特許第6003208号(P6003208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

特許6003208内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法
<>
  • 特許6003208-内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法 図000002
  • 特許6003208-内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法 図000003
  • 特許6003208-内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法 図000004
  • 特許6003208-内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法 図000005
  • 特許6003208-内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法 図000006
  • 特許6003208-内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6003208
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/16 20160101AFI20160923BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20160923BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20160923BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20160923BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20160923BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20160923BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20160923BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20160923BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20160923BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20160923BHJP
【FI】
   B60W20/16
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   F01N3/20 B
   F02D29/06 D
   F01N3/08 A
   F02D29/06 L
   F02D19/02 B
   F02M21/02 G
   B60K6/46
   B60K6/24
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-112041(P2012-112041)
(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公開番号】特開2013-237372(P2013-237372A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】堂園 一保
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−212984(JP,A)
【文献】 特開2011−069314(JP,A)
【文献】 特開2005−163667(JP,A)
【文献】 特開2008−068802(JP,A)
【文献】 特開2009−036153(JP,A)
【文献】 特開2004−285866(JP,A)
【文献】 特開2010−077888(JP,A)
【文献】 国際公開第93/025806(WO,A1)
【文献】 特開2009−275631(JP,A)
【文献】 特開2005−048630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
F02D 13/00 − 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化制御方法であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する第1ステップと、
前記バッテリの充電量を検出する第2ステップと、
前記第1ステップと前記第2ステップとでの検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する第3ステップと、
前記第3ステップで期間の重なりが予測されたとき、前記第1ステップで検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となる前にあらかじめ、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える第4ステップと、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する第5ステップと、
を備えていることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第4ステップでの前記リッチ運転状態を、前記バッテリの充電量の低減度合が小さいときは第1所定期間継続して行う一方、該バッテリの充電量の低減度合が大きいときは、該第1所定期間中断続して行うか又は該第1所定期間よりも短い第2所定時間だけ継続して行う、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記リーン運転状態で発電を行なう際に、前記バッテリの充電量が小さくかつ該充電量の低減度合が大きいときは、エンジン回転数を増大させて発電電力を増大させる、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第3ステップにおいて、前記第1ステップで検出されるNOx吸蔵量が前記所定値よりも小さい第2所定値以上であり、かつ前記第2ステップで検出される充電量が所定の充電量範囲内にあるときに、前記期間の重なりを生じるときであると予測する、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記第5ステップでは、発電を中止することにより前記エンジン駆動負荷が低減されることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記エンジンが、水素を燃料として運転される、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項7】
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化制御方法であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する第11ステップと、
前記バッテリの充電量を検出する第12ステップと、
前記第11ステップと前記第12ステップとでの検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する第13ステップと、
前記第13ステップで期間の重なりが予測されたとき、前記エンジンの出力を高めて発電電力を増大させて、前記バッテリの充電量をあらかじめ高めると共にNOx吸蔵量の増大割合を大きくする第14ステップと、
前記第11ステップで検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となったときに、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える第15ステップと、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する第16ステップと、
を備えていることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化制御方法。
【請求項8】
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化装置であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する吸蔵量検出手段と、
前記バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記各検出手段での検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する予測手段と、
前記予測手段によって前記期間の重なりが予測されたとき、前記吸蔵量検出手段で検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となる前にあらかじめ、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える空燃比変更手段と、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する駆動負荷低減手段と、
を備えていることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記空燃比変更手段は、前記バッテリの充電量の低減度合が小さいときは前記リッチ運転状態を第1所定期間継続して行う一方、該バッテリの充電量の低減度合が大きいときは、該リッチ運転状態を該第1所定期間中断続して行うか又は該第1所定期間よりも短い第2所定時間だけ継続して行う、ことを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。
【請求項10】
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化制御方法であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する吸蔵量検出手段と、
前記バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記各検出手段での検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する予測手段と、
前記予測手段によって前記期間の重なりが予測されたとき、前記エンジンの出力を高めて発電電力を増大させて、前記バッテリの充電量をあらかじめ高めると共にNOx吸蔵量の増大割合を大きくする発電電力増大手段と、
前記吸蔵量検出手段で検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となったときに、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える空燃比変更手段と、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する駆動負荷低減手段と、
を備えていることを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車にあっては、内燃機関つまりエンジンが搭載されると共に走行用モータが搭載されたハイブリッド車が増加している。ハイブリッド車にあっては、エンジンによってジェネレータを駆動することにより発電が行なわれ、発電された電力は、走行用モータへの給電やバッテリへの充電に用いられることになる。
【0003】
一方、燃費向上のために、エンジンを理論空燃比よりもリーンなリーン運転を行うことが行われている。そして、リーン運転に伴って排出されるNOx低減のために、排気通路にはNOx触媒が配設されることになる。特許文献1には、ハイブリッド車において、通常はリーン運転を行いつつ、NOx触媒でのNOx吸蔵量が増大したときに、エンジンの運転をリッチな空燃比で行うことにより、吸蔵されたNOxをパージすることが開示されている。また、特許文献1には、駆動輪へ付与されるトータルトルクが、エンジンのリーン運転時とリッチ運転時とで変化しないように、モータトルクを制御することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−68802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイブリッド車において、ジェネレータを駆動するエンジンのリーン運転を続けていると、NOx触媒でのNOx吸蔵量が上限値にまで増大してしまうことになる。この場合に、吸蔵しているNOxをパージすべくエンジンをリッチ運転に切換えると、ジェネレータを駆動していることからエンジンの駆動負荷が大きい状態でもって燃焼性が高まり、このためプリイグニッション(異常燃焼)が生じたり、燃焼音が増大してしまう事態が生じやすいものとなる。このプリイグニッションの発生や燃焼音の増大は、特に、エンジンの運転をもっとも効率がよくなる所定回転数での一定回転数でもって行なう場合や、燃料として水素を用いた場合に顕著になる。
【0006】
パージのためにリッチ運転状態とした際は、発電停止を含む発電電力を低減させることにより、プリイグニッションの発生や燃焼音の増大を防止あるいは低減することが考えられる。しかしながら、この場合は、バッテリの充電量が小さい(少ない)状態でパージを実行したときに、発電電力が低減されていることからバッテリ充電量が極端に低下してしまうおそれがあり、何らかの対策が望まれることになる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、バッテリ充電量が大きく低下してしまうことを防止しつつ、パージ実行中におけるプリイグニッションの発生や燃焼音の増大を防止あるいは低減できるようにした内燃機関の排気ガス浄化装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明制御方法にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化制御方法であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する第1ステップと、
前記バッテリの充電量を検出する第2ステップと、
前記第1ステップと前記第2ステップとでの検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する第3ステップと、
前記第3ステップで期間の重なりが予測されたとき、前記第1ステップで検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となる前にあらかじめ、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える第4ステップと、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する第5ステップと、
を備えているようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、NOxパージのためにリッチ運転状態へ切換えられたときは、発電電力の低減によってエンジンの駆動負荷が低減されるので、プリイグニッションの発生や燃焼音増大が防止あるいは低減されることになる。また、パージを実行する際に、バッテリの充電量が所定量以下となることが予測されるときは、通常のパージ実行時期よりも早めにパージを実行することにより、パージ実行の際に発電電力を低減させてもバッテリ充電量が極端に低下してしまうことが防止されることになる。
【0010】
上記第1の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項6に記載のとおりである。すなわち、
前記第4ステップでの前記リッチ運転状態を、前記バッテリの充電量の低減度合が小さいときは第1所定期間継続して行う一方、該バッテリの充電量の低減度合が大きいときは、該第1所定期間中断続して行うか又は該第1所定期間よりも短い第2所定時間だけ継続して行う、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、バッテリの充電量の低減度合に応じて、パージの実行期間あるいは実行態様を適切に設定して、請求項1に対応した効果をより十分に発揮させる上で好ましいものとなる。
【0011】
前記リーン運転状態で発電を行なう際に、前記バッテリの充電量が小さくかつ該充電量の低減度合が大きいときは、エンジン回転数を増大させて発電電力を増大させる、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、バッテリ充電量が大きく低下することが予測されるときは、発電電力を増大して、バッテリ充電量が極端に低下してしまうことを未然に防止することができる。
【0012】
前記第3ステップにおいて、前記第1ステップで検出されるNOx吸蔵量が前記所定値よりも小さい第2所定値以上であり、かつ前記第2ステップで検出される充電量が所定の充電量範囲内にあるときに、前記期間の重なりを生じるときであると予測する、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、期間の重なりを予測する具体的な手法が提供される。また、NOx吸蔵量とバッテリ充電量をみるだけでよいので、特別なセンサ等を別途用いることなく簡単に予測することができる。
【0013】
前記第5ステップでは、発電を中止することにより前記エンジン駆動負荷が低減される、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、プリイグニッション発生と燃焼音増大とを極めて効果的に防止することができる。
【0014】
前記エンジンが、水素を燃料として運転される、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、特にプリイグニッション発生や燃焼音増大を生じやすくなる水素を燃料として用いた場合に、請求項1に対応した効果を得ることができる。
【0015】
前記目的を達成するため、本発明制御方法にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項7に記載のように
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化制御方法であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する第11ステップと、
前記バッテリの充電量を検出する第12ステップと、
前記第11ステップと前記第12ステップとでの検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する第13ステップと、
前記第13ステップで期間の重なりが予測されたとき、前記エンジンの出力を高めて発電電力を増大させて、前記バッテリの充電量をあらかじめ高めると共にNOx吸蔵量の増大割合を大きくする第14ステップと、
前記第11ステップで検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となったときに、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える第15ステップと、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する第16ステップと、
を備えているようにしてある。
【0016】
上記第2の解決手法によれば、NOxパージのためにリッチ運転状態へ切換えられたときは、発電電力の低減によってエンジンの駆動負荷が低減されるので、プリイグニッションの発生や燃焼音増大が防止あるいは低減されることになる。また、パージを実行する前にあらかじめ、エンジン出力を増大させて発電電力を高めることによりバッテリの充電量を高めておくので、通常のパージ実行時期よりも早めにパージを実行しつつ、パージ実行の際に発電電力を低減させてもバッテリ充電量が極端に低下してしまうことが防止されることになる。
【0017】
前記目的を達成するため、本発明装置にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項8に記載のように、
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化装置であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する吸蔵量検出手段と、
前記バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記各検出手段での検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する予測手段と、
前記予測手段によって前記期間の重なりが予測されたとき、前記吸蔵量検出手段で検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となる前にあらかじめ、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える空燃比変更手段と、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する駆動負荷低減手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1の制御方法を実現するための装置が提供される。
【0018】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項9に記載のとおりである。すなわち、
前記空燃比変更手段は、前記バッテリの充電量の低減度合が小さいときは前記リッチ運転状態を第1所定期間継続して行う一方、該バッテリの充電量の低減度合が大きいときは、該リッチ運転状態を該第1所定期間中断続して行うか又は該第1所定期間よりも短い第2所定時間だけ継続して行う、ようにしてある(請求項9対応)。この場合、請求項2に対応した制御方法を実現するための装置が提供される。
【0019】
前記目的を達成するため、本発明装置にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項10に記載のように、
排気通路にNOx触媒が配設されたエンジンと、該エンジンにより駆動されるジェネレータと、該ジェネレータの発電電力が蓄電されるバッテリと、該ジェネレータの発電電力と該バッテリにより駆動される走行用モータと、を備えた内燃機関の排気ガス浄化制御方法であって、
前記NOx触媒でのNOx吸蔵量を検出する吸蔵量検出手段と、
前記バッテリの充電量を検出する充電量検出手段と、
前記各検出手段での検出結果に基づいて、前記バッテリの充電量が所定量以下となる期間と前記NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値以上となる期間とが重なることを予測する予測手段と、
前記予測手段によって前記期間の重なりが予測されたとき、前記エンジンの出力を高めて発電電力を増大させて、前記バッテリの充電量をあらかじめ高めると共にNOx吸蔵量の増大割合を大きくする発電電力増大手段と、
前記吸蔵量検出手段で検出されるNOxの吸蔵量が前記所定値以上となったときに、前記エンジンの運転状態を理論空燃比よりもリーンな空燃比でのリーン運転状態から理論空燃比以下のリッチな空燃比でのリッチ運転状態へ切換える空燃比変更手段と、
前記エンジンを前記リッチ運転状態で運転しているときは、前記ジェネレータでの発電電力を低減させて該エンジンの駆動負荷を低減する駆動負荷低減手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、請求項7の制御方法を実現するための装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、NOx触媒での吸蔵NOxパージのために、ジェネレータを駆動しているエンジンをリーン運転からリッチ運転に切換えても、プリイグニッションの発生や燃焼音増大を防止あるいは低減することができる。また、バッテリの充電量が極端に低下してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示すブロック図である。
図2図1に示す車両の制御システムを示す図である。
図3】本発明の第1の制御例を示すタイムチャート。
図4図3の制御例を実行するためのフローチャート。
図5】本発明の第2の制御例を示すタイムチャート。
図6図5の制御例を実行するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示すブロック図であり、図2は、図1に示す車両の制御システムを示す図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両1は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両であり、エンジン10と、エンジン10により駆動されるジェネレータ20と、ジェネレータ20により発電される電力が充電可能な高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10の駆動によるジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力により駆動される走行用モータ40とを有している。
【0024】
また、車両1では、ジェネレータ20、バッテリ30及び走行用モータ40の間にインバータ50が設けられ、インバータ50を介してジェネレータ20の発電電力をバッテリ30及び/又は走行用モータ40に供給することができるとともに、バッテリ30の放電電力を走行用モータ40に供給することができるように構成されている。
【0025】
走行用モータ40は、ジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の放電電力の少なくとも一方が供給されることにより駆動され、この走行用モータ40の駆動力がデファレンシャル装置60を介して駆動輪としての左右の前輪61、62に伝達され、これによって、車両1が走行できるようになっている。なお、走行用モータ40はジェネレータとしても作動可能であり、車両1の減速時にはジェネレータとして作動し、発電した電力をバッテリ30に充電することができるようになっている。
【0026】
車両1では、エンジン10は、ジェネレータ20における発電のためにのみ用いられており、本実施形態では、エンジン10として、これに限定されるものではないが、水素燃料タンク70に貯留されている水素ガスが燃料として供給される水素エンジンが用いられる。
【0027】
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式のロータリエンジンであって、ロータハウジング11のトロコイド面に3点で接して3つの作動室を画成するロータ12を備え、該ロータ12が回転することにより出力軸としてのエキセントリックシャフト13が回転されるようになっている。
【0028】
エンジン10では、ロータハウジング11には吸気通路14と排気通路15が接続され、吸気通路14には、スロットル弁16と予混合方式によって燃料供給を行う場合に水素ガスを噴射するための水素インジェクタ17とが設けられ、排気通路15には、排気ガスを浄化するための排気ガス浄化触媒80が配設されている。この排気ガス浄化触媒80は、NOx触媒とされて、リーン運転時にNOxを吸蔵する一方、リッチ運転されることにより吸蔵したNOxがパージされる。
【0029】
ロータハウジング11にはまた、水素ガスを噴射するための水素インジェクタ18及び点火プラグ19がロータハウジング11の作動室を臨むようにして取り付けられている。なお、図2において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気又は排気の流れを示している。
【0030】
また、車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ電流・電圧センサ(バッテリ残容量検出手段)101と、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102と、車速を検出する車速センサ103と、エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサ104と、空燃比を検出する空燃比センサ105と、排気ガス浄化触媒80の温度を検出する触媒温度検出センサ106とが搭載されている。
【0031】
車両1にはまた、該車両1に関係する構成を総合的に制御するコントロールユニット100が設けられ、このコントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、エンジン回転数センサ104、空燃比センサ105及び触媒温度検出センサ106などからの各種信号が入力されるようになっている。コントロールユニット100はまた、インバータ50、スロットル弁アクチュエータ107、水素インジェクタ17、18及び点火プラグ19などに制御信号を出力することができるようになっている。
【0032】
コントロールユニット100は、インバータ50を制御することにより、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力でのみ行う態様と、ジェネレータ20からの発電電力でのみ行う態様と、バッテリ30および燃料タンク20の両方からの電力で行う態様とが切換可能となっている。
【0033】
コントロールユニット100によって制御されるエンジン10は、通常は、燃費向上のために、理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比(例えば、空気過剰率λ=2.3)で運転されると共に、燃費向上のためにもっとも効率のよい所定回転数での一定回転数(例えば2000rpm)での定回転数運転とされ、しかも定負荷運転とされる。
【0034】
NOx触媒とされた排気ガス浄化触媒80でのNOx吸蔵量があらかじめ設定された所定値(例えば90%)以上に増大すると、エンジン10は、理論空燃比またはそれ以下のリッチ空燃比となるリッチ運転に切換えられる(例えば、空気過剰率λ=1での運転)。リッチ運転は、排気ガス浄化触媒80でのNOx吸蔵量が十分に低減されたある下限値(例えば0%)以下になるまで実行されるが、実施形態では、NOx吸蔵量が下限値まで低減するのに十分な時間に設定された所定時間(例えば10秒)だけ行うようになっている。なお、エンジン回転数は、リーン運転時と同じ所定回転数での一定回転数とされる。勿論、排気ガス浄化触媒80でのNOx吸蔵量が十分に低減された後は、エンジン10は再びリーン運転へと復帰されることになる。
【0035】
ここで、排気ガス浄化触媒80に吸蔵されたNOxをパージするためにリッチ運転を行う際に、エンジン10がジェネレータ20を駆動していて(発電を行っていて)、エンジン10への駆動負荷が大きい場合がある。この場合、特に水素を燃料としており、しかも効率のよい一定回転数運転を行っていることから、そのままではプリイグニッションが発生したり、燃焼音が増大してしまう可能性が極めて高くなる。
【0036】
本発明では、エンジン10でジェネレータ20を駆動している状態(発電している状態)において、リッチ運転へと切換えられたときは、ジェネレータ20での発電電力を低減させて、エンジン10の駆動負荷を低減させて、プリイグニッションの発生や燃焼音増大を防止あるいは低減するようになっている。なお、エンジン10への駆動負荷低減は、ジェネレータ20での発電を行いつつ発電電力を低減する(例えば50%にする)ことにより行うことができ、実施形態では、発電電力を0にするようにしてある。また、発電電力の調整は、例えば界磁巻線への供給電流を調整することにより行なうことができ、エンジン10とジェネレータ20との間にクラッチを有する場合は、クラッチの締結度合を調整することにより行うこともできる。
【0037】
ここで、バッテリ30の充電量が小さいとき(例えば充電量50%以下)に、NOx吸蔵量が所定値としての例えば90%以上になることが考えられる。この場合、そのままパージ実行のためにリッチ運転状態に切換えてかつ発電電力を低減させると、バッテリ充電量が極端に低下してしまうことが考えられる。本発明では、NOx吸蔵量が所定値以上になる期間と、バッテリ充電量が所定量以下になる期間とが重なることが予測されるときは、NOx吸蔵量が上記所定値以上になる前にあらかじめ、パージ(早期パージ)を実行するようにしてある。
【0038】
具体的には、NOx吸蔵量が所定値以上になる期間とバッテリ充電量が所定量以下になる期間とが重なる予測のために、NOx吸蔵量が上記所定値(例えば90%)よりも小さい別の所定値(例えば80%)を設定し、また、バッテリ充電量として、所定範囲の充電量(例えば充電量40%〜50%)を設定してある。そして、NOx吸蔵量が上記別の所定値以上で、かつバッテリ充電量が上記所定範囲内にあるときに、NOx吸蔵量が所定値以上になる期間とバッテリ充電量が所定量以下になる期間とが重なることが予測されたときであるとして、この予測された時点からパージを開始するようにしてある。なお、所定範囲の充電量は、パージ実行期間中に、発電電力を0にした状態でしかも加速時等の消費電力が大きい場合でも、必要最小限のバッテリ充電量を確保できる範囲に設定されている。
【0039】
ここで、バッテリ充電量の極端な低下を防止するために行われる早期パージは、次のように行うのが好ましい。すなわち、バッテリ充電量の低減度合が小さいとき(例えば加速時以外のとき)は、通常のパージと同様に、所定期間(例えば10秒)継続してリッチ運転状態とされる。
【0040】
一方、バッテリ充電量の低減度合が大きいとき、例えば急加速中は、上記所定期間(例えば10秒)内において、リッチ運転状態を断続的に行うようにしてある。リッチ運転状態を断続的に行うので、リッチ運転状態でないときはリーン運転状態での発電実行が行われて、この所定期間中は、パージと発電とが繰り返し行われることになり、バッテリ充電量が急激に低下してしまうことが防止される。なお、緩加速時は、バッテリの低減度合がさほど大きくないということで、通常時と同じように上記所定期間だけ継続してリッチ運転状態としてある。
【0041】
図3は、本発明の制御例を示すタイムチャートであり、上述したバッテリ充電量の極端な低下防止のための早期パージ実行の制御と、リッチ運転時でのプリイグニッション発生や燃焼音増大を防止あるいは低減するための制御とを含むものなっている。以下、この図3について説明する。
【0042】
図3において、(a)〜(e)および(j)は、早期パージを所定期間連続して行う場合の例を示す。また、(a)および(f)〜(j)は、早期パージを断続的に行う場合の例を示す。
【0043】
図3中、(a)はバッテリ30の充電量が変化する様子を示し、図中実線が緩加速時に対応し、破線が急加速時に対応する。(b)は実際の空燃比が変化する様子を示す。(c)はエンジン10の出力が変化する様子を示す。(d)はパージ実行指令信号が変化する様子を示す。(e)はNOx触媒80でのNOx吸蔵量が変化する様子を示す。
【0044】
また、図3中、(f)は実際の空燃比が変化する様子を示す。(g)はエンジン10の出力が変化する様子を示す。(h)はパージ実行指令信号が変化する様子を示す。(i)はNOx触媒80でのNOx吸蔵量が変化する様子を示す。(j)は車速が変化する様子を示し、図中実線が緩加速時に対応し、破線が急加速時に対応する。
【0045】
図3の例では、車両は加速を行いつつ走行しており、エンジン回転数も一定とされる。パージ実行を開始する際の本来的な条件となるNOx吸蔵量が所定値(例えば90%)以上にまで増大するのは、t4時点をかなり過ぎた時点となるが、この本来的なパージ開始時期では、バッテリ充電量が所定量(例えば40%)以下になると予測される。このままパージを実行しつつ発電電力を低減すると、バッテリ充電量が極端に低下してしまうおそれがある。したがって、このときは、後述するような早期パージが行われることになる。
【0046】
まず、連続パージについて説明すると、車両は緩やかな加速を行いつつ走行している((j)における実線参照で、エンジン回転数は一定)。t3時点になると、NOx吸蔵量が、本来の所定値(例えば90%)よりも小さい値に設定された早期パージ用の別の所定値(例えば80%)になる。そして、このt3時点から、リッチ運転状態に切換えられてパージが実行されると共に、発電電力が0にされる(エンジン10は無負荷運転となる)。リッチ運転状態は、t3時点から所定期間(例えば10秒)経過したt4時点まで継続して(連続して)行われる。このt4時点からは、リーン運転状態へ復帰される(発電も再開)。
【0047】
次に、断続パージについて説明する。車両は急加速を行いつつ走行している((j)における破線参照で、エンジン回転数は一定)。そして、t1時点になると、NOx吸蔵量が、早期パージ用に設定された別の所定値(例えば80%)にまで増大される。このt1時点から、前記所定期間(例えば10秒)経過したt2時点まで、リッチ運転状態が断続的に行われる。すなわち、リッチ運転状態が短い時間行われた後、リーン運転状態が短い時間だけ行われ、その後再びリッチ運転状態が短い時間だけ行われる、ということが繰り返される。このような断続パージにより、バッテリ30の充電量が急速に低下してしまうことが防止される。なお、t1からt2までの所定期間中において、リッチ運転状態の合計運転時間とリーン運転状態の合計運転時間とは、例えば50%ずつとすることができるが、適宜の割合に設定することができる。
【0048】
図4は、図3で説明したような制御を行うためのフローチャートを示す。以下、このフローチャートについて説明するが、以下の説明でQはステップを示す。まず、Q1において、各種センサ等からの信号が読み込まれる。この後、Q2において、エンジン10が発電運転するときであるか否かが判別される。このQ2の判別でNOのときは、Q1に戻る。
【0049】
Q2の判別でYESのときは、Q3において、NOx触媒80でのNOx吸蔵量が、早期パージ用に設定された別の所定値(例えば80%)以上であるか否かが判別される。このQ3の判別でYESのときは、Q4において、バッテリ30の充電量が、所定充電量範囲内であるか(例えば40%から50%の範囲内であるか)否かが判別される。なお、NOx吸蔵量は、例えばリーン運転を開始してからの経過時間に基づいて推定することができる。
【0050】
前記Q4の判別でYESのときは、将来的に、バッテリ充電量が所定量以下になる期間とリッチ運転状態が行われる期間とが重なってしまうことが予測されるときである。このときは、Q5に移行して、早期パージのための制御が行われる。すなわち、Q5において、現在加速中であるか否かが判別される(バッテリ充電量の低減度合が大きい状態であるか否かの判別となる)。このQ5の判別でYESのときは、Q6において、急加速中であるか否かが判別される。急加速中であるか否かは、例えば、アクセル開度が所定開度(例えば50%)以上であること、あるいはアクセルペダルの踏み込み速度が所定値以上であること等、適宜の手法で検出することができる。
【0051】
上記Q6の判別でNOのとき、つまり緩加速時は、Q7において、無負荷でのリッチ運転状態とされる(発電を中止しつつパージ実行)。この後、Q8において、リッチ運転状態へ切換えられた時点から所定時間(例えば10秒)経過したか否かが判別される。このQ8の判別でNOのときは、Q7に戻る。Q8の判別でYESのときは、Q9において、リーン運転状態へ復帰されると共に、発電が再開される。このQ7〜Q9を経る処理は、前述した連続パージとなる。なお、Q9の処理が行われたときは、NOx吸蔵量の推定値が0にリセットされる。
【0052】
前記Q6の判別でYESのときは、Q10において、無負荷でのリッチ運転状態とされる(発電を中止しつつパージ実行)。ただし、Q10では、無負荷(発電なし)でのリッチ運転状態と有負荷(発電有り)でのリーン運転状態とが交互に繰り返えされる断続パージとされる。Q10の後、Q11において、リッチ運転状態へ最初に切換えられた時点から所定時間(例えば10秒)経過したか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときは、Q10に戻る。Q11の判別でYESのときは、Q9において、リーン運転状態へ復帰されると共に、発電が再開される。なお、Q10において、所定時間(例えば10秒)よりも短く設定された別の所定時間(例えば5秒)だけ、リッチ運転状態を継続して行うようにしてもよい。
【0053】
前記Q5の判別でNOのときは、Q13において、NOx吸蔵量が、本来的なしきい値となる所定値(例えば90%)以上であるか否かが判別される。このQ13の判別でYESのときは、Q14において、無負荷でのリッチ運転状態とされる(発電を中止しつつパージ実行)。この後、Q15において、リッチ運転状態へ切換えられた時点から所定時間(例えば10秒)経過したか否かが判別される。このQ15の判別でNOのときは、Q14に戻る。Q15の判別でYESのときは、Q9において、リーン運転状態へ復帰されると共に、発電が再開される。
【0054】
前記Q4の判別でNOのときは、Q12において、バッテリ30の充電量が所定値(例えば50%)以上であるか否かが判別される。このQ12の判別でYESのときは、バッテリ充電量が十分にあるときなので、早期パージは不用なときであり、このときはQ13へ移行される。
【0055】
前記Q12の判別でNOのときは、バッテリ充電量が極めて少ないときなので、このときはQ2へ戻る(パージ禁止で発電実行)。なお、Q12の判別でNOのときは、急速に充電量を回復させるべく、エンジン回転を増大させて、発電電力を通常時よりも増大するようにしてもよい。
【0056】
図5は、本発明の第2の制御例を示すタイムチャートである。本制御例では、バッテリ充電量が小さいときは、パージ実行する前にあらかじめバッテリ充電量を増大させておくようにして、パージ実行している最中にバッテリ充電量が極端に小さくならないようにしたものである。具体的には、バッテリ充電量が例えば50%まで低下したt11た時点から、エンジン回転数を増大させて発電電力を増大させ、バッテリ充電量をあらかじめ50%よりも高めておく。発電電力増大により、NOx吸蔵量も急激に増大され、発電電力が通常どおりの大きさとした場合に比して、パージを実行する時点が早められることになる。
【0057】
t12時点では、NOx吸蔵量が、通常のパージ実行の開始しきい値となる所定値(例えば90%)にまで増大されるが、このt12時点では、バッテリ充電量が50%よりも十分に高められた状態となっている。そして、t12時点から、所定期間経過したt13時点まで、無負荷でのリッチ運転状態が継続して行われる。t13時点の後は、リーン運転で発電が行われるが、このときの発電電力は、通常の発電電力とされる。
【0058】
図6は、図5のような制御を行うためのフローチャートである。この図6は、図4のQ5での判別でYESとなった以後の処理が図4の場合と異なるのみであり、このため、図4とは相違する部分のステップのみが示される。
【0059】
この図6において、Q21(図4のQ5対応)の判別でYESのときは、Q22において、エンジン出力が高められて、発電電力が増大される。この後、Q23において、NOx吸蔵量が通常の所定値(例えば90%)以上であるか否かが判別される。このQ23の判別でNOのときは、Q22に戻って、バッテリ充電量が急速に増大される。また、Q23の判別でYESのときは、Q24〜Q26の処理が行われるが、Q24〜Q26は図4のQ7〜Q9に対応しているので、重複した説明は省略する。
【0060】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。エンジン10としては、往復動型エンジンであってもよく、また燃料として水素以外の燃料を用いるエンジンあってもよい。パージ実行の際のエンジン10の駆動負荷低減は、ジェネレータ20の発電電力を0にする代わりに、発電は実行するものの例えば20〜50%まで発電電力を低減することにより行うようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、バッテリ充電量が極端に小さくなってしまうのを防止しつつ、パージ実行時でのプリイグニッション発生防止や燃焼音増大を防止あるいは低減できる。
【符号の説明】
【0062】
10:エンジン
15:排気通路
17,18:燃料噴射弁
19:点火プラグ
20:ジェネレータ
30:バッテリ
40:モータ
70:水素タンク
80:排気ガス浄化触媒(NOx触媒)
100:コントロールユニット(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6