特許第6003186号(P6003186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003186
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】車両のウインドシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/76 20160101AFI20160923BHJP
   B60J 10/88 20160101ALI20160923BHJP
   B60J 10/32 20160101ALI20160923BHJP
【FI】
   B60J10/76
   B60J10/88
   B60J10/32
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-99927(P2012-99927)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-226919(P2013-226919A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00573139(EP,A1)
【文献】 特開昭63−215418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/76
B60J 10/32
B60J 10/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルとによって形成された車両用ドアのウインド開口を上下方向に開閉可能なウインドガラスと、閉塞状態のウインドガラスに当接してシール可能なシール部材とを備えた車両のウインドシール構造において、
前記ウインド開口の略上下方向に延びる縦枠部のアウタパネルが、車幅方向外側壁を形成する側壁部と、この側壁部のウインド開口内側端から車幅方向内側へ延びる縦壁部と、この縦壁部からウインド開口内側方向へ延びるアウタパネル内側フランジ部とを備え、
前記縦枠部のインナパネルが、前記アウタパネル内側フランジ部と接合されるインナパネル内側フランジ部を備え、
前記アウタパネル内側フランジ部とインナパネル内側フランジ部とによって前記シール部材を支持する支持部を形成し、
前記シール部材が、
前記ウインドガラスに直交方向の力が作用したとき、前記ウインドガラスの変位によって変形可能な溝形成部であって、ウインド開口内側端に前記ウインドガラスに車幅方向外側から当接可能なシール部を有する溝形成部と、
前記シール部よりもウインド開口内側において前記支持部に固定された固定部と、
前記溝形成部から前記側壁部の外面に沿ってウインド開口外側方向へ延びる延長部とを備え、
前記シール部材はガラスランとこのガラスランよりも剛性の高いガーニッシュを備え、
前記溝形成部が、前記ガラスランの第1溝形成部と、この第1溝形成部のウインド開口外側に近接状に位置する前記ガーニッシュの第2溝形成部とで構成され、
前記固定部が、前記支持部に固定されるガーニッシュ側固定部と、前記支持部に前記ガーニッシュ側固定部を固定するガラスラン側固定部とで構成され、
前記ガーニッシュは、前記第2溝形成部から前記側壁部の外面に沿ってウインド開口外側方向へ延びるガーニッシュ本体部を備えたことを特徴とする車両のウインドシール構造。
【請求項2】
前記縦枠部のアウタパネルのウインド開口外側端部に形成されたアウタパネル外側フランジ部と前記縦枠部のインナパネルのウインド開口外側端部に形成され前記アウタパネル外側フランジ部と接合されるインナパネル外側フランジ部とを設け、
前記アウタパネル外側フランジ部とインナパネル外側フランジ部とで前記シール部材の係合部を形成し、
前記ガーニッシュ本体部のウインド開口外側端部が前記係合部に支持されると共に、
前記支持部による前記シール部材の支持力を前記係合部による前記シール部材の支持力よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両のウインドシール構造。
【請求項3】
前記ガーニッシュ本体部が前記側壁部の外面に沿って変位可能にガーニッシュ本体部のウインド開口外側端部が前記係合部に係合されていることを特徴とする請求項2に記載の車両のウインドシール構造。
【請求項4】
前記縦枠部のアウタパネルの縦壁部は側壁部と鈍角をなすように構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両のウインドシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシール構造に関し、特に閉塞状態のウインドガラスに当接してシール可能なシール部材にウインド開口枠部材の側壁部の外面に沿ってウインド開口外側方向へ延びる延長部を設けた車両のウインドシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行時には、車体周囲の気圧が低下し、車室の内外に差圧が発生するため、ウインドガラスとドアサッシュとの隙間を介して空気が車室内から車室外へ吸い出される室内騒音(吸出音)を生じ、この吸出音は高速走行時程大きくなる傾向があることが知られている。それ故、車両のフロントドアやリヤドアのウインド開口には、ウインドガラスのシール性を確保しながらウインドガラスの昇降を摺動ガイドする樹脂製のガラスランが装着されている。このガラスランは、通常、ドアサッシュに固定された断面略コ字状の溝形成部と、この溝形成部からウインドガラス方向へ突出形成されたアウタリップ及びインナリップによって構成される。
【0003】
ウインド開口枠部材であるドアサッシュがドア本体部と一体的にプレス成形されたプレスドアは、ドアサッシュがドア本体部と別体に構成されたサッシュドアに比べて、ドアサッシュとドア本体部とを接合する接合工程を省略することができ、生産性、部品剛性、デザイン性等の面で有利である反面、形状が複雑なガラスラン支持部をプレス成形によって一体成形することが難しいという課題が存在する。そこで、プレスドアに対してガラスランを取り付けるためのガラスラン取付構造が種々提案されている。
【0004】
特許文献1のガラスランの取付構造は、ガラスランの取付基部を内側に嵌め込むための断面略コ字状のチャンネル部が一体形成された装飾用モール材をカシメピンやグリップ等を介してドアサッシュから延びるフランジ部に固定している。このガラスランの取付構造では、モール材や、このモール材をフランジ部に固定するためのカシメピン等を新たに設計する必要があり、部品点数の増加や製造コストの増加を招く。それ故、部品点数を増すことなくドアサッシュに対してガラスランを直接的に取り付けるガラスラン取付構造も公知である。
【0005】
図7に示すように、特許文献2のドアグラスランのコーナー部構造には、アウタパネル52とインナパネル53とを接合したプレスドアのドアサッシュ51において、アウタパネル52とインナパネル53とをウインド開口内側で接合してガラスラン取付用フランジ部54を形成し、ガラスラン55が、ウインドガラス60に外側から当接可能なアウタリップ57を有する溝形成部56と、ガラスラン取付用フランジ部54に固定されウインドガラス60に内側から当接可能なインナリップ58を有する固定部59とを備えた構造が開示されている。
【0006】
一般に、ガラスランの設計要件として、相反する性能を両立することが要求される。
車室内のシール性確保の点では、ガラスランとウインドガラスとの当接力が高い程ウインドガラスとドアサッシュとの間のシール性を高くすることができ、吸出音を低減できる。
しかし、ウインドガラスの摺動ガイドの点では、ガラスランとウインドガラスとの当接力が高い程ウインドガラス昇降時の摺動抵抗が大きくなるため、ウインドガラスを開閉駆動するための負荷が増加し、ウインドガラスのガイド性能は阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−302172号公報
【特許文献2】特開2000−71780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のドアグラスランのコーナー部構造は、ガラスラン55をガラスラン取付用フランジ部54に直接的に固定する構造であって、車室内のシール性確保とウインドガラス60のガイド性能については特に考慮されておらず、単に、ウインドガラス60に対して当接するアウタリップ57とインナリップ58を開示するものに過ぎない。
しかし、特許文献2に開示された構造において、ウインドガラス60に走行負圧等の直交方向の力が作用したとき、ガラスラン55の溝形成部56をウインドガラス60の変位によって変形可能に構成することにより(以下、変形構造という)、ガラスランの相反する性能を両立することができる。
【0009】
即ち、変形構造のウインドガラス60に対して走行負圧が車幅方向外側方向に作用した場合、ウインドガラス60が車幅方向外側に変位するため、アウタリップ57に対してウインドガラス60の変位に起因した車幅方向外側方向に向かう力が発生する。
図7に示すように、アウタリップ57には、ウインドガラス60の変位に基づき車幅方向外側方向に向かう力F1が作用し、ガラスラン取付用フランジ部54には、溝形成部56を介して力F1の反力である車幅方向内側方向に向かう力F2が作用する。
【0010】
この変形構造では、ガラスラン取付用フランジ部54をアウタリップ57よりもウインド開口内側へ配置し且つガラスラン55をガラスラン取付用フランジ部54に固定するための固定部59がアウタリップ57よりもウインド開口内側へ距離L離隔して配置されているため、ガラスラン55の溝形成部56に固定部59を中心とした反時計回りのモーメントMが発生し、このモーメントMによって溝形成部56に反時計回り方向に湾曲する変形が生じる。これにより、アウタリップ57がウインドガラス60に当接する当接力を増すことができる。また、車速が高い程モーメントMが増加するため、アウタリップ57がウインドガラス60に当接する当接力を車速増加に比例して増加することができる。
それ故、ガラスラン55の固定部59がアウタリップ57よりもウインド開口内側へ距離L離隔して配置されている場合、車速(走行負圧)を利用してガラスラン55のシール性を高めることができるため、停車時や低速走行時のウインドガラス60の摺動抵抗を増すことなく、高速走行時の吸出音の発生を抑制することができる。
【0011】
前述したように、前記変形構造は、走行負圧を利用して車室内のシール性確保とウインドガラスのガイド性能を両立することができる。しかし、この変形構造では、ガラスラン55を固定するための固定部59をアウタリップ57よりもウインド開口内側へ距離L離隔して配置している故に、以下の新たな課題を招く虞がある。
つまり、ガラスラン55の溝形成部56に固定部59を中心とした反時計回りのモーメントMが発生するため、溝形成部56がウインド開口内側方向へ湾曲変形し、溝形成部56とアウタパネル52の縦壁部52aとの間に、停車時や低速走行時には発生しない隙間が発生する虞がある。この隙間は、見栄え悪化による商品性の低下を招き、特に、高速走行時程隙間が拡大するため、雨水等の侵入やガラスランの支持剛性等に影響を与える虞もある。
【0012】
また、ガラスラン55とウインドガラス60とのシール性向上のためには、ガラスラン55をゴム等のような柔軟な弾性素材によって形成することが望ましい。しかし、ガラスラン55を柔軟な弾性素材で形成し、車速(走行負圧)を利用してガラスラン55にモーメントMを作用させた場合、溝形成部56の基端部分はウインド開口内側方向へ湾曲変形するものの、アウタリップ57が局部的に車幅方向外側へ変形し、結果的に、アウタリップ57をウインドガラス60に対して全域に亙り密着させることができない虞がある。
そこで、特許文献1のガラスランの取付構造のように、ガラスランを装着するための比較的高剛性のフレーム部材を別途設け、このフレーム部材によりアウタリップの局部的変形を抑制することも考えられる。しかし、特許文献1では、前述のように車速(走行負圧)を利用してガラスランにモーメントを発生させ、このモーメントによってシール性向上を図ることについて一切考慮されておらず、実際の車両に採用するためには、ガラスランとフレーム部材をアウタパネルに対して一体的に固定する固定構造等解決すべき課題が存在している。
【0013】
本発明の目的は、車室内のシール性確保とウインドガラスのガイド性能を両立しつつ、見栄え悪化を防止できる車両のウインドシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の車両のウインドシール構造は、アウタパネルとインナパネルとによって形成された車両用ドアのウインド開口を上下方向に開閉可能なウインドガラスと、閉塞状態のウインドガラスに当接してシール可能なシール部材とを備えた車両のウインドシール構造において、前記ウインド開口の略上下方向に延びる縦枠部のアウタパネルが、車幅方向外側壁を形成する側壁部と、この側壁部のウインド開口内側端から車幅方向内側へ延びる縦壁部と、この縦壁部からウインド開口内側方向へ延びるアウタパネル内側フランジ部とを備え、前記縦枠部のインナパネルが、前記アウタパネル内側フランジ部と接合されるインナパネル内側フランジ部を備え、前記アウタパネル内側フランジ部とインナパネル内側フランジ部とによって前記シール部材を支持する支持部を形成し、前記シール部材が、前記ウインドガラスに直交方向の力が作用したとき、前記ウインドガラスの変位によって変形可能な溝形成部であって、ウインド開口内側端に前記ウインドガラスに車幅方向外側から当接可能なシール部を有する溝形成部と、前記シール部よりもウインド開口内側において前記支持部に固定された固定部と、前記溝形成部から前記側壁部の外面に沿ってウインド開口外側方向へ延びる延長部とを備え、前記シール部材はガラスランとこのガラスランよりも剛性の高いガーニッシュを備え、前記溝形成部が、前記ガラスランの第1溝形成部と、この第1溝形成部のウインド開口外側に近接状に位置する前記ガーニッシュの第2溝形成部とで構成され、前記固定部が、前記支持部に固定されるガーニッシュ側固定部と、前記支持部に前記ガーニッシュ側固定部を固定するガラスラン側固定部とで構成され、前記ガーニッシュは、前記第2溝形成部から前記側壁部の外面に沿ってウインド開口外側方向へ延びるガーニッシュ本体部を備えたことを特徴としている。
【0015】
この車両のウインドシール構造では、シール部材が、ウインドガラスに直交方向の力が作用したとき、ウインドガラスの変位によって変形可能な溝形成部であって、ウインド開口内側端にウインドガラスに車幅方向外側から当接可能なシール部を有する溝形成部と、シール部よりもウインド開口内側においてアウタパネル内側フランジ部とインナパネル内側フランジ部とによって形成された支持部に固定された固定部とを備えているため、高速走行時に、走行負圧を利用して溝形成部に固定部を中心としたウインド開口内側方向のモーメントを発生し、溝形成部によるウインド開口内側方向の変形によってシール部のウインドガラスに当接する当接力を増すことができる。
【0016】
【0017】
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記縦枠部のアウタパネルのウインド開口外側端部に形成されたアウタパネル外側フランジ部と前記縦枠部のインナパネルのウインド開口外側端部に形成され前記アウタパネル外側フランジ部と接合されるインナパネル外側フランジ部とを設け、前記アウタパネル外側フランジ部とインナパネル外側フランジ部とで前記シール部材の係合部を形成し、前記ガーニッシュ本体部のウインド開口外側端部が前記係合部に支持されると共に、前記支持部による前記シール部材の支持力を前記係合部による前記シール部材の支持力よりも大きく設定したことを特徴としている。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記ガーニッシュ本体部が前記側壁部の外面に沿って変位可能にガーニッシュ本体部のウインド開口外側端部が前記係合部に係合されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記縦枠部のアウタパネルの縦壁部は側壁部と鈍角をなすように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、高速走行時に、走行負圧を利用して溝形成部に固定部を中心としたウインド開口内側方向のモーメントを発生させ、溝形成部によるウインド開口内側方向の変形によってシール部のウインドガラスに当接する当接力を増すため、車室内のシール性確保とウインドガラスのガイド性能を両立でき、ウインド開口内側方向のモーメントに起因して溝形成部とアウタパネルとの間に発生する隙間を延長部によって遮蔽するため、見栄え悪化を防止でき、商品性向上を図ることができる。
ガラスランのシール機能を阻害することなく、外装用のガーニッシュによってガラスランを縦枠部に位置決めでき、意匠面のガーニッシュ本体部によってウインド開口内側方向のモーメントに起因して発生する第2溝形成部とアウタパネルとの間の隙間を遮蔽することができる。また、第1溝形成部に発生するウインド開口内側方向のモーメントに加えて第2溝形成部に発生するウインド開口内側方向のモーメントをガラスランのシール部に作用させることができ、一層シール性を高くできる。
しかも、ガーニッシュはガラスランよりも高剛性であるため、高速走行時、ウインドガラスに走行負圧が作用した際、ガラスランのみを設けた場合に比べて、ガーニッシュが走行負圧によるガラスランの局部的な変形を抑制する。それ故、ガラスランに対して走行負圧をウインド開口内側方向のモーメントとして確実に作用させることができる。
【0021】
【0022】
【0023】
請求項2の発明によれば、シール性向上効果を阻害することなく、簡単な構造でガーニッシュを縦枠部に装着することができる。
請求項3の発明によれば、第2溝形成部によるガーニッシュ側固定部を中心とした変形を阻害することなく、ガーニッシュの取付剛性を確保することができる。
請求項4の発明によれば、ドアサッシュがドア本体と一体的にプレス成形されたプレスドアであっても、生産性とウインドガラスのシール性とを両立することができる。
即ち、プレスドアはプレス成形により成形されるため、縦枠部のアウタパネルの縦壁部と側壁部とを急角度に形成することが困難である。このようなアウタパネル構造の場合、高速走行時にウインドガラスに走行負圧が作用したとき、ガラスランが縦枠部の外側へ変位し易い状態になり、一層高速走行時のシール性向上ニーズが高くなる。それ故、アウタパネルの縦壁部と側壁部とを急角度に形成することが困難なプレスドアにおいて、高速走行時のシール性向上ニーズを満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の参考技術に係る車両のウインドシール構造を備えたドアを示す外観側面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】実施例1に係るドアのコーナー部の要部斜視図である。
図4】ドアサッシュとガラスランとガーニッシュとの分解斜視図である。
図5図3のV−V線断面図である。
図6】実施例1の変形例に係る図5相当図である。
図7】従来のガラスラン取付部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について車両のフロントドアに適用した実施例に基づいて説明する。尚、図において、矢印F,R方向を夫々前後方向とし、矢印IN,OUT方向を夫々車室内外方向として説明する。
【0026】
まず、本発明の前提となる参考技術について図1図2に基づいて説明する。
図1に示すように、参考技術のウインドシール構造を備えた車両のフロントドア1は、本体部2と、ウインド開口4を構成するドアサッシュ3とが一体的にプレス成形されたプレスドアである。尚、右側フロントドアは、左側フロントドア1と左右対称構造であるため、以下、左側フロントドア1について主に説明する。
【0027】
フロントドア1は、ドア外壁を構成する鋼板製アウタパネルと、車室内壁を構成する鋼板製インナパネルとによって閉断面を構成する単一構造体として形成される。
本体部2の内部には、ウインド開口4を上下方向に開閉可能なウインドガラス5と、このウインドガラス5を昇降駆動するウインド駆動ユニット及び音響ユニット(図示略)と、インパクトバー(図示略)等が装備されている。
【0028】
ドアサッシュ3は、その内側縁部全体に亙って樹脂製のガラスラン10が取付けられると共に、本体部2の前部上端から後方上がり傾斜状に延びる前枠部3aと、この前枠部3aの後端から水平状に延びる上枠部3bと、この上枠部3bの後端から本体部2の後部上端に向かって上下方向下方に延びる後枠部3c(縦枠部)とによって構成されている。
ガラスラン10は各枠部3a,3b,3cの内側縁部に同様の構成で装着されているため、以下、後枠部3cについて主に説明する。
【0029】
図2に示すように、後枠部3cのアウタパネル6は、前方(ウインド開口内側方向)に延びる内側フランジ部6aと、後方に延びてアウタパネル6の後端部(ウインド開口外側端部)を構成する外側フランジ部6bと、この外側フランジ部6bの前端から前方に延びて車体の車幅方向外側壁を形成する側壁部6cと、この側壁部6cの前端(ウインド開口内側端)から内側フランジ部6aの後端に亙って車幅方向内側に延びる縦壁部6dとによって構成されている。
縦壁部6dは、車幅方向外側程後方(ウインド開口外側方向)へ移行するように形成され、側壁部6cに対して90°以上の鈍角を形成するように構成されている。具体的には、アウタパネル6及び後述するインナパネル7は、プレス成形により成形されるため、縦壁部6dと側壁部6cを急角度に形成すると、プレス成形時にプレス型からのパネルの離脱が困難になる。それ故、プレスドアであるフロントドア1の場合、高速走行時にウインドガラス5に走行負圧が作用した場合、ガラスラン10の縁部がドアサッシュ3の外側へ変位し易い状況になるため、一層高速走行時のシール性向上のニーズが高くなる。
【0030】
後枠部3cのインナパネル7は、内側フランジ部6aと重合溶接され且つ前方に延びる内側フランジ部7aと、外側フランジ部6bと連結され且つインナパネル7の後端部を構成する外側フランジ部7bと、内側フランジ部7aの後端から外側フランジ部7bの前端に亙って形成され且つ内側に膨出した側壁部7cとによって構成されている。
内側フランジ部7aは、内側フランジ部6aと協働してガラスラン10を後枠部3c(ドアサッシュ3)に支持するための支持部8を構成している。外側フランジ部7bは、外側フランジ部6bによって挟み込まれた状態で接合されるヘミング加工によって外側フランジ部6bに連結されている。
【0031】
次に、ガラスラン10について説明する。
図2に示すように、ガラスラン10は、前方に開口した断面略コ字状の溝形成部11と、後方に開口した断面略U字状の固定部12と、溝形成部11の外側部分から後方へ延びる延長部13とを備え、ゴム等の弾性を有する樹脂系材料によって一体形成されている。
このガラスラン10は、ドアサッシュ3に対して夫々の枠部3a,3b,3cの内側縁部に沿って連続的に延びるように取付けられる。
【0032】
溝形成部11は、後枠部3cに装着された状態において、走行負圧等によってウインドガラス5に対して直交方向(車幅方向)の力が作用したとき、ウインドガラス5による車幅方向への変位によって変形可能に構成され、ウインドガラス5に対して力が作用しないとき、溝形成部11の底部分が縦壁部6dに密着するように構成されている。
溝形成部11の外側且つ前端(ウインド開口内側端)には、閉塞状態のウインドガラス5に外側から当接可能なアウタリップ部11a(シール部)が形成されている。このアウタリップ部11aの先端部分は、支持部8よりも後方位置において後方へ折り曲げられ、その内側部分がウインドガラス5の外面に当接されている。
【0033】
図2に示すように、固定部12は、アウタリップ部11aよりも前方位置において溝形成部11の内側前端部分に連なるように構成されている。
固定部12には、支持部8を挟持するための弾性力を有する断面略U字状の芯金14が埋設され、支持部8が複数の凸部12aを介して挟持されることによりガラスラン10が後枠部3cに固定される。
【0034】
固定部12の前端部には、閉塞状態のウインドガラス5に内側から当接可能なインナリップ部12bが形成されている。このインナリップ部12bの先端部分は、後方へ湾曲され、その外側部分がアウタリップ部11aの先端部分に対向する位置においてウインドガラス5の内面に当接している。以上により、図2に示すように、ガラスラン10を固定するための固定部12がアウタリップ部11aとウインドガラス5の当接部よりも前方へ所定距離L離隔して配置されているため、走行負圧等によってウインドガラス5に対し外側直交方向の力F1が作用したとき、溝形成部11を介して力F1の反力である内側直交方向に向かう力F2が発生し、溝形成部11に固定部12を中心とした反時計回りのモーメントMが発生する。このモーメントMによって溝形成部11に反時計回りの前方へ湾曲する変形が生じ、アウタリップ部11aとウインドガラス5の当接力が増加される。
【0035】
延長部13は、溝形成部11の外側部分から側壁部6cの外面を密着状に覆い且つこの外面に沿って後方へ延びるように構成されている。これにより、溝形成部11の反時計回り方向の変形に起因して溝形成部11と縦壁部6dとの間に隙間が発生したとき、後方に延びる延長部13が溝形成部11の変形に追従して前方へ移動し、隙間を外側から覆うことにより外部から視認されないように遮蔽している。
【0036】
次に、参考技術に係る車両のウインドシール構造の作用・効果について説明する。
この車両のウインドシール構造によれば、高速走行時に、走行負圧を利用して溝形成部11に固定部12を中心とした前方へ向かう反時計回り方向のモーメントMを発生させ、溝形成部11による反時計回りの前方向の変形によってアウタリップ部11aのウインドガラス5に当接する当接力を増すため、車室内のシール性確保とウインドガラス5のガイド性能を両立でき、前方へ向かう反時計回り方向のモーメントMに起因して溝形成部11とアウタパネル6の縦壁部6dとの間に発生する隙間を延長部13によって遮蔽するため、見栄え悪化を防止でき、商品性向上を図ることができる。
【0037】
アウタリップ部11aは溝形成部11と固定部12と延長部13とが一体形成されたガラスラン10として構成されたため、部品点数を増加することなく、単一のガラスラン10をドアサッシュ3に直接的に装着することができる。
アウタリップ部11aは後枠部3cの延設方向に沿って連続的に延びているため、固定部12の支持部8に対する取付剛性と延長部13による遮蔽効果とを後枠部3cの延設方向に途切れることなく安定して得ることができる。
【0038】
ドアサッシュ3のアウタパネル6の縦壁部6dは側壁部6cと鈍角をなすように構成されているため、ドアサッシュ3が本体部2と一体的にプレス成形されたプレスドアであっても、生産性とウインドガラス5のシール性とを両立することができる。即ち、プレスドアはプレス成形により成形されるため、ドアサッシュ3のアウタパネル6の縦壁部6dと側壁部6cとを急角度に形成することが困難である。このようなアウタパネル構造の場合、高速走行時にウインドガラス5に走行負圧が作用したとき、ガラスラン10の縁部がドアサッシュ3の外側へ変位し易い状態になり、一層高速走行時のシール性向上ニーズが高い。それ故、アウタパネル6の縦壁部6dと側壁部6cとを急角度に形成することが困難なプレスドアにおいて、前記構成により高速走行時のシール性向上ニーズを満足することができる。
【実施例1】
【0039】
次に、実施例1に係る車両のウインドシール構造について、図3図5に基づいて説明する。尚、前記参考技術と異なる構成についてのみ説明し、参考技術と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
参考技術では、シール部材を延長部13を備えたガラスラン10によって構成したが、実施例1では、シール部材をゴム製のガラスラン20と、このガラスラン20よりも高剛性の合成樹脂製装飾用ガーニッシュ30によって構成している。
【0040】
図3図5に示すように、ガラスラン20は、第1溝形成部21と、ガラスラン側固定部22等が一体形成され、合成樹脂製のガーニッシュ30は、第2溝形成部31と、ガーニッシュ側固定部32と、第2溝形成部31の外側部分から側壁部6cの外面に沿って後方へ延びるガーニッシュ本体部33等が一体形成されている。
第1溝形成部21の外側前端部分には、閉塞状態のウインドガラス5に外側から当接可能なアウタリップ部21aが設けられ、第2溝形成部31の外側前端部分には、アウタリップ部21aを外側から押圧可能なガーニッシュ前端部31aが設けられている。
ガラスラン側固定部22には、複数の凸部22aと、その前端部分に閉塞状態のウインドガラス5に内側から当接可能なインナリップ部22bが形成されている。
【0041】
シール部材の溝形成部11Aは、第1溝形成部21と、この第1溝形成部21の外側に近接状に配置され且つ第1溝形成部21に嵌合可能な第2溝形成部31とから構成されている。これら第1,第2溝形成部21,31は、後枠部3cに装着された状態において、走行負圧等によってウインドガラス5に対して直交方向の力が作用したとき、ウインドガラス5による車幅方向への変位によって前方に変形し、ウインドガラス5に対して力が作用しないとき、第2溝形成部31の底部分が縦壁部6dに密着すると共に第1溝形成部21の底部分が第2溝形成部31の底部分に密着する。
【0042】
シール部材の固定部12Aは、支持部8に固定されるガーニッシュ側固定部32と、支持部8にガーニッシュ側固定部32を固定するガラスラン側固定部22とから構成されている。ガーニッシュ側固定部32は、ガーニッシュ前端部31aよりも前方位置において第2溝形成部31の内側前端部分に連なるように形成され、ガラスラン側固定部22は、アウタリップ部21aよりも前方位置において第1溝形成部21の内側前端部分に連なるように形成されている。ガラスラン側固定部22は、複数の凸部22aを介して支持部8とガーニッシュ側固定部32とを挟持している。
【0043】
以上により、図5に示すように、固定部12Aがアウタリップ部21aとウインドガラス5の当接部よりも前方へ所定距離L離隔して配置されているため、走行負圧等によってウインドガラス5に対して外側直交方向の力F1が作用したとき、第1,第2溝形成部21,31(溝形成部11A)を介して力F1の反力である内側直交方向に向かう力F2が発生し、第1,第2溝形成部21,31に両固定部22,32(固定部12A)を中心とした反時計回りのモーメントMが発生する。これらのモーメントMによって第1,第2溝形成部21,31に反時計回りに前方へ湾曲する変形が生じる。これにより、アウタリップ部21aの押圧力とガーニッシュ前端部31aの押圧力とを合わせた押圧力でアウタリップ部21aをウインドガラス5に当接させている。
【0044】
また、ガーニッシュ30はガラスラン20よりも高剛性であるため、高速走行時、ウインドガラス5に走行負圧が作用した際、ガラスラン20のみを設けた場合に比べて、ガーニッシュ30が走行負圧によって生じるモーメントMに起因するガラスラン20の局部的な変形を抑制する。更に、ガラスラン20が比較的剛性の低い素材で形成しているため、ウインドガラス5とガラスラン20との密着性を向上し、ガラスラン20の全域に亙ってシール性を確保できる。
【0045】
図3図5に示すように、意匠面としてのガーニッシュ本体部33には、後端部分にガーニッシュ本体部33を側壁部6cの外面に沿って変位可能に支持するための被係合部33aが形成され、上端部分に段下げ状の段差部33bが夫々形成されている。
被係合部33aは、断面略J字状に形成され、外側フランジ部6b,7bによって構成された係合部9と間隙を形成した状態で係合可能に構成されている。
【0046】
支持部8によるガラスラン20及びガーニッシュ30を固定するための支持力は、係合部9によるガラスラン20及びガーニッシュ30の支持力よりも大きく設定されている。
これにより、第1,第2溝形成部21,31による反時計回り方向の変形に起因して第2溝形成部31と縦壁部6dとの間に隙間が発生したとき、後方に延びるガーニッシュ本体部33が第2溝形成部31の変形に追従して前方へ移動し、前記隙間を外側から覆って外部から視認されないように遮蔽している。
【0047】
図4に示すように、ガーニッシュ30は、後枠部3cに沿って上下方向に連続的に延び、その上端において段差部33bがガーニッシュ40に連結可能に構成されている。
ガーニッシュ40は、ガーニッシュ30と同様に、溝形成部41と、固定部42と、ガーニッシュ本体部43と等を備えている。溝形成部41の後端部分には、ガーニッシュ30の段差部33bが挿通される矩形状の切欠部44が形成されている。
【0048】
この切欠部44は、ガーニッシュ30の中段部が側壁部6c外面に設けられた係止ピン(図示略)に係止されたとき、ガーニッシュ30の上下移動を規制し、ガーニッシュ30を上下方向に位置決めしている。また、切欠部44の前後長は、段差部33b(ガーニッシュ30)の前後長よりも所定長さ前側に長く形成され、第2溝形成部31(ガーニッシュ30)の前方移動を許容可能に構成されている。
【0049】
ドアサッシュ3に対してガラスラン20とガーニッシュ30,40を装着する場合、後枠部3cの係合部9にガーニッシュ30の被係合部33aを係合すると共に側壁部6c外面に設けられた係止ピンにガーニッシュ30の中段部を係止し、ガーニッシュ30を後枠部3cに対して仮固定した後、ガーニッシュ30の段差部33bが切欠部44内に挿通された状態で上枠部3bの係合部にガーニッシュ40の被係合部43aを係合する。
次に、支持部8とガーニッシュ側固定部32を重合させ、ガラスラン側固定部22によって支持部8とガーニッシュ側固定部32を挟持し、第2溝形成部31に第1溝形成部21を嵌合する。上枠部3bについても、同様の手順でガラスラン20を装着する。
【0050】
次に、実施例1に係る車両のウインドシール構造の作用・効果について説明する。
この車両のウインドシール構造によれば、シール部材はガラスラン20とガーニッシュ30を備え、溝形成部11Aが、ガラスラン20の第1溝形成部21と、この第1溝形成部21の後側(ウインド開口外側)に近接状に位置するガーニッシュ30の第2溝形成部31とで構成され、固定部12Aが、支持部8に固定されるガーニッシュ側固定部32と、支持部8にガーニッシュ側固定部32を固定するガラスラン側固定部22とで構成され、ガーニッシュ30は、第2溝形成部31から側壁部6cの外面に沿って後方へ延びるガーニッシュ本体部33を備えている。
【0051】
これにより、ガラスラン20のシール機能を阻害することなく、外装用のガーニッシュ30によってガラスラン20をドアサッシュ3に位置決めでき、反時計回り方向のモーメントMに起因して第2溝形成部31と縦壁部6dとの間に発生する隙間をガーニッシュ本体部33によって遮蔽することができる。また、第1溝形成部21に発生する反時計回り方向のモーメントMに加えて第2溝形成部31に発生する反時計回り方向のモーメントMをガラスラン20のアウタリップ部21aに作用させることができ、一層シール性を高くできる。また、ガーニッシュ30はガラスラン20よりも高剛性であるため、高速走行時、ウインドガラス5に走行負圧が作用した際、ガラスラン20のみを設けた場合に比べて、ガーニッシュ30が走行負圧によるガラスラン20の局部的な変形を抑制する。それ故、ガラスラン20に対して走行負圧をウインドガラス5内側方向のモーメントMとして確実に作用させることができる。
更に、ガラスラン20が比較的剛性の低い素材で形成しているため、ウインドガラス5とガラスラン20との密着性を向上し、ガラスラン20の全域に亙ってシール性を確保できる。
【0052】
支持部8とガーニッシュ側固定部32を重合させ、ガラスラン側固定部22によって支持部8とガーニッシュ側固定部32を挟持し、第2溝形成部31に第1溝形成部21を嵌合する構成にしたため、本実施例のように外装用ガーニッシュ30によってガラスラン20をドアサッシュ3に固定する構成にした場合であっても、新たな固定部材を設けることなく外装用ガーニッシュ30とガラスラン20をドアサッシュ3に容易に装着することができ、取付作業性の向上を図ることができる。
【0053】
ドアサッシュ3のアウタパネル6の後端部に形成された外側フランジ部6bとドアサッシュ3のインナパネル7の後端部に形成され外側フランジ部6bと接合される外側フランジ部7bとを設け、外側フランジ部6bと外側フランジ部7bとでシール部材の係合部9を形成し、ガーニッシュ本体部33の被係合部33aが係合部9に支持されると共に、支持部8によるシール部材の支持力を係合部9によるシール部材の支持力よりも大きく設定したため、シール性向上効果を阻害することなく、簡単な構造でガーニッシュ30をドアサッシュ3に装着することができる。
【0054】
ガーニッシュ本体部33が側壁部6cの外面に沿って変位可能にガーニッシュ本体部33の被係合部33aが係合部9に係合されているため、第2溝形成部31によるガーニッシュ側固定部32を中心とした変形を阻害することなく、ガーニッシュ30の取付剛性を確保することができる。
【0055】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例1においては、ガーニッシュ30が第2溝形成部31から側壁部6cの外面に沿って後方へ延びるガーニッシュ本体部33と、その後端位置において係合部9に支持された被係合部33aとを備えているが、図6に示すように、ガーニッシュ30Aのガーニッシュ本体部33Aの後端部分を、参考技術と同様に後側部分を短く形成し、係合部9に支持されない構造に形成しても良い。尚、図6において、実施例1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
この構成の場合、実施例1と同様に、走行負圧を確実にウインド開口内側方向のモーメントとして作用させることができると共に、ガーニッシュ30Aとガラスラン20のサッシュ3への取付作業性を簡単化することができる。
【0056】
2〕前記実施例おいては、車両のフロントドアに適用した例を説明したが、少なくとも、ウインド開口を開閉可能なウインドカラスを備えたドアであれば良く、リヤドア等フロントドア以外のドアに適用することができる。また、ドアサッシュの後枠部を例として説明したが、上下方向に傾斜した前枠部に適用することも可能である。
【0057】
3〕前記実施例においては、ドアサッシュの内縁全域に連なるガラスランの例を説明したが、前枠部、上枠部、後枠部毎に分割したガラスランでもよく、また、成形の難しいコーナー部を各枠部とは別に準備しても良い。
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、閉塞状態のウインドガラスに当接してシール可能なシール部材にウインド開口枠部材の側壁部の外面に沿って延びる延長部を設けた車両のウインドシール構造において、走行負圧を利用してシール部材の溝形成部に固定部を中心としたウインド開口内側方向のモーメントを発生させ、延長部によって溝形成部とウインド開口枠部材との間の隙間を遮蔽することにより、車室内のシール性確保とウインドガラスのガイド性能を両立しつつ、見栄え悪化を防止することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 (フロント)ドア
3 ドアサッシュ
3c 縦枠部
4 ウインド開口
5 ウインドガラス
6 アウタパネル
6a 内側フランジ部
6b 外側フランジ部
7 インナパネル
7a 内側フランジ部
7b 外側フランジ部
8 支持部
9 係合部
10 ガラスラン
11,11A 溝形成部
11a アウタリップ部
12,12A 固定部
13 延長部
20 ガラスラン
21 第1溝形成部
21a アウタリップ部
22 ガラスラン側固定部
30,30A ガーニッシュ
31 第2溝形成部
31a ガーニッシュ前端部
33,33A ガーニッシュ本体部
33a 被係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7