(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の内燃機関では、火炎伝播中の燃焼室において、活性種を生成する領域やタイミングが考えられていない。本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、活性種を利用して燃焼を促進させる内燃機関において、活性種を利用して効果的に火炎伝播速度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、燃焼室において混合気を燃焼させる内燃機関本体と、上記燃焼室において火炎の伝播中に、火炎面の到達前の領域において活性種を生成する活性種生成手段とを備えている内燃機関である。
【0006】
第1の発明では、燃焼室において火炎の伝播中に、最終的に火炎が通過する領域に火炎面の到達前に活性種が生成される。そのため、活性種が生成された領域を火炎面が通過する際に、火炎面における酸化反応が活性種により促進され、火炎伝播速度が増大する。第1の発明では、火炎面における酸化反応を活性種により直接的に促進させている。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、上記活性種生成手段が、上記火炎面の到達前の領域にプラズマを生成して活性種を生成する。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記活性種生成手段が、上記燃焼室においてノッキングの発生頻度が相対的に高い領域において、火炎面の到達前に活性種を生成する。
【0009】
第3の発明では、燃焼室においてノッキングの発生頻度が相対的に高い領域において、火炎面の到達前に活性種が生成される。ここで、ノッキングが発生する場合は、ノッキングが発生する領域の手前で火炎面の速度が停滞し、ノッキングに至る。第3の発明では、ノッキングが発生しそうな領域において活性種が生成される。従って、火炎面の速度が停滞することが抑制される。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、上記燃焼室におけるノッキングの発生を検出するノック検出手段を備え、上記活性種生成手段は、上記ノック検出手段がノッキングの発生を検出した場合に、上記燃焼室においてノッキングの発生頻度が相対的に高い領域において火炎面の到達前に活性種を生成する。
【0011】
第4の発明では、ノッキングの発生が検出された場合に、ノッキングの発生頻度が相対的に高い領域において、火炎面の到達前に活性種が生成される。そのため、ノッキングの発生直後の燃焼サイクルにおいて、ノッキングが発生した領域の手前で火炎面の速度が停滞することが抑制される。
【0012】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、上記内燃機関本体が、円筒状のシリンダ内をピストンが往復運動するように構成され、上記シリンダ内の燃焼室の中心部で混合気が点火される一方、上記活性種生成手段は、上記燃焼室において上記中心部の外側に位置する領域のうち、火炎面の到達タイミングが相対的に遅い領域において、火炎面の到達前に活性種を生成する。
【0013】
第5の発明では、燃焼室において中心部の外側に位置する領域のうち、火炎面の到達タイミングが相対的に遅い領域において、火炎面の到達前に活性種が生成される。従って、火炎面の到達タイミングが相対的に遅い領域を通過する火炎面の酸化反応が促進され、火炎伝播速度が増大する。
【0014】
第6の発明は、上記活性種生成手段が、電磁波を発振する電磁波発振器と、該電磁波発振器から供給された電磁波を上記燃焼室へ放射するためのアンテナとを有し、該アンテナから放射した電磁波により上記火炎面の到達前の領域に電磁波プラズマを生成する。
【0015】
第6の発明では、活性種生成手段が、火炎面の到達前の領域に電磁波を放射することにより電磁波プラズマを生成する。
【0016】
第7の発明は、第6の発明において、上記内燃機関本体は、円筒状のシリンダ内をピストンが往復運動するように構成され、上記シリンダ内の燃焼室の中心部で混合気が点火される一方、上記アンテナは、上記燃焼室の外周部分に沿って延び、上記燃焼室においてノッキングが発生した場合にノッキングの発生領域を検出するノック領域検出手段を備え、上記活性種生成手段は、上記アンテナの表面において相対的に電界強度が強い強電界領域の位置を変える電界調節器を備え、上記ノック領域検出手段の検出結果に基づいて電界調節器を調節して、上記ノッキングの発生領域、または該発生領域の近傍に電磁波プラズマを生成する。
【0017】
第7の発明では、ノック領域検出手段によりノッキングの発生領域が検出される。電界調節器は、ノッキングの発生領域、または該発生領域の近傍に電磁波プラズマが生成されるように強電界領域の位置を調節する。第7の発明では、ノッキングが発生しやすい、ある程度の広さの領域に対して、少ない数のアンテナでノッキングの発生領域又は該発生領域近傍に電磁波プラズマを生成することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、火炎面における酸化反応を活性種により直接的に促進させているので、活性種を利用して効果的に火炎伝播速度を向上させることができる。
【0019】
また、上記第3の発明では、ノッキングが発生しそうな領域の手前において、火炎面の速度が停滞することが抑制される。従って、ノッキングが発生する前に、ノッキングが発生しそうな領域に火炎を到達させることができるので、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0020】
また、第4の発明では、ノッキングの発生直後の燃焼サイクルにおいて、ノッキングが発生した領域の手前で火炎面の速度が停滞することが抑制される。従って、ノッキングの連続的な発生を抑制することができる。
【0021】
また、第5の発明では、火炎面の到達タイミングが相対的に遅い領域を通過する火炎面の酸化反応が促進され、火炎伝播速度が増大する。従って、燃焼室において中心部から見た火炎の拡散状態の均一化を図ることができる。
【0022】
また、第7の発明では、ノッキングの発生領域又は該発生領域の近傍に電磁波プラズマを生成するのにあたって、少ない数のアンテナで、ある程度の広さの領域をカバーすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態》
【0025】
本実施形態は、燃焼室20に電磁波を放射する電磁波放射装置13を備えた内燃機関10である。内燃機関10は、ピストン23が往復動するレシプロタイプのエンジンである。内燃機関10は、内燃機関本体11と放電装置12と電磁波放射装置13とを備えている。内燃機関10は、電子制御装置30(ECU)により制御される。
−内燃機関本体−
【0026】
内燃機関本体11は、
図1に示すように、シリンダブロック21とシリンダヘッド22とピストン23とを備えている。シリンダブロック21には、横断面が円形のシリンダ24が複数形成されている。各シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている(図示省略)。クランクシャフトは、シリンダブロック21に回転自在に支持されている。各シリンダ24内においてシリンダ24の軸方向にピストン23が往復運動すると、コネクティングロッドがピストン23の往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する。
【0027】
シリンダヘッド22は、ガスケット18を挟んで、シリンダブロック21上に載置されている。シリンダヘッド22は、シリンダ24及びピストン23と共に、燃焼室20を区画している。
【0028】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、点火プラグ15が1つずつ設けられている。点火プラグ15は、中心電極15aと接地電極15bとの間の放電ギャップが燃焼室20に位置するようにシリンダヘッド22に取り付けられている。
【0029】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。吸気ポート25には、吸気ポート25を開閉する吸気バルブ27と、燃料を噴射するインジェクター29とが設けられている。一方、排気ポート26には、排気ポート26を開閉する排気バルブ28が設けられている。
【0030】
内燃機関10は、燃焼室20において強いタンブル流35が形成されるように吸気ポート25が設計されている。内燃機関10において生じる所定のガス流動35は、タンブル流35である。燃焼室20では、吸気ポート25から流入した混合気が、燃焼室20の天井面(シリンダヘッド22において燃焼室20に露出する面)に沿って排気ポート26側へ流れ、その流れがシリンダ24の壁面およびピストン23の上面により縦方向に旋回する。タンブル流35は、吸気行程から圧縮行程に亘って形成される。
−放電装置−
【0031】
放電装置12は、各燃焼室20に対応して設けられている。放電装置12は、
図2に示すように、高電圧パルスを出力する点火コイル(パルス出力部)14と、該点火コイル14からの高電圧パルスが印加されると放電が生じる点火プラグ(放電生成部)15とを備えている。
【0032】
点火コイル14は、直流電源(例えば自動車用のバッテリー)に接続されている(図示省略)。点火コイル14は、電子制御装置30から点火信号を受けると、直流電源から印加された電圧を昇圧し、昇圧後の高電圧パルスを点火プラグ15に出力する。点火プラグ15では、高電圧パルスが印加されると、放電ギャップにおいて絶縁破壊が生じてスパーク放電が生じる。スパーク放電により放電プラズマ36が生成される。
【0033】
ここで、上述したように、燃焼室20では、
図3に示すように、吸気行程から圧縮行程に亘って強いタンブル流35が形成される。ピストン23が圧縮上死点の手前に位置する点火タイミングでは、放電ギャップにおける混合気のバルク流が、タンブル流35の影響により吸気ポート25側から排気ポート26側へ向かって流れている。このため、スパーク放電により形成された放電プラズマ36は、排気ポート26側へ流される。放電プラズマ36は、ガス流動35により引き伸ばされる。
【0034】
なお、本実施形態では、
図4に示すように、接地電極15bにおいて点火プラグ15の軸方向に延びる接続部(接地電極15bの基端側の部分)が、吸気ポート25の開口25aと排気ポート26の開口26aとの間の領域側に位置している。このため、放電ギャップにおけるガス流動が、上記接続部の影響を受けにくい。放電ギャップにおけるガス流動の向きは、2つの排気ポート26の開口26aの真ん中付近を向く。従って、放電プラズマ36が、2つの排気ポート26の開口26aの真ん中付近へ流される。放電プラズマ36は、タンブル流により、後述する第1アンテナ41側へ流される。
−電磁波放射装置−
【0035】
電磁波放射装置13は、燃焼室20において火炎の伝播中に、火炎面の到達前の領域に電磁波プラズマを生成して活性種を生成する活性種生成手段を構成している。電磁波放射装置13は、
図2に示すように、電磁波用電源31と電磁波発振器32と分配器33と複数のアンテナ41−43とを備えている。本実施形態では、各燃焼室20に対して、3つのアンテナ41−43が設けられている。なお、
図2では、1つの燃焼室20に対応するアンテナ41−43だけを記載している。
【0036】
電磁波用電源31は、電子制御装置30から電磁波駆動信号を受けると、電磁波発振器32にパルス電流を供給する。電磁波駆動信号はパルス信号である。電磁波用電源31は、電磁波駆動信号の立ち上がり時点から立ち下がり時点に亘って、所定のデューティー比でパルス電流を出力する。パルス電流は、電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘って継続的に出力される。
【0037】
電磁波発振器32は、例えばマグネトロンである。電磁波発振器32は、パルス電流を受けるとマイクロ波パルスを出力する。電磁波発振器32は、電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘ってマイクロ波パルスを継続的に出力する。なお、電磁波発振器32は、マグネトロンの代わりに、半導体発振器等の他の発振器を使用することもできる。
【0038】
分配器33は、3つのアンテナ41−43の間で、電磁波発振器32から出力されたマイクロ波を供給するアンテナを切り替える。分配器33は、電子制御装置30から分配信号を受けると、3つのアンテナ41−43に対して順番にマイクロ波を供給する。
【0039】
図3に示すように、3つのアンテナ41−43は、点火プラグ15側から、第1アンテナ41、第2アンテナ42、及び第3アンテナ43となっている。各アンテナ41−43は、例えばモノポールアンテナである。各アンテナ41−43では、その先端がマイクロ波の放射位置(輻射位置)となる。
【0040】
第1アンテナ41および第2アンテナ42は、シリンダヘッド22に埋設されている。第1アンテナ41および第2アンテナ42では、マイクロ波の放射端(先端)がシリンダヘッド22の表面(燃焼室の天井面)から僅かに突出している。
図4に示すように、第1アンテナ41および第2アンテナ42の放射端は、2つの排気ポート26の開口26aの間の真ん中に位置している。第1アンテナ41および第2アンテナ42の放射端は、燃焼室20の径方向に沿って並んでいる。
【0041】
また、第3アンテナ43は、ガスケット18に埋設され、マイクロ波の放射端がガスケット18の内周面とほぼ面一になっている。第3アンテナ43は、第1アンテナ41及び第2アンテナ42よりも放電装置12から離れている。
【0042】
各アンテナ41−43の入力端(基端)は、分配器33に接続されている。各アンテナ41−43では、分配器33から供給されたマイクロ波が、その放射端から燃焼室20へ放射される。
【0043】
本実施形態では、第1アンテナ41の放射端が、後述する点火動作において、タンブル流35により流された放電プラズマ36にマイクロ波が照射されるように、放電ギャップにおけるガス流動の方向に対して放電ギャップの下流側に位置している。第1アンテナ41の放射端は、燃焼室20の天井面において点火プラグ15に近接している。第1アンテナ41の放射端は、放電プラズマ36において放電ギャップから最も離れた屈曲部分(
タンブル流により最も流された部分)に対面している。なお、第1アンテナ41の放射端は、点火動作においてマイクロ波プラズマを生成する全ての運転領域において、放電プラズマ36の屈曲部分に対面する。
【0044】
なお、本実施形態では、第2アンテナ42および第3アンテナを点火プラグ15に対して第1アンテナ41と同じ側に設けているが、第2アンテナ42および第3アンテナを点火プラグ15に対して第1アンテナ41と反対側に設けてもよい。
−点火動作−
【0045】
放電装置12及び電磁波放射装置13による混合気の点火動作について説明する。点火動作では、放電装置12が放電プラズマを生成する放電動作と、電磁波発振器32を駆動して第1アンテナ41からマイクロ波を放射する放射動作とが同時期に行われ、放電プラズマ36にマイクロ波のエネルギーを供給して燃焼室20の混合気を着火させる。
【0046】
点火動作では、電子制御装置30が点火信号および電磁波駆動信号を出力する。そうすると、放電装置12では、点火信号の立ち下がりタイミングに、点火コイル14が高電圧パルスを出力し、点火プラグにおいてスパーク放電が生じる。一方、電磁波放射装置13では、電磁波駆動信号の立ち上がり時点から立ち下がり時点までの期間に亘って、電磁波用電源31がパルス電流を継続的に出力する。そして、電磁波発振器32が、パルス電流を受けてマイクロ波パルスを分配器33へ継続的に発振する。なお、マグネトロン32の動作遅れにより、マイクロ波の発振期間の開始および終了は、パルス電流の出力期間の開始および終了に対して僅かに遅れる。
【0047】
点火動作では、
図5に示すように、マイクロ波の発振期間の開始直後にスパーク放電が生じるように、点火信号および電磁波駆動信号が出力される。マイクロ波の発振期間の最初は、分配器33がマイクロ波パルスの供給先を第1アンテナ41へ設定する。マイクロ波は、第1アンテナ41から燃焼室20へ放射される。スパーク放電が生じるタイミングでは、第1アンテナ41の放射端の近傍に、燃焼室20において電界強度が相対的に強い強電界領域51が形成されている。
図3(a)に示すように、スパーク放電による放電プラズマ36は、強いタンブル流により排気ポート26側へ流され、その屈曲部分が強電界領域51に入る。マイクロ波は、放電プラズマ36の屈曲部分へ照射される。放電プラズマ36は、マイクロ波のエネルギーを吸収して太くなる。そして、強電界領域51において、比較的大きなマイクロ波プラズマになる。強電界領域51では、燃焼室20の混合気が、マイクロ波プラズマにより体積着火される。そして、着火位置からシリンダ24の壁面へ向かって、火炎面が外側へ広がる。
−火炎伝播促進動作−
【0048】
1回の燃焼サイクルでは、点火動作後の火炎伝播中に、火炎伝播速度を増大させるための火炎伝播促進動作が行われる。
【0049】
本実施形態では、火炎伝播促進動作として、第1動作および第2動作が行われる。一連の第1動作および第2動作では、マイクロ波の供給先が、第1アンテナ41から、第2アンテナ42、第3アンテナ43の順番で切り替えられる。なお、電磁波駆動信号のパルス幅は、火炎面がシリンダ24の壁面に到達した直後までマイクロ波パルスの出力が継続されるように設定されている。
【0050】
第1動作では、電子制御装置30が、第2アンテナ42の放射端に火炎面が到達する直前に、第1の分配信号を出力する。例えば、第1の分配信号は、火炎面が第1アンテナ41と第2アンテナ42との真ん中付近を通過するタイミングで出力される。分配器33は、第1の分配信号を受けると、マイクロ波の供給先を第2アンテナ42に切り替える。そうすると、
図3(b)に示すように、第2アンテナ42から燃焼室20へマイクロ波が放射され、第2アンテナ42の放射端の近傍に強電界領域52が形成される。第2アンテナ42からは、火炎面が強電界領域52を通過した直後までマイクロ波が放射される。
【0051】
強電界領域52では、例えば、火炎から飛び出した自由電子が加速される。加速された自由電子は、周囲のガス分子に衝突する。衝突されたガス分子は電離する。ガス分子の電離に伴い放出された自由電子も、強電界領域52において加速され、周囲のガス分子を電離させる。このように、強電界領域52では、雪崩式にガス分子の電離が生じ、マイクロ波プラズマが生成される。
【0052】
強電界領域52では、マイクロ波プラズマにより、酸化力の強い活性種(例えばOHラジカル)が生成される。本実施形態では、混合気の着火後の火炎伝播中に、火炎面が到達する前の領域に活性種が生成される。火炎面は、活性種が生成された領域を通過する。従って、火炎面における酸化反応が活性種により促進され、火炎伝播速度が増大する。また、強電界領域52のマイクロ波プラズマと、弱電離プラズマの火炎面が接触する状態になるため、火炎面にマイクロ波のエネルギーが供給され、それによっても火炎伝播速度が増大する。
【0053】
続いて、第2動作では、電子制御装置30が、第3アンテナ43の放射端に火炎面が到達する直前に、第2の分配信号を出力する。例えば、第2の分配信号は、火炎面が第2アンテナ42と第3アンテナ43との真ん中付近を通過するタイミングで出力される。分配器33は、第2の分配信号を受けると、マイクロ波の供給先を第3アンテナ43に切り替える。そうすると、
図3(c)に示すように、第3アンテナ43の放射端の近傍に強電界領域53が形成される。強電界領域53では、マイクロ波プラズマが生成される。第2動作では、第1動作と同様に、火炎面の到達前の領域にマイクロ波プラズマが生成され、マイクロ波プラズマにより火炎伝播速度が増大する。
−実施形態の効果−
【0054】
本実施形態では、火炎面の到達前の領域に活性種を生成し、活性種が生成された領域を火炎面が通過するようにしている。従って、火炎面における酸化反応が活性種により促進され、火炎面の移動速度を向上させることができる。
−実施形態の変形例1−
【0055】
変形例1では、
図6に示すように、吸気および排気ポート25,26の開口25a,26aの間の領域の数に合わせて、4つのアンテナ群が設けられている。
【0056】
第1のアンテナ群(
図6において点火プラグ15の右側のアンテナ群)は、第1アンテナ41、第2アンテナ42および第3アンテナ43により構成されている。残りの第2、第3および第4のアンテナ群は、第2アンテナ42および第3アンテナ43により構成されている。電磁波放射装置13では、各アンテナ群に対応して、電磁波用電源31、電磁波発振器32および分配器33を有する電磁波ユニットが設けられている。
【0057】
第1アンテナ41は、上記実施形態の第1アンテナ41と同じタイミングでマイクロ波が供給される。また、各第2アンテナ42は、点火プラグ15からの距離が上記実施形態の第2アンテナ42と等しく、上記実施形態の第2アンテナ42と同じタイミングでマイクロ波が供給される。また、各第3アンテナ43は、上記実施形態の第3アンテナと同様にガスケット18に埋設され、上記実施形態の第3アンテナ43と同じタイミングでマイクロ波が供給される。
【0058】
この変形例1では、第1アンテナ41から放射されたマイクロ波のエネルギーを放電プラズマ36へ供給して混合気を着火した後に、各第2アンテナ42から放射するマイクロ波により生成されたマイクロ波プラズマ、さらに各第3アンテナ43から放射するマイクロ波により生成されたマイクロ波プラズマにより火炎伝播速度が増大する。
−実施形態の変形例2−
【0059】
変形例2では、
図7に示すように、第2アンテナ42および第3アンテナ43のように火炎面が到達する前の領域にマイクロ波を供給するためのアンテナとして、吸気および排気バルブ27,28のバルブヘッドの前面(燃焼室側の面)にアンテナ27a,28aが設けられている。各アンテナ27a,28aに接続する伝送線路は、バルブシャフト内に設けられている。電磁波発振器32から出力されたマイクロ波は、非接触給電により伝送線路へ供給される。
−実施形態の変形例3−
【0060】
変形例3では、
図8に示すように、上記変形例2とは異なり、排気バルブ28のバルブヘッドの前面にアンテナ28aを設けずに、吸気バルブ27のバルブヘッドの前面にだけアンテナ27aが設けられている。
【0061】
ここで、燃焼室20の天井面付近において、タンブル流35により混合気のバルク流が吸気ポート25側から排気ポート26側へ流れる場合は、点火動作後の火炎の広がりが、排気ポート26側に比べて吸気ポート25側が遅くなる。変形例3では、電磁波放射装置13が、吸気バルブ27のバルブヘッドのアンテナ27aに火炎面が到達する前に、そのアンテナ27aから電磁波を放射して電磁波プラズマを生成する。その結果、このアンテナ27aの近傍の領域を通過する火炎面の速度が、電磁波プラズマにより生成された活性種により増大する。
【0062】
変形例3では、燃焼室20において中心部60の外側の領域のうち、火炎面の到達タイミングが相対的に遅い吸気ポート25側の領域において、火炎面の到達前に活性種が生成される。そのため、吸気ポート25側の領域を通過する火炎面の酸化反応が促進され、燃焼室20において中心部60から見た火炎の拡散状態の均一化を図ることができる。
−実施形態の変形例4−
【0063】
変形例4では、上記実施形態の第2アンテナ42および第3アンテナ43のように火炎面の到達前の領域にマイクロ波を供給するためのアンテナの放射位置が、燃焼室20においてノッキングの発生頻度が相対的に高い領域に位置している。例えば、アンテナ47の放射位置は、
図9に示すように、吸気ポート25の開口25aの外側に位置している。このアンテナ47は、ガスケット18に埋設されている。
【0064】
燃焼室20では、ノッキングの発生頻度が相対的に高い領域に火炎面が到達する前に、マイクロ波プラズマが生成され、そのマイクロ波プラズマの生成に伴って活性種が生成される。変形例4では、ノッキングが発生しそうな領域に活性種が生成されるので、その領域の手前で火炎面の速度が停滞することが抑制される。従って、ノッキングが発生する前に、ノッキングが発生しそうな領域に火炎を到達させることができるので、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0065】
なお、内燃機関10が、燃焼室20におけるノッキングの発生を検出するノックセンサ(ノック検出手段)を備えていてもよい。その場合は、電磁波放射装置13は、ノックセンサがノッキングの発生を検出した場合にだけ、アンテナ47に火炎面が到達する前に、アンテナ47からマイクロ波を放射してマイクロ波プラズマおよび活性種を生成する。ノッキングの発生直後の燃焼サイクルでは、ノッキングの発生領域の手前で火炎面の速度が停滞することが抑制される。従って、ノッキングの連続的な発生を抑制することができる。
−実施形態の変形例5−
【0066】
変形例5では、ノッキングの発生領域にマイクロ波プラズマを生成するためのアンテナ48が、
図10に示すように、燃焼室20の外周部分に沿って延びている。アンテナ48は、4つ設けられている。各アンテナ48は、吸気および排気ポート25,26の開口25a,26aの間を天井面の径方向に延びる各放射線61から、天井面の外周に沿って両側に延びている。
【0067】
また、内燃機関10は、燃焼室20においてノッキングが発生した場合にノッキングの発生領域を検出するノック領域検出器70(ノック領域検出手段)を備えている。ノック領域検出器70は、例えば、複数の光ファイバー71により燃焼室20の外周部分の複数箇所の発光を取り込み、OHラジカルに対応する波長帯域の発光強度が所定の閾値を超える発光があった領域をノック発生領域であると判断する。なお、このようにノック発生領域を判断するのは、ノッキングの発生に伴ってOHラジカルの発光強度が急激に強くなるためである。
【0068】
電磁波放射装置13は、ノック領域検出器70がノッキングの発生を検出した直後の燃焼サイクルにおいて、ノック発生領域側に位置する発生側アンテナ48に火炎面が到達する前に、発生側アンテナ48からマイクロ波を放射する。発生側アンテナ48の近傍には、マイクロ波プラズマの生成に伴って活性種が生成される。従って、発生側アンテナ48の近傍の手前で火炎の速度が停滞することが抑制され、当該燃焼サイクルにおけるノッキングの発生を防止でき、ノッキングの連続的な発生を抑制することができる。
−実施形態の変形例6−
【0069】
変形例6では、変形例5のようにノッキングの発生領域にマイクロ波プラズマを生成するためのアンテナ49が、
図11に示すように、燃焼室20のほぼ全周囲に亘って延びている。アンテナ49は、ガスケット18に埋設されている。
【0070】
電磁波放射装置13は、アンテナ49の表面において相対的に電界強度が強い強電界領域の位置を変える電界調節器を有している。電界調節器は、例えば、マイクロ波の伝送線路におけるインピーダンスを調節可能なスタブチューナである。スタブチューナは、例えばスタブにおいてグランドに短絡させる位置を調節することにより、スタブとして動作する長さを可変に構成されている。
【0071】
電磁波放射装置13は、ノック領域検出器70の検出結果に基づいて、強電界領域がノック発生領域又はその近傍に位置するように電界調節器を調節する。そうすると、強電界領域の近傍にマイクロ波プラズマが生成される。これにより、ノッキングの発生領域、または該発生領域の近傍にマイクロ波プラズマが生成されることになる。
−実施形態の変形例7−
【0072】
変形例7では、
図12に示すように、上記変形例1のアンテナ群の代わりに、棒状のアンテナ46が設けられている。各アンテナ46は、吸気および排気ポート25,26の開口25a,26aの間の領域において、燃焼室20の天井面の径方向に延びている。各アンテナ46は、点火プラグ15の少し外側からシリンダ24の壁面の近傍まで真っ直ぐ延びている。なお、少なくとも排気ポート26の開口26aの間のアンテナ46(
図12において点火プラグ15の右側のアンテナ)は、その内端が放電プラズマ36の屈曲部分に対面する。
【0073】
電磁波放射装置13では、各アンテナ46に対応して、電磁波用電源31および電磁波発振器32を有する電磁波ユニットが設けられている。各電磁波ユニットは、上記変形例1とは異なり分配器33を有しておらず、その代わりに、アンテナ46の表面において相対的に電界強度が強い強電界領域の位置を変化させる電界調節器を有している。
【0074】
各電磁波ユニットでは、点火動作の際に、強電界領域がアンテナ46の内端の表面に位置するように電界調節器を動作させる。排気ポート26の開口26aの間のアンテナ46の放射位置は、タンブル流35により流された放電プラズマ36に対面する。そのため、マイクロ波のエネルギーが、放電プラズマ36に効果的に吸収される。その結果、放電プラズマ36が太くなり、混合気が体積着火される。
【0075】
混合気の着火後の火炎伝播中も、各アンテナ46からのマイクロ波の放射が継続される。各アンテナ46からのマイクロ波の放射位置は、電界調節器により、火炎面より先に外側へ移動させる。火炎面の到達前の領域は、強電界領域になる。強電界領域は外側へ移動してゆき、強電界領域で生成されるマイクロ波プラズマも、強電界領域の移動に伴って外側へ移動してゆく。その結果、活性種が生成された領域を火炎面が通過することになり、火炎面における酸化反応が活性種により促進され、火炎伝播速度が向上する。
《その他の実施形態》
【0076】
上記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0077】
上記実施形態において、内燃機関10が、ディーゼルエンジンのように拡散燃焼を行うものであってもよい。活性種生成手段は、噴霧燃料により形成された火炎面が到達する前に活性種を生成する。
【0078】
また、上記実施形態において、アンテナが、燃焼室20に露出しておらず、絶縁体または誘電体により覆われていてもよい。