとを組み付けるようにしている。このため、インサート成形を行う必要はない。従って、ホールIC16やバスバー18a〜18c等を、保持部材12を得るための成形型内に収容する煩雑な作業を行う必要もない。
【0051】
加えて、ホールIC16やバスバー18a〜18cが流動する溶融樹脂で押圧されることがないので、これらが位置ズレを起こすことはなく、変形することもない。
【0052】
さらに、コネクタ部44に対してカプラ58が連結される。これにより、車輪速度センサ10が得られるに至る。
【0053】
以上の組立作業は、例えば、組立装置によって自動的に行われる。ここで、上記したように、車輪速度センサ10の組み立てに際し、磁石20の保持穴52への挿入方向、バスバー18a〜18cの長手方向一端部の挿通孔40への挿入方向、及び、保持部材12への前記ケーシング14の取り付け方向が一致している。すなわち、いわゆる一方向組み立てが行われる。従って、組立作業の最中、保持部材12やケーシング14の姿勢を変更する必要は特にない。このため、組立装置に、保持部材12又はケーシング14の姿勢を変更するための機構を設ける必要もない。この分、組立装置の構成が簡素となり、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0054】
また、作業者の手作業で車輪速度センサ10を組み立てる場合であっても、上記した一方向組み立てが可能であるため、組立作業が簡易となり、また、該組立作業を遂行することが容易となる。
【0055】
以上のように、車輪速度センサ10は構成が簡素であるため、組立装置又は作業者が組み立てる場合のいずれにおいても、組立作業が効率よく進行する。このため、車輪速度センサ10の生産コストの低廉化を図ることができる。
【0056】
このようにして組み立てられた車輪速度センサ10は、例えば、図3に示すように、車輪を回転させるためのギア80に近接配置される。さらに、取付フランジ部42のボルト用孔56に通されたボルトが所定の部材に螺合されることにより、車輪速度センサ10が位置決め固定される。
【0057】
ここで、ギア80は、図示しない回転軸を軸止するための軸止部82と、側壁に形成された歯部84と、歯部84近傍の下端面に突出形成されたボス部86とを有する。このギア80は、強磁性を示す金属からなる。すなわち、該ギア80は磁性回転体である。
【0058】
車輪速度センサ10は、このように構成されるギア80に対し、ケーシング14の先端、すなわち、該ケーシング14内のホールIC16が歯部84に対向するように配設される。このとき、コネクタ部44に対してカプラ58が略直交する方向に延在するように連結されているので、車輪速度センサ10の長手方向が長尺となることが回避される。このため、車輪速度センサ10を配設するためのスペースを狭小化し得るので、自動車車体内における様々な機構の配置レイアウトの自由度が向上する。なお、カプラ58内の端子60a〜60cに対しては、図示しないエンジンコントロールユニット(ECU)との間に介在する図示しない導線が電気的に接続される。
【0059】
車輪が設けられた自動車車体等が運転されると、ギア80が回転することに追従して車輪が回転する。このとき、磁石20に対し、歯先と歯底が交代で近接又は離間することが繰り返される。
【0060】
磁石20と歯先の離間距離は、磁石20と歯底の離間距離に比して小さい。すなわち、磁石20と歯先の間の離間距離と、磁石20と歯底の間の離間距離は互いに相違する。このため、磁石20により生じた磁界の強度が、該磁石20に歯先と歯底が交代で近接又は離間することに伴って変化する。要するに、磁石20が歯先に近接するか、又は歯底に近接するかにより、磁界の強度が相違する。
【0061】
ホールIC16は、磁界の強度変化に応じた電気信号を発信する。前記ECUは、所定時間内における電気信号の強度変化と、同一の歯先が磁石20に対して対向した回数とに基づき、所定時間内にギア80が何回転したのかを算出する。さらに、この算出結果から、所定時間内に車輪が何回転したか、換言すれば、車輪が如何なる回転速度であるかを求める。以上により、車輪の回転速度が検知される。
【0062】
上記したように、磁石20がストッパ54によって位置決め固定されるとともに、バスバー18a〜18cのホールIC16側及び基部34側への移動が規制されている。従って、ギア80の回転に伴って振動が発生したとしても、磁石20やバスバー18a〜18cが位置ズレを起こすことが回避される。このため、車輪の回転速度を求めている間、磁石20やバスバー18a〜18cの位置ズレに起因して磁界の強度変化やホールIC16からの電気信号変化が起こることが回避される。従って、車輪の回転速度を精度よく検知することができる。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、バスバー18a〜18cが保持部材12内に埋設されていない(保持部材12がバスバー18a〜18cに固着していない)にも関わらず、ホールIC16やバスバー18a〜18cが位置ズレを起こすことを回避し、車輪の回転速度を高精度に求めることができる。また、コネクタ部44内に進入した第1直線部位24の一端部が位置ズレを起こすことが回避されるので、バスバー18a〜18cと、カプラ58内の端子60a〜60cとの電気的接続を保つことができる。
【0064】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、図4に示すように、カプラ58を、端子60a〜60cが紙面手前側に臨むような姿勢としてもよい。
【0066】
また、磁石20は、歯部84に近接する位置でなくともよい。例えば、図5に示すように、磁石20をボス部86に近接する位置とするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…車輪速度センサ 12…保持部材
14…ケーシング 16…ホールIC
18a〜18c…バスバー 20…磁石
24…第1直線部位 26…第2直線部位
28…折り返し部位 30a〜30d…突部
36…第1当接部 38a〜38f…係止部
40…挿通孔 44…コネクタ部
46…第2当接部 48…係合凹部
50…磁石収容部 52…保持穴
54…ストッパ 58…カプラ
80…ギア 84…歯部
86…ボス部
【要約】
【課題】車輪速度センサの構成を簡素化して組立作業が効率よく進行するようにし、生産コストの低廉化を図る。
【解決手段】車輪速度センサ10は、ホールIC16を保持したバスバー18a〜18cを備える。これらバスバー18a〜18cの各第1直線部位24の長手方向一端部は、保持部材12に形成された挿通孔40に通される。保持部材12は、さらに、磁石収容部50内に磁石20を収容し、この状態で、ケーシング14内に挿入されている。すなわち、バスバー18a〜18cは、保持部材12内に埋設されておらず、従って、保持部材12はバスバー18a〜18cに固着していない。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5