(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003181
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】自動車用侵入検知装置
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20060101AFI20160923BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20160923BHJP
G08B 13/00 20060101ALI20160923BHJP
B60R 25/31 20130101ALI20160923BHJP
G01S 15/04 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
G01V1/00 A
G01S7/521 B
G08B13/00 B
B60R25/31
G01S15/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-96478(P2012-96478)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-224841(P2013-224841A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】稲田 貴裕
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−237483(JP,A)
【文献】
特開2006−103576(JP,A)
【文献】
特開2003−036482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00
B60R 25/31
G01S 7/521
G01S 15/04
G08B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンカーの車室内空間に向けて発信された超音波発信手段からの超音波を、超音波受信手段で受信して車室内への侵入を検出するようにした自動車用侵入検知装置において、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段がそれぞれ、前席シートの上端よりも低い位置に配設され、
前記超音波発信手段から発信される超音波の経路が、フロントウインドガラスでの前反射部を有して、該前反射部に向けて斜め前上方に向かう第1経路と、該前反射部から前席シートの上方空間を通って前後方向に移動されると共に車室内の低い位置に向かう第2経路とを有するように設定され、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段が、前記第1経路上と前記第2経路上における車室内の低い位置のいずれかに配設されている、
ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記超音波発信手段が、センターコンソールに配設されている、ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2経路が、リアウインドガラスでの後反射部を有して、該後反射部での反射によって斜め前下方に向かう経路を有している、ことを特徴とする自動車用侵入検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して車室内への侵入を検出するようにした自動車用侵入検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内への侵入を検出(検知)するため、超音波発信手段から車室内に超音波を発信すると共に、車室内に発信された超音波を超音波受信手段で受信することが行われている。特に、受信状態の変化によって、車室内に動く物が存在することが検出できる。すなわち、例えば窃盗者が車室内に手を差し入れたり体ごと侵入した際に、少なからず車室内に動きが生じることとなって受信手段による超音波の受信状態が変化され、窃盗の危険があるということを検出することができる。
【0003】
特許文献1には、車室内上方を覆うルーフ部の前端側に、超音波発信手段と超音波受信手段とを有するセンサユニットを配設したものが開示されている。高い位置にある超音波発信手段から発信される超音波を斜め下方に向けることにより、車室内の前後方向広い範囲に渡って検知エリアを設定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−237540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オープンカーにあっては、通常は車室内空間の少なくとも上方が開口されており、必要に応じて、ハードトップあるいはソフトトップからなる開閉式のルーフ部材によって車室内が上方から覆われ、この覆われた状態を前提として自動車用侵入検知装置が作動されることになる。
【0006】
オープンカーにあっては、超音波発信手段、超音波受信手段をいかに配設するかが問題となる。すなわち、超音波発信手段や超音波受信手段を含むユニットがかなり大型となると共にこれへの配線を考慮する必要がある。このような観点から、開閉式のルーフ部材に超音波発信手段や超音波受信手段を配設することは難しいものとなる。また、超音波発信手段や超音波受信手段を高所としてのフロントウインドガラスの上端部に配設することも困難である。
【0007】
上述のように、オープンカーにあっては、超音波発信手段や超音波受信手段を車室内空間の高い位置に設けることが事実上不可能である。このため、超音波発信手段や超音波受信手段を車室内の低い位置に配設することが考えられる。しかしながら、この場合は、超音波発信手段から発信される超音波を、前席シートを超えて車室内の前後方向ほぼ全長に渡って伝達することが難しくなる。すなわち、前席シートは例えば布材等で形成されて、超音波を吸収する作用があるため、例えば、車室内の前端部低い位置に超音波発信手段を設けて、斜め上方かつ後方へ超音波を発信しても、前席シートで超音波が遮られてしまい、前席シートの後方に超音波を到達させることが難しくなる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、超音波発信手段および超音波受信手段を車室内の低い位置に配設した場合でも、前席シートを挟んだ前方空間と後方空間との両方に超音波を十分に伝達させて、車室内の前後方向広い範囲に渡って検知エリアを設定できるようにした自動車用侵入検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、
フロントウインドガラスを反射部材
として有効に利用して、超音波を前席シートの前方空間と後方空間との両方に跨って伝達されるようにしてある。具体的には、本発明にあっては、次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
オープンカーの車室内空間に向けて発信された超音波発信手段からの超音波を、超音波受信手段で受信して車室内への侵入を検出するようにした自動車用侵入検知装置において、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段がそれぞれ、前席シートの上端よりも低い位置に配設され、
前記超音波発信手段から発信される超音波
の経路が、フロントウインドガラスでの前反射部を有して、該前反射部に向けて斜め前上方に向かう第1経路と、該前反射部から前席シートの上方空間を通って前後方向に移動されると共に車室内の低い位置に
向かう第2経路とを有するように設定され、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段が、前記第1経路上と前記第2経路上における車室内の低い位置のいずれかに配設されている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、超音波発信手段および超音波受信手段を車室内の低い位置に配設しつつ、超音波発信手段からの超音波が、前席シートの前方空間、前席
シートの直上方空間、前席シート後方空間に伝達されて、車室内の前後方向広い範囲に渡って検知エリアを設定することができる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわ
ち、
【0011】
前記超音波発信手段
が、センターコンソールに配設されている、ようにしてある(請求項
2対応)。この場
合、センターコンソールという機器類の配設位置として極めて好ましい位置に超音波発信手段を配設することができる。
【0012】
前記第2経路が、リアウインドガラスでの後反射部を有して、該後反射部での反射によって斜め前下方に向かう経路を有している、ようにしてある(請求項3対応)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波発信手段および超音波受信手段を車室内の低い位置に配設した場合でも、前席シートを跨いで前方空間と後方空間との両方に超音波を十分に伝達させて、車室内の前後方向広い範囲に渡って検知エリアを設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】オープンカーのインストルメントパネル付近の様子を示す斜視図。
【
図2】
図1に示すオープンカーにおいて、超音波の伝達方向を示す簡略平面図。
【
図3】超音波発信手段と超音波受信手段とを含むユニット体と、そのカバー部材を示す分解斜視図。
【
図5】反射を利用した超音波伝達の第1の
参考例を示す簡略側面図。
【
図6】反射を利用した超音波伝達の第2の
参考例を示す簡略側面図。
【
図7】反射を利用した超音波伝達の第3の
参考例を示す簡略側面図。
【
図8】反射を利用した超音波伝達の
本発明実施例を示す簡略側面図。
【
図9】反射を利用した超音波伝達の
第4の参考例を示す簡略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、
図2において、Vは、本発明が適用されたオープンカー式の自動車である。自動車Vの車室内にあるインストルメントパネル1のうち、車幅方向略中央部上面に、後述する超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとが互いに近接して配設されている。
【0016】
図3に示すように、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとは、インストルメントパネル1に固定されるユニット体Uに組み込まれ、インストルメントパネル21への組付け後の状態が
図1、
図2に示される。
図3において、ユニット体Uは、センサユニット1と、取付部材2と、カバー部材3とを有する。取付部材2の前面側に対して、センサユニット1が固定される。また、取付部材2の後面側に、カバー部材3が固定される。
【0017】
取付部材2は、左右一対の取付孔部4,5を有する。取付孔部4に、センサユニット1に接続された超音波発信手段T(の超音波振動子)が嵌合,保持される。また、取付孔部5に、センサユニット1に接続された超音波受信手段R(の超音波振動子)が嵌合、保持される。なお、超音波発信手段T(超音波振動子)は、センサユニット1から駆動電圧を受けて振動されて、超音波を発信する。また、超音波受信手段R(超音波振動子)は、超音波を受けると電圧を発生し、発生された電圧はセンサユニット1によってA/D変換されて、後述する盗難防止の制御のための信号として用いられる。
【0018】
取付部材2の後面側に固定されたカバー部材3は、取付孔部4,5に対応した位置において、超音波通過用のスリット状の開口部10,11を有する。カバー部材3は、インストルメントパネル21への取付後の状態では、インストルメントパネル21の表面の一部を構成する。すなわち、超音波発信手段T、超音波受信手段R、取付部材2は、インストルメントパネル21内に収納されて、車室内からは目視できないようになっている。
【0019】
図2において、運転席シート25と助手席シート26とが、前席シートを構成する。そして、実施形態では、自動車Vは、2座席用とされて、後席を有しないものの、バッグ類等の小物を置けるスペースを有するようになっている。勿論、自動車Vとしては、前席シートの後方に後席シートを有するものであってもよい。そして、フロントウインドガラスが符合27で示され、センターコンソールが符合28で示される。
【0020】
図4は、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとが組み込まれた盗難防止用の制御系統例が示される。この
図4において、Cはマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)、20は警報器である。超音波発信手段Tから車室内に発信された超音波が超音波受信手段Rによって受信されるが、この受信状態は、車室内に動くものが存在しない定常状態と、動くものが存在する異常状態とで相違される。すなわち、車室内に動くものが存在すると、定常状態に比してドップラー効果が変化されるので、盗難の危険がある異常状態であると判断可能である。上記定常状態であるか異常状態であるかの判断は、コントローラCで行われる。
【0021】
コントローラCによって異常状態であると判断されると、警報器20が作動される。警報器20の作動としては、周囲に異常を伝達する手法であれば適宜のものを採択することができ、例えば大音量での警報音を発生させたり(警報器20としてスピーカを利用)、スモールランプを点滅させる等(警報器20として車幅灯を利用)、これらを組み合わせて作動させることもできる。なお、警報器20の作動条件として、自動車Vのドアが全てロックされ、しかも開閉式のルーフ部材によって車室内上方空間が完全に覆われている状態であることが前提とされる。
【0022】
次に、
第1の参考例となる図5を参照しつつ、反射を利用した超音波の好ましい伝達経路設定例について説明する。なお、
図5において、閉状態とされた開閉式のルーフ部材29が一点鎖線でもって示される。
【0023】
図5においては、インストルメントパネル21の車幅方向略中央部上面に設置された超音波発信手段Tから発信される超音波は、矢印で示すように、側面視において、斜め上後方へ発信されて、反射部材としてのフロントウインドガラス27の上端部に指向される。そして、超音波は、フロントウインドガラス27の上端部で反射されて、斜め下後方を向かうように指向される。フロントウインドガラス27の上端部で反射された超音波は、前席シートとしての運転席シート25,助手席シート26の上方空間を通って、その後方の低い位置へ指向される。なお、
図5矢印とは逆方向に進む超音波が、超音波受信手段Rで受信されることになる。
【0024】
図5のような設定により、運転席シート25や助手席シート26の前方空間と直上方空間と後方空間との広い範囲に渡って検知エリアが設定されることになる。
図2に示すように、超音波発信手段Tから発信される超音波は、左右方向(車幅方向)に広がりを有するが、左右端方向へ発信される超音波は、フロントウインドガラス27が左右端に向かうにつれて後方へ位置するように湾曲されていることもあって、車幅方向にも十分に広がった検知エリアが設定されることになる。
【0025】
図6は、
第2の参考例を示すものである。本
参考例では、
図5の場合に比して、超音波の伝達経路そのものは同じである。ただし、超音波発信手段Tをインストルメントパネル21の車幅方向略中央部に配設する一方、超音波受信手段Rを、車室内後部の低い位置に配設してある。
図6の変形例として、超音波発信手段Tを車室内後部の低い位置に配設すると共に、超音波受信手段Rをインストルメントパネル21の車幅方向略中央部に配設するようにしてもよい。
【0026】
図7は、
第3の参考例を示すものである。本
参考例では、
図5の場合に比して、超音波の伝達経路そのものは同じである。ただし、超音波発信手段T及び超音波受信手段Rを、互いに近接させた状態で、車室内の後部の低い位置に配設してある。
【0027】
図8は、
本発明の実施形態を示すもので、超音波の反射部材として、開閉式のルーフ部材29の有するリアウインドガラス29aを利用するようにしてある。すなわち、超音波発信手段とよび超音波受信手段Rが、互いに近接した状態で、センターコンソール28に配設されている。そして、超音波発信手段Tから発信される超音波は、斜め上前方を向かうように、より具体的にはフロントウインドガラス27の上下方向中間部から上端部の間付近に向かうように指向される。超音波は、フロントウインドガラス27で反射されるが、この反射位置は、前席シート25,26の上端よりも高い位置とされている。そして、フロントウインドガラス27で反射された超音波は、ほぼまっすぐ(ほぼ水平に)後方に向けて指向されて、リアウインドガラス29aで反射されて、車室内後部の低い位置に指向される。
【0028】
図8に示す超音波の伝達経路のうち車室内後部の低い位置に超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとを互いに近接した状態で配設してもよく、あるいはセンターコンソール28と車室内後部の低い位置とのいずれか一方に超音波発信手段Tを配設する一方、他方に超音波受信手段Rを配設してもよい。
【0029】
図9、
図10は、
第4の参考例を示すもので、反射部材として閉位置(上昇位置)にある左右のサイドウインドガラス30、31を利用した例を示す。すなわち、インストルメントパネル21に配設した超音波発信手段Tから斜め右上後方つまり右サイドウインドガラス30の上端部に指向させて超音波を発信させる。超音波は、サイドウインドガラス30で反射されて、斜め左後方に向けて伝達されて、車室内の高い位置で車幅方向に横断されて、左サイドウインドガラス31に到達される。そして、この左サイドウインドガラス31で反射された超音波が、右後方下方を向くように、つまり車室内後部の低い位置に指向される。このような超音波の伝達は、サイドウインドガラス30,31が、上方に向かうにつれて徐々に車幅方向内方側に向かうように湾曲していることを利用して設定される。なお、超音波発信手段Tから発信された超音波を、当初は左サイドウインドガラス31に指向させるようにしてもよい(
図9、
図10に示す超音波経路とは左右対称の超音波経路となる)。勿論、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとは、前後に分散配置してもよく、あるいは車室内後部に近接した状態で配設してもよい。
【0030】
ここで、
図4破線で示すように、超音波発信手段T、超音波受信手段Rにコーン(アンテナ)6あるいは7を設けてもよい。実施形態では、各コーン6,7を、例えば末広がり状の円錐形状に形成すると共に、取付部材2を利用して構成するようにしてある。すなわち、
図3破線で示すように、取付部材2には、取付孔部4(つまり超音波発信手段T)に連なると共に後方が車室内に開口された発信用のコーン形成用凹部6が形成されている。同様に、取付部材2には、取付孔部5(つまり超音波受信手段R)に連なると共に後方が車室内に開口された受信用のコーン形成用凹部7が形成されている。このように、取付部材2は、超音波発信手段Tおよび超音波受信手段Rのコーンを兼用している。コーン6、7を用いることにより、超音波ビームを所望方向に指向させる上で好ましいものとなる。
【0031】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。超音波発信手段Tを複数設けてもよく、超音波受信手段Rを複数設けてもよい。また、超音波発信手段Tの数と超音波受信手段Rの数とが相違していてもよいものであ
る。検知エリアを形成に際しては、メインビームの他に、メインビームとは異なる方向に指向されるサイドロブを利用するようにしてもよい。コーンは、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとのいずれか一方のみに設けるようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば自動車の盗難防止装置用として適用して好適である。
【符号の説明】
【0033】
V:自動車
T:超音波発信手段
R:超音波受信手段
U:ユニット体
C:コントローラ
1:センサユニット
2:取付部材
3:カバー部材
4、5:取付孔部
10,11:開口部
20:警報器
21:インストルメントパネル
25:運転席シート(前席シート)
26:助手席シート(前席シート)
27:フロントウインドガラス
28:センターコンソール
29:ルーフ部材(開閉式)
29a:リアウインドガラス
30、31:サイドウインドガラス