特許第6002694号(P6002694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002694
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】誘導エネルギー伝送のための装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20160923BHJP
   H02J 50/00 20160101ALI20160923BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20160923BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20160923BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   B60L11/18 C
   H02J17/00 B
   H01F23/00 B
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-558306(P2013-558306)
(86)(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公表番号】特表2014-514897(P2014-514897A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】DE2012100068
(87)【国際公開番号】WO2012126465
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】102011014521.4
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513233654
【氏名又は名称】インゲニュールビュロー ドゥシュル
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシュル−グラブ,ゲオルグ
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−022183(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02115230(GB,A)
【文献】 特開2004−055773(JP,A)
【文献】 米国特許第04612527(US,A)
【文献】 特開昭61−273133(JP,A)
【文献】 特開2010−035300(JP,A)
【文献】 特開2003−087902(JP,A)
【文献】 特開2008−112913(JP,A)
【文献】 特開昭61−036911(JP,A)
【文献】 特開2000−150269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60M 7/00
H01F 38/14
H02J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導エネルギー伝送のための装置であって、トラックは、静止強磁性鉄芯部(3)に取り付けられた一次巻線(4)で作られた3相一次系と、前記トラック上で転動可能あるいは静止する物体とを備え、前記物体は、前記3相一次系に誘導結合されるとともに二次巻線(6)で作られた3相二次系を備え、前記二次巻線(6)は、可動強磁性鉄芯部(5)に取り付けられている、誘導エネルギー伝送のための装置であって、
当該装置が、前記3相内の前記一次巻線(4)および前記二次巻線(6)を通って等長の磁束経路と、これに対応して移動中にほぼ一定の電力を伝送することとを伴う磁気的に対称的なデザインを有し、
前記静止強磁性鉄芯部()は、正三角形の形または正三角形に広がる星の形をしており、隣り合うアームが同じ角度を形成する等長のアーム(3a、3b、3c)を有し、当該アームの端から支持ポスト(3a’、3b’、3c’)が延び、隣接する前記一次巻線(4)が等間隔に配置されており、
前記可動強磁性鉄芯部(5)は、正三角形の形または正三角形に広がる星の形をしており、隣り合うアームが同じ角度で延びる等長のアーム(5a、5b、5c)を有し、当該アームの端から支持ポスト(5a’、5b’、5c’)が延び、隣接する前記二次巻線(6)が等間隔に配置されており、
複数の静止強磁性鉄芯部(3)は、距離を置いて前後して配置されて電気的に並列にまたは直列に接続され前記それぞれの支持ポスト(3a’、3b’、3c’)において平行な磁気レール(2)によって結合され、
前記平行な磁気レール(2)の上では、前記可動強磁性鉄芯部(5)は、強磁性走行用ローラ(7)を利用して転動可能かあるいは配置可能であり、
前記強磁性走行用ローラ(7)は、前記可動支持ポスト(5a’、5b’、5c’)の凹所(8)に収容されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記一次巻線(4)が設けられていて電気的に並列にまたは直列に接続されている2つの前記静止強磁性鉄芯部(3)はトラックセグメント(1)を形成し、前記トラックセグメントは、前記磁気レール(2)と関連して電圧源に隣接可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2つ以上の前記トラックセグメント(1)は、互いから磁気的に絶縁させられるように相前後して配置されることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記磁気レール(2)はトラックに組み込まれ、前記静止強磁性鉄芯部(3)および一次巻線(4)は地下に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記磁気レール(2)または前記走行用ローラ()は強磁性の、強くて弾力性を有する材料で被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
誘導エネルギー伝送のための装置であって、トラックは、静止強磁性鉄芯部(3)に取り付けられた一次巻線(4)で作られた3相一次系と、前記トラック上で転動可能でなおかつ静止する物体とを備え、前記物体は、前記一次系に誘導結合されるとともに二次巻線(6)で作られた3相二次系を備え、前記二次巻線(6)は、可動強磁性鉄芯部(5)に取り付けられている、誘導エネルギー伝送のための装置であって、
当該装置が、前記3相内の前記一次巻線(4)および前記二次巻線(6)を通って等長の磁束経路と、これに対応してほぼ一定の電力を伝送することとを伴う磁気的に対称的なデザインを有し、
前記静止強磁性鉄芯部()は、正三角形の形または正三角形に広がる星の形をしており、等長のアーム(3a、3b、3c)を有し、隣接する前記アームは、同じ角度で延び、
前記静止強磁性鉄芯部(3)は、当該アームの端から延びる支持ポスト(3a’、3b’、3c’)を有するとともに前記一次巻線(4)を備え、隣接する前記一次巻線(4)が等間隔に配置されており、
前記可動強磁性鉄芯部(5)は、正三角形の形または正三角形に広がる星の形をしており、同じ角度で延びる等長のアーム(5a、5b、5c)を有し、
前記可動強磁性鉄芯部(5)は、当該アームの端から延びる支持ポスト(5a’、5b’、5c’)を有するとともに前記二次巻線(6)を備え、前記二次巻線(6)が互いに等間隔に配置されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
前記星の形をした前記静止強磁性鉄芯部(3)および前記可動強磁性鉄芯部(5)の形態では、前記一次巻線(4)および前記二次巻線(6)は、前記支持ポスト(3a’、3b’、3c’;5a’、5b’、5c’)上に、または前記星形の静止および可動強磁性鉄芯部(3、5)の前記アーム上に配置され当該一次巻線(4)および当該二次巻線(6)は、前記静止および可動強磁性鉄芯部(3、5)の中心点(Z1、Z2、Z3)から同じ距離を置いて配置され、
前記三角形の形をした前記静止強磁性鉄芯部(3)および前記可動強磁性鉄芯部(5)の形態では、前記一次巻線(4)および前記二次巻線(6)は、前記支持ポスト(3a’、3b’、3c’;5a’、5b’、5c’)上に、あるいは前記静止および可動強磁性鉄芯部(3、5)の前記アーム上の中央に配置されることを特徴とする、請求項1または6に記載の装置。
【請求項8】
動可能な前記物体は、再充電可能なバッテリーによって完全に又は部分的に電気的に駆動される車両であり、
前記可動強磁性鉄芯部(5)は、前記車両において、水平におよび鉛直に調整可能であり、
記可動強磁性鉄芯部(5)は、前記車両が移動している状態において前記再充電可能なバッテリーを再充電するために、前記走行用ローラ(8)を用いて、前記磁気レール(2)上に下げられ得るように配置され、または、前記車両が静止している状態において前記再充電可能なバッテリーを再充電するために、前記静止強磁性鉄芯部(3)上に直接に下げられ得るように配置され、
前記トラックの前記3相一次系の3相の前記一次巻線(4)は、前記一次巻線が前記可動強磁性鉄芯部(5)と接触しているときだけ電流を供給される
ことを特徴とする、請求項1または6に記載の装置。
【請求項9】
前記3相二次系に信号を供給するための手段と、前記3相一次系においてこの信号を識別するための手段とを備え、前記3相一次系において前記信号は、前記3相一次系と3相二次系との間に閉磁路が存在するときにだけ識別され得る請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導エネルギー伝送のための装置に関する。この装置では、トラックは3相一次系を備え、該トラック上で転がるか、または静止する物体は、該一次系に誘導結合され得る3相二次系を備える。
【背景技術】
【0002】
変圧器原理に従って電気エネルギーを伝送するための装置は、AC電圧を利用してエネルギーを伝送するというタスクを有する。これは、2つの異なる電気回路の導線が周りに巻かれている磁気回路を利用して行われる。変圧器の一次コイルにAC電圧が加えられると、同様にAC電圧が二次コイルに生じる。該電圧の比は一次コイルおよび二次コイルの巻数の比に比例する。
【0003】
ドイツ国特許発明第4236340号(DE4236340C2)は、誘導エネルギー伝送装置を開示しており、この装置では、エネルギーは非接触でエアーギャップを横断して伝送される。この場合、エアーギャップの寸法を一定に保つこと、および不純物が無いようにトラックを保つことが必要である。
【0004】
接触式誘導エネルギー伝送は、国際公開第2010/057799号(WO2010/057799A1)に従って提案されている。電気エネルギーは、電流源に接続されているトラックまたは道路の上で転がる車輪を用いて伝送される。エアーギャップを回避するために、該車輪は磁気透過性のエラストマーにより囲まれる。
【0005】
ドイツ国特許出願公開第3304719号(DE3304719A1)は変圧器原理に基づく3相送電システムを開示しており、このシステムでは第1巻線は第1磁石芯部材の周りに巻かれ、第2巻線は第2磁石芯部材の周りに巻かれ、該第1および第2磁石芯部材は相対的に移動させられ得る。この可動式エネルギー伝送のための−磁気的非対称−タイプの変圧器では、負荷下において鉄芯の部分が飽和し、その結果として効率に悪影響が及ぶことを防ぐために、可動二次系の位置が異なる故に複雑な装置および補助巻線への電流の供給が必要である。さらに、可動エネルギーの伝送中、非対称変圧器の使用には相当なノイズの発生が伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トラックと、前記トラック上で移動するかまたは静止している物体との間で電気エネルギーを3相伝送するための、単純なデザイン(design)で高度の効率を示す装置を明示するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、該目的は、特許請求項1または特許請求項6の特徴に従って設計されている装置によって達成される。
【0008】
本発明の有利な発展形は、従属請求項の主題である。
【0009】
3相静止一次系と可動3相二次系との間での誘導エネルギー伝送のための装置において、本発明の基本的思想は、3相において可動二次系のそれぞれの位置に関係なく等しい長さの磁束経路と、これに対応するほぼ一定の電力伝送とを伴う磁気的対称デザインにある。本発明によれば、強磁性の静止および可動の鉄芯部は、正三角形の形をしているか、あるいは星の形をしており、該星は、正三角形に広がるとともに、互いに対して同じ角度で延びる等長のアーム(limb)と、前記アームの端から延びる支持ポストと、さらに互いから同じ距離に配置された一次巻線または二次巻線とを有する。すなわち、該一次および二次巻線は、正三角形の仮想頂点に位置する。転がることのできる物体の移動中にエネルギーを伝送するために、距離を置いて前後して配置された2つの静止鉄芯部は、一次側でそれぞれの支持ポストにおいて平行な強磁性トラックレール(磁気レール)によって結合され、該トラックレールは同じ平面内に位置し、該可動支持ポストの凹所に収容された強磁性ランニングローラを利用して、該トラックレールの上で該可動鉄芯部が転がることができるか、あるいは異なるポイントに位置することができる。
【0010】
3相可動エネルギー伝送のためにここで提案される変圧器の対称的デザインの故に、積層鉄芯内の経路は3相の全てについて同じである。その結果として、対称的磁束および、それによる、−特に強磁性走行用ローラにより生じるエアーギャップの最小化とも影響しあって−エネルギー伝送の高度の効率が達成されるとともに可動二次系の各位置で漂遊磁束が最小化される。すなわち、対称的に負荷をかける場合には磁気的対称デザインの故に磁気レール上の二次系の位置に無関係に二次系のヨークへの対称的磁束分配と、ほぼ一定でさらに低ノイズの電力伝送が保証される。
【0011】
本発明の1つの改良形では、距離を置いて配置された2つの静止鉄芯部は、一次巻線を備えて直列に結合され、磁気レールと関連して、電圧源に隣接し得るトラックセグメントを形成する。2つ以上のトラックセグメントが、互いから磁気的に絶縁されるように、相前後して配置され得る。
【0012】
本発明の1つの改良形では、一次巻線および二次巻線は、支持ポスト上に、あるいは星形鉄芯部のアーム上に前記鉄芯部の中心点から同じ距離を置いて、あるいは三角形鉄芯部のアーム上で中心に配置される。
【0013】
本発明のさらなる改良形では、磁気レールはトラックに組み込まれ、静止鉄芯部および一次巻線は地下に配置される。
【0014】
本発明の有利な発展形では、磁気レールまたは走行用ローラは、一次系と二次系との間のエアーギャップをさらに減少させるために、強磁性の、強くて弾力性を有する材料で被覆されている。その上、結果として転がり特性が改善される。
【0015】
本発明のさらなる特徴によれば、転がることのできる物体の単なる静止の状態では、磁気レールと走行用ローラとの相互接続は、誘導エネルギー伝送のために省略され得る。この場合、移動する物体に配置されているけれども走行用ローラ無しで形成されている可動鉄芯部は、それの支持ポストを介して、トラックまたは駐車エリアに合体されている静止鉄芯部の支持ポストの上に直接下げられる。
【0016】
静止鉄芯部および可動鉄芯部は、再び、正三角形の形をしているか、あるいは星の形をしており、該星は、正三角形に広がるとともに、互いに対して同じ角度で延びる等長のアームと、前記アームの端から延びる支持ポストと、さらに互いから同じ距離に配置された一次巻線または二次巻線を有する。
【0017】
転がることのできる物体は車両であり、該車両は再充電可能なバッテリーによって完全に又は部分的に電気的に駆動され、該車両において水平におよび鉛直に調整可能な可動鉄芯部は、該車両が移動しているかあるいは静止している状態において、再充電可能バッテリーを再充電するために該鉄芯部が磁気レール上にまたは直接に該静止鉄芯部上に下げられ得るように、配置され、トラックセグメントの一次巻線には、該一次巻線が可動鉄芯部と接触しているときにだけ電流が供給される。
【0018】
本発明のさらなる実施態様においては、二次系に信号を供給するための手段と、一次系においてこの信号を識別するための手段とが設けられ、一次系において該信号は、一次系と二次系との間に閉磁路が存在するときにだけ識別され得る。
【0019】
3相エネルギー伝送装置の代わりに、対応する構造上の調整を加えて、本発明の本原理に従って4つ以上の相で形成される多相装置を用いることも可能であることは言うまでもないことである。
【0020】
図面を参照して本発明の代表的実施態様が詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一次系の形をしているトラックセグメントと、車両上に保持されて前記トラックセグメント上で転がることのできる二次系との間の3相誘導エネルギー伝送のための装置の略図を示す。
図2】可動鉄芯部で作られた二次系の斜視図を示し、該可動鉄芯部は、正三角形の形をしていて、静止状態においてエネルギーを伝送するためにだけ設けられる。
図3】走行用ローラが合体されている二次系の支持ポストの拡大概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
3相変圧器の一次系を表すトラックセグメント1は、平行にかつ1平面内に配置された3本の磁気レール2と、第1および第2の強磁性−第1および第2の−静止鉄芯部3とを備え、該静止鉄芯部は、前記トラックセグメントに結合されていて、3つのアーム3a、3bおよび3cから一体的に形成されている。アーム3a、3b、3cは、各々、同じ長さを有して星形に対称的に共通の中心点Z1、Z3から延び、各々の場合に、互いに1つの角度を成して配置された2つの−隣接する−アームは各々同一の二等辺三角形を形成する。アーム3a、3b、3cの端点は、正三角形の頂点に対応する。各アームの端から遠ざかって延びる支持ポスト3a’、3b’、3c’は、各々、3つの磁気レール2のうちの1本の下面に結合され、各々、電圧源(図示せず)に接続された一次巻線4を担持している。従って、一次巻線4は、星形の静止鉄芯部3上に、すなわち、幾何学的に正三角形の頂点に、配置されている。磁気レール2は、実質的に平らな状態のトラック面に組み込まれているが、トラックセグメント1の、互いに距離を置いて位置している2つの強磁性鉄芯部3は、地下に配置されている。互いに距離を置いて磁気レール2に結合されている2つの静止鉄芯部3は、電気的に並列に接続されている。その結果として、二次アーム内の磁束は、磁気レール上の二次系の位置に大きく依存しない。トラック上で移動することができて3相転がり変圧器の可動二次系を備えている物体へのエネルギー伝送のための長尺の静止一次系を作るために、磁気的に互いから絶縁させられている複数のトラックセグメント1が、トラックにおいて相前後して合体され得る。
【0023】
転がることのできる物体の移動中にエネルギーを伝送するために設けられる可動二次系は、図1に示されているように、互いに関して星形に向けられた、等しい長さを有して互いに関して同じ角度で中心点Z2から各々延びる3つのアーム5a、5b、5cを有する可動強磁性鉄芯部5と、前記アームの端からトラックレール2の方向に延びる支持ポスト5a’、5b’および5c’とを備える。アーム5a、5b、5cの端点は正三角形の頂点に対応する。転がることのできる物体内の負荷(図示せず)に接続されている二次巻線6は、各々、可動鉄芯部5の中心点Z3から同じ距離においてアーム5a、5b、5cに取り付けられている。磁気レール2上での二次系の移動可能性は円柱状の走行用ローラ7により保証されている。該走行用ローラは、支持ポスト5a’、5b’、5c’内に形成され、−可動アームおよび支持ポストと同様に−強磁性材料から構成され、磁気レール2のほうに向いている該ポストの自由側に狭いギャップを残す円柱状凹所8内に組み込まれている。したがって、図3に示されているように、その狭い円柱状の部分(section)だけが支持ポスト5a’、5b’、5c’の主面から突出している強磁性走行用ローラ7は、鉄芯部5の固有の構成部分である。その結果として、可動鉄芯部5と静止鉄芯部3の磁気レール2との間には非常に狭いエアーギャップが存在するだけである。従って、そのエアーギャップに起因するエネルギー伝送損失は少ない。エアーギャップ損失を減少させるために、弾力性を有する磁気透過性コーティング(図示せず)、例えば強磁性エラストマー、で該トラックレールを被覆することも可能である
図1において点付きの破線に関連して例示されているように、全ての可能な磁束経路−ここでは、例えば、Z1からZ2への(あるいはZ3からZ2への)−は、3相変圧器の上記のデザインにおいては等しい長さの経路である。このことは、Z1からZ2までのおよびZ3からZ2までの3つの磁気成分回路内の磁気抵抗が各々同じである。その結果として対称的な電気負荷の下でほぼ等しい大きさの磁束が二次回路に生成されるということを意味する。ここで提案されている3相誘導エネルギー伝送のための磁気的に対称なデザインでは、静止鉄芯部3と関連して可動鉄芯部5の各位置で等しい大きさの磁束が存在し、その結果として、効率の程度を低下させる非対称的飽和が該変圧器の各部分に入り込むことはあり得ない。従って、対称的な負荷の下では、静止一次系と可動二次系との間の高度の電気エネルギー伝送効率が保証される。さらに、非対称的磁気特性を有する、従来技術から知られている変圧器デザインでは、必要とされる電流が複雑な配置の補助巻線にそれぞれ対応して供給されるが、このような複雑な補助巻線の配置は省略される。さらに、ここで提案されている磁気的に対称的な3相変圧器デザインは、公知の非対称的デザインとの関係で相当減少させられているノイズの形成により区別される。
【0024】
三角形可動鉄芯部の例を用いる図2に示されているように、可動鉄芯部(および/または静止鉄芯部のうちの1つ)のアームa、b、cが、接しているアームの頂点から強磁性レール2の方向に延びる支持ポストa’、b’、c’を有する正三角形の形をしているときにも同様に、エネルギー伝送系の対称的なデザインが保証される。この例では、二次巻線は、走行用ローラ7を伴って形成されている支持ポストa’、b’、c’上に配置される。しかし、一次および二次巻線はアーム上にも配置され得る。原理的には、星形あるいは三角形に形成される鉄芯部は、同じエネルギー伝送装置において互いに組み合され得る。
【0025】
誘導エネルギー伝送のための上記の装置は、例えば、電気駆動装置またはハイブリッド駆動装置を備えている車両のバッテリーを再充電するために使用される。一次系は駐車エリアまたはトラックに組み込まれ、その場合、複数の上記トラックセグメントは、比較的長い距離の場合のエネルギー伝送と一次系への電流のそれぞれの供給とをも実行できるように互いから磁気的に絶縁させられた形で一列に並べられ得る。二次系は、車両がトラックセグメントに沿って移動するかあるいはトラックセグメントの上で停車したならば直ちに二次系が下げられることができるとともにトラックまたは駐車エリアに組み込まれている一次系の強磁性レールの上に下げられることができるように、給電されるべき車両の下に取り付けられることができる。該車両がその上で現在停められているかあるいは移動しているそれぞれのトラックセグメントだけが電流を供給される。
【0026】
図1の実例とは対照的に、図2に示されている可動鉄芯部5は、稼働していない状態では、トラックまたは駐車エリアに(単独で磁気レール無しに)配置される静止鉄芯部の支持ポスト上に直接搭載されるので、支持ポスト5a’、5b’、5c’上の走行用ローラを有しない。
【0027】
エネルギーは信号に基づいてそれぞれのトラックセグメントに供給される。該信号は、二次系に入力されて、静止および可動鉄芯部の間に閉磁路が形成されたときにだけ一次系において識別される。二次系から一次系へ送られる信号は、一次系の、その静止鉄芯3が特に可動鉄芯部5と閉磁路を形成する巻線だけに電流が供給されることを保証する。一次コイルに目標を定めた電流の供給は、該閉磁路とともに、人間にとっては許容できないほど強い誘導を伴う漂遊磁界の形成を阻止する。
【符号の説明】
【0028】
1 トラックセグメント
2 磁気レール
3 星形または三角形の静止鉄芯部
3a、3b、3c 静止アーム
3a’、3b’、3c’ 静止支持ポスト
4 一次巻線
5 星形または三角形の可動鉄芯部
5a、5b、5c 可動アーム
5a’、5b’、5c’ 可動支持ポスト
6 二次巻線
7 強磁性走行用ローラ
8 凹所
Z1、Z2、Z3 3または5の中心点
図1
図2
図3