(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄熱材成形体は、水和反応により膨張し、脱水反応により収縮することで、蓄熱材成形体が膨張、収縮を繰り返す。凹凸部は薄い板材を折り曲げて形成されているため、凹凸部に蓄熱材成形体の膨張力が繰り返し作用することで、凹凸部が押しつぶされてしまうことが考えられる。
【0006】
本発明の課題は、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る化学蓄熱反応器は、容器と、前記容器内で前記容器を構成する第一壁部側に配置され、水蒸気による水和反応で発熱し、加熱による脱水反応で蓄熱する蓄熱材成形体と、前記容器内で前記蓄熱材成形体を挟んで前記第一壁部の反対側に配置され、前記蓄熱材成形体を構成する蓄熱材の平均粒径よりも小さい流路を通じて水蒸気を通過させるフィルタと、前記容器内で前記フィルタを挟んで前記蓄熱材成形体の反対側に形成される蒸気流路に配置され、板材を折り曲げて水蒸気の流れ方向から見て凹凸状に形成され、前記蓄熱材成形体の水和反応よる膨張力が作用する凹凸部と、前記流れ方向から見て前記凹凸部の両端部で前記凹凸部と夫々連結されると共に、前記蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が、前記流れ方向に対して直交する流路幅方向に作用して支持部に押圧される一対の押圧部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、容器内の蒸気流路に水蒸気が流れると、水蒸気はフィルタを通過して蓄熱材成形体に達する。蓄熱材成形体は、水蒸気による水和反応により膨張して発熱する。一方、蓄熱成形体は、容器の外部からの加熱による脱水反応で収縮し、熱を蓄熱する。
【0009】
蒸気流路には、蒸気流路を区画する凹凸部が配置されている。そして、蓄熱材成形体の水和反応よる膨張力がこの凹凸部に作用する。これにより、凹凸部が撓むことで、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じることが考えられる。
【0010】
しかし、凹凸部の両端部で凹凸部と連結される一対の押圧部に、蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用するため、押圧部の移動が抑制される。このように、凹凸部の両端部の近づく方向の移動が抑制されることで、凹凸部の撓みが抑制される。このため、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じるのが抑制される。
【0011】
これにより、押圧部がない場合と比して、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る化学蓄熱反応器は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記蓄熱材成形体及び前記フィルタは、前記蒸気流路を挟んで両側に配置され、一方及び他方の前記蓄熱材成形体は、前記容器を構成すると共に互いに対向する一対の前記第一壁部側に夫々配置され、前記支持部は、前記容器を構成すると共に前記流路幅方向で対向する一対の第二壁部であり、一対の前記押圧部は、前記流れ方向から見て前記凹凸部の一端部と連結されて一方及び他方の前記蓄熱材成形体と一方の前記第二壁部とに挟まれる第一押圧部と、前記流れ方向から見て前記凹凸部の他端部と連結されて一方及び他方の前記蓄熱材成形体と他方の前記第二壁部とに挟まれる第二押圧部と、で一対とされることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、凹凸部の一端部で凹凸部と連結される第一押圧部に、一方及び他方の蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用し、これにより、第一押圧部が一方の第二壁部に押圧される。
【0014】
一方、凹凸部の他端部で凹凸部と連結される第二押圧部に、一方及び他方の蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用し、これにより、第二押圧部が他方の第二壁部に押圧される。
【0015】
このように、凹凸部の両端部の近づく方向の移動が抑制されることで、凹凸部の撓みが抑制される。このため、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じるのが抑制される。これにより、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る化学蓄熱反応器は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記蓄熱材成形体及び前記フィルタは、前記蒸気流路を挟んで両側に配置され、一方及び他方の前記蓄熱材成形体は、前記容器を構成すると共に対向する一対の前記第一壁部側に夫々配置され、前記支持部は、前記容器を構成すると共に前記流路幅方向で対向する一対の第二壁部であり、前記押圧部は、前記流れ方向から見て前記凹凸部の一端部と連結されて一方の前記蓄熱材成形体と一方の前記第二壁部とに挟まれる第一押圧部と、前記流れ方向から見て前記凹凸部の他端部と連結されて他方の前記蓄熱材成形体と他方の前記第二壁部とに挟まれる第二押圧部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、凹凸部の一端部で凹凸部と連結される第一押圧部に、一方の蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用し、これにより、第一押圧部が一方の第二壁部に押圧される。
【0018】
一方、凹凸部の他端部で凹凸部と連結される第二押圧部に、他方の蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用し、これにより、第二押圧部が他方の第二壁部に押圧される。
【0019】
このように、凹凸部の両端部の近づく方向の移動が抑制されることで、凹凸部の撓みが抑制される。このため、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じるのが抑制される。これにより、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の請求項4に係る化学蓄熱反応器は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記蓄熱材成形体及び前記フィルタは、前記蒸気流路の片側にのみ配置され、前記支持部は、前記容器を構成すると共に前記流路幅方向で対向する一対の第二壁部であり、前記押圧部は、前記流れ方向から見て前記凹凸部の一端部と連結されて前記蓄熱材成形体と一方の前記第二壁部とに挟まれる第一押圧部と、前記流れ方向から見て前記凹凸部の他端部と連結されて前記蓄熱材成形体と他方の前記第二壁部とに挟まれる第二押圧部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、凹凸部の一端部で凹凸部と連結される第一押圧部に、蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用し、これにより、第一押圧部は一方の第二壁部に押圧される。
【0022】
一方、凹凸部の他端部で凹凸部と連結される第二押圧部に、蓄熱材成形体の水和反応による膨張力が流路幅方向に作用し、これにより、第二押圧部は他方の第二壁部に押圧される。
【0023】
このように、凹凸部の両端部の近づく方向の移動が抑制されることで、凹凸部の撓みが抑制される。このため、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じるのが抑制される。これにより、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを効果的に抑制することができる。
【0024】
本発明の請求項5に係る化学蓄熱反応器は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記蓄熱材成形体と、前記フィルタと、前記凹凸部と、前記押圧部とを含んで反応ユニットが構成され、前記容器内には、前記流路幅方向に並んで複数の前記反応ユニットが配置され、前記支持部は、前記容器を構成すると共に前記流路幅方向で対向する一対の第二壁部、又は、隣接する前記反応ユニットの押圧部であることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、反応ユニットに備えられた蓄熱材成形体の膨張力が、押圧部に作用し、押圧部が第二壁部、又は隣接する反応ユニットの押圧部に押圧される。
【0026】
押圧部が第二壁部に押圧されると、押圧部の移動が抑制される。一方、押圧部が、隣接する反応ユニットの押圧部に押圧されると、この部分が、疑似的な拘束壁として機能する。このため、夫々の押圧部の移動が抑制される。
【0027】
このように、凹凸部の両端部の近づく方向の移動が抑制されることで、凹凸部の撓みが抑制される。このため、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じるのが抑制される。これにより、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを効果的に抑制することができる。
【0028】
本発明の請求項6に係る化学蓄熱反応器は、請求項1〜5の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記凹凸部における前記流れ方向の一端側の部分を保持し、前記凹凸部が前記流れ方向から見て撓むのを抑制する一端側抑制部材と、前記凹凸部における前記流れ方向の他端側の部分を保持し、前記凹凸部が前記流れ方向から見て撓むのを抑制する他端側抑制部材と、を備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、一端側抑制部材が、凹凸部における流れ方向の一端側の部分を保持し、凹凸部が流れ方向から見て撓むのを抑制し、他端側抑制部材が、凹凸部における流れ方向の他端側の部分を保持し、凹凸部が流れ方向から見て撓むのを抑制する。
【0030】
これにより、一端側抑制部材又は他端側抑制部材が備えられていない場合と比して、流れ方向から見て、凹凸部が撓むのが抑制される。このため、蓄熱材成形体の膨張力が通常とは異なった方向から凹凸部に生じるのが抑制される。これにより、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを効果的に抑制することができる。
【0031】
本発明の請求項7に係る化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器と、前記化学蓄熱反応器の容器を構成する前記第一壁部を挟んで前記蓄熱材成形体の反対側に配置され、熱媒体が流れる媒体流路と、前記容器に気密状態で連通され、水蒸気を前記容器に供給する蒸発部と、を有することを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器を備えているため、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのが抑制する。これにより、化学蓄熱システムの耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、蓄熱材成形体の膨張力で凹凸部が押しつぶされるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る化学蓄熱反応器及び化学蓄熱システムの一例について
図1〜
図8を用いて説明する。
【0036】
(全体構成)
図6に示されるように、第1実施形態に係る化学蓄熱システム10は、水(H
2O)の蒸発、水蒸気の凝縮が行われる蒸発部の一例としての蒸発凝縮器12と、後述する蓄熱材成形体30A、30Bの水和反応又は脱水反応が行われる化学蓄熱反応器の一例としての反応器20と、蒸発凝縮器12と反応器20とを連通させる連通路14と、熱媒が流れる熱媒流路24、25と、を含んで構成されている。なお、本実施形態では一例として、化学蓄熱システム10は自動車(図示省略)に用いられる。
【0037】
〔蒸発凝縮器〕
蒸発凝縮器12は、貯留した水を蒸発させて反応器20に供給する(水蒸気を生成する)蒸発部、反応器20から導入された水蒸気を凝縮する凝縮部、及び水蒸気が凝縮された水を貯留する貯留部、としての各機能を備えている。
【0038】
また、蒸発凝縮器12は、内部に水を貯留した容器16を備えており、この容器16内には、水蒸気を凝縮するのに用いる冷媒流路17及び水を蒸発させるのに用いるヒータ18が備えられている。
【0039】
冷媒流路17は、容器16内における少なくとも気相部16Aを含む部分で熱交換を行うように配置されており、ヒータ18は、容器16内における少なくとも液相部(貯留部)16Bを含む部分で通電により加熱を行うように配置されている。なお、蒸発部の加熱源として、エンジン冷却水などの熱媒体を流通可能に配置してもよい。
【0040】
〔連通路〕
連通路14は、蒸発凝縮器12(容器16)と反応器20(後述する反応容器22)との連通、非連通を切り替えるための開閉弁19を備えている。容器16、反応容器22、連通路14、及び開閉弁19は、互いの接続部位が気密に構成されており、これらの内部空間が予め真空脱気されている。
【0041】
〔反応器〕
反応器20は、
図1(A)、(B)に示されるように、容器の一例としての反応容器22を備えている。さらに、反応容器22は、反応容器22を構成すると共に対向する一対の第一壁部の一例としての壁部22Aを備えている。そして、反応容器22内には、壁部22A側に配置された蓄熱材成形体30A、30Bと、蓄熱材成形体30A、30Bを覆うように備えられたフィルタ28A、28Bと、が配置されている。そして、フィルタ28A、28Bを介して蓄熱材成形体30A、30Bに挟まれるように蒸気流路26が形成されている。
【0042】
さらに、蒸気流路26には、板材を折り曲げて形成され、水蒸気の流れ方向(以下、「蒸気流れ方向」という:図中矢印X方向)から見て蒸気流路26を複数に区画すると共に、水和反応によって生じる蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力が作用するフィン32が配置されている。このように、反応器20は、反応容器22、蓄熱材成形体30A、30B、フィルタ28A、28B、及びフィン32を含んで構成されている。なお、本第1実施形態では、この蒸気流れ方向が鉛直方向に向くように、反応器20が配置されている。
【0043】
また、以後の説明では、反応容器22において、蒸気流路26、蓄熱材成形体30A、30Bが配列される方向を配列方向(図中矢印Y方向)と記載し、蒸気流れ方向及び配列方向に対して直交する方向を流路幅方向(図中矢印Z方向)と記載する。
【0044】
ここで、
図1(A)、(B)の左右方向が配列方向となっており、反応容器22内では、右側から左側へ向けて、蓄熱材成形体30B、フィルタ28B、蒸気流路26、フィルタ28A、蓄熱材成形体30Aの順で配列された構成となっている。
【0045】
[反応容器]
反応容器22は、直方体状の容器であり、
図1(A)に示されるように、反応容器22の天井壁部22Cにおける配列方向の中央部分には、開口部23が蒸気流路26と対向するように形成されている。そして、開口部23には、連通路14の一端が接続されている。
【0046】
[蒸気流路・フィン]
蒸気流路26は、前述したように、蓄熱材成形体30A、30Bに挟まれ、蒸気流路26には、
図1(B)に示されるように、蒸気流れ方向から見て蒸気流路26を複数に区画するフィン32が配置されている。このフィン32は、ステンレス鋼板をプレス加工することにより形成されている。
【0047】
このフィン32は、
図1(B)及び
図3(A)(B)に示されるように、蒸気流れ方向に対して直交する断面が凹凸を繰り返す矩形波状とされた凹凸部34と、凹凸部34の両端部に連結される押圧部36とを備えている。
【0048】
そして、凹凸部34によって蒸気流路26は、
図1(B)に示されるように、蓄熱材成形体30A側に開放された複数の第一流路26Aと、蓄熱材成形体30B側に開放された複数の第二流路26Bとに区画されている。なお、フィン32については詳細を後述する。
【0049】
[フィルタ]
フィルタ28A、28Bは、
図1(A)、(B)に示されるように、蓄熱材成形体30A、30Bにおいて壁部22Aと対向する部分以外の蓄熱材成形体30A、30Bの外表面を覆っている。また、フィルタ28A、28Bは、金属繊維焼結体であって、ミクロン単位の金属繊維から構成される不織布の焼結体とされており、蓄熱材成形体30A、30Bを構成する蓄熱材の平均粒径より小さいろ過精度を有している。これにより、フィルタ28A、28Bでは、蓄熱材成形体30A、30Bを構成する蓄熱材の平均粒径より小さい流路を水蒸気が通過する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材を通過させないようになっている。
【0050】
なお、ろ過精度とは、ろ過効率が50〜98%となる粒子径のことであり、ろ過効率とは、ある粒子径の粒子に対する除去効率である。
【0051】
[蓄熱材成形体]
蓄熱材成形体30A、30Bには、一例として、アルカリ土類金属の酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO:蓄熱材の一例)の成形体が用いられている。この成形体は、例えば、酸化カルシウム粉体をバインダ(例えば粘土鉱物等)と混練し、焼成することで、略矩形ブロック状に形成されている。また、蓄熱材成形体30A、30Bは、反応容器22の壁部に周囲を密着させた状態で配置(挿入)されている。
【0052】
ここで、蓄熱材成形体30A、30Bは、水和に伴って放熱(発熱)し、脱水に伴って蓄熱(吸熱)するものであり、反応器20内では、以下に示す反応で放熱、蓄熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0053】
CaO + H
2O ⇔ Ca(OH)
2
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
CaO + H
2O → Ca(OH)
2 + Q
Ca(OH)
2 + Q → CaO + H
2O
となる。
【0054】
なお、一例として、蓄熱材成形体30A、30Bの1kg当たりの蓄熱容量は、1.86[MJ/kg]とされている。
【0055】
また、本実施形態において、蓄熱材成形体30A、30Bを構成する蓄熱材の粒径とは、蓄熱材が粉体の場合はその平均粒径、粒状の場合は造粒前の粉体の平均粒径とする。これは、粒が崩壊する場合、前工程の状態に戻ると推定されるためである。
【0056】
[熱媒流路]
熱媒流路24は、
図1(A)(B)に示されるように、蓄熱材成形体30A側で反応容器22に隣接して配置され、熱媒流路25は、蓄熱材成形体30B側で反応容器22に隣接して配置されている。
【0057】
熱媒流路24、25は、一例として、角筒状のステンレス鋼で形成されており、熱媒が流入する扁平矩形状の流入口24A、25Aと、熱媒が流出する扁平矩形状の流出口24B、25Bとを備えている。なお、流入口24A、25Aから熱媒流路24、25内への熱媒の流入を矢印Aで示しており、熱媒流路24、25内から流出口24B、25Bへの熱媒の流出を矢印Bで示している。矢印A、Bは、共に蒸気流れ方向に沿っている。
【0058】
熱媒は、蓄熱(脱水)時、蓄熱材成形体を加熱し、放熱(水和)時、蓄熱材成形体30A、30Bからの熱を加熱対象に輸送するためのものであり、本実施形態では、熱媒の一例として、蓄熱時には排気ガスを、放熱時には空気を用いている。
【0059】
なお、熱媒の他の例として、電気ヒータ(図示省略)で加熱された空気、冷却水等の流体を用いてもよい。熱媒としての流体ではなく触媒を用いて、この触媒を温めるようにしてもよい。さらに、蓄熱時の加熱を反応容器22の壁部22Aにヒータを付設して行い、放熱時は、熱媒を用いる方式でもよい。
【0060】
(全体構成の作用)
次に、化学蓄熱システム10の作用について説明する。
【0061】
化学蓄熱システム10において反応器20に蓄熱された熱を放熱(発熱)する際には、
図5(A)に示されるように、開閉弁19を開放した状態で、蒸発凝縮器12のヒータ18により液相部16Bの水を蒸発させる。そして、生成された水蒸気が連通路14内を矢印D方向に移動して、反応器20内に供給される。
【0062】
続いて、
図4に示されるように、反応器20内では、供給された水蒸気Wが蒸気流路26を構成する第一流路26A及び第二流路26B内を流れる。そして、第一流路26A内の水蒸気Wがフィルタ28Aを通過して蓄熱材成形体30Aと接触することにより、蓄熱材成形体30Aは、水和反応を生じつつ放熱する。この熱は、熱媒流路24(
図5(A)参照)内を流れる熱媒によって、加熱対象に輸送される。
【0063】
同様に、第二流路26B内の水蒸気Wがフィルタ28Bを通過して蓄熱材成形体30Bと接触することにより、蓄熱材成形体30Bは、水和反応を生じつつ放熱する。この熱は、熱媒流路25(
図5(A)参照)内を流れる熱媒によって、加熱対象に輸送される。
【0064】
一方、化学蓄熱システム10において反応器20の蓄熱材成形体30A、30Bに熱を蓄熱する際には、
図5(B)に示されるように、開閉弁19を開放した状態で、熱媒流路24、25内に熱源(図示省略)によって加熱された熱媒を流通させる。この熱媒によって加熱されることで、蓄熱材成形体30A、30Bが脱水反応を生じ、この熱が蓄熱材成形体30A、30Bに蓄熱される。
【0065】
さらに、蓄熱材成形体30A、30Bから脱水された水蒸気は、フィルタ28A、28Bから蒸気流路26を通り、さらに連通路14を矢印E方向に流れて蒸発凝縮器12内に流れ込む。そして、蒸発凝縮器12の気相部16Aにおいて、冷媒流路17を流通する冷媒によって水蒸気が冷却され、凝縮された水が容器16の液相部16Bに貯留される。
【0066】
以上説明した蓄熱材成形体30A、30Bの蓄熱、放熱について、
図7に示す化学蓄熱システム10のサイクル(一例)を参照しつつ補足する。
図7には、PT線図に示された圧力平衡点における化学蓄熱システム10のサイクルが示されている。この図において、上側の等圧線が脱水(吸熱)反応を示し、下側の等圧線が水和(発熱)反応を示している。
【0067】
このサイクルでは、例えば、蓄熱材成形体の温度が410℃で蓄熱された場合、水蒸気は、50℃が平衡温度となる。そして、化学蓄熱システム10では、水蒸気は蒸発凝縮器12(
図6参照)において冷媒流路17の冷媒との熱交換によって50℃以下に冷却され、凝縮されて水になる。
【0068】
一方、ヒータ18(
図6参照)により加熱を行うことで、ヒータ18の温度に応じた蒸気圧の水蒸気が発生する。例えば、
図7のサイクルにおいて、5℃で水蒸気を発生させる場合、蓄熱材成形体は315℃で放熱することが解る。このように、内部が真空脱気されている化学蓄熱システム10では、5℃付近の低温熱源から熱を汲み上げて、315℃もの高温を得ることができる。
【0069】
(要部構成)
次に、フィン32について説明する。
【0070】
フィン32は、
図1(B)及び
図3(A)(B)に示されるように、矩形波状とされた凹凸部34と、凹凸部34の両端部に連結される押圧部36とを備えている。そして、前述したように、凹凸部34によって区画された蒸気流路26は、
図1(B)に示されるように、蓄熱材成形体30A側に開放された複数の第一流路26Aと、蓄熱材成形体30B側に開放された複数の第二流路26Bとを備えている。
【0071】
また、フィルタ28Aと接触する凹凸部34の凸壁34Aと、フィルタ28Bと接触する凹凸部34の凹壁34Bとには、水和反応によって生じる蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力が配列方向に作用するようになっている。そして、凹凸部34は、蒸気流路26の断面積を確保するため、蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力に対抗するようになっている。
【0072】
一方、凹凸部34の両端部に連結される押圧部36は、
図1(B)、
図3(A)(B)に示されるように、凹凸部34の両端部が折り曲げられて形成されている。そして、押圧部36は、凹凸部34の一端部が折り曲げられて形成される第一押圧部36Aと、凹凸部34の他端部が折り曲げられて形成される第二押圧部36Bとを備えている。
【0073】
第一押圧部36Aは、凹凸部34の一端部が配列方向の一方側に折り曲げられ、さらに、折り返されて、折り返された先端側を配列方向の他方側へ延すことで形成されている。これにより、第一押圧部36Aは、フィルタ28Aを介して蓄熱材成形体30Aと、反応容器22を構成すると共に対向する一対の第二壁部の一例としての壁部22Bとに挟まれる部分と、フィルタ28Bを介して蓄熱材成形体30Bと、壁部22Bとに挟まれる部分とを備えている。
【0074】
同様に、第二押圧部36Bは、凹凸部34の他端部が配列方向の他方側に折り曲げられ、さらに、折り返されて、折り返された先端側を配列方向の一方側へ延すことで形成されている。これにより、第二押圧部36Bは、フィルタ28Bを介して蓄熱材成形体30Bと、壁部22Bとに挟まれる部分と、フィルタ28Aを介して蓄熱材成形体30Aと、壁部22Bとに挟まれる部分とを備えている。
【0075】
(要部構成の作用・効果)
次に、フィン32の作用・効果について説明する。
【0076】
前述したように、化学蓄熱システム10において、反応器20に蓄熱された熱を放熱する際には、水蒸気Wと接触した蓄熱材成形体30A、30Bが、水和反応を生じつつ放熱する。これに対して、蓄熱材成形体30A、30Bに熱を蓄熱する際には、熱媒によって加熱された蓄熱材成形体30A、30Bが、脱水反応を生じ、この熱が蓄熱材成形体30A、30Bに蓄熱される。
【0077】
ここで、蓄熱材成形体30A、30Bが水和反応により膨張し、蓄熱材成形体30A、30Bが脱水反応により収縮する。つまり、蓄熱材成形体30A、30Bが膨張、収縮を繰り返す。そして、水和反応によって生じる蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力は、フィン32の凹凸部34の凸壁34A及び凹壁34Bに作用する。
【0078】
凸壁34A及び凹壁34Bに対して蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力が、配列方向に繰り返し作用することで、
図8(A)(B)(C)に示されるように、蒸気流れ方向から見て、凹凸部34が撓む(
図8(B)参照)。この撓みにより、蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力の一部が、凸壁34A及び凹壁34Bに流路幅方向の力として作用するため、凹凸部34の壁面34Cが押しつぶされてしまうことが考えられる(
図8(C)参照)。なお、
図8(A)(B)(C)には、本実施形態に対する比較例が記載されている。
【0079】
しかし、これに対して、本第1実施形態に係るフィン32は、第一押圧部36A及び第二押圧部36Bを備えている。第一押圧部36A及び第二押圧部36Bは、
図1(B)、
図2に示されるように、フィルタ28A、28Bを介して蓄熱材成形体30A、30Bと、壁部22Bに挟まれている。このため、第一押圧部36A及び第二押圧部36Bに対して蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力が、流路幅方向に作用し、第一押圧部36A及び第二押圧部36Bが壁部22Bに押圧される。
【0080】
第一押圧部36A及び第二押圧部36Bが壁部22Bに押圧されることで、第一押圧部36A及び第二押圧部36Bと壁部22Bとの間に摩擦力が生じ、第一押圧部36A及び第二押圧部36Bの配列方向の移動及び流路幅方向の移動が抑制される。
【0081】
第一押圧部36A及び第二押圧部36Bの移動が抑制されることで、凹凸部34の両端部の両端部の近づく方向の移動が抑制されるため、蒸気流れ方向から見て、凹凸部34が撓むのが抑制される。そして、凹凸部34の撓みが抑制されることで、蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力の一部が、凸壁34A及び凹壁34Bに流路幅方向の力として作用するのが抑制される。
【0082】
これにより、蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力で凹凸部34が押しつぶされるのを抑制することができる。
【0083】
また、凹凸部34が押しつぶされるのが抑制されることで、蒸気流路26の断面積を確保することができる。
【0084】
また、蒸気流路26の断面積が確保されることで、化学蓄熱システム10により、加熱対象を効果的に加熱することができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る化学蓄熱反応器及び化学蓄熱システムの一例について
図9、
図10(A)(B)を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。また、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。
【0086】
第2実施形態に係る化学蓄熱反応器の一例としての反応器40に備えられたフィン42の第一押圧部46Aは、蒸気流れ方向から見て、凹凸部44の一端部がフィルタ28Aを介して蓄熱材成形体30Aと壁部22Bとに挟まれるように折り曲げられることで形成されている。
【0087】
一方、第二押圧部46Bは、蒸気流れ方向から見て、凹凸部34の他端部がフィルタ28Bを介して蓄熱材成形体30Bと壁部22Bとに挟まれるように折り曲げられることで形成されている。
【0088】
このため、第一押圧部46Aに対して蓄熱材成形体30Aの膨張力が、流路幅方向に作用し、第一押圧部46Aが反応容器22の壁部22Bに押圧される。第一押圧部46Aが壁部22Bに押圧されることで、第一押圧部46Aと壁部22Bとの間に摩擦力が生じ、第一押圧部46Aの移動が抑制される。
【0089】
一方、第二押圧部46Bに対して蓄熱材成形体30Bの膨張力が、流路幅方向に作用し、第二押圧部46Bが壁部22Bに押圧される。第二押圧部46Bが壁部22Bに押圧されることで、第二押圧部46Bと壁部22Bとの間に摩擦力が生じ、第二押圧部46Bの移動が抑制される。
【0090】
第一押圧部46A及び第二押圧部46Bの移動が抑制されることで、凹凸部44の両端部の近づく方向の移動が抑制されるため、蒸気流れ方向から見て、凹凸部44が撓むのが抑制される。
【0091】
他の作用・効果については、第1実施形態と同様である。
【0092】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る化学蓄熱反応器及び化学蓄熱システムの一例について
図11〜
図13を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。また、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。
【0093】
第3実施形態に係る化学蓄熱反応器の一例としての反応器50は、
図13(A)(B)に示されるように、蒸気流路26の一方側にのみ、フィルタ28B、蓄熱材成形体30B、及び熱媒流路25を備えている。
【0094】
そして、フィン52の第一押圧部56A及び第二押圧部56Bは、
図11、
図12(A)(B)、
図13(B)に示されるように、蒸気流れ方向から見て、凹凸部54の両端部がフィルタ28Bを介して蓄熱材成形体30Bと壁部22Bとに挟まれるように折り曲げられることで形成されている。
【0095】
このため、第一押圧部56A及び第二押圧部56Bに対して蓄熱材成形体30Bの膨張力が、流路幅方向に作用し、第一押圧部56A及び第二押圧部56Bが壁部22Bに押圧される。第一押圧部56A及び第二押圧部56Bが壁部22Bに押圧されることで、第一押圧部56A及び第二押圧部56Bと壁部22Bとの間に摩擦力が生じ、第一押圧部56A及び第二押圧部56Bの移動が抑制される。
【0096】
第一押圧部56A及び第二押圧部56Bの移動が抑制されることで、凹凸部54の両端部の近づく方向の移動が抑制される。このため、蒸気流れ方向から見て、凹凸部54が撓むのが抑制される。
【0097】
他の作用・効果については、第1実施形態と同様である。
【0098】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る化学蓄熱反応器及び化学蓄熱システムの一例について
図14を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。また、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。
【0099】
第4実施形態では、
図14に示されるように、蓄熱材成形体30A、30Bと、フィルタ28A、28Bと、蒸気流路26と、凹凸部34及び押圧部36を備えるフィン32とを含んで反応ユニット62が構成されている。
【0100】
そして、化学蓄熱反応器の一例としての反応器60の反応容器22の内部には、流路幅方向に並んで複数(本実施形態では一例として3個)の反応ユニット62が配置されている。
【0101】
なお、以下の説明では、流路幅方向の両端側に配置される反応ユニット62を反応ユニット62Aと称し、これらの反応ユニット62Aの間に配置される反応ユニット62を反応ユニット62Bと称する。
【0102】
そして、反応ユニット62Aに備えられた蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力が、押圧部36に対して流路幅方向に作用し、押圧部36が壁部22B又は隣接する反応ユニット62Bの押圧部36に押圧される。壁部22Bに押圧される押圧部36については、押圧部36と壁部22Bとの間に摩擦力が生じ、押圧部36の移動が抑制される。
【0103】
一方、反応ユニット62Bに備えられた蓄熱材成形体30A、30Bの膨張力が、押圧部36に対して流路幅方向に作用し、押圧部36が隣接する反応ユニット62Aの押圧部36に押圧される。反応ユニット62Bの押圧部36と反応ユニット62Aの押圧部36とが互いに押圧することで、この部分が、疑似的な拘束壁として機能するため、押圧部36の移動が抑制される。
【0104】
このように、全ての反応ユニット62における押圧部36の移動が抑制されることで、全ての反応ユニット62における凹凸部34の両端部の近づく方向の移動が抑制される。このため、蒸気流れ方向から見て、全ての反応ユニット62における凹凸部34が撓むのが抑制される。
【0105】
他の作用・効果については、第1実施形態と同様である。
【0106】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る化学蓄熱反応器及び化学蓄熱システムの一例について
図15を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。また、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。
【0107】
第5実施形態に係る化学蓄熱反応器の一例としての反応器70のフィン72における凹凸部74の蒸気流れ方向の両端側は、
図15に示されるように、蓄熱材成形体30A、30Bを覆うフィルタ28A、28Bに対して突出している。
【0108】
そして、反応器70には、凹凸部74の一端側(図中上側)が突出した突出部分を保持し、凹凸部74が蒸気流れ方向から見て撓むのを抑制する一端側抑制部材76が備えられている。
【0109】
一端側抑制部材76は、例えば板材を折り曲げて形成され、フィルタ28A、28Bと当接する一対の当接部76Aと、一対の当接部76Aの間に形成され、凹凸部74の突出部分を保持する保持部76Bとを備えている。この保持部76Bは、流路幅方向に離間して3個備えられ、保持部76Bと保持部76Bとの間を水蒸気が通過するようになっている。
【0110】
同様に、反応器70には、凹凸部74の他端側(図中下側)が突出した突出部分を保持し、凹凸部74が蒸気流れ方向から見て撓むのを抑制する他端側抑制部材78が備えられている。
【0111】
他端側抑制部材78は、例えばダイキャスト工法で成形され、フィルタ28A、28Bと当接する一対の当接部78Aと、一対の当接部78Aの間に形成され、凹凸部74の突出部分を保持する保持部78Bとを備えている。
【0112】
このように、反応器70が、一端側抑制部材76及び他端側抑制部材78を備えることで、一端側抑制部材76及び他端側抑制部材78を備えていない場合と比して、凹凸部74が、蒸気流れ方向から見て撓むのを効果的に抑制することができる。
【0113】
他の作用・効果については、第1実施形態と同様である。
【0114】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、一枚の板材を折り曲げることにより、凹凸部と押圧部とを備えるフィンが形成されたが、例えば、凹凸部の両端部に押圧部が溶接等で連結される(固定される)構成等であってもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、押圧部の移動を抑制することで、凹凸部の両端部の近づく方向の移動が抑制されることとなるが、押圧部の移動の抑制については、蓄熱材成形体の最初の膨張だけでなされることもある。
【0116】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、押圧部が蒸気流れ方向において部分的に分割されていてもよい。
【0117】
また、前述した実施形態は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除、付加及び組み合わせが可能である。