(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記電動機の動力が前記出力軸に出力されているときに、前記第1変速機構における奇数段ギアから前記第2変速機構における偶数段ギアへの切替要求がなされた場合、
前記第1変速機構で第1の変速段から該第1の変速段のギア比よりも大きいギア比の第2の変速段に切り替える間に、前記電動機の出力トルクに所定の補正トルクを加算することで、前記変速機の出力トルクが前記第1の変速段によるトルクと前記第2の変速段によるトルクとの間の中間トルクとなるように制御し、前記第1変速機構で設定される変速段のみを用いて減速側への変速段の切り替えを行う
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1,2に記載されているように、変速機の変速段が切り替えられる期間では、電動機の回生制動力が低下してしまうので、その低下分の制動力をブレーキの制動力によって補うことにより、変速機の変速段の切り替えに伴う制動力の変化を低減させている。しかし、ハイブリッド型の車両では、電動機の動力による走行モードだけでなく、内燃機関の動力による走行モードや、電動機及び内燃機関のいずれの動力も用いた走行モードがある。したがって、電動機及び内燃機関のいずれの動力も用いた走行モードの場合、変速機の変速段が切り替えられる期間では、電動機の回生制動力が低下してしまうだけでなく、内燃機関の制動力(エンジンブレーキ)も低下してしまうため、電動機の回生制動力の低下分をブレーキの制動力によって補うだけでは不十分であり、変速段の切り替え時のショックが発生してしまう。
【0005】
特に、駆動源であるエンジン及びモータの回転軸と変速機との間の動力伝達の有無を切り替え可能なクラッチ(発進クラッチ)を備えた構成の変速機では、変速段の切り替え時に当該クラッチの締結を一時的に解除することで、駆動輪側へ伝達される駆動力を一時的に遮断するようになっている。しかしながら、クラッチの締結を一時的に解除することで、駆動源からの駆動力の伝達を遮断すると、駆動源であるエンジン及びモータで発生するエンジンブレーキトルク、あるいはモータの回生トルクなどの制動力が駆動輪側に伝達されなくなるため、その間、車両の減速度が減少(不足)してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、変速機の変速段の切り替え時において、駆動源である電動機及び内燃機関の制動力が一時的に駆動輪側へ伝達されなくなることに伴う車両の制動力の低下を防止でき、かつ、振動や騒音(ショック)の発生を効果的に緩和することができるハイブリッド車両の制御装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0008】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、動力源としての内燃機関(2)及び電動機(3)を備えるとともに、駆動輪(WL,WR)に動力を出力する出力軸(CS等)と、動力源(2,3)の入力軸(IMS,OMS,SS)と出力軸(CS等)と間で動力の伝達を切り替え可能な複数の変速段ギア(42〜47)を含む変速機(4)と、入力軸(IMS,OMS,SS)と変速機(4)との間の動力伝達の有無を切り替え可能なクラッチ(C1,C2)と、駆動輪(WL,WR)の制動を行うブレーキ(37)と、変速機(4)の変速段ギア(42〜47)の選択制御及びクラッチ(C1,C2)の締結制御を含む制御を実行可能な制御手段(10)と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、制御手段(10)は、
目標エンジンブレーキトルクと目標回生ブレーキトルクを足し合わせて目標制動トルクを算出する目標制動トルク演算手段(11)と、目標制動トルク演算手段(11)によって算出される目標制動トルクに応じて油圧ブレーキ指令値を算出する油圧ブレーキ指令値演算手段(13)と、を有し、駆動輪(WL,WR)に対する制動が要求されて動力源(2,3)からの制動力を出力軸(CS等)に出力しているときに、変速機(4)における変速段ギア(42〜47)の切替要求がなされたとき、
目標制動トルク演算手段(11)で算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力が
油圧ブレーキ指令値演算手段(13)により算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキとを制御し、該制動力の出力を置き換えた後にクラッチ(C1,C2)の締結を一時的に解除した状態で変速機(4)における変速段ギア(42〜47)を切り替えるよう該変速機(4)を制御し、該変速段ギア(42〜47)を切り替えた後に
目標制動トルク演算手段(11)で算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力が
目標制動トルク演算手段(13)で算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御する第1の制御を行う第1制御部と、クラッチ(C1,C2)の締結が解除されている間、ブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力に所定の補正量を増量する第2の制御を行う第2制御部と、を含
み、前記第1制御部及び前記第2制御部は、クラッチ(C1,C2)の締結により内燃機関(2)の動力が出力軸(CS等)に伝達されているときにのみ、前記第1の制御及び前記第2の制御を行うことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、内燃機関の制動力または電動機の回生による制動力をブレーキによる制動力に置き換えた後、クラッチの締結を一時的に解除した状態で変速段ギアの切り替えを行い、クラッチの締結解除によって内燃機関の制動力及び電動機の制動力を出力軸側に伝達できないタイミングでブレーキによる出力軸への制動力に所定の補正量を増量する制御を行うことで、車両の制動力の低下防止及び変速ショックの効果的な抑制を図ることができる。すなわち、上記第1の制御に加えて第2の制御を行うことで、変速段の切り替えに伴う変速ショックをより効果的に低減することが可能となる。
【0010】
この場合、第1制御部及び第2制御部は、クラッチ(C2)の締結により内燃機関(2)の動力が出力軸(CS等)に伝達されているときにのみ、第1の制御及び第2の制御を行うとよい。これによれば、内燃機関の制動力をブレーキによる制動力で置き換えて補正することができる。その一方で、内燃機関の動力が出力軸に伝達されていないときには、内燃機関の制動力が出力軸側に伝達されないので、ブレーキによる制動力で置き換える補正は行う必要が無い。
【0011】
また、上記のハイブリッド車両の制御装置では、動力源としての内燃機関(2)及び電動機(3)を備えるとともに、電動機(3)に接続されるとともに第1クラッチ(C1)を介して選択的に内燃機関(2)の機関出力軸(2a)に接続される第1入力軸(IMS)と、第2クラッチ(C2)を介して選択的に内燃機関(2)の機関出力軸(2a)に接続される第2入力軸(OMS、SS)と、駆動輪(WL,WR)に動力を出力する出力軸(CS等)と、第1入力軸(IMS)に選択的に連結される複数の奇数段ギア(43,45,47)を含む第1変速機構(G1)と、第2入力軸(OMS、SS)に選択的に連結される複数の偶数段ギア(42,44,46)を含む第2変速機構(G2)と、出力軸(CS等)上に配置され、第1変速機構(G1)の奇数段ギア(43,45,47)と第2変速機構(G2)の偶数段ギア(42,44,46)とが噛合する複数の出力ギア(51,52,53)と、を有する変速機(4)と、駆動輪(WL,WR)の制動を行うブレーキ(37)と、第1変速機構(G1)及び第2変速機構(G2)の変速段ギア(42〜47)の選択制御と第1クラッチ(C1)及び第2クラッチ(C2)の断接制御とを含む制御を実行可能な制御手段(10)と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、制御手段(10)は、
目標エンジンブレーキトルクと目標回生ブレーキトルクを足し合わせて目標制動トルクを算出する目標制動トルク演算手段(11)と、目標制動トルク演算手段(11)によって算出される目標制動トルクに応じて油圧ブレーキ指令値を算出する油圧ブレーキ指令値演算手段(13)と、を有し、駆動輪(WL,WR)に対する制動が要求されて動力源(2,3)からの制動力を出力軸(CS等)に出力しているときに、変速機(4)における第1変速機構(G1)の変速段ギア(43,45,47)間での切替要求がなされたとき、
目標制動トルク演算手段(11)で算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力が
油圧ブレーキ指令値演算手段(13)により算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御し、該制動力の出力を置き換えた後に第1クラッチ(C1)の締結を一時的に解除した状態で第1変速機構(G1)における変速段ギア(43,45,47)を切り替えるよう該変速機(4)を制御し、該変速段ギア(43,45,47)を切り替えた後にブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力が動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御する第1の制御を行う第1制御
部と、第1クラッチ(C1)の締結が解除されている間、ブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力に所定の補正量を増量する第2の制御を行う第2制御部と、を含
み、前記第1制御部及び前記第2制御部は、第2クラッチ(C2)の締結により内燃機関(2)の動力が出力軸(CS等)に伝達されているときにのみ、前記第1の制御及び前記第2の制御を行うことを特徴とする
。
また、上記ハイブリッド車両の制御装置において、前記第1制御部は、前記第1の制御を行う場合に、変速機(4)における変速段ギアの切替要求がなされたとき、クラッチ(C1,C2)の締結を解除する前に目標制動トルク演算手段(11)で算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力を徐々に減少させ、油圧ブレーキ指令値演算手段(13)により算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力を動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力を徐々に増加させて、動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力がブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御し、該制動力の出力を置き換えた後にクラッチ(C1,C2)の締結を一時的に解除した状態で変速機(4)における変速段ギアを切り替えるよう変速機(4)を制御し、該変速段ギアを切り替えた後に油圧ブレーキ指令値演算手段(13)により算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力が目標制動トルク演算手段(11)で算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)と前記ブレーキとを制御することを特徴としてもよい。
【0012】
上記のように、第1、第2クラッチ及び第1、第2入力軸を有する第1、第2変速機構を備え、第1入力軸が電動機に連結された構成の変速機では、電動機を動力源とする走行中に第1変速機構で設定される変速段間の切り換えを行う場合、当該変速段の切り替え時に第1クラッチの締結を一時的に解除することで、駆動源である内燃機関又は電動機の制動力が出力軸側へ伝達されない状態となる。そのため、変速段の切り替えに伴う変速ショック(変速に伴う振動や騒音など)が発生していた。そこで本発明では、内燃機関の制動力または電動機の回生による制動力をブレーキによる制動力に置き換えた後、クラッチの締結を一時的に解除した状態で変速段ギアの切り替えを行い、さらに、クラッチの締結解除によって内燃機関の制動力及び電動機の制動力を出力軸側に伝達できないタイミングでブレーキによる出力軸への制動力に所定の補正量を増量する制御を行うことで、車両の制動力が低下することを防止し、かつ変速ショックの効果的な抑制を図ることができる。すなわち、上記第1の制御に加えて第2の制御を行うことで、変速段の切り替えに伴う変速ショックを効果的に低減することが可能となる。
【0013】
また、この場合、第1制御部及び第2制御部は、第2クラッチ(C2)の締結により内燃機関(2)の動力が出力軸(CS等)に伝達されているときにのみ、第1の制御及び第2の制御を行うとよい。これによれば、内燃機関の制動力をブレーキによる制動力で置き換えて補正することができる。その一方で、内燃機関の動力が出力軸に伝達されていないときには、内燃機関の制動力が出力軸側に伝達されないので、ブレーキによる制動力で置き換える補正は行う必要が無い。
【0014】
また、上記ハイブリッド車両の制御装置では、ブレーキ(37)は、制御手段(10)による制御に基づいて駆動輪(WL,WR)の制動を行うとよい。このような構成によれば、運転者の意思によらずに制御手段の判断に基づいてブレーキの制御による車両の制動力の適切な補正を行うことができる。
【0015】
また、上記のハイブリッド車両の制御装置では、車両の運転者の操作に応じて変速機(4)の変速段ギア(42〜47)の切替要求を行う操作手段(65)を備え、第1制御部及び第2制御部は、操作手段(65)からの切替要求があったときに、動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力がブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御するタイミングと同じタイミングで、ブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力に所定の補正量を増量する制御を行うようにしてよい。
【0016】
このような構成によれば、車両の運転者の操作に応じて変速機の変速段ギアの切り替えを行う場合、迅速な変速段ギアの切り替えを行うことができるとともに、変速段ギアの切り替え時の制動力の変化による変速ショックを効果的に付与することで、運転者に対して変速の俊敏性の印象を与えることが可能となる。
【0017】
また、上記ハイブリッド車両の制御装置において、目標制動トルク演算手段(11)は、エンジン燃焼状態情報及びエンジン回転数情報に基づいて目標エンジンブレーキトルクを算出し、車速情報及びモータの回転数情報に基づいて前記目標回生ブレーキトルクを算出することを特徴としてもよい。
【0018】
また、上記ハイブリッド車両の制御装置において、制御手段(10)は、エンジン燃焼情報及びエンジン回転数情報と駆動力伝達状態情報とに基づいて推定エンジンブレーキトルクを算出し、車速情報、モータ回転数情報及びモータ電流情報と駆動力伝達状態情報とに基づいて推定回生ブレーキトルクを算出し、前記推定エンジンブレーキトルクと前記推定回生ブレーキトルクとを足し合わせて推定制動トルクを算出する制動トルク推定手段(12)を、さらに含むことを特徴としてもよい。
さらに、油圧ブレーキ指令値演算手段(13,14)は、目標制動トルク演算手段(11)により算出された目標制動トルクと、制動トルク推定手段(12)により算出された推定制動トルクとを差分し、差分値に基づいて補正量指令情報を算出し、ブレーキ圧に該補正量指令情報を加算することにより、油圧ブレーキ指令値を演算することを特徴としてもよい。
【0019】
また、上記のハイブリッド車両の制御装置では、制御手段(10)は、電動機(3)の動力が出力軸(CS等)に出力されているときに、第1変速機構(G1)における奇数段ギア(43,45,47)から第2変速機構(G2)における偶数段ギア(42,44,46)への切替要求がなされた場合、第1変速機構(G1)で第1の変速段から該第1の変速段のギア比よりも大きいギア比の第2の変速段に切り替える間に、電動機(3)の出力トルクに所定の補正トルクを加算することで、変速機(4)の出力トルクが第1の変速段によるトルクと第2の変速段によるトルクとの間の中間トルクとなるように制御し、第1変速機構(G1)で設定される変速段のみを用いて減速側への変速段の切り替えを行うようにしてよい。
【0020】
この構成によれば、第1変速機構で設定される第1の変速段と第2の変速段との中間の変速段に相当する仮想的な変速段を設けることができるので、変速段の切り替えに伴う変速ショックの発生を効果的に抑制することができる。したがって、電動機を動力源とする走行中の変速段の切り替えにおいて、内燃機関を始動することなく、変速段の切り替えに伴い発生する変速ショックを効果的に緩和することができる。
【0021】
また、上記のハイブリッド車両の制御方法では、動力源としての内燃機関(2)及び電動機(3)を備えるとともに、電動機(3)に接続されるとともに第1クラッチ(C1)を介して選択的に内燃機関(2)の機関出力軸(2a)に接続される第1入力軸(IMS)と、第2クラッチ(C2)を介して選択的に内燃機関(2)の機関出力軸(2a)に接続される第2入力軸(OMS、SS)と、駆動輪(WL,WR)に動力を出力する出力軸(CS等)と、第1入力軸(IMS)に選択的に連結される複数の奇数段ギア(43,45,47)を含む第1変速機構(G1)と、第2入力軸(OMS、SS)に選択的に連結される複数の偶数段ギア(42,44,46)を含む第2変速機構(G2)と、出力軸(CS等)上に配置され、第1変速機構(G1)の奇数段ギア(43,45,47)と第2変速機構(G2)の偶数段ギア(42,44,46)とが噛合する複数の出力ギア(51,52,53)と、を有する変速機(4)と、駆動輪(WL,WR)の制動を行うブレーキ(37)と、第1変速機構(G1)及び第2変速機構(G2)の変速段ギア(42〜47)の選択制御と第1クラッチ(C1)及び第2クラッチ(C2)の断接制御とを含む制御を実行可能な制御手段(10)と、を備えるハイブリッド車両の制御方法であって、制御手段(10)は、
目標エンジンブレーキトルクと目標回生ブレーキトルクを足し合わせて目標制動トルクを算出する目標制動トルク演算手段(11)と、目標制動トルク演算手段(11)によって算出される目標制動トルクに応じて油圧ブレーキ指令値を算出する油圧ブレーキ指令値演算手段(13)と、を有し、駆動輪(WL,WR)に対する制動が要求されて動力源(2,3)からの制動力を出力軸(CS等)に出力しているときに、変速機(4)における第1変速機構(G1)の変速段ギア(43,45,47)間での切替要求がなされたとき、内燃機関(2)の燃焼状態及び回転数、車速、電動機(3)の回転数の少なくともいずれかを用いて目標制動トルク及び実制動トルクを算出し、算出した目標制動トルクと実制動トルクとの差を超えない範囲で、ブレーキにて発生させる制動力の指令値を算出することで、
目標制動トルク演算手段(11)で算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力が
油圧ブレーキ指令値演算手段(13)により算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御し、該制動力の出力を置き換えた後に第1クラッチ(C1)の締結を一時的に解除した状態で第1変速機構(G1)における変速段ギア(43,45,47)を切り替えるよう該変速機(4)を制御し、該変速段ギア(43,45,47)を切り替えた後に
目標制動トルク演算手段(11)で算出されたブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力の出力が
油圧ブレーキ指令値演算手段(13)により算出された動力源(2,3)による出力軸(CS等)への制動力の出力に置き換わるように動力源(2,3)とブレーキ(37)とを制御する第1の制御を行うと共に、第1クラッチ(C1)の締結が解除されている間、ブレーキ(37)による出力軸(CS等)への制動力に所定の補正量を増量する第2の制御を行
い、第2クラッチ(C2)の締結により内燃機関(2)の動力が出力軸(CS等)に伝達されているときにのみ、前記第1の制御及び前記第2の制御を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明にかかるハイブリッド車両の制御方法によれば、内燃機関の制動力または電動機の回生による制動力をブレーキによる制動力に置き換えた後、クラッチの締結を一時的に解除した状態で変速段ギアの切り替えを行うと共に、クラッチの締結解除によって内燃機関の制動力及び電動機の制動力を出力軸側に伝達できないタイミングでブレーキによる出力軸への制動力に所定の補正量を増量する制御を行うことで、車両の制動力の低下防止及び変速ショックの効果的な抑制を図ることができる。すなわち、上記第1の制御に加えて第2の制御を行うことで、変速段の切り替えに伴う変速ショックをより効果的に低減することが可能となる。また、制動力が滑らかに変化するので、より一層、制動力の変化による変速ショックを低減することができる。
【0023】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置及び制御方法によれば、変速機の変速段の切り替え時において、駆動源である電動機及び内燃機関の制動力が一時的に駆動輪へ伝達されなくなることに伴う車両の制動力の低下を防止でき、かつ、振動や騒音(ショック)の発生を効果的に緩和することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
実施の形態1.
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えたハイブリッド車両の構成例を示す概略図である。この実施の形態における車両1は、
図1に示すように、動力源としての内燃機関2および電動機3を備えたハイブリッド自動車の車両であって、さらに、電動機3を制御するためのインバータ20と、バッテリ(蓄電装置)30と、変速機(トランスミッション)4と、ディファレンシャル機構5と、左右のドライブシャフト6R、6Lと、左右の駆動輪WR,WLとを備える。ここで、電動機3は、モータでありモータジェネレータを含み、バッテリ30は、蓄電器でありキャパシタを含む。また、内燃機関2は、エンジンであり、ディーゼルエンジンやターボエンジンなどを含む。内燃機関(以下、「エンジン」と記す。)2と電動機(以下、「モータ」と記す。)3の回転駆動力は、変速機4、ディファレンシャル機構5およびドライブシャフト6R、6Lを介して左右の駆動輪WR、WLに伝達される。
【0028】
また、車両1は、エンジン2、モータ3、変速機4、ディファレンシャル機構5、インバータ20およびバッテリ30をそれぞれ制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)10を備える。電子制御ユニット10は、1つのユニットとして構成されるだけでなく、例えばエンジン2を制御するためのエンジンECUを、モータ3やインバータ20を制御するためのモータジェネレータECU、バッテリ30を制御するためのバッテリECU、変速機4を制御するためのAT−ECUなど複数のECUから構成されてもよい。この実施の形態の電子制御ユニット10は、エンジン2を制御するとともに、モータ3やバッテリ30、変速機4を制御する。
【0029】
電子制御ユニット10は、各種の運転条件に応じて、モータ3のみを動力源とするモータ単独走行(EV走行)をするように制御したり、エンジン2のみを動力源とするエンジン単独走行をするように制御したり、エンジン2とモータ3の両方を動力源として併用する協働走行(HEV走行)をするように制御する。また、電子制御ユニット10は、各種の制御パラメータに従って、後述するEV走行中におけるモータのトルク制御や、その他の各種の運転に必要な制御を行う。
【0030】
また、電子制御ユニット10には、制御パラメータとして、各種センサ31〜35からの信号が入力されるようになっている。具体的には、電子制御ユニット10には、エンジン2の燃焼状態を検出するエンジン燃焼状態センサ31からのエンジン燃焼状態、ブレーキペダルの踏込量(ブレーキ圧)を検出するブレーキペダルセンサ32からのブレーキペダル開度(ブレーキ圧情報)、ギヤ段(変速段)を検出する駆動力伝達状態センサ33からの駆動力伝達状態、車速を検出する車速センサ34からの車速、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサ35からのエンジン回転数、モータ3の回転数を検出するモータ回転数センサ36からのモータ回転数、モータ3の電流を検出するモータ電流センサ38からのモータ電流などを示す各種信号が入力される。また、車両1には、駆動輪WR,WLの制動を行うための油圧ブレーキ37が設けられている。油圧ブレーキ37には、電子制御ユニット10からの制御信号が入力されるようになっており、該制御信号に応じて、運転者の意思(ブレーキペダルの操作)によらずに駆動輪WR,WL(駆動輪WL,WRと連結されている出力軸、例えばディファレンシャル機構5の入力軸(車両推進軸)または後述するカウンタシャフトCSなど)に所定の制動を付与することが可能な構成となっている。すなわち、この実施の形態におけるブレーキシステムは、ブレーキ・バイ・ワイヤのシステムとなっている。このように、運転者の意思とは無関係に電子制御ユニット10独自の判断で油圧ブレーキ37の制動力に補正をかけることができるため、モータ3による回生ブレーキとエンジンブレーキとの協調制御などを実行することができる。
【0031】
また、本実施形態の車両1は、運転者によりシフトレバーを介して操作される図示しないシフト装置と、図示しないステアリング(ハンドル)の近傍に設けられたパドルスイッチ65とを備える。シフト装置の近傍には、図示しないシフトポジションセンサが設けられる。シフトポジションセンサは、運転者によって操作されるシフトレバーのポジションを検出する。
【0032】
パドルスイッチ65は、手動変速モードでシフトダウンを指示するための−(マイナス)パドルスイッチ66と、手動変速モードでシフトアップを指示するための+(プラス)パドルスイッチ67とから構成される。これらパドルスイッチ66,67の操作信号は、電子制御ユニット10に出力され、車両1の走行状態等に応じて変速機4のアップシフトまたはダウンシフトが行われる。なお、本実施形態では、例えば、シフトレバーのポジションがDレンジまたはSレンジにおいて自動変速モードが設定されているときに、運転者によりいずれかのパドルスイッチ66,67が操作されると、自動変速モードから手動変速モード(マニュアルモード)に切り替えられる。
【0033】
エンジン2は、燃料を空気と混合して燃焼することにより車両1を走行させるための駆動力を発生する内燃機関エンジンである。モータ3は、エンジン2とモータ3との協働走行やモータ3のみのEV走行の際には、バッテリ30の電気エネルギーを利用して車両1を走行させるための駆動力を発生するモータとして機能するとともに、車両1の減速時にはモータ3の回生により電力を発電する発電機として機能する。モータ3の回生時には、バッテリ30は、モータ3により発電された電力(回生エネルギー)により充電される。
【0034】
次に、この実施の形態の車両1が備える変速機4の構成を説明する。
図2は、
図1に示す変速機のスケルトン図である。
図3は、
図2に示す変速機の各シャフトの係合関係を示す概念図である。変速機4は、前進7速、後進1速の平行軸式トランスミッションであり、乾式のツインクラッチ式変速機(DCT:デュアルクラッチトランスミッション)である。
【0035】
変速機4には、エンジン2のクランク軸(機関出力軸)2a及びモータ3に接続される内側メインシャフト(第1入力軸)IMSと、この内側メインシャフトIMSの外筒をなす外側メインシャフト(第2入力軸)OMSと、内側メインシャフトIMSにそれぞれ平行なセカンダリシャフト(第2入力軸)SS、アイドルシャフトIDS、リバースシャフト(リバース軸)RVSと、これらのシャフトに平行で出力軸をなすカウンタシャフトCSとが設けられている。
【0036】
これらのシャフトのうち、外側メインシャフトOMSがアイドルシャフトIDSを介してリバースシャフトRVSおよびセカンダリシャフトSSに常時係合し、カウンタシャフトCSがさらにディファレンシャル機構5(
図1参照)に常時係合するように配置される。
【0037】
また、変速機4は、奇数段クラッチ(第1クラッチ)C1と、偶数段クラッチ(第2クラッチ)C2とを備える。奇数段クラッチC1及び偶数段クラッチC2は乾式のクラッチである。奇数段クラッチC1は、内側メインシャフトIMSに結合される。偶数段クラッチC2は、外側メインシャフトOMS(第2入力軸の一部)に結合され、外側メインシャフトOMS上に固定されたギア48からアイドルシャフトIDSを介してリバースシャフトRVS及びセカンダリシャフトSS(第2入力軸の一部)に連結される。
【0038】
内側メインシャフトIMSのモータ3寄りの所定箇所には、プラネタリアギア機構70のサンギア71が固定配置される。また、内側メインシャフトIMSの外周には、
図2において左側から順に、プラネタリアギア機構70のキャリア73と、3速駆動ギア43と、7速駆動ギア47と、5速駆動ギア45が配置される。なお、3速駆動ギア43は、1速駆動ギアとしても兼用されるものである。3速駆動ギア43、7速駆動ギア47、5速駆動ギア45は、それぞれ内側メインシャフトIMSに対して相対的に回転可能であり、3速駆動ギア43はプラネタリアギア機構70のキャリア73に連結している。さらに、内側メインシャフトIMS上には、3速駆動ギア43と7速駆動ギア47との間に3−7速シンクロメッシュ機構81が軸方向にスライド可能に設けられ、かつ、5速駆動ギア45に対応して5速シンクロメッシュ機構82が軸方向にスライド可能に設けられている。所望のギア段に対応するシンクロメッシュ機構をスライドさせて該ギア段のシンクロを入れることにより、該ギア段が内側メインシャフトIMSに連結される。内側メインシャフトIMSに関連して設けられたこれらのギア及びシンクロメッシュ機構によって、奇数段の変速段を実現するための第1変速機構G1が構成される。第1変速機構G1の各駆動ギア43,45,47は、カウンタシャフトCS上に設けられた対応する従動ギア(出力ギア)51,52,53に噛み合い、カウンタシャフトCSを回転駆動する。
【0039】
セカンダリシャフトSS(第2入力軸)の外周には、
図2において左側から順に、2速駆動ギア42と、6速駆動ギア46と、4速駆動ギア44とが相対的に回転可能に配置される。さらに、セカンダリシャフトSS上には、2速駆動ギア42と6速駆動ギア46との間に2−6速シンクロメッシュ機構83が軸方向にスライド可能に設けられ、かつ、4速駆動ギア44に対応して4速シンクロメッシュ機構84が軸方向にスライド可能に設けられている。この場合も、所望のギア段に対応するシンクロメッシュ機構をスライドさせて該ギア段のシンクロを入れることにより、該ギア段がセカンダリシャフトSSに連結される。セカンダリシャフトSSに関連して設けられたこれらのギア及びシンクロメッシュ機構によって、偶数段の変速段を実現するための第2変速機構G2が構成される。第2変速機構G2の各駆動ギア42,44,46は、カウンタシャフトCS上に設けられた対応する従動ギア51,52,53に噛み合い、カウンタシャフトCSを回転駆動する。セカンダリシャフトSSに固定されたギア49はアイドルシャフトIDS上のギア55に結合しており、該アイドルシャフトIDSから外側メインシャフトOMSを介して偶数段クラッチC2に結合される。
【0040】
リバースシャフトRVSの外周には、リバースギア58が相対的に回転可能に配置される。また、リバースシャフトRVS上には、リバースギア58に対応してリバースシンクロメッシュ機構85が軸方向にスライド可能に設けられ、また、アイドルシャフトIDSに係合するギア50が固定されている。リバースシャフトRVSに関連して設けられたこれらのギア及びシンクロメッシュ機構によって、リバース段を実現するためのリバース変速機構GRが構成される。車両1を後進(リバース走行)させる場合は、リバースシンクロメッシュ機構85のシンクロを入れて、偶数段クラッチC2を係合することにより、偶数段クラッチC2の回転が外側メインシャフトOMS及びアイドルシャフトIDSを介してリバースシャフトRVSに伝達され、リバースギア58が回転される。リバースギア58は内側メインシャフトIMS上のギア56に噛み合っており、リバースギア58が回転するとき内側メインシャフトIMSは前進時とは逆方向に回転する。内側メインシャフトIMSの逆方向の回転はプラネタリアギア機構70に連結した3速駆動ギア43を介してカウンタシャフトCSに伝達される。
【0041】
また、リバースギア58に噛み合うギヤ59の回転軸上には、オイルポンプ60が設置されている。したがって、奇数段クラッチC1を係合することによる内側メインシャフトIMSの回転又は偶数段クラッチC2を係合することによる外側メインシャフトOMSの回転がリバースギア58を介してオイルポンプ60に伝達されて、該オイルポンプ60が駆動する。すなわち、エンジン2又はモータ3を動力源としてオイルポンプ60が駆動する。なお、車両に搭載するオイルポンプとしては、図示は省略するが、エンジン2又はモータ3を動力源とする上記のオイルポンプ60以外にも、バッテリ30の電力で駆動する電動オイルポンプを設置することも可能である。
【0042】
カウンタシャフトCS上には、
図2において左側から順に、2−3速従動ギア51と、6−7速従動ギア52と、4−5速従動ギア53と、パーキング用ギア54と、ファイナル駆動ギア55とが固定的に配置される。ファイナル駆動ギア55は、ディファレンシャル機構5のディファレンシャルリングギア(図示せず)と噛み合うようになっており、これにより、カウンタシャフトCSの出力軸の回転がディファレンシャル機構5の入力軸(つまり車両推進軸)に伝達される。また、プラネタリアギア機構70のリングギア75には、該リングギア75の回転を停止するためのブレーキ41が設けられている。
【0043】
上記構成の変速機4では、2−6速シンクロメッシュ機構83のシンクロスリーブを左方向にスライドすると、2速駆動ギア42がセカンダリシャフトSSに結合され、右方向にスライドすると、6速駆動ギア46がセカンダリシャフトSSに結合される。また、4速駆動ギア44がセカンダリシャフトSSに結合される。このように偶数のギア段を選択した状態で、偶数段クラッチC2を係合することにより、変速機4は偶数の変速段(2速、4速、又は6速)に設定される。
【0044】
3−7速シンクロメッシュ機構81のシンクロスリーブを左方向にスライドすると、3速駆動ギア43が内側メインシャフトIMSに結合されて3速の変速段が選択され、右方向にスライドすると、7速駆動ギア47が内側メインシャフトIMSに結合されて7速の変速段が選択される。シンクロメッシュ機構81,82がいずれのギア43,47,45も選択していない状態(ニュートラル状態)では、プラネタリアギア機構70の回転がキャリア73に連結したギア43を介してカウンタシャフトCSに伝達され、1速の変速段が選択されることになる。このように奇数の駆動ギア段を選択した状態で、奇数段クラッチC1を係合することにより、変速機4は奇数の変速段(1速、3速、5速、又は7速)に設定される。
【0045】
変速機4で実現すべき変速段の決定及び該変速段を実現するための制御(第1変速機構G1及び第2変速機構G2における変速段の選択すなわちシンクロの切り替え制御と、奇数段クラッチC1及び偶数段クラッチC2の係合及び係合解除の制御等)は、運転状況に従って、電子制御ユニット10によって実行される。
【0046】
この実施の形態では、モータ3は内側メインシャフトIMS(第1入力軸)を介して変速機4の奇数の変速段(1速、3速、5速、又は7速)すなわち第1変速機構G1に接続されている。したがって、モータ3の駆動力(回転力)は、第1変速機構において複数の奇数の変速段のうちのいずれかに変速されてカウンタシャフトCS(出力軸)に伝達される。
【0047】
また、エンジン2のクランク軸(機関出力軸)2aは、係合するクラッチとして奇数段クラッチC1(第1クラッチ)が選択されたときは、該奇数段クラッチC1を介して内側メインシャフトIMS(第1入力軸)に結合され、該内側メインシャフトIMSに接続されている変速機4の奇数の変速段(1速、3速、5速、又は7速)すなわち第1変速機構G1に接続される。したがって、エンジン2の駆動力(回転力)は、奇数段クラッチC1が選択されると、第1変速機構G1において複数の奇数の変速段のうちのいずれかに変速されてカウンタシャフトCS(出力軸)に伝達される。このように、各種の運転条件に応じて、モータ3のみを動力源とするモータ単独走行(EV走行)の制御、またはエンジン2とモータ3の両方を動力源として併用する協働走行(HEV走行)の制御が行われるときは、奇数の変速段のうちのいずれかが選択された状態で奇数段クラッチC1が係合される。
【0048】
また、エンジン2のクランク軸(機関出力軸)2aは、係合するクラッチとして偶数段クラッチC2(第2クラッチ)が選択されたときは、該偶数段クラッチC2を介して外側メインシャフトOMS(第2入力軸の一部)に結合され、該外側メインシャフトOMS上に固定されたギア48からアイドルシャフトIDSを介してセカンダリシャフトSS(第2入力軸の一部)に連結され、該セカンダリシャフトSSに接続されている変速機4の偶数の変速段(2速、4速、又は6速)すなわち第2変速機構G2に接続される。したがって、エンジン2の駆動力(回転力)は、偶数段クラッチC2が選択されると、第2変速機構G2において複数の偶数の変速段のうちのいずれかに変速されてカウンタシャフトCS(出力軸)に伝達される。このように、各種の運転条件に応じて、エンジン2のみを動力源とするエンジン単独走行の制御が行われるときは、偶数の変速段のうちのいずれかが選択された状態で偶数段クラッチC2が係合される。
【0049】
図4は、
図1に示す電子制御ユニットの構成を示すブロック図である。
図4に示す電子制御ユニット10は、目標制動トルク演算手段11と、制動トルク推定手段12と、油圧ブレーキ指令値演算手段13と、油圧ブレーキ指令値演算手段14と、油圧ブレーキ制御手段15とを備えている。
【0050】
目標制動トルク演算手段11は、エンジン燃焼状態センサ31からのエンジン燃焼状態を示す情報(以下、「エンジン燃焼状態情報」という。)及びエンジン回転数センサ35からのエンジン回転数を示す情報(以下、「エンジン回転数情報」という。)を入力し、入力したエンジン燃焼情報及びエンジン回転数情報に基づいて、エンジン2の燃焼状態及びエンジン2の回転数に応じた目標エンジンブレーキトルクを算出する。また、目標制動トルク演算手段11は、車速センサ34からの車速を示す情報(以下、「車速情報」という。)及びエンジン回転数センサ35からのモータ3の回転数を示す情報(以下、「モータ回転数情報」という。)を入力し、入力した車速情報及びモータ回転数情報に基づいて、車速及びモータ3の回転数に応じたモータ3の目標回生ブレーキトルク(アクセルペダルがオフのときの目標回生ブレーキトルク)を算出する。この実施の形態では、目標制動トルク演算手段11が算出した目標エンジンブレーキトルク及び目標回生ブレーキトルクを足し合わせたものを目標制動トルクという。なお、エンジン単独走行が行われているときは、目標制動トルクは目標エンジンブレーキトルクだけとなり、EV走行が行われているときは、目標制動トルクは目標回生ブレーキトルクだけとなり、HEV走行が行われているときは、目標制動トルクは目標エンジンブレーキトルク及び目標回生ブレーキトルクとなる。目標制動トルク演算手段11は、目標制動トルクを示す情報を油圧ブレーキ指令値演算手段13に出力する。
【0051】
制動トルク推定手段12は、エンジン燃焼状態センサ31からのエンジン燃焼状態情報及びエンジン回転数センサ35からのエンジン回転数情報を入力するとともに、駆動力伝達状態センサ33からの駆動力伝達状態情報を入力し、入力したエンジン燃焼情報及びエンジン回転数情報と駆動力伝達状態情報とに基づいて、所定時間先のエンジン2のエンジンブレーキトルク(推定エンジンブレーキトルク)を推定する。また、制動トルク推定手段12は、車速センサ34からの車速情報、エンジン回転数センサ35からのモータ回転数情報、及びモータ電流センサ38からのモータ電流を示す情報(以下、「モータ電流情報」という。)を入力するとともに、駆動力伝達状態センサ33からの駆動力伝達状態情報を入力し、入力した車速情報、モータ回転数情報及びモータ電流情報と駆動力伝達状態情報とに基づいて、所定時間先のモータ3の回生ブレーキトルク(アクセルペダルがオフのときの推定回生ブレーキトルク)を推定する。この実施の形態では、制動トルク推定手段12が推定した推定エンジンブレーキトルク及び推定回生ブレーキトルクを足し合わせたものを推定制動トルクという。なお、エンジン単独走行が行われているときは、推定制動トルクは推定エンジンブレーキトルクだけとなり、EV走行が行われているときは、推定制動トルクは推定回生ブレーキトルクだけとなり、HEV走行が行われているときは、推定制動トルクは推定エンジンブレーキトルク及び推定回生ブレーキトルクとなる。制動トルク推定手段12は、推定制動トルクを示す情報を油圧ブレーキ指令値演算手段13に出力する。
【0052】
油圧ブレーキ指令値演算手段13は、目標制動トルク演算手段11により算出された目標制動トルクと制動トルク推定手段12により推定された推定制動トルクとを差分し、差分値に基づいて制動トルクの変化を予測し、予測した変化分に対応した制動トルクの補正量を算出する。そして、油圧ブレーキ指令値演算手段13は、算出した補正量を指令する補正量指令情報を油圧ブレーキ指令値演算手段14に出力する。
【0053】
油圧ブレーキ指令値演算手段14は、ブレーキペダルセンサ32から出力される、油圧ブレーキ37のブレーキペダルの踏込量に対応したブレーキ圧情報を入力するとともに、油圧ブレーキ指令値演算手段13から出力された補正量指令情報を入力する。そして、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、ブレーキ圧情報が示すブレーキ圧の値に、補正量指令情報が示す補正量を加算することにより、油圧ブレーキ37のブレーキ圧を制御する制御量を算出する。そして、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、変速要求があったときに、制動トルク(エンジン2のエンジンブレーキトルク及びモータ3の回生ブレーキトルク)を徐々に減少させていくとともに、減少分の制動トルクを油圧ブレーキ37による制動トルク(運転者の油圧ブレーキ37の操作に伴うブレーキ圧による制動トルク)で補う制御を行う。また、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、変速段がニュートラルになったときに、油圧ブレーキ37のブレーキ圧を補正量分だけ加算して、油圧ブレーキ37のブレーキ圧の制御を行う。さらに、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、変速が完了したときに、制動トルク(エンジン2のエンジンブレーキトルク及びモータ3の回生ブレーキトルク)を徐々に増加させていくとともに、増加分の制動トルクを油圧ブレーキ37による制動トルクから減少させていく制御を行う。なお、駆動力伝達状態情報は油圧ブレーキ指令値演算手段14に対しても出力され、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、駆動力伝達状態情報が示す駆動力伝達状態に基づいて、変速要求があったか否かや、ニュートラルになったか否か、変速が完了したか否かを判断する。油圧ブレーキ制御手段15は、油圧ブレーキ指令値演算手段14からの制御量の情報に基づいて油圧ブレーキ37のブレーキ圧を変化させる制御を行う。
【0054】
次に、上記ハイブリッド車両の制御装置の動作について説明する。
図5は、シフトダウン時の協調制御の動作を説明するためのフローチャートである。
図6は、シフトダウン時の減速比、車速、ブレーキ圧及び減速度の関係を示すグラフである。なお、
図6では、変速段が5速でEV走行又はHEV走行を行っているときに、運転者が油圧ブレーキ37のブレーキペダルを踏んでブレーキをかけ、車両1の速度が徐々に低下していくとともに、運転状況(要求駆動トルクや車速、バッテリ30の充電残量など)に応じて、変速段が5速から3速に切り替えられる(シフトダウンする)例を示している。
【0055】
ここで、「減速比」とは、(エンジン2またはモータ3の回転数)/(駆動輪WR、WLの回転数(つまり車両推進軸の回転数))のことをいう。上記のように、エンジン2(つまりクランク軸2a)またはモータ3の回転は、変速機4を介してカウンタシャフトCS(出力軸)に伝達され、カウンタシャフトCSがディファレンシャル機構5に係合することにより駆動輪WR、WLに伝達されるが、エンジン2またはモータ3の回転数が変速機4におけるギア比(変速比)及びその他のギアのギア比(変速比)によって減速され、駆動輪WR、WLは変速機4などで減速された回転数で回転する。変速機4では1速〜7速の変速段のギア比が予め設定されており、減速比は変速機4における1速〜7速の変速段のギア比に対応する値となる。なお、この実施の形態では、変速段のギア比と減速比とが対応しているので、減速比も1速〜7速と表現する。また、駆動輪WR、WLのトルクとエンジン2またはモータ3のトルクの関係は、(駆動輪WR、WLのトルク)/(エンジン2またはモータ3のトルク)=減速比×η(効率)となっている。すなわち、エンジン2またはモータ3のトルクが一定である場合、駆動輪WR、WLのトルクは減速比に比例して増加する。
【0056】
図5において、電子制御ユニット10の目標制動トルク演算手段11は、エンジン燃焼状態センサ31からのエンジン燃焼状態情報及びエンジン回転数センサ35からのエンジン回転数情報を入力し、入力したエンジン燃焼情報及びエンジン回転数情報に基づいて、目標エンジンブレーキトルク(目標制動トルク)を算出する(ステップST1)。また、目標制動トルク演算手段11は、車速センサ34からの車速情報及びエンジン回転数センサ35からのモータ回転数情報を入力し、入力した車速情報及びモータ回転数情報に基づいて、目標回生ブレーキトルク(目標制動トルク)を算出する(ステップST1)。そして、目標制動トルク演算手段11は、目標制動トルクを示す情報を油圧ブレーキ指令値演算手段13に出力する。
【0057】
制動トルク推定手段12は、エンジン燃焼状態センサ31からのエンジン燃焼状態情報及びエンジン回転数センサ35からのエンジン回転数情報を入力するとともに、駆動力伝達状態センサ33からの駆動力伝達状態情報を入力し、入力したエンジン燃焼情報及びエンジン回転数情報と駆動力伝達状態情報とに基づいて、推定エンジンブレーキトルク(推定制動トルク)を算出する(ステップST2)。また、制動トルク推定手段12は、車速センサ34からの車速情報、モータ回転数センサ36からのモータ回転数情報、及びモータ電流センサ38からのモータ電流情報を入力するとともに、駆動力伝達状態センサ33からの駆動力伝達状態情報を入力し、入力した車速情報、モータ回転数情報及びモータ電流情報と駆動力伝達状態情報とに基づいて、推定回生ブレーキトルク(推定制動トルク)を算出する(ステップST2)。そして、制動トルク推定手段12は、推定制動トルクを示す情報を油圧ブレーキ指令値演算手段13に出力する。
【0058】
次に、油圧ブレーキ指令値演算手段13は、目標制動トルク演算手段11からの目標制動トルクを示す情報と制動トルク推定手段12からの推定制動トルクを示す情報を入力し、入力した情報に基づいて、目標制動トルク演算手段11により算出された目標制動トルクと制動トルク推定手段12により推定された推定制動トルクとを差分する。そして、油圧ブレーキ指令値演算手段13は、差分値に基づいて制動トルクの変化を予測し、予測した変化分に対応した制動トルクの補正量を算出する(ステップST3)。そして、油圧ブレーキ指令値演算手段13は、算出した補正量を指令する補正量指令情報を油圧ブレーキ指令値演算手段14に出力する。
【0059】
図6において、D2はEV走行またはHEV走行を行っているときの制動トルク(エンジン2のエンジンブレーキトルク、モータ3の回生ブレーキトルク)に対応した制動量を示している。この制動量D2は、油圧ブレーキ指令値演算手段13によって算出される制動トルクの補正量に相当する。
【0060】
図6に示すように、運転者がブレーキペダルを踏んで油圧ブレーキ37を動作させることにより(
図6のブレーキ圧P1)、車速が徐々に低下していく。このような運転状況の変化に応じて、電子制御ユニット10において、変速要求が発せられるとともに、変速段を5速から3速に変速(シフトダウン)する制御を開始する。
図6に示す例では、時間t1の時点から変速の制御が開始されている。
【0061】
次に、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、変速要求があるか否かを確認し(ステップST4)、変速要求があったことを確認すると(
図6の時間t1)、油圧ブレーキ指令値演算手段13により算出された制動トルクの補正量に基づいて、制動トルク及び油圧ブレーキ37のブレーキ圧を遷移(変化)させる制御を行う(ステップST5)。具体的には、
図6に示すように、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、エンジン2及びモータ3のトルクを制御している制御部(図示せず)に対して、制動トルク(エンジン2のエンジンブレーキトルク及びモータ3の回生ブレーキトルク)を徐々に減少させていくように指示するとともに、油圧ブレーキ制御手段15に対して、減少分の制動トルクを油圧ブレーキ37による制動トルクを増加させていくように指示する。
図6に示す例では、時間t1から制動量D2が徐々に減少していくとともに、油圧ブレーキ37によるブレーキ圧P2が徐々に増加している。
【0062】
次に、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、第1クラッチC1又は第2クラッチC2の締結が解除されることで、変速段がニュートラルになったか否かを判断し(ステップST6)、ニュートラルになったことを確認すると(
図6の時間t2)、油圧ブレーキ37のブレーキ圧を所定の補正量分だけ増量(加算)して、油圧ブレーキ37のブレーキ圧の制御を行う(ステップST7)。
図6に示す例では、車速がV1になった時点(時間t2)でニュートラルとなっている。そして、制動量D2に相当する量のブレーキ圧が運転者のブレーキ操作量に応じたブレーキ圧に加算され、そのブレーキ圧P3で制動が行われている。
【0063】
次に、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、変速が完了(5速から3速にシフトチェンジ)したか否かを確認し(ステップST8)、変速が完了したことを確認すると(
図6の時間t3)、油圧ブレーキ指令値演算手段13により算出された制動トルクの補正量に基づいて、制動トルク及び油圧ブレーキ37のブレーキ圧を遷移(変化)させる制御を行う(ステップST9)。具体的には、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、エンジン2及びモータ3のトルクを制御している制御部に対して、エンジン2やモータ3の制動トルクを徐々に増加させていくように指示するとともに、油圧ブレーキ制御手段15に対して、増加分の制動トルクを油圧ブレーキ37による制動トルクから減少させていくように指示する。
図6に示す例では、車速がV2になった時点(時間t3)で変速段が3速となっている。時間t3から制動量D2が徐々に増加していくとともに、油圧ブレーキ37によるブレーキ圧P4が徐々に減少している。
【0064】
その後、油圧ブレーキ指令値演算手段14は、補正量に相当する制動トルクを増加させた時点(時間t4の時点)で制動トルクを増加させる制御を終了し、増加分の制動トルクを油圧ブレーキ37による制動トルクから減少させていく制御も終了させる。
【0065】
以上のように、この実施の形態1によれば、エンジン2の制動力またはモータ3の回生による制動力を油圧ブレーキ37による制動力に置き換えた後、第1クラッチC1又は第2クラッチC2の締結を一時的に解除した状態で変速段ギアの切り替えを行うと共に、クラッチC1,C2の締結解除によってエンジン2の制動力及びモータ3の制動力をカウンタシャフトCS側に伝達できないタイミングで油圧ブレーキ37によるカウンタシャフトCS側への制動力に所定の補正量を増量する制御を行うことで、車両の制動力の低下防止及び変速ショックの効果的な抑制を図ることができる。すなわち、上記のエンジン2の制動力またはモータ3の回生による制動力を油圧ブレーキ37による制動力に置き換える制御(第1の制御)と、油圧ブレーキ37によるカウンタシャフトCS側への制動力に所定の補正量を増量する制御(第2の制御)との両方を行うことで、変速段の切り替えに伴う変速ショックをより効果的に低減することが可能となる。また、制動力が滑らかに変化するので、より一層、制動力の変化による変速ショックを低減することができる。
【0066】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態2の説明及び対応する図面においては、先の実施の形態1と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、先の実施の形態1と同じである。
【0067】
上記の実施の形態1では、モータ3のみの駆動力による走行(EV走行)中においても
図5に示す協調制御を実行するように構成していたが、この実施の形態2では、EV走行中は当該協調制御を実行しないように構成したものである。
【0068】
図7は、実施の形態2におけるシフトダウン時の協調制御の動作を説明するためのフローチャートである。
図7において、電子制御ユニット10は、現在の運転モードがEV走行モードであるか否かを判定し(ステップST10)、EV走行モードでないと判定したときに(ステップST10のNo)、ステップST1〜ST9の処理を実行する。
【0069】
本実施形態の変速機4では、EV走行中は、第1クラッチ(奇数段クラッチ)C1及び第2クラッチ(偶数段クラッチ)C2のいずれもがつながっていない状態(解放された状態)となっている。そして、この実施の形態2では、EV走行が行われていないとき、すなわち、エンジン単独走行及びエンジン2とモータ3の協働による走行(HEV走行)が行われているときにのみ、本発明の協調制御を実行するように構成されている。これにより、車両1の発進時などにおいて低速のEV走行が行われるとき、つまりエンジン2の制動力が発生していないときに、油圧ブレーキ37による上記の制動力の置き換えの制御を行わないようにすることができる。
【0070】
実施の形態3.
上記の実施の形態1では、変速機4による変速段の切り替えは、運転状況に応じて電子制御ユニット10の制御により行われていた。これに対して、この実施の形態3は、運転者によるパドルスイッチ65の操作に応じて変速機4による変速段の切り替えが行われる場合の制御に関するものである。
【0071】
すなわち、本実施の形態では、
図5及び
図7のステップST4において、変速要求があったか否かの判定だけでなく、パドルスイッチ65からの変速指示があったか否かの判定も行う。また、
図5及び
図7のステップST5の処理とステップST7の処理とを同じタイミングで行うようにする。具体的には、電子制御ユニット10は、パドルスイッチ65からの変速指示があったと判定したときに(ステップST4のYes)、ステップST5の処理(制動トルク及び油圧ブレーキ37の遷移制御)を行うと共に、ステップST7の処理(油圧ブレーキ37の補正量増加分の加算制御)を行うようにする。
【0072】
このような構成によれば、車両の運転者によるパドルスイッチ65の操作に応じて変速機4の変速段ギアの切り替えを行う場合、迅速な変速段ギアの切り替えを行うことができるとともに、変速段ギアの切り替え時の制動力の変化による変速ショックを適切なタイミングで付与することで、運転者に対して変速の俊敏性の印象を与えることが可能となる。
【0073】
実施の形態4.
本発明の実施の形態にかかる変速機4を備えるハイブリッド車両の制御装置では、電子制御ユニット10は、現在の変速機4の変速段(例えば3速)を特定し、現在で動力が伝達されていない第2変速機構G2における変速段を、第1変速機構G1で設定される変速段(例えば3速)よりも低速側の変速段(この場合、2速)で準備させるプレシフト制御を実行する。このように、変速機の変速段を3速から2速にシフトダウンさせる場合には、奇数段クラッチC1を解放状態にして偶数段クラッチC2を係合状態にするだけで、エンジン2からの駆動力が第2変速機構G2を介して駆動輪WL,WRに伝達される。したがって、プレシフト制御が実行されることで、速やかなシフトチェンジが実現される。
【0074】
そして、この実施の形態4では、第2変速機構G2における所定の偶数段ギア(駆動ギア44,46,48のいずれか)が第2入力軸OMS,SSに連結されているときに、第1クラッチC1を一時的に解放して第1変速機構G1における奇数段ギア(駆動ギア43,45,47のいずれか)の切り替えを行うプレシフト制御を行う際に、上記ステップST5の処理(制動トルク及び油圧ブレーキ37の遷移制御)を行うと共に、ステップST7の処理(油圧ブレーキ37の補正量増加分の加算制御)を行うようにする。これによれば、プレシフト制御に伴う第1変速機構G1の変速段ギアの切り替え時において、モータ3の回生に伴う制動力の変化による変速ショックを効果的に低減することができる。
【0075】
実施の形態5.
本発明の実施の形態にかかる変速機4では、運転状況の変化に応じて、変速機4において奇数段(例えば5速)から偶数段(例えば4速)へシフトチェンジが要求された場合であっても、奇数段(例えば5速)を維持しつつ、モータ3のトルクを制御して偶数段(例えば4速)相当の制動力を得るように構成してもよい。すなわち、モータ3のトルクが出力軸に出力されているときに、第1変速機構G1における奇数段ギア(例えば、5速の駆動ギア45)から第2変速機構G2における偶数段ギア(例えば、4速の駆動ギア44)への切替要求がなされた場合、奇数段ギアが第1入力軸IMSに連結されているときの駆動輪WR,WLに出力されるトルクと奇数段ギアよりも低速側の奇数段ギア(例えば、3速の駆動ギア43)が第1入力軸IMSに連結されているときの駆動輪WR,WLに出力されるトルクとの間のトルクが駆動輪WR,WLに出力されるようにモータ3の動力を制御するように構成されていてもよい。この場合、5速よりも4速の方が制動力が大きいので、電子制御ユニット10はモータ3の制動トルクを大きくするように制御する。
【0076】
すなわち、モータ3の動力が出力軸CSに出力されているときに、第1変速機構G1における奇数段ギアから第2変速機構G2における偶数段ギアへの切替要求がなされた場合、第1変速機構G1で一の奇数変速段(例えば、5速の変速段)から他の奇数変速段(例えば、3速の変速段)に切り替える間に、モータ3の出力トルクに所定の補正トルクを加算することで、モータ3の出力トルクが上記一の奇数変速段(例えば、5速の変速段)によるトルクと他の奇数変速段(例えば、3速の変速段)によるトルクとの間の中間トルクとなるように制御し、第1変速機構G1で設定される変速段のみを用いて変速段の切り替えを行うようにしてよい。
【0077】
この構成によれば、第1変速機構G1で設定される一の奇数変速段(例えば、5速の変速段)と他の奇数変速段(例えば、3速の変速段)との中間の変速段に相当する仮想的な変速段を設(例えば、4速の変速段)けることができるので、変速段の切り替えに伴う変速ショックの発生を効果的に抑制することができる。したがって、モータ3を動力源とする走行中の変速段の切り替えにおいて、エンジン2を始動することなく、変速段の切り替えに伴い発生する変速ショックを効果的に緩和することができる。
【0078】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。また、上記の各実施の形態の構成を適宜組み合わせて適用することも可能である。