(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002326
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】エレベーターのドア
(51)【国際特許分類】
B66B 13/30 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
B66B13/30 R
B66B13/30 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-526116(P2015-526116)
(86)(22)【出願日】2013年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2013069130
(87)【国際公開番号】WO2015004798
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】福山 栄男
(72)【発明者】
【氏名】石塚 真介
(72)【発明者】
【氏名】田渕 光
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−115863(JP,A)
【文献】
実開平1−76885(JP,U)
【文献】
特開2003−12256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸当たりゴムを挿入するための開口部を設けたエレベーターのドアにおいて、
前記ドアは、断面がコの字形状であり、
前記戸当たりゴムが発炎した場合に前記開口部から前記ドアの内側に炎が延焼することを防止するカバーを備え、
前記カバーは、
前記ドアの内側かつ前記開口部近傍に設けられ、
前記開口部に挿入された場合に前記ドアの内側において露出している前記戸当たりゴムを前記開口部とともに前記ドアの内側から覆う形状を有し、
前記戸当たりゴム及び前記開口部を覆う部分においては前記戸当たりゴムの表面に沿った形状を有し、前記戸当たりゴム及び前記開口部を覆う部分以外の部分においては板形状を有し、前記板形状の部分は前記ドアの内側表面と密接して前記戸当たりゴムに対する酸素を遮断し、前記板形状の部分は、前記ドアのコの字形状が戸当たり部分から前記ドアの開方向に向けて折り返された部分の内側表面と密接する部分の一部で固定具により前記ドアに固定される
ことを特徴とするエレベーターのドア。
【請求項3】
光漏れ防止カバーを備え、
前記光漏れ防止カバーは、
前記ドアの外側表面と密接し、前記固定具により前記カバーとともに前記ドアに固定される
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターのドア。
【請求項4】
前記開口部は、
前記ドアの高さ方向に分散して設けられ、
前記カバーは、
前記開口部に対応して設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターのドア。
【請求項5】
前記戸当たりゴムは、
前記開口部に挿入する側の面に凹部を有し、
前記カバーは、
前記凹部に対向する面に凸部を有し、
前記戸当たりゴムが前記開口部に挿入された場合、前記凹部と前記凸部とが嵌合する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターのドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドアが2枚で中央から開くタイプのエレベーターの戸当たり部分の構造が開示されている。具体的には、戸当たり先端部がL字形のドア板と、ドア板の内側に固着され断面がZ字形のZ字形金具と、ドア板の外側に固着され断面がコ字形のコ字形金具と、コ字形金具の凹部に収納され一部が突出した弾性体とから構成される戸当たり部分の構造が開示されている。このように戸当たり部分を構成することにより、戸当たり部分の構造を簡単にすることができるとしている。
【0003】
特許文献2には、ドアが2枚で片開きタイプのエレベーターの戸当たり部分の構造が開示されている。具体的には、戸当たりゴムと、戸当たりゴムのネジ部に螺合され乗場三方枠に設けられた取付穴からその裏側に挿入可能な取付金具と、取付金具に設けられた子ネジとから構成される戸当たり部分の構造が開示されている。この戸当たり部分の構造によれば、乗場側からの作業だけで戸当たりゴムを簡単かつ確実に取り付けることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−115863号公報
【特許文献2】特開平09−20488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで火災が発生した場合、乗場側の炎が昇降路側に延焼することを防止するためには、戸当たり部分、特に戸当たりゴムの発炎を抑える必要がある。
【0006】
しかし特許文献1及び2には、戸当たりゴムの発炎を抑える構造について何ら開示されていない。よって特許文献1及び2に記載の戸当たり部分の構造では、乗場側からの熱がドアから戸当たりゴムに伝わり、戸当たりゴムから発炎するおそれがある。
【0007】
なお特許文献1にはZ字形金具を備えた構造が開示されており、このZ字形金具によって、弾性体が発炎した場合には昇降路側に炎が延焼することを防止し得るとも考えられる。しかし戸当たり部分全域に取り付けられるZ字形金具は、実際には取り付け誤差が生じるため、Z字形金具とドア板との間に隙間が発生し、炎の延焼を確実に防止することはできない。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、戸当たりゴムの発炎を安価に防止し得るエレベーターのドアを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明におけるエレベーターのドアは、戸当たりゴムを挿入するための開口部を設けたエレベーターのドアにおいて、戸当たりゴムが発炎した場合に開口部からドアの内側に炎が延焼することを防止するカバーを備え、カバーは、ドアの内側かつ開口部近傍に設けられ、開口部に挿入された場合にドアの内側において露出する戸当たりゴムを開口部とともにドアの内側から覆う形状を有することを特徴とする特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、戸当たりゴムの発炎を安価に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態におけるドアの正面構成図である。
【
図5】他の実施の形態における戸当たり部分のドアの断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
図1は、本実施の形態におけるエレベーターのドア100の正面構成を示す。このドア100の正面構成は、昇降路内から乗場側を見たときのドア100の正面構成である。
【0014】
ドア100は、2枚中央開きタイプのドアであり、2枚のドア100が左右に移動して開閉動作する。ドア100は、戸当たり部分において、全閉時にドア100同士の衝突による衝撃を緩和させるために戸当たりゴム101を備えて構成される。
【0015】
なおここでは2枚のドア100のうちの一方のドア100の上部及び下部にそれぞれ戸当たりゴム101が1つずつ取り付けられているが、必ずしもこれに限らず、例えば中央にも戸当たりゴム101が取り付けられるとしてもよい。
【0016】
戸当たり部分におけるドア100のA1−A2断面については
図2において説明し、戸当たり部分をB1方向から見たゴムカバーの上面構成については
図3において説明する。
【0017】
図2は、戸当たり部分のドア100の断面構成を示す。
図2に示すドア100の断面構成は、
図1に示すA1−A2断面に対応する。
【0018】
ドア100は、戸当たりゴム101、ゴムカバー102、光漏れ防止カバー103及び固定具104を備えて構成される。戸当たりゴム101は、一般的な形状及び材質のゴムであり、ドア100に設けられた開口部に乗場側から挿入されて、ゴム自身の弾力によってドア100に固定される。
【0019】
ゴムカバー102は、頂部を除いた円錐形状を有して構成され、ドア100の内側から戸当たりゴム101の全面を覆うようにして取り付けられる。ゴムカバー102は、例えばステンレスで構成される。
【0020】
光漏れ防止カバー103は、昇降路側のドア100の昇降路内側の表面に取り付けられ、かつ、乗場側から昇降路内に又は昇降路内から乗場側に進入する光を遮断するように取り付けられる。また光漏れ防止カバー103は、昇降路内からの光を遮断するだけでなく、昇降路内から乗場側に又は乗場側から昇降路内に炎が延焼することを防止する。
【0021】
固定具104は、昇降路側のドア100の表面においてゴムカバー102及び光漏れ防止カバー103を共締めするための部材である。固定具104は、例えばネジ又はリベットである。
【0022】
図3は、ゴムカバー102の上面構成を示す。
図3に示すゴムカバー102の上面構成は、
図1に示すB1方向からゴムカバー102だけを見た場合の上面構成である。
【0023】
ゴムカバー102は、B1方向から見ると、底面1021、斜面1022及びドア内側面密接部1023から構成される。底面1021は、戸当たりゴム101が挿入される開口部に位置し、戸当たりゴム101の反戸当たり面と対向する。斜面1022は、底面1021と同様、開口部に位置し、戸当たりゴム101の側面と対向する。ドア内側面密接部1023は、開口部以外に位置し、ドア100の内側表面と密接する。
【0024】
ゴムカバー102をC1方向から見たゴムカバー102の正面構成については
図4において説明する。
【0025】
図4は、ゴムカバー102の正面構成を示す。また同時にD1−D2断面の構成を示す。
図4に示すゴムカバー102の正面構成は、
図3に示すC1方向から見た場合の正面構成である。
【0026】
ゴムカバー102は、C1方向から見ると、底面1021、斜面1022及びドア内側面密接部1023から構成される。底面1021、斜面1022及びドア内側面密接部1023は、
図3において説明した底面1021、斜面1022及びドア内側面密接部1023と対応する。
【0027】
以上のように本実施の形態においては、ドア100の内側において露出している戸当たりゴム101をドア100の内側から覆うことにより戸当たりゴム101に対して酸素を遮断するゴムカバー102を設置するようにしたので、乗場側からの炎でドア100が熱せられても、戸当たりゴム101の発炎を安価に抑えて延焼を防止することができる。
【0028】
図5は、他の実施の形態における戸当たり部分のドア100の断面構成を示す。
図5に示すドア100の断面構成は、
図1に示すA1−A2断面に対応する。ここでは上述してきた部材と同様の部材については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0029】
戸当たりゴム101Aは、一部に凹部を有して構成され、凹部側をドア100に設けられた開口部に挿入されて、ゴム自身の弾力によってドア100に固定される。ゴムカバー102Aは、頂部を除いた円錐形状を有して構成され、かつ、底面に凸部を有して構成され、ドア100の内側から戸当たりゴム101の全面を覆うようにして取り付けられる。
【0030】
戸当たりゴム101A及びゴムカバー102Aが設置された状態においては、戸当たりゴム101Aの凸部と、ゴムカバー102Aの凹部とが嵌合する。この凹部と凸部とが嵌合することにより、戸当たりゴム101Aがドア100から外れにくくなる。
【0031】
図6は、ゴムカバー102Aの上面構成を示す。
図6に示すゴムカバー102Aの上面構成は、
図1に示すB1方向からゴムカバー102Aだけを見た場合の上面構成である。
【0032】
ゴムカバー102Aは、B1方向から見ると、凸部1021A、底面1022A、斜面1023A及びドア内側面密接部1024Aから構成される。凸部1021Aは、戸当たりゴム101Aが挿入される開口部に位置し、戸当たりゴム101Aの凹部と嵌合する。
【0033】
底面1022Aは、凸部1021Aと同様、開口部に位置し、戸当たりゴム101Aの反戸当たり面のうちの凸部以外の面と対向する。斜面1023Aは、凸部1021Aと同様、開口部に位置し、戸当たりゴム101Aの側面と対向する。ドア内側面密接部1024Aは、開口部以外に位置し、ドア100の内側表面と密接する。
【0034】
ゴムカバー102をE1方向から見たゴムカバー102Aの正面構成については
図7において説明する。
【0035】
図7は、ゴムカバー102Aの正面構成を示す。また同時にF1−F2断面の構成を示す。
図7に示すゴムカバー102Aの正面構成は、
図6に示すE1方向から見た場合の正面構成である。
【0036】
ゴムカバー102Aは、E1方向から見ると、凸部1021A、底面1022A、斜面1023A及びドア内側面密接部1024Aから構成される。凸部1021A、底面1022A、斜面1023A及びドア内側面密接部1024Aは、
図6において説明した凸部1021A、底面1022A、斜面1023A及びドア内側面密接部1024Aと対応する。
【0037】
図8は、戸当たりゴム101Aの斜視構成を示す。戸当たりゴム101Aは、上述したように凹部1011Aを有して構成され、この凹部1011Aがゴムカバー102Aの凸部1021Aと嵌合する。
【0038】
以上のように他の実施の形態においては、ドア100の内側において露出している戸当たりゴム101Aをドア100の内側から覆うことにより戸当たりゴム101Aに対して酸素を遮断するゴムカバー102Aを設置し、ゴムカバー102Aには戸当たりゴム101Aの凹部1011Aと嵌合する凸部1021Aを設けるようにしたので、戸当たりゴム101Aをドア100から外れにくくすることができるとともに、乗場側からの炎でドア100が熱せられても、戸当たりゴム101Aの発炎を安価に抑えて延焼を防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
100 ドア
101、101A 戸当たりゴム
102、102A ゴムカバー