【実施例1】
【0039】
次に、実施例1に係る車両のウインドシール構造について、
図3〜
図5に基づいて説明する。尚、前記参考技術と異なる構成についてのみ説明し、参考技術と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
参考技術では、シール部材を延長部13を備えたガラスラン10によって構成したが、実施例1では、シール部材をゴム製のガラスラン20と、このガラスラン20よりも高剛性の合成樹脂製装飾用ガーニッシュ30によって構成している。
【0040】
図3〜
図5に示すように、ガラスラン20は、第1溝形成部21と、ガラスラン側固定部22等が一体形成され、合成樹脂製のガーニッシュ30は、第2溝形成部31と、ガーニッシュ側固定部32と、第2溝形成部31の外側部分から側壁部6cの外面に沿って後方へ延びるガーニッシュ本体部33等が一体形成されている。
第1溝形成部21の外側前端部分には、閉塞状態のウインドガラス5に外側から当接可能なアウタリップ部21aが設けられ、第2溝形成部31の外側前端部分には、アウタリップ部21aを外側から押圧可能なガーニッシュ前端部31aが設けられている。
ガラスラン側固定部22には、複数の凸部22aと、その前端部分に閉塞状態のウインドガラス5に内側から当接可能なインナリップ部22bが形成されている。
【0041】
シール部材の溝形成部11Aは、第1溝形成部21と、この第1溝形成部21の外側に近接状に配置され且つ第1溝形成部21に嵌合可能な第2溝形成部31とから構成されている。これら第1,第2溝形成部21,31は、後枠部3cに装着された状態において、走行負圧等によってウインドガラス5に対して直交方向の力が作用したとき、ウインドガラス5による車幅方向への変位によって前方に変形し、ウインドガラス5に対して力が作用しないとき、第2溝形成部31の底部分が縦壁部6dに密着すると共に第1溝形成部21の底部分が第2溝形成部31の底部分に密着する。
【0042】
シール部材の固定部12Aは、支持部8に固定されるガーニッシュ側固定部32と、支持部8にガーニッシュ側固定部32を固定するガラスラン側固定部22とから構成されている。ガーニッシュ側固定部32は、ガーニッシュ前端部31aよりも前方位置において第2溝形成部31の内側前端部分に連なるように形成され、ガラスラン側固定部22は、アウタリップ部21aよりも前方位置において第1溝形成部21の内側前端部分に連なるように形成されている。ガラスラン側固定部22は、複数の凸部22aを介して支持部8とガーニッシュ側固定部32とを挟持している。
【0043】
以上により、
図5に示すように、固定部12Aがアウタリップ部21aとウインドガラス5の当接部よりも前方へ所定距離L離隔して配置されているため、走行負圧等によってウインドガラス5に対して外側直交方向の力F1が作用したとき、第1,第2溝形成部21,31(溝形成部11A)を介して力F1の反力である内側直交方向に向かう力F2が発生し、第1,第2溝形成部21,31に両固定部22,32(固定部12A)を中心とした反時計回りのモーメントMが発生する。これらのモーメントMによって第1,第2溝形成部21,31に反時計回りに前方へ湾曲する変形が生じる。これにより、アウタリップ部21aの押圧力とガーニッシュ前端部31aの押圧力とを合わせた押圧力でアウタリップ部21aをウインドガラス5に当接させている。
【0044】
また、ガーニッシュ30はガラスラン20よりも高剛性であるため、高速走行時、ウインドガラス5に走行負圧が作用した際、ガラスラン20のみを設けた場合に比べて、ガーニッシュ30が走行負圧によって生じるモーメントMに起因するガラスラン20の局部的な変形を抑制する。更に、ガラスラン20が比較的剛性の低い素材で形成しているため、ウインドガラス5とガラスラン20との密着性を向上し、ガラスラン20の全域に亙ってシール性を確保できる。
【0045】
図3〜
図5に示すように、意匠面としてのガーニッシュ本体部33には、後端部分にガーニッシュ本体部33を側壁部6cの外面に沿って変位可能に支持するための被係合部33aが形成され、上端部分に段下げ状の段差部33bが夫々形成されている。
被係合部33aは、断面略J字状に形成され、外側フランジ部6b,7bによって構成された係合部9と間隙を形成した状態で係合可能に構成されている。
【0046】
支持部8によるガラスラン20及びガーニッシュ30を固定するための支持力は、係合部9によるガラスラン20及びガーニッシュ30の支持力よりも大きく設定されている。
これにより、第1,第2溝形成部21,31による反時計回り方向の変形に起因して第2溝形成部31と縦壁部6dとの間に隙間が発生したとき、後方に延びるガーニッシュ本体部33が第2溝形成部31の変形に追従して前方へ移動し、前記隙間を外側から覆って外部から視認されないように遮蔽している。
【0047】
図4に示すように、ガーニッシュ30は、後枠部3cに沿って上下方向に連続的に延び、その上端において段差部33bがガーニッシュ40に連結可能に構成されている。
ガーニッシュ40は、ガーニッシュ30と同様に、溝形成部41と、固定部42と、ガーニッシュ本体部43と等を備えている。溝形成部41の後端部分には、ガーニッシュ30の段差部33bが挿通される矩形状の切欠部44が形成されている。
【0048】
この切欠部44は、ガーニッシュ30の中段部が側壁部6c外面に設けられた係止ピン(図示略)に係止されたとき、ガーニッシュ30の上下移動を規制し、ガーニッシュ30を上下方向に位置決めしている。また、切欠部44の前後長は、段差部33b(ガーニッシュ30)の前後長よりも所定長さ前側に長く形成され、第2溝形成部31(ガーニッシュ30)の前方移動を許容可能に構成されている。
【0049】
ドアサッシュ3に対してガラスラン20とガーニッシュ30,40を装着する場合、後枠部3cの係合部9にガーニッシュ30の被係合部33aを係合すると共に側壁部6c外面に設けられた係止ピンにガーニッシュ30の中段部を係止し、ガーニッシュ30を後枠部3cに対して仮固定した後、ガーニッシュ30の段差部33bが切欠部44内に挿通された状態で上枠部3bの係合部にガーニッシュ40の被係合部43aを係合する。
次に、支持部8とガーニッシュ側固定部32を重合させ、ガラスラン側固定部22によって支持部8とガーニッシュ側固定部32を挟持し、第2溝形成部31に第1溝形成部21を嵌合する。上枠部3bについても、同様の手順でガラスラン20を装着する。
【0050】
次に、実施例1に係る車両のウインドシール構造の作用・効果について説明する。
この車両のウインドシール構造によれば、シール部材はガラスラン20とガーニッシュ30を備え、溝形成部11Aが、ガラスラン20の第1溝形成部21と、この第1溝形成部21の後側(ウインド開口外側)に近接状に位置するガーニッシュ30の第2溝形成部31とで構成され、固定部12Aが、支持部8に固定されるガーニッシュ側固定部32と、支持部8にガーニッシュ側固定部32を固定するガラスラン側固定部22とで構成され、ガーニッシュ30は、第2溝形成部31から側壁部6cの外面に沿って後方へ延びるガーニッシュ本体部33を備えている。
【0051】
これにより、ガラスラン20のシール機能を阻害することなく、外装用のガーニッシュ30によってガラスラン20をドアサッシュ3に位置決めでき、反時計回り方向のモーメントMに起因して第2溝形成部31と縦壁部6dとの間に発生する隙間をガーニッシュ本体部33によって遮蔽することができる。また、第1溝形成部21に発生する反時計回り方向のモーメントMに加えて第2溝形成部31に発生する反時計回り方向のモーメントMをガラスラン20のアウタリップ部21aに作用させることができ、一層シール性を高くできる。また、ガーニッシュ30はガラスラン20よりも高剛性であるため、高速走行時、ウインドガラス5に走行負圧が作用した際、ガラスラン20のみを設けた場合に比べて、ガーニッシュ30が走行負圧によるガラスラン20の局部的な変形を抑制する。それ故、ガラスラン20に対して走行負圧をウインドガラス5内側方向のモーメントMとして確実に作用させることができる。
更に、ガラスラン20が比較的剛性の低い素材で形成しているため、ウインドガラス5とガラスラン20との密着性を向上し、ガラスラン20の全域に亙ってシール性を確保できる。
【0052】
支持部8とガーニッシュ側固定部32を重合させ、ガラスラン側固定部22によって支持部8とガーニッシュ側固定部32を挟持し、第2溝形成部31に第1溝形成部21を嵌合する構成にしたため、本実施例のように外装用ガーニッシュ30によってガラスラン20をドアサッシュ3に固定する構成にした場合であっても、新たな固定部材を設けることなく外装用ガーニッシュ30とガラスラン20をドアサッシュ3に容易に装着することができ、取付作業性の向上を図ることができる。
【0053】
ドアサッシュ3のアウタパネル6の後端部に形成された外側フランジ部6bとドアサッシュ3のインナパネル7の後端部に形成され外側フランジ部6bと接合される外側フランジ部7bとを設け、外側フランジ部6bと外側フランジ部7bとでシール部材の係合部9を形成し、ガーニッシュ本体部33の被係合部33aが係合部9に支持されると共に、支持部8によるシール部材の支持力を係合部9によるシール部材の支持力よりも大きく設定したため、シール性向上効果を阻害することなく、簡単な構造でガーニッシュ30をドアサッシュ3に装着することができる。
【0054】
ガーニッシュ本体部33が側壁部6cの外面に沿って変位可能にガーニッシュ本体部33の被係合部33aが係合部9に係合されているため、第2溝形成部31によるガーニッシュ側固定部32を中心とした変形を阻害することなく、ガーニッシュ30の取付剛性を確保することができる。
【0055】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例1においては、ガーニッシュ30が第2溝形成部31から側壁部6cの外面に沿って後方へ延びるガーニッシュ本体部33と、その後端位置において係合部9に支持された被係合部33aとを備えているが、
図6に示すように、ガーニッシュ30Aのガーニッシュ本体部33Aの後端部分を、参考技術と同様に後側部分を短く形成し、係合部9に支持されない構造に形成しても良い。尚、
図6において、実施例1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
この構成の場合、実施例1と同様に、走行負圧を確実にウインド開口内側方向のモーメントとして作用させることができると共に、ガーニッシュ30Aとガラスラン20のサッシュ3への取付作業性を簡単化することができる。
【0056】
2〕前記実施例おいては、車両のフロントドアに適用した例を説明したが、少なくとも、ウインド開口を開閉可能なウインドカラスを備えたドアであれば良く、リヤドア等フロントドア以外のドアに適用することができる。また、ドアサッシュの後枠部を例として説明したが、上下方向に傾斜した前枠部に適用することも可能である。
【0057】
3〕前記実施例においては、ドアサッシュの内縁全域に連なるガラスランの例を説明したが、前枠部、上枠部、後枠部毎に分割したガラスランでもよく、また、成形の難しいコーナー部を各枠部とは別に準備しても良い。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。